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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ハンドタオル入りフィルムレス収納箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20241127BHJP
   A47K 10/20 20060101ALI20241127BHJP
   A47K 10/42 20060101ALI20241127BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B65D83/08 B
A47K10/20 A
A47K10/42 A
A47K10/16 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021013005
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116697
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0327675(US,A1)
【文献】特開2008-162624(JP,A)
【文献】特開2020-069155(JP,A)
【文献】特開2019-141227(JP,A)
【文献】特開2020-137710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
A47K 10/16-10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のハンドタオルが2プライで互いに重なり合うように折りたたまれたハンドタオル積層体が、取り出し口がフィルムレスである収納箱に収納された、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱であり、
前記ハンドタオルの取り出し方向が、前記ハンドタオルのCD(Cross Direction)方向であり、
前記ハンドタオルの坪量が、14.9g/m以上17.9g/m以下であり、
前記ハンドタオルの紙厚が、0.55mm/10プライ以上0.71mm/10プライ以下であり、
前記ハンドタオルの乾燥横強度が、2.9N/25mm以上6.7N/25mm以下であり、
前記収納箱の長手方向の長さ(x)に対する、前記取り出し口の長手方向の長さ(a)の割合(a/x×100)が、61.7%以上92.5%以下であり、
前記収納箱の長手方向の長さ(x)に対する、前記ハンドタオルの横方向のシート長さ(W)の割合(W/x×100)が、88.1%以上98.1%以下であり、
前記収納箱の短手方向における、前記取り出し口の最長距離である取り出し口の短手方向の長さ(b)が25mm以上62mm以下であり、
前記収納箱から前記ハンドタオルの取り出し抵抗が、下から3組目から30組目までは0.3N以上1.4N以下である、
ハンドタオル入りフィルムレス収納箱。
【請求項2】
前記収納箱の短手方向の長さ(y)に対する、前記取り出し口の短手方向の長さ(b)の割合(b/y×100)が、22.7%以上56.4%以下である、
請求項1に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱。
【請求項3】
前記ハンドタオル1組を展開したときの縦方向のシート長さ(L)、及び前記収納箱の短手方向の長さ(y)が、以下の関係式を満たす、
請求項1又は2に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱。
81.8%≦(L/2)/y×100≦96.1%
【請求項4】
前記ハンドタオルの乾燥時の縦方向の引張強度(DMDT)が、12.7N/25mm以上17.3N/25mm以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱。
【請求項5】
ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記ハンドタオルの2プライのままのサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/秒)で回転させ、前記試料台の振動を振動センサで測定したとき、
前記ティシューソフトネス測定装置TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が、19.1dBVrms以上27.3dBVrms以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱。
【請求項6】
前記収納箱の高さが、30mm以上65mm以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱。
【請求項7】
前記収納箱の長手方向の長さ(x)が、200mm以上260mm以下であり、
前記収納箱の短手方向の長さ(y)が、95mm以上125mm以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱。
【請求項8】
前記収納箱から前記ハンドタオルの取り出し抵抗が、上から3組目から15組目までは0.9N以上2.7N以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製のハンドタオルは、収納箱に挿入されたポップアップ式等、様々な形態で用いられている。このような紙製のハンドタオルは、濡れた対象物の水分をふき取る用途で使用されるため、ティシューと比較して吸水量が高い必要がある。そのため、坪量が高く設計されている。
【0003】
しかし、坪量が高い紙は、一般的にゴワゴワしており、ふき取り時に皮膚に触れた際に触感が悪いため、好まれない。そのため、ゴワゴワ感を低減するためにハンドタオル原紙1枚の坪量を低くし、吸水性を高くするために2プライとすること等によって紙質を調整することが試みられている。
【0004】
また、近年は、マルチスタンド式インターフォルダーによってハンドタオルを高速加工する技術も開発されている。
【0005】
