(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】マット材、排ガス浄化装置及びマット材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20241127BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241127BHJP
D01F 9/08 20060101ALI20241127BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20241127BHJP
【FI】
F01N3/28 311N
F01N3/28 ZAB
B01D53/94 300
D01F9/08 A
B01J35/57 E
(21)【出願番号】P 2021020048
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-061313(JP,A)
【文献】特開2015-222064(JP,A)
【文献】特開2003-214156(JP,A)
【文献】特開2010-096171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0150791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維からなるマット材であって、
前記マット材は、第1主面と、前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを有し、
前記第1主面及び前記第2主面の少なくとも一方が、表面加工が施されて、被加工面に起毛した無機繊維を有し、
前記起毛した無機繊維は、繊維塊を形成しており、前記繊維塊の中心に無機繊維の低集積部が存在していることを特徴とするマット材。
【請求項2】
前記第1主面及び前記第2主面が、前記表面加工が施されて表面状態が変化したものである請求項1に記載のマット材。
【請求項3】
前記繊維塊は、前記被加工面から部分的に離間している請求項1に記載のマット材。
【請求項4】
前記被加工面は、前記繊維塊を複数有し、
複数の前記繊維塊は、同一方向の端部が前記被加工面から離間している請求項3に記載のマット材。
【請求項5】
前記第1主面及び前記第2主面のうちの前記表面加工が施された被加工面の摩擦係数は、マット材の嵩密度が0.3g/cm
3、25℃において、0.21~0.45である請求項1~4のいずれかに記載のマット材。
【請求項6】
前記第1主面及び前記第2主面のうちの前記表面加工が施された被加工面近傍の嵩密度は、前記マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度より小さい請求項1~5のいずれかに記載のマット材。
【請求項7】
前記第1主面及び前記第2主面のうちの前記表面加工が施された被加工面近傍の嵩密度は、0.05~0.18g/cm
3であり、
前記マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度は、0.11~0.20g/cm
3である請求項1~6のいずれかに記載のマット材。
【請求項8】
前記第1主面及び前記第2主面のうちの前記表面加工が施された被加工面近傍の嵩密度は、前記マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度に対し、45~95%である請求項1~7のいずれかに記載のマット材。
【請求項9】
排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、
前記排ガス処理体と前記金属ケーシングとの間に配置され、前記排ガス処理体を保持するマット材と、を備える排ガス浄化装置であって、
前記マット材は、請求項1~8のいずれかに記載のマット材であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項10】
無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、
前記マットの第1主面と、前記マットの前記第1主面と反対側に位置する第2主面との少なくとも一方に、表面加工を施して表面状態を変化させる表面加工工程と、
を含むことを特徴とするマット材の製造方法であって、
前記表面加工工程において、前記第1主面及び前記第2主面の少なくとも一方主面に斜め方向から針を刺してから引っ張り上げ、前記無機繊維を引っ掻き出す
ことにより、起毛した前記無機繊維が繊維塊を形成し、前記繊維塊の中心に無機繊維の低集積部が存在するようにする、マット材の製造方法。
【請求項11】
前記マット準備工程において、前記マットをニードリング法により製造する請求項10に記載のマット材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット材、排ガス浄化装置及びマット材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に配設される保持シール材(マット材)とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材(マット材)は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆う金属ケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体と金属ケーシングとの間から排ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
