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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241127BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241127BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241127BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241127BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
B32B27/00 M
B32B27/16 101
H01L21/78 M
H01L21/304 622J
C09J133/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020506838
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050377
(87)【国際公開番号】W WO2020137980
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018241138
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】塩島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和泉
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/078193(WO,A1)
【文献】特開2015-147894(JP,A)
【文献】特開2017-082104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/16
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと前記基材フィルムの片面に積層された紫外線硬化型粘着剤層とを有する粘着テープであって、
前記紫外線硬化型粘着剤層は、シリコーン又はフッ素化合物を含有し、
前記紫外線硬化型粘着剤層は、紫外線照射前の23℃における貯蔵弾性率G’が5.0×10 Pa以上、1.0×10 Pa以下であり、
前記粘着テープの前記基材フィルム側の表面に405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の前記紫外線硬化型粘着剤層のゲル分率が90%以上であり、
前記粘着テープの前記基材フィルム側の表面に前記405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の粘着テープのX℃における引張弾性率をEt(X)としたとき、Et(270)の値が1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下である、粘着テープ。
【請求項2】
基材フィルムと前記基材フィルムの片面に積層された紫外線硬化型粘着剤層とを有する粘着テープであって、
前記紫外線硬化型粘着剤層は、重合性ポリマーと、架橋剤と、シリコーン又はフッ素化合物を含有し、
前記重合性ポリマーは、(メタ)アクリルポリマーであり、
前記(メタ)アクリルポリマーは、アルキル基の炭素数が2~18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、官能基含有モノマーに由来する構成単位とを含み、
前記粘着テープの前記基材フィルム側の表面に405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の前記紫外線硬化型粘着剤層のゲル分率が90%以上であり、
前記粘着テープの前記基材フィルム側の表面に前記405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の粘着テープのX℃における引張弾性率をEt(X)としたとき、Et(270)の値が1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下である、粘着テープ。
【請求項3】
前記紫外線硬化型粘着剤層は、更に重合開始剤を含有し、
前記シリコーン又はフッ素化合物は、前記重合性ポリマーと架橋可能な官能基を有し、
前記(メタ)アクリルポリマーは、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーである、請求項2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記紫外線硬化型粘着剤層は、フィラーを含有する、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記基材フィルムの405nmの紫外線透過率が1%以上である、請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
Et(270)/Et(200)の値が0.1以上である、請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記基材フィルムのX℃における引張弾性率をEf(X)としたとき、Ef(270)の値が5.0×10Pa以上である、請求項1、2、3、4、5又は6記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着テープの前記基材フィルム側の表面に前記405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後、25℃から5℃/minの速度で280℃まで昇温し、昇温後10分間ホールドした際の重量減少率が5%以下である、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記基材フィルムは、アミド、イミド、エーテル及びケトンからなる群から選択される少なくとも1種を繰り返し単位の主鎖骨格中に有する樹脂を含有する、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記基材フィルムは、炭素数が4以上12以下の長鎖アルキル基又は芳香族を繰り返し単位の主鎖骨格中に有するポリアミド樹脂を含有する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の粘着テープ
【請求項11】
前記基材フィルムの前記紫外線硬化型粘着剤層が積層している面とは反対側の面に粘着剤層を有する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の粘着テープ。
【請求項12】
電子部品を製造するために用いられる、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの製造工程において、ウエハや半導体チップの加工時の取扱いを容易にし、破損を防止するために粘着テープが用いられている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合、厚膜ウエハに粘着テープを貼り合わせた後に研削が行われる。
【0003】
