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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電池制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/382 20190101AFI20241127BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20241127BHJP
   G01R 31/388 20190101ALI20241127BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241127BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G01R31/382
G01R31/367
G01R31/388
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/10 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020553028
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2019038752
(87)【国際公開番号】W WO2020085011
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2018201527
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 駿弥
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮平
(72)【発明者】
【氏名】小松 大輝
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】佐々木 祐
【審判官】小島 寛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-57537(JP,A)
【文献】特開2018-48913(JP,A)
【文献】特開2015-154639(JP,A)
【文献】特開2014-134391(JP,A)
【文献】特開2017-138241(JP,A)
【文献】特開2017-223537(JP,A)
【文献】国際公開第2007/099898(WO,A1)
【文献】特開2017-125813(JP,A)
【文献】特開2011-75364(JP,A)
【文献】特開2018-146416(JP,A)
【文献】特開2002-238106(JP,A)
【文献】特開2004-22322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36
G01R31/374
G01R31/382
H01M10/48
H02J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池のSOCOCVとの関係を表す特性から前記二次電池のSOCを求める電池制御装置あって、
前記二次電池の使用履歴情報に基づいて、予め記憶された複数の前記特性の中から第一の特性であるSOC-OCVパターンを呼び出す呼び出し部と、
前記第一の特性に対する修正の許容範囲を定める修正限界幅を指定する修正限界幅指定部と、
前記二次電池の電流値およびOCVに基づいて前記第一の特性を修正し、当該修正後のSOC-OCVパターンと前記修正限界幅とを比較し、当該修正限界内と判定された、前記修正後のSOC-OCVパターンを第二の特性であるSOC-OCVパターンとして出力し、前記修正後のSOC-OCVパターンが前記修正限界幅内と判定されなかった場合は、前記二次電池の電流値およびOCVに基づいて、前記第一の特性を修正する処理を繰り返す直接検知修正部と、を備え、
前記第二の特性を用いて前記二次電池のSOCを求める電池制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記呼び出し部は、前記二次電池の劣化状態、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴の少なくともいずれか一つを前記使用履歴情報として用いて、前記第一の特性を呼び出す電池制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記修正限界幅指定部は、各SOCに対する一定のOCV幅、または各OCVに対する一定のSOC幅を、前記修正限界幅として指定する電池制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記修正限界幅指定部は、予め定められたSOCごとに異なるOCV幅、または予め定められたOCVごとに異なるSOC幅を、前記修正限界幅として指定する電池制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記修正限界幅指定部は、前記二次電池の使用履歴情報に応じて前記修正限界幅を変化させる電池制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電池制御装置において、
前記修正限界幅指定部は、前記第一の特性に基づいて予め記憶された複数の前記修正限界幅の中からいずれかを選択することで、前記二次電池の使用履歴情報に応じて前記修正限界幅を変化させる電池制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記二次電池の電流値およびCCVに基づいて、前記二次電池のOCVおよび分極電圧値を計算する電圧演算部をさらに備え、
前記直接検知修正部は、前記電流値と前記分極電圧値が予め定めた閾値よりそれぞれ小さいときの前記二次電池のOCVを所定の時間範囲内で複数回取得し、取得した各OCVと、前記各OCVの取得期間における電流積算値と、前記第一の特性とを用いて、前記第二の特性を作成する電池制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記修正限界幅指定部は、前記直接検知修正部が過去に作成した前記第二の特性に対する修正の許容範囲を定める第二の修正限界幅を指定し、
前記直接検知修正部は、前記修正限界幅指定部が今回の前記第一の特性に対して指定した前記修正限界幅と、前記修正限界幅指定部が過去の前記第二の特性に対して指定した前記第二の修正限界幅とを用いて、前記第二の特性を作成する電池制御装置。
【請求項9】
請求項に記載の電池制御装置において、
前記直接検知修正部は、前記修正限界幅の範囲外の部分を含む修正後の前記第一の特性に基づいて、前記使用履歴情報を更新し、
更新した使用履歴情報に基づいて、予め記憶された複数の前記特性の中から前記第一の特性であるSOC-OCVパターンを呼び出す処理を繰り返す電池制御装置。
【請求項10】
請求項に記載の電池制御装置において、
前記直接検知修正部は、修正後の前記第一の特性が前記修正限界幅の範囲内であるか否かを判定し、前記修正限界幅の範囲外であると判定された修正後の前記第一の特性が所定の収束条件を満たす場合に、前記使用履歴情報を更新する電池制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電池制御装置において、
前記収束条件は、修正後の前記第一の特性が前記修正限界幅の範囲外であると継続して判定された回数が所定回数以上であるという第一の条件と、修正後の前記第一の特性の分散が所定の閾値以下であるという第二の条件と、のいずれか少なくとも一つを含む電池制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等のモバイル端末や、電力系統連携の安定化などの広い分野において、充放電可能な二次電池が利用されている。また近年では、地球温暖化対策、排ガス対策、化石燃料の枯渇対策などの理由から、電気自動車やハイブリッド車など、二次電池の電力を動力源とした自動車が注目されている。これらの二次電池を搭載したシステムでは一般に、電池を安全に使用し、かつ電池の性能を最大限に引き出すために、電池制御装置が備えられている。電池制御装置は、電池の電圧、温度、電流を検出し、これらに基づいて、電池の充電率(State Of Charge:SOC)や劣化状態(State Of Health:SOH)などの電池パラメータを演算する。
【0003】
電池の充電率(SOC)は一般に、電池のSOCと開回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)との関係であるSOC-OCV特性を用いて取得することができる。しかしながら、SOC-OCV特性は、電池の劣化や個体ばらつきによって変化することが知られている。近年、電極材料の進歩によってSOC-OCV特性の傾きが小さくなっており、SOC-OCV特性の劣化や個体ばらつきがSOC誤差の要因として問題となりつつある。このため、精度良くSOCを算出するためには、SOC-OCV特性の変化を検知し、修正するロジックが必要である。
【0004】
SOC-OCV特性の変化に応じてSOCを演算する方法として、例えば下記の特許文献1、2に記載の技術が知られている。特許文献1には、蓄電システムのコントローラにおいて、前回満充電容量が算出されたときから現在までに満充電容量が推定されていない期間(未推定期間)の平均SOC及び平均電池温度と、平均SOC及び平均電池温度に応じて変化する低下率が予め規定された低下率マップとを用いて、未推定期間中の低下率を算出し、未推定期間中の低下率と初期満充電容量とに基づいて前回満充電容量が算出されたときの蓄電装置の第1経過期間を算出する。そして、第1経過期間と未推定期間とから算出される蓄電装置の現在の第2経過期間、未推定期間中の低下率、及び初期満充電容量に基づいて、現在の満充電容量を算出することが開示されている。特許文献2には、二次電池の充電状態を、開放電圧値および電流積算値に基づいて推定する方法において、充電状態推定時の瞬間的な開放電圧値と充電状態推定値との関係を定める瞬時充電状態マップを、前記二次電池の使用開始後の充放電特性データに基づいて更新し、前記更新された瞬時充電状態マップに基づいて、充電状態推定時の瞬間的な充電状態推定値を算出し、前記二次電池を流れた電流の積算値に基づいて、充電状態推定値を算出し、前記瞬間的な充電状態推定値および前記電流積算値に基づく充電状態推定値に基づいて、前記二次電池の制御に用いる制御用充電状態推定値を算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2015-40832号公報
【文献】日本国特開2016-114469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手法では、電池の製造時の個体ばらつきによるSOC-OCV特性の差異に対応することができない。また、実際の電池の使用条件と、コントローラに格納されている低下率マップに規定された劣化条件とが異なる場合には、SOC-OCV特性の予測結果と実際のSOC-OCV特性との間に誤差が生じる。そのため、SOCの演算精度が低いという課題がある。一方、特許文献2の手法では、OCVや電流積算値に測定誤差があると、SOC-OCV特性に相当する瞬時充電状態マップを精度良く更新することができず、これに基づくSOCの演算結果に大きな誤差が生じ得ることが課題となる。特に、外部との充放電を行わないハイブリッド車では、一般的にSOCの運用範囲が狭いため、瞬時充電状態マップを高精度に更新することが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電池制御装置は、二次電池の充電率と電圧との関係を表す特性から前記二次電池の充電率を求めるものであって、前記二次電池の使用履歴情報に基づいて、予め記憶された複数の前記特性の中から第一の特性を呼び出す呼び出し部と、前記第一の特性に対する修正の許容範囲を定める修正限界幅を指定する修正限界幅指定部と、前記二次電池の電流値および電圧値に基づいて、前記第一の特性を前記修正限界幅に応じて修正した第二の特性を作成する直接検知修正部と、を備え、前記第二の特性を用いて前記二次電池の充電率を求める。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池の劣化や個体ばらつきによってSOC-OCV特性が変化した場合でも、SOCを高精度に演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電池システムとその周辺の構成を示す図である。
図2】単電池制御部の回路構成を示す図である。
図3】SOC演算システムの機能構成を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るSOC-OCV修正部の機能構成を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る修正限界幅指定部が指定する修正限界幅の例を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るパターン呼び出し部の機能構成を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係るSOC-OCVライブラリが有するSOC-OCV特性の例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る直接検知修正部の機能構成を示す図である。
