(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】異種金属部品接合方法
(51)【国際特許分類】
B21K 25/00 20060101AFI20241127BHJP
H01M 50/552 20210101ALI20241127BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20241127BHJP
F16B 4/00 20060101ALI20241127BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20241127BHJP
H01M 50/564 20210101ALI20241127BHJP
【FI】
B21K25/00 Z
H01M50/552
B21J5/06 B
F16B4/00 N
F16B4/00 J
H01M50/562
H01M50/564
(21)【出願番号】P 2021013609
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】手島 政和
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭44-023221(JP,B1)
【文献】特開2013-099771(JP,A)
【文献】特開2006-017131(JP,A)
【文献】特開昭55-156633(JP,A)
【文献】特開2014-046322(JP,A)
【文献】国際公開第2007/058293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 25/00
H01M 50/543
B21J 5/06
F16B 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合する異種金属部品接合方法において、
逆テーパー状の袋穴部を有する第1金属部材を受け型で保持し、
第1金属部材の袋穴部を塞ぐようにして第2金属部材の端部を配置し、
この状態で第2金属部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2金属部材の端部が塑性変形し第1金属部材の袋穴部へ流動し充填させて第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合する異種金属部品接合方法であって、
板状の頭部と、これに一体成形された軸部と、この頭部の上面から突出するように一体成形された凸部と、この凸部に設けられる袋穴部とから成る予備成形部材を準備し、その凸部を上方から圧縮することにより、袋穴部の内周壁を逆テーパー状に変形させて接合前の第1金属部材を製造することを特徴とする異種金属部品接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属部材同士を接合して成る異種金属部品接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、異種金属同士を接合した部品としては、特許文献1に示すものがある。この異種金属接合体は、リチウムイオン電池の負極端子であり、アルミニウム材で成る板状体の凹部に、銅材で成る棒状部材を圧入することにより接合して成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記接合方法によって接合された負極端子は、圧入による接合であるため、接合界面の密着性に乏しく、端子としては電気伝導率が劣り、また強度面においても抜け強度が脆弱なものとなる問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて創成されたものであり、密着性に優れ、強固に接合可能な異種金属部品接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合する異種金属部品接合方法において、逆テーパー状の袋穴部を有する第1金属部材を受け型で保持し、第1金属部材の袋穴部を塞ぐようにして第2金属部材の端部を配置し、この状態で第2金属部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2金属部材の端部が塑性変形し第1金属部材の袋穴部へ流動し充填させて第1金属部材と第2金属部材とを機械的に接合する異種金属部品接合方法によって解決できる。
【0007】
なお、板状の頭部と、これに一体成形された軸部と、この頭部の上面から突出するように一体成形された凸部と、この凸部に設けられる袋穴部とから成る予備成形部材を準備し、その凸部を上方から圧縮することにより、袋穴部の内周壁を逆テーパー状に変形させて接合前の第1金属部材を製造することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって製造された異種金属接合体は、第1金属部材の逆テーパー部が抜け方向に対し引っかかりになるため、高い抜け強度が得られる。また、第1金属部材の袋穴部には第2金属部材の端部が完全に充填されるため、高い密着性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明によって接合される前の異種金属部材の形状を示す図である。
【
図2】本発明による接合過程の状態を示す図である。
【
図5】本発明によって接合される前の第1金属部材の製造方法を示す第1工程図である。
