(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】抗菌性樹脂成形品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/13 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B29C45/13
(21)【出願番号】P 2021023185
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉江 信二
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088586(JP,A)
【文献】特開2006-103187(JP,A)
【文献】特開2002-316323(JP,A)
【文献】特開平10-264205(JP,A)
【文献】特開2004-058564(JP,A)
【文献】特開2017-176451(JP,A)
【文献】特開2018-203898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203475(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0091969(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 41/00-41/36
B29C 41/46-41/52
B29C 45/00-45/24
B29C 45/46-45/63
B29C 45/70-45/72
B29C 45/74-45/84
B29C 70/00-70/88
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の本体部と、前記本体部の表面の少なくとも一部に設けられた抗菌層と、を有する抗菌性樹脂成形品の製造方法であって、
上下に開閉する上型および第一下型を型閉じして前記本体部を形成するための第一キャビティを形成し、前記第一キャビティに熱可塑性樹脂を流し込み、
型閉じした前記上型および前記第一下型内で前記熱可塑性樹脂を冷却固化させて前記本体部を成形し、
前記上型に前記本体部を保持させながら、前記上型および前記第一下型を型開きさせ、
前記第一下型を前記上型に保持された前記本体部の温度より低温にした第二下型と交換し、
前記上型および前記第二下型を型閉じして、前記本体部と前記第二下型との間に前記抗菌層を形成するための第二キャビティを形成し、
前記第二キャビティ内に、無機系または有機系の抗菌剤を含む液状のウレタン樹脂原料を流し込み、
前記第二下型を加熱して前記ウレタン樹脂原料を硬化させて前記抗菌層を成形する、抗菌性樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記抗菌剤の比重は、前記ウレタン樹脂原料の比重より大きい請求項1記載の抗菌性樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂原料は二種の液体を混合してから前記第二キャビティに流し込む二液型である、請求項1に記載の抗菌性樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記第二キャビティに流し込む前記ウレタン樹脂原料の粘度が20mPa・s以上150mPa・s未満である、請求項1に記載の抗菌性樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記抗菌層を硬化させるための硬化時間が、前記第一キャビティ内における前記本体部の冷却時間よりも長い、請求項1に記載の抗菌性樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記第二キャビティに流し込む前に前記ウレタン樹脂原料を貯留するタンク内で前記抗菌剤を含む前記ウレタン樹脂原料を攪拌する、請求項1に記載の抗菌性樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂またはPC-ABS(ポリカーボネートABS)樹脂である、請求項1に記載の抗菌性樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂製の本体部と、
前記本体部の表面の少なくとも一部に設けられた抗菌層と、を有する抗菌性樹脂成形品であって、
前記抗菌層は、無機系または有機系の抗菌剤を含むウレタン樹脂で構成されており、
