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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電動車両の充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20241127BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241127BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20241127BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241127BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241127BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/00 P
B60L50/61
B60L58/26
H01M10/44 Q
H01M10/48 301
H01M10/48 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021012538
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116393
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】南部 公平
(72)【発明者】
【氏名】市來 智之
(72)【発明者】
【氏名】古田 一樹
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-63159(JP,A)
【文献】特開2011-259672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関であるエンジンと、走行の動力を発生する電動モータと、前記電動モータに電力を供給する走行用バッテリと、を備えた電動車両に搭載される電動車両の充電システムであって、
外部電源を受けて前記走行用バッテリを充電する充電器と、
運転開始期間における過去の運転傾向が記録される運転傾向記憶部と、
充電終了時の前記走行用バッテリの温度が目標温度になるように前記走行用バッテリの温度を制御する充電制御部と、
を備え、
前記充電制御部は、前記運転傾向と、前記エンジンの暖機状態とに基づき、充電終了後の運転で前記走行用バッテリの温度が出力制限の生じる温度に達しないように、前記目標温度を計算することを特徴とする電動車両の充電システム。
【請求項2】
前記充電制御部は、
前記運転傾向のみが異なる場合に、前記運転傾向が高負荷の傾向であるほど、前記目標温度を低く計算し、
前記暖機状態のみが異なる場合に、暖機の度合が低いほど、前記目標温度を低く計算することを特徴とする請求項1記載の電動車両の充電システム。
【請求項3】
前記充電器はAC電源の入力とDC電源の入力とが可能であり、
前記充電制御部は、更に前記充電器に入力された電源種別に基づいて、充電終了後の運転で前記走行用バッテリの温度が出力制限の生じる温度に達しないように、前記目標温度を計算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動車両の充電システム。
【請求項4】
前記充電制御部は、
前記走行用バッテリの内部抵抗と温度との関係を示す抵抗マップを用いて、充電終了後の前記走行用バッテリの上昇温度を予測し、かつ、前記電源種別に基づいて前記抵抗マップを切り替えることを特徴とする請求項3記載の電動車両の充電システム。
【請求項5】
前記充電制御部は、
充電終了後に前記運転傾向に合致する負荷の運転が行われた場合に、前記エンジンの暖機が完了する時点の前記走行用バッテリの温度が、前記出力制限が生じる温度の90%~100%の範囲に収まるように、前記目標温度を計算することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電動車両の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関であるエンジンと電動モータとを備える電動車両に搭載される充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部電源から電力を受けて走行用バッテリを充電する充電器を備えた電動車両がある。充電中、走行用バッテリの温度は上昇する。さらに充電後、電動モータの駆動が行われると、走行用バッテリの温度がより上昇する。そして、走行用バッテリの温度が制限温度に達すると、走行用バッテリの出力が制限され、運転要求に応じた動力が得られずに、運転者に違和感を与えてしまう。
【0003】
