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7594459魚釣用リール、情報処理装置及び釣情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】魚釣用リール、情報処理装置及び釣情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20241127BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20241127BHJP
   A01K 89/012 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A01K89/01 Z
A01K89/015 A
A01K89/012
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021023377
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125661
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】大井川 凌
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-009565(JP,U)
【文献】特開2001-321042(JP,A)
【文献】実開平03-054173(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00-89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投擲開始を検出する投擲開始検出部と、投擲終了を検出する投擲終了検出部と、魚釣用リールのハンドルの回転数を検出するハンドル回転検出部と、放出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、ドラグ放出量を検出するドラグ放出量検出部と、を備える魚釣用リールであって、
前記糸長算出部は、前記投擲開始から前記投擲終了までの、前記ハンドル回転検出部による前記ハンドルの回転数及び前記ドラグ放出量検出部による前記ドラグ放出量に基づき、前記釣糸の糸長を算出することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
現在の投擲終了の検出又は次の投擲開始の検出に基づき、算出された前記糸長又は検出された前記ハンドルの前記回転数の初期化を行う、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
記憶部を備え、該記憶部は、投擲開始と、投擲終了と、ハンドル回転数の情報、又は釣糸の糸長の情報を記憶する、請求項1又は2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
現在の投擲の投擲終了は、前記投擲開始検出部による次の投擲開始の検出に基づき決定される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記投擲開始検出部と前記投擲終了検出部は、ベールであり、現在の投擲の投擲終了は、投擲時に操作するベールの作動を検出することにより決定される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記投擲開始検出部と前記投擲終了検出部は、前記釣糸に設けられた被検出部の近接を検出し、現在の投擲の投擲終了は、該検出に基づき決定される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
表示部を備え、該表示部は、前記釣糸の糸長を表示する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
送信部を備え、該送信部は、前記釣糸の糸長を外部へ送信する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項9】
記糸長算出部は、検出された前記ハンドルの前記回転数に基づく釣糸の糸長から、該ドラグ放出量に基づく差分を差し引くことにより前記釣糸の糸長を算出する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項10】
前記ドラグ放出量は、前記投擲終了の検出又は投擲開始の検出に基づき、初期化される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項11】
投擲開始を検出する投擲開始検出部と、投擲終了を検出する投擲終了検出部と、魚釣用リールのハンドルの回転数を検出するハンドル回転検出部と、ドラグ放出量を検出するドラグ放出量検出部と、を有する魚釣用リールと、放出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部を有する情報処理装置と、を備え、
前記糸長算出部は、前記投擲開始から前記投擲終了までの、前記ハンドル回転検出部によるハンドルの回転数及び前記ドラグ放出量検出部による前記ドラグ放出量に基づき、前記釣糸の糸長を算出することを特徴とする釣情報処理システム。
【請求項12】
前記情報処理装置は、送受信部を備え、該送受信部は、魚釣用リールから、投擲開始と、投擲終了と、ハンドル回転数の情報を受信する、請求項11に記載の釣情報処理システム。
【請求項13】
前記情報処理装置は、送受信部を備え、該送受信部は、算出した前記釣糸の糸長の情報を前記魚釣用リールへ送信する、請求項11に記載の釣情報処理システム。
【請求項14】
前記情報処理装置は、表示部を備え、該表示部は、前記釣糸の糸長を表示する、請求項11から13までのいずれか1項に記載の釣情報処理システム。
