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  • 特許-原価計算装置、及び原価計算方法 図1
  • 特許-原価計算装置、及び原価計算方法 図2
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  • 特許-原価計算装置、及び原価計算方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】原価計算装置、及び原価計算方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20241127BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021007978
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112236
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】古川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】北野 豊和
【審査官】清山 昂平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033047(JP,A)
【文献】特開2013-114503(JP,A)
【文献】特開2004-185158(JP,A)
【文献】特開2016-201074(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035687(WO,A1)
【文献】特開2019-135602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者による作業の映像を受け付ける受付部と、
前記映像から作業者による作業の種類、及び当該作業の種類に応じた作業時間を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された作業の種類及び作業時間を用いて原価計算を行う計算部と、
前記計算部による原価計算の結果を出力する出力部と、を備え
前記取得部は、前記映像の全体の時間から、取得した作業時間の合計を減算した時間である価値を生まない時間をも取得し、
前記出力部は、価値を生まない時間に関する出力をも行う、原価計算装置。
【請求項2】
作業者による作業の映像を受け付ける受付部と、
前記映像から作業者による作業の種類、及び当該作業の種類に応じた作業時間を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された作業の種類及び作業時間を用いて原価計算を行う計算部と、
前記計算部による原価計算の結果を出力する出力部と、を備え、
前記取得部は、価値を生まない時間の種類、及び当該種類に応じた時間をも取得し、
前記出力部は、価値を生まない時間の種類ごとの時間をも出力する、原価計算装置。
【請求項3】
前記取得部は、作業者ごとに、作業の種類及び作業時間を取得し、
前記計算部は、作業者ごとの単位時間当たりの人件費に応じた活動単価を用いた原価計算を行う、請求項1または請求項記載の原価計算装置。
【請求項4】
受付部と、取得部と、計算部と、出力部とを用いて処理される原価計算方法であって、
前記受付部が、作業者による作業の映像を受け付けるステップと、
前記取得部が、前記映像から作業者による作業の種類、及び当該作業の種類に応じた作業時間を取得するステップと、
前記計算部が、取得された作業の種類及び作業時間を用いて原価計算を行うステップと、
前記出力部が、前記原価計算の結果を出力するステップと、を備え
前記作業時間を取得するステップでは、前記映像の全体の時間から、取得した作業時間の合計を減算した時間である価値を生まない時間をも取得し、
前記原価計算の結果を出力するステップでは、価値を生まない時間に関する出力をも行う、原価計算方法。
【請求項5】
受付部と、取得部と、計算部と、出力部とを用いて処理される原価計算方法であって、
前記受付部が、作業者による作業の映像を受け付けるステップと、
前記取得部が、前記映像から作業者による作業の種類、及び当該作業の種類に応じた作業時間を取得するステップと、
前記計算部が、取得された作業の種類及び作業時間を用いて原価計算を行うステップと、
前記出力部が、前記原価計算の結果を出力するステップと、を備え、
前記作業時間を取得するステップでは、価値を生まない時間の種類、及び当該種類に応じた時間をも取得し、
前記原価計算の結果を出力するステップでは、価値を生まない時間の種類ごとの時間をも出力する、原価計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者による作業を考慮した原価計算を行うことができる原価計算装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
