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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20241127BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 A
H01L21/304 622F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020212406
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098805
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】清水 紳司
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104235(JP,A)
【文献】特開2019-115971(JP,A)
【文献】特開2018-108612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドであって、
研磨面を有し、
該研磨面が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、25℃以上75℃以下の温度範囲内において、tanδの値が0.1以上0.4未満であり、
前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、第1ピークを有しており、
前記第1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にある
研磨パッド。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、さらに第2ピークを有しており、
前記第2ピークのピークトップの気泡径が、100μm未満の範囲内にある
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、気泡径の平均値が30μm以上70μm以下である、
請求項1または2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、JIS-A硬度が65以上80以下である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、見掛け密度が0.3g/cm以上0.6g/cm以下である
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、圧縮率が3%以上10%以下である
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハやガラス板などの被研磨物を研磨する研磨パッドとしては、ポリウレタン樹脂発泡体によって研磨面が形成された研磨パッドが知られている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
前記研磨パッドを用いて被研磨物を研磨する方法としては、例えば、以下の方法がある。
まず、研磨機の上定盤の下面に円盤状の被研磨物を貼り付け、また、前記研磨機の下定盤の上面に円盤状の研磨パッドを貼り付ける。
そして、前記上定盤及び前記下定盤によって、前記被研磨物の下面(被研磨面)を前記研磨パッドの上面(研磨面)に押し付ける。
次に、前記被研磨物を前記研磨パッドに押し付けた状態で、前記研磨パッド上に研磨用スラリーを供給しつつ、前記上定盤及び前記下定盤を回転させることにより、前記被研磨物を研磨する。
前記研磨用スラリーとしては、水と砥粒とを含有する研磨スラリー等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-274361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、被研磨物の研磨速度を十分に高めつつ、研磨後の被研磨面の平坦性を高めることがこれまで以上に要望されているものの、これについての検討は未だ十分になされているとは言い難い。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望に鑑み、被研磨物の研磨速度を十分に高めつつ、研磨後の被研磨面の平坦性を高めることができる研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る研磨パッドは、
ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドであって、
研磨面を有し、
該研磨面が前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成され、
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、25℃以上75℃以下の温度範囲内において、tanδの値が0.1以上0.4未満であり、
前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、第1ピークを有しており、
前記第1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被研磨物の研磨速度を十分に高めつつ、研磨後の被研磨面の平坦性を高めることができる研磨パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】研磨パッドの使用状態を示す概略図。
図2】各例に係る研磨パッドについてtanδ(損失正接)を測定した結果を示すグラフ。
図3】各実施例に係る研磨パッドについて体積基準の気泡径の分布曲線を求めた結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態ともいう)について説明する。