そして、ハンドタオルの積層体を充填する収納箱については、充填されるハンドタオルに埃等の異物が混入することを防止する目的等で、取り出し口の周辺にフィルムが張られているものがある。しかし、近年の環境負荷低減のトレンドから、取り出し口がフィルムレスである収納箱(フィルムレス収納箱)を用いることが好まれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、被包装物がポップアップ式に折りたたまれた衛生用紙であって、衛生用紙としてペーパーハンドタオル等が使用できるフィルム包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-188092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、一般的に普及しているインターフォルダー加工品では、ハンドタオルの取り出し方向がMD(Machine Direction)方向であるのに対し、このマルチスタンド式インターフォルダー加工品では、ハンドタオルの取り出し方向がCD(Cross Direction)方向となる。そのため、2プライのハンドタオルをマルチスタンド式インターフォルダーで加工し、取り出し方向がCD方向である場合、紙1枚の坪量が低く、紙1枚の横強度(CD方向の強度)が弱くなってしまい、ハンドタオルの取り出し方向がMD方向であるインターフォルダー加工品と比較して、取り出し時に破れやすいという問題がある。
【0009】
そして、上述したような、2プライのハンドタオルをマルチスタンド式インターフォルダーによって加工したハンドタオル積層体を、取り出し口がフィルムレスである収納箱(ハンドタオル入りフィルムレス収納箱)に充填した製品は、取り出し時の破れやすさを低減するために取り出し口の大きさを大きくすると、取り出し時にハンドタオルの自重により、ドロップバックが起きやすいという不具合もある。
【0010】
また、取り出し時にハンドタオルが破れる現象やドロップバックが起きないよう、坪量の低いハンドタオルを採用すると、使用時の吸水性を満足させることできないといった不具合が起こる。
【0011】
このように、2プライのハンドタオルをマルチスタンド式インターフォルダーで加工し、取り出し方向がCD方向となるハンドタオル入りフィルムレス収納箱について、ハンドタオルが破れることなく取り出しやすいこと、ドロップバックが起きないこと、及び、ハンドタオルの吸水性が高いことを、実用可能なレベルで両立させることは困難であるのが実情である。
【0012】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、ハンドタオルが破れることなく取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが起こりづらく、さらには、ハンドタオルの吸水性が高い、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した目的を達成するために、マルチスタンド式インターフォルダーによって加工された2プライのハンドタオルの積層体を、取り出し口がフィルムレスである収納箱に充填した製品の場合に、なぜ上述したような不具合が起きるのか、その原因をつぶさに検討した。その結果、以下のことが原因の一つではないかと考えた。
【0014】
ハンドタオルをマルチスタンド式インターフォルダーによって加工した場合、収納箱からハンドタオルを取り出す際の取り出し方向が、ハンドタオルのCD方向となるため、ハンドタオルの縦方向(すなわち、取り出し口に対して垂直である方向、つまりハンドタオルのCD方向に相当)のコシが弱い。その結果、ハンドタオルを収納箱から取り出す際に、取り出し口から顔を出すべき次のハンドタオルが、取り出し方向に向けてしっかりと起立できないため、取り出しにくくなってしまう。さらには、ハンドタオルの自重でフィルムレスの取り出し口の中に落ち込み、ドロップバックが生じてしまうものと考えた。
【0015】
本発明者は、かかる考えに基づき改良を重ねた結果、紙製のハンドタオルが2プライで互いに重なり合うように折りたたまれたハンドタオル積層体が、取り出し口がフィルムレスである収納箱に収納された、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱であり、ハンドタオルの取り出し方向が、ハンドタオルのCD(Cross Direction)方向であり、ハンドタオルの坪量が、14.9g/m以上17.9g/m以下であり、ハンドタオルの紙厚が、0.55mm/10プライ以上0.71mm/10プライ以下であり、ハンドタオルの乾燥横強度が、2.9N/25mm以上6.7N/25mm以下であり、収納箱の長手方向の長さ(x)に対する、取り出し口の長手方向の長さ(a)の割合(a/x×100)が、61.7%以上92.5%以下であり、収納箱の長手方向の長さ(x)に対する、ハンドタオルの横方向のシート長さ(W)の割合(W/x×100)が、88.1%以上98.1%以下である、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱とすることに知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0017】
〔1〕
紙製のハンドタオルが2プライで互いに重なり合うように折りたたまれたハンドタオル積層体が、取り出し口がフィルムレスである収納箱に収納された、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱であり、前記ハンドタオルの取り出し方向が、前記ハンドタオルのCD(Cross Direction)方向であり、前記ハンドタオルの坪量が、14.9g/m以上17.9g/m以下であり、前記ハンドタオルの紙厚が、0.55mm/10プライ以上0.71mm/10プライ以下であり、前記ハンドタオルの乾燥横強度が、2.9N/25mm以上6.7N/25mm以下であり、前記収納箱の長手方向の長さ(x)に対する、前記取り出し口の長手方向の長さ(a)の割合(a/x×100)が、61.7%以上92.5%以下であり、前記収納箱の長手方向の長さ(x)に対する、前記ハンドタオルの横方向のシート長さ(W)の割合(W/x×100)が、88.1%以上98.1%以下である、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
〔2〕
前記収納箱の短手方向の長さ(y)に対する、前記取り出し口の短手方向の長さ(b)の割合(b/y×100)が、22.7%以上56.4%以下である、〔1〕に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
〔3〕
前記ハンドタオル1組を展開したときの縦方向のシート長さ(L)、及び前記収納箱の短手方向の長さ(y)が、以下の関係式を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