このような粘着テープに用いられる接着剤組成物には、加工工程中にウエハや半導体チップ等の被着体を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後にはウエハや半導体チップ等の被着体を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離を実現した接着剤組成物として、特許文献1には紫外線等の光を照射することにより硬化して粘着力が低下する光硬化型粘着剤を用いた粘着テープが開示されている。粘着剤として光硬化型粘着剤を用いることで、加工工程中には確実に被着体を固定できるとともに、紫外線等を照射することにより容易に剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-32946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体製品の薄化、小型化によって、ウエハ上に半導体チップを多数積層した半導体デバイスが製造されるようになってきている。このような多数の半導体チップが積層された半導体デバイスの製造では、粘着テープによりウエハや半導体チップを保護した状態で、熱圧着ボンディング工程によって半導体チップをウエハや半導体チップ上に固定している。
本発明者らは、熱圧着ボンディングでは260℃という従来の高温処理を超える高温がかかるため、従来の硬化型粘着剤を用いた粘着テープであっても高温処理の熱に耐えきれずに粘着テープの基材フィルムが収縮し、その収縮によって粘着剤層が引っ張られることで粘着テープが剥離してしまうことを見出した。また、熱圧着ボンディングでは高温に加えて圧力もかかることから、粘着剤の接着亢進が進行しやすく、糊残りが発生しやすくなっている。更に、熱圧着ボンディング工程が行われるウエハは、粘着テープの貼り付け面に凹凸の大きなバンプが形成されていることが多く、凹凸の奥の部分に粘着剤が噛みこんでしまうと、剥離の際に千切れて糊残りとなってしまう。
【0006】
本発明は、260℃に達する高温処理を伴う工程に用いた場合であっても被着体を保護し、かつ、糊残りなく剥離することができる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材フィルムと前記基材フィルムの片面に積層された紫外線硬化型粘着剤層とを有する粘着テープであって、前記粘着テープの前記基材フィルム側の表面に405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の前記紫外線硬化型粘着層のゲル分率が90%以上であり、前記粘着テープの前記基材フィルム側の表面に前記405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の粘着テープのX℃における引張弾性率をEt(X)としたとき、Et(270)の値が1.0×10Pa以上である、粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の粘着テープは、上記基材フィルムの片面に積層された紫外線硬化型粘着剤層を有する。
粘着テープが紫外線硬化型粘着剤層を有することで、充分な粘着力で被着体に貼り付けて被着体を保護できるとともに、貼り付け後に紫外線硬化型粘着剤層を硬化させることによって、高温処理が行われる場合であっても被着体を保護することができる。また、保護が不要となった後は糊残りなく容易に粘着テープを剥離することができる。
【0009】
本発明の粘着テープは、上記粘着テープの上記基材フィルム側の表面に405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の上記紫外線硬化型粘着層のゲル分率が90%以上である。
紫外線照射後の紫外線硬化型粘着剤層のゲル分率が90%以上であることで、高温下でも接着亢進が進行しにくくなることから、保護が不要となった後に糊残りなく粘着テープを剥離することができる。また、粘着テープの耐薬品性も向上させることができる。また、上記基材フィルム側の表面に紫外線を照射して紫外線硬化型粘着剤層を硬化させることができれば、粘着テープを被着体と貼り合わせた後に紫外線硬化型粘着剤層を硬化させることが可能になる。粘着テープの接着亢進の抑制性と耐薬品性をより向上させる観点から、紫外線照射後の上記紫外線硬化型粘着剤層のゲル分率は、93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることが更に好ましい。
なお、紫外線照射後の上記紫外線硬化型粘着剤層のゲル分率は、通常100%以下である。
なお、本発明の粘着テープが基材フィルムの他の面にも粘着剤層等の他の層が積層されている構造である場合、上記基材フィルム側とは、基材フィルムの紫外線硬化型粘着剤層が積層した面とは反対側の面のことを指す。
【0010】
本発明の粘着テープは、上記粘着テープの上記基材フィルム側の表面に上記405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後の粘着テープのX℃における引張弾性率をEt(X)としたとき、Et(270)の値が1.0×10Pa以上である。
紫外線照射後の粘着テープが270℃において上記範囲の引張弾性率を有していることで、耐熱性に優れる粘着テープとすることができ、260℃に達する高温処理を行っても粘着テープが軟化、収縮しづらくなり、粘着テープの意図せぬ剥離を抑えることができる。上記Et(270)の好ましい下限は3.0×10Pa、より好ましい下限は5.0×10Pa、更に好ましい下限は1.0×10Paである。上記Et(270)の上限は特に限定されないが、粘着テープの取り扱い性の観点から1.0×10Paであることが好ましい。
なお、上記粘着テープの引張弾性率は、以下の方法で測定することができる。
405nmの紫外線を、積算強度が3000mJ/cmとなるように基材フィルム側の表面から紫外線硬化型粘着剤層に照射することにより、紫外線硬化型粘着剤層を硬化させる。次いで、長辺がテープ製造時の流れ方向と同一になるよう打抜き刃を用いて打抜くことで、5mm×35mmの試験片を作製する。得られた試験片を液体窒素に浸漬して-50℃まで冷却し、その後、粘弾性スペクトロメーター(DVA-200、アイティー計測制御社製、又はその同等品)を用いて、定速昇温引張モードの10℃/分、周波数10Hzの条件で300℃まで昇温し、引張弾性率を測定する。このときの温度X℃における引張弾性率(E’)の値を、Et(X)とする。すなわち、温度270℃における引張弾性率(E’)の値が、Et(270)となる。
【0011】
本発明の粘着テープは、Et(270)/Et(200)の値が0.1以上であることが好ましい。
紫外線照射後の粘着テープの270℃における引張弾性率と200℃における引張弾性率との差が小さいことで、より耐熱性に優れる粘着テープとすることができ、粘着テープの意図せぬ剥離をより抑えることができる。上記剥離をさらに抑制する観点から、上記Et(270)/Et(200)の値は0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることが更に好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。上記Et(270)/Et(200)の値の上限は特に限定されず、1に近ければ近いほど良いものであるが、通常1以下であり、0.8未満であることが好ましい。
【0012】