図9】安定したOCVのペアの取得方法を説明する図である。
図10】SOC-OCV特性の上書きタイミングを説明する図である。
図11】修正後のSOC-OCV特性が修正限界幅以内であるか否かを判定する方法を説明する図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係るSOC-OCV修正部の処理フローを示すフローチャートである。
図13】本発明によるSOC-OCV特性の発散性の抑制効果を説明する図である。
図14】本発明によるSOC演算精度の向上を説明する図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係るSOC-OCV修正部の機能構成を示す図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る修正限界幅指定部が指定する修正限界幅の例を示す図である。
図17】本発明の第2の実施形態による効果を第1の実施形態と比較して説明する図である。
図18】本発明の第3の実施形態に係るSOC-OCV修正部の機能構成を示す図である。
図19】本発明の第3の実施形態に係る修正限界幅指定部が指定する修正限界幅の例を示す図である。
図20】本発明の第3の実施形態による効果を第2の実施形態と比較して説明する図である。
図21】本発明の第4の実施形態に係るSOC-OCV修正部の機能構成を示す図である。
図22】本発明の第4の実施形態に係るパターン呼び出し部の構成を示す図である。
図23】本発明の第4の実施形態に係るSOC-OCVライブラリが有するSOC-OCV特性の例を示す図である。
図24】本発明の第4の実施形態による効果を第1の実施形態と比較して説明する図である。
図25】本発明の第5の実施形態に係るSOC-OCV修正部の機能構成を示す図である。
図26】本発明の第5の実施形態に係る直接検知修正部の機能構成を示す図である。
図27】本発明の第5の実施形態に係るSOC-OCV修正部の処理フローを示すフローチャートである。
図28】本発明の第5の実施形態による効果を説明する図である。
図29】本発明の第6の実施形態に係るSOC-OCV修正部の機能構成を示す図である。
図30】本発明の第6の実施形態に係る直接検知修正部の機能構成を示す図である。
図31】SOC-OCV収束判定部の機能構成を示す図である。
図32】本発明の第6の実施形態に係るSOC-OCV修正部の処理フローを示すフローチャートである。
図33】本発明の第6の実施形態による効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)の電源を構成する電池システムに対して本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。ただし、以下に説明する実施形態の構成はこれに限らず、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)などの乗用車や、ハイブリッド鉄道車両といった産業用車両の電源を構成する蓄電装置の蓄電器制御回路などにも適用できる。
【0011】
また、以下の実施形態では、リチウムイオン電池を採用した場合を例に挙げて説明するが、充放電可能な二次電池であれば、他にもニッケル水素電池、鉛電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタなどを用いることもできる。さらに、以下の実施形態では複数の単電池を直列に接続して組電池を構成しているが、複数の単電池を並列接続したものをさらに複数個直列に接続して組電池を構成してもよいし、直列接続した複数の単電池をさらに複数個並列に接続して組電池を構成してもよい。
【0012】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る電池システム100とその周辺の構成を示す図である。電池システム100は、リレー300,310を介してインバータ400に接続され、リレー320,330を介して充電器420に接続される。電池システム100は、組電池110、単電池管理部120、電流検知部130、電圧検知部140、組電池制御部150、記憶部180を備える。
【0013】
組電池110は、複数の単電池111から構成される。単電池管理部120は、単電池111の状態を監視する。電流検知部130は、電池システム100に流れる電流を検知する。電圧検知部140は、組電池110の総電圧を検知する。組電池制御部150は、組電池110の状態を検知し、状態の管理等も行う。
【0014】
組電池制御部150は、単電池管理部120が送信する単電池111の電池電圧や温度、電流検知部130が送信する電池システム100に流れる電流値、電圧検知部140が送信する組電池110の総電圧値を受け取る。組電池制御部150は、受け取った情報をもとに組電池110の状態を検知する。組電池制御部150による状態検知の結果は、単電池管理部120や車両制御部200に送信される。
【0015】
組電池110は、電気エネルギーの蓄積および放出(直流電力の充放電)が可能な複数の単電池111を電気的に直列に接続して構成されている。組電池110を構成する単電池111は、状態の管理・制御を実施する上で、所定の単位数にグループ分けされている。グループ分けされた単電池111は、電気的に直列に接続され、単電池群112a、112bを構成している。単電池群112を構成する単電池111の個数は、全ての単電池群112において同数でもよいし、単電池群112毎に単電池111の個数が異なっていてもよい。
【0016】
単電池管理部120は、組電池110を構成する単電池111の状態を監視する。単電池管理部120は、単電池群112毎に設けられた単電池制御部121を備える。図1では、単電池群112aと112bに対応して、単電池制御部121aと121bが設けられている。単電池制御部121は、単電池群112を構成する単電池111の状態を監視および制御する。
【0017】
本実施形態では、説明を簡略化するために、4個の単電池111を電気的に直列接続して単電池群112aと112bを構成し、単電池群112aと112bをさらに電気的に直列接続して合計8個の単電池111を備える組電池110とした。
【0018】
組電池制御部150と単電池管理部120は、フォトカプラに代表される絶縁素子170および信号通信手段160を介して信号を送受信する。絶縁素子170を設けるのは、組電池制御部150と単電池管理部120は、動作電源が異なるためである。すなわち、単電池管理部120は、組電池110から電力をうけて動作するのに対して、組電池制御部150は、車載補機用のバッテリ(例えば14V系バッテリ)を電源として用いている。絶縁素子170は、単電池管理部120を構成する回路基板に実装してもよいし、組電池制御部150を構成する回路基板に実装してもよい。システム構成によっては、絶縁素子170を省略することもできる。
【0019】
組電池制御部150と、単電池管理部120を構成する単電池制御部121aおよび121bとの間の通信手段について説明する。単電池制御部121aおよび121bは、それぞれが監視する単電池群112aおよび112bの電位の高い順にしたがって直列に接続されている。組電池制御部150が単電池管理部120に送信した信号は、絶縁素子170および信号通信手段160を介して単電池制御部121aに入力される。単電池制御部121aの出力は信号通信手段160を介して単電池制御部121bに入力され、最下位の単電池制御部121bの出力は絶縁素子170および信号通信手段160を介して組電池制御部150へと伝送される。本実施形態では、単電池制御部121aと単電池制御部121bの間は絶縁素子170を介していないが、絶縁素子170を介して信号を送受信することもできる。
【0020】
記憶部180は、組電池110、単電池111、および単電池群112の内部抵抗特性、満充電時の容量、分極特性、劣化特性、個体差情報、SOCとOCVの特性などの情報を格納する。なお、本実施形態では、記憶部180は組電池制御部150または単電池管理部120の外部に設置されている構成としたが、組電池制御部150または単電池管理部120が記憶部を備える構成とし、これに上記情報を格納してもよい。
【0021】
車両制御部200は、組電池制御部150が送信する情報を用いて、リレー300と310を介して電池システム100と接続されるインバータ400を制御する。また、リレー320と330を介して電池システム100に接続される充電器420を制御する。車両走行中には、電池システム100はインバータ400と接続され、組電池110が蓄えているエネルギーを用いて、モータジェネレータ410を駆動する。充電の際には、電池システム100は充電器420と接続され、家庭用の電源または電気スタンドからの電力供給によって充電される。
【0022】
充電器420は、家庭または電気スタンドに代表される外部の電源を用いて組電池110を充電する際に用いられる。本実施形態では、充電器420は車両制御部200からの指令に基づき充電電圧や充電電流などを制御する構成としているが、組電池制御部150からの指令に基づき制御を実施してもよい。また、充電器420は車両の構成、充電器420の性能、使用目的、外部の電源の設置条件などに応じて車両内部に設置してもよいし、車両の外部に設置することもできる。
【0023】
電池システム100を搭載した車両システムが始動して走行する場合には、車両制御部200の管理のもと、電池システム100はインバータ400に接続され、組電池110が蓄えているエネルギーを用いてモータジェネレータ410を駆動し、回生時はモータジェネレータ410の発電電力により組電池110が充電される。電池システム100を備える車両が家庭用または電気スタンドに代表される外部の電源と接続された際には、車両制御部200が発信する情報に基づき電池システム100と充電器420とが接続され、組電池110が所定の条件になるまで充電される。充電によって組電池110に蓄えられたエネルギーは、次回の車両走行時に利用されるか、車両内外の電装品等を動作させるためにも利用される。さらに必要に応じて、家庭用の電源に代表される外部電源へも放出する場合がある。
【0024】
図2は、単電池制御部121の回路構成を示す図である。単電池制御部121は、電圧検出回路122、制御回路123、信号入出力回路124、温度検知部125を備える。電圧検出回路122は、各単電池111の端子間電圧を測定する。制御回路123は、電圧検出回路122および温度検知部125から測定結果を受け取り、信号入出力回路124を介して組電池制御部150に送信する。なお、単電池制御部121に一般的に実装される、自己放電や消費電流ばらつき等に伴い発生する単電池111間の電圧やSOCばらつきを均等化する回路構成は、周知のものであると判断して記載を省略した。
【0025】
図2における単電池制御部121が備える温度検知部125は、単電池群112の温度を測定する機能を有する。温度検知部125は、単電池群112全体として1つの温度を測定し、単電池群112を構成する単電池111の温度代表値としてその温度を取り扱う。温度検知部125が測定した温度は、単電池111、単電池群112、または組電池110の状態を検知するための各種演算に用いられる。図2はこれを前提とするため、単電池制御部121に1つの温度検知部125を設けた。単電池111毎に温度検知部125を設けて単電池111毎に温度を測定し、単電池111毎の温度に基づいて各種演算を実行することもできるが、この場合は温度検知部125の数が多くなる分、単電池制御部121の構成が複雑となる。
【0026】
図2では、簡易的に温度検知部125を示した。実際は温度測定対象に温度センサが設置され、設置した温度センサが温度情報を電圧として出力し、これを測定した結果が制御回路123を介して信号入出力回路124に送信され、信号入出力回路124が単電池制御部121の外に測定結果を出力する。この一連の流れを実現する機能が単電池制御部121に温度検知部125として実装され、温度情報(電圧)の測定には電圧検出回路122を用いることもできる。
【0027】
図3は、組電池制御部150におけるSOC演算システム155の機能構成を示す図である。組電池制御部150は、車両走行中に検出された各単電池111の電流値および電圧値をもとに、組電池110における各単電池111の状態や各単電池111に入出力可能な電力を決定する部分であり、その1つの機能構成要素として、図3のSOC演算システム155を有する。SOC演算システム155は、本発明の一実施形態に係る電池制御装置に相当する機能を担う部分であり、各単電池111の充電率(SOC)を演算する機能を有する。なお、組電池制御部150はSOC演算システム155以外にも、組電池10の制御に必要な各種機能、例えば各単電池111の劣化状態(SOH)の演算を行う機能や、各単電池111の入出力電力を定める機能などを有しているが、これらは周知の機能であり、また本発明とは直接関係がないため、以下では詳細な説明を省略する。
【0028】