【0011】
本実施形態に係る研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体を備えている。
本実施形態に係る研磨パッドは、研磨面を有し、該研磨面が前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されている。
【0012】
図1に示したように、本実施形態に係る研磨パッド1は、研磨装置100での被研磨物2の表面研磨に用いられる
【0013】
本実施形態に係る研磨パッド1は、被研磨物2を研磨するための研磨面1aを有し、該研磨面1aが、前記ポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されている。
本実施形態の研磨パッド1は、研磨面1aと被研磨物の表面(被研磨面2a)との間に砥粒を含んだ研磨用スラリーを介在させて研磨面1aと被研磨面2aとが摺接されることで被研磨面2aを研磨する。
【0014】
本実施形態に係る研磨パッド1においては、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、25℃以上75℃以下の温度範囲内において、tanδ(損失正接。損失弾性率E’’/貯蔵弾性率E’)の値が0.1以上0.4未満である。
25℃以上75℃以下の温度範囲内において、tanδの値は、0.15以上0.3以下であることが好ましい。
本実施形態に係る研磨パッド1においては、25℃以上75℃以下の温度範囲内におけるtanδの最小値であるtanδMINに対する25℃以上75℃以下の範囲内におけるtanδの最大値であるtanδMAXの比(tanδMAX/tanδMIN)が2.0以下であってもよい。
また、本実施形態に係る研磨パッド1においては、tanδMAX/tanδMINが0.8以上1.5未満であってもよい。
【0015】
tanδは、損失弾性率E’’、及び、貯蔵弾性率E’を測定して算出することができる。
損失弾性率E’’、及び、貯蔵弾性率E’は、JIS K7244-4:1999「プラスチック-動的機械特性の試験方法-第4部:引張振動-非共振法」に従い以下の条件で測定することができる。

(損失弾性率E’’及び貯蔵弾性率E’の測定条件)
・測定温度範囲:10℃~100℃
・昇温速度:5℃/min
・周波数:1Hz
・ひずみ:0.5%
【0016】
本実施形態に係る研磨パッド1においては、前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、第1ピークを有しており、前記第1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にある。
より詳しくは、本実施形態に係る研磨パッド1においては、前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、1または2以上のピークを有しており、1または2以上のピークのうちの1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にある。
すなわち、前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線が1個のピークを有する場合には、このピークが第1ピークとなり、該第1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にあり、前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線が2個以上のピークを有する場合には、2個以上のピークのうちの1ピークである第1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にある。
【0017】
前記第1ピークのピークトップの気泡径は、100μm以上180μm以下の範囲内にあることが好ましく、100μm以上160μm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0018】
ここで、ポリウレタン樹脂発泡体は粘弾性体であるため、ポリウレタン樹脂発泡体によって研磨面が形成された研磨パッドでは、粘弾性特性を適切に制御しないと、シリコンウェハやガラス板などの被研磨物を研磨しているときに、研磨パッドの研磨面と被研磨物の被研磨面との間で微細振動が生じて、研磨後の被研磨面の平坦性を十分に確保できなくなったり(粘性体として振舞いにくくなることにより、研磨後の被研磨面の平坦性を十分に確保できなくなったり)、また、圧縮された研磨パッドが十分に回復しないうちに研磨が進行することにより、研磨後の被研磨面の平坦性を十分に確保できなくなったり(弾性体として振舞いにくくなることにより、研磨後の被研磨面の平坦性を十分に確保できなくなったり)することがある。
また、ポリウレタン樹脂発泡体によって研磨面が形成された研磨パッドを用いてシリコンウェハやガラス板などの被研磨物を研磨する場合、該研磨は、25℃程度の温度から開始されるものの、研磨パッドで被研磨物を研磨することによって生じる摩擦熱などによって、研磨パッドの研磨面の温度は、研磨中に75℃程度まで上昇することがある。
そのため、ポリウレタン樹脂発泡体によって研磨面が形成された研磨パッドでは、25℃以上75℃以下の温度範囲内において、好適な粘弾性特性を示すことが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る研磨パッド1では、上記したように、25℃以上75℃以下の温度範囲内において、tanδの値が0.1以上0.4未満となっている。すなわち、本実施形態に係る研磨パッド1は、粘性項たる損失弾性率E’’の値と弾性項たる貯蔵弾性率E’の値とが適切に制御されて、好適にバランスされたもの(粘性と弾性とが好適にバランスされたもの)となっている。
これにより、研磨後の被研磨面の平坦性を十分に確保することができる。