このような排ガス浄化装置に高圧の排ガスが流入すると、排ガス処理体が排ガスに押され金属ケーシングから脱落してしまうという問題がある。
【0005】
特許文献1には、保持シール材の保持性能を向上するために、保持シール材を構成する無機繊維の表面に無機粒子を付着し、保持シール材の摩擦係数を向上させることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、保持シール材の保持性能を向上するために、保持シール材を構成する無機繊維を圧縮して有機バインダにより固定することにより表面に溝を形成し、保持シール材の摩擦係数を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-213463号公報
【文献】特開2017-31870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが特許文献1に記載の保持シール材について保持シール材と金属ケーシングとの間の摩擦係数を測定した結果、想定よりも摩擦係数が小さくなっていた。
本発明者らはこの理由について以下のように推定した。
【0009】
特許文献1に記載されたような保持シール材は、その主面が金属ケーシングと接するように使用される。そして、保持シール材が金属ケーシングと接する面と金属ケーシングの表面の間で摩擦力が発生すると考えられる。
しかし、保持シール材の表面を微視的に見ると、保持シール材を構成する無機繊維は互いに絡み合っているために、保持シール材の表面は一様な面をなしているものではない。
そして、保持シール材の表面を微視的に見た場合に、保持シール材の表面における無機繊維が占める面積はマット材の面積に比べると少ない。そのため、実際には金属ケーシングの表面に対して無機繊維は点接触のような形で接しているものと考えられる。
【0010】
また、特許文献1では無機繊維の表面に無機粒子を配置している。粒子は面に対して点接触するので、無機繊維の表面に無機粒子が配置されたとしても、保持シール材は金属ケーシングの表面に対して点接触で接するものと考えられる。
【0011】
保持シール材が金属ケーシングの表面に点接触で接していると、保持シール材と金属ケーシングの表面が実際に接する面積が小さくなる。この場合、保持シール材と金属ケーシングの間の摩擦係数は、保持シール材と金属ケーシングが面接触していると想定した場合の摩擦係数よりも小さくなる。
【0012】
すなわち、上記のような理由により、特許文献1に記載の保持シール材を使用した場合に、保持シール材と金属ケーシングの間の摩擦係数が想定よりも小さくなるものと考えられる。
【0013】
また、無機繊維に無機粒子を付着させることは、製造工程の複雑化をまねき、製造コストが増加してしまう。
【0014】
また、本発明者らが特許文献2に記載の保持シール材について保持シール材と金属ケーシングとの間の摩擦係数を測定した結果、やはり摩擦係数を向上させる効果は確認できなかった。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、表面の摩擦係数を向上することができるマット材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明のマット材は、無機繊維からなるマット材であって、上記マット材は、第1主面と、上記第1主面と反対側に位置する第2主面とを有し、上記第1主面及び上記第2主面の少なくとも一方が、表面加工が施されて表面状態が変化したものであることを特徴とする。
【0017】
本発明のマット材は、第1主面及び第2主面の少なくとも一方が、表面加工が施されて表面状態が変化したものであることから、表面の、特に第1主面及び第2主面のうちの表面加工が施された被加工面の摩擦係数を向上することができる。
また、無機粒子といった追加材料を必要とせず、製造工程もシンプルであるため、製造コストの削減が可能である。
【0018】
本発明のマット材では、上記第1主面及び上記第2主面が、上記表面加工が施されて表面状態が変化したものであることが好ましい。
各主面が、表面加工が施された被加工面であることから、各主面にて高い摩擦係数を有するマット材とすることができる。
【0019】
本発明のマット材では、上記第1主面及び上記第2主面のうちの上記表面加工が施された被加工面は、起毛した無機繊維を有することが好ましい。
これにより、摩擦係数を向上するとの効果がより好適に発揮される。
より詳細に説明すると、被加工面が起毛した無機繊維を有すると、摩擦が発生する界面において繊維配向はランダム配向へと強制的に変化することになる。そのため、外力に対し、無機繊維が動き難くなり、段階ズレが抑制され、保持力を向上させることが可能となる。その結果、摩擦係数が効果的に向上する。
本発明者らが測定した結果、起毛した無機繊維を主面に有するマット材は、特許文献1に記載されたような無機粒子が付着したマット材に対して、同等以上の摩擦力を有することを確認している。