【請求項15】
前記情報処理装置は、携帯端末、ウェアラブル端末又はコンピュータ装置である、請求項11から14までのいずれか1項に記載の釣情報処理システム。
【請求項16】
外部から情報を受信する受信部と、釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、を備え、該受信部は、該外部から、投擲開始の情報と、投擲終了の情報と、魚釣用リールのハンドルの回転数の情報と、該魚釣用リールのドラグ放出量の情報を受信し、該糸長算出部は、これらの情報に基づき釣糸の糸長を算出することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投擲時の釣糸の糸長を算出可能な魚釣用リール、情報処理装置及びこれらを有する釣情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、釣糸を放出可能な様々なスピニングリールが知られている。このようなスピニングリールを用いた釣りを行う場合、ルアーや餌を投擲した際に、釣糸がどの程度放出されたかは、釣り人の感覚に頼らざるを得ない状況となっている。
【0003】
釣糸の繰出し又は巻取りを検出可能な魚釣用リールとして、例えば、特許文献1では、スプールに巻き取られる釣糸またはスプールから繰り出される釣糸を検出するようにしたスピニングリールの釣糸検出装置であって、光線の発光部及びこの発光部から発光された光線を受光する受光部を有して、釣糸がスプールに巻き取られる際、または釣糸がスプールから繰り出される際に釣糸を非接触で検出するセンサーを、スピニングリールの静止部材またはこのスピニングリールを取り付ける釣竿に設けるようにしているスピニングリールの釣糸検出装置について開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、釣り糸をスプールに巻取る際に作動する駆動体の所定作動量に対応する釣り糸の巻取り量を把握可能なデータにして、釣り糸の巻取り時に記憶手段に保持すると共に、投出された仕掛を所定位置から引寄せる際に、釣り糸の巻取りが完了するまでの駆動体の作動量を計測し、この計測結果、及び、記憶手段に保持されたデータに基づいて、前記所定位置と当該装置との距離を報知する制御手段を備えるスピニングリールのカウンタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-081527号公報
【文献】実開平4-009565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1における光電センサを用いて釣糸の糸長の計測を行おうとしても、外部光の影響により誤検出してしまう等、釣糸の糸長を正確に検出することが実際上難しいという問題があった。また、特許文献2に係る方法では、投擲開始作業の後にユーザがリセットボタンを押す必要があるため、ボタンを押し忘れたり、投擲開始時以外にボタンを押してしまうと正確に糸長を算出することができないという問題があった。また、魚が掛かった際のドラグ力により釣糸が放出されると、駆動体の作動量から釣糸の糸長を算出しても、実際の釣糸の飛距離とは乖離してしまい、正確に糸長を把握することが難しいという問題もあった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、魚釣用リールを用いて釣りを行う際に、釣糸の飛距離(放出された釣糸の糸長)をより正確に算出し、かつこれを釣り人に知らせることが可能な魚釣用リール、情報処理装置及びこれらを備えた釣情報処理システムを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、投擲開始を検出する投擲開始検出部と、投擲終了を検出する投擲終了検出部と、魚釣用リールのハンドルの回転数を検出するハンドル回転検出部と、放出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、を備える魚釣用リールであって、前記糸長算出部は、前記投擲開始から前記投擲終了までの、前記ハンドル回転検出部によるハンドルの回転数に基づき、前記釣糸の糸長を算出するように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、現在の投擲終了の検出又は次の投擲開始の検出に基づき、算出された糸長の又はハンドル回転数を初期化を行うように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、記憶部を備え、該記憶部は、投擲開始と、投擲終了と、ハンドル回転数の情報、又は釣糸の糸長の情報を記憶するように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、現在の投擲の投擲終了は、前記投擲開始検出部による次の投擲開始の検出に基づき決定されるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、前記投擲開始検出部と前記投擲終了検出部は、ベールであり、現在の投擲の投擲終了は、投擲時に操作するベールの作動を検出することにより決定されるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記投擲開始検出部と前記投擲終了検出部は、前記釣糸に設けられた被検出部の近接を検出し、現在の投擲の投擲終了は、該検出に基づき決定される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、表示部を備え、該表示部は、前記釣糸の糸長を表示するように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、送信部を備え、該送信部は、前記釣糸の糸長を外部へ送信するように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、ドラグ放出量を検出するドラグ放出量検出部を備え、前記糸長算出部は、前記ハンドル回転数に基づく釣糸の糸長から、該ドラグ放出量に基づく差分を差し引くことにより前記釣糸の糸長を算出するように構成される。