【0020】
また、本実施形態に係る研磨パッド1では、上記したように、ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線が、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、第1ピークを有しており、前記第1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にある、すなわち、前記第1ピークのピークトップの気泡径が比較的大きいので、研磨中において、ポリウレタン樹脂発泡体が伸びることによって、気泡の目潰れが生じることが抑制される。
さらに、研磨パッドの研磨面をドレス処理する際にも、ポリウレタン樹脂発泡体が伸びることによって、気泡の目潰れが生じることが抑制される。
そのため、本実施形態に係る研磨パッド1では、研磨スラリーを十分に保持することができるので、十分な研磨速度を確保することができることに加えて、研磨後の被研磨面の平坦性を十分に確保することができる。
【0021】
研磨時に被研磨物が当接されている範囲内では、微視的な観点からは、局所的に研磨面の温度が上記範囲(25℃以上75℃以下)を超える場合もあり得る。
そのような場合に、当該部分に優れた柔軟性を発揮させる意味において、ポリウレタン樹脂発泡体には、上記範囲よりも高温においてガラス転移温度(Tg)や融解温度(Tm)を示す成分が含まれていてもよい。
すなわち、ポリウレタン樹脂発泡体は、tanδの温度変化のグラフ(実施例の項で説明する図2)において、75℃を超え100℃以下の範囲にピーク値を有するものであってもよい。
なお、該ピーク値は、25℃以上75℃以下におけるtanδの範囲内とされることが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る研磨パッド1においては、前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、さらに第2ピークを有しており、前記第2ピークのピークトップの気泡径が、100μm未満であることが好ましい。
より詳しくは、本実施形態に係る研磨パッド1においては、前記ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、2以上のピークを有しており、2以上のピークのうちの1ピークである第2ピークのピークトップの気泡径が、100μm未満であることが好ましい。
なお、2以上のピークのうちの1ピークである第1ピークのピークトップの気泡径は、上述したように、100μm以上200μm以下の範囲内にある。
【0023】
上記のように、前記第2ピークのピークトップの気泡径が、100μm未満であることにより、研磨後の被研磨面の平坦性をより十分に高めることができる。
前記第2ピークのピークトップの気泡径が上記数値範囲内にあることにより、研磨後の被研磨面の平坦性をより十分に高めることができる理由について、本発明者は、以下のように考えている。
【0024】
ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドにおいては、前記ポリウレタン樹脂発泡体に含まれる気泡によって、前記研磨パッドの研磨面に凸部が形成されており、その凸部が被研磨物(例えば、シリコンウェハなど)との接触部分(以下、コンタクトポイントともいう)となっている。
そして、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、100μm未満の気泡径を有する小径気泡を含んでいると、前記研磨パッドの研磨面に形成される凸部は小さくなるので、前記凸部と前記被研磨物とのコンタクトポイントが小さくなる。
このような小さなコンタクトポイントでは、前記研磨パッドと前記被研磨物との接触面積が比較的小さくなって、前記研磨パッドと前記被研磨物との接触抵抗が小さくなるので、前記研磨パッドによる前記被研磨物の研磨をスムーズに行うことができるようになると考えられる。
すなわち、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、100μm未満の気泡径を有する小径気泡を含んでいると、ポリウレタン樹脂発泡体を含む研磨パッドによる前記被研磨物の研磨が比較的スムーズに進行するようになるので、前記被研磨物の被研磨面の平坦化特性(後述する表面粗さ(算術平均表面粗さRa)やΔGBIR)が良好となると考えられる。特に、前記研磨パッドの研磨面に小さな凸部が比較的多く存在する場合には、前記被研磨物の被研磨面の平坦化特性は、より一層良好になると考えられる。
また、コンタクトポイントが小さいと、前記研磨パッドによる前記被研磨物の研磨中に、コンタクトポイントにおいて生じる接触圧を比較的小さくすることができるので、前記被研磨物の被研磨面に過度な接触圧がかかることを抑制することができる。
これにより、前記被研磨物の被研磨面にキズ(例えば、マイクロスクラッチ)が発生することを抑制することができると考えられる。特に、前記研磨パッドの研磨面に小さな凸部が比較的多く存在する場合には、前記被研磨物の被研磨面におけるキズの発生をより一層抑制することができると考えられる。
【0025】
前記第2ピークのピークトップの気泡径は、80μm以下の範囲内にあることがより好ましい。
また、前記第2ピークのピークトップの気泡径は、20μm以上の範囲内にあることが好ましい。
【0026】
また、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、気泡径の平均値が、30μm以上70μm以下であることが好ましく、40μm以上70μm以下であることがより好ましい。
気泡径の平均値が上記範囲内であることにより、被研磨物の研磨速度をより十分に高めつつ、被研磨物表面の平坦性をより十分に高めることができる。
【0027】