特許文献1には、充電終了後の運転で上記のような出力制限が生じないよう、充電時における走行用バッテリの上限温度を制御する充電システムが示されている。さらに、特許文献1の充電システムは、過去の充電終了後の電力出力状況から充電終了後の上昇温度を予測し、予測した上昇温度を考慮して充電時における走行用バッテリの上限温度を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-171208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関であるエンジンと走行用の電動モータとを備えた電動車両においても、エンジンの暖機完了前に、走行用バッテリの温度が制限温度に達してしまうと、運転要求に応じた動力が得られずに、運転者に違和感を与えてしまうことがある。これは、暖機完了となるまでエンジンの出力が制限され、さらに、制限温度に達することで走行用バッテリの出力が制限されることで、電動モータの補助的な出力も制限されるためである。
【0006】
本発明は、内燃機関であるエンジンと走行用の電動モータとを備えた電動車両に搭載される充電システムにおいて、充電終了後の走行において運転者に違和感を与えてしまうことを抑制できる充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電動車両の充電システムは、
内燃機関であるエンジンと、走行の動力を発生する電動モータと、前記電動モータに電力を供給する走行用バッテリと、を備えた電動車両に搭載される電動車両の充電システムであって、
外部電源を受けて前記走行用バッテリを充電する充電器と、
運転開始期間における過去の運転傾向が記録される運転傾向記憶部と、
充電終了時の前記走行用バッテリの温度が目標温度になるように前記走行用バッテリの温度を制御する充電制御部と、
を備え、
前記充電制御部は、前記運転傾向と、前記エンジンの暖機状態とに基づき、充電終了後の運転で前記走行用バッテリの温度が出力制限の生じる温度に達しないように、前記目標温度を計算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内燃機関であるエンジンと走行用の電動車両モータとを備えた電動車両に搭載される充電システムにおいて、充電終了後の走行において運転者に違和感を与えてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る電動車両及び充電システムを示すブロック図である。
図2】マップ記憶部に記憶される走行用バッテリの出力マップを示す図である。
図3】マップ記憶部に記憶される走行用バッテリの内部抵抗マップを示す図であり、(A)はDC電源を用いた充電時に使用される内部抵抗マップを示し、(B)はAC電源を用いた充電時に使用される内部抵抗マップを示す。
図4】充電中から走行時にかけた走行用バッテリの温度の変化を示すタイムチャートである。
図5】充電制御部により実行される走行用バッテリの温度制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電動車両及び充電システムを示すブロック図である。電動車両1は、駆動輪2と、内燃機関であるエンジン3と、エンジン3を駆動する補機4と、走行用の動力を発生する電動モータ5と、電動モータ5を駆動するインバータ6と、インバータ6に走行用の電力を供給する走行用バッテリ7と、運転者が運転操作を行う運転操作部8と、運転操作部8から操作信号を受けて補機4及びインバータ6を制御する走行制御部9と、外部電源を用いて走行用バッテリ7を充電する充電システム20とを備える。運転操作部8には、アクセル操作を行うアクセルペダルと、ブレーキ操作を行うブレーキペダルとが少なくとも含まれる。
【0011】
走行制御部9は、1つのECU(Electronic Control Unit)、あるいは、通信により互いに連携して動作する複数のECUから構成される。走行制御部9は、運転操作部8からの操作信号を受け、運転操作に応じた要求出力(出力はトルクと読み替えてもよい)を計算し、エンジン3、電動モータ5又はこれら両方から要求出力が得られるように補機4及びインバータ6を制御する。このような制御によって、要求出力に応じた動力が駆動輪2へ送られ、運転操作に応じた走行が実現される。
【0012】
電動車両1には、さらに、エンジン3の暖機状態を検出する温度センサ3aが設けられる。温度センサ3aは、例えばエンジン3の冷却液の温度を検出する構成であってもよい。温度センサ3aの検出値は、走行制御部9に送られる。エンジン3の暖機状態とは、エンジン3の様々な部位の暖機状態を含んでもよく、例えばエンジン3の排気浄化触媒3bの暖機状態を含んでもよい。走行制御部9は、温度センサ3aの検出値に基づき、エンジン3の暖機状態を判別し、エンジン3の暖機が未然のときに、エンジン3の出力を制限する。エンジン3の出力が制限され、かつ、制限された出力以上の動力が要求された場合、走行制御部9は、電動モータ5を補助的に駆動し、当該補助的な駆動により、要求された動力を出力する。本実施形態では、エンジン3の暖機状態として排気浄化触媒3bの暖機状態が適用される。
【0013】