SOC演算システム155は、その機能として、OCV演算部153、容量計算部154、SOC-OCV修正部151、およびSOC演算部152の各機能ブロックを有する。SOC演算システム155は、これらの機能ブロックにより、電流検知部130が検知した組電池110の電流、すなわち各単電池111の電流や、単電池管理部120が検知した各単電池111の電圧および温度に基づいて、各単電池111のSOCを演算する。具体的には、まずSOC演算システム155は、OCV演算部153により、各単電池111の電流、閉回路電圧(Close Circuit Voltage:CCV)、温度および劣化状態(SOH)に基づき、各単電池111の開回路電圧(OCV)を求める。なお、各単電池111のSOHは、例えば組電池制御部150内の図示しないSOH演算部によって得られる。次に、OCV演算部153が求めた各単電池111のOCVに基づき、SOC-OCV修正部151により、予め定められた各単電池111のSOCとOCVとの関係を表す特性(SOC-OCV特性)を修正する。最後に、SOC-OCV修正部151が修正したSOC-OCV特性を用いて、SOC演算部152により、各単電池111のSOCを算出する。こうして算出された各単電池111のSOCの値は、SOC演算システム155からSOCcontrolとして出力され、組電池110の各種制御等に利用される。
【0029】
なお、上記ではSOC演算システム155が各単電池111のSOCを算出することとして説明したが、複数の単電池111をまとめてSOCを算出してもよい。例えば、単電池群112a,112bごとにSOCを算出したり、組電池110全体でSOCを算出したりすることができる。これらの場合でも、単電池111と同様の処理でSOCを算出できる。また、各単電池111のSOCは、同様の処理によって算出できる。そのため以下では、SOCの算出対象を単に「電池」と称して、SOC演算システム155の動作を説明する。
【0030】
OCV演算部153は、電池のCCV、電流I、温度T、SOHを入力とし、これらの入力に基づいて、電池のOCVと分極電圧(過電圧)Vpを出力する。具体的には、電池の等価回路モデルに従い、下記の式(1)を用いてOCVを演算する。なお、分極電圧Vpは、電池の等価回路モデルに対して電流Iを掛けた場合の各等価回路成分の電圧値として演算され、一般に直流抵抗成分や分極成分など複数の要素で構成される。ここで、電池の等価回路モデルの各要素の値は、一般に電池の温度TとSOHに依存する。また、電池のSOHとしては一般に、電池の直流抵抗の増加率を示すSOHRか、または電池容量の減少率を示すSOHQが用いられる。本実施形態では、SOHRをSOHとして扱うこととして説明するが、SOHQを用いた場合も同様である。
【0031】
【数1】
【0032】
容量計算部154は、SOHを入力とし、電池容量Qmaxを出力する。本実施形態では、例えば電池容量はSOHの反比例関係にあるという公知の経験側に基づき、入力されたSOHに対応する電池容量Qmaxを容量計算部154において取得する。
【0033】
SOC-OCV修正部151は、SOC演算システム155に対して入力される電流IおよびSOHと、OCV演算部153で算出したOCVおよび分極電圧Vpと、容量計算部154で算出した電池容量Qmaxとに基づいて、予め記憶されているSOC-OCV特性を修正する。そして、修正後のSOC-OCV特性を、SOC演算部152において一時的に用いられるSOC-OCV特性であるSOC-OCVtempとして出力する。
【0034】
SOC演算部152は、SOC-OCV修正部151で算出したSOC-OCVtempを用いて、OCV演算部153が算出したOCVに対応するSOCを算出する。そして、算出したSOCの値に基づき、電池の制御に用いるSOCcontrolを出力する。
【0035】
次に、SOC-OCV修正部151の詳細について説明する。SOC-OCV修正部151は、以下で説明するような様々な実施形態により実現することができる。
【0036】
<第1の実施形態>
図4は、本発明の第1の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の機能構成を示す図である。本実施形態におけるSOC-OCV修正部151は、パターン呼び出し部510と、修正限界幅指定部520と、直接検知修正部530とを有する。
【0037】
パターン呼び出し部510は、電池の使用履歴情報に基づいて電池の劣化パターンを判定し、予め記憶された複数のSOC-OCV特性の中から、その劣化パターンに対応するSOC-OCV特性を呼び出す。そして、呼び出したSOC-OCV特性の情報をSOC-OCVpatternとして出力する。電池の使用履歴情報とは、電池システム100におけるこれまでの電池の使用履歴(運転履歴)を表す情報であり、電池の劣化状態を示す指標として用いられる。本実施形態では、電池の使用履歴情報としてSOHを用いる。
【0038】
修正限界幅指定部520は、SOC-OCVpatternに対して直接検知修正部530が行う修正の許容範囲を定める修正限界幅を指定する。図5は、本発明の第1の実施形態に係る修正限界幅指定部520が指定する修正限界幅の例を示す図である。本実施形態では、修正限界幅指定部520は、例えば図5の左図に示すように、SOC-OCVpatternの各SOCに対する一定のOCV幅を修正限界幅として指定する。このOCV幅は、例えば電池の製造ばらつきによるOCVの公差に応じて設定される。すなわち、電池において製造ばらつき分以上のOCVの変化が生じた場合には、これを直接検知修正部530が演算誤差として除外できるように、修正限界幅指定部520によって修正限界幅が指定される。あるいは、修正限界幅指定部520は、例えば図5の右図に示すように、SOC-OCVpatternの各OCVに対する一定のSOC幅を修正限界幅として指定してもよい。この場合、直接検知修正部530がSOC-OCVpatternに対して行う修正の範囲は、修正限界幅により指定されたSOC幅の範囲内に制限される。
【0039】
直接検知修正部530は、電流IおよびOCVに基づいて、パターン呼び出し部510から出力されるSOC-OCVpatternを、修正限界幅指定部520により指定された修正限界幅に応じて修正する。そして、修正結果を前述のSOC-OCVtempとして出力する。
【0040】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るパターン呼び出し部510の機能構成を示す図である。パターン呼び出し部510は、パターン判定部511と、SOC-OCVライブラリ512とを有する。
【0041】
SOC-OCVライブラリ512は、様々なSOHに対応するSOC-OCV特性のデータベースを有している。図7は、本発明の第1の実施形態に係るSOC-OCVライブラリ512が有するSOC-OCV特性の例を示す図である。図7では、SOHの値が100%、120%、140%、・・・の各場合について、それぞれ異なるSOC-OCV特性がSOC-OCVライブラリ512に記憶されていることを示している。ここで、SOC-OCVライブラリ512は、例えば各単電池111の劣化試験を行うことで、各単電池111の劣化が進んでSOHの値が変化したときのSOCとOCVの関係を予め取得しておき、その関係をデータベース化することによって実現できる。
【0042】
パターン判定部511は、入力されたSOHに対してパターン判定を行い、そのパターン判定結果に対応するSOC-OCV特性をSOC-OCVライブラリ512から検索して呼び出す。そして、呼び出したSOC-OCV特性からSOC-OCVpatternを生成し、出力する。このとき、入力されたSOHに最も近いSOH条件のSOC-OCV特性を呼び出し、これをそのままSOC-OCVpatternとして出力してもよい。あるいは、入力されたSOHに対して、SOH1<SOH<SOH2となるような互いに近接する二つのSOHの値SOH1,SOH2を特定し、これらにそれぞれ対応するSOC-OCV特性をSOC-OCVライブラリ512から呼び出して内挿によるSOC-OCV特性を演算して、得られたSOC-OCV特性をSOC-OCVpatternとして出力してもよい。パターン判定部511から出力されたSOC-OCVpatternは、例えば不図示のメモリ上に保存され、直接検知修正部530によって読み出される。
【0043】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る直接検知修正部530の機能構成を示す図である。直接検知修正部530は、修正OCVペア・積分電流取得部531と、SOC-OCV直接検知修正部532と、SOC-OCV上書き判定部533とを有する。
【0044】
修正OCVペア・積分電流取得部531は、電池状態に応じてそれぞれ時間変化する電流I、OCV、電池容量Qmaxおよび分極電圧Vpを入力とし、これらの入力に基づいて、直接検知によるSOCの差分ΔSOCとOCVのペア(OCV1,OCV2)を出力する。具体的には、修正OCVペア・積分電流取得部531は、所定の時間幅の範囲内で安定したOCVの値を二点取得することで、OCVのペア(OCV1,OCV2)を取得する。そして、以下の式(2)を用いて、OCV1の取得からOCV2の取得までの期間における電流積算値を求めて電池容量Qmaxで割ることにより、直接検知によるSOCの差分ΔSOCを算出する。なお、式(1)において、t(OCV1)とt(OCV2)は、それぞれOCV1とOCV2を取得した時刻である。
【0045】
【数2】
【0046】
図9は、安定したOCVのペア(OCV1,OCV2)の取得方法を説明する図である。修正OCVペア・積分電流取得部531は、例えば図9に示すように、電流Iの絶対値が予め定めた電流閾値よりも小さく、かつ、分極電圧Vpの絶対値が予め定めた分極電圧閾値よりも小さいときに、OCVの値が安定していると判断する。そして、これらの安定条件を満たす二つの時刻t(OCV1)およびt(OCV2)の間が、所定の時間閾値t1以上であってt2以下のとき(t1<t2)に、時刻t(OCV1)および時刻t(OCV2)における二つのOCVの値を、OCV1,OCV2として取得する。なお、こうした条件を満たす三つ以上のOCVの値を、安定したOCVの組み合わせとして取得してもよい。
【0047】
SOC-OCV直接検知修正部532は、修正OCVペア・積分電流取得部531が検知したOCVのペア(OCV1,OCV2)およびこれに基づいて算出したΔSOCに基づいて、SOC-OCVpatternを修正し、その修正結果をSOC-OCVpattern,fixedとして出力する。具体的には、本実施形態においてSOC-OCV直接検知修正部532は、入力されたSOC-OCVpatternが示すSOC-OCV特性上の少なくとも1点を原点(基準点)として、修正OCVペア・積分電流取得部531からΔSOCとOCV1,OCV2を取得するごとに、これらを用いてSOC-OCVpatternを修正し、SOC-OCVpattern,fixedを作成する。
【0048】
例えば、SOC-OCVpatternが示すSOC-OCV特性においてOCV1に対応する点(OCV1,SOC1)を基準点とすれば、直接検知されたOCV2におけるSOCの値は以下の式(3)により求められる。
【0049】
【数3】
【0050】
同様に、直接検知でそれぞれ得られた複数のOCVとSOCの組み合わせを用いて、SOC-OCVpatternが示すSOC-OCV特性を1点ずつ修正することにより、SOC-OCVpattern,fixedを作成することができる。具体的には、SOC-OCVpatternが示すSOC-OCV特性をSOC軸でk個に分割し、そのk番目の点にn番目の取得点があったとき、以下の式(4)で示す漸化式を用いてSOC-OCV特性を修正し、SOC-OCVpattern,fixedを得ることができる。式(4)において、kはSOC-OCV特性を数列で表現する区間の細かさであり、kが多いほどSOC-OCV特性は滑らかになる。また、OCVk,0とSOCk,0は、SOC-OCVpatternが示すSOC-OCV特性上で設定された基準点におけるOCVとSOCの値をそれぞれ表す。また、n0はSOC-OCVpatternを初期値とする場合の重みであり、0以上の値である。n0=0の場合、SOC-OCVpatternを原点でのみ使用して、SOC-OCVpattern,fixedが作成される。本実施形態では、このように漸化式を用いてSOC-OCVpattern,fixedを作成することで、直接検知で得られた点(OCV,SOC)を保存するメモリの削減が可能である。
【0051】
【数4】
【0052】
なお、SOC-OCV直接検知修正部532は、上記の式(4)のような漸化式ではなく、直接検知で得られた複数の点の総和平均で表されるSOC-OCV特性により、SOC-OCVpattern,fixedを作成してもよい。具体的には、例えば以下の式(5)を用いて、SOC-OCVpatternが示すSOC-OCV特性を修正することにより、SOC-OCVpattern,fixedを得ることができる。この場合は、式(4)を用いた場合と比べて、計算の実施回数は少ないが、メモリ上で保存する点(OCV,SOC)のデータ量が大きくなる。計算負荷を1つのタイムステップに集中させたい場合などは、この計算方法を用いることが好ましい。
【0053】
【数5】
【0054】
SOC-OCV直接検知修正部532は、上記のようにしてSOC-OCVpatternを修正して求めたSOC-OCVpattern,fixedを出力するとともに、そのSOC-OCV特性上の各点kでの修正回数を表す数列Ncountを出力する。
