(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241127BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20241127BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20241127BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B25/00 510M
G08B17/12 A
G08B17/10 G
(21)【出願番号】P 2020207566
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 慶介
(72)【発明者】
【氏名】池田 尚人
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-269471(JP,A)
【文献】特開平05-120580(JP,A)
【文献】特開2000-137877(JP,A)
【文献】特開2013-122624(JP,A)
【文献】特開2004-246542(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202838(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0073477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 25/00
G08B 17/12
G08B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理とは異なる手段により炎を検知する火災検知器と、
防火対象物で前記火災検知器により前記炎が検知されると、当該防火対象物に設置された監視カメラにより撮影された画像に前記画像処理を施して煙を検知する画像処理装置と、
前記炎が検知され、且つ、前記煙が検知されると、火災が発生したと決定する防災用制御盤と、
前記火災検知器と、前記火災検知器の検知範囲と重複する撮影範囲を有する監視カメラとの対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部とを備え、
前記防災用制御盤は、前記記憶部に記憶された前記対応情報に基づいて、前記炎を検知した前記火災検知器の前記検知範囲と重複する前記撮影範囲を有する前記監視カメラを特定し、
前記防災用制御盤は、前記火災検知器により前記炎が検知された時間を前記画像処理装置に送信し、
前記画像処理装置は、前記特定された監視カメラにより撮影された画像から、前記火災検知器により前記炎が検知された前記時間を基準とした所定時間範囲の部分を抽出し、前記抽出された部分に前記画像処理を施して前記煙を検知す
る
防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラにより撮影された画像を用いて火災を検知する技術がある(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5697587号公報
【文献】特開平6-290389号公報
【文献】特開2020-126439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火災を検知する方法には、監視カメラにより撮影された画像に画像処理を施して煙を検知する方法がある。しかし、監視カメラにより撮影された画像に煙を検知するための画像処理を常に施すと、処理の負荷が大きい。また、炎を検知する方法や煙を検知する方法を単独で用いて火災を検知する場合には、火災が発生していないにもかかわらず火災を誤検知する場合がある。
【0005】
本発明は、少ない処理の負荷で精度よく火災を発見することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、防火対象物で異常が検知されると、当該防火対象物に設置された監視カメラにより撮影された画像に画像処理を施して煙を検知する画像処理装置と、炎を検知する火災検知器と、前記炎が検知され、且つ、前記煙が検知されると、火災が発生したと決定する防災用制御盤とを備える防災システムを提供する。
【0007】
前記画像処理装置は、前記防火対象物に設置された複数の監視カメラにより撮影された複数の画像のうち、前記異常が検知された場所が撮影された画像のみに前記画像処理を施してもよい。
【0008】
