(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】非接触充電装置および非接触充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20241127BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241127BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20241127BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20241127BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/90
B60L53/12
B60L5/00 B
(21)【出願番号】P 2021003527
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三松 隼太
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰史
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-237890(JP,A)
【文献】特開2013-051744(JP,A)
【文献】特開2011-244532(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02541730(EP,A1)
【文献】特開2019-068501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H02J 7/00
H02J 50/90
B60L 53/12
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行しながら充電レーンの給電コイルから受電可能な車載コイルと、
前記車載コイルを通じて前記給電コイルから供給される電力によって車載バッテリを充電させる充電制御部と、
を備え、
前記充電制御部は、前記車載バッテリの電力によって前記車載コイルを電磁石にさせ、電磁石にされた前記車載コイルの電流変化に基づいて、前記充電レーンにおける非接触充電の開始位置を判断する非接触充電装置。
【請求項2】
前記車載バッテリと前記車載コイルとを電気的に接続させる第1スイッチと、
前記充電レーンの始端を検出するレーン検出部と、
をさらに備え、
前記充電制御部は、前記レーン検出部による前記充電レーンの始端の検出に応じて、前記第1スイッチをオンさせて前記車載コイルを電磁石にさせる請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項3】
交流直流変換部と、
前記交流直流変換部と直列に接続される第2スイッチと、をさらに備え、
前記第2スイッチおよび前記交流直流変換部は、前記第1スイッチに対して並列に接続され、
前記充電制御部は、電磁石にされた前記車載コイルの電流変化に基づいて、自車両が前記開始位置を通過したと判断した場合、前記第1スイッチをオフさせるとともに、前記第2スイッチをオンさせる請求項2に記載の非接触充電装置。
【請求項4】
前記充電制御部は、前記車載バッテリへの充電電流が所定閾値未満となってから所定時間が経過した場合に前記第2スイッチをオフさせる請求項3に記載の非接触充電装置。
【請求項5】
充電レーン内に配置される給電コイルと、
前記充電レーンの始端と前記給電コイルとの間の非接触充電の開始位置に配置される開始コイルと、
走行しながら前記給電コイルから受電可能な車載コイルと、
前記車載コイルを通じて前記給電コイルから供給される電力によって車載バッテリを充電させる充電制御部と、
を備え、
前記充電制御部は、前記車載バッテリの電力によって前記車載コイルを電磁石にさせ、電磁石にされた前記車載コイルと前記開始コイルとの相互作用による前記車載コイルの電流変化に基づいて、前記開始位置を判断する非接触充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行中に車載バッテリを非接触で充電可能な非接触充電装置および非接触充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両が給電区間を移動しているときに、車両に非接触で給電が可能な給電設備の一例が開示されている。この種の技術では、車両に非接触で供給された電力によって車載バッテリを充電する非接触充電が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行中の車両は、充電レーンの給電設備から供給される電力を適切に受電するために、充電レーンにおける非接触充電の開始位置を的確に認識可能であることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、給電設備から供給される電力を適切に受電可能な非接触充電装置および非接触充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の非接触充電装置は、走行しながら充電レーンの給電コイルから受電可能な車載コイルと、車載コイルを通じて給電コイルから供給される電力によって車載バッテリを充電させる充電制御部と、を備え、充電制御部は、車載バッテリの電力によって車載コイルを電磁石にさせ、電磁石にされた車載コイルの電流変化に基づいて、充電レーンにおける非接触充電の開始位置を判断する。