81.8%≦(L/2)/y×100≦96.1%
〔4〕
前記ハンドタオルの乾燥時の縦方向の引張強度(DMDT)が、12.7N/25mm以上17.3N/25mm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
〔5〕
ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記ハンドタオルの2プライのままのサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/秒)で回転させ、前記試料台の振動を振動センサで測定したとき、前記ティシューソフトネス測定装置TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が、19.1dBVrms以上27.3dBVrms以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
〔6〕
前記収納箱の高さが、30mm以上65mm以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
〔7〕
前記収納箱の長手方向の長さ(x)が、200mm以上260mm以下であり、前記収納箱の短手方向の長さ(y)が、95mm以上125mm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
〔8〕
前記収納箱から前記ハンドタオルの取り出し抵抗が、下から3組目から30組目までは0.3N以上1.4N以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
〔9〕
前記収納箱から前記ハンドタオルの取り出し抵抗が、上から3組目から15組目までは0.9N以上2.7N以下である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のハンドタオル入りフィルムレス収納箱である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハンドタオルが破れることなく取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが起こりづらく、さらには、ハンドタオルの吸水性が高い、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の斜視図である。
図2図2は、本実施形態のハンドタオルを展開した状態の平面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
図4図4は、第2実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
図5図5は、第3実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
図6図6は、第4実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
図7図7は、取り出し抵抗の測定方法を説明するための概念図である。
図8図8は、インターフォルダー加工によって製造された、従来のハンドタオル入りフィルムレス収納箱の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0021】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0023】
図1は、第1実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の斜視図であり、図2は、本実施形態のハンドタオルを展開した状態の平面図であり、図3は、第1実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
【0024】
第1実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱1は、紙製のハンドタオル10が2プライで互いに重なり合うように折りたたまれたハンドタオル積層体が、取り出し口21がフィルムレスである収納箱20(フィルムレス収納箱)に収納された、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱1であり、ハンドタオル10の取り出し方向(矢印F)が、ハンドタオル10のCD方向であり、ハンドタオル10の坪量が、14.9g/m以上17.9g/m以下であり、ハンドタオル10の紙厚が、0.55mm/10プライ以上0.71mm/10プライ以下であり、ハンドタオル10の乾燥横強度が、2.9N/25mm以上6.7N/25mm以下であり、収納箱20の長手方向の長さ(x)に対する、取り出し口21の長手方向の長さ(a)の割合(a/x×100)が、61.7%以上92.5%以下であり、収納箱20の長手方向の長さ(x)に対する、ハンドタオル10の横方向のシート長さ(W)の割合(W/x×100)が、88.1%以上98.1%以下である。
【0025】
ハンドタオル入りフィルムレス収納箱1は、ハンドタオル10の取り出し方向(矢印F)が、ハンドタオル10のCD方向となるように、ハンドタオル積層体がフィルムレスである収納箱20に充填されたものである。このような位置関係でハンドタオル積層体が収納箱20に充填されるのは、例えば、紙製のハンドタオル10が2プライで互いに重なり合うようにマルチスタンド式インターフォルダー加工によって折りたたまれたハンドタオル積層体が、取り出し口21がフィルムレスである収納箱20に収納された場合である。なお、CD方向とは、ハンドタオル10の製造時の流れ方向(MD方向;Machine Direction)に垂直な方向である。
【0026】
ここで、理解の一助として、本実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱1(図1参照)と、インターフォルダー加工によって製造された従来のハンドタオル入りフィルムレス収納箱100(図8参照)との相違点を説明する。
【0027】
図8は、インターフォルダー加工によって製造された、従来のハンドタオル入りフィルムレス収納箱の斜視図である。
【0028】