前記防災用制御盤は、前記火災が発生したと決定された場合と、前記煙は検知されたが前記炎が検知されない場合とで、監視装置に対して異なる通知を行ってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない処理の負荷で精度よく火災を発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第2画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】防災システムの動作の一例を示すシーケンスチャートである。
【
図6】変形例に係る対応テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る防災システム10の概要の一例を示す図である。防災システム10は、災害を迅速に発見し、災害による被害を最小限に抑えるためのシステムである。防災システム10は、CCTV(Closed-Circuit Television)設備100と、非常用設備200と、遠方監視装置300とを備える。CCTV設備100と非常用設備200とは、例えばトンネルに設置される。トンネルは、本発明に係る防火対象物の一例である。遠方監視装置300は、例えば監視センターに設置される。CCTV設備100と遠方監視装置300とは、信号線51を介して接続されている。CCTV設備100と非常用設備200とは、信号線52を介して接続されている。非常用設備200と遠方監視装置300とは、信号線53を介して接続されている。
【0012】
CCTV設備100は、道路状況を監視するための設備である。CCTV設備100には、複数の監視カメラ110と、第1画像処理装置120とを備える。第1画像処理装置120と複数の監視カメラ110とは、信号線54を介して接続されている。
【0013】
監視カメラ110は、例えばトンネルの上方に所定の間隔で配置されており、トンネル内の道路状況を監視するために道路を撮影して画像を取得する。ここでいう画像とは、デジタル形式の画像、すなわち画像データをいう。この画像は、例えば所定のフレームレートで撮影された動画である。ただし、この画像は、必ずしも動画に限定されず、所定の時間間隔で繰り返し撮影された静止画であってもよい。
【0014】
第1画像処理装置120は、監視カメラ110により撮影された画像に画像処理を施して交通に関する異常を検知する。この異常には、停止車両が含まれる。なお、この異常には、低速、渋滞、逆走、避走等の事象が含まれてもよい。低速とは、所定の速度以下で車両が走行することをいう。避走とは、障害物を回避するために本来の車線から外れて車両が走行することをいう。異常を検知するための画像処理の手法としては、例えば既知の画像処理技術を利用して、画像から車両等の移動体を検知し、画像フレーム間における同一移動体を追跡し、個々の移動体の挙動が異常であるか否かを判定するという手法がある。
【0015】
CCTV設備100は、監視カメラ110により撮影された画像を遠方監視装置300及び非常用設備200に配信する。この配信は、例えばリアルタイムでのストリーミング配信であってもよい。また、CCTV設備100は、第1画像処理装置120により異常が検知されると、遠方監視装置300及び非常用設備200に異常信号を送信する。
【0016】
非常用設備200は、火災等の非常事態が発生したときに使用される設備である。非常用設備200は、複数の火災検知器210と、第2画像処理装置220と、防災受信盤230とを備える。防災受信盤230と複数の火災検知器210とは、信号線55を介して接続されている。防災受信盤230と第2画像処理装置220とは、信号線56を介して接続されている。なお、
図1では、主に炎と煙の検知による火災の判定に関する構成が示されており、その他の構成については省略されている。
【0017】
火災検知器210は、炎を検知して防災受信盤230に火災信号を送信する。火災検知器210は、例えば二波長ちらつき式という検知原理を利用して炎を検知する。ただし、火災検知器210が炎を検知する方法は、二波長ちらつき式に限定されず、他の方法であってもよい。
【0018】
図2は、第2画像処理装置220の構成の一例を示す図である。第2画像処理装置220は、監視カメラ110により撮影された画像に画像処理を施すことにより煙を検知して防災受信盤230に煙検知信号を送信する。第2画像処理装置220は、本発明に係る画像処理装置の一例である。
【0019】
第2画像処理装置220は、制御部221と、記憶部222と、通信部223とを備える。制御部221は、プロセッサとも呼ばれ、第2画像処理装置220の各部の制御及び各種の処理を行う。制御部221には、例えばCPU(Central Processing Unit)が含まれる。記憶部222は、メモリとも呼ばれ、各種のデータ及びプログラムを記憶する。記憶部222には、例えばROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、及びRAM(Random Access Memory)のうち少なくとも一つが含まれる。記憶部222には、第2画像処理装置220の機能を実現するためのプログラムが記憶される。通信部223は、第2画像処理装置220を信号線56に接続するための通信インターフェースである。通信部223は、信号線56を介して接続された他の装置と通信を行うために用いられる。