【0007】
また、非接触充電装置は、車載バッテリと車載コイルとを電気的に接続させる第1スイッチと、充電レーンの始端を検出するレーン検出部と、をさらに備え、充電制御部は、レーン検出部による充電レーンの始端の検出に応じて、第1スイッチをオンさせて車載コイルを電磁石にさせるとしてもよい。
【0008】
また、非接触充電装置は、交流直流変換部と、交流直流変換部と直列に接続される第2スイッチと、をさらに備え、第2スイッチおよび交流直流変換部は、第1スイッチに対して並列に接続され、充電制御部は、電磁石にされた車載コイルの電流変化に基づいて、自車両が開始位置を通過したと判断した場合、第1スイッチをオフさせるとともに、第2スイッチをオンさせるとしてもよい。
【0009】
また、充電制御部は、車載バッテリへの充電電流が所定閾値未満となってから所定時間が経過した場合に第2スイッチをオフさせるとしてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の非接触充電システムは、充電レーン内に配置される給電コイルと、充電レーンの始端と給電コイルとの間の非接触充電の開始位置に配置される開始コイルと、走行しながら給電コイルから受電可能な車載コイルと、車載コイルを通じて給電コイルから供給される電力によって車載バッテリを充電させる充電制御部と、を備え、充電制御部は、車載バッテリの電力によって車載コイルを電磁石にさせ、電磁石にされた車載コイルと開始コイルとの相互作用による車載コイルの電流変化に基づいて、開始位置を判断する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給電設備から供給される電力を適切に受電可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる非接触充電システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、給電設備の詳細を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、非接触充電装置の詳細を説明する概略図である。
【
図4】
図4は、車両が充電レーンに進入する前の状態を説明する図である。
【
図5】
図5は、車両が充電レーン内に進入するときの状態を説明する図である。
【
図6】
図6は、車載コイルが開始コイル上に到達した状態を説明する図である。
【
図7】
図7は、車載コイルが開始コイル上を通過した状態を説明する図である。
【
図8】
図8は、車載コイルが給電コイル上を通過する状態を説明する図である。
【
図9】
図9は、車載コイルが終了コイル上を通過する状態を説明する図である。
【
図10】
図10は、車載コイルが終了コイルを通過した後の状態を説明する図である。
【
図11】
図11は、設備制御部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【
図12】
図12は、充電制御部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる非接触充電システム1の構成を示す概略図である。非接触充電システム1は、非接触充電装置10が適用された車両12と、充電レーン14とを含む。
【0015】
車両12は、例えば、電気自動車またはハイブリッド車である。車両12には、車載バッテリ20が設けられている。車載バッテリ20は、車両12の駆動源である不図示のモータに電力を供給する。非接触充電装置10は、後に詳述するが、走行中に、車外から非接触で供給される電力によって車載バッテリ20を充電する非接触充電を実行する。非接触充電装置10は、車載コイル22を含む。車載コイル22は、例えば、車両12の底部に設けられる。非接触充電装置10は、車載コイル22を通じて非接触充電を実行する。
【0016】
充電レーン14は、車両12に非接触で電力を供給するための給電設備30が設けられた走行路である。給電設備30は、給電コイル32を含む。給電コイル32は、充電レーン14において、進行方向に沿って所定間隔毎に複数設置される。給電コイル32は、充電レーン14の長さに従った任意の数だけ設置される。給電コイル32は、例えば、地中に埋設されるとするが、路面に戴置されてもよい。給電設備30は、給電コイル32を通じて充電レーン14上の空間に電力を送出(放出)する。