本発明の粘着テープは、上記粘着テープの上記基材フィルム側の表面に上記405nmの紫外線を3000mJ/cm照射した後、25℃から5℃/minの速度で280℃まで昇温し、昇温後10分間ホールドした際の重量減少率が5%以下であることが好ましい。
280℃の高温下における重量減少が少ない、つまり、高温で熱分解を起こしにくいことによって、熱分解によって生じるアウトガスの量が少なくなり、被着体と粘着テープの界面に集まったアウトガスが起点となって剥離することを抑止できる。高温下での剥離を抑制する観点から、上記重量減少率は、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましく、通常、0%以上である。
なお、上記重量減少率は、以下の方法で測定することができる。
405nmの紫外線を、積算強度が3000mJ/cmとなるように基材フィルム側の表面から紫外線硬化型粘着剤層に照射することにより、紫外線硬化型粘着剤層を硬化させる。次いで、粘着テープをφ5mmの円状に打抜き測定サンプルを作製する。得られた測定サンプルの重量を測定し、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製、又はその同等品)を用いて測定を行う。昇温速度は5℃/minとし、25℃から280℃まで昇温し、280℃の状態で10分間保持した後の測定サンプルの重量を測定する。加熱前後の重量から重量減少率を算出することができる。
【0013】
上記基材フィルムは、405nmの紫外線透過率が1%以上であることが好ましい。
基材フィルムの405nmの紫外線透過率が1%以上であることで、基材フィルム越しに紫外線硬化型粘着剤層を硬化させることができ、上記紫外線照射後の紫外線硬化型粘着層のゲル分率を調整しやすくなる。この結果、接着亢進による被着体への糊残りを抑制することができる。上記紫外線透過率は10%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが特に好ましい。上記紫外線透過率がこれらの下限以上であることで、光増感剤を用いずとも、紫外線硬化型粘着剤層を充分に硬化させることができる。上記紫外線透過率の上限は特に限定されず、高ければ高いほどよく、通常、100%以下である。
なお、紫外線透過率は、分光光度計(U-3900、日立製作所社製、又はその同等品)を用いて測定することができる。より具体的には、800~200nmの領域でスキャンスピード300nm/min、スリット間隔4nmで測定し、405nmにおける透過率を測定することができる。
【0014】
上記基材フィルムは、X℃における引張弾性率をEf(X)としたとき、Ef(270)の値が5.0×10Pa以上であることが好ましい。
上記基材フィルムの270℃における引張弾性率が上記範囲であることで、より耐熱性に優れた粘着テープとすることができ、高温処理中の基材フィルムの熱収縮や軟化による剥離を抑えることができる。上記Ef(270)のより好ましい下限は1.0×10Pa、更に好ましい下限は5.0×10Pa、特に好ましい下限は1.0×10Paである。上記Ef(270)の上限は特に限定されないが、粘着テープの取り扱い性の観点から1.0×1010Paであることが好ましい。
なお、上記基材フィルムの引張弾性率は、上記粘着テープの引張弾性率と同様の方法で測定することができる。
【0015】
上記基材フィルムは、得られる粘着テープが上記範囲の引張弾性率及びゲル分率を満たせば特に限定されないが、耐熱性と強度に優れることから、上記基材フィルムは、アミド、イミド、エーテル及びケトンからなる群から選択される少なくとも1種を繰り返し単位の主鎖骨格中に有する樹脂を含有することが好ましい。
上記アミド、イミド、エーテル及びケトンからなる群から選択される少なくとも1種を繰り返し結合単位の主鎖骨格中に有する樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリケトン等が挙げられる。なかでも、耐熱性と強度により優れることから、上記基材フィルムはポリアミド樹脂を含有することが好ましく、更に紫外線透過性にも優れることから、炭素数が4以上12以下の長鎖アルキル基又は芳香族を繰り返し単位の主鎖骨格中に有するポリアミド樹脂を含有することがより好ましい。
上記炭素数が4以上12以下の長鎖アルキル基又は芳香族を繰り返し単位の主鎖骨格中に有するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン9T、ナイロン6T等が挙げられる。
【0016】
上記基材フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましい下限が25μm、より好ましい下限が50μm、好ましい上限が250μm、より好ましい上限が125μmである。上記基材フィルムがこの範囲であることで取り扱い性に優れる粘着テープとすることができる。
【0017】
上記紫外線硬化型粘着剤層を構成する粘着剤は、紫外線硬化型であれば特に限定されないが、例えば、重合性ポリマーを主成分とし、重合開始剤として紫外線重合開始剤を含有する紫外線硬化型粘着剤が挙げられる。上記重合性ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリルポリマー、ウレタンアクリレートポリマー等が挙げられる。なかでも、上記ゲル分率と上記Et(270)を満たしやすいことから、(メタ)アクリルポリマーであることが好ましく、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーであることがより好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマーをあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物とを反応させることにより得ることができる。なお、以下「分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー」のことを「官能基含有(メタ)アクリル系ポリマー」といい、「分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物」のことを「官能基含有不飽和化合物」という。
【0018】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数が通常2~18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万~200万程度である。なお、本明細書において重量平均分子量は通常、GPC法によって決定することができ、例えば、40℃において溶出液としてTHF、カラムとしてHSPgel HR MB-M 6.0×150mm(Waters社製)を用いて、ポリスチレン標準により決定することができる。
【0019】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマーや、ヒドロキシル基含有モノマーや、エポキシ基含有モノマーや、イソシアネート基含有モノマーや、アミノ基含有モノマー等が挙げられる。上記カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。上記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。上記エポキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。上記イソシアネート基含有モノマーとしては、アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等が挙げられる。上記アミノ基含有モノマーとしては、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等が挙げられる。
