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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
F16F15/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020210915
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097780
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝之
(72)【発明者】
【氏名】米山 諒一
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第10214417(DE,C1)
【文献】特開平10-299833(JP,A)
【文献】特開2010-091015(JP,A)
【文献】特開2010-091014(JP,A)
【文献】特開2018-091467(JP,A)
【文献】特開2003-004095(JP,A)
【文献】特開2000-337431(JP,A)
【文献】特開2016-033399(JP,A)
【文献】特開2007-225089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231091(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16F 7/00- 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒部材と、該内筒部材の外方に配設された外筒部材と、該内筒部材と該外筒部材を連結する弾性体とを備えたブッシュと、
筒状のマス金具であって該マス金具の内孔に該ブッシュの外筒部材が固定されており、更に該ブッシュの内筒部材に固定されるインナ軸部材を備えており、制振対象部材に対して該インナ軸部材が取り付けられるダイナミックダンパにおいて、
該マス金具の筒状部の軸方向中間部分において径方向内方に突出するマス突部を形成して、該マス突部を該ブッシュの弾性体から離れて位置せしめると共に、該インナ軸部材と該内筒部材の少なくとも一方に径方向外方に突出する外方鍔部を形成して、それらマス突部と外方鍔部が軸方向の投影において相互に重なり合っていると共に、該マス金具が該制振対象部材から離れる方向に移動した際にそれらマス突部と外方鍔部が軸方向で当接するようになっており、
該マス金具の該筒状部は、マス突部を挟んだ軸方向両側において軸方向一方側が軸方向他方側よりも軸方向長さが小さく、
該マス金具の該筒状部における該軸方向一方側には前記外方鍔部が入り込んで位置していると共に、該マス金具の該筒状部における該軸方向他方側には前記ブッシュの前記外筒部材が固定されていることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項2】
前記インナ軸部材に径方向外方に突出する前記外方鍔部を形成した請求項1に記載のダイナミックダンパ。
【請求項3】
前記マス突部が周方向に延びる環状とされていると共に、前記外方鍔部が周方向に延びる環状とされている請求項1又は2の何れか一項に記載のダイナミックダンパ。
【請求項4】
前記マス金具の筒状部における軸方向の中間位置に前記マス突部を形成すると共に、前記インナ軸部材における軸方向の一方の端部側に前記外方鍔部を形成した請求項2又は3の何れか一項に記載のダイナミックダンパ。
【請求項5】
前記ブッシュは、前記筒状のマス金具の内孔における前記インナ軸部材の軸方向の他方の端部側に配置されており、前記マス突部は、前記外方鍔部と該ブッシュとの軸方向間に配置されている請求項4に記載のダイナミックダンパ。
【請求項6】
前記外方鍔部における軸方向の一方側の端面が、前記マス金具の筒状部における軸方向の一方側の端面と略同一平面とされている、又は、該一方側の端面よりも軸方向の他方側に配置されている請求項5に記載のダイナミックダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のデファレンシャル、ボデー、排気管などの振動が問題とされる制振対象部材に取り付けられることにより、振動を抑えるダイナミックダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、制振対象部材における振動を抑える制振装置の一種として、ダイナミックダンパが知られている。ダイナミックダンパは、主振動系を構成する制振対象部材に対して、バネ部材を介してマス部材を弾性支持せしめて取り付けることによりマス-バネの副振動系を構成するものである。そして、副振動系の共振現象を利用して、主振動系において問題となる振動を低減するようにされる。