【0020】
なお、ここで「段階ズレ」とは、摩擦発生界面において無機繊維1本1本が徐々にズレて(移動して)しまうことによって、マット材全体としての摩擦抵抗が低くなることを意味する。
【0021】
本発明のマット材では、上記起毛した無機繊維は、繊維塊を形成しており、上記繊維塊は、上記被加工面から部分的に離間していることが好ましい。
【0022】
本発明のマット材では、上記被加工面は、上記繊維塊を複数有し、複数の上記繊維塊は、同一方向の端部が上記被加工面から離間していることが好ましい。
このようなマット材は、起毛装置等の処理装置を用いて作製可能であるため、量産性に優れたマット材とすることができる。
【0023】
本発明のマット材では、上記第1主面及び上記第2主面のうちの上記表面加工が施された被加工面の摩擦係数は、マット材の嵩密度が0.3g/cm3、25℃において、0.21~0.45であることが好ましい。
【0024】
本発明のマット材では、上記第1主面及び上記第2主面のうちの上記表面加工が施された被加工面近傍の嵩密度は、上記マット材の厚さ方向中央近傍における嵩密度より小さいことが好ましい。
【0025】
本発明のマット材では、上記第1主面及び上記第2主面のうちの上記表面加工が施された被加工面近傍の嵩密度は、0.05~0.18g/cm3であり、上記マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度は、0.11~0.20g/cm3であることが好ましい。
【0026】
本発明のマット材では、上記第1主面及び上記第2主面のうちの上記表面加工が施された被加工面近傍の嵩密度は、上記マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度に対し、45~95%であることが好ましい。
【0027】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、上記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、上記排ガス処理体と上記金属ケーシングとの間に配置され、上記排ガス処理体を保持するマット材と、を備える排ガス浄化装置であって、上記マット材は、本発明のマット材であることを特徴とする。
【0028】
上述のように、本発明のマット材は、表面の摩擦係数の向上効果を有している。そのため、排ガス処理体が高い保持力で保持されてなる排ガス浄化装置とすることができる。
【0029】
本発明のマット材の製造方法は、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、上記マットの第1主面と、上記マットの上記第1主面と反対側に位置する第2主面との少なくとも一方に、表面加工を施して表面状態を変化させる表面加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明のマット材の製造方法では、上記表面加工工程において、上記第1主面及び上記第2主面の少なくとも一方に、起毛処理を施すことが好ましい。
【0031】
本発明のマット材の製造方法では、上記マット準備工程において、上記マットをニードリング法により製造することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明のマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すマット材に表面加工を施す前の状態を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、粗さのある面を平面に荷重Wで押さえつけ横方向に力Fを加えた状態での接触機構を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すマット材の被加工面の一部を拡大して模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、表面加工されていないニードルマットの一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のマット材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2のマット材の被加工面を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、マット材の摩擦係数測定装置を示す概略図である。
【
図10】
図10は、マット材の摩擦係数測定装置を示す概略図である。
【
図11】
図11は、実施例及び比較例におけるマット材の摩擦係数の測定結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例2のマット材の被加工面をマイクロスコープにより観察した写真である。
【0033】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のマット材について詳述する。
本発明のマット材は、無機繊維からなるマット材であって、上記マット材は、第1主面と、上記第1主面と反対側に位置する第2主面とを有し、上記第1主面及び上記第2主面の少なくとも一方が、表面加工が施されて表面状態が変化したものであることを特徴とする。