なお、体積基準の気泡径の分布曲線は、X線CTスキャン装置(例えば、ヤマト科学株式会社製のTDM1000H-I)を用いて、以下のようにして求めることができる。
すなわち、ポリウレタン樹脂発泡体の測定対象範囲(例えば、平面寸法:1.6mm×1.6mm、厚さ0.7mm)に含まれている、各気泡の体積を測定し、この体積と同じ体積の真球の直径を各気泡の直径とする。
ここで、上記の「気泡の平均値」は、各気泡の体積から求めた気泡径の算術平均値[=「各気泡径」の合計値/(気泡数)]を意味する。
また、体積基準の気泡径の分布曲線は、個数基準の気泡径の分布曲線のデータに基づいて求めることができる。
すなわち、気泡径0μmから一定間隔ごとに気泡数を求め、「各間隔の気泡数」を「各間隔の上限の気泡径の気泡数」として、個数基準の気泡径の分布曲線を求め、この個数基準の気泡径の分布曲線のデータに基づいて、気泡径0μmから一定間隔ごとに気泡の体積の合計を求め、「気泡の体積の合計」を「各間隔の上限の気泡径における体積」として、体積基準の気泡径の分布曲線を求めることができる。
なお、上記一定間隔は、ピーク位置をより精度良く定める観点から、20μm以下に設定することが好ましい。
【0028】
なお、前記第1ピークのピークトップの気泡径は、体積基準の気泡径の分布曲線の気泡数を気泡径で3回微分して得られる微分値が0となる箇所の気泡径である。
また、前記第2ピークのピークトップの気泡径も、体積基準の気泡径の分布曲線の気泡数を気泡径で3回微分して得られる微分値が0となる箇所の気泡径である。
【0029】
また、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、体積基準の気泡径の分布曲線から求めた、累積体積頻度80%の気泡径と累積体積頻度10%の気泡径との差分値(累積体積頻度80%の気泡径-累積体積頻度10%の気泡径)が、60μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましい。
累積体積頻度80%の気泡径と累積体積頻度10%の気泡径との差分値が上記範囲内にあることにより、気泡径を比較的広い範囲に渡って分布させることができる。これにより、研磨中において気泡の目潰れが生じることを抑制できる。また、研磨パッドの研磨面をドレス処理する際に、気泡の目潰れが生じることも抑制できる。
【0030】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、JIS-A硬度が65以上80以下であることが好ましい。
JIS-A硬度が上記範囲内であることにより、被研磨物の研磨速度をより十分に高めつつ、被研磨物表面の平坦性をより十分に高めることができる。
【0031】
前記ポリウレタン樹脂発泡体のJIS-A硬度は、以下のようにして測定することができる。

(JIS-A硬度測定方法)
JIS-A硬度は、JIS K6253-3:2012に準拠した方法(タイプA)で測定する。
この測定の際には、ポリウレタン樹脂発泡体の厚みが12mm未満である場合には、ポリウレタン樹脂発泡体を複数枚積層させてこの積層体の厚みを12mm以上にし、この積層体の硬度を測定する。
また、JIS-A硬度は、押針を研磨面に押し込んで測定した硬さ(瞬時値)である。
【0032】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、複数の気泡を含み、見掛け密度が0.3g/cm以上0.6g/cm以下であることが好ましい。
前記ポリウレタン樹脂発泡体の見掛け密度は、0.4g/cm以上0.6g/cm以下であることがより好ましく、0.4g/cm以上0.5g/cm以下であることがさらに好ましい。
前記見掛け密度は、JIS K 7222:2005に基づいて測定することができる。
【0033】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、圧縮率が3%以上10%以下であることが好ましく、4%以上9%以下であることがより好ましい。
圧縮率が上記数値範囲内であることにより、被研磨物の研磨速度をより十分に高めつつ、被研磨物表面の平坦性をより十分に高めることができる。
なお、圧縮率は、以下の手順にしたがって求めることができる。

(1)JIS L1096:2010に記載の圧縮弾性試験機(圧力子の面積:50mm)を用い、圧力子で641gf/cmの圧力を加えながら、ポリウレタン樹脂発泡体を厚み方向に加圧して60秒間保持した後に、前記ポリウレタン樹脂発泡体の厚みT1を測定する。
(2)圧力子で5161gf/cmの圧力を加えながら、ポリウレタン樹脂発泡体を厚み方向に加圧して60秒間保持した後に、前記ポリウレタン樹脂発泡体の厚みT2を測定する。
(3)下記式を用いて圧縮率を算出する。
圧縮率 = (T1-T2)×100/T1
【0034】
本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体は、空隙率が50%以上であることが好ましい。
前記ポリウレタン樹脂発泡体の空隙率は、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。
前記空隙率は、80%以下であることが好ましく、78%以下であることがより好ましい。
【0035】
前記空隙率は、X線CTスキャン装置(例えば、ヤマト科学株式会社製のTDM1000H-I)を用いて、以下のようにして求めることができる。
すなわち、ポリウレタン樹脂発泡体の測定対象範囲(例えば、0.7mm×1.6mm×1.6mmの部分2つ分)に含まれている、各気泡の体積を測定し、ポリウレタン樹脂発泡体の測定対象範囲の体積に対する、気泡の全体積の比として求めることができる。
【0036】
前記ポリウレタン樹脂発泡体に含まれるポリウレタン樹脂は、一般的な研磨パッドに用いられているものと同様のものを採用することができる。