図8に示すハンドタオル入りフィルムレス収納箱100は、ハンドタオル200がインターフォルダー加工によって製造されているため、収納箱300の取り出し口310からハンドタオル200の取り出し方向(矢印F)はMD方向となっている。しかし、本実施形態のハンドタオル入りフィルムレス収納箱1は、ハンドタオル10がマルチスタンド式インターフォルダー加工によって製造されているため、ハンドタオル10の取り出し方向(矢印F)がCD方向となっている点で相違する。
【0029】
つまり、マルチスタンド式インターフォルダー加工は、高速加工できるという製造上の利点を有するが、ハンドタオル10の取り出し方向(矢印F)がCD方向となるため、2プライのハンドタオルである場合、紙1枚の坪量が低く、横強度(CD方向強度)が弱い傾向にあるため、紙1枚の坪量が高い1プライに比べて破れやすいという問題を有している。
【0030】
さらに、ハンドタオル10の取り出しやすさについても改善の余地がある。特に、収納箱20に収納されたハンドタオル10を使い始める際(例えば、取り出し口21の上から15組目まで)は、ハンドタオル10とフィルムレスである取り出し口21との摩擦抵抗が高いために、ハンドタオル10が取り出しにくい傾向にある。
【0031】
またさらに、ハンドタオル10を取り出す際の収納箱20のドロップバックについても改善の余地がある。特に、収納箱20に収納されたハンドタオル10を使い切ろうとする際(例えば、取り出し口21の下から30組目まで)は、取り出し口21から残クリップまでの距離が長くなり、ドロップバックが起こりやすくなる。
【0032】
しかしながら、本実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱1によれば、このような問題が起きることがなく、ハンドタオル10をマルチスタンド式インターフォルダーによって加工し、これを収納箱20に充填した製品であっても、ハンドタオル10が破れることなく取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが起こりづらく、さらには、ハンドタオル10の吸水性が高いものとすることができる。
【0033】
以下、本実施形態のハンドタオル10及び収納箱20について説明する。
【0034】
(ハンドタオル)
【0035】
ハンドタオル10は、例えば略V字状に、2枚ずつ重なり合うように折りたたまれて、ハンドタオル積層体となっている。すなわち、プライ数は2プライである。かかるハンドタオル積層体が、収納箱20に収納されている。
【0036】
なお、本実施形態において、ハンドタオル10の横方向(符号W参照)は、ハンドタオル10のMD方向である。そして、ハンドタオルの縦方向(符号L参照)は、ハンドタオル10のCD方向であり、ハンドタオル10の取り出し方向(図1及び図2の矢印F参照)である。そして、図2に示すハンドタオル10の縦方向のシート長さ(L)は、ハンドタオル積層体において折りたたまれていたハンドタオル10を展開した状態の縦方向の長さである。
【0037】
ハンドタオル10の坪量は、14.9g/m以上17.9g/m以下である。好ましくは16.0g/m以上17.5g/m以下である。坪量は、JIS P 8124に準拠して測定することができる。
【0038】
ハンドタオル10の紙厚は、0.55mm/10プライ以上0.71mm/10プライ以下である。好ましくは0.59mm/10プライ以上0.67mm/10プライ以下である。紙厚は、JIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度でシックネスゲージ(例えば、尾崎製作所製のアップライト ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK R1-B型」)を用い、測定子に3.7kPaの圧力を加えて測定することができる。
【0039】
坪量や紙厚を上記範囲とすることにより、ハンドタオル10が破れることなく収納箱20から一層取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが一層起こりづらく、さらには、ハンドタオル10の吸水性が一層高いものとすることができる。
【0040】
ハンドタオル10の乾燥時の横方向の引張強度(DCDT、乾燥横強度)は、2.9N/25mm以上6.7N/25mm以下である。好ましくは3.8N/25mm以上5.9N/25mm以下である。乾燥横強度を上記範囲とすることで、ハンドタオル10を収納箱20から取り出す際に破れにくく、取り出し時のドロップバックを効果的に防止できる。
【0041】
ハンドタオル10の乾燥時の縦方向の引張強度(DMDT、乾燥縦強度)は、好ましくは12.7N/25mm以上17.3N/25mm以下であり、より好ましくは13.8N/25mm以上16.2N/25mm以下である。乾燥縦強度を上記範囲とすることで、手拭き用途で使用した際に適度な柔らかさが感じられ、取り出し時のドロップバックを効果的に防止できる。
【0042】
乾燥横強度及び乾燥縦強度は、JIS P 8113の引張試験方法に基づいてそれぞれ測定することができる。
【0043】
ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置したハンドタオル10の2プライのままのサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/秒)で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したとき、ティシューソフトネス測定装置TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)は、好ましくは19.1dBVrms以上27.3dBVrms以下であり、より好ましくは21.2dBVrms以上25.4dBVrms以下である。TS750値を上記範囲とすることで、隣り合うハンドタオル同士の擦れを制御することができ、これにより、ハンドタオル10を破れることなく収納箱20から一層取り出しやすく、かつ、取り出し時のドロップバックを一層効果的に防止できる。
【0044】
ここで、ティシューソフトネス測定装置TSAについて説明する。ティシューソフトネス測定装置TSAは、紙試料(サンプル)の上から、回転したブレード付きロータを押付けたときの各種センサで検知した振動データを、振動解析してパラメータ化(TS値)することにより、紙のソフトネス(手触り感)を定量評価するものであり、ドイツのエムテック社(Emtec Electronic GmbH、日本代理店は三洋貿易社)製の商品名である。
【0045】