【0055】
SOC-OCV上書き判定部533は、修正限界幅指定部520から入力される修正限界幅を用いて、SOC-OCVpattern,fixedによりSOC-OCVtempを上書きするタイミング(SOC-OCV特性の上書きタイミング)を決定する。SOC-OCV上書き判定部533は、SOC-OCV直接検知修正部532から出力される数列Ncountに基づき、例えば以下のようにしてSOC-OCV特性の上書きタイミングを決定する。
【0056】
図10は、SOC-OCV特性の上書きタイミングを説明する図である。SOC-OCV上書き判定部533は、まず図10のように、数列Ncountが全ての点kで所定の閾値数列Nth以上であることを判定する。なお、図10において、Ncount(k)は各点kにおける数列Ncountの値を示し、Nth(k)は各点kにおける閾値数列Nthの値を表している。その結果、数列Ncountがいずれか少なくとも一つの点kで閾値数列Nth未満である場合は、SOC-OCVtempを上書きせずにSOC-OCVpatternの修正を継続し、全ての点kで閾値数列Nth以上になったら、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅以内であるかを判定する。ここで、閾値数列Nthの値は、実際の車両走行時にSOCとOCVが取得される頻度や、電池の個体ばらつきの生じやすさなどに応じて設定することができる。その結果、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅以内である場合は、SOC-OCV特性の上書きタイミングであると判断して、SOC-OCVtempをSOC-OCVpattern,fixedで上書きして出力する。一方、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅を超過している場合は、それまでに蓄積されたSOC-OCVpattern,fixedをリセットし、演算をやり直す。
【0057】
図11は、SOC-OCV上書き判定部533により、修正後のSOC-OCV特性であるSOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅以内であるか否かを判定する方法を説明する図である。SOC-OCVpatternを修正してSOC-OCVpattern,fixedを求める際には、各点がSOC軸方向とOCV軸方向の両方に移動しうる。そこで、図11に示すように、SOC-OCVpattern,fixed上の点701がSOC-OCVpattern上の二つの点702,703の間にある場合、これらの二点を結ぶ線分に対して点701から垂線を下ろし、その垂線と線分との交点704を求める。すなわち、点701のSOCとOCVの値を(SOCfixed,i,OCVfixed,i)とするとともに、点702のSOCとOCVの値を(SOCpattern,i,OCVpattern,i)とし、点703のSOCとOCVの値を(SOCpattern,i+1,OCVpattern,i+1)とすると、上記の交点704におけるSOCとOCVの値は、(SOCfixed,i,OCV’pattern,i)と表すことができる。ここで、OCV’pattern,iの値は、OCVpattern,iとOCVpattern,i+1との間に存在し、SOCfixed,iとSOCpattern,iの差分とSOCfixed,iとSOCpattern,i+1の差分との比率に応じて決定することができる。
【0058】
上記のようにして交点704のSOCとOCVの値を取得したら、以下の評価式(6)により、点701と交点704のOCVの二乗差を修正限界幅と比較して評価する。その結果、評価式(6)を満たす場合は点701が修正限界幅以内であると判断し、満たさない場合は点701が修正限界幅を超えていると判断する。こうした評価をSOC-OCVpattern,fixed上の全ての点kに対して行うことで、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅以内か否かを判定することができる。
【0059】
【数6】
【0060】
なお、上記で説明した判定方法は、前述の図5において左図に示したように、SOC-OCVpatternの各SOCに対する一定のOCV幅を修正限界幅として指定した場合の判定方法の例である。図5で右図に示したように、SOC-OCVpatternの各OCVに対する一定のSOC幅を修正限界幅として指定した場合は、上記の判定方法においてSOCとOCVを入れ替えることで、同様の手法によりSOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅以内か否かを判定することが可能である。
【0061】
次に、図12のフローチャートを参照して、SOC-OCV修正部151の全体動作を説明する。図12は、本発明の第1の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の処理フローを示すフローチャートである。なお、SOC-OCV修正部151では、図12の処理フローの前段階として、予め行われた電池の劣化試験の結果から、電池の運転履歴(本実施形態ではSOH)に対応する劣化状態ごとのSOC-OCV特性が取得され、SOC-OCVライブラリ512に保存されているものとする。
【0062】
図12において、最初のSTARTステップ601では、SOC-OCV修正部151に所定のSOC-OCV特性修正ロジックを開始させることで、ステップ602以降の処理を実施させる。
【0063】
電池システムオン判定ステップ602では、車両のキーがオンになり、電池システム100がオンになったか否かを判定する。オフの場合はステップ602を繰り返し、電池システム100がオンになったことを確認できたら、次のステップ603へ進む。
【0064】
電池履歴読み出しステップ603では、電池の使用履歴情報を読み出す。ここでは、前回の処理を終了したときのSOCcontrol、SOC-OCVtemp、SOH等の値を電池の使用履歴情報として記憶部180から読み出し、メモリに展開する。
【0065】
劣化パターン判定ステップ604では、ステップ603で読み出した電池履歴から劣化パターンを判定する。ここでは、パターン呼び出し部510のパターン判定部511により、ステップ603で読み出したSOHに応じた劣化パターンを前述のような手法で判定する。
【0066】
パターンSOC-OCV読み出しステップ605では、ステップ604で得た劣化パターンに対応するSOC-OCV特性を読み出す。ここでは、パターン呼び出し部510のSOC-OCVライブラリ512に格納されている様々なSOC-OCV特性の中から、ステップ604で判定した劣化パターンに対応するSOC-OCV特性を呼び出し、SOC-OCVpatternとしてメモリに保存する。
【0067】
直接検知修正限界幅決定ステップ606では、修正限界幅指定部520により、ステップ605でSOC-OCVライブラリ512から読み出したSOC-OCVpatternに対する修正限界幅を決定する。
【0068】
直接検知修正ステップ607では、直接検知修正部530により、電池システム100から得られる電池容量Qmax、電流I、OCV、分極電圧Vpの各状態測定値と、ステップ605でSOC-OCVライブラリ512から読み出したSOC-OCVpatternとを用いて、直接検知によるSOC-OCVpatternの修正を行う。ここでは、まず直接検知修正部530の修正OCVペア・積分電流取得部531により、電池の各状態測定値に基づき、前述のようにして安定したOCVのペア(OCV1,OCV2)を取得し、その間のSOCの差分ΔSOCを求める。そして、これらの値に基づき、SOC-OCV直接検知修正部532により、SOC-OCVpatternを修正したSOC-OCV特性であるSOC-OCVpattern,fixedと、各点での修正回数を表す数列Ncountとを、前述のような手法で算出する。
【0069】
直接検知修正回数判定ステップ608では、直接検知によるSOCとOCVの取得回数、すなわち、これらによるSOC-OCV特性の修正回数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここでは、直接検知修正部530のSOC-OCV上書き判定部533により、ステップ607で算出した修正回数の数列Ncountが全ての点で所定の閾値数列Nth以上であるか否かを判定する。その結果、少なくとも一つの点でNcountがNth未満であれば、ステップ607に戻って直接検知によるSOC-OCVpatternの修正を継続する。一方、全ての点でNcountがNth以上であれば、ステップ609に進む。
【0070】
修正限界幅判定ステップ609では、ステップ607で修正後のSOC-OCV特性として求めたSOC-OCVpattern,fixedが、ステップ606で決定した修正限界幅の範囲内かどうかを判定する。ここでは、SOC-OCV上書き判定部533により、前述のような手法を用いて、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅内であるか否かを判定する。その結果、修正限界幅外であれば、計算リセットステップ610に進み、これまでに得られたSOC-OCVpattern,fixedとNcountの値をステップ610でリセットした後に、ステップ607から演算をやり直す。一方、修正限界幅内であれば、次のステップ611に進む。
【0071】
SOC-OCV特性上書きステップ611では、SOC-OCV上書き判定部533により、SOCcontrolの演算に用いるSOC-OCVtempを、ステップ607で求めたSOC-OCVpattern,fixedで上書きして出力する。
【0072】
SOC-OCV特性保存ステップ612では、ステップ611で上書きしたSOC-OCVtempを記憶部180に保存する。
【0073】
キーオフ判定ステップ613では、車両のキーオフ動作が行われたか否かを判定する。キーオフ動作が行われておらず、車両のキーがオン状態のままである場合は、本ステップを繰り返す。キーオフ動作を検出すると、次のステップ614へ進む。
【0074】
電池履歴保存ステップ614では、キーオフ動作が行われたときのSOCcontrol、SOC-OCVtemp、SOH等の値を、電池の使用履歴情報として記憶部180へ保存する。
【0075】
電池システムオフステップ615では、電池システム100の電源をオフにする。
【0076】
最後の終了ステップ616では、図12の演算を終了し、SOC-OCV修正部151の動作を停止させる。
【0077】
なお、本実施形態において、SOC-OCV修正部151によるSOC-OCV特性の修正は、前述のように組電池110全体を表す1つのSOC-OCV特性に対して行ってもよいし、組電池110内の全ての単電池111に対して個別に行ってもよい。組電池110では一般に、内部の温度分布が一様ではなく、中央部がもっとも高温となるため、単電池111ごとに劣化の進行度に差が生じる。したがって、単電池111ごとにSOC-OCV特性の修正を行うことで、温度分布に応じた正確なSOC-OCV特性を得ることが可能となる。
【0078】
次に、本発明の効果について、以下に図13、14を参照して説明する。
【0079】
図13は、本発明によるSOC-OCV特性の発散性の抑制効果を説明する図である。図13において、左側の概念図801は、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲内にある場合を示している。この概念図801では、修正前のSOC-OCVpatternを曲線803で示しており、このSOC-OCVpatternに対して指定された修正限界幅を二つの破線804で示している。また、SOC-OCVpattern,fixed上の各点を、点805に代表される各点で示している。この場合、SOC-OCVpattern,fixed上の点は全て破線804で示す修正限界幅の範囲内に存在しているため、図12の処理フローの修正限界幅判定ステップ609では、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅内であると判定される。その結果、SOC-OCV特性上書きステップ611に進み、このステップにおいて、SOC-OCVtempがSOC-OCVpattern,fixedで上書きされる。これにより、電池の個体バラつきや劣化のバラつきを反映した真値により近いSOC-OCV特性で、電池制御を行うことが可能になる。
【0080】
一方、直接検知で得られたOCVやSOCの値に測定データの誤差が含まれる場合などは、SOC-OCVpattern,fixedの一部または全部が修正限界幅の範囲外となることも考えられる。図13において、右側の概念図802は、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外にある場合を示している。この概念図802では、左側の概念図801と同様に、修正前のSOC-OCVpatternを曲線803で示すとともに、このSOC-OCVpatternに対して指定された修正限界幅を二つの破線804で示している。また、SOC-OCVpattern,fixed上の各点を、点806に代表される各点で示している。この場合、SOC-OCVpattern,fixed上の点の一部は破線804で示す修正限界幅の範囲外に存在しているため、図12の処理フローの修正限界幅判定ステップ609では、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅外であると判定される。その結果、SOC-OCV特性上書きステップ611には進まず、計算リセットステップ610においてSOC-OCVpattern,fixedの値がリセットされる。