【0020】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0021】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシ基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられる。同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられる。同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシ基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられる。同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0022】
上記紫外線重合開始剤は、例えば、200~410nmの波長の紫外線を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような紫外線重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等が挙げられる。上記アセトフェノン誘導体化合物としては、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。上記ベンゾインエーテル系化合物としては、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。上記ケタール誘導体化合物としては、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等が挙げられる。これらの紫外線重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することが好ましい。上記紫外線硬化型粘着剤層がラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、紫外線硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、重量平均分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは紫外線の照射による紫外線硬化型粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その重量平均分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2~20個のものである。上記重量平均分子量は、例えばGPC測定法を用いて決定することができる。
【0024】
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、紫外線硬化型粘着剤の凝集力を高める目的で架橋剤を含有していてもよい。
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、より紫外線硬化型粘着剤の凝集力が高まることからイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0026】
上記架橋剤は、上記粘着剤層中に0.1~20重量%含有されていることが好ましい。
架橋剤が上記範囲で含有されていることで、紫外線硬化型粘着剤を適度に架橋して、高い粘着力を維持しながら紫外線硬化型粘着剤の凝集力をより高めることができる。高い粘着力を維持しながら紫外線硬化型粘着剤の凝集力をさらに高める観点から、上記架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、更に好ましい下限は1.0重量%、より好ましい上限は15重量%、更に好ましい上限は10重量%である。
【0027】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、シリコーン又はフッ素化合物を含有することが好ましい。
上記紫外線硬化型粘着剤層がシリコーン又はフッ素化合物を含有することで、紫外線硬化型粘着剤層と被着体との界面にシリコーン又はフッ素化合物がブリードアウトするため、処理終了後に粘着テープを容易かつ糊残りなく剥離することができる。上記シリコーン又はフッ素化合物としては、例えば、シリコーンジアクリレート、フルオロアルキル基を有する高分子(例えば、フルオロアクリレートに由来する構成単位を有する(メタ)アクリル系共重合体)等が挙げられる。
【0028】
上記シリコーン又はフッ素化合物は、上記重合性ポリマーと架橋可能な官能基を有することが好ましい。
上記シリコーン又はフッ素化合物が上記重合性ポリマーと架橋可能な官能基を有することで、架橋剤又は紫外線照射によりシリコーン又はフッ素化合物が重合性ポリマーと化学反応して重合性ポリマーと結合することができる。これにより、被着体にシリコーン又はフッ素化合物が付着することによる汚染が抑制される。
上記重合性ポリマーと架橋可能な官能基としては、上記重合性ポリマーに含まれる官能基によって適宜選択されるが、例えば、カルボキシ基、ラジカル重合性の不飽和結合、水酸基、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。なかでも、ラジカル重合性の不飽和結合が好ましい。上記シリコーン又はフッ素化合物が上記重合性ポリマーと架橋可能な官能基としてラジカル重合性の不飽和結合を有することで、紫外線照射によりシリコーン又はフッ素化合物が重合性ポリマーと化学反応して重合性ポリマー中に取り込まれることから、被着体にシリコーン又はフッ素化合物が付着することによる汚染がより抑制される。
上記シリコーン又はフッ素化合物における架橋可能な官能価は、例えば2~6価、好ましくは2~4価、より好ましくは2価である。
【0029】
上記重合性ポリマーと架橋可能な官能基としては、上記重合性ポリマーに含まれる官能基によって適宜決定されるが、例えば、重合性ポリマーが、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系である場合には、不飽和結合と架橋可能な官能基を選択することが好ましい。
上記不飽和結合と架橋可能な官能基は、不飽和二重結合を有する官能基であり、具体的には例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基、アリル基、マレイミド基等を含有するシリコーン又はフッ素化合物等を選択する。
【0030】
上記紫外線硬化型粘着剤層中における上記シリコーン又はフッ素化合物の含有量は、好ましい下限が2重量%、より好ましい下限が5重量%、更に好ましい下限が10重量%、好ましい上限が40重量%、より好ましい上限が35重量%、更に好ましい上限が30重量%である。
上記シリコーン又はフッ素化合物の含有量が上記範囲であることで、粘着テープから発生するアウトガス量を低減することができ、より耐熱性と糊残り防止性能に優れた粘着テープとすることができる。
【0031】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、ウレタンアクリレートを含有することが好ましい。
