(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】パワーユニット及びパワーユニットを備える車両
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20241127BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20241127BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20241127BHJP
B60K 6/383 20071001ALI20241127BHJP
B62M 7/00 20100101ALI20241127BHJP
B62M 11/04 20060101ALI20241127BHJP
B60K 17/06 20060101ALI20241127BHJP
B60K 17/02 20060101ALI20241127BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20241127BHJP
F02D 29/04 20060101ALI20241127BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60K6/383
B62M7/00
B62M11/04
B60K17/06 K
B60K17/06 A
B60K17/02 A
F02D29/02 F
F02D29/04 F
F02D29/04 G
F02D29/06 D
(21)【出願番号】P 2020203145
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西藪 正貴
(72)【発明者】
【氏名】市 聡顕
(72)【発明者】
【氏名】和泉 恭平
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102019100617(DE,A1)
【文献】特開2013-177116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/00- 6/547
B60K 17/00-17/08
B62M 7/00
B62M 11/04
F02D 29/00-29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプとは異なる駆動対象に回転動力を出力する、
第1駆動源及び第2駆動源と、
前記
第1駆動源の前記回転動力により回転駆動される第1ポンプと、
前記
第1駆動源
、及び、前記第2駆動源の少なくともいずれかの前記回転動力により回転駆動され、前記第1ポンプとは異なる第2ポンプと、
前記第1ポンプ
に対し、前記第1駆動源の前記回転動力を伝達し、前記第2ポン
プに対し、前記
第1駆動源、及び、前記第2駆動源
の少なくともいずれかの前記回転動力を伝達する動力伝達機構と、を備え、
前記動力伝達機構は、複数の伝達部を有し、前記複数の伝達部のうちの異なる伝達部を介し、前記第1ポンプと前記第2ポンプとに前記回転動力を個別に伝達
し、
前記複数の伝達部のうち、前記第2ポンプに対応する伝達部は、
前記第1駆動源と前記駆動対象との間の動力伝達経路とは異なる経路を通じて、前記第1駆動源の前記回転動力が与えられる第1ワンウェイクラッチと、
前記第2駆動源の前記回転動力が与えられる第2ワンウェイクラッチと、を含む、パワーユニット。
【請求項2】
前記第1駆動源と前記駆動対象との間の動力伝達状態を、接続状態と遮断状態との間で切り替える切替装置と、
前記切替装置が配置され、且つ、前記第1駆動源の前記回転動力が伝達される軸体と、を更に備え、
前記動力伝達機構は、前記切替装置と前記第2駆動源との前記軸体の軸線方向の間に配置された回転体を更に有し、
前記第1ポンプと前記第2ポンプとの各々に対して、前記回転動力が、前記回転体を介して伝達される、請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記第1駆動源と前記駆動対象との間の動力伝達状態を、接続状態と遮断状態との間で切り替える切替装置と、
前記切替装置が配置され、且つ、前記第1駆動源の前記回転動力が伝達される軸体と、を更に備え、
前記動力伝達機構は、前記切替装置よりも前記軸体の軸線方向一方側に並んで配置された第1回転体と第2回転体とを更に有し、
前記第1回転体と前記第2回転体とは、外周部に配置されたギヤ歯を有し、
前記第1回転体の前記ギヤ歯を介して、前記第1ポンプに対して、前記第1駆動源の前記回転動力が伝達され、
前記第2回転体の前記ギヤ歯を介して、前記第2ポンプに対して、前記第1駆動源及び前記第2駆動源の少なくともいずれかの前記回転動力が伝達される、請求項1又は2に記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記動力伝達機構は、
前記第1回転体の前記ギヤ歯と噛合して、前記第1ポンプに前記第1駆動源の前記回転動力を入力する第1ポンプ用ギヤと、
前記第2回転体の前記ギヤ歯と噛合して、前記第2ポンプに前記第1駆動源及び前記第2駆動源の前記回転動力を入力する第2ポンプ用ギヤと、を更に有し、
前記第1ポンプ用ギヤ及び前記第2ポンプ用ギヤの各々は、対応するポンプを駆動し且つ同一の回転軸線上に配置された、個別の軸体に接続されている、請求項3に記載のパワーユニット。
【請求項5】
前記動力伝達機構は、
前記第1ポンプに前記
第1駆動源の前記回転動力を入力する第1入力軸と、
前記第2ポンプに前記
第1駆動源、及び、前記第2駆動源の前記回転動力を入力する第2入力軸と、を有し、
前記第1入力軸及び前記第2入力軸は、一方が、他方に挿入されて、前記他方に対して相対的に回転軸線回りを回転可能に配置される、請求項
1~4のいずれか1項に記載のパワーユニット。
【請求項6】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプは、同一の流体を流体取入口から取り入れて各々の対象に供給するように配置される、請求項
1~5のいずれか1項に記載のパワーユニット。
【請求項7】
前記第1ポンプは、圧力伝達対象に圧力伝達流体を供給して前記圧力伝達対象を駆動する圧力伝達ポンプであり、
前記第2ポンプは、潤滑対象に潤滑流体を供給して前記潤滑対象を潤滑する潤滑ポンプであって、
前記
第1駆動源、及び、前記第2駆動源は、エンジン及び電動モータを含み、
前記動力伝達機構は、
前記エンジンと前
記電動モータとの前記回転動力を前記潤滑ポンプに伝達し、
前記エンジンの前記回転動力を前記圧力伝達ポンプに伝達する、請求項
1に記載のパワーユニット。
【請求項8】
前記エンジンに接続される変速機を備え、
前記圧力伝達対象は、前記エンジンと前記変速機との間の動力伝達状態を、接続状態と遮断状態との間で切り替える圧力駆動式のクラッチを含み、
前記動力伝達機構は、前記クラッチにおける前記遮断状態での動力遮断位置よりも前記エンジン側となる部分の動力を前記圧力伝達ポンプに伝達する、請求項
7に記載のパワーユニット。
【請求項9】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが、互いに異なる回転数で駆動される、請求項1~8のいずれか1項に記載のパワーユニット。