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、当該ドラグ放出量は、当該投擲終了の検出又は投擲開始の検出に基づき、初期化されるように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る釣情報処理システムは、投擲開始を検出する投擲開始検出部と、投擲終了を検出する投擲終了検出部と、魚釣用リールのハンドルの回転数を検出するハンドル回転検出部と、を有する魚釣用リールと、放出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部を有する情報処理装置と、を備え、前記糸長算出部は、前記投擲開始から前記投擲終了までの、前記ハンドル回転検出部によるハンドルの回転数に基づき、前記釣糸の糸長を算出するように構成される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る釣情報処理システムにおいて、前記情報処理装置は、送受信部を備え、該送受信部は、魚釣用リールから、投擲開始と、投擲終了と、ハンドル回転数の情報を受信するように構成される。
【0018】
本発明の一実施形態に係る釣情報処理システムにおいて、前記情報処理装置は、送受信部を備え、該送受信部は、算出した前記釣糸の糸長の情報を前記魚釣用リールへ送信するように構成される。
【0019】
本発明の一実施形態に係る釣情報処理システムにおいて、前記情報処理装置は、表示部を備え、該表示部は、前記釣糸の糸長を表示するように構成される。
【0020】
本発明の一実施形態に係る釣情報処理システムにおいて、前記情報処理装置は、携帯端末、ウェアラブル端末又はコンピュータ装置である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、外部から情報を受信する受信部と、釣糸の糸長を算出する糸長算出部と、を備え、該受信部は、該外部から、投擲開始の情報と、投擲終了の情報と、魚釣用リールのハンドルの回転数の情報を受信し、該糸長算出部は、これらの情報に基づき釣糸の糸長を算出するように構成される。
【発明の効果】
【0022】
上記実施形態によれば、魚釣用リールを用いて釣りを行う際に、釣糸の飛距離(放出された釣糸の糸長)をより正確に算出し、かつこれを釣り人に知らせることが可能な魚釣用リール、情報処理装置及びこれらを備えた釣情報処理システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールの基本構成を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおける釣糸の糸長算出手順の概要を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る釣情報処理システムの基本構成を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおけるハンドル回転検出部を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおける投擲検出部を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおけるドラグ放出量検出部を説明する図である。
図7】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおける放出された釣糸の糸長の算出を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおけるハンドル回転速度の出力を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールによる放出釣糸の糸長の補正方法を説明する図である。
図10】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールによる投擲終了の検出方法を説明する図である。
図11】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール等による投擲終了の検出方法を説明する図である。
図12】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール等による投擲終了の検出方法を説明する図である。
図13】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおけるハンドル回転検出部3及びドラグ放出量検出部8の別の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る魚釣用リール等の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0025】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の構成について説明する。
【0026】
図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、投擲開始を検出する投擲開始検出部と投擲終了を検出する投擲終了検出部とを含む投擲検出部2と、魚釣用リール1のハンドルの回転数を検出するハンドル回転検出部3と、放出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部4と、を備え、当該糸長算出部4は、投擲開始から投擲終了までの、当該ハンドル回転検出部3によるハンドルの回転数に基づき、釣糸の糸長を算出するように構成される。