【0017】
車両12は、充電レーン14の始端14aから充電レーン14内に進入し、充電レーン14を走行した後、充電レーン14の終端14bから充電レーン14外に退出する。車載コイル22は、車両12が充電レーン14を走行中に、給電コイル32から送出される電力を、電磁誘導によって非接触で受電可能である。非接触充電装置10は、車両12が充電レーン14を走行中に車載コイル22を通じて供給された電力によって、車載バッテリ20の充電を行う。
【0018】
また、給電設備30は、開始コイル34および終了コイル36を含む。開始コイル34は、複数の給電コイル32のうち充電レーン14の始端14aに最も近い給電コイル32と、充電レーン14の始端14aとの間の、非接触充電の開始位置に設置される。後に詳述するが、開始コイル34は、非接触充電用の電力の送出を行わない。開始コイル34は、給電設備30が給電を開始するために利用されるとともに、車両12が非接触充電の開始位置を検出するために利用される。
【0019】
終了コイル36は、複数の給電コイル32のうち充電レーン14の終端14bに最も近い給電コイル32と、充電レーン14の終端14bとの間の、非接触充電の終了位置に設置される。後に詳述するが、終了コイル36は、非接触充電用の電力の送出を行う。終了コイル36は、給電設備30が給電を終了するために利用されるとともに、車両12側において非接触充電の終了の判断の起点として利用される。
【0020】
図2は、給電設備30の詳細を説明する概略図である。
図2では、充電レーン14を平面図で示しており、充電レーン14の範囲をクロスハッチングで示している。
【0021】
図2で示すように、給電コイル32、開始コイル34および終了コイル36の各々は、充電レーン14の幅方向の大凡中央に配置される。給電コイル32、開始コイル34および終了コイル36は、各々のコイルに電流が流れることで発生する磁束が鉛直方向に延びるように配置される。
【0022】
給電コイル32、開始コイル34および終了コイル36は、路面への投影面の面積が各々等しくなるように、同程度のサイズとされている。なお、給電コイル32、開始コイル34および終了コイル36は、それぞれの役割を果たせる範囲で大きさを異ならせてもよい。
【0023】
給電設備30は、給電コイル32、開始コイル34および終了コイル36の他、給電部40、オン側電流センサ42、オフ側電流センサ44、および、設備制御部46を含む。給電部40および設備制御部46は、例えば、共通の筐体48に収容される。
【0024】
給電部40は、給電コイル32と、終了コイル36と、電力供給源50とにそれぞれ接続されている。電力供給源50は、例えば、商用の電力系統である。給電部40は、電力供給源50から供給される電力を変換して、給電コイル32および終了コイル36に供給する。具体的には、給電部40は、商用周波数の電力を高周波の電力に変換し、高周波の電力を給電コイル32および終了コイル36に供給する。
【0025】
オン側電流センサ42は、開始コイル34に設けられ、開始コイル34に流れる電流を検出する。オフ側電流センサ44は、終了コイル36に設けられ、終了コイル36に流れる電流を検出する。具体的には、終了コイル36が給電部40に接続されているため、オフ側電流センサ44は、給電部40から終了コイル36を通じて流れる電流を検出する。
【0026】
設備制御部46は、中央処理装置、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成されるコンピュータである。設備制御部46は、プログラムを実行することで給電設備30全体を制御する。
【0027】
設備制御部46は、オン側電流センサ42およびオフ側電流センサ44の検出結果を取得する。設備制御部46は、オン側電流センサ42で検出される電流変化に基づいて、給電部40に、給電コイル32および終了コイル36への給電を開始させる。また、設備制御部46は、オフ側電流センサ44で検出される電流変化に基づいて、給電部40に、給電コイルおよび終了コイルへの給電を終了させる。
【0028】
図3は、非接触充電装置10の詳細を説明する概略図である。
図3では、非接触充電装置10が適用された車両12を示している。非接触充電装置10は、車載コイル22の他、第1スイッチ60、第2スイッチ62、整流器64、バッテリ電流センサ66、レーン検出部68、および、充電制御部70を含む。
【0029】
第1スイッチ60の一端は、車載バッテリ20に接続され、第1スイッチ60の他端は、車載コイル22に接続されている。第1スイッチ60は、オン状態となると、車載バッテリ20と車載コイル22とを電気的に接続させる。第1スイッチ60がオン状態となると、後述するが、車載バッテリ20の電力が第1スイッチ60を通じて車載コイル22に供給される。
【0030】