上記紫外線硬化型粘着剤層がウレタンアクリレートを含有することで、粘着テープの柔軟性が向上し、得られる粘着テープを千切れにくくすることができる。
【0032】
上記紫外線硬化型粘着剤層中における上記ウレタンアクリレートの含有量は、好ましい上限が20重量%、より好ましい上限が15重量%、更に好ましい上限が10重量%である。上記ウレタンアクリレートの含有量が上記範囲であることで、より耐熱性と糊残り抑制性能に優れた粘着テープとすることができる。上記ウレタンアクリレートの含有量の下限は特に限定されないが、粘着テープをより千切れにくくして糊残りを抑える観点から1重量%であることが好ましい。
【0033】
上記紫外線硬化型粘着剤層中における上記シリコーン又はフッ素化合物と、上記ウレタンアクリレートとの合計含有量は50重量%以下であることが好ましい。
上記シリコーン又はフッ素化合物と、上記ウレタンアクリレートとの合計含有量が上記範囲であることで、これらの成分の熱分解によって発生するアウトガスの量を抑えられることから、耐熱性を向上させながらもアウトガスによる意図せぬ剥離を抑えることができる。上記剥離をさらに抑制する観点から、上記シリコーン又はフッ素化合物と、上記ウレタンアクリレートとの合計含有量のより好ましい上限は40重量%、更に好ましい上限は25重量%である。
【0034】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、フィラーを含有することが好ましい。
上記紫外線硬化型粘着剤層がフィラーを含有することで弾性率が向上することから粘着テープの耐熱性を向上させることができる。上記フィラーの材料としては例えば、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、カルシウム、ホウ素、マグネシウム、ジルコニア等が挙げられる。なかでもより耐熱性が向上することからシリカであることが好ましい。
【0035】
上記フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.06μm、より好ましい下限が0.07μm、好ましい上限が2μm、より好ましい上限が1μmである。フィラーの平均粒子径が上記範囲であることで、紫外線硬化型粘着剤に対する分散性をより向上させることができる。
【0036】
上記紫外線硬化型粘着剤層中における上記フィラーの含有量は、好ましい下限が1重量%、より好ましい下限が3重量%、好ましい上限が18重量%、より好ましい上限が12重量%である。
上記フィラーの含有量が上記範囲であることで、より耐熱性に優れた粘着テープとすることができる。
【0037】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、刺激によって気体を発生させる気体発生剤を含有することが好ましい。
上記紫外線硬化型粘着剤層が気体発生剤を含有することによって、工程終了後に刺激を与えて気体を発生させることで、被着体と粘着テープとの間に気体による隙間が生じることから、より容易に粘着テープを剥離することができる。
上記気体発生剤は特に限定されないが、高温処理工程に用いることができることから光によって気体を発生させる気体発生剤であることが好ましい。なかでも、加熱を伴う処理に対する耐性に優れることから、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸等のカルボン酸化合物又はその塩や、1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5,5-アゾビス-1H-テトラゾール等のテトラゾール化合物又はその塩等が好適である。このような気体発生剤は、紫外線等の光を照射することにより気体を発生する一方、260℃程度の高温下でも分解しない高い耐熱性を有する。
【0038】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、光増感剤を含有してもよい。上記光増感剤を含有することで、上記基材フィルムの405nmの紫外線透過率が低い場合であっても、紫外線硬化型粘着剤層を充分に硬化させることができる。また、上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができる。
上記光増感剤としては、例えば2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物や、ジブチルアントラセン、ジプロピルアントラセン等のアントラセン系化合物等が挙げられる。また、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’メチルジフェニルサルファイド等も挙げられる。これらの光増感剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なお、上記光増感剤は高温下で熱分解してアウトガスを発生させ、紫外線硬化型粘着剤層を発泡させるため、大量に用いると糊残りや意図せぬ剥離の原因となってしまうことがある。そのため、上記光増感剤はできる限り用いる量を少なくすることが好ましい。
【0039】
上記紫外線硬化型粘着剤層は、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いられてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記紫外線硬化型粘着剤層の紫外線照射前の貯蔵弾性率G’は特に限定されないが、23℃における貯蔵弾性率G’が5.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下であることが好ましい。紫外線照射前の紫外線硬化型粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’が上記範囲であることで、充分な粘着力で被着体を保護することができる。紫外線照射前の紫外線硬化型粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’は、紫外線硬化型粘着剤層を構成する粘着剤の種類、フィラーの種類及び量等によって調節することができる。
上記紫外線硬化型粘着剤層の23℃における紫外線照射前の貯蔵弾性率G’は、粘弾性スペクトロメーター(例えば、DVA-200、アイティー計測制御社製)を用いて、定速昇温せん断モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で貯蔵弾性率を測定することで求めることができる。
【0041】
上記紫外線硬化型粘着剤層の厚さは特に限定されないが、下限が5μm、上限が100μmであることが好ましい。上記紫外線硬化型粘着剤層の厚みが上記範囲であると充分な粘着力で被着体を保護することができ、更に剥離時の糊残りを抑制することもできる。粘着力を更に向上させると共に剥離時の糊残りを更に抑制する観点から、上記紫外線硬化型粘着剤層の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は60μmである。
【0042】
本発明の粘着テープは、上記基材フィルムの上記紫外線硬化型粘着剤層が積層している面とは反対側の面に粘着剤層を有することが好ましい。
本発明の粘着テープが基材フィルムの片面に紫外線硬化型粘着剤層を有し、もう片方の面に粘着剤層を有した両面粘着テープであることで、両面粘着テープを介してガラス等の支持体と被着体とを接着できることから、支持体を用いた半導体デバイスの製造工程を行うことができる。