原価計算において、原価の発生原因を「活動」単位で把握できるようにする活動基準原価計算は、製造間接費が増加してきた現在において、理論的には優れた計算手法である。活動基準原価計算を導入するには、製品等の製造過程において「活動の種類」と「活動時間」とを把握する必要があり、一般的にはヒアリングやインタビューによってそれらを把握することになる。しかしながら、ヒアリングやインタビューは恣意的になりやすいという欠点がある。例えば、ヒアリングやインタビューでは、作業をしていない時間は過少に報告されることや、0であると報告されることがほとんどであり、正確な把握が難しいという問題がある。そのため、ウェアラブルセンサを用いて得られる対面データ等を活用して恣意性のない「活動の種類」と「活動時間」とを取得する方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-114503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウェアラブルセンサを用いて活動時間等を取得するには、加速度センサや、赤外線センサ、マイクロフォンなどの種々のセンサをすべての作業員に取り付ける必要があるため、各作業員に対する負担が大きくなると共に、それらのセンサを用意するためのコストも高くなる。また、上記特許文献1によれば、作業員ごとに予定している作業のIDを事前に登録する必要がある。そのため、異動や欠員等によって作業に変更や掛け持ちが生じた場合には、予定している作業のIDを登録し直す必要があり、その管理が非常に煩雑であるという問題があった。さらに、対面データから「活動の種類」を把握しようとすると、どうしてもその「活動の種類」と「活動時間」は推定になってしまうという問題もある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、より簡単な方法によって、作業者による作業を考慮した原価計算を行うことができる原価計算装置、及び原価計算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による原価計算装置は、作業者による作業の映像を受け付ける受付部と、映像から作業者による作業の種類、及び作業の種類に応じた作業時間を取得する取得部と、取得部によって取得された作業の種類及び作業時間を用いて、原価計算を行う計算部と、計算部による原価計算の結果を出力する出力部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様による原価計算装置等によれば、より簡単な方法によって、作業者による作業の種類及び作業時間をより正確に取得することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態による原価計算装置の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による原価計算装置の動作を示すフローチャート
図3】同実施の形態における受け付けられた映像の一例を示す図
図4】同実施の形態における取得された種類識別子及び時間の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による原価計算装置、及び原価計算方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による原価計算装置、及び原価計算方法は、作業者による作業の映像を用いて作業の種類及び作業時間を取得し、それらを用いて原価計算を行うものである。
【0010】
図1は、本実施の形態による原価計算装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による原価計算装置1は、受付部11と、記憶部12と、取得部13と、計算部14と、出力部15とを備える。
【0011】
受付部11は、作業者による作業の映像を受け付ける。この映像は、例えば、製品の製造工程における作業者による作業の映像であってもよく、サービスの提供工程における作業者による作業の映像であってもよい。本実施の形態では、前者の場合について主に説明する。製造工程における作業者による作業は特に限定されるものではないが、例えば、部品の取り付けや、製品の組み立て、はんだ付け、配線等の作業であってもよい。映像は、通常、動画像である。なお、その動画像は、30fps、24fpsなどの一般的なフレームレートであってもよく、1fpsや0.5fps、0.2fpsなどのように、非常に低いフレームレートであってもよい。受付部11は、受け付けた映像を記憶部12に蓄積してもよい。映像は、例えば、白黒であってもよく、カラーであってもよい。
【0012】
受付部11は、例えば、カメラで取得された映像を受け付けてもよく、有線または無線の通信回線を介して送信された映像を受信してもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)から読み出された映像を受け付けてもよい。なお、受付部11は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、通信デバイスなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受付部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、または所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0013】
記憶部12では、受付部11で受け付けられた映像が記憶される。また、後述するように、映像以外の情報が記憶部12で記憶されてもよい。記憶部12は、不揮発性の記録媒体によって実現されることが好適であるが、揮発性の記録媒体によって実現されてもよい。記録媒体は、例えば、半導体メモリや磁気ディスクなどであってもよい。
【0014】