第2スイッチ62の一端は、第1スイッチ60の車載バッテリ20側端と接続されている。第2スイッチ62の他端は、整流器64を介して第1スイッチ60の車載コイル22側端と接続されている。つまり、第2スイッチ62は、整流器64と直列に接続されており、第2スイッチ62および整流器64は、第1スイッチ60に対して並列に接続されている。
【0031】
第2スイッチ62は、オン状態となると、車載バッテリ20と車載コイル22との間に整流器64を電気的に挿入させる。整流器64は、例えば、ダイオードブリッジで構成される。整流器64は、車載コイル22側から入力される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリ20側に出力する交流直流変換部である。第1スイッチ60がオフ状態であり、かつ、第2スイッチ62がオン状態となると、車載コイル22で受電された電力が直流に変換されて、第2スイッチ62を通じて車載バッテリ20に供給される。
【0032】
バッテリ電流センサ66は、例えば、第1スイッチ60と第2スイッチ62との接続ノード72と、車載バッテリ20の端子との間に設けられる。バッテリ電流センサ66は、車載バッテリ20から第1スイッチ60を通じて車載コイル22に流れる電流を検出する。また、バッテリ電流センサ66は、車載コイル22から第2スイッチ62を通じて車載バッテリ20に流れる充電電流を検出する。
【0033】
レーン検出部68は、充電レーン14の始端14aを検出する。例えば、レーン検出部68は、GPSセンサが内蔵されたナビゲーション装置によって構成される。レーン検出部68は、GPSセンサによって自車両の位置を示す車両位置情報を取得することができる。また、レーン検出部68は、充電レーン14の場所が登録された地図情報を取得することができる。レーン検出部68は、車両位置情報と地図情報とに基づいて、走行経路における自車両に最も近い充電レーン14の始端14aを検出することができる。その結果、レーン検出部68は、自車両が充電レーン14内に進入したか否かを検出することができる。
【0034】
充電制御部70は、中央処理装置、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成されるコンピュータである。充電制御部70は、プログラムを実行することで車載バッテリ20の充電に関する制御を実行する。
【0035】
充電制御部70は、レーン検出部68による充電レーン14の始端14aの検出に応じて、第1スイッチ60をオンさせる。第1スイッチ60がオンされると、第1スイッチ60を通じて車載バッテリ20から車載コイル22に電力が供給される。そうすると、車載コイル22は、車載バッテリ20の電力によって電磁石として機能する。
【0036】
また、バッテリ電流センサ66は、電磁石とされた車載コイル22の電流変化を検出することができる。充電制御部70は、電磁石とされた車載コイル22の電流変化に基づいて、充電レーン14における非接触充電の開始位置を判断する。また、充電制御部70は、自車両が開始位置を通過したと判断した場合、第1スイッチ60をオフさせるとともに、第2スイッチ62をオンさせる。このように、充電制御部70は、レーン検出部68およびバッテリ電流センサ66の検出結果に応じて、第1スイッチ60および第2スイッチ62のいずれか一方または双方のオンオフを制御する。
【0037】
以下、
図4~
図10を参照して、1台の車両12が充電レーン14を通過する例により、充電制御部70および設備制御部46の動作を詳述する。
【0038】
図4は、車両12が充電レーン14に進入する前の状態を説明する図である。車両12が充電レーン14に進入する前、第1スイッチ60および第2スイッチ62は、オフ状態となっている。これにより、充電レーン14の外部に存在する車両12では、車載バッテリ20と車載コイル22とが絶縁されている。
【0039】
また、充電レーン14内に車両12が存在しない場合、設備制御部46は、給電コイル32および終了コイル36から電力を送出させない。これにより、給電コイル32および終了コイル36から無駄な電力が送出されることが抑制される。
【0040】
図5は、車両12が充電レーン14内に進入するときの状態を説明する図である。車両12の前端が充電レーン14の始端14aにかかると、レーン検出部68は、充電レーン14の始端14aを検出する。充電制御部70は、
図5の破線の矢印で示すように、充電レーン14の始端14aの検出に応じて第1スイッチ60をオンさせる。なお、第2スイッチ62については、オフ状態で維持させる。
【0041】
第1スイッチ60がオン状態となると、
図5の一点鎖線の矢印A1で示すように、車載バッテリ20から車載コイル22に電力が供給される。そうすると、車載コイル22は、車載バッテリ20の電力によって電磁石にされる。車載コイル22は、電磁石にされると、
図5の実線の矢印で例示するように、鉛直下方に延びる磁束を発生する。このため、車両12は、車載コイル22から磁束が発生した状態で進んでいく。
【0042】
