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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】吸収体及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/537 20060101AFI20241127BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61F13/537 320
A61F13/537 210
A61F13/534 110
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021012733
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116530
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099635(WO,A1)
【文献】特開2018-166876(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0276062(US,A1)
【文献】特開2017-164356(JP,A)
【文献】特開2020-162629(JP,A)
【文献】特開2020-103527(JP,A)
【文献】特開2017-093828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、その間に設けられた吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性繊維を含有しないものであって、高吸収性シートを有し、
前記高吸収性シートは、着用者の肌面側から第1のポリウレタン連続多孔質体シート、開孔フィルム及び第2のポリウレタン連続多孔質体シートの順に積層されており、前記第1及び第2のポリウレタン連続多孔質体シートの層間に封入された高吸収性ポリマーを有し、
前記開孔フィルムは、肌側面から非肌側面に貫通する複数の開孔を有し、前記開孔の数が50個/cm以上であり、
前記第1のポリウレタン連続多孔体シートと前記開孔フィルムとの間、及び前記開孔フィルムと前記第2のポリウレタン連続多孔体シートとの間は、それぞれが、前記高吸収性ポリマーを封入するブロック状の空間を形成するように接合されていることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記第1又は第2のポリウレタン連続多孔体シートは、坪量が30g/m以上300g/m以下であり、且つ見かけ密度が100kg/m以上200kg/m以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1又は第2のポリウレタン連続多孔体シートは、骨格表面が親水性である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開孔フィルムは、その開孔径が0.3mm以上1.5mm以下である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記開孔フィルムは、前記開孔の肌側面の前記開孔径が、前記貫通孔の非肌側面の前記開孔径よりも、0.03mm以上0.15mm以下大きい、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ブロック状の空間における前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m以上300g/m以下である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び該吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体とで構成され、尿等の体液はトップシートを透過して吸収体に吸収及び保持される。近年は吸収性物品を着けていることが目立たない、また着用時に違和感がなく、つけている感がない薄型の吸収性物品が望まれている。薄型の吸収性物品を設計する場合、通常、吸収性物品の大部分を占める吸収体の薄型化が検討され、薄型の吸収体を用いた吸収性物品が多く提案されている(特許文献1乃至4)。
【0003】
特許文献1には、トップシートと吸収体との間にセカンドシートが配された吸収性物品において、吸収体が0.12g/cmより高い密度を有し、セカンドシートが1.5×10N以上の毛細管力を有する吸収性物品が開示されている。特許文献1によれば、吸収体の密度とセカンドシートの毛細管力とを最適化することにより、吸収体の薄さと優れた吸収力とを高いレベルで両立して、装着時に安心と、快適な装着感を与えることができる、と記載されている。
【0004】
特許文献2には、不織布及び高吸収性ポリマーを含む肌側吸収層と、親水性多孔質材料及び高吸収性ポリマーを含む非肌側吸収層と、を有し、非肌側吸収層は実質的に縦長であり、その幅方向中央部は他の部位に比して、高吸収性ポリマーの分布量が少ない吸収性物品が開示されている。特許文献2によれば、非肌側吸収層に親水性多孔質材料を用い、高吸収性ポリマーの分布を最適化することにより、液拡散性、液保持性を高く保持しつつ、厚みが薄く、吸収速度を速くすることができる、と記載されている。
【0005】