前記抗菌剤の平均粒径は前記抗菌層の厚みの1/1000以上1/5未満であり、
前記抗菌層の表層における前記抗菌剤の濃度が、前記抗菌層の厚み方向の中心部における前記抗菌剤の濃度より高
く、
前記熱可塑性樹脂はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂またはPC-ABS(ポリカーボネートABS)樹脂である、抗菌性樹脂成形品。
【請求項9】
前記抗菌層の厚みは50μm以上である、請求項8に記載の抗菌性樹脂成形品。
【請求項10】
前記抗菌剤の平均粒径が5μm以上である、請求項8に記載の抗菌性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性樹脂成形品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、抗菌剤入りの抗菌性樹脂成形品が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献は、金型のキャビティ面に予め抗菌層を形成した後、型内に樹脂を流し込んで抗菌性樹脂成形品を製造する方法が記載されている。この場合、金型キャビティ面に形成した抗菌層は、樹脂を流し込んだ際に、抗菌層が流れて取れてしまう可能性がある。
また、他の抗菌性樹脂成形品は、抗菌剤を含む樹脂を用いて、射出成型で成形されることも多い。しかしこのような方法では、表面に露出した抗菌剤のみが抗菌性に寄与するものの、樹脂内に埋没した抗菌剤は抗菌性に寄与せず、抗菌作用に関与しない抗菌剤が多量に存在することになる。このため、抗菌剤の利用効率が悪い。
また、有機系の抗菌剤は射出成型時の熱によって変質してしまうので、有機系の抗菌剤を用いることができない。
【0005】
本発明は、無機系および有機系いずれの抗菌剤を用いることができ、かつ、抗菌剤の利用効率の高められた抗菌性樹脂成形品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
熱可塑性樹脂製の本体部と、前記本体部の表面の少なくとも一部に設けられた抗菌層と、を有する抗菌性樹脂成形品の製造方法であって、
上下に開閉する上型および第一下型を型閉じして前記本体部を形成するための第一キャビティを形成し、前記第一キャビティに熱可塑性樹脂を流し込み、
型閉じした前記上型および前記第一下型内で前記熱可塑性樹脂を冷却固化させて前記本体部を成形し、
前記上型に前記本体部を保持させながら、前記上型および前記第一下型を型開きさせ、
前記第一下型を前記上型に保持された前記本体部の温度より低温にした第二下型と交換し、
前記上型および前記第二下型を型閉じして、前記本体部と前記第二下型との間に前記抗菌層を形成するための第二キャビティを形成し、
前記第二キャビティ内に、無機系または有機系の抗菌剤を含む液状のウレタン樹脂原料を流し込み、
前記第二下型を加熱して前記ウレタン樹脂原料を硬化させて前記抗菌層を形成する、抗菌性樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0007】
上記した本発明の製造方法において、
前記抗菌剤の比重は、前記ウレタン樹脂原料の比重より大きくてもよい。
【0008】
上記した本発明の製造方法において、
前記ウレタン樹脂原料は二種の液体を混合してから前記第二キャビティに流し込む二液型であってもよい。
【0009】
上記した本発明の製造方法において、
前記第二キャビティに流し込む前記ウレタン樹脂原料の粘度が20mPa・s以上150mPa・s未満であってもよい。
【0010】
上記した本発明の製造方法において、
前記抗菌層を硬化させるための硬化時間が、前記第一キャビティ内における前記本体部の冷却時間よりも長くてもよい。
【0011】
上記した本発明の製造方法において、
前記第二キャビティに流し込む前に前記ウレタン樹脂原料を貯留するタンク内で前記抗菌剤を含む前記ウレタン樹脂原料を攪拌してもよい。
【0012】
上記した本発明の製造方法において、
前記熱可塑性樹脂はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂またはPC-ABS(ポリカーボネートABS)樹脂であってもよい。
【0013】
本発明の一態様によれば、
熱可塑性樹脂製の本体部と、
前記本体部の表面の少なくとも一部に設けられた抗菌層と、を有する抗菌性樹脂成形品であって、
前記抗菌層は、無機系または有機系の抗菌剤を含むウレタン樹脂で構成されており、