【0003】
ところで、ダイナミックダンパにおいて目的とする制振効果を得るには、副振動系の固有振動数を主振動系において問題となる振動に応じてチューニングするほか、副振動系のマス質量を適切に確保することも必要となる。
【0004】
さらに、何等かの原因でバネ部材が損傷した場合にマス部材が分離して脱落すると、他部材へ打ち当たる等して二次的損傷等が発生するおそれがあることから、マス部材の分離脱落を防止するフェイルセーフ機構も必要となる。
【0005】
そこで、従来構造のダイナミックダンパでは、例えば特開2000-337431号公報(特許文献1)などに示されているように、内筒金具の他端側には、外筒金具の内径より外径が大きい環状の座金部材がボルトナットにより内筒金具の端部に固定されることで質量金具の脱落を防止するフェイルセーフ機構が提案されている。
【0006】
しかしながら、このような従来構造のフェイルセーフ機構では、別体の座金部材が必要になると共に、座金部材を内筒金具の端部にボルトナットで固定することも必要になることから、部品点数や製造工程の増加が避け難かった。
【0007】
また、従来構造のダイナミックダンパでは、座金部材を内筒金具の端部にボルトナットで固定するために、ダイナミックダンパの配設スペースの確保が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-337431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、少ない部品点数でフェイルセーフ機構を実現できることを可能とする、新規な構造のダイナミックダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、内筒部材と、該内筒部材の外方に配設された外筒部材と、該内筒部材と該外筒部材を連結する弾性体とを備えたブッシュと、筒状のマス金具であって該マス金具の内孔に該ブッシュの外筒部材が固定されており、更に該ブッシュの内筒部材に固定されるインナ軸部材を備えており、制振対象部材に対して該インナ軸部材が取り付けられるダイナミックダンパにおいて、該マス金具の筒状部の軸方向中間部分において径方向内方に突出するマス突部を形成して、該マス突部を該ブッシュの弾性体から離れて位置せしめると共に、該インナ軸部材と該内筒部材の少なくとも一方に径方向外方に突出する外方鍔部を形成して、それらマス突部と外方鍔部が軸方向の投影において相互に重なり合っていると共に、該マス金具が該制振対象部材から離れる方向に移動した際にそれらマス突部と外方鍔部が軸方向で当接するようになっており、該マス金具の該筒状部は、マス突部を挟んだ軸方向両側において軸方向一方側が軸方向他方側よりも軸方向長さが小さく、該マス金具の該筒状部における該軸方向一方側には前記外方鍔部が入り込んで位置していると共に、該マス金具の該筒状部における該軸方向他方側には前記ブッシュの前記外筒部材が固定されているダイナミックダンパを、特徴とするものである。
【0011】
本態様に従う構造とされたダイナミックダンパでは、マス金具の筒状部に径方向内方に突出するマス突部を形成すると共に、インナ軸部材と内筒部材の少なくとも一方に径方向外方に突出する外方鍔部を形成して、それらマス突部と外方鍔部が軸方向の投影において相互に重なり合っていると共に、マス金具が制振対象部材から離れる方向に移動した際にそれらマス突部と外方鍔部が軸方向で当接するようになっている構成を採用したことによって、ブッシュのゴム弾性体が損傷した場合であっても、筒状のマス金具の外方への抜け出しを阻止するフェイルセーフ機構が簡単な構造で実現され得る。
【0012】
加えて、制振対象部材にインナ軸部材を取り付けるに際して、特別な座金部材などを必要とすることが無いので、少ない部品点数でフェイルセーフ機構を有利に実現できる。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るダイナミックダンパであって、前記インナ軸部材に径方向外方に突出する前記外方鍔部を形成したものである。
【0014】
本態様のダイナミックダンパでは、制振対象部材にインナ軸部材を取り付けるに際して、特別な座金部材などを必要とすることが無いので、少ない部品点数でフェイルセーフ機構を有利に実現できる。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るダイナミックダンパであって、前記マス突部が周方向に延びる環状とされていると共に、前記外方鍔部が周方向に延びる環状とされているものである。
【0016】
本態様のダイナミックダンパでは、マス突部と外方鍔部を軸方向で当接させるために、