図6は、車載コイル22が開始コイル34上に到達した状態を説明する図である。車載コイル22が開始コイル34上に到達すると、車載コイル22の磁束が開始コイル34に作用する。具体的には、路面側では、車載コイル22の磁束が開始コイル34に鎖交し、開始コイル34に鎖交する磁束が時間変化する。このため、開始コイル34には、車載コイル22の磁束による電磁誘導によって誘導電流が発生する。
【0043】
オン側電流センサ42は、電磁誘導によって発生した誘導電流を検出する。設備制御部46は、オン側電流センサ42によって誘導電流の発生が検出されると、
図6の破線の矢印で示すように、給電部40に給電開始指令を送信する。給電部40は、給電指令を受信すると、給電コイル32および終了コイル36への電力の供給を開始する。そうすると、給電コイル32および終了コイル36は、
図6の実線の矢印で示すように、充電レーン14上の空間に電力を送出する。これにより、給電設備30は、車両12への給電が可能な状態となる。
【0044】
なお、車載コイル22が開始コイル34上に到達したことがオン側電流センサ42を通じて検知されてから、給電コイル32および終了コイル36から十分な電力が送出されるまでには、少し時間がかかる。そこで、このような給電の立ち上がり時間、および、充電レーン14における制限速度に基づいて、最も開始コイル34側に位置する給電コイル32と、開始コイル34との間隔が設定される。これにより、給電の立ち上がり時間が経過する前に、車載コイル22が、最も開始コイル34側に位置する給電コイル32上を通過してしまうことを抑制することができ、より効率的な非接触充電を実行させることができる。
【0045】
また、開始コイル34に誘導電流が発生すると、開始コイル34には、その誘導電流の発生を妨げる方向の磁束が生じる。車両12側では、この開始コイル34に生じる磁束によって、車載コイル22に逆起電力が生じる。そうすると、車載コイル22にかかる電圧が減少し、その結果、車載バッテリ20から車載コイル22に流れる電流が減少する。換言すると、車載コイル22の少なくとも一部が開始コイル34上に位置する状態の車載コイル22の電流は、車載コイル22が開始コイル34上に位置しない状態の車載コイル22の電流と比べて減少する。このように、車載コイル22と開始コイル34との相互作用である相互誘導によって、車載コイル22に流れる電流が変化する。
【0046】
バッテリ電流センサ66は、車載コイル22に流れる電流を検出する。充電制御部70は、バッテリ電流センサ66によって検出される電流変化に基づいて、非接触充電の開始位置を判断することができる。具体的には、充電制御部70は、バッテリ電流センサ66を通じて車載コイル22の電流の時間推移を取得する。充電制御部70は、単位時間当たりの電流の低下量の絶対値が所定閾値以上である場合、非接触充電の開始位置に到達したと判断することができる。
【0047】
図7は、車載コイル22が開始コイル34上を通過した状態を説明する図である。開始コイル34上に到達した車載コイル22が、開始コイル34上を通過すると、車載コイル22の磁束の少なくとも一部が開始コイル34と鎖交する状態から、車載コイル22の磁束が開始コイル34と鎖交しない状態に移る。そうすると、車両12側では、開始コイル34に誘導電流が発生しないようになるため、車載コイル22に逆起電力が生じないようになる。その結果、車載コイル22に流れる電流は、車載コイル22が開始コイル34上に位置するときの値から上昇して、車載コイル22が開始コイル34上に到達する前に戻る。
【0048】
そこで、車両12側において、充電制御部70は、バッテリ電流センサ66によって検出される電流変化に基づいて、非接触充電の開始位置を通過したことを判断することができる。具体的には、充電制御部70は、開始位置に到達したと判断した後に、単位時間当たりの電流の上昇量の絶対値が所定閾値以上である場合、非接触充電の開始位置を通過したと判断することができる。
【0049】
充電制御部70は、非接触充電の開始位置を通過したと判断した場合、
図7の破線の矢印で示すように、第1スイッチ60をオフさせるとともに、第2スイッチ62をオンさせる。これにより、車載バッテリ20と車載コイル22との間に、整流器64が電気的に接続される。整流器64は、車載バッテリ20側から車載コイル22側へ向かう方向の電流を遮断する。車載バッテリ20から車載コイル22に電力が供給されないようになるため、車載コイル22は、電磁石の状態が解除される。そうすると、車載コイル22からの磁束が発生しないようになる。
【0050】
図8は、車載コイル22が給電コイル32上を通過する状態を説明する図である。車載コイル22が給電コイル32上を通過する際、車載コイル22は、給電コイル32から送出された電力を電磁誘導によって受電する。
【0051】
上述のように、車載コイル22は、整流器64を通じて車載バッテリ20に電気的に接続されている。整流器64は、車載コイル22側から車載バッテリ20側へ向かう方向の電流を許容する。このため、