【0034】
図1は、本発明のマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1には、平面視矩形である本発明のマット材1を示す。
マット材1の平面視形状は矩形に限定されるものではなく、使用する場所に合わせて他の形状であってもよい。
また、マット材1を対象物に巻き付ける際に、端部同士が嵌合するように、マット材1の長手方向の一方の端部2には凸部2aが設けられており、マット材1の長手方向の他方の端部3に凹部3aが設けられている。
このような凸部2a及び凹部3aが設けられていると、マット材1を後述する排ガス浄化装置に配置した際に、シール性が向上する。
なお、本発明のマット材は、マット材の端部に凸部及び凹部を有していなくてもよい。
また、マット材の端部の形状はL字形状であって、マット材を対象物に巻き付けた際に端部同士が嵌合するようになっていてもよい。
【0035】
マット材1は、無機繊維からなるマット材である。
無機繊維は特に限定されず、アルミナ繊維、アルミナ-シリカ繊維、シリカ繊維、生体溶解性繊維、グラスウール、ロックウール等が挙げられる。これらの中では、アルミナ-シリカ繊維であることが好ましい。
これらの無機繊維は耐熱性が高く、このような無機繊維により形成されたマット材は、温度変化によって形状変化しにくい。
【0036】
さらに、無機繊維がアルミナ-シリカ繊維である場合、アルミナとシリカの組成比は、重量比でアルミナ(Al2O3):シリカ(SiO2)=60:40~80:20であることが好ましく、アルミナ(Al2O3):シリカ(SiO2)=70:30~74:26であることがより好ましい。
【0037】
無機繊維の平均繊維長は1~150mmであることが好ましく、10~80mmであることがより好ましい。
無機繊維の平均繊維長が1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、無機繊維同士の交絡が不充分となり、マット材の強度が得られにくくなり、マット材の形状保持性が低下しやすくなる。
また、無機繊維の平均繊維長が150mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、マット材を構成する繊維本数が減少し、マット材の緻密性が低下する。その結果、マット材のせん断強度が低くなる。
【0038】
無機繊維の平均繊維径は、1~20μmであることが好ましく、2~15μmであることがより好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。
無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、破断荷重が低く、衝撃等により無機繊維が破断されやすくなる。
無機繊維の平均繊維径が20μmを超えると、繊維内部の欠陥が出来やすく無機繊維の強度が低下し、排ガス処理体を保持するマット材としての面圧値が低くなる。
【0039】
無機繊維の平均繊維長及び平均繊維径は、マット材のSEM(走査型電子顕微鏡)観察において視野内の任意の無機繊維を100本観察することにより求める。
【0040】
マット材1は、
図1に示すように、第1主面4と、第1主面4と反対側に位置する第2主面5とを有し、第1主面4及び第2主面5は、表面加工が施されて表面状態が変化したものである。
これにより、マット材1の表面加工が施された面である被加工面6の摩擦係数を向上することができる。
また、マット材1は、無機粒子といった追加材料を用いずに簡便な製造工程によって低コストにて作製可能である。
【0041】
図2は、
図1に示すマット材に表面加工を施す前の状態を模式的に示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、マット材1の第1主面4及び第2主面5は、表面加工が施されることによって表面状態が変化している。
【0042】
マット材1は、第1主面4及び第2主面5の一方のみが、表面加工が施された被加工面6であってもよいが、
図1及び
図2に示すように、マット材1の第1主面4及び第2主面5は、表面加工が施されることによって表面状態が変化していることが好ましい。
すなわち、各主面4、5が被加工面6であることが好ましい。
これにより、各主面4、5にて高い摩擦係数を有するマット材とすることができる。
【0043】
なお、各主面4、5が被加工面6である場合、第1主面4及び第2主面5には、互いに異なる種類の表面加工が施されてもよいが、通常、同種の表面加工(好適には起毛処理)が施される。
【0044】
図1に示すように、第1主面4及び第2主面5のうちの表面加工が施された被加工面6は、起毛した無機繊維10を有することが好ましい。
これにより、摩擦係数を向上するとの効果がより好適に発揮される。
このような被加工面6は、上記表面加工として起毛処理を施すことによって効果的に形成することができる。
【0045】
ここで、
図3を用いて、起毛した無機繊維10の作用と、その効果についてより詳細に説明する。
まず、マット材のような一般的な弾性体において、保持力発生のメカニズムは下記の通りとなる。