マス突部と外方鍔部の周方向の位置決め手段を特別に設けることなく、筒状のマス金具の外方への抜け出しを阻止するフェイルセーフ機構が簡単な構造で実現され得る。
【0017】
本発明の第四の態様は、前記第二又は第三の態様に係るダイナミックダンパであって、前記マス金具の筒状部における軸方向の中間位置に前記マス突部を形成すると共に、前記インナ軸部材における軸方向の一方の端部側に前記外方鍔部を形成したものである。
【0018】
本態様のダイナミックダンパでは、マス金具の筒状部における軸方向の中間位置にマス突部を形成すると共に、インナ軸部材の軸方向の一方の端部側に外方鍔部を形成したので、ダイナミックダンパの軸方向の省スペース化が有効に発揮され得る。
【0019】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係るダイナミックダンパであって、前記ブッシュは、前記筒状のマス金具の内孔における前記インナ軸部材における軸方向の他方の端部側に配置されており、前記マス突部は、前記外方鍔部と該ブッシュとの軸方向間に配置されているものである。
【0020】
本態様のダイナミックダンパでは、インナ軸部材の軸方向の一方の端部側に形成された外方鍔部とインナ軸部材の軸方向の他方の端部側に配置されたブッシュの軸方向間にマス突部を形成したので、ダイナミックダンパの軸方向の省スペース化がより有効に発揮され得る。
【0021】
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係るダイナミックダンパであって、前記外方鍔部における軸方向の一方側の端面が、前記マス金具の筒状部における軸方向の一方側の端面と略同一平面とされている、又は、該一方側の端面よりも軸方向の他方側に配置されているものである。
【0022】
本態様のダイナミックダンパでは、外方鍔部の大部分又は全てがマス金具の内孔の内部に収容配置されることになるため、ダイナミックダンパの軸方向の省スペース化が更により有効に発揮され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従う構造とされたダイナミックダンパでは、マス金具の筒状部に径方向内方に突出するマス突部を形成すると共に、インナ軸部材と内筒部材の少なくとも一方に径方向外方に突出する外方鍔部を形成して、それらマス突部と外方鍔部が軸方向の投影において相互に重なり合っていると共に、マス金具が制振対象部材から離れる方向に移動した際にそれらマス突部と外方鍔部が軸方向で当接するようになっている構成を採用したことによって、ブッシュのゴム弾性体が損傷した場合であっても、筒状のマス金具の外方への抜け出しを阻止するフェイルセーフ機構が簡単な構造で実現され得る。
【0024】
加えて、制振対象部材にインナ軸部材を取り付けるに際して、特別な座金部材などを必要とすることが無いので、少ない部品点数でフェイルセーフ機構を有利に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態としてのダイナミックダンパを示す図2のI-I線方向の断面図である。
図2】ダイナミックダンパを示す平面図である。
図3図1に示されたダイナミックダンパを装着状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1~3には、本発明に係るダイナミックダンパの一実施形態として、例えば自動車のデファレンシャル19に装着されて振動を低減するダイナミックダンパ10が示されている。係るダイナミックダンパ10は、インナ軸部材15に対して筒状のマス金具20がゴム弾性体14で弾性支持された構造を有している。ブッシュ11は、内筒金具12と内筒金具12の外方に配設された外筒金具13と、内筒金具12と外筒金具13を弾性的に連結するゴム弾性体14から構成され、筒状のマス金具20の内孔23にブッシュ11の外筒金具13が圧入されて、ブッシュ11の外筒金具13の外周面が筒状のマス金具20の内孔23の内周面に固定されている。そして、インナ軸部材15がブッシュ11の内筒金具12の内周に圧入されて、インナ軸部材15の外周面にブッシュ11の内筒金具12の内周面が固定されている。そして、主振動系であるデファレンシャル19(図示しない)に対してインナ軸部材15がボルト24、ナット25にて固定されることで、マスーバネ系からなる副振動系を構成するようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、図1中の上下方向を言う。また、左右方向とは、図1中の左右方向を言う。
【0028】