取得部13は、映像から作業者による作業の種類、及びその作業の種類に応じた作業時間を取得する。すなわち、取得部13は、作業者による作業の種類ごとの作業時間を取得する。この作業の種類ごとの作業時間の取得処理は、例えば、映像に含まれるフレームごとに作業の種類を取得する処理と、その取得したフレームごとの作業の種類を用いて、作業の種類ごとの作業時間を取得する処理とを含んでいてもよい。本実施の形態では、このようにして作業者による作業の種類及び作業時間の取得が行われる場合について主に説明する。
【0015】
取得部13は、例えば、作業者の作業の種類を取得するための学習器を用いて、映像から作業者による作業の種類、及び作業の種類に応じた作業時間を取得してもよい。その学習器は、例えば、RNN(Recurrent Neural Network;回帰型ニューラルネットワーク)やCNN(Convolutional Neural Network;畳み込みニューラルネットワーク)などのニューラルネットワークの学習結果であってもよい。その学習器は、例えば、映像の1フレームまたは連続した複数フレームを入力として、作業の種類を示す種類識別子を出力とするものであってもよい。連続した複数フレームが入力である場合には、出力される種類識別子で識別される作業の種類は、例えば、その複数フレームにおける特定の1以上のフレーム(例えば、入力が連続した5フレームである場合には、真ん中の3番目のフレームであってもよい。)に対応していてもよく、または、その連続した複数フレームの全体に対応していてもよい。この学習器を用いることによって、映像のフレームごとに種類識別子を特定することができる。その特定結果を用いて、取得部13は、作業の種類に応じた作業時間をも取得することができる。例えば、第1の時点のフレームから第2の時点のフレームまでの各フレームに対応する種類識別子が「W1」である場合には、種類識別子「W1」で識別される作業の種類に対応する時間は、その第1の時点から第2の時点までの時間となる。このようにして、種類識別子と、その種類識別子で識別される作業の種類に応じた時間との組が取得される。その後、取得部13は、種類識別子ごとに対応する時間の合計を算出することによって、種類識別子に対応する作業時間を取得することができる。ある種類識別子に対応する作業時間は、その種類識別子と組になっている各時間の合計値である。なお、ニューラルネットワークを用いたより具体的な種類識別子の取得については後述する。
【0016】
なお、取得部13は、価値を生まない時間をも取得してもよい。価値を生まない時間を取得するため、取得部13は、映像から価値を生まない時間を特定してもよく、映像において作業者が作業を行っていない時間を、価値を生まない時間としてもよい。映像から価値を生まない時間を特定する場合には、取得部13は、例えば、種類を問わずに価値を生まない時間を取得してもよく、価値を生まない時間の種類、及びその種類に応じた時間を取得してもよい。取得部13は、例えば、価値を生まない時間を特定するための学習器を用いて、その特定を行ってもよい。その学習器は、例えば、作業の種類の取得にも用いられてもよく、または、作業の種類の取得に用いられる学習器とは異なる学習器であってもよい。本実施の形態では、前者の場合について主に説明する。その学習器は、例えば、映像において、価値を生まない時間に対応するフレームを特定するものであってもよく、または、映像において、価値を生まない時間の種類に対応するフレームを特定するものであってもよい。前者の場合には、例えば、映像のフレームごとに、作業の種類を示す種類識別子、または価値を生まない時間であることを示す種類識別子が学習器から出力されてもよい。後者の場合には、例えば、映像のフレームごとに、作業の種類を示す種類識別子、または価値を生まない時間の種類を示す種類識別子が学習器から出力されてもよい。価値を生まない時間に対応するフレーム、または価値を生まない時間の種類に対応するフレームが特定された後に、価値を生まない時間、または、価値を生まない時間の種類に応じた時間を取得する方法は、上記した作業時間を取得する方法と同じであり、その説明を省略する。映像において作業者が作業を行っていない時間を、価値を生まない時間とする場合には、取得部13は、作業者に関する映像の全体の時間から、作業時間の合計を減算した時間を、価値を生まない時間として取得してもよい。価値を生まない時間は特に限定されるものではないが、例えば、手待ちの時間や、メンテナンスの時間、段取り替えの時間などのように、製品の製造に直接関わらない時間であってもよい。
【0017】
ここで、学習器を用いた種類識別子の取得について説明する。取得部13は、まず、作業者の姿勢推定や骨格推定を行うための学習器を用いて、映像のフレームごとに作業者の骨格位置を特定し、その特定した骨格位置の時系列データを、RNN等の時系列データを解析できる学習器に入力してフレームごとに種類識別子を特定してもよい。なお、姿勢推定や骨格推定は、例えば、PoseNet等を用いて行われてもよい。また、このように、姿勢推定や骨格推定を行ってから種類識別子を特定する場合には、一般的なフレームレートの映像が用いられることが好適である。
【0018】
また、取得部13は、映像の各フレームを学習器に入力することによって、フレームごとに種類識別子を特定してもよい。そのような学習器としては、例えば、人の動作を識別することができる3次元畳み込みRNNを用いてもよい。この場合にも、一般的なフレームレートの映像が用いられることが好適である。3次元畳み込みRNNについては、例えば、次の文献を参照されたい。