図3は、粗さのある面を平面に荷重Wで押さえつけ横方向に力Fを加えた状態での接触機構を示す模式図である。
F(保持力)は、W(面圧)×μ(摩擦係数)で表現することが一般的であるが、マット材のような弾性体の場合は、
図3に示すように、弾性体Eの各突起は、平面Pに荷重Wで押さえつけられると、その接触圧力p
nにより突起先端が変形し、接触面積A
nの接触面を形成するため、下記(1)式のように、摩擦が発生する真の接触点(各突起)のせん断力τ
n×A
nの総和が、F(保持力)となる。
F=τ
1×A
1+τ
2×A
2+τ
3×A
3+・・・=Στ
n×A
n (1)
ここで、τ
nは、各突起の平均的なせん断力を示し、nは、各突起の番号を示す。
そのため、各突起の段階ズレが起きると、その突起の応力が緩和してせん断力が減少ないし消失するため、F(保持力)は低下してしまう。
【0046】
なお、弾性体の摩擦係数μMは、下記(2)式で表される。
μM=μK+C(μS-μK)W-1/3 (2)
ここで、μKは、動摩擦係数を示し、μSは、静止摩擦係数を示し、Wは、荷重を示し、Cは、剛性を示す。
【0047】
それに対して、本発明のマット材の被加工面が起毛した無機繊維を有すると、摩擦が発生する界面において繊維配向はランダム配向へと強制的に変化することになる。そのため、外力に対し、無機繊維が動き難くなり、段階ズレが抑制され、保持力Fを向上させることが可能となる。その結果、摩擦係数が効果的に向上する。
【0048】
図4は、
図1に示すマット材の被加工面の一部を拡大して模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、起毛した無機繊維10は、繊維塊11を形成しており、繊維塊11は、被加工面6から部分的に離間していることが好ましい。
【0049】
なお、ここで「繊維塊」とは、複数の無機繊維がまとまって一体となった繊維集合体を意味する。
繊維塊11は、被加工面6の無機繊維が針に引っ掛けられて被加工面6から部分的に引き剥がされることによって形成されたものである。
したがって、繊維塊11と、それ以外の無機繊維(例えばマット材の厚さ方向中央の無機繊維)とでは、基本的には繊維配向の方向が異なるのみである。
ただし、繊維塊11は、針に引っ掛けられて形成されるため、
図4に示すように、通常では、その中心に無機繊維の低集積部12が存在している。すなわち、繊維塊11の中心部は、その周囲に比べて無機繊維の密度が低くてもよい。
繊維塊11の中心が低集積部12であることによって、摩擦係数をより効果的に向上することが可能である。他方、繊維塊11が中心に低集積部12を有さずに全体の集積度合い(密度)が一様であると、繊維塊11が固い塊となってしまい、摩擦係数の向上効果を効果的に得られないおそれがある。
また、低集積部12が存在することによって、排ガス浄化装置の製造工程における排ガス処理体とマット材の組付け時に繊維塊11が押圧のショックを緩和し、マット材本体が壊れてしまうのを抑制することができる。
他方、繊維塊11が中心に低集積部12を有さず固い塊であると、組付け時に繊維塊11がマット材本体を押圧してマット材本体の無機繊維を壊してしまうおそれがある。
【0050】
図4に示したように、マット材の被加工面6は、繊維塊11を複数有し、複数の繊維塊11は、同一方向Dの端部13が被加工面6から離間していることが好ましい。
すなわち、ある方向Dにおける繊維塊11の一方の端部13が被加工面6から離間し、当該方向Dにおける繊維塊11の他方の端部14が被加工面6から離間せずに一体化していることが好ましい。
このようなマット材は、起毛装置等の処理装置を用いて作製可能であるため、量産性に優れたマット材とすることができる。
【0051】
なお、
図4では、被加工面6から離間している端部13が配向する方向Dが、マット材の長手方向である場合を示しているが、方向Dは特に限定されず、適宜設定可能である。
【0052】
本発明のマット材では、第1主面及び第2主面のうちの上記表面加工が施された被加工面の摩擦係数は、マット材の嵩密度が0.3g/cm3、25℃において、0.21~0.45であることが好ましく、0.23~0.45であることがより好ましい。
【0053】
なお、各主面が被加工面である場合、第1主面及び第2主面の摩擦係数は、互いに異なっていてもよいが、同じ処理装置を用いて簡便に製造する観点からは、実質的に同じであることが好ましい。
【0054】
本発明のマット材では、被加工面近傍の嵩密度は、マット材の厚さ方向中央近傍における嵩密度より小さいことが好ましい。
【0055】
より具体的には、本発明のマット材では、被加工面近傍の嵩密度は、0.05~0.18g/cm3であり、マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度は、0.11~0.20g/cm3であることが好ましく、被加工面近傍の嵩密度は、0.05~0.14g/cm3であり、マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度は、0.11~0.20g/cm3であることがより好ましい。
より具体的には、本発明のマット材では、被加工面近傍の嵩密度は、マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度に対し、45~95%であることが好ましく、60~90%であることがより好ましい。