特許文献3には、吸収性ゲル材料としてのポリウレタン発泡体層を含む基材層と、高吸収性ポリマー層と、接着剤層と、カバー層とがこの順に積層された積層体を含み、接着剤層がホットメルト接着剤を含み、カバー層が不織布を含む吸収体が開示されている(請求項1、2、4、段落0010、段落0016)。基材層及びカバー層を構成する材料としては、スパンボンド不織布、カード不織布、エアレイド不織布等の不織布材料が記載されるのみである(段落0045)。特許文献3によれば、基材層上に安定して取り付けられるポリウレタン発泡体層を組み込むことによって、フィット性が良く快適であり、吸収体の吸収能力の利用率を維持できる、と記載されている(段落0009、段落0043)。
【0006】
特許文献4には、プラスチック発泡体層及び/又はラテックス発泡体層と、粒子状高吸収性ポリマーを含む体液吸収層と、を含む層状吸収体において、高吸収性ポリマーがプラスチック発泡体層及び/又はラテックス発泡体層の上に直接、それらの間に、又はその下に、所定量及び/又は所定の位置に配置され、並びに発泡プラスチック層及び/又は発泡ラテックス層:高吸収性ポリマーの量的比率が1:500乃至50:1、好ましくは1:50乃至25:1、最も好ましくは1:5乃至10:1である層状吸収体が開示されている。特許文献4によれば、前述の層状吸収体を採用することで、水及び水性液体に対する吸収性能、特に荷重下での吸収性能が高まる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-67897公報
【文献】特開2009-131349公報
【文献】特開2014-140770公報
【文献】特表平09-509909公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1乃至4に記載の吸収体は、いずれも、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含有しない薄型の吸収性シートに属するものであり、吸収性物品を薄型化、軽量化する上では有効であるものの、吸収性能をある程度犠牲にしなければならない。特に、吸収体面積の狭い軽失禁製品や尿取りパッドにおいては十分な吸収性能を保つことができない。
【0009】
また、吸収性物品において、吸収の速さ(以下「吸収速度」ともいう)と逆戻り量の少なさは、吸収性能の指標としてどちらも重要であるが、吸収体として従来の吸収性シートを用いた薄型の吸収性物品においては両者を高い次元で満たすことは難しい。
【0010】
本発明の目的は、体液拡散性に優れ、吸収性能、吸収速度及び逆戻り防止性を高水準で併せ持つ薄型吸収体を備え、着用感、フィット性に優れた吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリウレタン連続多孔体シート、開孔フィルム、及び高吸収性ポリマー粒子を用いて薄型吸収体(高吸収性シート)を形成することにより、高い吸収性能、特に複数回体液を吸収しても吸収速度が高水準に維持される吸収性能を有する薄型吸収体及び該薄型吸収体を備えた薄型の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記の吸収性物品に係る。
【0012】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、その間に設けられた吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性繊維を含有しないものであって、高吸収性シートを有し、
前記高吸収性シートは、着用者の肌面側から前記第1のポリウレタン連続多孔質体シート、開孔フィルム及び第2のポリウレタン連続多孔質体シートの順に積層されており、前記第1及び第2のポリウレタン連続多孔質体シートの層間に封入された高吸収性ポリマーを有し、
前記開孔フィルムは、肌側面から非肌側面に貫通する複数の開孔を有し、前記開孔の前記肌側面の開孔径が前記非肌側面の開孔径よりも大きく、且つ、前記開孔の数が50個/cm以上であり、
前記第1のポリウレタン連続多孔体シートと前記開孔フィルムとの間、及び前記開孔フィルムと前記第2のポリウレタン連続多孔体シートとの間は、それぞれが、前記高吸収性ポリマーを封入するブロック状の空間を形成するように接合されていることを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記第1又は第2のポリウレタン連続多孔体シートは、坪量が30g/m以上300g/m以下であり、且つ見かけ密度が100kg/m以上200kg/m以下である、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記第1又は第2のポリウレタン連続多孔体シートは、骨格表面が親水性である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記開孔フィルムは、その開孔径が0.3mm以上1.5mm以下である、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記開孔フィルムは、前記開孔の肌側面の前記開孔径が、前記貫通孔の非肌側面の前記開孔径よりも、0.03mm以上0.15mm以下大きい、上記(1)乃至(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記ブロック状の空間における前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m以上300g/m以下である、上記(1)乃至(5)のいずれかの吸収性物品。
【0013】
本発明によれば、体液拡散性に優れ、吸収性能、吸収速度及び逆戻り防止性を高水準で併せ持つ薄型吸収体を備え、着用感、フィット性に優れた吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1に示すX-X切断線による幅方向の模式断面図である。