走行用バッテリ7には、SOC(State of Charge)及び温度を監視するバッテリ管理部7aが設けられ、SIC及び温度の情報がバッテリ管理部7aから走行制御部9に送られる。走行制御部9は、当該情報に基づき、走行用バッテリ7のSOC(充電残量)が少ないときには、電動モータ5の力行運転を制限し、走行用バッテリ7のSOCが多いときには、電動モータ5の回生運転を制限する。さらに、走行制御部9は、走行用バッテリ7の温度の情報に基づき、温度が高いときには、温度に応じて電動モータ5の出力制限を行う。走行用バッテリ7には、充電制御部23により制御可能な冷却器7b(冷却ファンなど)が設けられる。
【0014】
<充電システム>
充電システム20は、AC電源プラグ51が接続可能なAC充電コネクタ21a及びDC電源プラグ52が接続可能なDC充電コネクタ21bを有する充電コネクタ21と、充電コネクタ21から電力を受けて走行用バッテリ7に充電電流を出力する充電器22と、充電器22を制御する充電制御部23とを備える。AC電源プラグ51は、例えば家庭用の交流100VなどのAC電源から電力が供給される。DC電源プラグ52は、例えば充電専用の直流200V~直流800VなどのDC電源から電力が供給される。以下、充電コネクタ21を介した走行用バッテリ7の充電のことを「プラグイン充電」と呼び、DC電源プラグ52を用いた充電を「DC充電」と呼び、AC電源プラグ51を用いた充電を「AC充電」と呼ぶ。AC充電の際にはユーザが設定した時間に満充電となるタイマー充電が可能である。DC充電の際には所定のSOC(例えば80%)まで急速充電が可能である。
【0015】
充電制御部23は、1つのECU(Electronic Control Unit)、あるいは、通信により互いに連携して動作する複数のECUから構成される。充電制御部23には、バッテリ管理部7aから走行用バッテリ7の温度、SOC及び劣化の情報が送られ、また、エンジン3の温度センサ3aから検出情報が送られる。
【0016】
充電システム20には、さらに、充電制御部23が使用する各種マップデータが格納されるマップ記憶部24と、電動車両1の運転傾向の情報が記録される運転傾向記憶部25とが設けられる。マップ記憶部24には、走行用バッテリ7の所定のSOC及び任意の温度ごとの出力制限電力が登録された出力マップ240と、DC充電時に走行用バッテリ7の内部抵抗を推定するために使用される第1内部抵抗マップ241と、AC充電時に走行用バッテリ7の内部抵抗を推定するために使用される第2内部抵抗マップ242とが記憶される。
【0017】
<運転傾向の記録>
走行制御部9は、運転開始期間における過去の運転傾向を示す情報を運転傾向記憶部25に記録する。運転開始期間とは、電動車両1の始動時から所定長(例えば5分~30分など)の期間である。運転傾向の情報の記録は、毎回の運転開始期間に行われてもよいし、任意に選択された運転開始期間のみ行われてもよいし、充電終了直後の運転開始期間のみ行われてもよい。運転傾向の情報の記録は、どの運転者の運転傾向なのか識別可能に記録されてもよいし、運転者によらずに記録されてもよい。どの運転者の運転傾向なのか識別するには、例えば運転席に向けてカメラを配置し、当該カメラの映像から運転者を識別し、運転者の識別情報と紐づけて運転傾向の情報を記録すればよい。運転者の識別方法は、その他の種々の方法が採用されてもよい。また、記録される運転傾向を示す情報は、加速運転の傾向を示す情報であってもよいし、加速以外の運転の傾向を含んだ情報であってもよい。また、記録される運転傾向を示す情報は、運転開始期間を通した運転傾向の情報であってもよいし、運転開始期間内の最大負荷の情報であってもよい。記録される運転傾向の情報は、運転開始期間の運転の負荷の傾向が予測できる情報であればよい。
【0018】
<走行用バッテリの特性-出力マップ>
走行用バッテリ7には、当該バッテリの急激な劣化を避けるために最大出力電力が定められている。同様の理由から、走行用バッテリ7には、温度が所定温度以上の場合に、SOC及び温度に応じた出力制限電力が定められている。走行制御部9は、走行用バッテリ7の出力電力が最大出力電力及び出力制限電力を上回らないように、電動モータ5の出力制御を行う。SOC及び温度に応じた出力制限電力はマップデータとして登録され、走行制御部9から読み込み可能に記憶される。
【0019】
図2は、マップ記憶部に記憶される走行用バッテリの出力マップを示す図である。マップ記憶部24に記憶される出力マップ240には、充電終了時のSOC(例えば80%~100%)のとき、かつ、任意の温度ごとの出力制限電力が登録されている。図2の例では、45℃以下の場合には、走行用バッテリ7から最大出力電力(200kW)以下の電力が出力可能であることが示され、55℃~50℃の場合には、走行用バッテリ7から各温度値に応じた出力制限電力(0kW~58kW)以下の電力が出力可能であることが示される。
【0020】
<走行用バッテリの特性-内部抵抗マップ>
走行用バッテリ7は、劣化度とSOCと温度とに応じて内部抵抗が変化する。劣化度はバッテリ管理部7aにより管理される。劣化度は、充放電回数、充放電条件及び経年等の様々な条件によって変化するが、所定のSOC及び所定の温度で計測された走行用バッテリ7の端子間開放電圧、内部抵抗等に基づいて、バッテリ管理部7aにより推定される。
【0021】