前記抗菌剤の平均粒径は前記抗菌層の厚みの1/1000以上1/5未満であり、
前記抗菌層の表層における前記抗菌剤の濃度が、前記抗菌層の厚み方向の中心部における前記抗菌剤の濃度より高い抗菌性樹脂成形品が提供される。
【0014】
上記した本発明の抗菌性樹脂成形品において、
前記抗菌層の厚みは50μm以上であってもよい。
【0015】
上記した本発明の抗菌性樹脂成形品において、
前記抗菌剤の平均粒径が5μm以上であってもよい。
【0016】
上記した本発明の抗菌性樹脂成形品において、
前記熱可塑性樹脂はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂またはPC-ABS(ポリカーボネートABS)樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無機系および有機系いずれの抗菌剤を用いることができ、かつ、抗菌剤の利用効率の高められた抗菌性樹脂成形品およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る抗菌性樹脂成形品の断面図である。
【
図2】上型と第一下型とを型閉じて第一キャビティを形成した状態を示す模式図である。
【
図3】第一キャビティ内に熱可塑性樹脂を流し込んで本体部を成形する様子を示す模式図である。
【
図4】上型に本体部を保持させながら上型と第一下型とを型開きさせる様子を示す模式図である。
【
図5】第一下型と第二下型とを交換する様子を示す模式図である。
【
図6】上型と第二下型とで形成した第二キャビティ内にウレタン樹脂原料を流し込む様子を示す模式図である。
【
図7】ウレタン樹脂原料を硬化させて抗菌層を成形する様子を示す模式図である。
【
図8】抗菌剤を含む液状のウレタン樹脂原料を第二キャビティ内に流し込む様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る抗菌性樹脂成形品1の断面図である。
図1に示したように、抗菌性樹脂成形品1は、熱可塑性樹脂製の本体部2と、本体部2の表面の少なくとも一部に設けられた抗菌層3とを有している。本体部2は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂またはPC-ABS(ポリカーボネートABS)樹脂などの熱可塑性樹脂で構成されている。抗菌層3の厚みTは50μm以上とすることが好ましい。
【0021】
抗菌層3は、無機系または有機系の抗菌剤4(
図8参照)を含むウレタン樹脂で構成されている。抗菌剤4としては、粒子状をなす抗菌剤4を用いることができる。抗菌剤4の平均粒径は、5μm以上のものが好ましい。なお平均粒径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により、体積平均粒径(D50)として求めることができる。
【0022】
粒子状の抗菌剤4として、例えば、銀担持無機系抗菌剤や、銅担持無機系抗菌剤などの無機系の抗菌剤を用いることができる。例えば無機系抗菌剤として、以下を採用できる。
担体としてリン酸ジルコニア、リン酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムなどのリン酸塩が用いられた銀担持無機系抗菌剤・銅担持無機系抗菌剤、
担体としてゼオライト、シリカゲルなどのケイ酸塩が用いられた銀担持無機系抗菌剤・銅担持無機系抗菌剤、
担体としてガラスや活性炭、炭素繊維などが用いられた銀担持無機系抗菌剤・銅担持無機系抗菌剤
【0023】
あるいは、有機系の抗菌剤として以下を採用できる。
α-ブロモシンナムアルデヒドなどのアルデヒド系の抗菌剤
安息香酸ナトリウムなどのカルボン酸系の抗菌剤
2-ベンジル-4-クロロフェノールなどのフェノール系の抗菌剤
3-ヨード-2-プロビニルブチルカルバメートなどの有機ヨード系の抗菌剤
2-(4-チアゾリル)ペンツイミダゾールなどのペンツイミダゾール系の抗菌剤
2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンなどのイソチアゾリン系の抗菌剤
2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリルなどのニトリル系の抗菌剤
2,3,5,6-テトラクロル-4-(メチルスルホニル)ピリジンなどのピリジン系の抗菌剤
N,N’,N”-トリスヒドロキシエチルヘキサヒドロ-s-トリアジンなどのトリアジン系の抗菌剤