ブッシュ11の内筒金具12は、薄肉小径の略円筒形状を有しており、左右方向に直線的に延びており、鉄やアルミニウム合金で形成された高剛性の金具とされている。外筒金具13は、薄肉大径の略円筒形状を有しており、内筒金具12と同様に高剛性の金具とされている。
【0029】
そして、外筒金具13は、内筒金具12に外挿されて、内筒金具12の外周側に所定距離を隔てて配設されており、それら内筒金具12と外筒金具13の径方向間にゴム弾性体14が配設されている。ゴム弾性体14は、厚肉大径の略円筒形状とされており、その内周面が内筒金具12に加硫接着されていると共に、外周面が外筒金具13に加硫接着されている。また、ゴム弾性体14は、軸方向の両端面に周方向へ延びる凹溝が設けられている。なお、本実施形態のゴム弾性体14は、内筒金具12と外筒金具13とを備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0030】
インナ軸部材15は、厚肉小径の略円筒形状で、左右方向に直線的に延びており、鉄やアルミニウム合金で形成された高剛性の部材とされている。そして、インナ軸部材15は、ボルト24とナット25によってデファレンシャル19に対して固定されている。また、インナ軸部材15は、ブッシュ11の内筒金具12の内周面に圧入されて、インナ軸部材15の外周面がブッシュ11の内筒金具12の内周面に固定されている。インナ軸部材15における軸方向の一方(図1の左方向)の端部側には径方向外方に突出する外方鍔部16が形成されている。そして、外方鍔部16は周方向に延びる環状とされていて、外方鍔部16の肉厚は周方向で一定とされている。また、外方鍔部16は、径方向で外側に向かって肉厚が一定とされていて、突出先端部17とマス金具20の内孔23との間に径方向の隙間が形成されている。
【0031】
マス金具20は、鉄などの金属による一体鋳造品とされており、厚肉の円筒状の金具であり、その内径が外筒金具13の外径よりわずかに小さく、かつ、軸方向長さが外筒金具13の軸方向長さより大きくされている。そして、マス金具20は、インナ軸部材15よりも軸方向の長さ寸法が小さくされている。マス金具20の筒状部21の外周面には抜きテーパ形状が付与されていることにより、鋳型からの脱型も容易とされている。そして、マス金具20の筒状部21にはその軸方向中間位置であって、その中央部から左側に内方に突出するマス突部22が形成されている。そして、マス突部22は周方向に延びる環状とされていて、マス突部22の肉厚は周方向で一定とされている。また、マス突部22は、径方向内側に向かって肉厚が一定とされている。さらに、マス金具20が鋳造品で形成されていることから、マス金具20を押出成形で形成したりブロック状の金具を切り出したりして形成するよりも優れた設計自由度を有しつつ、安価に製造され得る。
【0032】
このダイナミックダンパ10は、図示しない自動車のデファレンシャル19の取付孔にインナ軸部材15の軸孔を位置合わせして、その取付孔とインナ軸部材15の軸孔にボルト24のねじ部が図3の右側から挿通されて、ねじ部にナット25を螺合することによって、インナ軸部材15がデファレンシャル19に取り付けられている。インナ軸部材15とマス金具20は、同軸的に配置されている。そして、デファレンシャル19において制振すべき振動周波数に応じて、マス金具20の質量やゴム弾性体14のばね定数が調節されて、副振動系を構成するマス-バネ系の固有振動数がチューニングされて、目的とする制振効果が発揮されるように設定される。ここにおいて、副振動系を構成するマス部材としては、外筒金具13にマス金具20が外挿状態で固定された構造とされる。
【0033】
上記実施形態のダイナミックダンパ10は、以下のように組付けられる。まず、ブッシュ11を加硫成形によって成形する。そして、筒状のマス金具20の他方の側(図1の右側)からブッシュ11の外筒金具13がマス金具20の内孔23の内周面に圧入される。続いて、筒状のマス金具20の一方の側(図1の左側)からインナ軸部材15がブッシュ11の内筒金具12の内周面に圧入される。その際、インナ軸部材15の他方の端部(図1の右側)にはブッシュ11の内筒金具12を案内するテーパ形状のガイド部18が形成されている。つまり、ブッシュ11の内筒金具12をインナ軸部材15に設けたガイド部18の案内作用によって簡単にインナ軸部材15に圧入することが可能となる。なお、図3の上下方向は、車両の上下方向であり、図3の左右方向は、車両の左右方向である。
【0034】