【0043】
上記粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることからアクリル系又はシリコーン系粘着剤が好ましい。
また、上記粘着剤層を構成する粘着剤として、上述したような紫外線硬化型粘着剤を用いることもできる。上記紫外線硬化型粘着剤を用いることによって、充分な粘着力で支持体を保持することができ、支持体が透明支持体である場合は貼り付け後に上記紫外線硬化型粘着剤からなる粘着剤層を硬化させることによって、高温処理が行われる場合であっても支持体を保持することができる。また、支持体が不要となった後は容易に支持体を除去することができる。
【0044】
上記粘着剤層は、刺激によって気体を発生させる気体発生剤を含有することが好ましい。
上記粘着剤層が気体発生剤を含有することによって、工程終了後に刺激を与えて気体を発生させることで、容易に支持体と粘着テープとを剥離することができる。
上記気体発生剤は上記紫外線硬化型粘着剤層の気体発生剤と同様のものを用いることができる。
【0045】
上記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、下限が5μm、上限が30μmであることが好ましい。上記粘着剤層の厚みが上記範囲であると充分な粘着力で支持体と接着することができる。支持体との接着力をさらに高める観点から、上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は20μmである。
【0046】
上記粘着剤層は、光増感剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いられてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明の粘着テープは上記基材フィルムと上記紫外線硬化型粘着剤層との間にアンカー層を有していてもよい。
上記基材フィルムと上記紫外線硬化型粘着剤層との間にアンカー層を有すると、紫外線硬化型粘着剤層にシリコーン又はフッ素化合物が含まれる場合に、シリコーン又はフッ素化合物が基材フィルム側にブリードアウトして紫外線硬化型粘着剤層が基材フィルムから剥離してしまうことを抑止できる。
【0048】
上記アンカー層としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。なかでも、アンカー性能に優れることからアクリル系粘着剤が好ましい。
【0049】
上記アンカー層は、必要に応じて、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いられてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記アンカー層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は30μmである。上記アンカー層の厚みがこの範囲内であると、上記紫外線硬化型粘着剤層と基材フィルムとのアンカー力をより向上させることができる。上記紫外線硬化型粘着剤層と基材フィルムとのアンカー力を更に向上させる観点から、上記アンカー層の厚みのより好ましい下限は3μm、より好ましい上限は10μmである。
【0051】
本発明の粘着テープを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、離型処理を施したフィルム上に上記紫外線硬化型粘着剤成分の溶液を塗工、乾燥させて紫外線硬化型粘着剤層を形成し、基材フィルムと貼り合わせることで製造することができる。また、本発明の粘着テープが上記粘着剤層を有する場合は、上記粘着剤層を構成する粘着剤の溶液を用いて、上記紫外線硬化型粘着剤層と同様の方法で粘着剤層を形成し、基材フィルムの上記紫外線硬化型粘着剤層が貼り合された面とは反対側の面に貼り合わせることで製造することができる。
【0052】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、高温かつ圧力が加わるような過酷な環境で用いた場合であっても被着体を保護して糊残りなく剥離が可能であることから、電子部品の製造においてウエハや半導体チップ等を保護するための保護テープとして特に好適に用いることができる。
このような電子部品を製造する方法として、例えば、次のような電子部品の製造方法が挙げられる。即ち、本発明の粘着テープを、紫外線硬化型粘着剤層から基板に貼り付ける基板貼付工程と、紫外線を照射して上記紫外線硬化型粘着剤層を硬化させる硬化工程と、上記基板を260℃以上の高温で処理する熱処理工程と、上記基板を本発明の粘着テープから剥離する剥離工程とをこの順で含む、方法である。
また、本発明の一実施態様である、上記基材フィルムの上記紫外線硬化型粘着剤層が積層している面とは反対側の面に粘着剤層を有する粘着テープを用いた、次のような電子部品の製造方法も挙げられる。即ち、粘着テープを、紫外線硬化型粘着剤層から基板に貼り付ける基板貼付工程と、上記粘着剤層上に支持体を貼り付ける支持体貼付工程と、紫外線を照射して上記紫外線硬化型粘着剤層を硬化させる硬化工程と、上記基板を260℃以上の高温で処理する熱処理工程と、上記基板を粘着テープから剥離する剥離工程とをこの順で含む、方法である。また、粘着テープを、紫外線硬化型粘着剤層から基板に貼り付ける基板貼付工程と、紫外線を照射して上記紫外線硬化型粘着剤層を硬化させる硬化工程と、上記粘着剤層上に支持体を貼り付ける支持体貼付工程と、上記基板を260℃以上の高温で処理する熱処理工程と、上記基板を粘着テープから剥離する剥離工程とをこの順で含む、方法である。
【0053】
上記基板は特に限定されず、例えば、シリコンウエハ、半導体ウエハ、半導体チップ等が挙げられる。
上記支持体は特に限定されず、例えば、ガラス、ポリイミドフィルム、ガラスエポキシ基板等が挙げられる。
上記260℃以上の高温で処理する熱処理工程の温度上限は特に限定されず、例えば400℃、好ましくは300℃である。
上記260℃以上の高温で処理する熱処理工程は特に限定されず、例えば、基板製造工程、チップマウント工程、熱圧着ボンディング工程、リフロー工程等が挙げられる。より具体的には、例えば、粘着テープが数十秒~1分間ほど260℃以上に加熱される熱圧着ボンディング工程又はリフロー工程等が挙げられる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、260℃に達する高温処理を伴う工程に用いた場合であっても被着体を保護し、かつ、糊残りなく剥離することができる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
(紫外線硬化型粘着剤Aの製造)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート94重量部、官能基含有モノマーとしてメタクリル酸ヒドロキシエチル6重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させて重合性ポリマー(アクリルポリマー)Aを得た。その後、得られたアクリルポリマーAの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、離型剤(シリコーン)20重量部、フィラー3重量部、ウレタンアクリレート10重量部、架橋剤0.2重量部、光重合開始剤1重量部、を混合し、紫外線硬化型粘着剤Aの酢酸エチル溶液を得た。なお、離型剤(シリコーン)、フィラー、ウレタンアクリレート、架橋剤、光重合開始剤は以下のものを用いた。