【0020】
制御部221は、画像処理手段225と、判定手段226と、送信手段227として機能する。これらの機能は、制御部221が記憶部222に記憶されたプログラムを実行して、制御部221が演算を行い又は第2画像処理装置220の各部を制御することにより実現される。画像処理手段225は、監視カメラ110により撮影された画像から第1画像処理装置120により異常が検知されると、この画像に煙を検知するための画像処理を施す。すなわち、画像処理手段225は、監視カメラ110により撮影された画像から第1画像処理装置120により異常が検知されない期間は、煙を検知するための画像処理を行わない。異常が検知された場合に煙を検知するための画像処理を行うのは、車両停止等の異常が発生した場合にはそこから火災が発生する可能性があるためである。画像から煙を検知する技術には、例えば特開2010-97412号公報に記載された技術が用いられる。例えば画像処理手段225は、異常が検知されていない平常時の基準画像と異常が検知された画像とを比較することにより煙を検知する。判定手段226は、画像処理手段225により施された画像処理により煙が検知されたか否かを判定する。送信手段227は、判定手段226により煙が検知されたと判定された場合には、煙検知信号を防災受信盤230に送信する。
【0021】
図3は、防災受信盤230の構成の一例を示す図である。防災受信盤230は、第1画像処理装置120、火災検知器210、及び第2画像処理装置220の検知結果に応じて火災が発生したか否かを決定し、その結果を通知する。防災受信盤230は、本発明に係る防災用制御盤の一例である。なお、
図3では、主に火災の判定及び通知に関する構成が示されており、その他の構成については省略されている。
【0022】
防災受信盤230は、制御部231と、記憶部232と、通信部233と、表示部234とを備える。制御部231、記憶部232、及び通信部233は、上述した制御部221、記憶部222、及び通信部223と同様である。ただし、記憶部232には、防災受信盤230の機能を実現するためのプログラムが記憶される。通信部233は、防災受信盤230を信号線52、53、55、及び56に接続するための通信インターフェースである。通信部233は、信号線52、53、55、又は56を介して接続された他の装置と通信を行うために用いられる。表示部234は、各種の情報を表示する。表示部234には、例えば液晶ディスプレイが含まれる。
【0023】
制御部231は、転送手段235と、決定手段236と、通知手段237として機能する。これらの機能は、制御部231が記憶部232に記憶されたプログラムを実行して、制御部231が演算を行い又は防災受信盤230の各部を制御することにより実現される。転送手段235は、CCTV設備100から受信した画像を第2画像処理装置220に転送する。決定手段236は、第1画像処理装置120、火災検知器210、及び第2画像処理装置220の検知結果に応じて火災が発生したか否かを決定する。例えば決定手段236は、火災検知器210により炎が検知され、且つ、第1画像処理装置120により異常が検知された画像から第2画像処理装置220により煙が検知されると、火災が発生したと決定する。通知手段237は、決定手段236により火災が発生したと決定されると、火災の発生が確定ことを遠方監視装置300を含む通知先に通知する。また、通知手段237は、決定手段236により火災が発生したと決定されなかった場合にも、第2画像処理装置220により煙が検知されたときは、煙が検知されたことを遠方監視装置300を含む通知先に通知してもよい。火災が発生したと決定されない場合には、火災が発生したと決定された場合と異なる通知が行われる。
【0024】
図1に戻り、遠方監視装置300は、監視センターに居る監視員が遠隔でCCTV設備100及び非常用設備200が設置された場所を監視するために用いられる。遠方監視装置300は、例えば監視カメラ110により撮影された画像や防災受信盤230から通知された内容を表示する。監視員は、監視カメラ110により撮影された画像や防災受信盤230から通知された内容を確認することで、火災等の異常を迅速に発見し対処する。遠方監視装置300は、本発明に係る監視装置の一例である。
【0025】