図3図1に示すY-Y切断線による長手方向の模式断面図である。
図4】高吸収性シートの構成を示す模式断面図である。
図5図1に示す吸収性物品中での体液の流れを示す模式断面図である。
図6】比較例1に係る吸収性物品の構成を示す模式断面図である。
図7】比較例3、4に係る吸収性物品の構成を示す模式断面図である。
図8】比較例5に係る吸収性物品の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に装着したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する方向であり、厚さ方向とは各構成部材を積層する方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る吸収性物品50について説明する。図1乃至図3は、吸収性物品50を示す。図4は、高吸収性シート25を示す。図5は、吸収体20中の体液の代表的な流れを示す。図6乃至図8は、それぞれ、比較例1、3(又は4)、5に係る吸収性物品70、80、90を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0017】
本実施形態の吸収性物品50は、乳幼児用及び成人用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁製品、軽失禁ライナー、尿取りパッド、生理用ナプキン等のパッド製品、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。これらの中でも、薄型であることと、複数回の吸収でも吸収量や吸収速度が低下しないことを利用して、特に軽失禁製品、尿取りパッド等のパッド製品として好適に使用できる。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法(最大寸法)、及び幅方向の寸法(最大寸法)はいずれも特に限定されないが、それぞれ、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整すると、種々の形態の吸収性物品が容易に得られる。
【0018】
図1及び図2に示す吸収性物品50は、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収体20と、トップシート10の肌側面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。
【0019】
吸収体20はフラッフパルプ等の吸収性繊維を含有しない高吸収性シート25を含み、図2及び図3に示すように、肌側から非肌側に向けて、第1のポリウレタン連続多孔体シート21と、中間シートとしての開孔フィルム22と、第2のポリウレタン連続多孔体シート21とがこの順に積層されており、第1のポリウレタン連続多孔体シート21と開孔フィルム22との間に高吸収性ポリマーを封入した第1SAP層と、開孔フィルム22と第2のポリウレタン連続多孔体シート21との間に高吸収性ポリマーを封入した第2SAP層とを有している。第1SAP層には該層を面方向にブロック状の空間61に分割し、かつ第1のポリウレタン連続多孔体シート21と開孔フィルム22とを部分的に接合する平面視帯状の第1の接合部60が設けられ、第2SAP層には該層を面方向にブロック状の空間61に分割し、かつ開孔フィルム22と第2のポリウレタン連続多孔体シート21とを部分的に接合する平面視帯状の第2の接合部60が設けられている。第1の連続多孔体シート21、及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21は、それぞれ、ポリウレタン連続気泡発泡体を含む。
【0020】
本実施形態によれば、着用者の肌側から順に配置された、ポリウレタン連続気泡発泡体を含む第1のポリウレタン連続多孔体シート21と、開孔フィルム22と、ポリウレタン連続気泡発泡体を含む第2のポリウレタン連続多孔体シート21との各層間が高吸収性ポリマー12を含むブロック状の空間61を形成するように第1及び第2の接合部60で部分的に接合された高吸収性シート25を備えることで、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、逆戻りが少なく、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な薄型吸収体20及び該薄型吸収体20を備える吸収性物品50を得ることができる。ポリウレタン連続気泡発泡体を含む第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21は、その弾力性等によって排尿前における高吸収性ポリマー12の硬さ、ざらつき感や、排尿後における体液を吸収して膨潤した高吸収性ポリマー12のゴツゴツ感を感じ難くし、また、ブロック状の空間61によって高吸収性ポリマー12のズレ、移動が抑えられて、体液吸収後も厚さや触感を長手方向、幅方向でより均一に保つことができるため、着用感を向上させることができる。
【0021】