離型剤(シリコーン):シリコーンジアクリレート、EBECRYL 350、ダイセル・オルネクス社製、重量平均分子量1000
フィラー:シリカフィラー、レオロシール MT-10、トクヤマ社製
ウレタンアクリレート:UN-5500、根上工業社製
架橋剤:イソシアネート系架橋剤、コロネートL、日本ウレタン工業社製
光重合開始剤:エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製
【0057】
(粘着剤層用粘着剤Aの製造)
紫外線硬化型粘着剤Aの製造で得られたアクリルポリマーAの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、離型剤(シリコーン)10重量部、フィラー12重量部、ウレタンアクリレート20重量部、架橋剤1.2重量部、光重合開始剤1重量部、気体発生剤10重量部、を混合し、粘着剤層用粘着剤Aの酢酸エチル溶液を得た。なお、離型剤(シリコーン)、フィラー、ウレタンアクリレート、架橋剤及び光重合開始剤は紫外線硬化型粘着剤の製造と同じものを用いた。気体発生剤は下記式(A)で表されるビステトラゾール化合物の塩を用いた。
【0058】
【化1】
【0059】
(アンカー層用粘着剤の製造)
アクリルポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、フィラー12重量部、架橋剤5重量部、を混合し、アンカー層用粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。なお、アクリルポリマー、フィラー、架橋剤は以下のものを用いた。
アクリルポリマー:SKダイン 1604N、綜研化学社製
フィラー:シリカフィラー、レオロシール MT-10、トクヤマ社製
架橋剤:イソシアネート系架橋剤、コロネートL、日本ウレタン工業社製
【0060】
(粘着テープの製造)
厚み50μmの離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの離型処理面上に、得られた紫外線硬化型粘着剤Aの酢酸エチル溶液を、乾燥後に粘着剤層の厚みが130μmとなるように塗工した後、100℃で10分間乾燥させて紫外線硬化型粘着剤層を形成した。
一方、別の厚み50μmの離型処理が施されたPETフィルムの離型処理面上に、得られた粘着剤層用粘着剤Aの酢酸エチル溶液を、乾燥後に粘着剤層の厚みが20μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させて粘着剤層を形成した。
さらに別の厚み50μmの離型処理が施されたPETフィルムの離型処理面上に、得られたアンカー層用粘着剤の酢酸エチル溶液を、乾燥後に粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させてアンカー層を形成した。
次いで、両面にコロナ処理が施された厚さ25μmのナイロン9T(ユニアミド、ユニチカ社製)からなるフィルム(ナイロン9Tフィルム)を基材フィルムとして用意し、ナイロン9Tフィルムの片面に作製したアンカー層をラミネートし、PETフィルムを剥離して基材フィルム上にアンカー層を形成した。その後、ナイロン9Tフィルムのアンカー層を形成した面上に得られた紫外線硬化型粘着剤層を貼り合わせ、ナイロン9Tフィルムのアンカー層を形成した面とは反対側の面上に得られた粘着剤層を貼り合わせて、紫外線硬化型粘着剤層/アンカー層/基材フィルム/粘着剤層の構造を有する粘着テープを得た。
【0061】
(基材フィルムの紫外線透過率の測定)
分光光度計(U-3900、日立製作所社製)を用いて基材フィルムの405nmにおける紫外線の透過率を測定した。
【0062】
(Ef(270)の測定)
基材フィルムを5×35mmの寸法に、長辺が基材フィルム製造時の流れ方向と同一となるように打抜き刃を用いて打抜くことで、測定サンプルを得た。得られた測定サンプルを液体窒素に浸漬して-50℃まで冷却し、その後、粘弾性スペクトロメーター(DVA-200、アイティー計測制御社製)を用いて、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で引張弾性率の測定を行い、基材フィルムの270℃における引張弾性率を測定した。
【0063】
(紫外線照射前の貯蔵弾性率G’の測定)
紫外線硬化型粘着層について、粘弾性スペクトロメーター(DVA-200、アイティー計測制御社製)を用いて、定速昇温せん断モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で貯蔵弾性率の測定を行い、紫外線照射前の紫外線硬化型粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’を求めた。
【0064】
(紫外線照射後のゲル分率の測定)
高圧水銀紫外線照射機を用いて、405nmの紫外線を得られた粘着テープの基材フィルム側から粘着テープ表面への積算強度が3000mJ/cmとなるよう照射して、紫外線硬化型粘着剤層を架橋、硬化させた。次いで、硬化後の紫外線硬化型粘着剤層のみを0.1gこそぎ取って酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、120rpmの条件で24時間振とうした(以下、こそぎ取った紫外線硬化型粘着剤層のことを粘着剤組成物という)。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤組成物を分離した。分離後の粘着剤組成物を110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物の重量を測定し、下記式を用いて紫外線照射後のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=100×(W-W)/W
(W:初期粘着剤組成物重量、W:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物重量、W:金属メッシュの初期重量)
【0065】
(Et(270)の測定)
高圧水銀紫外線照射機を用いて、405nmの紫外線を得られた粘着テープの基材フィルム側から粘着テープ表面への積算強度が3000mJ/cmとなるよう照射して、紫外線硬化型粘着剤層を架橋、硬化させた。次いで、長辺が粘着テープ製造時の流れ方向と同一となるように打抜き刃を用いて打抜くことで、5mm×35mmの試験片を作製した。得られた試験片を液体窒素に浸漬して-50℃まで冷却し、その後、粘弾性スペクトロメーター(DVA-200、アイティー計測制御社製)を用いて、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で300℃まで昇温し、引張弾性率を測定した。このときの温度X℃における引張弾性率(E’)の値を、Et(X)とした。すなわち、温度270℃における引張弾性率(E’)の値を、Et(270)とした。
【0066】
(Et(270)/Et(200)の算出)
得られた粘着テープについてEt(270)と同様の方法で、200℃における粘着テープの引張弾性率(Et(200))を測定した。得られたEt(270)及びEt(200)の結果からEt(270)/Et(200)を算出した。