また、振動解析してパラメータ化(TS値)するソフトウェアは、emtec measurement systemを用いる。本ソフトウェアには、各種アルゴリズム(例えば、Base Tissue、Facial、TP等)が備えられ、TS7、TS750、D(剛性)をソフトウェア上で自動的に取得し、これらTS7、TS750、D及び、坪量、厚さ、プライ数等から各種アルゴリズムの種類によって、HF(ハンドフィール)値が計算される。本実施形態では、このうちのTS750を用いており、上記測定条件を満たせば、アルゴリズムは何を使用してもよく、TS750の値はアルゴリズムの種類によって変わることはない。
【0046】
また、本実施形態の好ましい態様として、ハンドタオル10のTWA(Total Water Absorbency)の下限については、80g/m以上であるものが挙げられ、より好ましい態様としては100g/m以上であるものが挙げられ、更に好ましい態様としては105g/m以上であるものが挙げられる。また、TWAの上限については、本実施形態では特に限定するものではないが、例えば、140g/m以下であるものが挙げられる。本実施形態のハンドタオル入りフィルムレス収納箱1によれば、収納箱20からハンドタオル10を破れることなく取り出しやすく、かつ、取り出し時にはドロップバックが起こりづらいという利点を満たしつつ、この程度の十分な吸水性を有するハンドタオル10とすることができる。その結果、例えば、手洗い後に水分をふき取る際、ハンドタオル1枚当たりの水分吸収量を多くでき、使用するハンドタオル10の枚数を少なくすることが可能である。なお、TWAは後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0047】
ハンドタオル10の材料としては、パルプを主成分として含有するものであり、好ましくは50質量%以上のパルプを含有する。パルプとしては、木材パルプ、古紙パルプ、非木材パルプ等が挙げられる。ハンドタオル10は、パルプとして木材パルプ100質量%からなるものであってもよいし、木材パルプの他に、古紙パルプや非木材パルプを含んでいてもよい。木材パルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)であることが好ましい。古紙パルプとしてはミルクカートン等の紙製液体飲料容器由来が好ましい。また、パルプ以外の成分として、填料、合成繊維、天然繊維等を含んでいてもよい。
【0048】
具体的には、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20質量%以上50質量%以下と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50質量%以上80質量%以下とを含む木材パルプであることが好ましく、NBKP25質量%以上45質量%以下とLBKP55質量%以上75質量%以下とを含む木材パルプであることがより好ましく、NBKP30質量%以上40質量%以下とLBKP60質量%以上70質量%以下とを含む木材パルプであることが更に好ましい。
【0049】
また、上記のパルプ比率の木材パルプ100質量部に対し、古紙パルプを50質量部程度まで含有させてもよい。古紙パルプは品質のバラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するため、木材パルプに対する配合量を30質量部以下とすることが好ましく、15質量部以下とすることがより好ましく、5質量部以下とすることが更に好ましく、古紙パルプを配合しないことがより更に好ましい。
【0050】
なお、ハンドタオル10に適正な強度を確保するため、通常の手段で原料配合した後、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解処理としては、種箱原料のろ水度(csf)が350mL以上650mL以下、好ましくは400mL以上600mL以下、より好ましくは450mL以上550mL以下である。なお、乾燥紙力増強剤を使用してもよく、湿潤紙力増強剤を使用することが好ましい。
【0051】
(収納箱)
【0052】
収納箱20は、例えば、紙製の略直方体の収納箱であり、カートン等と呼ばれることもある。そして、収納箱20には、その天面に、フィルムレスの取り出し口21が設けられており、そこからハンドタオル10を取り出す(引き出す)ことができる。なお、収納箱20については後述するが、本実施形態では、取り出し口21等の寸法形状等は特に限定されず、ハンドタオル10を引き出すことができればよい。収納箱20及び取り出し口21の寸法形状は、本実施形態の条件を満たす範囲内であれば、ハンドタオル10の寸法形状や用途等を考慮して、適宜好適な寸法形状とすることができる。なお、以下に述べる収納箱20の寸法形状は、特に断りがない限り、外寸である。
【0053】
収納箱20の長手方向の長さ(x)に対する、取り出し口21の長手方向の長さ(a)の割合(a/x×100)は、61.7%以上92.5%以下である。好ましくは72.5%以上88.7%以下である。この割合は、取り出し口21の長手方向の開口率の指標として用いることができる。この割合を上記範囲とすることで、ハンドタオル10を破れることなく収納箱20から取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが起こりづらい。
【0054】
収納箱20の長手方向の長さ(x)に対する、ハンドタオル10の横方向のシート長さ(W)の割合(W/x×100)は、88.1%以上98.1%以下である。好ましくは91.6%以上97.3%以下である。この割合を上記範囲とすることで、ハンドタオル10を破れることなく収納箱20から取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが起こりづらい。
【0055】
収納箱20の短手方向の長さ(y)に対する、取り出し口21の短手方向の長さ(b)の割合(b/y×100)は、好ましくは22.7%以上56.4%以下であり、より好ましくは32.6%以上48.1%以下である。この割合は、取り出し口21の短手方向の開口率の指標として用いることができる。この割合を上記範囲とすることで、ハンドタオル10を破れることなく収納箱20から一層取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが一層起こりづらい。さらには、長手方向の開口率(a/x×100参照)と短手方向の開口率(b/y×100参照)の両方が上記した範囲であることが、より好ましい。
【0056】