ここで、被加工面近傍の嵩密度とは、マット材を厚さ方向で3等分したときの被加工部(被加工面を含む部分)の嵩密度であり、マット材の厚さ方向中央近傍の嵩密度とは、マット材を厚さ方向で3等分したときの中央部(被加工面を含まない部分)における嵩密度である。
【0056】
なお、各主面が被加工面である場合、第1主面及び第2主面近傍の嵩密度は、互いに異なっていてもよいが、同じ処理装置を用いて簡便に製造する観点からは、実質的に同じであることが好ましい。
【0057】
本発明のマット材は、抄造法により作製されたマット(以下、抄造マットと言う)に表面加工を施したものでもよいが、ニードリング法により製造されたマット(以下、ニードルマットと言う)に表面加工を施したものであることが好ましい。
ニードルマットを用いた場合は、抄造マットを用いた場合に比べて、より効果的に摩擦係数の向上効果を得ることが可能である。
以下、その理由について、
図5及び6を用いて詳述する。
図5は、表面加工されていないニードルマットの一例を模式的に示す断面図である。
図6は、本発明のマット材の一例を模式的に示す断面図である。
なお、
図5及び
図6は、ニードルパンチング処理されていない部分の断面を示す。
また、
図6中の右上には、マット材の被加工面を部分的に拡大した図を示す。
【0058】
ニードルマットは、基本的に、クロスレイヤーで繊維を積層させて作製されるため、
図5に示すように、マットの面内方向に配向した無機繊維10がマットの厚み方向に重なるように配向される。
そのため、各無機繊維10が動きやすく、摩擦が発生する界面で段階ズレが起きやすく、保持力が低下し易いと考えられる。
【0059】
しかしながら、
図6に示すように、ニードリング法により製造され、被加工面6が起毛処理されたマット材1では、
図6の拡大図に示すように、摩擦が発生する界面において無機繊維10の配向はランダム配向へと強制的に変化することになる。そのため、外力に対し、無機繊維が動き難くなり、段階ズレを効果的に抑制でき、保持力Fを顕著に向上させることが可能となる。
【0060】
それに対して、抄造マットは、ニードルマットに比べて、繊維配向の偏りが少ないため、そもそも無機繊維が動き難く、段階ズレが起きにくい。そのため、ニードルマットに比べて、起毛処理による摩擦係数の向上効果が小さくなる。
【0061】
次に、本発明のマット材の製造方法について説明する。
本発明のマット材の製造方法は、無機繊維からなるマットを準備するマット準備工程と、上記マットの第1主面と、上記マットの上記第1主面と反対側に位置する第2主面との少なくとも一方に、表面加工を施して表面状態を変化させる表面加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0062】
無機繊維からなるマットは、種々の方法により得ることができ、例えば、抄造法又はニードリング法により製造することができるが、ニードリング法により製造することが好ましい。これにより、上述のように、マットを抄造法で作製する場合に比べて、より効果的に摩擦係数の向上効果を得ることが可能である。
抄造法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
無機繊維を開繊し、開繊した無機繊維を溶媒中に分散させて混合液とする。底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込み、混合液中の溶媒を脱溶媒処理することで無機繊維集合体を得る。そして、無機繊維集合体を乾燥することによりマットを得ることができる。
ニードリング法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、焼成処理を施すことによりマットを得ることができる。この焼成処理の前後のいずれかにニードルパンチング処理を行い、無機繊維同士を交絡させる。
【0063】
マットの厚さは特に限定されないが、2~40mmであることが好ましく、5~20mmであることがより好ましい。
マットの厚さが2mm未満であると、マット材の保持力が不足して、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。
マットの厚さが40mmを超えると、マットの柔軟性が失われるので、マット材を排ガス処理体に巻き付ける際に扱いづらくなる。また、マット材に巻きじわや、割れが生じやすくなる。
【0064】
続いて、上記マットの第1主面と、上記マットの上記第1主面と反対側に位置する第2主面との少なくとも一方に、表面加工を施して表面状態を変化させる表面加工工程を行う。
【0065】
本発明のマット材の製造方法では、上記表面加工工程において、上記第1主面及び上記第2主面の少なくとも一方に、起毛処理を施すことが好ましい。
これにより、第1主面及び/又は第2主面に起毛した無機繊維を発生させることが可能であるため、上述のように、摩擦係数を向上するとの効果がより好適に発揮される。
起毛処理を施す具体的な手段は、特に限定されず、例えば、起毛装置等の処理装置や、紙やすり等が挙げられる。人間の手によって針で起毛処理を施こしてもよい。
量産性の観点からは、起毛装置等の処理装置を用いて起毛処理を施すことが好ましい。