図4は、防災システム10の動作の一例を示すシーケンスチャートである。ここでは、監視カメラ110は常に道路を撮影しており、第1画像処理装置120は、監視カメラ110により撮影された画像に逐次、異常を検知するための画像処理を施している。また、監視カメラ110により撮影された画像はCCTV設備100からリアルタイムで防災受信盤230に配信されており、防災受信盤230は、CCTV設備100から受信した画像を逐次、第2画像処理装置220に転送している。第2画像処理装置220は、第1画像処理装置120により異常が検知されていない期間にCCTV設備100から配信された平常時の画像を数日おきに基準画像として記憶部222に記憶する。なお、CCTV設備100から配信された画像のうち基準画像として用いられない画像は削除されてもよい。
【0026】
ステップS11において、CCTV設備100の第1画像処理装置120は、監視カメラ110により撮影された画像に画像処理を施して異常を検知する。
図5は、異常の一例を示す図である。例えば
図5に示されるように、監視カメラ110Aの撮影範囲に含まれる道路上に停止車両が存在する場合には、監視カメラ110Aにより撮影された画像から停止車両が検知される。
【0027】
ステップS12において、CCTV設備100は、異常が検知されたことを示す異常信号と、異常が検知された画像とを遠方監視装置300に送信する。ステップS13において、CCTV設備100は、異常が検知されたことを示す異常信号と、異常が検知された画像とを防災受信盤230に送信する。異常が検知された画像は、異常が検知された場所が撮影された画像である。また、異常が検知された画像には、その画像を撮影した監視カメラ110の識別子が含まれる。例えば
図5に示されるように、監視カメラ110Aにより撮影された画像から停止車両が検知された場合には、監視カメラ110Aにより撮影された画像から、異常が検知された時刻を基準として前後所定時間の範囲の部分を抽出して得られる画像が、異常が検知された画像として用いられる。この画像には監視カメラ110Aの識別子である「CM-A」が含まれる。ステップS14において、防災受信盤230の転送手段235は、CCTV設備100から受信した異常信号及び異常が検知された画像を第2画像処理装置220に転送する。
【0028】
また、異常が発生した場所付近で炎が発生すると、ステップS15において、この場所を検知範囲に含む火災検知器210が炎を検知する。例えば
図5に示されるように、停止車両が火災検知器210Aの検知範囲に含まれる場合において、停止車両付近で炎が発生すると、火災検知器210Aにより炎が検知される。ステップS16において、この火災検知器210は、炎を検知したことを示す火災信号を防災受信盤230に送信する。ステップS17において、火災検知器210から火災信号を受信すると、防災受信盤230の通知手段237は、防災受信盤230の周囲及び遠方監視装置300に火災が検知されたことを通知する。例えば通知手段237は、火災が検知されたことを示す情報を表示部234に表示するとともに、火災が検知されたことを示す火災検知信号を遠方監視装置300に送信する。なお、ステップS15~S17の処理は、必ずしもステップS11の処理より後に行われるわけではない。例えば異常が検知される前に炎が検知された場合には、ステップS15~S17の処理はステップS11の処理よりも前に行われる。
【0029】
ステップS18において、第2画像処理装置220の画像処理手段225は、防災受信盤230から異常信号及び異常が検知された画像を受信すると、この画像に煙を検知するための画像処理を施す。例えば
図5に示されるように、監視カメラ110Aにより撮影された画像から停止車両が検知され、防災受信盤230からこの画像を受信した場合には、画像処理手段225は、この画像に煙を検知するための画像処理を施す。なお、監視カメラ110A以外の監視カメラ110により撮影された画像には、煙を検知するための画像処理は施されない。ステップS19において、第2画像処理装置220の判定手段226は、画像処理により煙が検知されたか否かを判定する。例えば
図5に示されるように、停止車両から煙が出ている場合には、画像処理により煙が検知される。このように画像処理により煙が検知された場合(ステップS19の判定がYES)、第2画像処理装置220はステップS20に進む。一方、画像処理により煙が検知されなかった場合(ステップS19の判定がNO)、以降の処理は行われない。ステップS20において、第2画像処理装置220の送信手段227は、煙が検知されたことを示す煙検知信号を防災受信盤230に送信する。ステップS21において、第2画像処理装置220から煙検知信号を受信すると、防災受信盤230の通知手段237は、防災受信盤230の周囲及び遠方監視装置300に煙が検知されたことを通知する。例えば通知手段237は、煙が検知されたことを示す情報を表示部234に表示するとともに、煙が検知されたことを示す煙検知信号を遠方監視装置300に送信する。