図8の一点鎖線の矢印A2で示すように、車載コイル22で受電された電力による充電電流が車載バッテリ20に流れる。つまり、車載コイル22を通じた車載バッテリ20の非接触充電が行われる。
【0052】
図9は、車載コイル22が終了コイル36上を通過する状態を説明する図である。終了コイル36は、給電コイル32と同様に、給電部40から供給される電力を路面上の空間に送出している。このため、車載コイル22が終了コイル36上を通過する際、車両12側の車載コイル22は、終了コイル36から送出された電力を電磁誘導によって受電する。その結果、終了コイル36を通過する際にも、車載コイル22で受電された電力による充電電流が車載バッテリ20に流れる。つまり、終了コイル36を通過するまで非接触充電が行われる。
【0053】
終了コイル36から送出された電力が受電されると、終了コイル36から送出された電力が非接触充電によって消費される。このため、路面側では、終了コイル36から送出された電力が受電されると、終了コイル36から送出された電力が受電されない場合と比べ、終了コイル36の消費電力が増加する。つまり、終了コイル36から送出された電力が受電されることで、終了コイル36に流れる電流が上昇する。
【0054】
オフ側電流センサ44は、終了コイル36に流れる電流を検出する。路面側において、設備制御部46は、オフ側電流センサ44によって検出される電流変化に基づいて、車両12が非接触充電の終了位置を通過したことを判断することができる。具体的には、設備制御部46は、オフ側電流センサ44による単位時間当たりの電流の上昇量の絶対値が所定閾値以上となったタイミングで、終了コイルの電力が受電されたと判断することができる。設備制御部46は、終了コイルの電力が受電されたと判断した後に、単位時間当たりの電流の低下量の絶対値が所定閾値以上となったタイミングで、非接触充電の終了位置を通過したと判断することができる。
【0055】
設備制御部46は、車両12が非接触充電の終了位置を通過したと判断した場合、給電部40に給電終了指令を送信する。給電部40は、給電終了指令を受信すると、給電コイル32および終了コイル36への電力の供給を終了する。これにより、給電コイル32および終了コイル36から電力が送出されないようになる。
【0056】
図10は、車載コイル22が終了コイル36を通過した後の状態を説明する図である。車載コイル22が終了コイル36を通過した後の状態では、車載コイル22の受電が行われず、充電電流が流れない。
【0057】
車両12側において、充電制御部70は、バッテリ電流センサ66を通じて取得される充電電流が所定閾値以上の状態から所定閾値未満に変化したタイミングで計時を開始する。充電制御部70は、充電電流が所定閾値未満に変化してから所定時間が経過したタイミングで、第2スイッチ62をオフさせる。そして、充電制御部70は、車両12が次の充電レーン14に進入するまで、第1スイッチ60および第2スイッチ62をオフ状態で維持させる。
【0058】
上記の
図4~
図10の説明では、1台の車両12が充電レーン14を通過する流れを説明していた。しかし、例えば、相対的に先行する先行車両が充電レーン14に進入し、先行車両が充電レーン14を退出する前に、先行車両に後続する後続車両が充電レーン14に進入するというように、複数台の車両12が連続して充電レーン14を通過する場合もある。この場合、先行車両が終了コイル36を通過したことによって給電コイル32および終了コイル36の電力の送出が終了されると、後続車両の非接触充電が不十分となるおそれがある。
【0059】
この点を考慮し、設備制御部46は、開始コイル34と終了コイル36との間に車両12が少なくとも1台以上存在する場合に、給電コイル32および終了コイル36に電力を送出させる。そして、設備制御部46は、開始コイル34と終了コイル36との間に車両12が存在しない場合に、給電コイル32および終了コイル36の電力の送出を終了させる。
【0060】
図11は、設備制御部46の動作の流れを説明するフローチャートである。設備制御部46は、所定の制御周期で訪れる割込みタイミングごとに、
図11のフローチャートで示す一連の処理を実行する。
【0061】
設備制御部46は、割込みタイミングとなると、オン側電流センサ42による電流変化に基づいて、車両12が開始コイル34上を通過したか否かを判断する(S10)。すなわち、ステップS10では、開始コイル34と終了コイル36との間の非接触充電の対象となる車両12が増加したか否かが判断される。
【0062】
車両12が開始コイル34上を通過した場合(S10におけるYES)、設備制御部46は、カウント値をインクリメントし(S11)、ステップS12の処理に進む。カウント値は、開始コイル34と終了コイル36との間の車両12の総数、換言すると、非接触充電の対象となる車両12の総数を示す。開始コイル34と終了コイル36との間に車両12が存在しない場合、カウント値は0とされる。
【0063】