起毛装置は、例えば、針が多数設けられた針布を巻いたローラを1以上備えており、そのローラを回転させながらローラ上にマットを走らせることによってマットの主面から無機繊維を引っ掻き出す。
【0066】
以下、本発明の排ガス浄化装置について説明する。
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、上記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、上記排ガス処理体と上記金属ケーシングとの間に配置され、上記排ガス処理体を保持するマット材と、を備える排ガス浄化装置であって、上記マット材は、本発明のマット材であることを特徴とする。
【0067】
上述のように、本発明のマット材は、表面の摩擦係数の向上効果を有している。そのため、本発明の排ガス処理装置を、排ガス処理体が高い保持力で保持されてなる排ガス浄化装置とすることができる。
【0068】
図7は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、本発明の排ガス浄化装置100は、金属ケーシング50と、金属ケーシング50に収容された排ガス処理体40と、排ガス処理体40及び金属ケーシング50の間に配設され、排ガス処理体40を保持するマット材1とを備えている。
【0069】
排ガス処理体40は、多数のセル41がセル壁42を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。セルはその一方の端部が封止材43により封止されている。
なお、金属ケーシング50の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0070】
上述した構成を有する排ガス浄化装置100を排ガスが通過する場合について、
図7を参照して以下に説明する。
図7に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(
図7中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)40の排ガス流入側端面に開口した一のセル41に流入し、セル41を隔てるセル壁42を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁42で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面に開口した他のセル41から流出し、外部に排出される。
【0071】
図7に示す排ガス浄化装置100では、マット材1は本発明のマット材であり、マット材1の第1主面及び第2主面は、いずれも表面加工(好適には起毛処理)が施されて表面状態が変化した被加工面であることが好ましい。
【0072】
本発明の排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0073】
また、ケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状、ケーシング断面において略楕円型形状、略多角形型形状等を好適に用いることができる。
【0074】
なお、
図7に示す排ガス処理体40は、セル41のいずれか一方の端部が封止材43で封止されているフィルタであるが、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルの端部が封止されていなくてもよい。このような排ガス処理体は、触媒担体として好適に使用することが可能となる。
【0075】
排ガス処理体40は、炭化珪素や窒化珪素などの非酸化物多孔質セラミックからなっていてもよく、アルミナ、コージェライト、ムライト等の酸化物多孔質セラミックからなっていてもよい。これらの中では、炭化珪素であることが好ましい。
【0076】
排ガス処理体40の断面におけるセル密度は、特に限定されないが、好ましい下限は、31.0個/cm2(200個/inch2)、好ましい上限は、93.0個/cm2(600個/inch2)である。また、より好ましい下限は、38.8個/cm2(250個/inch2)、より好ましい上限は、77.5個/cm2(500個/inch2)である。
【0077】
排ガス処理体40には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が好ましく、この中では、白金がより好ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0078】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
ニードリング法により、無機繊維(ムライト繊維)からなるマットを作製した。
このマットを一辺50mmの正方形に打ち抜いた。
マットの厚さは8.5mmであり、マットを構成する無機繊維の繊維長は1~150mm、平均繊維長は10mm、平均繊維径は5.5μmであった。
【0080】
続いて、正方形に打ち抜いたマットの一方の主面を、紙ヤスリ(番手150)で均等に加工する起毛処理を3回繰り返すことによって、実施例1のマット材を作製した。
【0081】
(実施例2)
図8は、実施例2のマット材の被加工面を模式的に示す平面図である。