【
図6】本発明によって接合される前の第1金属部材の製造方法を示す第2工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明である異種金属部品接合方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、接合前の部材の形状を示すものであり、
図1(b)に示す銅材料でなる第1金属部材10と、
図1(a)に示すアルミニウム材でなる第2金属部材20とが接合される。これら第1金属部材10および第2金属部材20は、予め別個に成形され準備されるものであり、例えば、冷間圧造加工によって成形される。
【0012】
第1金属部材10は、平板状の頭部11と、これに一体成形される軸部12とから構成される。また、頭部11の上面は、有底の袋穴部13を有している。この袋穴部13は、その内周壁が逆テーパー状に成形されており、この逆テーパー部14は、底部に向かうに従って、袋穴部13が拡がる方向に傾斜している。さらに、袋穴部13の開口縁部15は円弧状に成形されている。
【0013】
ここで、上記第1金属部材10の製造方法としては、まず、
図5に示す形状に予備成形された予備成形部材10aを準備する。この予備成形部材10aは、板状の頭部11と、これに一体成形された軸部12と、この頭部11の上面から突出するように一体成形された凸部13aとから成る。
【0014】
また、上記予備成形部材10aの凸部13aには、袋穴部13bが設けられており、その内周壁は垂直方向にストレート状に成形されている。
【0015】
続いて、
図6に示すように、上記予備成形部材10aを受け型1aで保持した状態で、パンチピン3aを下方に前進させる。これにより、予備成形部材10aの凸部13aが上方から圧縮され、袋穴部13bの内周壁が逆テーパー状に変形する。このようにして、上記第1金属部材10の袋穴部13が成形される。
【0016】
上記第1金属部材10の製造方法によれば、切削加工等を用いずとも、プレス加工だけで、内周壁がテーパ状の袋穴部13を成形することが可能になる。
【0017】
第2金属部材20は、円柱状を成しており、その端部21は、上記第1金属部材10の袋穴部13の開口面積よりも十分に大きく成形されている。
【0018】
図2は、上記第1金属部材10と第2金属部材20との接合方法を示す図である。受け型1は、段付きの挿入孔1aを有しており、第1金属部材10の頭部11を段付き部に吊下し、挿入孔1aに第1金属部材10の軸部12を遊嵌するようにして、第1金属部材10を挿入孔1aに保持するように構成されている。
【0019】
続いて、第2金属部材20の端部21が上記第1金属部材10の袋穴部13を塞ぐようにして設置される。そして、パンチピン3を下方に前進させて、第2金属部材20のもう一方の端部22側から第2金属部材20を軸方向に圧縮することにより、第2金属部材20の端部21が塑性変形により流動し、第1金属部材10の袋穴部13へ充填される。これとともに、第2金属部材20は圧縮力により扁平する。
【0020】
続けて、
図3に示すように、第1金属部材10の袋穴部13に、第2金属部材20の端部21が完全に充填されるまで、かつ第2金属部材20が平板状になるまで圧縮することにより、第1金属部材10と第2金属部材20は接合される。
【0021】
接合が完了すると、受け型1の挿入孔1aの下方に配置されたノックアウトピン2を上方へ前進させることにより、異種金属接合体は、受け型1から排出される。
【0022】
上記接合方法によって製造された異種金属接合体は、第1金属部材10の逆テーパー部14が抜け方向に対し引っかかりになるため、高い抜け強度が得られる。また、第1金属部材10の袋穴部13には第2金属部材20の端部21が完全に充填されるため、高い密着性が得られる。さらに、第1金属部材10の開口縁部15が円弧状に成形されているので、塑性変形した第2金属部材20の端部21が第1金属部材10の袋穴部13へ流動し易いようになっている。
【0023】
このような作用効果を有する異種金属接合体は、例えば、リチウムイオン電池(図示せず)の負極端子への用途として好適であり、第1金属部材10の軸部12がリチウムイオン電池内部の集電板(図示せず)に接続され、第2金属部材20はリチウムイオン電池の外部に露出しバスバー(図示せず)に接続される。本発明によって製造された異種金属接合体は、高い密着性で接合されているので、電気導電性に優れるため、リチウムイオン電池の負極端子に利用された場合、電気抵抗値を低く抑えることができる。
【0024】
図4は、本発明の変形例を示すものである。上述の実施例との相違点は、接合前の第2金属部材20の形状であり、その他について上述の実施形態と同じである。具体的には、接合前の第2金属部材20は、端部21に凸部21aを有している。この凸部21aを第1金属部材10の袋穴部13に挿入した状態で第2金属部材20を圧縮し接合する。このようにすることで、第1金属部材10の袋穴部13には第2金属部材20の端部21が確実に完全に充填される。
【0025】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0026】
1 受け型
1a 挿入孔
2 ノックアウトピン
3 パンチピン
10 第1金属部材
11 頭部
12 軸部
13 袋穴部
14 逆テーパー部
15 開口縁部
20 第2金属部材
21,22 端部
21a 凸部