車両12が開始コイル34上を通過しなかった場合(S10におけるNO)、設備制御部46は、ステップS11の処理を行わずにステップS12の処理に進む。この場合、カウント値は変化しない。
【0064】
ステップS12において、設備制御部46は、オフ側電流センサ44による電流変化に基づいて、車両12が終了コイル36上を通過したか否かを判断する(S12)。すなわち、ステップS12では、開始コイル34と終了コイル36との間の非接触充電の対象となる車両12が減少したか否かが判断される。
【0065】
車両12が終了コイル36上を通過した場合(S12におけるYES)、設備制御部46は、カウント値をデクリメントし(S13)、ステップS14の処理に進む。
【0066】
車両12が終了コイル36上を通過しなかった場合(S12におけるNO)、設備制御部46は、ステップS13の処理を行わずにステップS14の処理に進む。この場合、カウント値は変化しない。
【0067】
ステップS14において、設備制御部46は、カウント値が0より大きいか否かを判断する(S14)。カウント値が0より大きい場合(S14におけるYES)、設備制御部46は、給電コイル32および終了コイル36への給電をオン状態とさせ(S15)、一連の処理を終了する。カウント値が0以下の場合(S14におけるNO)、設備制御部46は、給電コイル32および終了コイル36への給電をオフ状態とさせ(S16)、一連の処理を終了する。
【0068】
このように、設備制御部46は、カウント値が0より大きくなっている期間、給電コイル32への給電が継続される。これにより、例えば、複数台の車両12が充電レーン14に進入し、そのうちの1台が充電レーン14から退出しても、充電レーン14から未退出の車両12の非接触充電を継続させることができる。
【0069】
また、設備制御部46は、カウント値が0以下となっている期間、給電コイル32および終了コイル36の給電をオフさせる。これにより、給電設備30は、非接触充電の対象となる車両12が存在しない期間に、給電コイル32から無駄な電力を送出させないようにすることができる。その結果、給電設備30は、消費電力および電磁ノイズを抑制することができる。
【0070】
図12は、充電制御部70の動作の流れを説明するフローチャートである。充電制御部70は、所定の制御周期で訪れる割込みタイミングごとに、
図12の一連の処理を実行する。
【0071】
充電制御部70は、割込みタイミングとなると、充電レーンフラグがオン状態であるか否かを判断する(S20)。充電レーンフラグは、自車両が充電レーン14内に位置するか否かを示すフラグである。充電レーンフラグは、自車両が充電レーン14内に位置する場合にオン状態とされ、自車両が充電レーン14内に位置しない場合にオフ状態とされる。
【0072】
充電レーンフラグがオフ状態である場合(S20におけるNO)、充電制御部70は、レーン検出部68によって充電レーン14の始端14aが検出されたか否かを判断する(S21)。
【0073】
充電レーン14の始端14aが検出された場合(S21におけるYES)、充電制御部70は、第1スイッチ60をオンさせる(S22)。そして、充電制御部70は、充電レーンフラグをオンさせ(S23)、一連の処理を終了する。これにより、車載コイル22が電磁石とされ、非接触充電の開始位置の検知が可能となる。
【0074】
また、充電レーンフラグがオン状態である場合(S20におけるYES)、充電制御部70は、充電中フラグがオン状態であるか否かを判断する(S24)。充電中フラグは、非接触充電の実行中であるか否かを示すフラグである。充電中フラグは、非接触充電の実行中の場合にオン状態とされ、非接触充電が実行されていない場合にオフ状態とされる。
【0075】
充電中フラグがオフ状態である場合(S24におけるNO)、充電制御部70は、電磁石とされた車載コイル22と開始コイル34との相互作用による電流変化に基づいて、自車両が非接触充電の開始位置を通過したか否かを判断する(S25)。
【0076】
自車両が開始位置を通過していない場合(S25におけるNO)、充電制御部70は、一連の処理を終了する。この場合、自車両が開始位置を通過するまで、車載コイル22が電磁石として維持される。なお、充電レーンフラグがオンとなってから所定時間が経過しても開始位置を通過しなかった場合、充電制御部70は、非接触充電が正常に開始されなかったとみなして、第1スイッチ60および充電レーンフラグをオフさせてもよい。
【0077】
自車両が開始位置を通過した場合(S25にけるYES)、充電制御部70は、第1スイッチ60をオフさせ、(S26)、第2スイッチ62をオンさせる(S27)。そして、充電制御部70は、充電中フラグをオンさせ(S28)、一連の処理を終了する。これにより、車載コイル22の電磁石が解除され、車両12は、非接触充電が可能な状態となる。
【0078】
また、充電中フラグがオン状態である場合(S24におけるYES)、充電制御部70は、充電電流が所定閾値未満であるか否かを判断する(S29)。
【0079】