急速充電(DC充電)が終了した時、走行用バッテリ7のSOCは第1値(例えば80%)となる。一方、AC充電が満充電で終了したとき、走行用バッテリ7のSOCは、第1値よりも高い第2値(例えば100%)となる。したがって、充電終了時の走行用バッテリ7の内部抵抗を推定するには、DC充電終了時のSOCに対応するマップデータと、AC充電終了時のSOCに対応するマップデータとを要する。
【0022】
図3は、マップ記憶部に記憶される走行用バッテリの内部抵抗マップを示す図であり、(A)はDC電源を用いた充電時に使用される内部抵抗マップを示し、(B)はAC電源を用いた充電時に使用される内部抵抗マップを示す。マップ記憶部24に記憶される第1内部抵抗マップ241は、急速充電(DC充電)終了時のSOCに対応したマップデータである。第1内部抵抗マップ241には、当該SOCで、任意の劣化度、並びに、任意の温度のときの走行用バッテリ7の内部抵抗が示される。第2内部抵抗マップ242は、タイマー充電(AC充電)終了時のSOCに対応したマップデータである。第2内部抵抗マップ242には、当該SOCで、任意の劣化度、並びに、任意の温度のときの走行用バッテリ7の内部抵抗が示される。
【0023】
<充電中の温度制御>
充電制御部23は、タイマー充電(AC充電)、あるいは、急速充電(DC充電)の際に、充電終了時における走行用バッテリ7の温度を目標温度Tに制御する。当該制御は、充電の終盤で走行用バッテリ7の冷却器7bの強度を調整することで実現されてもよいし、充電の終盤で充電電流を調整することで実現されてもよいし、これらを併用することで実現されてもよい。本実施形態では、冷却器7bの強度を調整することで走行用バッテリ7の温度が制御される。
【0024】
充電制御部23は、充電終了後の走行(例えば充電終了直後の走行)において運転者に違和感を与えてしまうことを抑制できるように、充電終了時の走行用バッテリ7の目標温度Tを計算する。すなわち、電動車両1において運転開始期間の運転傾向が高負荷運転の傾向であれば、充電終了後の運転開始期間においても同様の負荷の運転操作が行われることが予測される。さらに、エンジン3の暖機の度合が低いと、運転開始からエンジン3の暖機が完了するまでの時間が延び、その間、エンジン3の出力が制限され、電動モータ5から補助的な出力が行われる。電動モータ5から補助的な出力が行われる際、走行用バッテリ7の出力電流と内部抵抗とに応じて、走行用バッテリ7でジュール熱が生じ、走行用バッテリ7の温度が上昇する。そして、当該温度の上昇により、エンジン3の暖機が完了する前に、走行用バッテリ7の温度が制限温度に達してしまうと、走行用バッテリ7及び電動モータ5にも出力制限が生じ、運転操作に応じた動力が得られなくなって運転者に違和感を与えてしまう。
【0025】
したがって、充電制御部23は、過去の運転開始期間における運転傾向と、エンジン3の暖機状態と、プラグイン充電に用いた外部電源の種別とに基づいて、充電終了後の運転で走行用バッテリ7の温度が制限温度に達しないように、上記の目標温度Tを計算する。外部電源の種別に基づく理由は、充電終了時のSOCが急速充電(DC充電)かAC充電かによって異なり、当該SOCによって走行用バッテリ7の内部抵抗が異なるからである。
【0026】
<目標温度を計算及び制御するためのパラメータ>
図4は、充電中から走行時にかけた走行用バッテリの温度の変化を示すタイムチャートである。当該タイムチャートおいて、本実施形態の充電システム20の制御が働いている場合を実線で示し、当該制御がない場合を破線で示す。
【0027】
充電制御部23は、図4のタイムチャートにも示されるように、目標温度Tを計算するため、あるいは、走行用バッテリ7の温度を目標温度Tに制御するために、次の複数のパラメータを使用する。
:充電終了後に過去の運転傾向に従った運転が行われた場合に走行用バッテリ7に出力制限が生じると予測される走行用バッテリ7の予測温度
_start_run:充電終了後の運転に伴ってエンジン3が暖機完了となるまでの予測期間
ΔT:充電終了後から予測期間t_start_runの経過時までに運転に伴って走行用バッテリ7の温度が上昇すると予測される量(予測上昇温度)
:充電終了時の走行用バッテリ7の目標温度
t_last_chg:充電終了時に走行用バッテリ7を目標温度Tに制御するために設定される温度制御期間
【0028】
<出力制限が生じる予測温度Tの計算方法>
暖機未然によりエンジン3の出力が制限されているときに、大きなアクセル開度(アクセルペダルの操作量)の運転操作が行われると、エンジン3の出力で足りない分の出力が走行用バッテリ7及び電動モータ5に要求される。当該要求された出力が、図2の出力マップに示された出力制限電力より大きいと、走行用バッテリ7及び電動モータ5の出力が制限される。
【0029】
したがって、予測温度Tを計算する際、充電制御部23は、先ず、運転傾向記憶部25の情報に基づき、充電終了後の運転でどのような負荷の運転操作がなされるか予測する。例えば、当該運転時の最大アクセル開度を、例えば過去の運転開始期間のアクセル開度の統計量(例えばその最大値、過去複数回の運転開始期間分の最大値の平均、又は、全アクセル開度の平均値及び分散値から予測される最大開度など)から予測し、当該最大アクセル開度に対応する負荷を予測負荷とする。次に、充電制御部23は、上記の予測負荷から、暖機未然のときのエンジン3の最大出力を減じて、走行用バッテリ7及び電動モータ5の要求出力を求める。そして、図2の出力マップ240を用いて、上記要求出力が出力制限電力となる温度を照合し、当該温度を出力制限が生じる予測温度Tとして求める。