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物(例えば、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー)と硬化剤とを含む。
即ち、本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体は、前記ポリイソシアネート化合物と前記硬化剤とを含む液状の混和物を調製し、該混和物に気泡を含有させて硬化させることによって調製される。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して10質量部以上30質量部以下の割合の硬化剤を含むポリウレタン樹脂を含有することが好ましい。
ポリイソシアネート化合物に対する硬化剤の割合は10質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤の活性水素基の当量比であるR値(活性水素/NCO)が0.6以上0.9以下となるように調製されることが好ましい。
前記R値は、0.75以上0.85以下であることがより好ましい。
【0039】
本実施形態のポリイソシアネート化合物としては、例えば、構成単位として1又は2種以上のポリオールと1又は2種以上のポリイソシアネートとを含み、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
本実施形態のポリイソシアネート化合物は、複数のウレタンプレポリマーの混合物であってもよく、後段において示すようなポリイソシアネートの1又は2種以上であってもよい。
本実施形態のポリイソシアネート化合物は、1又は2種以上のウレタンプレポリマーと1又は2種以上のポリイソシアネートとの混合物であってもよい。
【0040】
前記ポリオールとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオールなどが挙げられる。
【0041】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリオールポリマーであってもよい。
ポリオールポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールポリマーであってもよい。
【0042】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコールなどが挙げられる。
【0043】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物が挙げられ、また、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応生成物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物も挙げられる。
【0044】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
【0045】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0046】
前記ポリイソシアネートは、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
前記芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
また、前記芳香族イソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物なども挙げられる。
【0048】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物としては、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0049】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
【0050】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0051】
本実施形態での前記硬化剤は、例えば、ポリアミンが挙げられる。
【0052】
前記ポリアミンとしては、例えば、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、4,4’-メチレンジアニリン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾアート)、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)ベンゼン-1,3-ジアミン、2-メチル4,6-ビス(メチルチオ)-1,5-ベンゼンジアミン、2,6-ジクロロ-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,3-ジクロロアニリン)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0053】
前記硬化剤は、前記ポリオールであってもよい。
前記硬化剤は、前記ポリオールと前記ポリアミンとの混合物であってもよい。
【0054】
前記ポリウレタン樹脂を発泡状態にするための発泡剤としては、水が用いられてもよい。
前記ポリウレタン樹脂発泡体の見掛け密度は、該水の添加量や前記R値などによって調整することができる。
発泡剤として水が用いられる場合、前記ポリウレタン樹脂発泡体を前記のような見掛け密度となるように調製することが容易となる上で、前記水の添加量は、前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、0.2質量部以上1質量部以下であることが好ましい。
前記ポリイソシアネート化合物100質量部に対する前記水の添加量は、0.3質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