本実施形態の吸収性物品50は、トップシート10、吸収体20、及びバックシート30を基本構成単位とするものであり、必要に応じて、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収体20との間への液透過性のトランスファシート(不図示)や液透過性のセカンドシートの配設等の、公知の様々な改変を施すことができる。以下、吸収性物品50の構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0022】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも不織布が好ましく、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等がより好ましい。
【0023】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、18g/m以上400g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0024】
<吸収体>
吸収体20は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体20の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上800mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅方向寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅方向寸法が90mm以上250mm以下の範囲である。吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の吸収体20は、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含有しない高吸収性シート25と、高吸収性シート25を包む親水性シート24とを含んでいる。高吸収性シート25については後に詳述する。親水性シート24は、例えば、その幅方向中央部付近に高吸収性シートの非肌側面を載置し、必要に応じてこれら接着した後、親水性シート24の幅方向両側をC折りにより高吸収性シート25の肌側で重ね合わせ、必要に応じて重ね合わせた部分を接着することで、高吸収性シート25全体を包む。親水性シート24は、前述のように高吸収性シート25の全体を包むだけでなく、高吸収性シート25の非肌側面、幅方向両側面、及び肌側面の幅方向両端部付近を覆い、トップシート10と高吸収性シート25との間で、親水性シート24の幅方向両端が対向及び離隔して、長手方向に延びるスリット状空間が形成されるように高吸収性シート25を包んでもよい。
【0026】
(親水性シート)
親水性シート24としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。親水性シート24の厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m以上40g/m以下の範囲である。以下、高吸収性シートを構成する各部材について説明する。
【0027】
(ポリウレタン連続多孔体シート)
第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21は、それぞれ、ポリウレタン連続気泡発泡体(以下「軟質ポリウレタンフォーム」ともいう)を主成分として含み、体液拡散性及び柔軟性に優れている。ここで、「主成分として含む」とは、軟質ポリウレタンフォームを全体の50質量%以上含有することを意味する。第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21には、例えば、軟質ポリウレタンフォームを主成分として含有する単層シート、軟質ポリウレタンフォームからなる単層シート等を使用できる。
【0028】
第1のポリウレタン連続多孔体シート21は、例えば、トップシート10を透過してきた体液を吸収体20(高吸収性シート25)全体に万遍なく拡散させる。第2のポリウレタン連続多孔体シート21は、軟質ポリウレタンフォームを含有し、かつ高吸収性シート25の非肌側に位置することから、体液が第1SAP層及び第2SAP層に吸収されるまでの間、体液を一時的に貯留する機能を示し、液戻りを防止する。第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21は柔軟性をも有し、体液吸収前は高吸収性ポリマー12の粒子のざらつき感を緩和し、体液吸収後は高吸収性ポリマー12が膨潤して生じるゴツゴツ感を緩和するので、吸収性物品50の着用感が大きく向上する。
【0029】
軟質ポリウレタンフォームは、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート等の原料化合物、発泡剤、整泡剤、触媒等の添加剤等を混合し、得られた混合物を加熱して発泡させることにより得ることができる。また、原料化合物を加熱下に反応させつつ、気体系の発泡剤を注入してもよい。原料化合物の種類、添加剤の種類と添加量、発泡時の加熱温度、発泡時間、発泡時の加圧力といった反応条件を適宜選択することにより、軟質ポリウレタンフォームの発泡倍率、見かけ密度、引張強度、引張破断伸び、伸長応力、平均摩擦係数(MIU)、摩擦係数変動(MMD)等の各特性を調整できる。例えば、軟質ポリウレタンフォームの発泡倍率は、体液拡散性、柔軟性等の観点から、10倍以上60倍以下の範囲である。また、軟質ポリウレタンフォームは、抽出法、W/Oエマルション法等に従って製造することもできる。
【0030】