【請求項10】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプのうち、高回転数で駆動される一方のポンプは、他方のポンプよりも高出力
、又は、低脈動が要求されるポンプである、請求項
9に記載のパワーユニット。
【請求項11】
駆動輪と、
請求項1~
10のいずれかに記載のパワーユニットと、を備え、
前記
第1駆動源、及び、前記第2駆動源
の各々が、前記駆動輪に前記回転動力を伝達する、車両
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーユニット及びパワーユニットを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行用の駆動源と、この駆動源により回転駆動されるポンプとを備える車両用のパワーユニットが開示される。このパワーユニットでは、ポンプの回転駆動により、内燃機関の潤滑が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したパワーユニットでは、ポンプの回転量が、駆動源の駆動状況によって変化し、必要以上にポンプが駆動されてしまう場合がある。この場合、不所望なポンプの駆動に起因して駆動源のエネルギーが消費される。これにより、ポンプ以外の駆動対象を駆動するために用いられるべきエネルギーのロスが生じる場合がある。
【0005】
そこで本開示は、駆動源によりポンプを回動駆動するパワーユニットにおいて、不所望なポンプの駆動に起因して生じるエネルギーのロスを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るパワーユニットは、ポンプとは異なる駆動対象に回転動力を出力する少なくとも1つの駆動源と、前記駆動源の前記回転動力により回転駆動される第1ポンプと、前記駆動源の前記回転動力により回転駆動され、前記第1ポンプとは異なる第2ポンプと、前記第1ポンプと前記第2ポンプとに対し、前記駆動源の前記回転動力を伝達する動力伝達機構と、を備え、前記動力伝達機構は、複数の伝達部を有し、前記複数の伝達部のうちの異なる伝達部を介し、前記第1ポンプと前記第2ポンプとに前記回転動力を個別に伝達する。
【0007】
上記構成によれば、動力伝達機構は、複数の伝達部のうちの異なる伝達部を介し、第1ポンプと第2ポンプとに駆動源の回転動力を個別に伝達する。このため、第1ポンプと第2ポンプとに対して適切な回転動力を与え易くできる。これにより、不所望なポンプの駆動に起因して生じるエネルギーのロスを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、駆動源によりポンプを回動駆動するパワーユニットにおいて、不所望なポンプの駆動に起因して生じるエネルギーのロスを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る車両の右側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の車両の全体的な動力伝達経路を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1の車両の動力系統の部分的な模式図である。
【
図4】
図4は、
図2の圧力伝達ポンプと潤滑ポンプとの潤滑ポンプ側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2の圧力伝達ポンプと潤滑ポンプとの圧力伝達ポンプ側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例に係る圧力伝達ポンプ用ギヤと潤滑ポンプ用ギヤとの模式図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る車両の動力系統の部分的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。以下に記載する各方向は、車両11の搭乗者から見た方向を基準とする。また、以下に記載する駆動源は、断りのない限り走行用の駆動源とする。
(第1実施形態)
本開示のパワーユニット1は、様々な形態において利用可能である。第1実施形態のパワーユニット1は、一例として車両11に搭載される。
図1は、第1実施形態に係る車両11の右側面図である。
図2は、
図1の車両11の全体的な動力伝達経路を示す模式図である。
図3は、
図1の車両11の動力系統の部分的な模式図である。
【0011】
本実施形態の車両11は、複数の走行用の駆動源が搭載されたハイブリッド型である。複数の駆動源は、種類の異なるものを含む。一例として、複数の駆動源は、2つの駆動源を含む。この場合、複数の駆動源のうち一方の駆動源は、エンジン(内燃機関)Eであり、他方の駆動源は、電動モータMである。また本実施形態では、車両11は、搭乗者が跨って乗る鞍乗車両であり、自動二輪車である。車両11は、搭乗者の操作により、走行に用いられる駆動源が選択可能に構成される。具体的には、車両11は、電動モータMのみが駆動源として走行に用いられる第1モードと、少なくともエンジンEが駆動源として走行に用いられる第2モードとで切替可能に構成される。
【0012】
図1~3に示すように、車両11は、前輪2と、後輪3(駆動輪)と、車体フレーム4と、前輪2を車体フレーム4の前部に接続するフロントサスペンション5と、後輪3を車体フレーム4の後部に接続するリアサスペンション6と、後輪3を支持するスイングアーム18とを備える。フロントサスペンション5は、上下方向に離隔して配置されたブラケット7に連結される。ブラケット7には、前輪2を操舵する操舵軸が接続される。操舵軸は、車体フレーム4のヘッドパイプ4aに角変位可能に支持される。操舵軸には、運転者が握るハンドル8が接続される。スイングアーム18は、長手方向の一端部において車体に揺動自在に軸支され、他端部において後輪3を回転自在に軸支する。車体フレーム4には、エンジンEに供給される燃料を貯留する燃料タンク9と、運転者が着座するシート10とが設けられる。エンジンEの前部には、排気管46の一端が接続される。排気管46は、エンジンEの下方を通って後方に向けて延びている。
【0013】
車両11は、パワーユニット1、変速機12、動力伝達機構21、及び切替装置を更に備える。パワーユニット1は、ポンプとは異なる駆動対象に回転動力を出力する少なくとも1つの駆動源を備える。この駆動源は、走行用駆動源であり、本実施形態では、エンジンEと電動モータMとを含む。エンジンEと電動モータMとの回転動力は、後述する変速機12を介して後輪3に伝達される。本実施形態のパワーユニット1は、エンジンEと、電動モータMと、変速機12とが一体に構成される。パワーユニット1は、後述するポンプP1、P2を駆動するための専用の電動モータを備えていない。
【0014】
エンジンEは、内部にクランク軸16が配置され且つ潤滑流体が供給されるクランクケース26と、クランクケース26の内部を潤滑した潤滑流体を貯留する貯留パン(本実施形態ではオイルパン)27とを有する。一例として、クランクケース26の内部空間には、変速機12が収容される。エンジンEは、後述するクラッチCを介して回転動力が変速機12に入力される。変速機12は、エンジンEに接続される。変速機12は、外部から回転動力が入力される入力軸S1と、減速比の異なる複数組のギヤ列15と、回転動力を外部に出力する出力軸S2とを有する。