【0055】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ポリイソシアネート化合物と硬化剤との反応を促進する触媒や気泡の形成を制御する整泡剤を含んでいてもよい。
【0056】
前記ポリウレタン樹脂発泡体が前記触媒を含んでいる場合、その触媒としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルエーテル、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチルイミダゾールなどのアミン系触媒やジオクチルチンジラウレート等の有機金属系触媒などが挙げられる。
前記触媒は、1種単独で用いられても2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0057】
前記ポリウレタン樹脂発泡体が前記触媒を含んでいる場合、前記ポリウレタン樹脂発泡体での前記触媒の含有量は、気泡の大きさや数を所望の状態に調整することが容易となる点において、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して0.03質量部以上0.1質量部以下とすることが好ましい。
前記触媒の含有量は、0.05質量部以上0.1質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
本実施形態において用いられる前記整泡剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
【0059】
前記ポリウレタン樹脂発泡体での前記整泡剤の含有量は、その効果をより確実に発揮させる上において、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して1質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る研磨パッドで研磨する被研磨物としては、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス板、シリコンウェハなどが挙げられる。
また、本実施形態に係る研磨パッドは、シリコンウェハやガラス板の研磨に好適に用いられる。
さらに、本実施形態に係る研磨パッドは、仕上げ研磨、精密研磨等に好適に用いられる。
【0061】
次に、本実施形態に係る研磨パッドを製造する製造方法について説明する。
【0062】
本実施形態に係る研磨パッドの製造方法では、ポリウレタン樹脂発泡体を有する研磨パッドを製造する。
また、本実施形態に係る研磨パッドの製造方法では、末端基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、マイクロカプセルと、整泡剤とを混合することにより、マイクロカプセルと気泡としての空気とが分散された分散液を得る。
そして、前記分散液と、活性水素を分子内に複数有する硬化剤とを混合して重合することにより、ポリウレタン樹脂発泡体を有する研磨パッドを得ることができる。
なお、ウレタンプレポリマーとして、ポリプロピレングリコール(PPG)をソフトセグメントとするもの、及び、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)をソフトセグメントとするものを用い、硬化剤として、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン))(MOCA)を用いることにより、ポリウレタン発泡体において、25℃以上75℃以下の温度範囲内において、tanδの値を0.1以上0.4未満に調整し易くなるとともに、第1ピークのピークトップの気泡径を100μm以上200μm以下の範囲内に調整し易くなる。
【0063】
前記マイクロカプセルとしては、熱膨張性マイクロカプセル(熱膨張性中空微粒子)が挙げられる。
前記熱膨張性マイクロカプセルは、未膨張の状態で用いてもよいし、熱膨張させることにより既膨張となった状態で用いてもよい。
前記マイクロカプセルは、「微小球」または「マイクロスフェア」などとも呼ばれる。
前記熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された中空体と、該中空体の中空部分に内包された液状の炭化水素とを備える。
前記熱膨張性マイクロカプセルは、熱によって液状の炭化水素が気化して膨張するものである。
【0064】
前記熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などが挙げられる。
また、前記熱可塑性樹脂としては、重合反応熱でも十分に熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ得るという観点から、ガラス転移温度が70~130℃である熱可塑性樹脂が好ましい。
なお、ガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定することができる。
具体的には、以下のようにして測定する。
すなわち、示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、6mgの試料をアルミニウム製測定容器の底に隙間なく充填して、窒素ガス流量20mL/minの条件の下、昇温速度20℃/minで30℃から300℃まで昇温したときに得られるDSC曲線より、装置付属の解析ソフトを用いて、中間点ガラス転移温度を算出する。
なお、基準物質としてはアルミナを用いる。
また、中間点ガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の9.3「ガラス転移温度の求め方」に記載の方法により求める。
【0065】
前記液状の炭化水素としては、ブタン(イソブタン、ノルマルブタン)、ペンタン(イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン)などが挙げられる。