第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21の坪量及び見かけ密度は、体液拡散性や柔軟性、液戻りや体液漏れの防止性、通気性や蒸れ等の観点から、それぞれ、坪量が例えば30g/m以上300g/m以下の範囲、又は50g/m以上250g/m以下の範囲から選択され、見かけ密度は、吸収体20全体としての機械的強度、体液吸収後の吸収体20のずり落ち防止、柔軟性等の観点から、100kg/m以上200kg/m以下の範囲、又は120g/m以上180g/m以下の範囲からから選択される。第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21の坪量及び/又は見かけ密度は前述の範囲内で同じでも異なっていてもよい。
【0031】
一実施形態では、第1のポリウレタン連続多孔体シート21の坪量が、第2のポリウレタン連続多孔体シート21の坪量よりも大きく、第1のポリウレタン連続多孔体シート21の見かけ密度が、第2のポリウレタン連続多孔体シート21の見かけ密度よりも小さい。この実施形態によれば、相対的に肌側に配置される第1のポリウレタン連続多孔体シート21が嵩高構造となり、繰り返し吸収時の吸収速度等が向上する。また、肌側から非肌側に向かって、相対的に坪量が低く、かつ見かけ密度が高い第2のポリウレタン連続多孔体シート21を配置することで、体液の流れは、厚さ方向の流れよりも、縦横方向(長手方向)への流れが多くなり、高吸収性シート25又は吸収体20全体の拡散性が向上する。第1のポリウレタン連続多孔体シート21の坪量と嵩密度が、第2のポリウレタン連続多孔体シート21と同一の場合でも、上記の度合いはやや低くなるものの同様の効果が得られる。
【0032】
第1、第2のポリウレタン連続多孔体シート21の厚みは、例えば、1.0mm以上4.0mm以下の範囲、又は1.5mm以上3.2mm以下の範囲である。厚みは、例えば「ハイトゲージ」((株)ミツトヨ製)を用いて、無荷重条件下で測定する。第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21の各厚みは同じでも異なっていてもよい。
【0033】
第1、第2のポリウレタン連続多孔体シート21に含まれる軟質ポリウレタンフォームの骨格表面は親水性でも疎水性でもよいが、体液の濡れ易さ等の観点から、好ましい実施形態では骨格表面は親水性である。なお、親水性を有する骨格としては、ポリオールとポリアルキレンオキシドポリオールとを含有するものが挙げられる。また、疎水性骨格に界面活性剤やエチレンオキシド等に由来する親水性基を導入して親水化したものでもよい。骨格表面が親水性であるか否かは、まず、第1又は第2のポリウレタン連続多孔体シート21から幅10mm以上、長さ10mm以上の寸法で切り出した試料を撓みがないように平面上に静置し、次に、試料にイオン交換水の水滴(0.05mL)を10滴たらし、試料に吸収されるまでの時間を測定し、この時間が5秒以内である場合、又は8滴以上の水滴が吸収された場合を親水性であると判断する。
【0034】
(開孔フィルム)
開孔フィルム22は、図4に示すように、一方の表面から他方の表面に貫通する複数の開孔23を有することで液透過性を示す。開孔フィルム22は、高吸収性シート25において、肌側に位置する肌側シートである第1のポリウレタン連続多孔体シート21と、非肌側に位置する非肌側シートである第2のポリウレタン連続多孔体シート21との中間シートとして設けられ、第1及び第2のポリウレタン連続多孔体シート21間の高吸収性ポリマー12の固着担持層を厚さ方向に第1SAP層(肌側SAP層)と第2SAP層(非肌側SAP層)とに2分して、第1SAP層と第2SAP層との間で体液透過が可能に配置されている。
【0035】
図5に示すように、吸収体20(又は高吸収性シート25)に対して排泄された体液は、開孔フィルム22の抵抗を受けて一旦第1SAP層を面方向(特に長手方向)に広がり、それとほぼ同時に開孔フィルム22の複数の開孔23から第2SAP層にも流れ込み、第1SAP層及び第2SAP層の体液拡散性、特に長手方向への体液拡散性を高めることができる。これとともに、開孔フィルム22は、例えば、体液を吸収した高吸収性ポリマー12が膨潤して結合するゲルブロッキングが広範囲に発生して吸収速度や吸収量等が低下するのを防止する。その結果、複数回の体液吸収を行なった後でも、体液の吸収速度の低下が非常に少なく、漏れを防止しつつ、体液を吸収できる。
【0036】
開孔フィルム22は、前述のように、一方の表面から他方の表面に貫通し、両方の表面に開口を有する複数の開孔23を有している。開孔フィルム22における開孔23の数は、例えば50個/cm以上であり、上限は開孔23の開孔径に応じて、第1SAP層における体液の面方向への流れを作り出す効果と、開孔23による第1SAP層から第2SAP層への体液の拡散効果とが高水準でバランス良く得られる範囲を適宜選択すればよい。また、体液透過性等の観点から、開孔面積率は25%以上50%以の範囲、又は30%以上50%以下の範囲である。開孔23は、例えば、一方の表面の開孔径が他方の表面の開孔径よりも大きい漏斗状の立体形状を有する。本実施形態の開孔フィルム22は、図2及び図3に示すように、肌側表面の開孔径が非肌側表面の開孔径よりも大きくなるように配置され、その配置により、第1SAP層から第2SAP層への体液拡散性が向上し、高吸収性シート25全体としての体液拡散性が向上する。
【0037】
開孔フィルム22において、一方及び他方の表面における開孔径は、例えば0.3mm以上1.5mm以下の範囲から選択される。開孔径が0.3mm未満では、第1SAP層から第2SAP層への体液透過性が低下する傾向がある。開孔径が1.5mmを超えると、体液が透過しやすくなりすぎ、第1SAP層の面方向、特に長手方向の流れを形成できない傾向がある。また、好ましい実施形態では、開孔フィルム22は、肌側面の開孔径が、非肌側面の開孔径よりも、0.03mm以上0.15mm以下大きい。肌側面の開孔径と、非肌側面の開孔径との差を前述の範囲とすることで、開孔フィルム22による第1SAP層での体液の面方向への流れと、体液の第2SAP層への拡散とがバランスよく両立し、高吸収性シート25全体としての体液拡散性が向上する。