【0081】
誤差が生じたSOC-OCVpattern,fixedによりSOC-OCVtempを上書きしてSOC-OCV特性の修正を行うと、実際の電池のSOCに対して直接検知で得られたSOCの誤差が大きい場合には、その誤差が却って拡大してしまう可能性がある。しかしながら、概念図802で示したように、本発明では修正後のSOC-OCV特性を修正限界幅と比較し、修正限界幅の範囲外である場合には、その修正結果をSOCの算出に反映しないようにする。したがって、SOC-OCV特性の発散を抑制する事が可能である。
【0082】
図14は、本発明によるSOC演算精度の向上を説明する図である。組電池制御部150では、電池の状態に応じた電流、電圧、温度、SOH等の各状態値から、所定の演算周期で電池のOCVが算出され、SOC-OCVtempを用いてSOCcontrolを出力する。ここで、図14に示すように、電池の劣化や個体ばらつき等によって、一点鎖線で示した初期SOC-OCV特性からSOC-OCV特性の真値が図中の実線のように変化したとする。このとき取得されたOCVの値をOCV(t)とすると、SOC-OCV特性を修正せずに初期SOC-OCV特性をそのままSOC-OCVtempとして用いた場合のSOC演算誤差は、図中の符号1401で示した範囲の値となる。すなわち、この場合はSOC-OCV特性の劣化とばらつきに対応できておらず、SOCの演算結果に大きな誤差を生じる。
【0083】
また、SOC-OCVライブラリ512に予め格納されたSOC-OCV特性の中からSOHに応じて読み出したSOC-OCVpatternをSOC-OCVtempとして用いた場合のSOC演算誤差は、図中の符号1402で示した範囲の値となる。すなわち、この場合は電池の劣化を考慮に入れたSOC-OCV特性を用いることで、初期SOC-OCV特性をそのまま用いた場合と比べてSOCの演算誤差は小さくなるが、電池の個体ばらつきや劣化パターンの予測誤り等によって生じる誤差が残る。
【0084】
一方、本実施形態で説明したように、直接検知で得られたSOCとOCVの値に基づきSOC-OCVpatternを修正して得られたSOC-OCVpattern,fixedをSOC-OCVtempとして用いた場合のSOC演算誤差は、図中の符号1403で示した範囲の値となる。すなわち、この場合は電池の個体ばらつきや劣化パターンの予測誤りで生じる誤差を修正しているため、読み出したSOC-OCVpatternをそのままSOC-OCVtempとして用いた場合と比べて、SOC演算誤差の値をさらに小さくすることができる。
【0085】
なお、直接検知でSOC-OCVpatternを修正する場合には、前述のようにΔSOCの原点(基準点)となる点が必要であるが、本実施形態では、この原点としてSOC-OCVpattern上の点を用いている。そのため、原点を初期SOC-OCV特性から得る手法に比べて、修正後のSOC-OCV特性におけるオフセット誤差を小さくすることができる。
【0086】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、電池の劣化状態に応じたSOC-OCV特性のパターンを呼び出し、それに対する修正限界幅を定めて、実際の電池の測定データからSOC-OCV特性の修正を行っている。これにより、従来の劣化状態に応じたSOC-OCV特性のパターン呼び出しでは対応できない課題を、以下のように解決可能である。
【0087】
第一に、本発明では電池の個体ばらつきや劣化予知の誤差に対応できる。二次電池の劣化予知は一般に、恒温槽内で一定の充放電パターンをサイクル試験することによって得られる。しかしながら、二次電池のSOC-OCV特性は製造時のばらつきによって異なることが知られており、従来のパターン呼び出しではこれに対応できない。また、実際の電池の使用履歴(温度・SOC・電流など)がサイクル試験の条件と一致することはないため、電池の劣化予知には必ず誤差が生じる。一方、本発明ではパターン呼び出しに直接検知を組み合わせることで、実際の二次電池の特性に一致するSOC-OCV特性を得ることが可能になる。
【0088】
第二に、本発明では直接検知と間接検知に影響されない運転履歴を用いたパターン呼び出しと修正限界幅を用いることによって、SOC-OCV特性の発散性を判断することが可能になる。そのため、車外の電源やセンサを用いることなく、車両の運転中に電池システムの信号のみによってSOC-OCV特性の修正が可能である。
【0089】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0090】
(1)SOC演算システム155は、二次電池である単電池111や組電池110の充電率(SOC)と電圧(OCV)との関係を表すSOC-OCV特性からこれらの電池のSOCを求める電池制御装置として機能する。SOC演算システム155におけるSOC-OCV修正部151は、電池の使用履歴情報に基づいて、予め記憶された複数のSOC-OCV特性の中から第一の特性(SOC-OCVpattern)を呼び出すパターン呼び出し部510と、SOC-OCVpatternに対する修正の許容範囲を定める修正限界幅を指定する修正限界幅指定部520と、電池の電流値Iおよび電圧値OCVに基づいて、SOC-OCVpatternを修正限界幅に応じて修正した第二の特性(SOC-OCVtemp)を作成する直接検知修正部530とを備える。SOC演算システム155におけるSOC演算部152は、SOC-OCVtempを用いて電池のSOCを求める。このようにしたので、電池の劣化や個体ばらつきによってSOC-OCV特性が変化した場合でも、SOCを高精度に演算することができる。
【0091】
(2)パターン呼び出し部510は、電池の劣化状態(SOH)を電池の使用履歴情報として用いて、SOC-OCVpatternを呼び出す。このようにしたので、電池の劣化状態に応じて適切なSOC-OCVpatternを簡易に呼び出すことができる。
【0092】
(3)修正限界幅指定部520は、図5で示したように、各SOCに対する一定のOCV幅、または各OCVに対する一定のSOC幅を、修正限界幅として指定する。このようにしたので、電池の製造ばらつきや劣化状態のばらつきに応じた修正限界幅を簡易に指定することができる。
【0093】
(4)SOC演算システム155は、電池の電流値Iおよび電圧値CCVに基づいて、電池の開放電圧値OCVおよび分極電圧値Vpを計算するOCV演算部153をさらに備える。直接検知修正部530は、図9で説明したように、電流値Iと分極電圧値Vpが予め定めた閾値よりそれぞれ小さいときの電池の開放電圧値OCVを所定の時間範囲内で複数回取得し(OCV1,OCV2)、取得した各開放電圧値OCV1,OCV2と、各開放電圧値の取得期間における電流積算値と、SOC-OCVpatternとを用いて、前述の式(2)、(3)によりSOCを求め、これを用いてSOC-OCVpattern,fixedを作成することで、SOC-OCVtempを作成する。このようにしたので、直接検知により取得したOCVとSOCの値からSOC-OCVpatternを修正し、電池の状態に応じた適切なSOC-OCVtempを作成することができる。
【0094】
(5)直接検知修正部530は、図8に示した構成により、電池の電流値Iおよび電圧値OCVに基づいてSOC-OCVpatternを修正し、修正後のSOC-OCVpatternを表すSOC-OCVpattern,fixedを修正限界幅の範囲内で制限することにより、SOC-OCVtempを作成する。このようにしたので、SOC-OCVpatternを電池の状態に応じて適切に修正しつつ、修正結果の発散を抑制することができる。
【0095】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述の第1の実施形態では、修正限界幅指定部520において、全てのSOCにおいて一定のOCV幅、または全てのOCVにおいて一定のSOC幅を、修正限界幅として指定する例を説明した。これに対して、以下の第2の実施形態では、SOCごとに異なるOCV幅、またはOCVごとに異なるSOC幅を、修正限界幅として指定する例を説明する。
【0096】
図15は、本発明の第2の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の機能構成を示す図である。本実施形態におけるSOC-OCV修正部151は、修正限界幅指定部520に替えて修正限界幅指定部520aを備える点以外は、第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0097】
修正限界幅指定部520aは、SOC-OCVpatternに対して直接検知修正部530が行う修正の許容範囲を定める修正限界幅を指定する。図16は、本発明の第2の実施形態に係る修正限界幅指定部520aが指定する修正限界幅の例を示す図である。本実施形態では、修正限界幅指定部520aは、例えば図16に示すように、SOC-OCVpatternの各SOCに対して、SOCの値ごとに異なるOCV幅を修正限界幅として指定する。このOCV幅は、例えば予め複数の電池について新品と劣化状態でのSOC-OCV特性をそれぞれ取得し、その個体差に対応して設定される。これにより、ばらつきが生じやすいSOC領域では比較的大きな修正限界幅を設定して、実際のばらつきに対応してSOC-OCVpatternを適切に修正するとともに、ばらつきが小さいSOC領域では比較的小さな修正限界幅を設定して、各種誤差によってSOC-OCVpatternの修正結果が発散するのをより細かく防止できる。
【0098】
なお、図16ではSOCの値ごとに異なるOCV幅を修正限界幅として指定する例を示したが、第1の実施形態において図5の右図で示したように、SOC-OCVpatternの各OCVに対してSOCの範囲を修正限界幅として指定する際に、OCVの値ごとに異なるSOC幅を修正限界幅として指定することとしてもよい。この場合でも上記と同様に、実際のばらつきに対応してSOC-OCVpatternを適切に修正するとともに、各種誤差によってSOC-OCVpatternの修正結果が発散するのをより細かく防止できる。
【0099】
図17は、本発明の第2の実施形態による効果を第1の実施形態と比較して説明する図である。ここでは、図17の左図において示すように、二重線で示したSOC-OCV真値に対して、第1の実施形態と本実施形態で実線のようなSOC-OCVpatternがそれぞれ呼び出され、同じSOC-OCVpattern,fixedが演算された場合を考える。
【0100】
第1の実施形態では、図17の中央図に示すように、一定のOCV幅で修正限界幅が与えられる。ここで、符号1701に示すSOCが高い領域は、劣化や製造誤差によるSOC-OCV特性のばらつきが大きな領域であるとする。この領域1701において、図中に示したSOC-OCVpattern,fixed上の点がSOC-OCVpatternから外れた場合を考える。この場合、第1の実施形態では、固定のOCV幅で修正限界幅が与えられるため、修正限界幅が小さいと、領域1701においてSOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲外となり、SOC-OCVpatternの修正が行われない。したがって、SOC-OCVtempを上書きすることができない。
【0101】
一方、本実施形態では、図17の右図に示すように、各SOCでのSOC-OCV特性のばらつきに対応したOCV幅で修正限界幅が与えられる。そのため、領域1701においてSOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲内となることで、SOC-OCVpatternの修正を行ってSOC-OCVtempを得ることができる。その結果、電池の状態をより正確に反映したSOC-OCV特性を、上書きされたSOC-OCVtempとして得ることが可能となり、SOCを正確に演算することができる。
【0102】
また、符号1702に示すSOCが中程度の領域は、SOC-OCV特性のばらつきが小さな領域であるとする。第1の実施形態では、固定のOCV幅で修正限界幅が与えられることから、前述の領域1701でSOC-OCVpatternの修正が行われるようにするためには、この領域1702でも修正限界幅を大きく設定する必要がある。したがって、SOC-OCVpatternを必要以上に修正してしまう可能性が生じる。
【0103】
一方、本実施形態では、図17の右図に示すように、各SOCでのSOC-OCV特性のばらつきに対応したOCV幅で修正限界幅が与えられる。そのため、領域1701では修正限界幅を大きく設定しつつ、領域1702では修正限界幅を小さく設定することが可能となり、SOC-OCVpatternを必要以上に修正してしまう可能性を排除できる。すなわち、測定上の誤差などによって真値から外れたOCVとSOCの関係が直接検知により取得された際に、これに基づいてSOC-OCV特性が修正されてしまうのを排除することができる。その結果、誤差が大きなSOC-OCV特性がSOC-OCVtempとされてしまうことを防止して、SOCを正確に演算することができる。