前記液状の炭化水素としては、重合反応でも十分に熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ得るという観点から、ブタン、及び、ペンタンが好ましい。
また、沸点が-20℃~30℃である炭化水素が好ましい。
【0066】
なお、本発明に係る研磨パッドは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨パッドは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る研磨パッドは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0067】
次に、実施例、及び、比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
(実施例1)
下記表1に示す、プレポリマーと、整泡剤とを下記表1の配合割合で70℃下において混合することにより、空気が気泡として分散した分散液を得た。
次に、前記分散液と、硬化剤とを下記表1の配合割合で混合した重合することにより、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。
【0069】
なお、下記表1の材料は、具体的には以下のものである。

・プレポリマー1:ポリプロピレングリコール(PPG)と、トリレンジイソシアネート(TDI)とを反応させることで得られるウレタンプレポリマー(末端基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー)(NCO質量%:5.8)(タケネートL1150、三井化学社製)
・プレポリマー2:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、TDIとを反応させることで得られるウレタンプレポリマー(NCO質量%:9.2)(ハイプレンL213、三井化学社製)
・硬化剤:MOCA(4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン))
・整泡剤:シリコーン系界面活性剤(デコスターブB8465、エボニック社製)

なお、プレポリマー1及びプレポリマー2の配合割合は、プレポリマー1:プレポリマー2=60:40であった。
【0070】
(実施例2)
プレポリマーとして、プレポリマー1及びプレポリマー2に加えて、プレポリマー3(PPGとTDIとを反応させることで得られるウレタンプレポリマー(NCO質量%:8.0)(タケネートL1080D、三井化学社製))を用い、マイクロカプセル(未膨張中空微粒子、F36D)を用い、これらを混合タンク内で撹拌羽根にて混合することにより分散液を得た。
次に、前記混合タンク内に、硬化剤(MOCA)、触媒(トヨキャットL33)、及び、水を加えた後、撹拌羽根にて、前記分散液、前記硬化剤、前記触媒、及び、前記水を混合して、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。
なお、各成分の配合割合は、下記表1に示した通りである。
また、プレポリマー1、プレポリマー2、及び、プレポリマー3の配合割合は、プレポリマー1:プレポリマー2:プレポリマー3=70:20:10であった。
【0071】
(実施例3)
プレポリマーとして、プレポリマー1及びプレポリマー3を用い、マイクロカプセルを用い、下記表1に示す配合割合にした以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。
なお、プレポリマー1及びプレポリマー3の配合割合は、プレポリマー1:プレポリマー3=30:70であった。
【0072】
(比較例1)
プレポリマーとして、プレポリマー3のみを用い、下記表1に示す配合割合にした以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。
【0073】
(比較例2)
プレポリマーとして、プレポリマー1のみを用い、下記表1に示す配合割合にした以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。
【0074】
(比較例3)
プレポリマーとして、プレポリマー2及びプレポリマー4(PTMGとH12MDIとを反応させることで得られるウレタンプレポリマー(NCO質量%:7.8)(タケネートL202、三井化学社製)を用い、発泡剤として水を用い、触媒(トヨキャットL33)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。
【0075】
(比較例4)
プレポリマーとして、プレポリマー1のみを用い、発泡剤として水を用い、触媒(トヨキャットL33)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂発泡体たる研磨パッドを得た。
【0076】
[見掛け密度、JIS-A硬度、及び、圧縮率]
各例に係る研磨パッドについて 見掛け密度、JIS-A硬度、及び、圧縮率は、上記した方法で測定した。
その測定結果、下記表1に示した。
【0077】
[tanδ]
各例に係る研磨パッドについて、上記した方法で、25℃以上75℃以下の温度範囲内におけるtanδを測定した。
その結果について、図2に示した。
また、下記表1に、25℃におけるtanδの値(tanδ(25℃))、75℃におけるtanδの値(tanδ(75℃))、及び、tanδ(25℃)に対するtanδ(75℃)の値(tanδ(75℃)/tanδ(25℃))を示した。
さらに、下記表1に、25℃以上75℃以下の温度範囲内におけるtanδの最小値であるtanδMIN、25℃以上75℃以下の温度範囲内におけるtanδの最大値であるtanδMAX、及び、tanδMINに対するtanδMAXの値を示した。