【0015】
ギヤ列15は、入力軸S1から出力軸S2に伝達される回転動力を変速する。ギヤ列15は、入力軸S1の軸方向一端側に配置される。変速機12は、ギヤ列15のうち選択された任意の一組により回転動力を変速する。変速機12は、ギヤ列15のうちのいずれかの組が選択されることで変速比が変更される。変速機12は、ギヤの噛合いによって入力軸S1から出力軸S2へ回転動力が伝達される。出力軸S2の回転動力は、車両11が備える動力伝達体17を介して後輪3に伝達される。変速機12は、入力軸S1から出力軸S2への動力伝達が遮断されたニュートラル状態でも変速比を切替可能に構成される。本実施形態の変速機12は、ドッグクラッチ式である。
【0016】
電動モータMは、回転動力がクラッチCを介さずに入力軸S1に伝達される。電動モータMは、クラッチCの動力切断部分に対して駆動源から後輪3までの動力伝達経路の下流側の部位に、回転動力を伝達する。これにより、クラッチCの状態に関わらず、入力軸S1に電動モータMの回転動力が伝達される。車両11では、クラッチCが遮断状態に切り替えられることで、エンジンEに設けられる可動部分を不所望に動作させることなく、電動モータM単独により、走行用駆動力が得られる。
【0017】
動力伝達機構21は、各駆動源からの回転動力を入力軸S1に伝達する。動力伝達機構21は、後述する第1ポンプと第2ポンプとに対し、駆動源の回転動力を伝達する。動力伝達機構21は、エンジンEからの回転動力を入力軸S1に伝達するエンジン側伝達機構部43と、電動モータMからの回転動力を入力軸S1に伝達するモータ側伝達機構部44とを含む。エンジン側伝達機構部43は、エンジンEからの回転動力が伝達され、入力軸S1の回転軸線X1回りに回転するプライマリギヤ20と、プライマリギヤ20に接続されるクラッチCとを含む。
【0018】
モータ側伝達機構部44は、電動モータMのモータ軸S5に設けられたモータ側スプロケットギヤ28と、入力軸S1に固定された入力軸側スプロケットギヤ22と、ギヤ22、28に掛け渡された動力伝達体19とを有する。プライマリギヤ20と入力軸側スプロケットギヤ22とには、入力軸S1が挿通される貫通孔が形成される。ギヤ20、22は、この貫通孔に入力軸S1が挿通される。ギヤ20、22は、各回転軸線が入力軸S1の回転軸線X1と一致する。
【0019】
入力軸側スプロケットギヤ22は、入力軸S1と共回りする回転体として構成され、入力軸S1に軸支される。入力軸側スプロケットギヤ22は、入力軸S1に挿通された筒部22aと、筒部22aから入力軸S1の径方向外方に延びて動力伝達体19と噛合う噛合部22bとを有する。モータ側スプロケットギヤ28の回転動力は、動力伝達体19から噛合部22bに伝達される。これによりモータ側伝達機構部44は、入力軸S1に固定される回転体に対して、電動モータMの回転動力を伝達する。またモータ側伝達機構部44は、電動モータMに対して、入力軸S1に固定される回転体の回転動力を伝達する。これにより、電動モータMは発電する。このように本実施形態では、モータ側伝達機構部44により、入力軸S1とモータ軸S5との間で相互に回転動力が伝達される。動力伝達体17、19は、一例として、チェーン、ベルト、又はドライブシャフト等を含む。
【0020】
プライマリギヤ20は、入力軸S1に対して相対回転する回転体として構成され、入力軸S1に軸支される。プライマリギヤ20は、クランク軸16の回転動力をクラッチCに伝達する。本実施形態のプライマリギヤ20は、滑り軸受B2を介して入力軸S1に軸支される。本実施形態では、滑り軸受B2と入力軸S1との間に筒状のスペーサ13が設けられている。
【0021】
プライマリギヤ20は、筒部20aと、主ギヤ部20bと、副ギヤ部20cと、延長部20dとを有する。筒部20aは、筒状に形成されて入力軸S1に挿通される。主ギヤ部20bは、円板状に形成されて、筒部20aから入力軸S1の径方向外方に延びる。主ギヤ部20bのギヤ歯は、クランク軸16に設けられた出力ギヤのギヤ歯と噛み合う。副ギヤ部20cは、円板状に形成され、主ギヤ部20bの外周から入力軸S1の径方向外方に延びる。副ギヤ部20cは、主ギヤ部20bに対してクラッチCとは反対側に位置し、主ギヤ部20bの側部に固定される。副ギヤ部20cは、後述する圧力伝達ポンプ用ギヤ24に回転動力を伝達する。延長部20dは、筒部20aから入力軸S1の径方向外方に延び、副ギヤ部20cに対して筒部20aとは反対側に位置し、筒部20aに固定される。筒部20a、主ギヤ部20b、副ギヤ部20c、及び延長部20dは、相対的に固定されればよく、一体的に構成されていてもよい。また、筒部20a、主ギヤ部20b、副ギヤ部20c、及び延長部20dのうち、少なくともいずれかが他と別体に構成されていてもよい。
【0022】
クランク軸16に設けられた出力ギヤが、主ギヤ部20bに噛み合うことによって、クランク軸16の回転動力がプライマリギヤ20に伝達される。後述するように、プライマリギヤ20は、副ギヤ部20cを介して、圧力伝達ポンプ用ギヤ24に噛み合う。これによって、エンジンEの回転動力が圧力伝達ポンプP1に伝達される。従って副ギヤ部20cは、動力伝達機構21のうちで、圧力伝達ポンプP1にエンジンEの回転動力を伝達するための圧力伝達ポンプ用の伝達部である。プライマリギヤ20から圧力伝達ポンプP1に回転動力が伝達されることで、クラッチCが遮断状態であって、入力軸S1にエンジンEの回転動力が伝達されない場合でも、エンジンWの回転動力を圧力伝達ポンプP1に伝達できる。
【0023】
切替装置は、単一の駆動源と、ポンプとは異なる駆動対象との間の動力伝達状態を、接続状態と遮断状態との間で切り替える。切替装置は、一例として油圧回路を有する。本実施形態の切替装置は、クラッチCを含む。
【0024】
クラッチCは、エンジンEと変速機12との間の動力伝達状態を、接続状態と遮断状態との間で切り替える。クラッチCは、入力軸S1の軸方向一端側に配置される。具体例として、クラッチCは、圧力駆動式である。クラッチCは、引張りコイルバネを有する。クラッチCは、圧力伝達流体の圧力が付与されない自然状態では、摩擦板同士が非接触となり、単一の駆動源から駆動対象への動力伝達がされない遮断状態が維持される。クラッチCは、圧力伝達流体の圧力が付与されると、引張りコイルバネを圧縮する方向に摩擦板が移動し、摩擦板同士が接触する。これによりクラッチCは、摩擦板間に作用する摩擦力により、単一の駆動源から駆動対象に動力伝達される接続状態となる。クラッチCが接続状態であれば、エンジンEの回転動力は、出力軸S2から後輪3に伝達される。言い換えるとエンジンEは、クラッチCの動力切断部分に対して、駆動源から後輪3までの動力伝達経路の上流側の部位に回転動力を伝達する。これにより、クラッチCが遮断状態であれば、エンジンEの回転動力が入力軸S1に伝達されるのが阻止される。クラッチCとしては、既存構造のものを採用できる。本実施形態のクラッチCは、油圧駆動式の多板クラッチである。
【0025】