文献:浅谷学嗣、田川聖一、新岡宏彦、三宅淳、「動画像認識のための3次元畳み込みRNNの提案」、情報処理学会研究報告、Vol.2016-CVIM-201, No.6, 1-4、2016年2月25日
また、映像から人間の行動を取得する方法については、例えば、特許第6692086号公報も参照されたい。
【0019】
また、取得部13は、映像の各フレームをCNNの学習器に入力することによって、フレームごとに種類識別子を特定してもよい。通常、作業者の作業現場(例えば、製造ラインなど)における作業に応じた姿勢や動作は、作業の種類や、価値を生まない時間の種類ごとに似たものになると考えられる。したがって、1つのフレームに対してCNNの学習器を用いたシーン認識を行うことによって、作業の種類や価値を生まない時間の種類を特定することもできると考えられる。この場合には、一般的なフレームレートの映像、または、非常に低いフレームレートの映像の各フレームが学習器に入力されてもよい。
【0020】
計算部14は、取得部13によって取得された作業の種類及び作業時間を用いて原価計算を行う。この原価計算は、例えば、製造工程で製造される製品の原価計算であってもよく、作業者による作業がサービスに関するものである場合には、そのサービスに関する原価計算であってもよい。本実施の形態では、前者の場合について主に説明する。計算部14は、この原価計算において、活動基準原価計算を行う。
【0021】
原価には、通常、材料費、経費、労務費が含まれる。計算部14は、取得部13によって取得された作業の種類ごとの作業時間を用いて、それらを考慮した原価を算出することができる。例えば、ある製品M1を製造するための作業の種類として、作業識別子「W1」「W2」「W3」で識別される3つの作業の種類があり、また、所定の単位量の製品M1を製造するための作業識別子「W1」「W2」「W3」で識別される作業の種類にそれぞれ対応する作業時間が「T1」「T2」「T3」であったとする。また、作業識別子「W1」「W2」「W3」で識別される作業の種類ごとの活動単価が「C1」「C2」「C3」であったとする。なお、活動単価は、作業の種類に対応する単位時間当たりの人件費であってもよく、その作業に機械等を使用している場合には、単位時間当たりの人件費と共に、機械の減価償却費や機械を動作させるための電気代なども考慮した単位時間当たりの費用であってもよい。作業の種類ごとの活動単価は、例えば、記憶部12等の記録媒体で記憶されていてもよい。計算部14は、次式で示されるように、取得された作業の種類に対応する活動単価と、その作業の種類の作業時間とを乗算し、すべての作業の種類について乗算結果の総和を算出することによって、原価を算出してもよい。
原価=T1×C1+T2×C2+T3×C3
【0022】
なお、作業識別子は、例えば、「組立作業」「配線作業」などのように、作業の種類のみを識別する識別子であってもよく、「製品Xの組み立て作業」「製品Yの配線作業」などのように、作業の対象(例えば、製造対象の製品、提供対象のサービス等)と作業の種類とを識別する識別子であってもよい。前者の場合には、映像において作業者の作業が含まれていればよいが、後者の場合には、映像において作業者の作業と共に、作業の対象(例えば、製造対象の製品等)も含まれていることが好適である。
【0023】
作業識別子によって作業の種類のみが識別される場合には、例えば、映像の撮影位置や、撮影の時間帯に応じて、作業の対象を識別してもよい。通常、製品Xの製造の作業を撮影するカメラや、製品Xの製造の作業を撮影する時間帯はあらかじめ決まっている。したがって、計算部14は、取得された作業識別子や作業時間が、どのカメラで撮影された映像に対応するものか、どの時間帯に対応するものかを特定することによって、作業の対象ごとに原価を計算してもよい。この場合には、受付部11において、映像と共に、その映像を撮影したカメラを識別するカメラ識別子も受け付けられてもよい。また、映像に含まれるタイムコードによって、映像に含まれる各フレームの時刻を特定できるようになっていてもよい。そして、取得部13は、カメラ識別子やタイムコード、及び、カメラ識別子と、作業の対象を識別する識別子とを対応付ける情報や、タイムコードで示される時間帯と、作業の対象を識別する識別子とを対応付ける情報を用いて、作業の対象ごとに、種類識別子ごとの時間を取得してもよい。
【0024】
また、単位量の製品とは、例えば、1ロットの製品であってもよく、1個の製品であってもよく、その他の単位の個数の製品であってもよい。また、単位時間当たりの人件費は、例えば、複数の作業者の人件費の代表値であってもよい。代表値は、例えば、平均や中央値であってもよく、その他の代表値であってもよい。計算部14は、原価に含まれる費用のうち、「作業時間×活動単価」によって算出される費用以外については、ERPシステムや他のIoT機器、または、原価計算に必要な費用が記憶されている記録媒体にアクセスし、財務データ等を取得することによって算出し、最終的な原価計算を行ってもよい。なお、原価計算についてはすでに公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0025】
出力部15は、計算部14による原価計算の結果を出力する。すなわち、出力部15は、計算部14によって計算された原価を出力する。また、取得部13によって価値を生まない時間の取得も行われた場合には、出力部15は、価値を生まない時間に関する出力をも行ってもよい。その出力は、例えば、価値を生まない時間の出力であってもよく、価値を生まない時間の種類ごとの時間の出力であってもよい。
【0026】
ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部15は、出力を行うデバイス(例えば、通信デバイスやプリンタなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部15は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0027】
次に、原価計算装置1の動作、すなわち原価計算方法について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受付部11は、作業者による作業の映像を受け付けたかどうか判断する。そして、その映像を受け付けた場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、映像を受け付けるまでステップS101の処理を繰り返す。
【0028】
(ステップS102)受付部11は、受け付けた映像を記憶部12に蓄積する。なお、受付部11が、一つの映像ファイルを受け付けるのではなく、リアルタイムでカメラからフレーム(画像)を受け付ける場合には、フレームの受け付けが終了するまで、フレームの受け付けと蓄積との処理が繰り返されることによって、映像ファイルの記憶部12への蓄積が行われてもよい。
【0029】
(ステップS103)取得部13は、受付部11で受け付けられた映像から、作業者による作業の種類、及びその作業の種類に応じた作業時間を取得する。なお、取得部13は、価値を生まない時間に関する取得を行ってもよい。
【0030】
(ステップS104)計算部14は、ステップS103で取得された作業の種類及び作業時間を用いて原価計算を行う。計算部14は、作業の種類ごとに、作業時間と活動単価を乗算し、その乗算結果の総和を計算することによって活動基準原価計算を行ってもよい。
【0031】
(ステップS105)出力部15は、原価計算の結果を出力する。また、価値を生まない時間に関する取得も行われた場合には、出力部15は、価値を生まない時間に関する出力も行ってもよい。そして、ステップS101に戻る。
なお、図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0032】
次に、本実施の形態による原価計算装置1の動作について、具体例を用いて説明する。
まず、作業者による作業の映像がカメラによって撮影され、蓄積される。その映像の1フレームは、例えば、図3で示されるものである。図3は、部品を結合して製品Aを製造する作業者の作業を撮影したフレームである。そして、例えば、単位量の製品A(例えば、1ロットの製品A)を製造するための作業が終了すると、その映像が原価計算装置1に入力される。その入力に応じて、原価計算装置1の受付部11は、作業者の映像を受け付け、記憶部12に蓄積する(ステップS101、S102)。
【0033】
映像が蓄積されると、取得部13は、映像を1フレームごとに、または連続した複数フレームごとに学習器に適用することによって、各フレームについて作業の種類、または、価値を生まない時間の種類を識別する種類識別子を取得する。そして、取得部13は、その種類識別子と、その種類識別子が取得されたフレームの開始時点及び終了時点を記憶部12に蓄積する。開始時点及び終了時点は、例えば、映像のタイムコードによって示されてもよく、映像の先頭の時点を始点とする時間によって示されてもよい。映像の最終フレームまで、フレームごとに種類識別子を特定し、同じ種類識別子に対応する連続したフレームにおける先頭に対応する開始時点及び終端に対応する終了時点を蓄積する処理を行うと、取得部13は、取得した種類識別子に対応する時間をそれぞれ算出して、種類識別子に対応付けて記憶部12に蓄積する。この時間は、終了時点から開始時点を減算することによって算出することができる。その結果、図4で示されるように、種類識別子と、開始時点と、終了時点と、時間とを対応付ける情報が得られる。この後、取得部13は、種類識別子ごとに、その種類識別子に対応する時間を合計して、種類識別子に対応付けて記憶部12に蓄積する(ステップS103)。この合計時間が、種類識別子で識別される種類の作業が作業者によって行われた作業時間、または、種類識別子で識別される価値を生まない時間の種類に応じた時間となる。このようにして、作業の種類ごとの作業時間、または、価値を生まない時間の種類ごとの時間を、映像から自動的に取得することができる。
【0034】
この具体例では、種類識別子「製品Aの部品結合作業」で識別される作業の種類(以下、この作業の種類を「製品Aの部品結合作業」と呼ぶこともある。他の種類識別子で識別される価値を生まない時間の種類についても同様である。)に対応する時間の合計が作業時間「T11」であり、手待ちの時間の合計が時間「T12」であり、コンベヤのメンテナンスの時間の合計が時間「T13」であったとする。なお、説明の便宜上、製品Aは、部品結合作業のみによって製造されるものであるとする。
【0035】
種類識別子ごとの時間(合計時間)が取得されると、計算部14は、記憶部12で記憶されている、製品Aの部品結合作業に対応する活動単価「C1」を読み出し、製品Aの部品結合作業の作業時間「T11」に、活動単価「C1」を掛けることによって、製品Aの原価「P1」(=T11×C1)を算出し、出力部15に渡す(ステップS104)。
【0036】