ハンドタオル1組(すなわち、2プライ)を展開したときの縦方向のシート長さ(L)、及び収納箱20の短手方向の長さ(y)が、以下の関係式(1)を満たすことが好ましく、関係式(2)を満たすことがより好ましい。このL/2は、例えば、ハンドタオル10を2つ折りにした場合の縦方向の長さに相当する。そして、(L/2)/y×100は、yに対する(L/2)の割合(%)に相当する。
81.8%≦(L/2)/y×100≦96.1%・・・(1)
86.4%≦(L/2)/y×100≦93.3%・・・(2)
この割合を上記範囲とすることで、ハンドタオル10を破れることなく収納箱20から一層取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが一層起こりづらい。
【0057】
収納箱20の長手方向の長さ(x)は、好ましくは200mm以上260mm以下であり、より好ましくは211mm以上244mm以下である。また、収納箱20の短手方向の長さ(y)は、好ましくは95mm以上125mm以下であり、より好ましくは102mm以上118mm以下である。本実施形態において、収納箱20の長手方向の長さ及び短手方向の長さの両方が上記範囲を満たすことがより好ましい。この長手方向の長さ(x)は、長手方向のカートンサイズに相当し、この短手方向の長さ(y)は、短手方向のカートンサイズに相当する。収納箱20のサイズを上記範囲とし、取り出し口21の長手方向や短手方向の開口率、ハンドタオル10の長さの割合を上記範囲とすることで、ハンドタオル10を破れることなく収納箱20から一層取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが一層起こりづらい。
【0058】
また、収納箱20の高さ(h)は、好ましくは30mm以上65mm以下であり、より好ましくは37mm以上55mm以下である。収納箱20の高さを上記範囲とすることで、ハンドタオル10の取り出しやすさが一層向上するとともに、取り出し時のドロップバックを一層効果的に防止できる。なお、この高さ(h)は、カートン高さ等と呼ばれることもある。
【0059】
そして、収納箱20の取り出し口21の長手方向の長さ(a)は、上述した寸法形状の条件を考慮して、適宜好適な長さとすることができるが、特に、収納箱20の長手方向の長さ(x)との相対比等を考慮すると、好ましくは140mm以上210mm以下である。
【0060】
また、収納箱20の取り出し口21の短手方向の長さ(b)は、上述した寸法形状の条件を考慮して、適宜好適な長さとすることができるが、特に、収納箱20の短手方向の長さ(y)との相対比等を考慮すると、好ましくは25mm以上62mm以下である。
【0061】
さらに、ハンドタオル10の寸法形状(例えば、横方向のシート長さ及び縦方向のシート長さ)も、収納箱20及びその取り出し口21の寸法形状の条件等を考慮して、適宜好適な寸法形状とすることができる。また、ハンドタオル10の寸法は、収納箱20の寸法や材質等に合わせて適合させることもできる。
【0062】
そのような観点から、ハンドタオルの横方向(MD方向に相当)のシート長さ(W)は、好ましくは200mm以上240mm以下であり、より好ましくは208mm以上228mm以下である。このような長さとすることによって、取り出し性が一層良好となるとともに、手拭き用途で使用する際に好適なサイズとなる。このシート長さ(W)は、横方向のシートサイズに相当する。
【0063】
またさらに、ハンドタオル10の縦方向(CD方向に相当)のシート長さ(L)は、好ましくは180mm以上220mm以下であり、より好ましくは190mm以上208mm以下である。このような長さとすることによって、取り出し性が一層良好となるとともに、手拭き用途で使用する際に好適なサイズとなる。このシート長さ(L)は、縦方向のシートサイズに相当する。また、L/2は、ハンドタオル10を2プライで折りたたんだときのシートサイズに相当する。
【0064】
収納箱20からハンドタオル10の取り出し抵抗(収納箱20からハンドタオル10を引き出すときの抵抗)は、上から3組目から15組目までは0.9N以上2.7N以下であることが好ましく、1.3N以上2.1N以下であることがより好ましい。
【0065】
収納箱20からハンドタオル10の取り出し抵抗(収納箱20からハンドタオル10を引き出すときの抵抗)は、下から3組目から30組目までは0.3N以上1.4N以下であることが好ましく、0.5N以上1.0N以下であることがより好ましい。
【0066】
ここで、上から3組目から15組目までの取り出し抵抗は、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱1の使い始めの抵抗に対応し、下から3組目から30組目までの取り出し抵抗は、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱1の使い終わりの抵抗に対応する。使い始めの抵抗が高いと取り出しにくくなり、ハンドタオル10の取り出し時にハンドタオル10が破れてしまうことがある。また、使い終わりの抵抗が低いとドロップバックが発生しやすくなる。この点、使い始めの抵抗及び使い終わりの抵抗について上述のように制御することで、使い始めにハンドタオル10が破れることなく一層引き出しやすくなり、また、使い終わりで発生しやすいドロップバックを一層効果的に防止できる。なお、上から1組目から2組目までは、3組目以降と比較して折り目やシワの感じが異なり、取り出し抵抗値が大きく変動してしまうことがあり、使い始めの抵抗の指標として適した平均値とならない傾向にあるため、本実施形態では上から3組目から30組目までの取り出し抵抗に着目したものである。また、下から1組目から2組目までは、下から続いてくる次なるハンドタオル10がなく、3組目以降と比較して取り出し抵抗値が大きく変動してしまうことがあり、使い終わりの抵抗の指標として適した平均値が得られない傾向にあるため、本実施形態では下から3組目から30組目までの取り出し抵抗に着目したものである。
【0067】
上述した、収納箱20からのハンドタオル10の取り出し抵抗は、以下の測定方法によって測定することができる。
【0068】
図7は、取り出し抵抗の測定方法を説明するための概念図である。
【0069】
まず、ハンドタオル積層体が収納箱20に収納されているハンドタオル入りフィルムレス収納箱1を6箱準備する。1箱から、収納箱20の紙片20a(MD方向12mm、CD方向20mm)を2枚採取する。残りの5箱のうちの1箱について、ハンドタオル10の最初の2枚を静かに取り出して取り除く。
【0070】