【0078】
[気泡の特性]
各実施例に係る研磨パッドについて、体積基準の気泡径の分布曲線を求めた。その結果を図3に示した。
体積基準の気泡径の分布曲線は、個数基準の気泡径の分布曲線のデータに基づいて求めた。
そして、体積基準の気泡径の分布曲線から、上記した方法で、下記表1に示す気泡の特性を調べた。
なお、図3に示したように、実施例1に係る研磨パッドは、気泡径100μm以上200μm以下の範囲内に第1ピークのピークトップのみを有しており、実施例2及び3に係る研磨パッドは、気泡径100μm以上200μm以下の範囲内に第1ピークのピークトップを有するとともに、気泡径100μm未満に第2ピークのピークトップを有していた。
具体的には、実施例1に係る研磨パッドは、気泡径120μmに前記第1ピークのピークトップを有しており、実施例2に係る研磨パッドは、気泡径60μmに前記第2ピークのピークトップを有していて、気泡径140μmに前記第1ピークのピークトップを有しており、実施例3に係る研磨パッドは、気泡径60μmに前記第2ピークのピークトップを有していて、気泡径140μmに前記第1ピークのピークトップを有していた。
【0079】
[評価試験]
各例に係る研磨パッドを用いて、下記条件で被研磨物を研磨し、研磨速度、並びに、研磨後における被研磨物の表面粗さ(算術平均表面粗さRa)及び研磨後における被研磨物のΔGBIRを求めた。

・被研磨物:シリコンベアウェハ(厚み:約760μm)
・研磨機:ポリッシングマシンPNX332B、岡本工作機械製作所社製
・ヘッドタイプ:ゴム
・研磨用スラリーの流量:600mL/min
・研磨回数:2回
・研磨用スラリーのタイプ:NP7050AH×10
・研磨時間:2min
・ウェハ/ガイド圧力:11kPa/16Pa
・ヘッドスピード:30rpm
・プラテンスピード:33rpm
【0080】
<研磨速度>
研磨速度は、研磨によって減少した厚みを研磨時間で除することにより求めた。
なお、厚みは、Nano-metrics社製のnanospecAFT5100で測定した。
研磨速度を求めた結果について、下記表1に示した。
【0081】
<表面粗さ(算術平均粗さ)>
表面粗さ(算術平均粗さ)は、以下の条件で測定した。
なお、2回目の研磨後の被研磨物についてRaを測定した。

・装置:Bruker社製、Wyko NT9300
・測定モード:PSI
・内部レンズ:×1
・対物レンズ:×50
・視野範囲:94μm×125μm

算術平均粗さRaを求めた結果について、下記表1に示した。
【0082】
<ΔGBIR>
研磨前(1回目の研磨前。すなわち、初期状態)の被研磨物、及び、2回目の研磨後の被研磨物について、GBIR(研磨前につき、GBIR1、2回目の研磨後につき、GBIR2)をそれぞれ測定した。
そして、下記式に基づいて、ΔGBIRを算出した。

ΔGBIR = GBIR1-GBIR2

なお、GBIR(Global backside ideal range)は、黒田精工社製のナノメトロ300TT-Aを用いて測定した。
ΔGBIRを求めた結果について、下記表1に示した。
【0083】
【表1】
【0084】
表1より、実施例1~3では、いずれも、研磨速度が0.12μm/min以上と高い値を示していることが分かる。
また、表1より、実施例1~3では、いずれも、表面粗さ(算術平均表面粗さ)の値が0.53nm以下と低い値を示すとともに、ΔGBIRの値についても、0.098以下と低い値を示していた。すなわち、実施例1~3では、平坦性に優れることが分かる。
これに対し、比較例1では、研磨速度は0.12μm/minと高い値を示しているものの、表面粗さの値及びΔGBIRの値はいずれも高い値を示しており、平坦性に劣ることが分かる。
また、比較例2では、研磨速度の値が0.08μm/minと低い値を示しており、研磨速度を十分に確保できていないことが分かる。
さらに、比較例3では、研磨速度の値が0.09μm/minと低い値を示すとともに、表面粗さ(算術平均粗さ)の値が0.78nmと高い値を示しており、研磨速度及び平坦性の両方を十分に確保できていないことが分かる。
また、比較例4では、研磨速度の値が0.09μm/minと低い値を示すとともに、表面粗さ(算術平均粗さ)の値が0.61nmと高い値を示し、かつ、ΔGBIRの値も0.135と高い値を示しており、研磨速度及び平坦性の両方を十分に確保できていないことが分かる。
これらにより、ポリウレタン樹脂発泡体が、25℃以上75℃以下の温度範囲内において、tanδの値が0.1以上0.4未満であり、かつ、ポリウレタン樹脂発泡体の体積基準の気泡径の分布曲線は、横軸を気泡径、縦軸を気泡の体積として描いた際に、第1ピークを有しており、前記第1ピークのピークトップの気泡径が、100μm以上200μm以下の範囲内にあることにより、研磨パッドは、被研磨物の研磨速度を十分に高めつつ、被研磨物の被研磨面の平坦性を高めることができるものとなることが分かる。
【0085】
[累積体積頻度10%の気泡径及び累積体積頻度80%の気泡径]
図3に示した体積基準の気泡径の分布曲線から、各例に係る研磨パッドについて、累積体積頻度10%の気泡径(累積体積頻度が10%となるときの気泡径。以下、累積体積10%径ともいう)及び累積体積頻度80%の気泡径(累積体積頻度が80%となるときの気泡径。以下、累積体積80%径ともいう)を求めた。
また、累積体積80%径と累積体積10%径との差分値についても求めた。
これらの結果を以下の表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
表2より、各実施例に係る研磨パッドは、累積体積80%径と累積体積10%径との差分値が60μmを超える高い値となっていること、すなわち、気泡径が比較的広い範囲に渡って分布していることが分かった。
【符号の説明】
【0088】
1 研磨パッド、2 被研磨物、
1a 研磨面、2a 被研磨面。
図1
図2
図3