【0104】
本実施形態では、以上説明したような2つの効果が得られ、その結果として、第1の実施形態よりもSOC-OCVの真値により近いSOC-OCVpattern,fixedを用いて、SOC-OCVtempを上書き可能である。
【0105】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明したものに加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0106】
(6)修正限界幅指定部520aは、図16、17で示したように、予め定められたSOCごとに異なるOCV幅、または予め定められたOCVごとに異なるSOC幅を、修正限界幅として指定する。このようにしたので、実際の電池の製造ばらつきや劣化状態のばらつきに対応して修正限界幅を細かく指定できるため、SOCをより高精度に演算することが可能となる。
【0107】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。前述の第1、第2の各実施形態では、修正限界幅指定部520,520aにおいて、電池の劣化状態によらず一定の修正限界幅をそれぞれ指定する例を説明した。これに対して、以下の第3の実施形態では、電池の運転履歴に応じて修正限界幅を変化させる例を説明する。
【0108】
図18は、本発明の第3の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の機能構成を示す図である。本実施形態におけるSOC-OCV修正部151は、パターン呼び出し部510および修正限界幅指定部520にそれぞれ替えて、パターン呼び出し部510bおよび修正限界幅指定部520bを備える点と、修正限界幅ライブラリ521をさらに備える点以外は、第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0109】
パターン呼び出し部510bは、第1の実施形態におけるパターン呼び出し部510と同様に、SOC-OCVpatternを出力する。さらに加えて、SOC-OCVpatternをSOC-OCVライブラリ512から呼び出した際の電池の劣化パターンの判定結果を、パターン判定結果として出力する。
【0110】
修正限界幅指定部520bは、上記のパターン判定結果を入力し、これに基づいて、修正限界幅ライブラリ521に予め記憶された複数の修正限界幅の中から、その劣化パターンに対応する修正限界幅を呼び出して取得する。そして、取得した修正限界幅を直接検知修正部530に対して指定する。
【0111】
修正限界幅ライブラリ521は、様々な電池の劣化パターンに対応する修正限界幅のデータベースを有している。例えば、複数の電池に対して異なる条件の劣化試験をそれぞれ行い、このとき同じSOHとなった電池のSOC-OCV特性同士の差を求めることで、劣化パターンに応じた修正限界幅を予め取得しておき、その関係をデータベース化することにより、修正限界幅ライブラリ521を構築することができる。すなわち、実際に電池の劣化と個体ばらつきによって同一OCVに対して取り得るSOCの変動量を、電池の劣化状態に応じて予め取得しておくことにより、修正限界幅ライブラリ521の内容を決めることができる。
【0112】
修正限界幅は、SOC-OCVpatternと真のSOC-OCV特性との間で見込まれる誤差として決定される。この誤差は、電池の製造バラつきと劣化パターンの判定誤差によって生じる。劣化パターンの判定誤差は、電池の運転履歴が長くなるほど拡大するため、第1、第2の各実施形態では、運転履歴が短い条件から長い条件まで適切に機能するように、劣化パターンの見積もり誤差のマージンを修正限界幅に含める必要がある。
【0113】
一方、本実施形態において修正限界幅指定部520bが決める修正限界幅は、電池の運転履歴に応じて変化する。図19は、本発明の第3の実施形態に係る修正限界幅指定部520bが指定する修正限界幅の例を示す図である。本実施形態では、図19に示すように、電池の劣化が進行するにしたがって拡大する劣化パターンの見積もり誤差のマージンに対応するため、修正限界幅指定部520bが指定する修正限界幅を電池の運転履歴に応じて徐々に拡大する。これにより、電池間のSOC-OCV特性の差が小さな新品に近い状態では、修正限界幅を小さくしてSOC-OCV特性の発散性を抑えるとともに、電池間のSOC-OCV特性の差が大きくなる劣化状態では、修正限界幅を大きくして各電池のばらつきに対応した制御を行うことができる。
【0114】
図20は、本発明の第3の実施形態による効果を第2の実施形態と比較して説明する図である。ここでは、図20の上段および下段の左図においてそれぞれ示すように、二重線で示したSOC-OCV真値に対して、第2の実施形態と本実施形態で実線のようなSOC-OCVpatternがそれぞれ呼び出され、同じSOC-OCVpattern,fixedが演算された場合を考える。ここで、SOC-OCVpattern,fixedは、何らかの誤差要因により、図20の上段および下段の中央図および右図において符号2001でそれぞれ示すSOCが高い領域で、SOC-OCV真値よりも高いOCVを持っているとする。そのため、領域2001では劣化パターンの見積もり誤差のマージンを大きくして、修正限界幅を設定する必要がある。
【0115】
第2の実施形態では、電池の運転履歴に関わらず、劣化パターンの見積もり誤差のマージンを一定として修正限界幅が設定される。そのため、電池の運転履歴が短い場合には、図20の上段中央図に示すように、領域2001での修正制限幅が相対的に広く設定され、図中に示したSOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲内に入る。その結果、SOC-OCVpatternの修正が行われてSOC-OCVtempが上書きされる。
【0116】
一方、本実施形態では、電池の運転履歴が短い場合には、劣化パターンの見積もり誤差のマージンを小さくして修正限界幅が設定される。そのため、この場合は図20の上段右図に示すように、領域2001での修正限界幅が第2の実施形態よりも狭く設定され、図中に示したSOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲外となる。その結果、SOC-OCVpatternの修正が行われず、SOC-OCVtempは上書きされない。したがって、本実施形態ではより正確なSOCが得られる。
【0117】
また、第2の実施形態において、電池の運転履歴が十分長い場合には、図20の下段中央図に示すように、領域2001での修正制限幅が相対的に狭く設定され、図中に示したSOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲外となる。その結果、SOC-OCVpatternの修正が行われず、SOC-OCVtempが上書きされない。
【0118】
一方、本実施形態では、電池の運転履歴が十分長い場合には、劣化パターンの見積もり誤差のマージンを大きくして修正限界幅が設定される。そのため、この場合は図20の下段右図に示すように、領域2001での修正限界幅が第2の実施形態よりも広く設定され、図中に示したSOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲内に入る。その結果、SOC-OCVpatternの修正を行い、SOC-OCVtempを上書きすることができる。したがって、本実施形態ではより正確なSOCが得られる。
【0119】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、第1、第2の実施形態で説明したものに加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0120】
(7)修正限界幅指定部520bは、図19、20で示したように、電池の使用履歴に応じて修正限界幅を変化させる。具体的には、修正限界幅指定部520bは、SOC-OCVpatternに基づいて、修正限界幅ライブラリ521に予め記憶された複数の修正限界幅の中からいずれかを選択することで、電池の運転履歴に応じて修正限界幅を変化させる。このようにしたので、電池の運転履歴に応じて生じる劣化パターンの判定誤差の変化に対応して修正限界幅を変化できるため、SOCをより高精度に演算することが可能となる。
【0121】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。前述の第1~第3の各実施形態では、パターン呼び出し部510において、電池の使用履歴情報としてSOHを用いて電池の劣化パターンを判定し、その劣化パターンに対応するSOC-OCV特性を呼び出してSOC-OCVpatternを出力する例を説明した。これに対して、以下の第4の実施形態では、SOHだけでなく、複数の情報を電池の使用履歴情報として用いて、劣化パターンの判定を行う例を説明する。
【0122】
図21は、本発明の第4の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の機能構成を示す図である。本実施形態におけるSOC-OCV修正部151は、パターン呼び出し部510に替えてパターン呼び出し部510cを備える点以外は、第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0123】
パターン呼び出し部510cは、電池の使用履歴情報として複数の情報、例えばSOH、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴を入力とし、これらの情報に基づいて電池の劣化パターンを判定し、予め記憶された複数のSOC-OCV特性の中から、その劣化パターンに対応するSOC-OCV特性を呼び出す。そして、呼び出したSOC-OCV特性の情報をSOC-OCVpatternとして出力する。
【0124】
図22は、本発明の第4の実施形態に係るパターン呼び出し部510cの構成を示す図である。パターン呼び出し部510cは、パターン判定部511cと、SOC-OCVライブラリ512cとを有する。
【0125】
パターン判定部511cは、電池の使用履歴情報として入力された各情報、すなわちSOH、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴に基づいてパターン判定を行い、そのパターン判定結果に対応するSOC-OCV特性をSOC-OCVライブラリ512cから検索して呼び出す。そして、呼び出したSOC-OCV特性からSOC-OCVpatternを生成し、出力する。
【0126】
SOC-OCVライブラリ512cは、パターン判定部511cに入力される各情報、すなわちSOH、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴の値の組み合わせごとに、SOC-OCV特性のデータベースを有している。例えば、これらの情報を4つの軸にそれぞれ対応付け、この4つの軸で表現される座標値ごとにSOC-OCV特性を関連付けたものを、SOC-OCV特性のデータベースとして記憶する。この場合、パターン判定部511cは、パターン判定結果に基づいて座標値を特定し、この座標値に対応するSOC-OCV特性をSOC-OCVライブラリ512cから検索して呼び出すことで、入力された使用履歴情報に対応するSOC-OCV特性を取得する。
【0127】
図23は、本発明の第4の実施形態に係るSOC-OCVライブラリ512cが有するSOC-OCV特性の例を示す図である。図23では、SOHの値が100%、120%、140%、・・・の各場合について、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴の値の組み合わせごとに、それぞれ異なるSOC-OCV特性がSOC-OCVライブラリ512cに記憶されていることを示している。ここで、SOC-OCVライブラリ512cは、例えば各単電池111に対して、SOH、電流、温度、SOCの4つの条件をそれぞれ変化させて劣化試験を行うことで、これらの条件の組み合わせごとに各単電池111の劣化が進んだときのSOCとOCVの関係を予め取得しておき、その関係をデータベース化することによって実現できる。
【0128】
なお、上記ではパターン呼び出し部510cにおいて、電池の使用履歴情報としてSOH、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴を用いて、電池の劣化状態に対応するSOC-OCVpatternを呼び出す例を説明したが、必ずしもこれらの情報を全て用いる必要はない。すなわち、パターン呼び出し部510cは、SOH、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴の少なくともいずれか一つを電池の使用履歴情報として用いて、電池の劣化状態に対応するSOC-OCVpatternを呼び出すことが可能である。なお、SOC-OCVライブラリ512cには、電池の使用履歴情報としてパターン呼び出し部510cに入力され、パターン判定部511cにおいてパターン判定を行う際に利用される情報の組み合わせごとに、SOC-OCV特性を記憶しておけばよい。ここで、第1の実施形態で説明したパターン呼び出し部510は、SOHのみを電池の使用履歴情報として用いた場合に相当する。また、SOH、電流履歴、温度履歴およびSOC履歴以外の情報を電池の使用履歴情報として用いてもよい。