具体例として、車両11は、オイル制御バルブ(OCV)であってクラッチCに圧力伝達流体を供給し又は当該供給を遮断する電磁制御バルブ41と、電磁制御バルブ41を制御するECU42とを更に備える。車両11の駆動時には、圧力伝達ポンプP1によって圧力エネルギーが高められた圧力伝達流体が電磁制御バルブ41に導かれる。ECU42は、予め定められた接続条件が満足したと判定すると、電磁制御バルブ41を解放するように制御する。これにより、圧力伝達流体がクラッチCに供給され、クラッチCの複数の摩擦板が互いに押し付けられる方向に移動し、クラッチCが遮断状態から接続状態に移行する。またECU42は、予め定められた遮断条件が満足したと判定すると、電磁制御バルブ41を閉塞するように制御する。これにより、クラッチCへの圧力伝達流体の供給が遮断される。クラッチCは、引張りコイルバネの圧縮が解放されて、複数の摩擦板が互いに離れる。これにより、クラッチCは接続状態から遮断状態に復帰する。
【0026】
車両11は、クラッチCが遮断状態から接続状態に切り替えられることで、エンジンEの回転動力を入力軸S1に付与できる。このため、少なくともエンジンEにより走行可能である。また車両11は、クラッチCが接続状態の場合、例えば、エンジンEと電動モータMとの回転動力を共に入力軸S1に付与して走行用駆動力として用いたり、エンジンEの回転動力を走行用駆動力として用いると共に電動モータMの回転動力を発電用動力として用いることができる。また車両11は、例えば、クラッチCを接続状態とすると共に変速機12をニュートラル状態とすることで、エンジンEの回転動力を、走行用駆動力ではなく電動モータMにより発電するための発電用動力として用いることができる。このように本実施形態では、クラッチCと変速機12との状態を切り替えることによって、駆動源からの動力伝達経路を切り替えることができる。
【0027】
クラッチCには、プライマリギヤ20が隣接して配置される。プライマリギヤ20は、入力軸S1の軸方向において、クラッチCとギヤ列15との間に配置される。より詳細には、入力軸S1は、エンジンEのクランクケースに支持された軸受B1によって回転可能に軸支される。軸受B1は、入力軸S1の回転軸線X1方向に離れた2つの位置に設けられる。2つの軸受B1の間には、複数のギヤ列15が配置される。また入力軸S1は、2つの軸受B1のうちの軸方向一端側の軸受B1よりも軸方向一端側へ突出する。その入力軸S1の突出部分には、プライマリギヤ20とクラッチCとが接続される。入力軸S1と出力軸S2とは、1以上の軸受B1により、変速機12のケース内部で軸支される。
【0028】
図2及び3に示すように、パワーユニット1は、駆動源の回転動力により回転駆動される第1ポンプと、駆動源の回転動力により回転駆動され、第1ポンプとは異なる第2ポンプを更に備える。第1ポンプ及び第2ポンプは、パワーユニット1内を循環する循環液を循環させる流体ポンプである。第1ポンプ及び第2ポンプは、走行用の駆動源であるエンジンE及び電動モータMの少なくとも一方から与えられる回転動力により駆動する。
【0029】
本実施形態の第1ポンプは、圧力伝達対象に圧力伝達流体を供給して圧力伝達対象を駆動する圧力伝達ポンプP1である。圧力伝達対象は、圧力伝達流体を介して与えられる圧力エネルギーによって動作する装置である。本実施形態の圧力伝達対象は、クラッチCを含む。また圧力伝達対象は、車両11をエンジンEの駆動力により走行させるために必要な装置を含む。動力伝達機構21は、クラッチCにおける遮断状態での動力遮断位置よりもエンジンE側となる部分の動力を圧力伝達ポンプP1に伝達する。
【0030】
本実施形態の第2ポンプは、潤滑対象に潤滑流体を供給して潤滑対象を潤滑する潤滑ポンプP2である。潤滑ポンプP2によって供給される潤滑流体は、潤滑対象として、エンジンEと変速機12との複数の摺動部分を潤滑する。また潤滑流体は、エンジンE内の駆動より発熱する発熱部分を冷却する。例えば潤滑対象は、クランク軸16、入力軸S1、出力軸S2を軸支する軸受、及び歯車対の歯面等を含む。また例えば発熱部分は、エンジンEのシリンダ摺動面、ピストン、電動モータMのコイル部分等を含む。潤滑ポンプP2は、貯留パン27に貯留される潤滑流体を吸引して、潤滑部分又は発熱部分に圧送するための潤滑流体の圧力を生じさせる。潤滑流体は、潤滑部分に供給された後、自重によって貯留パン27に向けて流れ落ちる。
【0031】
潤滑流体は、エンジンオイルとも称する。本実施形態では、圧力伝達ポンプP1が供給する圧力伝達流体と、潤滑ポンプP2が供給する潤滑流体とは、共通のエンジンオイルによって実現される。従って、貯留パン27に貯留されるエンジンオイルが、各ポンプP1、P2によって吸引され、ポンプP1、P2毎に供給される供給対象に供給される。
【0032】
動力伝達機構21は、駆動源からの回転動力を潤滑ポンプP2に伝達するため、第1ワンウェイクラッチO1、第2ワンウェイクラッチO2、及び共通ギヤ23を更に有する。共通ギヤ23は、動力伝達機構21のうちで、潤滑ポンプP2に回転動力を伝達するための潤滑ポンプP2用の伝達部である。
【0033】
具体例として、第1ワンウェイクラッチO1は、プライマリギヤ20の延長部20dの外周に外嵌され、その内輪が、延長部20dに固定される。第2ワンウェイクラッチO2は、入力軸S1に固定される筒状のスペーサ14の外周に外嵌され、その内輪が、スペーサ14に固定される。ワンウェイクラッチO1、O2は、回転軸線X1方向に並んで配置され、それぞれ相対回転可能に構成される。本実施形態では、スペーサ14と入力軸側スプロケットギヤ22とは、軸受B1とプライマリギヤ20とに挟まれて位置決めされている。ワンウェイクラッチO1、O2と入力軸S1との間にスペーサ14を介在させることで、ワンウェイクラッチO1、O2の各内輪の内周面の位置を揃え易くできる。
【0034】
共通ギヤ23は、筒状に形成されて、ワンウェイクラッチO1、O2の両方の外周に外嵌される。共通ギヤ23は、ワンウェイクラッチO1、O2の両方の外周に噛み合う内周面が形成される。また共通ギヤ23は、ギヤ歯が外周に配置された環状に構成される。共通ギヤ23の外周のギヤ歯には、後述する潤滑ポンプ用ギヤ25が噛み合う。これによってワンウェイクラッチO1、O2の各々は、共通ギヤ23を介して、内輪側から与えられた回転動力を潤滑ポンプP2に伝達する。
【0035】
ワンウェイクラッチO1、O2は、内輪側の回転数が外輪側の回転数よりも高い場合に、内輪側から外輪側に動力を伝達する。言い換えると、外輪側の回転数が内輪側の回転数よりも高い場合、外輪側から内輪側への動力伝達が阻止される。ワンウェイクラッチO1、O2としては、既存構造を有するものを用いることができる。例えば、内輪と外輪との間に輪留部材が介在するワンウェイクラッチO1、O2において、上記した機能が得られる。本実施形態のパワーユニット1では、副ギヤ部20cと入力軸側スプロケットギヤ22とにより、ワンウェイクラッチO1、O2を収容する収容空間が形成されている。
【0036】
本実施形態の第1ワンウェイクラッチO1は、プライマリギヤ20の主ギヤ部20bを介して伝達されるエンジンEの回転動力を共通ギヤ23に伝達する。第2ワンウェイクラッチO2は、入力軸S1を介して伝達される回転動力を共通ギヤ23に伝達する。入力軸S1は、エンジンEの他、電動モータMや、後輪(駆動輪)3から与えられる動力によっても回転する。従って第2ワンウェイクラッチO2は、エンジンE、電動モータM、及び後輪(駆動輪)3から与えられる動力のいずれか、又は、これらの動力の2つ以上を複合した動力を共通ギヤ23に伝達する。