【0030】
ステップS22において、防災受信盤230の決定手段236は、火災信号及び煙検知信号の受信の有無に応じて、火災が発生したか否かを決定する。例えば第2画像処理装置220から煙検知信号が受信され、且つ、火災検知器210から火災信号が受信された場合には、異常が発生した場所から炎と煙が発生していることを示すため、火災が発生したと決定される。一方、例えば第2画像処理装置220から煙検知信号が受信されたものの所定の時間内にいずれの火災検知器210からも火災信号が受信されない場合には、異常が発生した場所から煙が発生しているものの炎は発生していないことを示すため、火災が発生したと決定されない。
【0031】
ステップS23において、防災受信盤230の通知手段237は、ステップS22において火災が発生したと決定された場合には、防災受信盤230の周囲及び遠方監視装置300に火災の発生が確定したことを通知する。例えば通知手段237は、火災の発生が確定したことを示す情報を表示部234に表示するとともに、火災の発生が確定したことを示す火災確定信号を遠方監視装置300に送信する。なお、ステップS22において火災が発生したと決定されない場合には、ステップS23の通知は行われない。すなわち、火災の発生が確定した場合には、ステップS17の火災が検知されたことを示す通知、ステップS21の煙が検知されたことを示す通知、及びステップS23の火災の発生が確定したことを示す通知の3つの通知が行われるが、火災の発生が確定しない場合には、ステップS17の火災が検知されたことを示す通知とステップS21の煙が検知されたことを示す通知だけが行われ、ステップS23の火災の発生が確定したことを示す通知は行われない。このように、火災の発生が確定された場合と確定されない場合とでは、互いに異なる通知が行われる。
【0032】
以上説明した実施形態によれば、監視カメラ110により撮影された画像から異常が検知された場合に限り、この画像に対して煙を検知するための画像処理が施されるため、監視カメラ110により撮影された画像に対してこの画像処理を常に施す場合に比べて、画像処理の負荷が少なくなる。また、複数の監視カメラ110により撮影された複数の画像のうち異常が検知された画像のみに煙を検知するための画像処理が施されるため、複数の監視カメラ110により撮影された全ての画像に対してこの画像処理を施す場合に比べて、画像処理の負荷が少なくなる。さらに、煙と炎の両方が検知された場合に限り火災の発生が確定されるため、煙と炎とのうちいずれか一方が検知された場合に火災が発生したと決定される場合に比べて、火災の発生を決定する精度が高くなる。さらに、火災の中には、異常が発生した場所から先に煙だけ発生し、後から炎が発生する場合があるが、このような場合にも、煙が発生した時点で煙の検知が通知されるため、このような火災についても早期に発見することができる。さらに、既存のCCTV設備100に含まれる監視カメラ110を利用して煙を検知するため、新たに煙検知専用のカメラを設ける場合に比べて、システムの構築に要するコストを削減することができる。
【0033】
変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態は、以下の変形例のように変形して実施されてもよい。実施形態と変形例とは、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。同様に、以下の変形例は、組み合わせて用いられてもよいし、実行に伴って切り替えて用いられてもよい。
【0034】
上述した実施形態において、防災受信盤230の決定手段236は、火災検知器210により炎が検知され、且つ、第1画像処理装置120により異常が検知された画像から第2画像処理装置220により煙が検知されたことに加えて、異常が検知された画像を撮影した監視カメラ110の撮影範囲と、火災を検知した火災検知器210の検知範囲とが重複している場合に限り、火災が発生したと決定してもよい。すなわち、決定手段236は、火災検知器210により炎が検知され、且つ、第1画像処理装置120により異常が検知された画像から第2画像処理装置220により煙が検知されても、異常が検知された画像を撮影した監視カメラ110の撮影範囲と、火災を検知した火災検知器210の検知範囲とが重複していない場合には、火災が発生したと決定しない。これは、異常が検知された画像を撮影した監視カメラ110の撮影範囲と、火災を検知した火災検知器210の検知範囲とが重複していない場合には、監視カメラ110が撮影した画像から検知された異常は、火災検知器210により検知された火災とは異なる事象であると考えられるため、これらの事象が同時期に発生したからといって、必ずしも確実に火災が発生しているとは言えない場合もあるためである。