実施例1で使用したマットを一辺50mmの正方形に打ち抜いた。
続いて、正方形に打ち抜いたマットの一方の主面に直径1mmの針を用いて起毛処理を施すことによって、実施例2のマット材を作製した。
詳細には、該主面に手で斜め方向から針を2mm程度の深さまで刺してから引っ張り上げ、該主面の無機繊維を引っ掻き出す処理を、
図8に示すように該主面全体にわたって約3mmピッチ間隔で行った。
【0082】
(比較例1)
実施例1で使用したマットを一辺50mmの正方形に打ち抜いたものをそのまま用いた。
【0083】
(摩擦係数の測定)
以下の方法により、実施例及び比較例のマット材について、摩擦係数を測定した。
図9及び
図10は、マット材の摩擦係数測定装置を示す概略図である。
摩擦係数測定装置200では、装置の左右に、ステンレス鋼製の平板(左板210及び右板220)がそれぞれ対向するように配置されている。
【0084】
まず、左板210、マット材1a、ステンレス鋼製の平板(中板230)、マット材1b、右板220の順になるように、2枚のマット材1a及び1bと中板230とを配置した。
左板210とマット材1aの間、及び、右板220とマット材1bの間(板とマット材の間)で滑らないように、左板210及び右板220の表面には突起部材240を設けた。
なお、実施例のマット材は、起毛処理を施した面を中板230の側に配置した。
マット材1aは左板210及び中板230で挟まれ、マット材1bは中板230及び右板220で挟まれる。
また、中板230はロードセルとなっており、中板に加わる荷重を測定することができる。
【0085】
まず、左板210及び右板220に対して中板230の方向に圧力をかけ、マット材の嵩密度(GBD)が0.3g/cm3となるまで圧縮した。
その圧縮状態で10分保持(緩和)した。
【0086】
次に、マット材と中板の間の温度が25℃、100℃、200℃又は300℃の状態で、中板230を
図10中の矢印で示す向き(上方)に25mm/minの速度で移動させ、マット材の主面にせん断応力を印加した。
図10は中板を移動させた状態を示している。
なお、中板を移動させる方向は、中板に接している側のマット材の主面にせん断応力を印加した方向と同じである。
移動中のロードセルの荷重値及び中板に加わる静摩擦力を測定し、静摩擦力が最大となるときの摩擦係数(静摩擦係数)を測定した。
【0087】
(嵩密度の測定)
まず、一辺50mmの正方形に打ち抜いたマット材を厚さ方向に均等に3分割にカットした。
次に、3分割にカットしたマット材のそれぞれにつき重量と厚みを測定した。厚みはダイヤルゲージ(測定端子φ20mm、荷重4.9kPa)にて測定した。
そして、下記式に示すように、重量から算出される面比重(重量/面積)と厚みから、被加工面近傍(被加工部)の嵩密度と、マット材の厚さ方向中央近傍(中央部)の嵩密度をそれぞれ算出した。
(重量/面積)/厚み=嵩密度[g/cm3]
【0088】
図11及び表1に、実施例及び比較例におけるマット材の摩擦係数の測定結果を示す。
また、表2に、比較例のマット材の摩擦係数に対する実施例のマット材の摩擦係数の比率を示す。
【0089】
【0090】
【0091】
図11と表1及び表2に示すように、表面が起毛処理された実施例のマット材は、表面加工されていない比較例のマット材に比べて高い摩擦係数を有し、摩擦係数が5%以上向上することが確認された。
また、実施例のマット材は、追加材料を必要とせず、製造工程もシンプルであるため、安価に製造することが可能である。
【0092】
表3に、実施例及び比較例におけるマット材の嵩密度の測定結果を示す。また、表3には、それぞれの実施例及び比較例において、中央部の嵩密度に対する被加工部(比較例1では上部)の嵩密度の比率を算出した結果も示している。
【0093】
【0094】
表3に示すように、表面加工されていない比較例のマット材では、上部と中央部で嵩密度が同程度であり、マット材全体で一様な嵩密度を有しているのに対して、表面が起毛処理された実施例のマット材では、中央部に比べて被加工部の嵩密度が低く、起毛処理された被加工面近傍では嵩密度が低下することが確認された。
【0095】
(表面観察)
図12は、実施例2のマット材の被加工面をマイクロスコープにより観察した写真である。
図12中、起毛処理による表面加工前の状態を左側に、起毛処理による表面加工後の状態を右側にそれぞれ示す。
図12に示すように、表面が起毛処理された実施例のマット材は、被加工面6に起毛した無機繊維10を有し、これらの起毛した無機繊維10は、被加工面6から部分的に離間した繊維塊11を形成していることが確認された。
また、繊維塊11の多くには、その中心に周囲に比べて無機繊維の密度が低い低集積部12が存在していた。
【符号の説明】
【0096】
1 マット材
1a マット材
1b マット材
2 一方の端部
2a 凸部
3 他方の端部
3a 凹部
4 第1主面
5 第2主面
6 被加工面
10 無機繊維
11 繊維塊
12 低集積部
13 繊維塊の一方の端部
14 繊維塊の他方の端部
40 排ガス処理体
41 セル
42 セル壁
43 封止材
50 金属ケーシング
100 排ガス浄化装置
200 摩擦係数測定装置
210 左板
220 右板
230 中板
240 突起部材
G 排ガス