【0037】
このように、エンジンEの回転動力が、第1ワンウェイクラッチO1を介して潤滑ポンプP2に伝達される。また、入力軸S1の回転動力(例えば電動モータMの回転動力)が、第2ワンウェイクラッチO2を介して潤滑ポンプP2に伝達される。上記するワンウェイクラッチO1、O2の機能によって、プライマリギヤ20と入力軸S1とで回転数が大きい方の回転動力が潤滑ポンプP2に伝達される。
【0038】
上記したように、動力伝達機構21のうちで、圧力伝達ポンプP1に回転動力を伝達する伝達部(副ギヤ部20c)と、潤滑ポンプP2に回転動力を伝達する伝達部(共通ギヤ23)とは異なっている。具体的に各伝達部は、互いに動力の取り出し部分が異なる。言い換えると各伝達部は、対応するポンプP1、P2に回転動力を伝達する動力伝達経路、及び、動力伝達経路を伝達される動力の状態が異なる。これによって各伝達部は、一方に対して他方が相対回転可能となる。また各伝達部のうち、一方の伝達部に対して他方の伝達部の回転動力の周速度を異ならせることができる。
【0039】
動力伝達機構21は、圧力伝達ポンプP1にエンジンEの回転動力を入力する圧力伝達ポンプ用ギヤ24と、潤滑ポンプP2にエンジンEと電動モータMとの回転動力を入力する潤滑ポンプ用ギヤ25とを更に有する。また動力伝達機構21は、第1ポンプに駆動源の回転動力を入力する第1入力軸S3と、第2ポンプに駆動源の回転動力を入力する第2入力軸S4とを更に有する。第1入力軸S3の軸方向一端には、圧力伝達ポンプ用ギヤ24が連結される。第2入力軸S4の軸方向一端には、潤滑ポンプ用ギヤ25が連結される。
【0040】
圧力伝達ポンプ用ギヤ24は、副ギヤ部20cと噛合っている。潤滑ポンプ用ギヤ25は、共通ギヤ23と噛合う。ギヤ24、25は、互いに隣接して配置される。本実施形態のギヤ24、25は、同一の回転軸線X2上に配置される。ギヤ24、25は、互いに個別に回転可能に配置される。潤滑ポンプ用ギヤ25は、第2入力軸S4と共に回転する。圧力伝達ポンプ用ギヤ24は、第1入力軸S3と共に回転する。本実施形態のパワーユニット1では、副ギヤ部20cが、共通ギヤ23の外周のギヤ歯に向けて傾斜するように配置される。これにより、ギヤ24、25を回転軸線X2方向に近接して配置し易くなっている。また、プライマリギヤ20と入力軸側スプロケットギヤ22との間に、ギヤ24、25をまとめて配置し易くなっている。
【0041】
第1入力軸S3及び第2入力軸S4は、一方が、他方に挿入されて、他方に対して相対的に回転軸線X2回りを回転可能に配置される。本実施形態では、前記一方が第1入力軸S3であり、前記他方が第2入力軸S4である。これにより、入力軸S3、S4は、互いに相対回転可能に配置される。第2入力軸S4は、クランクケース26の内部に軸支される。第1入力軸S3は、第2入力軸S4に軸支される。このように本実施形態では、入力軸S3、S4は、クランクケース26により保護される。また入力軸S3、S4をクランクケース26内に配置することで、入力軸S3,S4のシール性を確保し易くできる。また、第1入力軸S3の専用の支持構造を設ける場合に比べて、第1入力軸S3の支持構造を簡略化できる。
【0042】
図4は、
図2の圧力伝達ポンプP1と潤滑ポンプP2との潤滑ポンプP2側から見た斜視図である。
図5は、
図2の圧力伝達ポンプP1と潤滑ポンプP2との圧力伝達ポンプP1側から見た斜視図である。
図3~5に示されるように、本実施形態のポンプP1、P2は、一例としてギヤポンプである。またポンプP1、P2は、一例として自吸式である。
【0043】
潤滑ポンプP2は、第2入力軸S4に連結されるインナーロータ32と、インナーロータ32と組み合わされるアウターロータ34と、アウターロータ34の外周を覆うスリーブ36とを有する。圧力伝達ポンプP1は、第1入力軸S3に連結されるインナーロータ33と、インナーロータ33と組み合わされるアウターロータ35と、アウターロータ35の外周を覆うスリーブ37とを有する。ポンプP1、P2は、回転軸線X2回りを回転するように駆動される。
【0044】
第1入力軸S3の軸方向他端は、第2入力軸S4の軸方向他端から露出している。圧力伝達ポンプP1は、この第2入力軸S4から露出した第1入力軸S3の部分に固定される。これによりパワーユニット1では、ギヤ24、25、ポンプP1、P2、入力軸S3、S4が回転軸線X2上に配置される。これにより、ギヤ24、25、ポンプP1、P2、入力軸S3、S4の配置スペースのコンパクト化が図られている。
【0045】
本実施形態の圧力伝達ポンプ用ギヤ24は、潤滑ポンプ用ギヤ25よりもクラッチC側に配置される。またギヤ24、25は、回転軸線X1を挟んで電動モータMとは反対側に配置される。ギヤ24、25は、互いに外径と歯数とが異なっている。これによりポンプP1、P2は、互いに異なる回転数で駆動される。ポンプP1、P2の各回転数は、適宜設定可能である。本実施形態では、エンジンEの回転動力が伝達される場合、エンジンEからギヤ24、25までの各変速比は同一に設定される。エンジンEからギヤ24、25までの各変速比は、互いに異なっていてもよい。この場合、例えば、圧力伝達ポンプP1の増速比を潤滑ポンプP2の増速比に比べて大きくしてもよい。これにより、圧力伝達ポンプP1が供給する圧力伝達流体の圧力変動を抑制できると共に、圧力伝達流体の速やかな昇圧を図れる。また、潤滑ポンプP2の増速比を小さくすることで、エンジンEや変速機12が低回転のときの潤滑対象の潤滑が過剰となるのを抑制できる。
【0046】
本実施形態の回転軸線X2は、回転軸線X1と平行に延びている。ポンプP1、P2は、入力軸S1に対して、プライマリギヤ20が接続される軸方向端部(軸方向一端)側の位置に配置される。またポンプP1、P2は、入力軸S1のクラッチC側に配置される。潤滑ポンプP2は、圧力伝達ポンプP1よりもクラッチC側に配置される。
【0047】
またポンプP1、P2は、ギヤ22、28に掛け渡される動力伝達体19が、入力軸側スプロケットギヤ22からモータ側スプロケットギヤ28に向かう側とは反対側に配置される。これにより、ポンプP1、P2と動力伝達体19との干渉が防止されている。またポンプP1、P2は、入力軸S1よりも下方に配置される。これにより、ポンプP2を貯留パン27に近接配置できる。
【0048】
ポンプP1、P2は、貯留パン27のうち、深さ寸法が他方よりも深くなっている部分に近接配置される。言い換えるとポンプP1、P2は、排気管46がエンジンEの下方を前後方向に通過する領域に対して、回転軸線X1方向にずれた位置に配置される。入力軸S1の前記軸方向一端側から見て、ポンプP1、P2は、少なくとも一部がクラッチCと重なるように配置される。これにより、パワーユニット1におけるポンプP1、P2の配置スペースのコンパクト化が図れる。
【0049】
図4及び5に示されるように、潤滑ポンプP2は、インナーロータ32とアウターロータ34との間に流体を取り入れる流体取入口30と、インナーロータ32とアウターロータ34の間で圧送される流体を吐出する流体排出口38とを有する。圧力伝達ポンプP1は、インナーロータ33とアウターロータ35との間に流体を取り入れる流体取入口31と、インナーロータ33とアウターロータ35の間で圧送される流体を吐出する流体排出口39とを有する。