【0030】
例えば、過去の運転傾向から予測された充電終了後の運転時の最大出力が143kWであり、暖機未然のエンジン3の最大出力が電力換算で100kWであれば、走行用バッテリ7に要求される出力が43kWであると予測される。そして、出力マップ240から43kWが最大出力となる走行用バッテリ7の温度は53℃である。したがって、この場合、予測温度Tは53℃となる。
【0031】
なお、走行用バッテリ7の出力制限が生じるか否かが問題となるタイミングは、充電終了時ではなく、その後の運転中のタイミングである。したがって、走行用バッテリ7のSOCは充電終了時よりもわずかに減少していることが想定される。しかし、上記の予測温度Tの計算方法では、当該SOCの減少を、走行用バッテリ7の容量と比較して非常に小さいものとして無視している。走行用バッテリ7の容量が小さく、上記のSOCの減少が無視できない場合には、当該SOCの減少を考慮した出力マップの照合を行うようにしてもよい。いずれにせよ、走行用バッテリ7に出力制限が生じる予測温度Tを求めることができる。
【0032】
<予測期間t_start_runの計算方法>
予測期間t_start_runは、充電終了後の運転に伴う温度上昇によりエンジン3が運転開始時の温度から上昇し、暖機完了の温度となるまでの時間を予測することで求められる。したがって、先ず、充電制御部23は、プラグイン充電中の温度センサ3aの出力に基づき、運転開始時のエンジン3の温度(すなわち充電終了時の温度)を推定する。ここで、エンジン3の温度とは、例えば排気浄化触媒3bの温度である。充電制御部23は、プラグイン充電の後半など、エンジン3が冷え切っているときの温度センサ3aの値を読み込み、その後、エンジン3の温度は変わらないものとして、当該温度を充電終了時の温度として求めてもよいし、あるいは、外気温、時刻、気象予報などの情報に基づき補正を行うことで、充電終了時の温度をより正確に推測してもよい。次に、充電制御部23は、充電終了後の温度に、エンジン3が始動した後の温度の上昇パターンを適用して、暖機完了の温度になるまでの時間を逆算することで、当該時間を暖機完了までの予測期間t_start_runとして求める。上記の温度の上昇パターンは、試験又はシミュレーション等により予め取得し、充電制御部23に記憶されている。
【0033】
なお、暖機完了までの予測期間t_start_runを計算する際に、不確定要素がある場合、充電制御部23は、悪い方(予測期間t_start_runが長くなる方)の条件を採用し、計算を行ってもよい。例えば予測後から充電終了までの外気温が、5℃~-5℃と予報される場合には、-5℃を採用するなどである。このような不確定要素の条件の採用により、実際にエンジン3が暖機完了となるまでの時間が、予測期間t_start_runを超えてしまい、そのせいで、運転操作に応じた出力が制限されてしまうといった事態を低減できる。
【0034】
<予測上昇温度ΔTの計算方法>
予測上昇温度ΔTは、充電完了後の運転において走行用バッテリ7内で発生するジュール熱に基づく温度上昇と、走行用バッテリ7から外部環境への放熱に基づく温度低下とを合算して得られる。上記のジュール熱は、充電完了後の運転において予測された出力電流Iと、予測された走行用バッテリ7の内部抵抗Rとから求められる。さらに、ジュール熱に基づく温度上昇は、ジュール熱を走行用バッテリ7の熱容量C[W/℃]で除算することで求められる。上記の放熱による温度低下は、走行用バッテリ7の周囲の環境温度Toutと走行用バッテリ7の初期の温度(目標温度T)との差にほぼ比例(放熱係数α倍)するものとして求められる。走行用バッテリ7の熱容量Cと、環境温度Toutに応じた温度低下を表わす放熱係数αは、試験又はシミュレーション等により予め取得され、充電制御部23の記憶部に記憶されている。
【0035】
これらのことから、充電制御部23は、小さな差を無視する近似を行って、予測上昇温度ΔTを、次式(1)のように求める。
ΔT={IR×t_start_run/C}-α{T-Tout} …(1)
【0036】
ここで、出力電流Iは、運転傾向記憶部25の情報に基づき、予測期間t_start_runの平均的な電動モータ5の予測出力から1つの値として求められてもよいし、予測期間t_start_runの各タイミングで変化する時間の関数として求められてもよい。
【0037】
また、内部抵抗Rは、目標温度Tから出力制限が生じる予測温度Tの近傍まで、走行用バッテリ7の温度が変化するものとして、マップ記憶部24に記憶された内部抵抗マップから温度と劣化度とを照合して求められる。内部抵抗Rは、予測期間t_start_run中の内部抵抗を平均化することで1つの値として求められてもよいし、各タイミングで変化する時間の関数として求められてもよい。
【0038】