【0038】
開孔フィルム22の坪量は、吸収性物品50が硬い感触になって着用感が低下するのを防止する観点等から、例えば10g/m以上100g/m以下の範囲である。開孔フィルム22としては、貫通孔の立体形状が漏斗状であるプラスチックフィルムを特に限定なく使用でき、開孔ポリエチレンフィルム、開孔ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【0039】
(高吸収性ポリマー)
本実施形態では、第1のポリウレタン連続多孔体シート21と開孔フィルム22との間に高吸収性ポリマーが封入されて第1SAP層が形成され、第1SAP層には第1の接合部60により複数の第1のブロック状空間(閉空間)61が形成されている。また、開孔フィルム22と第2のポリウレタン連続多孔体シート21との間に高吸収性ポリマーが封入されて第2SAP層が形成され、第2SAP層には第2の接合部60により複数の第2のブロック状空間(閉空間)61が形成されている。
【0040】
第1SAP層及び第2SAP層には、それぞれの層を面方向に複数のブロック状の空間61に分割し、かつ第1、第2のポリウレタン連続多孔体シート21と開孔フィルム22とを部分的に接合する平面視帯状の第1及び第2の接合部60が縦横に所定の間隔を空けて直線状に設けられている。本実施形態の第1SAP層及び第2SAP層は、吸収性物品50の外縁とは所定の間隔を空けて、該外縁に対して長手方向及び幅方向にほぼ平行に延びて吸収性物品50の外縁形状にほぼ相似する矩形状の閉空間を形成し、さらに該閉空間内を複数本の第1及び第2の接合部60がほぼ平行にかつほぼ等間隔に幅方向に延びて該閉空間を形成する第1及び第2の接合部60に結合し、長手方向に並列された複数の第1SAP層及び第2SAP層がそれぞれ形成される。なお、吸収性物品50の外縁に沿って第1及び第2の接合部60を設けてもよい。
【0041】
第1及び第2の接合部60でそれぞれで区切られた複数の第1及び第2のブロック状(又は矩形状)空間61内には、所定量の高吸収性ポリマー12が封入されている。ブロック状の空間61への高吸収性ポリマー12の封入量は同じでもよく異なっていてもよいが、例えば、前記ブロック状の空間61における高吸収性ポリマー12の坪量として、30g/m以上300g/m以下の範囲から選択するのがよい。これにより、体液の吸収により膨潤した高吸収性ポリマー12が広範囲にわたって結着し、体液の拡散を妨げるゲルブロッキングの発生が防止されるので、体液を繰り返し吸収しても、吸収速度、吸収量等の吸収性能の低下が顕著に少なくなる。
【0042】
第1SAP層及び第2SAP層に設けられたブロック状の空間61の平面視形状は、本実施形態では略矩形であるが、これに限定されず、三角形(特に正三角形)、六角形(特に正六角形)、円形、同心円形等の種々の形状とすることができる。また、第1の接合部60の幅方向寸法、長手方向及び幅方向の各本数や配置等は、ブロック状の空間61への高吸収性ポリマーの封入量等に応じて適宜選択される。第1及び第2の接合部60は、例えば、ホットメルト接着剤を含んで構成され、又はヒートシール、超音波シール等による溶着領域でもよい。
【0043】
本実施形態では、第2SAP層に形成されたブロック状の空間61の数が、第1SAP層に形成されたブロック状の空間61の数よりも多くなるように構成されている。この構成によれば、高吸収性シート25又は吸収体20全体への体液拡散性が一層向上し、ゲルブロッキングの発生を防止しつつ、吸収速度を初期設定に維持し、吸収量を更に増加させることができる。
【0044】
高吸収性シート25に用いられる高吸収性ポリマー12としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0045】
高吸収性ポリマー12は、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマー12を用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0046】
高吸収性ポリマー12を第1及び第2のブロック状空間61内に封入するには、例えば、ホットメルト接着剤が用いられる。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマー12の吸収性及び装着時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m以下の範囲である。
【0047】
<高吸収性シート及び吸収体の製造方法>
本実施形態の高吸収性シート25は、例えば、第1のポリウレタン連続多孔体シート21及び開孔フィルム22をそれぞれ裏返しにて、第1及び第2の接合部60の形成予定領域を残して、各非肌側面に所定のパターンで高吸収性ポリマー12を散布する工程と、必要に応じてホットメルト接着剤を供給して高吸収性ポリマー12を固着担持する工程と、第1のポリウレタン連続多孔体シート21の高吸収性ポリマー12を散布又は固着した非肌側面に開孔フィルム22の肌側面を重ね合わせ、開孔フィルム22の高吸収性ポリマー12を散布又は固着した非肌側面に第2のポリウレタン連続多孔体シート21を重ね合わせ、積層体を得る工程と、必要に応じて該積層体を加圧及び/又は加熱しつつ第1及び第2の接合部60を形成する工程と、を含む製造方法により作製できる。なお、第1及び第2の接合部60は、例えば、ホットメルト接着剤を用いて、又はヒートシール、超音波シール等の溶着方法で形成できる。得られた高吸収性シート25を親水性シート24で前述のように包むことにより、吸収体20が得られる。ここで使用するホットメルト接着剤及びその塗布方法は、高吸収性ポリマー12を固着担持させるホットメルト接着剤と同じである。