【0027】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、釣りを行う際に、釣糸の飛距離(放出された釣糸の糸長)をより正確に算出し、かつこれを釣り人に知らせることが可能な魚釣用リールを提供することが可能となる。
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、記憶部5を備え、該記憶部5は、投擲開始と、投擲終了と、ハンドル回転数の情報、又は釣糸の糸長の情報の少なくともいずれか又は全てを記憶することができる。
【0029】
また、図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、表示部6を備え、該表示部6は、釣糸の糸長を表示することができる。これにより、釣りを行う際に、釣糸の飛距離(放出された釣糸の糸長)を釣り人に知らせることが可能となる。また、当該表示部6は、投擲開始、投擲終了、ハンドル回転数の各情報の少なくともいずれかを表示できるようにしてもよい。また、別途出力部(図示しない)を設け、釣りを行う際に、釣糸の飛距離(放出された釣糸の糸長)を音声等で釣り人に知らせることが可能となる。当該出力部は、音声以外にも種々の出力を行うことができ、特定の態様に限定されるものではない。
【0030】
さらに、図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、送信部と受信部を含む送受信部7を備え、送受信部7の該送信部により、釣糸の糸長の情報を外部へ送信するように構成される。ここで、外部とは、例えば、コンピュータ、スマートフォン、スマートグラス、スマートウォッチ、又は釣り専用装置をいうが、これらに限られない。
【0031】
ここで、釣糸の糸長の算出は、各投擲毎に行うが、各投擲の終了のタイミングは、現在の投擲終了の検出又は次の投擲開始の検出に基づき決定されるが、現在の投擲の糸長が算出された後、当該算出結果を当該記憶部5に記憶し、その後、次の投擲の糸長の算出のため、算出された現在の糸長の初期化(リセット)を行うように構成される。また、ハンドル回転数を初期化(リセット)するようにしてもよい。これにより、各投擲毎の糸長との混在を防止することができる。
【0032】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、現在の投擲の投擲終了は、投擲検出部2の投擲開始検出部による次の投擲開始の検出に基づき決定することができる。これは、次の投擲開始が検出されると、現在の投擲の終了をも意味するものであるため、次の投擲開始の検出を、現在の投擲終了の検出と判断することで投擲開始の検出の情報をより有効に活用することができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、投擲検出部2の投擲開始検出部と投擲終了検出部が、ベールである場合、現在の投擲の投擲終了は、投擲時に操作するベールの作動を検出することにより決定するようにしてもよい。これにより、釣人がボタンの押下等の追加の動作をすることなく、投擲検出を行うことができるという利点がある。
【0034】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、ドラグ放出量を検出するドラグ放出量検出部8を備え、糸長算出部4は、ハンドル回転数に基づく釣糸の糸長から、ドラグ放出量検出部8により検出された該ドラグ放出量に基づく差分を差し引くことにより前記釣糸の糸長を算出するように構成される。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、当該ドラグ放出量は、当該投擲終了の検出又は投擲開始の検出に基づき、初期化されるようにすることができる。
【0035】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、釣りを行う際に、釣糸の飛距離(放出された釣糸の糸長)をより正確に算出することが可能となる。
【0036】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1により放出された釣糸の糸長の算出方法についてより具体的に説明する。
【0037】
まず、ステップS1において、投擲終了であるかを判断する。投擲終了である場合は、ステップS7へ進み、算出された糸長のデータの送信(又は格納)を行う。その後、ステップS8へ進み、糸長のデータの初期化(リセット)を行う。その際、ハンドル回転数を初期化(リセット)するようにしてもよい。
【0038】
ステップS1において、投擲終了であるかを判断する。投擲終了ではない、すなわち投擲中ある場合は、ステップS2へ進み、魚釣用リールのハンドルが回転しているかを判断する。当該ハンドルが回転していない場合は、ステップS4へ進む。当該ハンドルが回転している場合は、ステップS3へ進み、ハンドルの回転数に基づき、回収(放出)された釣糸の糸長Aを算出する。
【0039】
次に、ステップS4へと進み、スプールが回転しているか判断する。スプールが回転していない場合は、ステップS6へと進み、上記糸長Aを、回収(放出)された釣糸の糸長Cと決定する。他方で、スプールが回転している場合は、ステップS5へ進み、これに基づく糸長Bを算出する。そして、ステップS6へと進み、回収(放出)された釣糸の糸長Cは、糸長A-糸長Bと算出する。
【0040】
このようにして、釣りを行う際に、釣糸の放出量、すなわち回収された釣糸の糸長をより正確かつ確実に算出することが可能となる。