出力電流I及び内部抵抗Rを、時間の関数として求めた場合には、充電制御部23は、各タイミングの電力の計算値を時間積分することで、予測期間t_start_runに発生したジュール熱を求めればよい。
【0039】
内部抵抗Rを予測する際、充電制御部23は、DC充電時であれば、DC充電時に対応した第1内部抵抗マップ241を使用し、AC充電時であれば、AC充電時に対応した第2内部抵抗マップ242を使用する。このような内部抵抗マップの切り替えにより、予測上昇温度ΔTの計算精度を向上できる。
【0040】
なお、放熱による温度低下を表わす式(1)の右辺第2項[α{T-Tout}]において、環境温度Tout、並びに、走行用バッテリ7の温度は、大きな誤差が生じないことから、充電終了時の初期の温度を用いている。しかし、上記第2項の環境温度Tout及び走行用バッテリ7の温度は、初期の温度の替わりに、予測期間t_start_runの各タイミングで値が変化する時間の関数として求められてもよい。この場合、充電制御部23は、各タイミングの放熱の値を時間積分することで、放熱による温度低下を計算すればよい。
【0041】
<目標温度Tの計算方法>
目標温度Tは、次式(2)のように、出力制限が生じる予測温度Tから予測上昇温度ΔTを減算して求められる。
=T-ΔT …(2)
予測上昇温度ΔTの式には、放熱による温度低下の項[α{T-Tout}]だけでなく、内部抵抗Rを求める際などにも、目標温度Tを使用している。したがって、式(2)は、目標温度Tのネスト構造を有しているが、数値解析等によって、容易に式(2)の解を求めることができる。
【0042】
<目標温度Tと他の状態との関係>
目標温度Tと過去の運転開始期間の運転傾向との関係は、次の通りである。すなわち、過去の運転開始期間の運転傾向が高負荷であると、運転傾向記憶部25にその傾向が記録され、予測温度Tを計算する際に使用される予測負荷が大きくなる。図2の出力マップ240に示すように、予測負荷に応じた出力制限電力が大きくなると、予測温度Tは低くなる。同様に、過去の運転開始期間の運転傾向が高負荷であると、運転傾向記憶部25にその傾向が記録され、予測上昇温度ΔTを計算する際に使用される予測された出力電流Iが大きくなる。出力電流Iが大きいと発生するジュール熱が大きくなり、予測上昇温度ΔTは大きくなる。目標温度Tと予測温度T及び予測上昇温度ΔTは、上記の式(2)の関係を有するので、他の条件が同一で、過去の運転開始期間の運転傾向が高負荷であると、低負荷であるときと比べて、目標温度Tは低くなる。
【0043】
目標温度Tとエンジン3の暖機の度合いとの関係は、次の通りである。すなわち、暖機度合いが低いと、充電終了後から運転に伴ってエンジン3が暖機完了となるまでの予測期間t_start_runが長くなる。予測期間t_start_runは、予測上昇温度ΔTを計算する際に使用されており、予測上昇温度ΔTは予測期間t_start_runが長くなると大きくなる。したがって、他の条件が同一で、エンジン3の暖機の度合いが低いと、暖機の度合いが高いときと比べて、目標温度Tは低くなる。
【0044】
<温度制御期間t_last_chg>
温度制御期間t_last_chgは、制御前から目標温度Tまでの温度差が大きい場合でも、走行用バッテリ7の温度を目標温度Tまで下げることができるように、予め余裕を有する時間が設定される。温度制御期間t_last_chgは、外気温等が低いなど走行用バッテリ7の温度を下げやすい環境である場合に短くなり、逆の場合に長くなるように補正されてもよい。
【0045】
<走行用バッテリの温度制御処理>
図5は、充電制御部により実行される走行用バッテリの温度制御処理を示すフローチャートである。充電制御部23は、プラグイン充電が開始されると、充電制御と並行して図5の温度制御処理を開始する。そして、先ず、充電制御部23は、プラグイン充電のタイマー設定があるか否かの判別(ステップS1)、AC充電か否かの判別(ステップS2)、DC充電か否かの判別(ステップS3)を行う。その結果、タイマー設定があるAC充電(タイマー充電)であれば、充電制御部23は、内部抵抗Rを求めるために使用する内部抵抗マップとして第2内部抵抗マップを適用し(ステップS4)、充電終了時をタイマー設定から取得し(ステップS5)、続くステップへ処理を進める。一方、タイマー設定のないDC充電(急速充電)であれば、充電制御部23は、内部抵抗Rを求めるために使用する内部抵抗マップとして第1内部抵抗マップを適用し(ステップS6)、充電終了時を急速充電の規定時間から取得し(ステップS7)、続くステップへ処理を進める。
【0046】
その他、タイマー設定のあるDC充電、あるいは、タイマー設定のないAC充電の場合には、充電制御部23は、走行用バッテリ7の温度制御が不要であるとして、温度制御処理を終了する。
【0047】
次に処理が進むと、先ず、充電制御部23は、通常モードで走行用バッテリ7の冷却を開始し(ステップS8)、現在時刻から充電終了時までの残充電時間が、温度制御期間t_last_chgよりも短いか判別する処理(ステップS9)を、判別結果がYESとなるまで繰り返す。
【0048】