充電電流が所定閾値以上である場合(S29におけるNO)、充電制御部70は、一連の処理を終了する。この場合、車両12は、非接触充電中となっている。
【0080】
充電電流が所定閾値未満である場合(S29におけるYES)、充電制御部70は、充電電流が所定閾値以上から所定閾値未満に変化したタイミングから所定時間が経過したか否かを判断する(S30)。所定時間が経過していない場合(S30におけるNO)、充電制御部70は、一連の処理を終了する。
【0081】
なお、所定時間が経過する前に、再度、充電電流が所定閾値以上となった場合、充電制御部70は、計時をリセットする。これにより、車両12が複数の給電コイル32上を進むに従って充電電流が短期間に変化しても、非接触充電を適切に継続させることができる。
【0082】
充電電流が所定閾値以上から所定閾値未満に変化したタイミングから所定時間が経過した場合(S30におけるYES)、充電制御部70は、第2スイッチ62をオフさせる(S31)。そして、充電制御部70は、充電中フラグをオフさせ(S32)、充電レーンフラグをオフさせ(S33)、一連の処理を終了する。これにより、車両12は、非接触充電が終了される。
【0083】
以上のように、本実施形態の非接触充電装置10では、車載バッテリ20の電力によって車載コイル22を電磁石にさせ、電磁石にされた車載コイル22の電流変化に基づいて、充電レーン14における非接触充電の開始位置が判断される。このため、本実施形態の非接触充電装置10によれば、車両12が非接触充電の開始位置を認識できるため、給電設備30から供給される電力を適切に受電可能となる。
【0084】
また、本実施形態の非接触充電装置10では、給電コイル32から受電する車載コイル22を電磁石として機能させることで、車載コイル22が非接触充電の開始位置を検出するための要素として兼用される。このため、本実施形態では、受電用の車載コイル22を有効活用することができ、非接触充電装置10をコンパクトに構成することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態の非接触充電装置10では、充電レーン14の始端14aの検出に応じて、車載コイル22が電磁石とされる。このため、本実施形態の非接触充電装置10では、車載コイル22を電磁石とさせてから非接触充電の開始位置に到達するまでの時間を極力短くすることができ、車載コイル22を電磁石とさせるための車載バッテリ20の消費電力を抑制可能となる。
【0086】
また、充電制御部70は、電磁石にされた車載コイル22の電流変化に基づいて、自車両が開始位置を通過したと判断した場合、第1スイッチ60をオフさせるとともに、第2スイッチ62をオンさせる。これにより、本実施形態の非接触充電装置10では、車載コイル22を通じた非接触充電を遅滞なく開始することができる。
【0087】
また、充電レーン14での受電量を多くするために、充電レーン14での車両12の速度が低速にされることがあり得る。車両12が低速の場合、終了コイル36から充電レーン14の終端14bに至るまでに時間がかかることがある。しかし、本実施形態の充電制御部70は、車載バッテリ20への充電電流が所定閾値未満となってから所定時間が経過した場合に第2スイッチ62をオフさせる。これにより、本実施形態の非接触充電装置10では、車両12の速度が低速であっても、終了コイル36上を通過後に、より早期に第2スイッチ62をオフさせることができる。
【0088】
また、本実施形態の非接触充電システム1では、非接触充電の開始位置に開始コイル34が配置されるとともに、車載コイル22が電磁石にされる。これにより、本実施形態の給電設備30では、電磁石にされた車載コイル22が開始コイル34に到達したことを容易に判断することができ、非接触充電の対象となる車両12が存在する場合にのみ給電をオンさせることが可能となる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、上記実施形態では、充電電流が所定閾値未満となってから所定時間が経過した場合に第2スイッチ62がオフされていた。しかし、充電制御部70は、レーン検出部68によって充電レーン14の終端14bが検出された場合に第2スイッチ62をオフしてもよい。例えば、高速道路など、車両12が高速で充電レーン14を通過する場合、充電電流が所定閾値未満となってから所定時間が経過するまでの走行距離が比較的長くなる。このような充電レーン14では、終端14bの検出に応じて第2スイッチ62をオフする態様の方が、終了コイル36上を通過後に、早期に第2スイッチ62をオフすることが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1 非接触充電システム
10 非接触充電装置
14 充電レーン
20 車載バッテリ
22 車載コイル
32 給電コイル
34 開始コイル
60 第1スイッチ
62 第2スイッチ
64 整流器
68 レーン検出部
70 充電制御部