【0048】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた通気性又は非通気性の基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0049】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m以上60g/m以下の範囲、又は15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく実施できる。
【0050】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0051】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0052】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの目付は、例えば、13gsm以上20gsm以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0053】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造でき、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0054】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0055】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0056】
(実施例1~2及び比較例1~5)
(吸収性物品の作製)
図2(実施例1、2)、図6(比較例1)、図2(比較例2)、図7(比較例3)、図7(比較例4)又は図8(比較例5)に示す構成を有する吸収性物品を作製した。なお、比較例2の吸収性物品は、中間シート(開孔フィルム)の開孔数を30個/cmとしたものである。
【0057】
肌側に配置される肌側面シート(第1のポリウレタン連続多孔体シート)及び非肌側に配置される非肌側面シート(第2のポリウレタン連続多孔体シート)としてポリウレタン連続気泡発泡体シート(骨格表面が親水性、坪量80g/m、厚さ2.0mm、見かけ密度140kg/m)を用い、中間シートとして開孔フィルム(実施例1、2、比較例1、2)、エアスルー不織布(比較例3)、スパンボンド不織布(比較例4)を用いるか又は中間シートを用いず(比較例5)、高吸収性シートを作製した。得られた高吸収性シートを、スパンボンド不織布(親水性シート、坪量12g/m)でC折りして包んだ、寸法420mm×150mmの吸収体を使用した。
【0058】
また、液透過性のトップシートとしてエアスルー不織布(坪量20g/m)を、液不透過性のバックシートとして通気性ポリエチレンシート(坪量35g/m)を、立体ギャザーとしてスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布をこの順で積層した複合不織布(坪量15g/m)を用いた。トップシート、バックシート、吸収体を一体化する際に、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体肌側面とを接合し、実施例1~2及び比較例1~5の、長手方向寸法480mm、幅方向寸法200mmの吸収性物品を作製した。
【0059】
実施例1~2及び比較例1~5の吸収性物品について、次の評価を実施した。結果を表1に示す。
(総吸収量)
生理食塩水中に5分間浸漬した後、金網上で30秒間水切りし、吸収前後の重量差を計測する。
(繰り返し吸収速度)
底面140×100mm、外径40mm、内径35mm、重量1400gの治具を用いて、荷重下120mlの生理食塩水を10分間隔で3回注水し、3回目の注水分120mlを吸収する時間を測定する。
(液戻り)
吸収速度3回測定終了後、10分後に35gf/cm荷重条件で、55mm径のろ紙に1分間で逆戻り吸収した水分量を測定する。
(拡散長さ)
吸収速度3回測定終了後の生理食塩水を吸収した部分の最大長さを測定する。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から、本実施形態の高吸収性シートを親水性シートでC折りした吸収体を用いることにより、体液吸収量及び繰り返し吸収速度が高い水準に維持され、液戻り防止性にも優れた薄型の吸収性物品が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0062】
10 トップシート
12 高吸収性ポリマー
20 吸収体
21 ポリウレタン連続多孔体シート
22 開孔フィルム
23 開孔
24 親水性シート
25 高吸収性シート
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 弾性伸縮部材
40b シート部材
50 吸収性物品
60 接合部
61 ブロック状空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8