【0050】
本実施形態では、2つの流体取入口30、31のうちの一方が、他方を兼ねる。これにより、流体取入口をポンプP1、P2毎に個別に設ける場合と比べて、ポンプP1、P2の構成を簡素化できる。本実施形態のパワーユニット1は、2つのインナーロータ32、33の間に配置された流路プレート40を更に有する。流路プレート40は、一対をなす第1面40aと第2面40bとを有する。第1面40aには、第1供給路40c、第1排出路40d、第1流体取入口40e(流体取入口30)、及び第1流体排出口40f(流体排出口38)が形成される。第2面40bには、第2供給路40g、第2排出路40h、第2流体取入口40i(流体取入口31)、及び第2流体排出口40j(流体排出口39)が形成される。
【0051】
流路プレート40では、第1供給路40cと第2供給路40gとの流体流通方向の各上流側端部が、流路プレート40の厚み方向に連通している。流体取入口40e、40iには、同様の流体が吸入される。即ち本実施形態では、圧力伝達流体と潤滑流体とは同一の流体である。言い換えると、圧力伝達流体は潤滑流体を兼ねている。
【0052】
2つの供給路40c、40gと2つの排出路40d、40hとは、インナーロータ32、33とアウターロータ34、35との間に流体を流通可能に、インナーロータ32、33とアウターロータ34、35とにより覆われている。第1流体排出口40fと第2流体排出口40jとは、流路プレート40の第1面40aと第2面40bとに沿って互いに離隔した位置に配置される。第1流体排出口40fと第2流体排出口40jとは、互いに連通せず、各々に接続された外部の流路に向けて流体を排出する。車両11では、流路プレート40により、ポンプP1、P2の流体の流路の配置スペースのコンパクト化が図られている。
【0053】
ポンプP1、P2の駆動時には、ポンプP1、P2は、同一の回転軸線X2上で回転駆動されながら、同一の流体が同一の流体取入口30、31(40e、40i)から内部に取り入れられる。流体取入口30から取り入れられた流体は、インナーロータ32とアウターロータ34との間で圧送されながら第1供給路40c内と第1排出路40d内とを順に流通し、第1流体排出口40fから排出されて、潤滑対象に供給される。また、流体取入口31から取り入れられた流体は、インナーロータ33とアウターロータ35との間で圧送されながら第2供給路40g内と第2排出路40h内とを順に流通し、第2流体排出口40jから排出されて、圧力駆動対象に供給される。
【0054】
ここで車両11は、クラッチCが遮断状態にある場合、電動モータMと後輪3との間の動力伝達経路が、停止中のエンジンEと圧力伝達ポンプP1との間の動力伝達経路と接触することで電動モータMから後輪3への動力伝達が阻害されるのを防止できる。即ち車両11では、クラッチCに圧力伝達流体の圧力が付与されない遮断状態では、エンジンEと入力軸S1との間の動力伝達が遮断される。エンジンEの停止中は圧力伝達ポンプP1は停止するため、クラッチCに圧力伝達流体の圧力が付与されず、エンジンEと後輪3との間の動力伝達経路は遮断される。よって、電動モータMと後輪3との間の動力伝達経路が、停止中のエンジンEと圧力伝達ポンプP1との間の動力伝達経路と接触することで電動モータMから後輪3への動力伝達が阻害されるのを防止するためのフェイルセーフ機能を車両11に別途設けなくても、車両11を安定して走行できる。
【0055】
以上説明したように、パワーユニット1は、少なくとも1つの駆動源と、第1ポンプと、第2ポンプと、動力伝達機構21とを備える。動力伝達機構21は、複数の伝達部を有し、複数の伝達部のうちの異なる伝達部を介し、第1ポンプと第2ポンプとに回転動力を個別に伝達する。また動力伝達機構21は、複数の伝達部のうちの異なる伝達部(本実施形態では副ギヤ部20c、共通ギヤ23)を介し、第1ポンプと第2ポンプとに駆動源の回転動力を個別に伝達する。
【0056】
このため、第1ポンプと第2ポンプとに対して適切な回転動力を与え易くできる。例えば、第1ポンプと第2ポンプとに対して駆動源の回転動力を異ならせて伝達できる。これにより、第1ポンプと第2ポンプとの不所望な回転を低減できる。また、不所望な回転を低減することで、第1ポンプと第2ポンプとの振動を抑制でき、第1ポンプと第2ポンプとを安定して駆動できる。よって、不所望なポンプの駆動に起因して生じるエネルギーのロスを抑制できる。
【0057】
また本実施形態では、第1ポンプは圧力伝達ポンプP1であり、第2ポンプは潤滑ポンプP2である。潤滑ポンプP2は、パワーユニット1が動作している間は継続して動作させる必要がある。また潤滑ポンプP2は、パワーユニット1の出力増加に比例した回転が望まれる傾向がある。これに対して圧力伝達ポンプP1は、パワーユニット1の出力にかかわらずに圧力駆動対象を駆動させる範囲内での回転が望まれる傾向にある。このように求められる機能が異なる2つのポンプP1、P2に対し、各々に適した回転動力を与えることで、不所望なポンプ駆動を抑制できる。また、エネルギーロスを防止できる。
【0058】
またパワーユニット1は、複数の駆動源を有し、動力伝達機構21は、第1ポンプ及び第2ポンプのうちの一方のポンプに対し、伝達部を介して、複数の駆動源のうちの単一の駆動源の回転動力を伝達する。これによって、単一の動力源が駆動していない場合には、一方のポンプの駆動を停止できる。よって、第1ポンプの停止に起因するロス低減を図れる。例えば一方のポンプとして、他方のポンプに比べて駆動機会が少ないものが選ばれることで、ポンプの不所望な駆動を低減でき、エネルギーロスを低減できる。
【0059】
具体的には、第1ポンプ及び第2ポンプのうちの一方のポンプである圧力伝達ポンプP1に対し、副ギヤ部20cを介して、複数の駆動源のうちの単一の駆動源となるエンジンEの回転動力を伝達する。これにより圧力伝達ポンプP1は、エンジンE以外である電動モータMでは駆動されないように設定できる。よって、潤滑ポンプP2に比べて継続駆動が不要な圧力伝達ポンプP1に不所望な駆動機会が生じるのを防止できる。よって、圧力伝達ポンプP1の駆動に起因するエネルギーロスを防止できる。
【0060】
また前記一方のポンプは、圧力伝達ポンプP1であり、圧力伝達対象は、前記単一の駆動源と駆動対象との間の動力伝達状態を、接続状態と遮断状態との間で切り替える切替装置である。圧力伝達ポンプP1は、切替装置の駆動力となる圧力エネルギーを生成する。
【0061】
上記構成によれば、前記単一の駆動源の回転動力を駆動対象に伝達する伝達経路を、前記一方の動力源が駆動しないと接続されないようにパワーユニット1を構成できる。よって、不所望に駆動源の回転動力が動力伝達経路に伝達されるのを防止できる。具体的には、前記単一の駆動源であるエンジンEにより駆動される圧力伝達ポンプP1は、エンジンEと変速機12との間の動力伝達状態を接続状態と遮断状態との間で切り替えるクラッチCに圧力伝達流体を供給する。これにより、エンジンEが駆動されない限り、クラッチCによる動力伝達状態の切替は行なわれない。このため、予期せずに動力伝達状態が切り替わることを防止し易くできる。
【0062】