次に、上から3組目を、シートの幅方向の中心に、図7に示すように、収納箱20の内面がハンドタオル10に当たるようにして、ハンドタオル10の上縁を収納箱20の紙片20aで挟む。収納箱20の紙片20aの上からクリップC(例えば、大塚商会社製、商品名「TANOSEE ダブルクリップ 小 口幅19mm」)で挟む。クリップCのサイズは、高さ11mm、幅19mmであり、収納箱20の紙片20aの長さは12mm、幅20mmである。なお、クリップCのサイズや紙片20aのサイズは、これらに限られない。
【0071】
そして、このようにして挟んだ状態でテンシロン引張り試験機を用いて引張り速度1000mm/分でハンドタオル10を引き上げて、収納箱20から引き出すまでにかかる抵抗値の最大値を計測する。同様に、4組目から15組目まで、下から3組目から30組目までについても同様に測定し、それぞれの平均値を取り出し抵抗とする。残りの4箱についても同様に測定を行い、5箱の平均値を取り出し抵抗とする。
【0072】
なお、最上部のシート(上側1組目)は、シート幅に沿って折られていることが好ましい。シートが折られていることで、1組目を引き出す際に、シートが破れにくくなる。
【0073】
収納箱20に収納されるハンドタオル10の入り数(組数)は、好ましくは60組以上140組以下であり、より好ましくは80組以上120組以下である。組数は、例えば、収納箱20の高さを考慮して適宜決定することができる。組数を上記範囲とすることにより、ハンドタオル10を破れることなく収納箱20から一層取り出しやすく、かつ、取り出し時にドロップバックが一層起こりづらくすることができる。
【0074】
収納箱20の重量は、好ましくは20g以上55g以下である。この重量は、より好ましくは30g以上45g以下である。収納箱20の重量は、収納されるハンドタオルの坪量、紙厚、サイズ、入り組数等により、適宜決定することができる。
【0075】
なお、取り出し口21の形状は、本実施形態の効果が得られる範囲内であれば特に限定されず、収納するハンドタオル10の寸法形状、組数等を考慮して好適な形状を選択することができる。その際、取り出し口21の長手方向の長さ(a)は、上面視において、収納箱20の長手方向(符号x参照)と平行な方向において、端部からもう一方の端部までの最長距離をいう。そして、取り出し口21の短手方向の長さ(b)は、上面視において、収納箱20の短手方向(符号y参照)と平行な方向において、端部からもう一方の端部までの最長距離をいう。
【0076】
以下、取り出し口21の形状の変形例を示し、その場合の取り出し口の長手方向の長さ(a)、取り出し口の短手方向の長さ(b)、収納箱の長手方向の長さ(x)、及び収納箱の短手方向の長さ(y)の関係を説明する。
【0077】
図4は、第2実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
【0078】
第2実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱2は、収納箱30の取り出し口31として、長手方向(符号x参照)に沿って細長の開口が配置され、かつ、その中央部には略円形状の開口が形成されている。この場合、取り出し口31の長手方向の長さ(a)は、取り出し口31の長手方向における最長距離である。また、取り出し口31の短手方向の長さ(b)は、取り出し口31の短手方向における最長距離である。
【0079】
図5は、第3実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
【0080】
第3実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱3は、収納箱40の取り出し口41として、長手方向(符号x参照)に沿って細長の開口が配置され、かつ、その両端に略円形状の開口が形成されている。この場合、取り出し口41の長手方向の長さ(a)は、取り出し口41の長手方向における最長距離である。また、取り出し口41の短手方向の長さ(b)は、取り出し口41の短手方向における最長距離である。
【0081】
図6は、第4実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱の上面図である。
【0082】
第4実施形態に係るハンドタオル入りフィルムレス収納箱4は、収納箱50の取り出し口51として、収納箱50の上面視において、その天面の略対角線上に細長の開口が配置されている。この場合、取り出し口51の長手方向の長さ(a)は、取り出し口51の長手方向における最長距離である。また、取り出し口51の短手方向の長さ(b)は、取り出し口51の短手方向における最長距離である。
【0083】
<製造方法>
【0084】
上述したハンドタオル10は、例えば、抄紙機を用いて抄造し、その後、必要に応じてカレンダー処理等を施すことによって得ることができる。また、エンボス加工等を施してもよい。そして、マルチスタンド式インターフォルダー加工機を用いてハンドタオル10を互いに重なりあうように折りたたみ、必要に応じて圧縮したりして、ハンドタオル積層体を得ることができる。このようにして得られたハンドタオル積層体は、カートナーや包装機等によって収納箱20、30、40、50に収納包装されて、ハンドタオル入りフィルムレス収納箱1、2、3、4を得ることができる。
【実施例
【0085】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
【0087】
まず、表1に示す材料を用い、抄紙機を用いて紙製のハンドタオル10を製造する工程を行い、表1に示す物性及び寸法形状等を有する、図2に示す矩形状の紙製のハンドタオル10を作製した。続いて、得られたハンドタオル10を、マルチスタンド式インターフォルダー加工によって、2プライで略V字状に交互に折りたたむように積層し、ハンドタオル積層体(ハンドタオル120組)を得た。なお、ハンドタオル10の素材は、NBKP35質量%、LBKP60質量%、古紙パルプ5質量%であった。
【0088】
(ハンドタオル入りフィルムレス収納箱1の作製)
【0089】
得られたハンドタオル積層体を、図1及び図3に示す紙製の収納箱20に収容し、表1に示す物性及び寸法形状等を有するハンドタオル入りフィルムレス収納箱1を作製した。なお、特に断りがない限り、表中の寸法形状は外寸である。
【0090】
<実施例2~9、比較例1~6>
【0091】
表1及び表2に記載した条件となるよう変更した点以外は、実施例1と同様にしてハンドタオル、ハンドタオル積層体、及びハンドタオル入りフィルムレス収納箱をそれぞれ作製した。