N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミドなどのN-ハロアルキルチオ系の抗菌剤
塩化ジデシルジメチルアンモニウムなどの第四アンモニウム塩系の抗菌剤
ビス(ピリジン-2-チオールーl-オキシド)亜鉛塩などのピリチオン系の抗菌剤
8-オキシキノリン銅などの有機銅系の抗菌剤
10,10’-オキシビスフェノキサアルシンなどの有機ヒ素系の抗菌剤
ワサビ、カラシ、ヒノキなどの植物由来の有機系の抗菌剤
【0024】
次に
図2から
図8を用いて、抗菌性樹脂成形品1の製造方法を説明する。
まず
図2に示したように、上型10と第一下型20とを型閉じして、本体部2を形成するための第一キャビティC1を形成する。上型10と第一下型20は互いに上下方向に移動可能である。ここでは上型10は上下方向に動かず、第一下型20が上下方向に移動可能であるものとする。
【0025】
次に
図3に示したように、上型10と第一下型20とによって形成された第一キャビティC1に溶融状態の熱可塑性樹脂R1を流し込む。第一キャビティC1に熱可塑性樹脂R1を充填した後、上型10および/または第一下型20を冷却して、熱可塑性樹脂R1を冷却固化させ、本体部2を成形する。
【0026】
次に
図4に示したように、上型10に本体部2を保持させながら上型10と第一下型20とを型開きさせる。ここでは、本体部2が冷却されて本体部2が上型10よりも収縮したことにより、本体部2が上型10に取り付いている。
【0027】
なお、上型10に本体部2を保持させる方法はこの例に限られない。本体部2に、第一下型20方向への離脱を防止するための上型10に向かって突出する突状部が設けられていてもよい。あるいは、上型10に、本体部2が第一下型20方向へ離脱することを防止するための第一キャビティC1に向かって突出する突状部が設けられていてもよい。あるいは、上型10に設けられたこのような突状部が第一キャビティC1内へ進出可能な可動ピンによって構成されていてもよい。
【0028】
図5は、第一下型20と第二下型30とを交換する様子を示す模式図である。
図5に示したように、第一下型20を、上型10に保持された本体部2の温度より低温に設定した第二下型30と交換する。ここでは、上型10を左右方向に移動させて、冷却しておいた第二下型30の上方まで移動させる。第二下型30は、水冷または空冷によって本体部2の温度よりも低温にしておく。
なお、第二下型30を上型10に保持された本体部2の温度よりも低温に設定するとは、型開き時に上型10に保持された本体部2を測定して得られる温度よりも第二下型30のキャビティ面が低温になるように第二下型30を温度設定してもよい。あるいは、あらかじめ、型開き時の上型10に保持された本体部2の温度が実験的に確認されており、この温度以下となるように第二下型30の温度が設定されてもよい。あるいは、型開き時は、本体部2の温度が上型10の温度より高いため、第二下型30の温度を上型10の温度以下に設定してもよい。
【0029】
次に
図6に示したように、上型10と第二下型30とを型閉じして、本体部2と第二下型30との間に、抗菌層3を形成するための第二キャビティC2を形成する。上型10と第二下型30とで形成されるキャビティには、本体部2が収容される空間と、抗菌層3を形成するための第二キャビティC2とによって構成されている。このため、上型10と第二下型30とで形成されるキャビティは、本体部2を形成するための第一キャビティC1よりも大きい。
【0030】
次に
図7に示したように、第二キャビティC2内に、抗菌剤4を含む液状のウレタン樹脂原料R2を流し込む。さらに第二下型30を加熱してウレタン樹脂原料R2を反応硬化させて抗菌層3を形成する。このようにして、本体部2の表面の少なくとも一部に抗菌層3が設けられた抗菌性樹脂成形品1が形成される。
【0031】
本実施形態の製造方法によれば、本体部2と抗菌層3とを別工程で硬化させている。抗菌層3をなすウレタン樹脂原料R2の硬化温度は100度以下であり、有機系の抗菌剤4の抗菌効果がなくなる耐熱温度よりも低温である。このため、ウレタン樹脂原料R2を硬化させて抗菌層3を形成する際に有機系の抗菌剤4の抗菌効果を保つことができる。
【0032】