【0035】
この変形例では、例えば防災受信盤230の記憶部232には、対応テーブル240が記憶される。対応テーブル240は、各監視カメラ110と、その監視カメラ110の撮影範囲と重複する検知範囲を有する火災検知器210との対応関係を示す。
図6は、この変形例に係る対応テーブル240の一例を示す図である。対応テーブル240には、監視カメラ110を一意に識別する識別子と、火災検知器210を一意に識別する識別子とが含まれる。各監視カメラ110の識別子には、その監視カメラ110の撮影範囲と重複する検知範囲を有する火災検知器210の識別子とが予め関連付けられている。
図6に示される例では、監視カメラ110Aの識別子である「CM-A」と、火災検知器210Aの識別子である「FD-A」とが関連付けられている。なお、
図6に示される例では、1つの監視カメラ110の識別子に対して1つの火災検知器210の識別子が関連付けられているが、1つの監視カメラ110の識別子に対して複数の火災検知器210の識別子が関連付けられていてもよいし、複数の監視カメラ110の識別子に対して1つの火災検知器210の識別子が関連付けられていてもよい。また、この変形例では、火災信号には、炎を検知した火災検知器210の識別子が含まれる。例えば
図5に示されるように、火災検知器210Aの検知範囲において炎が発生し、火災検知器210Aにより炎が検知された場合には、火災信号には、火災検知器210Aの識別子である「FD-A」が含まれる。
【0036】
ここでは、火災検知器210により炎が検知され、且つ、第1画像処理装置120により異常が検知された画像から第2画像処理装置220により煙が検知された場合を想定する。例えばCCTV設備100から受信された画像に監視カメラ110Aの識別子である「CM-A」が含まれる場合、決定手段236は、火災検知器210から受信した火災信号に含まれる火災検知器210の識別子が、対応テーブル240において監視カメラ110Aの識別子「CM-A」と関連付けられた「FD-A」であるか否かを判定する。火災信号に含まれる火災検知器210の識別子が「FD-A」である場合、決定手段236は火災が発生したと決定する。一方、火災信号に含まれる火災検知器210の識別子が「FD-A」ではない場合、決定手段236は火災が発生したと決定しない。この変形例によれば、火災の発生を決定する精度がさらに高くなる。
【0037】
上述した実施形態において、第2画像処理装置220が煙を検知するための画像処理を行う契機は、第1画像処理装置120による異常の検知に限定されない。例えば火災検知器210が火災を検知したことを契機に、第2画像処理装置220が煙を検知するための画像処理を行ってもよい。この火災の検知も、本発明に係る異常の検知に含まれる。この変形例では、防災受信盤230の転送手段235は、火災検知器210から火災信号を受信すると、この火災信号を第2画像処理装置220に転送する。この火災信号には、炎を検知した火災検知器210の識別子と、炎が検知された時刻とが含まれる。例えば
図5に示されるように、火災検知器210Aの検知範囲において炎が発生し、火災検知器210Aにより炎が検知された場合には、火災信号には、火災検知器210Aの識別子である「FD-A」が含まれる。また、防災受信盤230は、炎が検知された場所を撮影する監視カメラ110を特定し、第2画像処理装置220に通知する。例えば防災受信盤230の記憶部232には、
図6に示される対応テーブル240が記憶される。防災受信盤230は、火災信号に含まれる火災検知器210の識別子と関連付けられた監視カメラ110の識別子を特定し、特定した監視カメラ110の識別子を第2画像処理装置220に送信する。例えば
図5に示されるように、火災検知器210Aの検知範囲と監視カメラ110Aの撮像範囲とが重複する場合には、
図6に示されるように火災検知器210Aの識別子「FD-A」と監視カメラ110Aの識別子「CM-A」とが関連付けられているため、この監視カメラ110Aの識別子「CM-A」が特定され、第2画像処理装置220に送信される。
【0038】