また、第1ポンプ及び第2ポンプのうちの他方のポンプは、潤滑ポンプP2であり、複数の駆動源の各々からの回転動力が与えられる。これにより、複数の駆動源の各々により潤滑ポンプP2を駆動し、前記一方のポンプに比べて潤滑ポンプP2の駆動機会を増やすことができる。
【0063】
これにより、例えば、前記他方のポンプとして潤滑ポンプP2が用いられることで、潤滑機会を増やすことができる。よって、摺動部分や発熱部分への供給流体の供給不足を防止できる。従って、潤滑対象を潤滑流体により安定して潤滑できる。特に本実施形態では、各々の駆動源により前記他方のポンプの駆動を実現できると共に、複数の駆動源のうちいずれか1つの駆動源が駆動されることで、他の駆動源が停止しても潤滑ポンプP2を駆動できる。よって、前記他方のポンプの駆動機会が減るのを更に抑制できる。更に本実施形態では、後輪3が路面から受ける力によって入力軸S1が回転されることでも、潤滑ポンプP2を駆動できる。よって、更に前記他方のポンプの駆動機会を増やすことができる。
【0064】
また一例として、動力伝達機構21は、第1入力軸S3と、第2入力軸S4とを有し、第1入力軸S3及び第2入力軸S4は、一方が、他方に挿入されて、前記他方に対して相対的に回転軸線X2回りを回転可能に配置される。この構成によれば、入力軸S3、S4をパワーユニット1内の限られた空間に配置し易くできる。また、例えば前記他方の入力軸を所定の支持構造により支持することで、前記一方の入力軸を前記他方の入力軸で支持できる。これにより、入力軸S3、S4を別々の位置に設ける場合に比べて、入力軸S3、S4の支持構造を共通化できる。よって、入力軸S3、S4の支持構造をコンパクト化できる。
【0065】
また一例として、動力伝達機構21のギヤ24、25は、同一の回転軸線X2上で、個別に回転軸線X2回りを回転可能に配置される。これにより、駆動源とギヤ24、25との間の動力伝達経路を集約できる。また、ギヤ24、25に接続される各ポンプP1、P2を互いに近接した位置に配置し易くできる。
【0066】
また各ポンプP1、P2は、同一の流体を同一の流体取入口30、31(40e、40i)から取り入れて各々の対象に供給するように配置される。これにより、各ポンプP1、P2の各々が個別の流体を対象に供給する場合に比べて、流体を貯留する貯留空間や、貯留空間とポンプP1、P2との間の経路を共通化できる。よって、パワーユニット1の全体をコンパクト化できる。
【0067】
また本実施形態のパワーユニット1では、同一の流体取入口30、31(40e、40i)が、ポンプP1、P2の2つのインナーロータ32、33の間に配置される。このように流体取入口30、31(40e、40i)を配置することにより、ポンプP1、P2の流体取入構造を更にコンパクトに構成できる。
【0068】
また、本実施形態のパワーユニット1の複数の駆動源は、エンジンE及び電動モータMを含み、動力伝達機構21は、エンジンEと電動モータMとの回転動力を潤滑ポンプP2に伝達し、エンジンEの回転動力を圧力伝達ポンプP1に伝達する。この構成によれば、駆動源の違いに関わらず駆動が必要な潤滑ポンプP2は、駆動源が動作する限り潤滑対象を潤滑させるように維持できる。これにより、潤滑対象が潤滑不足となることを防止できる。これに対して、電動モータMによる単独走行時であれば、駆動が不要となる圧力伝達ポンプP1については、電動モータMによる単独走行時に不所望に圧力伝達ポンプP1が駆動されるのが防止される。これによって、圧力伝達ポンプP1が駆動されることによりエネルギーのロスが発生するのを抑制できる。従って、潤滑対象の潤滑不足の防止と、エネルギーのロスの抑制との両立を図ることができる。
【0069】
またパワーユニット1は、エンジンEに接続される変速機12を備え、圧力伝達対象はクラッチCを含み、動力伝達機構21は、クラッチCにおける遮断状態での動力遮断位置よりもエンジンE側となる部分の動力を圧力伝達ポンプP1に伝達する。これにより、クラッチCにおける遮断状態での動力遮断位置よりも後輪3側となる部分の動力伝達状態に関わらず、エンジンEの回転動力により圧力伝達ポンプP1を安定して駆動できる。
【0070】
図6は、第1実施形態の変形例に係る圧力伝達ポンプ用ギヤ24と潤滑ポンプ用ギヤ25との模式図である。
図6に示すように、本変形例のギヤ24、25は、各々の回転軸線X3、X4が互いに離隔した位置に配置される。潤滑ポンプ用ギヤ25には、プライマリギヤ20の回転動力が伝達される。圧力伝達ポンプ用ギヤ24には、プライマリギヤ20と離隔した位置で、潤滑ポンプ用ギヤ25の回転動力が伝達される。これにより、ポンプP1、P2は、互いに離隔して配置される。このように、ギヤ24、25は、各々の回転軸線が同一線上に配置されていなくてもよい。またポンプP1、P2は、各々の回転軸線が同一線上に配置されていなくてもよい。
【0071】
ギヤ24、25の回転数を異ならせる場合、例えば、ギヤ24、25の外径を異ならせてもよい。本変形例では、一例として、圧力伝達ポンプ用ギヤ24が潤滑ポンプ用ギヤ25よりも大きい外径を有する。潤滑ポンプ用ギヤ25から圧力伝達ポンプ用ギヤ24への動力伝達は、1以上のギヤを介して実現されてもよい。
【0072】
また、潤滑流体と圧力伝達流体とは、異なる流体であってもよい。この場合、パワーユニット1は、潤滑流体と圧力伝達流体との混合を防止するため、潤滑流体と圧力伝達流体とを個別に流通させる流路や、潤滑流体と圧力伝達流体とを個別に貯留する貯空間を備えていてもよい。圧力伝達対象は、外部から供給される圧力伝達流体により駆動する液圧アクチュエータであればよく、切替装置以外であってもよい。例えば圧力伝達対象は、変速装置に設けられる液圧式シフタ装置、エンジンEの吸排気バルブの動作タイミングやリフト量を調整する調整装置等であってもよい。パワーユニット1は、単一の駆動源を備えていてもよい。この場合、単一の駆動源の回転動力は、例えばプライマリギヤ20に入力されてもよい。
【0073】
また変速機12の形式は、ドッグクラッチ式に限定されない。滑り軸受B2は、入力軸S1に直接取り付けられていてもよい。第1供給路40cと第1排出路40dとは、互いに連通していてもよい。また第2供給路40gと第2排出路40hとは、互いに連通していてもよい。
【0074】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る車両111の動力系統の部分的な模式図である。車両111のパワーユニット101は、単一の走行用の駆動源を備える。この駆動源は、本実施形態ではエンジンEであるが、電動モータMでもよい。エンジンEは、車両11と同様に、クランクケース26と貯留パン27とを有する(
図1参照)。またパワーユニット101は、第1ポンプと第2ポンプとを備える。第1ポンプと第2ポンプとしては、所定対象に流体を供給する各種ポンプを選択できる。本実施形態の第1ポンプと第2ポンプとは、互いに異なる回転数で駆動される。また一例として、第1ポンプと第2ポンプとのうち、高回転で駆動される一方のポンプは、他方のポンプよりも高出力又は低脈動が要求されるポンプである。第1ポンプと第2ポンプとは、同一形状であるが、第1ポンプと第2ポンプとの各形状は、これに限定されない。
【0075】