図8は、抗菌剤4を含む液状のウレタン樹脂原料R2を第二キャビティC2内に流し込む様子を示す図である。キャビティ面31付近は第二キャビティC2の厚み方向の中央よりも、第二キャビティC2内を流れる流体にかかる抵抗が大きいため、流速が遅くなる。そして、ウレタン樹脂原料R2が第二キャビティC2を流れる際は、フローフロントでのファウンテンフロー現象により粒子状の抗菌剤4は、第二キャビティC2の厚み方向の中央に留まりにくく、キャビティ面31付近にたまりやすくなる。このような理由により、本実施形態の製造方法により得られた抗菌性樹脂成形品1においては、抗菌層3の表層における抗菌剤4の濃度が、抗菌層3の厚み方向の中心部における抗菌剤4の濃度より高くなる。このため、抗菌層3の表面に抗菌剤4が露出しやすく、抗菌剤4の利用効率が高められている。
なお、抗菌剤4の平均粒径は抗菌層3の厚みの1/1000以上1/5であることが好ましい。抗菌剤4の平均粒径が1/1000未満であると、抗菌剤4がウレタン樹脂原料R内に分散し難くなる。抗菌剤4の平均粒径が1/5より大きいと、第二キャビティC2を抗菌剤4がウレタン樹脂原料R2によって運ばれにくくなる。
【0033】
また抗菌剤4の比重はウレタン樹脂原料R2の比重よりも大きいことが好ましい。抗菌剤4の比重がウレタン樹脂原料R2の比重よりも大きいと、抗菌層3を形成する工程において、第二キャビティC2の下面を構成している第二下型30のキャビティ面31に抗菌剤4がたまりやすい。そのため、抗菌層3の表面に抗菌剤4を位置させやすくなる。抗菌剤4の比重はウレタン樹脂原料R2の比重の1.5倍以上であることが好ましい。さらに好ましくは抗菌剤4の比重はウレタン樹脂原料R2の比重の2倍以上であることが好ましい。
【0034】
またウレタン樹脂原料R2は二種の液体を混合してから第二キャビティC2に流し込む二液型であることが好ましい。二液型のウレタン樹脂原料R2は、二種類の液体の配合比率を調整するなどしてウレタン樹脂原料R2の硬化速度を調整することができる。このため、抗菌剤4が表面に露出するように抗菌剤4がウレタン樹脂原料R2の中で移動してからウレタン樹脂原料R2が硬化するようにその硬化速度を調節することができる。
【0035】
第二キャビティC2に流し込むウレタン樹脂原料R2の粘度は20mPa・s以上150mPa・s未満であることが好ましい。ウレタン樹脂原料R2の粘度が20mPa・sより小さいと、抗菌剤4を含むウレタン樹脂原料R2を攪拌しても、タンク32内で抗菌剤4がすぐに沈降してしまい、流し込むウレタン樹脂原料R2の抗菌剤4濃度がばらつき、抗菌層3に抗菌剤4が偏ってしまいやすい。ウレタン樹脂原料R2の粘度が150mPa・sより大きいと、第二キャビティC2内をウレタン樹脂原料R2が流れにくくなる。また、抗菌剤4がウレタン樹脂原料R2に混ざりにくい。さらに、抗菌剤4が第二キャビティC2内で沈降し難くなる。
【0036】
図7に示した工程における抗菌層3を硬化させるための硬化時間が、
図3に示した工程における第一キャビティC1内における本体部2の冷却時間よりも長いことが好ましい。抗菌層3の硬化時間を長くするほど、抗菌剤4がウレタン樹脂原料R2の中で移動(沈降)する時間を確保しやすいからである。
【0037】
なお、ウレタン樹脂原料R2に粒子状の抗菌剤4をなるべく均等に分散させた状態で、ウレタン樹脂原料R2を第二キャビティC2に流し込むことが好ましい。このため、第二キャビティC2に流し込む前にウレタン樹脂原料R2を貯留するタンク32(
図6参照)内で抗菌剤4を含むウレタン樹脂原料R2を攪拌することが好ましい。
【0038】
なお、連続して抗菌性樹脂成形品1を製造する場合は、
図7に示した状態から型開きをして抗菌性樹脂成形品1を脱型し、上型10を左右方向に移動させて第一下型20の上方まで移動させた後、第二下型30の冷却を開始して
図5に示した工程に備えておく。
【0039】
また、上述した説明においては、上型10が左右方向に移動可能であり、第一下型20および第二下型30が上下方向に移動可能な例を説明したが、本発明はこれに限られない。上型10は左右方向および上下方向に移動可能であり、第一下型20および第二下型30が固定されていてもよい。あるいは、上型10は固定されており、第一下型20および第二下型30が左右方向および上下方向に移動可能であってもよい。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。
その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0041】
1 抗菌性樹脂成形品
2 本体部
3 抗菌層
4 抗菌剤
10 上型
20 第一下型
30 第二下型
31 キャビティ面
32 (ウレタン樹脂原料を貯留する)タンク
C1 第一キャビティ
C2 第二キャビティ
R1 熱可塑性樹脂
R2 ウレタン樹脂原料