そして、ステップS9の判別の結果がYESとなったら、まず、充電制御部23は、充電終了後に過去の運転傾向に従った運転が行われた場合に出力制限が生じると予測される走行用バッテリ7の予測温度Tを、上述した方法で計算する(ステップS10)。さらに、充電制御部23は、充電終了後の運転でエンジン3が暖機完了となる予測期間t_start_run、並びに、充電終了時から予測期間t_start_runの経過時までの走行用バッテリ7の予測上昇温度ΔTを、上述した方法で計算する(ステップS11)。さらに、充電制御部23は、充電終了時の走行用バッテリ7の温度であり、その後の予測上昇温度ΔTの温度上昇により出力制限が生じる予測温度Tにほぼ到達する目標温度Tを、上述した方法で計算する(ステップS12)。そして、充電制御部23は、現在の走行用バッテリ7の温度が目標温度Tよりも高いか判別し(ステップS13)、YESならば走行用バッテリ7の冷却制御を強力モードに切り替える(ステップS14)。一方、ステップS13の判別結果がNOならば、充電制御部23は、走行用バッテリ7の冷却制御を通常モードに切り替える(ステップS15)。そして、ステップS14又はステップS15の後、充電制御部23は、充電終了時になったか判別し(ステップS16)、NOであれば、処理をステップS13に戻し、YESであれば温度制御処理を終了する。
【0049】
上記の温度制御処理によれば、充電終盤の温度制御期間t_last_chgの直前で、目標温度Tが計算され、その後のループ処理(ステップS13~S16)により走行用バッテリ7の温度が、計算された目標温度Tに制御される。
【0050】
なお、上記の温度制御処理では、予測温度T、予測期間t_start_run、予測上昇温度ΔT及び目標温度Tを、温度制御期間t_last_chgの直前で一度のみ計算する例を示した。しかし、上記の計算には、充電終了後の走行用バッテリ7とエンジン3の温度の予測値が使用される。したがって、上記の計算は、充電終了時の近くで行った方が、温度の予測値が正確になって、精度が上昇する。したがって、充電制御部23は、ステップS13~S16のループ処理内で、上記の計算を繰り返し行い、最新の計算結果に基づいて、走行用バッテリ7が目標温度Tになるように温度制御を行ってもよい。
【0051】
<充電終了後の運転>
図4の破線に示すように、温度制御がない場合、プラグイン充電期間J1の終了時t1に走行用バッテリ7の温度は、充電による温度上昇によって比較的に高い温度T11に維持される。そして、運転期間J2において暖機未然のエンジン3だけでは出力不足となる負荷の運転操作が行われたとする。すると、エンジン3の暖機が完了するまでの予測期間t_start_runにおいて、電動モータ5から補助的な出力が行われるため、出力に応じて走行用バッテリ7の温度が上昇する。そして、エンジン3が暖機完了となるタイミングt2よりも前に、走行用バッテリ7の温度が出力制限の生じる予測温度Tに達してしまう(タイミングt11)。したがって、その後の期間J21には、運転要求に応じた動力が出力できずに、運転者に違和感を与えてしまう。
【0052】
一方、図4の実線に示すように、温度制御が行われることで、プラグイン充電の終盤(温度制御期間t_last_chg)に走行用バッテリ7が冷却され、充電終了時t1に走行用バッテリ7の温度が目標温度Tに制御される。そして、運転期間J2において上記と同様に、暖機未然のエンジン3だけでは出力不足となる負荷の運転操作(運転傾向記憶部25の情報に基づき予測された運転傾向の操作)が行われたとする。すると、電動モータ5から補助的な出力が行われ、走行用バッテリ7の温度が上昇する。しかし、エンジン3の暖機が完了するタイミングt2にかけて上昇する温度は、過去の運転傾向に基づき予測された予測上昇温度ΔTとなる。
【0053】
予測上昇温度ΔTは、余裕を持たせるために、運転傾向の予測が正確に行われた場合でも、暖機完了タイミングt2における走行用バッテリ7の温度が、予測温度Tを超えず、かつ、予測温度Tに近い温度となるように、計算される。好ましくは、過去の運転傾向と同一の運転操作が行われた場合、暖機完了タイミングt2における走行用バッテリ7の温度は、出力制限の生じる温度の90%から100%の範囲H1に収まるように、予測上昇温度ΔTが計算される。
【0054】
したがって、暖機が完了するタイミングt2より前に、走行用バッテリ7の温度が出力制限の生じる予測温度Tに達することが抑制される。そして、走行用バッテリ7及び電動モータ5に出力制限が生じることなく、エンジン3の暖機が完了し(タイミングt2)、エンジン3の出力制限が解除されることで、その後、電動モータ5の補助的な出力が低減され、走行用バッテリ7の温度が低下していく。したがって、充電終了後の運転で、運転要求に応じた動力が出力できずに、運転者に違和感を与えてしまうといった事態が抑制される。
【0055】