一例として、第1ポンプは、駆動源の回転動力により駆動され、第1供給対象にオイルを供給する。第2ポンプは、第1ポンプとは個別に設けられて駆動源の回転動力により駆動され、第2供給対象にオイルを供給する。本実施形態では、第2ポンプが、第1ポンプよりも高回転で駆動される。第1ポンプと第2ポンプとは、個別に駆動される。第1供給対象と第2供給対象とは、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
パワーユニット101は、第1ポンプと第2ポンプとに対し、駆動源の回転動力を伝達する動力伝達機構121を備える。動力伝達機構121が有する動力伝達ギヤ120は、筒部120a、主ギヤ部120b、第1副ギヤ部120c、及び第2副ギヤ部120dを有する。第1副ギヤ部120cと第2副ギヤ部120dは、主ギヤ部120bのクラッチCとは反対側の側部に固定されて、入力軸S1の径方向外方に延びる。本実施形態では、第1副ギヤ部120cが、パワーユニット101が有する1つの伝達部である。また第2副ギヤ部120dが、パワーユニット101が有する、第1副ギヤ部120cとは別の伝達部である。筒部120a、主ギヤ部120b、第1副ギヤ部120c、及び第2副ギヤ部120dは、一体的に構成されていてもよいし、このうち少なくともいずれかが他と別体に構成されていてもよい。なお本実施形態では、クラッチCは圧力駆動式でなくてもよい。
【0077】
第1副ギヤ部120cの回転動力は、圧力伝達ポンプ用ギヤ124に伝達される。第2副ギヤ部120dの回転動力は、潤滑ポンプ用ギヤ125に伝達される。動力伝達ギヤ120は、スペーサ113と滑り軸受B2とを介して入力軸S1に軸支される。滑り軸受B2は、入力軸S1に直接取り付けられていてもよい。
【0078】
本実施形態では、第1ポンプは、クランクケース26の内部に潤滑流体を供給するフィードポンプを含む。第1ポンプは、一例として潤滑ポンプP2である。また第2ポンプは、クランクケース26の内部の潤滑流体を貯留パン27に供給するスカベンジポンプ(潤滑ポンプ)P3、及び、圧力伝達対象に圧力伝達流体を供給する圧力伝達ポンプP1の少なくともいずれかを含む。スカベンジポンプP3は、単位時間当たりの流体供給能力が、潤滑ポンプP2よりも高い。またスカベンジポンプP3は、潤滑ポンプP2に比べて低脈動である。
【0079】
潤滑ポンプ用ギヤ125は、第1ポンプに駆動源の回転動力を入力する。圧力伝達ポンプ用ギヤ124は、第2ポンプに駆動源の回転動力を入力する。圧力伝達ポンプ用ギヤ124は、潤滑ポンプ用ギヤ125よりも歯数が少ない。これにより、ギヤ124、125に同じ回転動力が伝達された場合、圧力伝達ポンプ用ギヤ124は、潤滑ポンプ用ギヤ125よりも高回転で回転する。ギヤ124、125は、同一の回転軸線X5上で個別に回転軸線X5回りを回転可能に配置される。駆動源の回転動力は、動力伝達ギヤ120を介して、ギヤ124、125の各々へ伝達される。これにより、第1ポンプと第2ポンプとが駆動される。
【0080】
このようにパワーユニット101では、第1ポンプと第2ポンプとが、互いに異なる回転数で駆動される。これにより、第1ポンプと第2ポンプとをそれぞれに応じた最適な回転数で駆動できる。よって本実施形態においても、不所望なポンプの駆動に起因して生じるエネルギーのロスを抑制できる。また、第1ポンプと第2ポンプとが互いに異なる回転数で駆動されるため、第1ポンプと第2ポンプとの部品を共通化して能力を異ならせることが容易である。このため、第1ポンプと第2ポンプとの部品点数を削減できる。
【0081】
また本実施形態の第1ポンプと第2ポンプとは、個別に駆動される。このため、第1ポンプと第2ポンプとを各々に応じた最適な回転数で駆動し易くできる。これにより、前記エネルギーのロスを更に低減できる。
【0082】
また一例として、第2ポンプは、クランクケース26の内部の潤滑流体を貯留パン27に供給するスカベンジポンプP3、及び、車体に備えられた圧力伝達対象、例えば圧力駆動式のクラッチCを作動させる圧力伝達ポンプP1の少なくともいずれかを含む。スカベンジポンプは、比較的豊富な流体供給能力が求められ、比較的大型に構成される場合がある。本実施形態によれば、スカベンジポンプP3を小型化しつつ高回転で駆動させて要求量の流体を対象に供給できる。よって、スカベンジポンプP3の選択幅や設計自由度を向上できる。また、エンジンEの回転動力によりスカベンジポンプP3を駆動する場合、スカベンジポンプを高回転させることで、エンジンEの回転による圧力伝達流体の脈動を少なくできる。これにより、圧力伝達対象の動作を安定化できる。
【0083】
また圧力伝達ポンプでは、圧力伝達対象に対して圧力伝達流体が間欠的に供給されると、圧力伝達流体の脈動により圧力伝達対象に付与される圧力伝達流体の圧力が変動する場合がある。本実施形態によれば、圧力伝達ポンプP1を高回転で駆動させることで、圧力伝達流体の脈動を抑制しながら、圧力伝達対象に対して圧力伝達流体を安定して供給できる。このため、このような場合でも圧力伝達対象の動作を安定化できる。このように本実施形態によれば、前記エネルギーのロスを低減しつつ、圧力伝達ポンプP1を高回転で駆動させることで、圧力伝達ポンプP1が供給する圧力伝達流体の脈動を低減し、圧力伝達対象の動作を安定化できる。
【0084】
また一例として、動力伝達機構121は、潤滑ポンプ用ギヤ125と、潤滑ポンプ用ギヤ125よりも歯数が少ない圧力伝達ポンプ用ギヤ124とを有する。ギヤ124、125は、同一の回転軸線X5上で個別に回転軸線X5回りを回転可能に配置される。これにより、ギヤ124、125をコンパクトに配置しながら、ギヤ124、125の回転数を異ならせ、第1ポンプと第2ポンプとを各々に応じた回転数で駆動し易くできる。
【0085】
本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。上記したように、パワーユニットでは、複数の駆動源でポンプが駆動されてもよいし、単独の駆動源でポンプが駆動されてもよい。またパワーユニットは、異なる種類の駆動源を備えていてもよいし、1つの種類の駆動源を備えていてもよい。
【0086】
パワーユニットを備える車両は、自動二輪車に限定されず、自動三輪車、四輪車等、その他の各種車両でもよい。またパワーユニットは、車両以外の移動体に備えられてもよい。またパワーユニットは、所定場所に配置される据置式であってもよい。またパワーユニットは、ポンプ以外の駆動対象を駆動する駆動源を備える据置式の装置に用いられてもよい。また入力軸S3、S4には、ウォータポンプ等の他のポンプが接続されていてもよい。また、第1ポンプと第2ポンプとが同一の回転軸線上で回転駆動するように配置される場合、他のポンプも当該回転軸線上で回転駆動するように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
C クラッチ(切替装置、圧力伝達対象)
E エンジン(駆動源)
M 電動モータ(駆動源)
P1 圧力伝達ポンプ(第1ポンプ)
P2 潤滑ポンプ(第2ポンプ)
S3 第1入力軸
S4 第2入力軸
X2 回転軸線
1、101 パワーユニット
1、111 車両
12 変速機
2 後輪(駆動輪)
20c、120c 第1副ギヤ部(伝達部)
23 共通ギヤ(伝達部)
21、121 動力伝達機構
30、31 流体取入口