ダイナミックダンパ10は、筒状のマス金具20の筒状部21の軸方向中間位置であって、その中央部から左側の位置に内方に突出するマス突部22が形成されている。インナ軸部材15には径方向外方に突出する外方鍔部16が形成されている。そして、それらマス突部22と外方鍔部16がインナ軸部材15の軸方向の投影において相互に重なり合っていると共に、マス金具20がデファレンシャル19から離れる方向に移動した際にそれらマス突部22と外方鍔部16が軸方向で当接するようになっている。そして、ダイナミックダンパ10のデファレンシャル19への装着状態では、例えば仮にブッシュ11のゴム弾性体14が損傷乃至は破断したとしても、筒状のマス金具20の外方(図3の左方向)への抜け出しを阻止するフェイルセーフ機構が簡単な構造で実現され得る。加えて、デファレンシャル19にインナ軸部材15を取り付けるに際して、特別な座金部材などを必要とすることが無いので、少ない部品点数でフェイルセーフ機構を有利に実現できる。
【0035】
ここで、マス突部22が周方向に延びて連続する環状とされていると共に、外方鍔部16が周方向に延びて連続する環状とされている。従って、マス突部22と外方鍔部16を軸方向で当接させるために、マス突部22と外方鍔部16の周方向の位置決め手段を特別に設ける必要がなくなり、筒状のマス金具20の外方(図3の左方向)への抜け出しを阻止するフェイルセーフ機構が簡単な構造で実現され得る。
【0036】
そして、マス金具20の筒状部21における軸方向中間位置であって、その中央部から左側の位置に内方に突出するマス突部22が形成されており、インナ軸部材15における軸方向の一方(図1の左方向)の端部側に径方向外方に突出する外方鍔部16が形成されている。ここで、端部側とは、インナ軸部材15における軸方向の一方(図1の左方向)の端部に外方鍔部16が形成された形態と、インナ軸部材15における軸方向の一方(図1の左方向)の端面から軸方向に隙間をもって外方鍔部16が形成された形態の両方を含むものである。従って、この形態ではダイナミックダンパ10の軸方向の省スペース化が有効に発揮され得る。
【0037】
更に、インナ軸部材15における軸方向の一方(図1の左方向)の端部側に形成された外方鍔部16と、インナ軸部材15における軸方向の他方(図1の右方向)の端部側に配置されたブッシュ11との軸方向間に挟まれてマス金具20のマス突部22が配置されている。従って、ダイナミックダンパ10の軸方向の省スペース化がより有効に発揮され得る。
【0038】
そして、外方鍔部16における軸方向の一方側(図3の左側)の端面が、マス金具20の筒状部21における軸方向の一方側(図3の左側)の端面と略同一平面とされている。従って、外方鍔部16の大部分がマス金具20の内孔23の内部に収容配置されることになるため、ダイナミックダンパ10の軸方向の省スペース化が更に有効に発揮され得る。なお、外方鍔部16における軸方向の一方側(図3の左側)の端面が、マス金具20の筒状部21における軸方向の一方側(図3の左側)の端面よりも軸方向の他方側に配置されている構成を採用してもよい。この構成では、外方鍔部16の全てがマス金具20の内孔23の内部に収容配置されることになる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、外方鍔部16はインナ軸部材15に形成されていたが、ブッシュ11の内筒金具12に形成してもよいし、インナ軸部材15と内筒金具12の両方に形成してもよい。そして、外方鍔部として周方向に複数の鍔部を形成してもよいし、マス突部として周方向に複数の突部を形成してもよい。また、デファレンシャルにダイナミックダンパを組み付ける際には、上記実施形態のようにインナ軸部材15の外方鍔部16をデファレンシャル19とは反対側(図3の左側)に配置したが、これに変えて、インナ軸部材15の外方鍔部16をデファレンシャル19の側に配置してもよい。このように配置した場合には、デファレンシャルに近い側にマス突部を配置して、デファレンシャルから遠い側に外方鍔部を形成すればよい。
【0041】
また、上記実施形態では、ブッシュ11の内筒部材として金具を採用したが、これに変えて樹脂を使用してもよい。同様に、ブッシュ11の外筒部材として、樹脂を使用してもよい。
【0042】
また、前記実施形態に記載した上下左右などの方向は、本発明に係るダイナミックダンパ10の装着時の方向に限定されるものではない。
【0043】
なお、前記実施形態では、本発明に係るダイナミックダンパとして自動車用のダイナミックダンパが記載されていたが、本発明に係るダイナミックダンパは自動車以外にも適用されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…ダイナミックダンパ、11…ブッシュ、12…内筒金具、13…外筒金具、14…ゴム弾性体、15…インナ軸部材、16…外方鍔部、17…突出先端部、18…ガイド部、19…デファレンシャル、20…マス金具、21…筒状部、22…マス突部、23…内孔、24…ボルト、25…ナット
図1
図2
図3