以上のように、本実施形態の充電システム20によれば、運転開始期間における過去の運転傾向が記録される運転傾向記憶部25と、充電終了時に走行用バッテリ7の温度が目標温度Tになるように走行用バッテリの充電を制御する充電制御部23とを備える。そして、充電制御部23は、運転傾向記憶部25に記録された運転傾向と、エンジン3の暖機状態とに基づいて、充電終了後の運転で走行用バッテリ7の温度が出力制限の生じる温度に達しないように目標温度Tを計算する。したがって、エンジン3が暖機未然で、電動モータ5から補助的な出力が行われる状況で、充電終了後に過去と同様の運転傾向の運転が行われた場合に、走行用バッテリ7が出力制限が課される温度まで上昇することが抑制される。したがって、エンジン3及び電動モータ5の両方に出力制限が課されて、運転者に違和感を与えてしまうといった事態を抑制することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の充電システム20によれば、充電制御部23は、運転開始期間における過去の運転傾向のみが異なる場合には、当該運転傾向が高負荷の傾向であるほど、充電終了時の走行用バッテリ7の目標温度Tを低く計算する。さらに、充電制御部23は、エンジン3の暖機状態のみが異なる場合には、暖機の度合いが低いほど、充電終了時の走行用バッテリ7の目標温度Tを低く計算する。通常、運転開始期間における過去の運転傾向が高負荷であるほど、充電終了後の運転で高負荷の運転操作が行われ、走行用バッテリ7の温度上昇率が高くなることが想定される。また、エンジン3の暖機の度合いが低いほど、充電終了時に電動モータ5の補助的な出力期間が延び、走行用バッテリ7の温度上昇期間が長くなることが想定される。したがって、上記のような運転傾向との関係で、又は、エンジン3の暖機状態との関係で、目標温度Tが低く計算されることで、充電終了後の運転において、電動モータ5の補助的な出力期間に温度上昇により走行用バッテリ7の出力が制限されてしまうことを抑制できる。
【0057】
さらに、本実施形態の充電システム20によれば、充電制御部23は、DC充電とAC充電とが可能であり、充電制御部23は、プラグイン充電の電源種別に基づいて充電終了時の走行用バッテリ7の目標温度Tを計算する。DC充電の充電終了時とAC充電の充電終了時とでは、走行用バッテリ7のSOCが異なることで、走行用バッテリ7の内部抵抗に差か生じ、充電終了後の運転時に同様の電流出力が行われても、温度上昇量が異なってくる。したがって、充電制御部23が、プラグイン充電の電源種別も考慮して、充電終了後の運転で走行用バッテリ7の温度が出力制限の生じる温度に達しないように目標温度Tを計算することで、より適正な目標温度Tを得ることができ、上記のような運転者に違和感を与えてしまうといった事態をより抑制することができる。
【0058】
さらに、本実施形態の充電システム20によれば、充電制御部23は、DC充電のときにはDC充電に対応した第1内部抵抗マップ241、すなわち、DC充電終了時のSOC(例えばSOC80%)に対応した第1内部抵抗マップ241を使用して目標温度Tを計算する。また、充電制御部23は、AC充電のときにはAC充電に対応した第2内部抵抗マップ242、すなわち、AC充電満了時のSOC(例えばSOC100%)に対応した第2内部抵抗マップ242を使用して目標温度Tを計算する。したがって、充電制御部23は、プラグイン充電の電源種別を考慮した目標温度Tの計算を、少ないデータ及び計算負荷で実現でき、かつ、電源種別に基づく差を目標温度Tに適切に反映することができる。
【0059】
さらに、本実施形態の充電システム20によれば、充電終了後、運転傾向記憶部25に記録された運転開始期間における過去の運転傾向に合致する負荷の運転が行われた場合、すなわち、充電終了後の運転の正確な予測が得られる場合に、エンジン3の暖機完了時点の走行用バッテリ7の温度が、出力制限が生じる予測温度Tを超えずに、予測温度Tに近い温度(予測温度Tの90%~100%の範囲H1(図4))になるように目標温度Tが計算される。したがって、充電終了時の走行用バッテリ7の温度が必要以上に低くされず、逆に低温により走行用バッテリ7の出力制限が生じたり、充電終了前の走行用バッテリ7の冷却のために必要以上の損失が生じたりすることを抑制できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、充電システム20がAC充電とDC充電との両方が可能な構成を示したが、本発明に係る充電システムは一方のみが可能な構成であってもよく、その場合、充電制御部は一方の電源種別に対応する目標温度を計算するように構成されればよい。また、上記実施形態では、エンジン3の暖機状態として排気浄化触媒3bの暖機状態が適用された例を示したが、低温時にエンジン3の出力が制限される構成であれば、当該構成の暖機状態がエンジン3の暖機状態として適用されてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 電動車両
2 駆動輪
3 エンジン
5 電動モータ
7 走行用バッテリ
7a バッテリ管理部
8 運転操作部
20 充電システム
21 充電コネクタ
22 充電器
23 充電制御部
24 マップ記憶部
240 出力マップ
241 第1内部抵抗マップ
242 第2内部抵抗マップ
25 運転傾向記憶部
t_last_chg 温度制御期間
t_start_run 暖機完了までの予測期間
走行用バッテリに出力制限が生じる予測温度
ΔT 予測上昇温度
目標温度
図1
図2
図3
図4
図5