第2画像処理装置220は、複数の監視カメラ110により撮影され配信された複数の画像を所定期間分だけ記憶部222に記憶している。第2画像処理装置220は、記憶部222に記憶された画像の中から、防災受信盤230から受信した識別子により識別される監視カメラ110により撮影された画像を選択し、さらに選択した画像から炎が検知された時刻を基準とした前後所定時間の範囲の部分を抽出する。第2画像処理装置220の画像処理手段225は、抽出された画像に煙を検知するための画像処理を施す。このとき、画像処理手段225は、防災受信盤230から受信した識別子により識別される監視カメラ110以外の監視カメラ110により撮影された画像には画像処理を施さない。防災受信盤230の決定手段236は、火災検知器210により炎が検知された場所が撮影された画像から第2画像処理装置220により煙が検知されると、火災が発生したと決定する。或いは、決定手段236は、火災検知器210により炎が検知された場所が撮影された画像から第2画像処理装置220により煙が検知され、且つ、第1画像処理装置120により異常が検知された場合に、火災が発生したと決定してもよい。
【0039】
この変形例によれば、火災検知器210により炎が検知された場合に限り、監視カメラ110により撮影された画像に対して煙を検知するための画像処理が施されるため、監視カメラ110により撮影された画像に対してこの画像処理が常に施される場合に比べて、画像処理の負荷が少なくなる。また、複数の監視カメラ110により撮影された複数の画像のうち炎が検知された場所が撮影された画像のみに煙を検知するための画像処理が施されるため、複数の監視カメラ110により撮影された全ての画像の対してこの画像処理が施される場合に比べて、画像処理の負荷が少なくなる。さらに、煙と炎の両方が検知された場合に限り火災が発生したと決定されるため、煙と炎とのうちいずれか一方が検知された場合に火災が発生したと決定される場合に比べて、火災の発生を決定する精度が高くなる。
【0040】
上述した実施形態において、遠方監視装置300に対してCCTV設備100や防災受信盤230から送信される各種の信号、通知等には、監視カメラ110や火災検知器210の識別子が含まれていてもよい。同様に、防災受信盤230の通知手段237によって行われる表示部234への各種情報の表示には、監視カメラ110や火災検知器210の識別子が含まれていてもよい。識別子を用いることで、どの撮影範囲、検知範囲にて、どのような事象が発生したのかを、迅速に確認することができる。
【0041】
上述した実施形態において、煙は検知されたものの炎が検知されず火災の発生が確定されない場合には、遠方監視装置300への通知は行われなくてもよい。例えば火災の発生が確定されない場合、防災受信盤230の通知手段237は、煙が検知されたことを示す情報を表示部234に表示するものの、煙が検知されたことを示す煙検知信号を遠方監視装置300に送信しなくてもよい。
【0042】
上述した実施形態において、防災用制御盤は、トンネルに設置された防災受信盤230に限定されない。防災用制御盤は、火災検知器210から火災信号を受信し、第2画像処理装置220から煙検知信号を受信し得る装置であれば、どのような装置であってもよい。例えば防災用制御盤として防災受信盤230に代えて火災受信機が採用されてもよい。なお、火災受信機が採用される場合には、火災検知器210に代えて炎感知器又は炎検知器が採用されてもよい。この変形例では、監視カメラ110により撮影された画像から第1画像処理装置120により検知される異常には、交通に関する異常に代えて、侵入者、不審者、不審物等の異常が含まれる。
【0043】
上述した実施形態において、防災システム10の構成は上述した例に限定されない。防災システム10は、上述した装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。また、防災システム10の機能を有する主体は、上述した例に限定されない。例えば防災受信盤230の機能は、複数の装置が協働することにより実現されてもよい。防災受信盤230は、表示部234を備えず、防災受信盤230とは別の装置が表示部234を備えてもよい。
【0044】
上述した実施形態において、防災システム10の動作は上述した例に限定されない。防災システム10の処理手順は、矛盾の無い限り、順序が入れ替えられてもよい。また、防災システム10の一部の処理手順が省略されてもよい。
【0045】
本発明の別の形態は、防災システム10、防災受信盤230、又は第2画像処理装置220において行われる処理のステップを有する方法を提供してもよい。また、本発明の更に別の形態は、防災受信盤230又は第2画像処理装置220において実行されるプログラムを提供してもよい。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネット等を介したダウンロードによって提供されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10:防災システム、100:CCTV設備、110:監視カメラ、120:第1画像処理装置、200:非常用設備、210:火災検知器、220:第2画像処理装置、230:防災受信盤、300:遠方監視装置