【0092】
<物性の測定>
【0093】
各実施例及び各比較例の各種物性は、以下の方法に準拠して測定した。
【0094】
(坪量)
【0095】
ハンドタオルの坪量は、JIS P 8124に準拠して測定した。
【0096】
(紙厚)
【0097】
ハンドタオル10の紙厚は、JIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度でシックネスゲージ(尾崎製作所製のアップライト ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK R1-B型」)を用い、測定子に3.7kPaの圧力を加えて測定した。
【0098】
(乾燥縦強度(DMDT)、乾燥横強度(DCDT))
【0099】
ハンドタオル10の乾燥時の縦方向の引張強度(乾燥縦強度、DMDT)及び乾燥時の横方向の引張強度(乾燥横強度、DCDT)は、JIS P 8113の引張試験方法に基づいてそれぞれ測定した。
【0100】
(TSAのTS750)
【0101】
ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置したハンドタオルの2プライのままのサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/秒)で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したとき、ティシューソフトネス測定装置TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)は、上述したドイツのエムテック社(Emtec Electronic GmbH、日本代理店は三洋貿易社)製のTSA装置を用いた。
【0102】
(取り出し抵抗値)
【0103】
ハンドタオル10の取り出し抵抗の「上3~15組」は、収納箱20に収納されたハンドタオル10の上から3組目から15組目までの取り出し抵抗(収納箱20からハンドタオル10を引き出すときの抵抗)である。そして、取り出し抵抗の「下3~30組」は、収納箱20に収納されたハンドタオル10の下から3組目から30組目までの取り出し抵抗(収納箱20からハンドタオル10を引き出すときの抵抗)である。これらの取り出し抵抗は、図7に示す取り出し抵抗の測定方法に基づき、上述した測定手法に準拠して測定した。そして、以下に述べるように、各実施例及び各比較例の条件に応じて、取り出し抵抗を測定した。
【0104】
なお、ハンドタオル10の取り出し方向(図1の矢印F参照)は、ハンドタオル10のCD方向であり、ハンドタオル10の縦方向(図2の符号L参照)であった。
【0105】
なお、特に断りがない限り、本実施例における測定・評価は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持した後に行った。
【0106】
<評価>
【0107】
各実施例及び各比較例のハンドタオル入りフィルムレス収納箱について、以下の要領で官能評価を行った。
【0108】
(ハンドタオルが破れることなく取り出しやすいことの評価)
【0109】
収納箱に収納されたハンドタオルの最初の1組から15組までを取り出した(すなわち、取り出し口の直下にある1組目から順に15組目までを連続して取り出した)際の、ハンドタオルの引き出しやすさを評価した。具体的には、50名を対象として、各人が下記基準に基づき、1点~5点の範囲で点数評価した。
・5点:収納箱からハンドタオルを取り出す際、破れることなく特にスムーズに取り出すことができた。
・4点:収納箱からハンドタオルを取り出す際、破れることなくスムーズに取り出すことができた。
・3点:収納箱からハンドタオルを取り出す際、破れることはなかったが、引き出しにくかった。
・1点~2点:収納箱からハンドタオルを取り出す際、取り出しにくく、1組以上の破れが発生した。
そして、50名の点数評価の算術平均をとり、下記の基準に基づき、「×」「〇」「◎」で総合評価した。
「◎」:50名の点数評価の平均点が4.0点以上であった。
「○」:50名の点数評価の平均点が3.0点以上4.0点未満であった。
「×」:50名の点数評価の平均点が3.0点未満であった。
【0110】
(ドロップバックの評価)
【0111】
収納箱に収納されたハンドタオルの終わりから1組目から30組目までを取り出した(すなわち、使い終わりの30組を連続して取り出した)際に、30組のうち何組がドロップバックしたかをカウントした。例えば、表中「0」と記載されているのは、30組取り出したが、ドロップバックしたものはなかった(0組であった)ことを示す。
【0112】
(吸水性の評価)
【0113】
吸水性能の指標としてTWAを測定した。まず、ハンドタオルを76×76mmの正方形の試験片に切断し、その乾燥質量(W1)を測定した。そして、この試験片を蒸留水中に2分間浸漬した後、試験片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(RH100%)で吊るし、30分放置後の質量(W2)を測定した。そして、(W2-W1)の値を算出し、この値をハンドタオル1m当りに換算したものをTWA(g/m)とした。
【0114】
各実施例及び各比較例の条件及び評価結果を、表1及び表2に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
以上より、本実施例のハンドタオル入りフィルムレス収納箱は、ハンドタオルが破れることなく取り出しやすく、かつ、取り出し時に起こるドロップバックが少なく、さらには、ハンドタオルの吸水性が高いことが少なくとも確認された。
【符号の説明】
【0118】
1、2、3、4:ハンドタオル入りフィルムレス収納箱、
10:ハンドタオル、
20、30、40、50:収納箱、
20a:収納箱の紙片、
21、31、41、51:取り出し口、
C:クリップ、
F:取り出し方向、
W:ハンドタオルの横方向のシート長さ(MD方向)、
L:ハンドタオルの縦方向のシート長さ(CD方向=取り出し方向)、
x:収納箱の長手方向の長さ(横方向)、
y:収納箱の短手方向の長さ(縦方向)、
h:収納箱の高さ、
a:取り出し口の長手方向の長さ(横方向)、
b:取り出し口の短手方向の長さ(縦方向)、
100:(従来の)ハンドタオル入りフィルムレス収納箱、
200:(従来の)ハンドタオル、
300:(従来の)収納箱、
310:(従来の収納箱の)取り出し口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8