【0129】
図24は、本発明の第4の実施形態による効果を第1の実施形態と比較して説明する図である。ここでは、図24の左図において二重線で示したSOC-OCV真値に対して、第1の実施形態と第4の実施形態では、図24の中央図と右図にそれぞれ示したように、異なるSOC-OCVpatternが呼び出された場合を考える。
【0130】
本実施形態では、複数の情報を電池の使用履歴情報として用いているため、電池の運転履歴を詳細に捉えることができる。そのため、図24から分かるように、第1の実施形態と比べて、SOC-OCV真値により近いSOC-OCVpatternを呼び出すことができる。なお、SOC-OCVpattern,fixedは少なくとも1つの点を原点としてSOC-OCVpatternから取得するため、SOC-OCVpatternが異なれば一般には一致しない。したがって、図24の中央図と右図の各点に示すように、第1の実施形態と本実施形態では、SOC-OCVpattern,fixedが異なっている。
【0131】
本実施形態では、上記のように複数の情報を電池の使用履歴情報として用いることで、劣化パターンに対してより詳細な予測を行い、真値に近いSOC-OCVpatternを呼び出すことができる。そのため、劣化パターンの見積もり誤差のマージンを小さくして修正限界幅を設定することが可能となり、修正限界幅を狭めることができる。したがって、第1の実施形態ではSOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲内に入り、そのためSOC-OCVtempが上書きされてしまうような演算誤差が生じた場合でも、本実施形態ではSOC-OCVtempの上書きを防止することができる。その結果、本実施形態ではより精度が高いSOCが得られる。
【0132】
以上説明した本発明の第4の実施形態によれば、第1~第3の実施形態で説明したものに加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0133】
(8)パターン呼び出し部510cは、図23、24で説明したように、電池の劣化状態(SOH)、電流履歴、温度履歴および充電率(SOC)履歴の少なくともいずれか一つを電池の使用履歴情報として用いて、SOC-OCVpatternを呼び出す。このようにしたので、電池の劣化状態に応じてより適切なSOC-OCVpatternを呼び出すことができるため、SOCをより高精度に演算することが可能となる。
【0134】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。前述の第1~第4の各実施形態では、直接検知修正部530において、直接検知で得たOCVとSOCに基づいてSOC-OCVpatternを修正して求めたSOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅以内であるか否かを判定し、修正限界幅以内である場合にSOC-OCVtempを上書きする例を説明した。これに対して、以下の第5の実施形態では、現在の制御で使用されているSOC-OCVtempとの差分をさらに考慮して、SOC-OCVtempを上書きするか否かを判断する例を説明する。
【0135】
図25は、本発明の第5の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の機能構成を示す図である。本実施形態におけるSOC-OCV修正部151は、修正限界幅指定部520および直接検知修正部530にそれぞれ替えて、修正限界幅指定部520dおよび直接検知修正部530dを備える点以外は、第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0136】
修正限界幅指定部520dは、第1の実施形態における修正限界幅指定部520と同様に、予め記憶された複数の修正限界幅の中から、電池の劣化パターンに対応する修正限界幅を呼び出して取得する。そして、直接検知修正部530dに対して、取得した修正限界幅を修正限界幅(パターン)として出力する。さらに加えて、前回の処理でSOC-OCVtempが上書きされた際の修正限界幅を、修正限界幅(前回値)として出力する。この修正限界幅(前回値)は、直接検知で取得したOCVとSOCにおいてセンサ誤差などにより短期的に大きな変動が生じた場合に、直接検知修正部530dにおいてこれを検知するための指標として用いられる。
【0137】
直接検知修正部530dは、電流IおよびOCVに基づいて、パターン呼び出し部510から出力されるSOC-OCVpatternを、修正限界幅指定部520dにより指定された修正限界幅(パターン)および修正限界幅(前回値)に応じて修正する。そして、修正結果をSOC-OCVtempとして出力する。
【0138】
図26は、本発明の第5の実施形態に係る直接検知修正部530dの機能構成を示す図である。直接検知修正部530dは、SOC-OCV上書き判定部533に替えてSOC-OCV上書き判定部533dを備える点以外は、第1の実施形態で説明した直接検知修正部530と同様の構成を有している。
【0139】
SOC-OCV上書き判定部533dは、修正限界幅指定部520dから入力される修正限界幅(パターン)および修正限界幅(前回値)と、SOC-OCV直接検知修正部532から入力される各点での修正回数を表す数列Ncountと、前回の処理におけるSOC-OCVtempの値であるSOC-OCVtemp,z-1とを用いて、SOC-OCV特性の上書きタイミングを判定する。そして、上書きタイミングであると判断したら、SOC-OCVtempをSOC-OCVpattern,fixedで上書きして出力する。
【0140】
以下では、図27に示すフローチャートを用いて、SOC-OCV上書き判定部533dの詳細を説明する。図27は、本発明の第5の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の処理フローを示すフローチャートである。
【0141】
ステップ601~609では、第1の実施形態で説明した図12のフローチャートと同様の処理をそれぞれ実施する。このとき、修正限界幅判定ステップ609では、修正限界幅指定部520dから入力される修正限界幅(パターン)を用いて、SOC-OCV上書き判定部533dにより、第1の実施形態で説明したような判定を行う。その結果、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅(パターン)の範囲内であると判定した場合はステップ619へ進み、修正限界幅(パターン)の範囲外であると判定した場合はステップ610に進む。
【0142】
前回修正限界幅判定ステップ619では、SOC-OCV上書き判定部533dにより、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅(前回値)の範囲内であるか否かを判定する。ここでは例えば、第1の実施形態で説明した評価式(6)のOCV’pattern,iをOCV’temp,z-1,iで置き換えた以下の評価式(7)により、SOC-OCVpattern,fixed上の点、および、その点から下ろした垂線とSOC-OCVtemp,z-1上の二点間を結ぶ線分との交点について、これらの点のOCVの二乗差を修正限界幅(前回値)と比較して評価する。なお、評価式(7)におけるOCV’temp,z-1,iの値は、上記交点のOCVの値を表している。
【0143】
【数7】
【0144】
ステップ619でSOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅(前回値)の範囲外と判定された場合は、計算リセットステップ610に進み、これまでに得られたSOC-OCVpattern,fixedとNcountの値をステップ610でリセットした後に、ステップ607から演算をやり直す。一方、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅(前回値)の範囲内であれば、次のステップ611に進む。ステップ611以降では、第1の実施形態で説明した図12のフローチャートと同様の処理をそれぞれ実施する。
【0145】
本実施形態では、ステップ619で上記のような処理を行うことにより、直接検知で求めたSOC-OCVpattern,fixedがSOC-OCVtemp,z-1、すなわち前回の処理で得られたSOC-OCVtempから大きく変わっているか否かを判定する。その結果、大きく変わっている場合には、センサ誤差などによって生じた電池の状態によらないSOC-OCV特性の変動であると判断して、SOC-OCV特性上書きステップ611を実行せずに、ステップ607に戻って演算をやり直すようにしている。これにより、第1の実施形態と比べて、SOC-OCV特性が急激に変動してSOCの演算結果が発散するのを抑制することができる。
【0146】
なお、電池が長時間使用されなかった場合は、電池の状態が前回の処理時点よりも大きく変わることが予想される。そのため、前回の処理を行ってからの経過時間が所定の閾値よりも長い場合は、ステップ619の処理を省略してもよい。
【0147】
図28は、本発明の第5の実施形態による効果を説明する図である。ここでは、図28の左図において二重線で示したSOC-OCV真値に対して、破線で示したようなSOC-OCV特性が前回の処理で求められており、これをSOC-OCVtemp,z-1とした場合を考える。また、図28の左図において符号2801で示すSOCが高い領域で、図28の中央図および右図の各点でそれぞれ示すように、SOC-OCVtemp,z-1よりも高いOCVを持つOCVとSOCの組み合わせがSOC-OCVpattern,fixedとして検知された場合を考える。
【0148】
図28の中央図に示すように、SOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅(パターン)の範囲内にある場合、第1~第4の各実施形態では、SOC-OCVpatternの修正が行われてSOC-OCVtempが上書きされる。したがって、前述の領域2801において何らかの原因により誤差の大きなOCVが検知されていたとすると、この領域におけるSOCの演算精度は、前回の処理で得られたSOC-OCVtemp,z-1を用いた場合よりも悪化してしまう。
【0149】
一方、本実施形態では、さらに図27で説明したステップ619の処理が行われることで、SOC-OCVpattern,fixed上の点がSOC-OCVtemp,z-1に対する修正限界幅(前回値)の範囲内であるか否かが判定される。その結果、図28の右図に示すように、SOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅(前回値)の範囲外である場合には、SOC-OCVpatternの修正が行われず、SOC-OCVtempは上書きされない。したがって、本実施形態ではSOCの演算精度を向上させることが可能である。
【0150】
以上説明した本発明の第5の実施形態によれば、第1~第4の実施形態で説明したものに加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0151】
(9)修正限界幅指定部520dは、直接検知修正部530dが過去(前回)に作成したSOC-OCVtempであるSOC-OCVtemp,z-1に対する修正の許容範囲を定める修正限界幅(前回値)を指定する。直接検知修正部530dは、図27、28で説明したように、修正限界幅指定部520dが今回のSOC-OCVpatternに対して指定した修正限界幅(パターン)と、修正限界幅指定部520dが過去のSOC-OCVtemp,z-1に対して指定した修正限界幅(前回値)とを用いて、SOC-OCVtempを作成する。このようにしたので、センサ誤差などによってSOC-OCV特性が急激に変動した場合でも、SOCの演算結果が発散するのを抑制できるため、SOCをより高精度に演算することが可能となる。
【0152】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。前述の第1~第5の各実施形態では、直接検知で得たOCVとSOCから求めたSOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外である場合、計算結果をリセットして演算をやり直す例を説明した。これに対して、以下の第6の実施形態では、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外で収束している場合には、電池の劣化パターンの判定に誤りがあったと判断して、電池の運転履歴を更新する例を説明する。
【0153】
図29は、本発明の第6の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の機能構成を示す図である。本実施形態におけるSOC-OCV修正部151は、直接検知修正部530に替えて直接検知修正部530eを備える点以外は、第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0154】