【0067】
(重量減少率の測定)
高圧水銀紫外線照射機を用いて、405nmの紫外線を得られた粘着テープの基材フィルム側から粘着テープ表面への積算強度が3000mJ/cmとなるよう照射して、紫外線硬化型粘着剤層を架橋、硬化させた。次いで、粘着テープをφ5mmの円状に打抜き測定サンプルを得た。得られた測定サンプルの重量を測定し、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて昇温速度5℃/minで25℃から280℃まで昇温した後10分間ホールドした際の重量減少量を測定した。加熱前後の重量から重量減少率を算出した。
【0068】
(実施例2~10、比較例1~4)
基材フィルムの材料及び厚さ、紫外線硬化型粘着剤層の組成を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープを得て、各測定を行った。各材料の詳細を以下に示した。なお、実施例5では、以下に示す紫外線硬化型粘着剤Bを用いた。
(1)基材フィルムの材料
エクスピーク:芳香族ポリエーテルエーテルケトン、クラボウ社製
ユーピレックス:ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp-フェニレンジアミンの共重合体、宇部興産社製
トルセナ:特殊ポリエステル、クラボウ社製
カプトン:無水ピロメット酸とジアミノジフェニルエーテルの共重合体、東レ・デュポン社製
【0069】
(2)紫外線硬化型粘着剤B
(紫外線硬化型粘着剤Bの製造)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート94重量部、官能基含有モノマーとしてメタクリル酸ヒドロキシエチル6重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-イソシアナトエチルメタクリレート1.0重量部を加えて反応させて重合性ポリマー(アクリルポリマー)Bを得た。その後、得られたアクリルポリマーBの酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、離型剤(シリコーン)20重量部、フィラー3重量部、ウレタンアクリレート10重量部、架橋剤0.2重量部、光重合開始剤1重量部、を混合し、紫外線硬化型粘着剤Bの酢酸エチル溶液を得た。なお、離型剤(シリコーン)、フィラー、ウレタンアクリレート、架橋剤、光重合開始剤は紫外線硬化型粘着剤Aと同種類のものを用いた。
【0070】
(3)その他
光増感剤:KAYACURE DETX-S、日本化薬社製
【0071】
<評価>
実施例及び比較例で得た粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0072】
(耐熱性の評価)
直径20cmの円形に切断した粘着テープの紫外線硬化型粘着剤層側を、直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り付けた。次いで、粘着テープの粘着剤層側を、直径20cm、厚さ0.6mmのガラスウエハ(Tempax、SCHOTT社製)に貼り付けた。貼付後、フィルターにより365nm以下の波長をカットした状態で、ガラスウエハ面側から405nmの波長の紫外光を紫外線硬化型粘着剤層への積算強度が3000mJ/cmとなるように照射し、紫外線硬化型粘着剤層及び粘着剤層を架橋、硬化させた。得られたシリコンウエハ/粘着テープ/ガラスウエハの積層体を280℃に設定されたホットプレート(NINOS ND-3H、AZONE社製)の上にシリコンウエハ側を下にして載せ、粘着テープの剥離が発生するまでの時間を測定した。
【0073】
(剥離性の評価)
粘着テープの紫外線硬化型粘着剤層側と直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハとを貼り合わせ、更に、粘着剤層側を直径20cm、厚さ0.6mmのガラスウエハに貼り付けて積層体を得た。次いで、高圧水銀紫外線照射機を用いて、405nmの紫外線を粘着テープの粘着テープ表面への照射強度が100mW/cmとなるよう照度を調節して、ガラスウエハ側から30秒間照射して、紫外線硬化型粘着剤層及び粘着剤層を架橋、硬化させた。その後、積層体を280℃に設定されたホットプレートの上にシリコンウエハ側を下にして載せ10分間の熱処理を行い放冷した。
放冷後、粘着テープをシリコンウエハから剥離した。剥離の際に粘着テープを容易に剥離できた場合を「○」、剥離できなかった場合を「×」として剥離性を評価した。なお、粘着テープが10分以内で剥離した場合、剥離した段階で熱処理を止め、放冷した後の剥離性を評価した。
【0074】
(糊残りの評価)
剥離性の評価において粘着テープ剥離後のシリコンウエハを光学顕微鏡にて観察し、糊残りした面積がシリコンウエハ全体の5%未満であった場合を「◎」、5%以上20%未満であった場合を「○」、20%以上50%未満であった場合を「△」、50%以上であった場合を「×」として糊残りを評価した。
【0075】
(熱圧着時の剥離性の評価)
直径20cmの円形に切断した粘着テープの紫外線硬化型粘着剤層側を、直径20cm、厚さ50μmのバンプ付シリコンウエハ(バンプ径φ=20μm、バンプ間距離30μm、バンプ高さ45μm)のバンプが形成された面に貼り付けた。次いで、粘着テープの粘着剤層側を、直径20cm、厚さ0.6mmのガラスウエハ(Tempax、SCHOTT社製)に貼り付けた。貼付後、フィルターにより365nm以下の波長をカットした状態で、ガラスウエハ面側から405nmの波長の紫外光を紫外線硬化型粘着剤層への積算強度が3000mJ/cmとなるように照射し、紫外線硬化型粘着剤層及び粘着剤層を架橋、硬化させた。得られたシリコンウエハ/粘着テープ/ガラスウエハの積層体を200℃に設定されたオーブンにてガラスウエハ側を下にして1時間静置し、加熱処理をした。
加熱処理後、常温に戻った積層体のシリコンウエハ上に、フリップチップボンダー(FC6000、芝浦メカトロニクス社製)を用い、厚さ50μmの単結晶シリコン薄ウエハチップを積層した。具体的には、80℃に設定されたSUSステージ上に、シリコンウエハ面が上になるように積層体を吸着させ、単結晶シリコン薄ウエハチップ(9.8mm×9.8mm、厚さ50μm、表面粗さ0.1μm未満、厚さ25μmの接合フィルム付き)を、ヘッドサイズ10mm×10mmのセラミックツールを用いて積層した。積層時のヘッドの温度は280℃とし、圧力は300N、積層時間は90秒とした。
単結晶シリコン薄ウエハチップの積層後、粘着テープをシリコンウエハから剥離した。剥離の際に粘着テープを容易に剥離できた場合を「○」、剥離できなかった場合を「×」として熱圧着時の剥離性を評価した。
【0076】
(熱圧着時の糊残りの評価)
熱圧着時の剥離性の評価において粘着テープ剥離後のシリコンウエハを光学顕微鏡にて観察した。500μm四方の範囲に存在するバンプのうち糊残りしているバンプが5%以下であった場合を「◎」、5%より多く20%以下であった場合を「〇」、20%より多く50%以下であった場合を「△」、50%より多かった場合を「×」として熱圧着時の糊残りを評価した。
【0077】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、260℃に達する高温処理を伴う工程に用いた場合であっても被着体を保護し、かつ、糊残りなく剥離することができる粘着テープを提供することができる。