出力部15は、原価「P1」を受け取ると、記憶部12から、手待ちの時間「T12」、コンベヤのメンテナンスの時間「T13」を読み出し、原価「P1」、手待ちの時間「T12」、コンベヤのメンテナンスの時間「T13」をそれぞれ出力する(ステップS105)。このようにして、製品Aを製造するための作業者の作業時間を考慮した原価、すなわち、より精度の高い原価と、価値を生まない時間の種類ごとの時間の長さとについて知ることができるようになる。
【0037】
以上のように、本実施の形態による原価計算装置1によれば、作業者による作業の映像を用いることによって、作業者による作業の種類及び作業時間をより正確に取得でき、それらを用いて作業者による作業を考慮した原価計算を行うことができる。また、映像を用いて作業者による作業の種類及び作業時間を取得するため、作業者にセンサを装着する必要がない。また、予定している作業のIDを作業者ごとに事前に登録する必要もない。その結果、より簡単な方法によって作業の種類等を取得することができると共に、作業者の負担を軽減することができ、コストも低減されることになる。
【0038】
また、取得部13によって、価値を生まない時間をも取得することにより、作業者による作業の種類ごとの作業時間のみでなく、手待ちの時間のような価値を生まない時間についても知ることができるようになる。また、取得部13によって、価値を生まない時間の種類ごとの時間を取得することによって、手待ちの時間や、メンテナンスの時間、段取り替えの時間などを知ることができ、生産性を高めるための改善などに利用することができるようになる。
【0039】
次に、本実施の形態による原価計算装置1の変形例について説明する。
[各作業者の人件費を用いた原価計算]
本実施の形態では、単位時間当たりの人件費として、複数の作業者の人件費の代表値を用いる場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。単位時間当たりの人件費として、作業者ごとの単位時間当たりの人件費を用いてもよい。すなわち、活動単価は、作業者ごとの活動単価であってもよい。この場合には、活動単価は、作業の種類ごと、また作業者ごとの単位時間当たりの費用となる。また、この場合には、取得部13は、作業者ごとに、作業の種類及び作業時間を取得する。取得部13は、映像を用いた生体認証処理、例えば、映像における顔認証処理や行動的生体認証処理、振る舞い認証処理などによって作業者を識別する作業者識別子を取得する。また、例えば、顔認証処理を行う場合には、作業者がうつむいて作業をしているフレームでは、作業者識別子を取得できないが、取得部13は、物体追跡技術を用いて、別のフレームで取得できた作業者識別子で識別される作業者の位置を追跡することによって、作業者識別子を取得できないフレームについても、作業を行っている作業者の作業者識別子を特定してもよい。
【0040】
この場合には、記憶部12において、作業者識別子に対応付けて、その作業者識別子で識別される作業者の単位時間当たりの人件費に応じた活動単価が記憶されていてもよい。そして、計算部14は、作業者ごとの活動単価を用いた原価計算を行ってもよい。より具体的には、計算部14は、ある作業者識別子で識別される作業者について取得された、作業の種類ごとの作業時間に、その作業の種類、及びその作業者識別子に対応付けられている活動単価を乗算することによって、作業者ごとの人件費を考慮した原価を算出することができる。なお、複数の作業者によって同じ製品を製造している場合には、例えば、作業者ごとの費用を算出した後に、その製品の製造に携わっている作業者ごとの費用の合計を算出することによって、製品に対応する原価を算出してもよい。
【0041】
[その他の変形例]
また、原価計算装置1は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、受付部11や出力部15は、通信回線を介して映像を受信したり、情報を出力したりしてもよい。
【0042】
また、原価計算装置1における各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。例えば、作業現場において取得された映像が、サーバである原価計算装置1に送信され、その原価計算装置1において、上記説明の一連の処理が集中して行われてもよい。また、例えば、作業現場において、受付部11、取得部13による処理が行われ、取得部13による取得結果がサーバに送信され、サーバにおいて、計算部14、出力部15による処理が行われるというように、原価計算装置1における処理が分散して行われてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付け、または、一方の構成要素による情報の送信と、他方の構成要素による情報の受信とによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態において、原価計算装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0045】
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0046】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上より、本発明の一態様による原価計算装置等によれば、作業者による作業時間を考慮した原価計算を行うことができるという効果が得られ、原価計算を行う装置等として有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 原価計算装置、11 受付部、12 記憶部、13 取得部、14 計算部、15 出力部
図1
図2
図3
図4