直接検知修正部530eは、第1の実施形態における直接検知修正部530と同様に、電流IおよびOCVに基づいて、パターン呼び出し部510から出力されるSOC-OCVpatternを、修正限界幅指定部520dにより指定された修正限界幅に応じて修正する。そして、修正結果をSOC-OCVtempとして出力する。さらに加えて、修正限界幅の範囲外であると判定されたSOC-OCVpattern,fixedが所定の収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たすと判断した場合は、電池の運転履歴を更新する。
【0155】
図30は、本発明の第6の実施形態に係る直接検知修正部530eの機能構成を示す図である。直接検知修正部530eは、SOC-OCV収束判定部534をさらに備える点以外は、第1の実施形態で説明した直接検知修正部530と同様の構成を有している。
【0156】
SOC-OCV収束判定部534には、SOC-OCV直接検知修正部532から出力されたSOC-OCVpattern,fixedのうち、SOC-OCV上書き判定部533において修正限界幅の範囲外と判定されたものが入力される。SOC-OCV収束判定部534は、入力されたSOC-OCVpattern,fixedを複数回分保存しておき、これらが所定の収束条件を満たすか否かを判定する。その結果、収束条件を満たすと判定した場合は、保存したSOC-OCVpattern,fixedに基づいて電池の使用履歴情報であるSOHを更新し、更新後のSOHを出力する。なお、第4の実施形態で説明したように、SOH以外の情報、例えば電流履歴、温度履歴、SOC履歴などを電池の使用履歴情報として利用する場合には、これらの情報を更新してもよい。
【0157】
図31は、SOC-OCV収束判定部534の機能構成を示す図である。SOC-OCV収束判定部534は、幅外カウント部535および運転履歴判定部536を有する。
【0158】
幅外カウント部535は、SOC-OCV上書き判定部533において修正限界幅の範囲外であると判定されたSOC-OCVpattern,fixedを、直近の所定回数分保存する。そして、SOC-OCVpattern,fixedの連続保存数、すなわち修正限界幅の範囲外と判定された連続回数Nerrorをカウントし、この連続回数Nerrorが所定の閾値を超えたときに、それまでに保存した複数回分のSOC-OCVpattern,fixedに対して、その平均と分散を計算し、それぞれの計算結果を平均SOC-OCVpattern,fixedおよび分散SOC-OCVpattern,fixedとして出力する。
【0159】
運転履歴判定部536は、幅外カウント部535が計算して出力した平均SOC-OCVpattern,fixedおよび分散SOC-OCVpattern,fixedを入力とし、これらの入力に基づいて更新後の電池の使用履歴情報(例えばSOH)を出力する。具体的には、運転履歴判定部536は、分散SOC-OCVpattern,fixedが所定の閾値以内であるか否かを判定し、閾値以内であれば、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外で収束していると判定する。そして、平均SOC-OCVpattern,fixedに最も類似するSOC-OCV特性をSOC-OCVライブラリ512から検索し、そのSOC-OCV特性に対応するSOHを、更新後の使用履歴情報として出力する。このとき、平均SOC-OCVpattern,fixedに最も類似するSOC-OCV特性の検索は、例えば第1の実施形態で説明した評価式(6)と同様のものを用いて行うことができる。すなわち、平均SOC-OCVpattern,fixedに対して、各SOC点でのOCV差の二乗和が最も小さくなるSOC-OCV特性をSOC-OCVライブラリ512から検索することで、最も類似するSOC-OCV特性を検索することができる。
【0160】
以下では、図32に示すフローチャートを用いて、SOC-OCV収束判定部534の詳細を説明する。図32は、本発明の第6の実施形態に係るSOC-OCV修正部151の処理フローを示すフローチャートである。
【0161】
ステップ601~609では、第1の実施形態で説明した図12のフローチャートと同様の処理をそれぞれ実施する。修正限界幅判定ステップ609において、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲内であると判定した場合はステップ611へ進み、修正限界幅の範囲外であると判定した場合はステップ617に進む。ステップ611に進んだ場合、ステップ611以降では、第1の実施形態で説明した図12のフローチャートと同様の処理をそれぞれ実施する。
【0162】
収束判定ステップ617では、幅外カウント部535および運転履歴判定部536により、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外で収束したか否かを判定する。ここでは、前述のような収束条件を用いて収束判定ステップ617を行う。すなわち、幅外カウント部535では、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外であると連続して判定された回数をカウントした連続回数Nerrorを所定の閾値と比較して、連続回数Nerrorが閾値を超えると、収束条件を満たしたと判定する。また、運転履歴判定部536では、幅外カウント部535が計算した分散SOC-OCVpattern,fixedを所定の閾値と比較して、分散SOC-OCVpattern,fixedが閾値以内であれば、収束条件を満たしたと判定する。その結果、これらの収束条件を満たした場合はステップ618に進み、いずれかの収束条件を満たさない場合はステップ610に進む。ステップ610に進んだ場合は、これまでに得られたSOC-OCVpattern,fixedとNcountの値をステップ610でリセットした後に、ステップ607から演算をやり直す。
【0163】
運転履歴変更ステップ618では、運転履歴判定部536により、電池の運転履歴を表す使用履歴情報を変更する。ここでは前述のように、幅外カウント部535が計算した平均SOC-OCVpattern,fixedに最も類似するSOC-OCV特性を検索し、そのSOC-OCV特性に対応するSOHを出力することで、使用履歴情報を変更する。ステップ618で使用履歴情報の変更を終えたら、パターンSOC-OCV読み出しステップ605に戻り、ステップ618で検索されたSOC-OCV特性をSOC-OCVpatternとしてメモリに保存した後、ステップ606以降の処理を繰り返す。
【0164】
本実施形態では、ステップ617、618で上記のような処理をそれぞれ行うことにより、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外で収束しているか否かを判定する。その結果、修正限界幅の範囲外で収束している場合には、電池の劣化パターンの判定に誤りがあったと判断して、電池の運転履歴を更新するようにしている。これにより、第1の実施形態と比べて、SOCの演算結果が発散するのを抑えながら、電池の劣化パターンの見積もり誤りを修正できる。また、この手法を用いることで、運転履歴から判断した電池の劣化パターンと、SOC-OCVpattern,fixedから想定される運転履歴との違いから、電池の想定外な劣化を検知することが可能となる。そのため、これを利用して電池の故障判定を行うこともできる。
【0165】
図33は、本発明の第6の実施形態による効果を説明する図である。ここでは、図33の左図において二重線で示したSOC-OCV真値に対して、符号3301で示すSOCが高い領域で、図33の中央図の各点で示すように、修正限界幅の範囲外となるOCVとSOCの組み合わせがSOC-OCVpattern,fixedとして検知された場合を考える。
【0166】
図33の中央図に示すように、SOC-OCVpattern,fixed上の点が修正限界幅の範囲外にある場合、第1~第5の各実施形態では、SOC-OCVpatternの修正が行われず、SOC-OCVtempは上書きされない。このとき、SOC-OCVpatternとSOC-OCVpattern,fixedとの差異が測定誤差などの短期的に変動する要因ではなく、電池の運転履歴の誤りや不足などを原因とした劣化パターンの判定誤差によって生じたものである場合には、図12図27のステップ609が否定判定され続ける。その結果、ステップ607~610のサイクルが繰り返され、SOC-OCVtempの更新が停止してしまう可能性がある。
【0167】
一方、本実施形態では、ステップ609が否定判定された場合、図32で説明したステップ617の処理が行われることで、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外で収束したか否かが判定される。そして、収束したと判定された場合はさらにステップ618の処理が行われることで、それまでに検知されたSOC-OCVpattern,fixedに基づいて、電池の運転履歴が変更される。その結果、図33の右図に示すように、SOC-OCVpattern,fixedが変更後の運転履歴に応じて設定された修正限界幅の範囲内となり、SOC-OCVtempが更新されてSOCの演算を継続することが可能となる。
【0168】
なお、SOC-OCVpattern,fixedは、SOC-OCVpattern上の少なくとも1つの点を原点として取得される。そのため、運転履歴の更新前と更新後では、一般的にSOC-OCVpattern,fixedは一致しない。したがって、運転履歴の更新によりSOC-OCV特性の修正が可能となり、SOCの演算精度が向上する。
【0169】
以上説明した本発明の第6の実施形態によれば、第1~第5の実施形態で説明したものに加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
【0170】
(10)直接検知修正部530eは、修正限界幅の範囲外の部分を含む修正後のSOC-OCVpattern、すなわちSOC-OCVpattern,fixedに基づいて、電池の使用履歴情報を更新する。具体的には、直接検知修正部530eは、図32、33で説明したように、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲内であるか否かを判定し(ステップ609)、修正限界幅の範囲外であると判定されたSOC-OCVpattern,fixedが所定の収束条件を満たす場合に(ステップ617:YES)、電池の使用履歴情報を更新する(ステップ618)。このようにしたので、電池の劣化パターンを誤って判定した場合でも、SOC-OCV特性を修正してSOCの演算を継続できるため、SOCの演算精度を向上することが可能となる。
【0171】
(11)ステップ617の判定で用いられる収束条件は、SOC-OCVpattern,fixedが修正限界幅の範囲外であると継続して判定された回数が所定回数以上であるという第一の条件と、SOC-OCVpattern,fixedの分散(分散SOC-OCVpattern,fixed)が所定の閾値以下であるという第二の条件と、のいずれか少なくとも一つを含む。このようにしたので、修正限界幅の範囲外であると判定されたSOC-OCVpattern,fixedが所定の収束条件を満たすか否かを正確に判定することができる。
【0172】
なお、以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記の各実施形態は、任意に組み合わせて使用することもできる。さらに、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0173】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2018-201527(2018年10月26日出願)
【符号の説明】
【0174】
100:電池システム
110:組電池
111:単電池
112:単電池群
120:単電池管理部
121:単電池制御部
122:電圧検出回路
123:制御回路
124:信号入出力回路
125:温度検知部
130:電流検知部
140:電圧検知部
150:組電池制御部
151:SOC-OCV修正部
152:SOC演算部
153:OCV演算部
154:容量計算部
155:SOC演算システム
160:信号通信手段
170:絶縁素子
180:記憶部
200:車両制御部
300~330:リレー
400:インバータ
410:モータジェネレータ
420:充電器
510,510b,510c:パターン呼び出し部
511,511c:パターン判定部
512,512c:SOC-OCVライブラリ
520,520a,520b,520d:修正限界幅指定部
521:修正限界幅ライブラリ
530,530d,530e:直接検知修正部
531:修正OCVペア・積分電流取得部
532:SOC-OCV直接検知修正部
533,533d:SOC-OCV上書き判定部
534:SOC-OCV収束判定部
535:幅外カウント部
536:運転履歴判定部
図1
図2
図3
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