【0041】
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態に係る釣情報処理システムについて説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る釣情報処理システム100は、投擲開始を検出する投擲開始検出部と投擲終了を検出する投擲終了検出部とを含む投擲検出部2と、魚釣用リール1のハンドルの回転数を検出するハンドル回転検出部3と、を有する魚釣用リール1と、放出された釣糸の糸長を算出する糸長算出部14を有する情報処理装置10と、を備え、当該糸長算出部14は、投擲開始から投擲終了までの、当該ハンドル回転検出部3によるハンドルの回転数に基づき、釣糸の糸長を算出するように構成される。
【0042】
さらに、図示のように、本発明の一実施形態に係る釣情報処理システム100において、当該情報処理装置10は、送受信部17を備え、該送受信部17は、魚釣用リール1から、投擲開始と、投擲終了と、魚釣用リール1のハンドル回転数の情報を受信するように構成される。また、情報処理装置10は、記憶部15を備え、これらの情報を格納することができる。
【0043】
また、本発明の一実施形態に係る釣情報処理システム100において、情報処理装置10の送受信部17は、算出した釣糸の糸長の情報を魚釣用リール1へ送信することができる。このようにして、魚釣用リール1は、外部からの糸長の情報を受信し、表示部6で表示することができる。これにより、魚釣用リール1における糸長算出処理の負荷をなくすことができる。また、別途出力部(図示しない)を設け、外部からの糸長の情報を受信し、当該糸長を音声等で釣り人に知らせることが可能となる。当該出力部は、音声以外にも種々の出力を行うことができ、特定の態様に限定されるものではない。
【0044】
また、図3に示すように、本発明の一実施形態に係る釣情報処理システム100において、情報処理装置10は、表示部16を備え、該表示部16は、算出された釣糸の糸長を表示するように構成される。なお、表示部は16、投擲開始、投擲終了、魚釣用リール1のハンドル回転数を含む釣情報全般に関する情報を表示することもできる。このようにして、魚釣用リールの外部にある情報処理装置で釣情報を一元的に管理することが可能となる。また、別途出力部(図示しない)を設け、釣情報全般に関する情報を音声等で釣り人に知らせることが可能となる。当該出力部は、音声以外にも種々の出力を行うことができ、特定の態様に限定されるものではない。
【0045】
本発明の一実施形態に係る釣情報処理システム100において、情報処理装置10は、携帯端末、ウェアラブル端末又はコンピュータ装置である。より具体的には、スマートフォン、スマートグラス、スマートウォッチ、又は釣り専用装置が考えられる。情報処理装置10は、これら以外の様々な装置が考えられ、特定の装置に限定されるものではない。
【0046】
上述の通り、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10は、外部(魚釣用リール)から情報を受信する受信部を有する送受信部17と、釣糸の糸長を算出する糸長算出部14と、を備え、該受信部は、該外部(魚釣用リール)から、投擲開始の情報と、投擲終了の情報と、ハンドルの回転数の情報を受信し、該糸長算出部14は、これらの情報に基づき釣糸の糸長を算出するように構成される。
【0047】
次に、図4を参照して、上述のハンドル回転検出部3についてより具体的に説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、そのハンドルの回転数を検出するハンドル回転検出部3を備えるが、当該ハンドル回転検出部は、スリットプレート22とフォトインタラプタ23とで構成され、ハンドル軸21に装着されたスリットプレート22の回転をフォトインタラプタ23により測定するようにして、ハンドルの回転数を検出する。ここで、測定の対象は、これに限らず、ハンドルの回転と同期しているギア等やギア比にて増速されたロータでもよい。また、検出方法は、フォトインタラプタ以外の使用によるものでもよく、特定の態様に限定されるものではない。
【0048】
次に、図5を参照して、上述の投擲検出部2についてより具体的に説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、投擲開始や投擲終了を検出する投擲検出部2を備えるが、図5に示すように、ベール部24に磁石25を取付け、リールフット部26にホール素子27を取付けることでベール部24の動作を検出することで、投擲開始、投擲終了を検出することができる。ここで、投擲の検出は、ベール部の動作の検出以外にも様々な方法が考えられ、例えば、投擲により変化し得る加速度を検出する方法、投擲動作時に揺れ動く動作物の動きを検出する方法、釣糸の放出速度を検出する方法も考えられる。その他の方法については後述する。当該投擲の検出方法は、特定の態様に限定されるものではない。
【0049】
次に、図6を参照して、上述のドラグ放出量検出部8についてより具体的に説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、ドラグ放出量を検出するドラグ放出量検出部8を備えるが、図6に示すように、ドラグによりスプール28が回転した場合に、これに同期して回転するように連結された回転体29に磁石30を取付け、スプール28の回転に伴う磁石30を取付けた回転体29の回転を、ホール素子31により検出することで、スプールの回転量を算出し、ドラグ放出量を算出することができる。ここで、スプールの回転を検出する方法は、様々な方法が考えられ、例えば、ドラグノブにホール素子を取付け、スプールに磁石を取付ける方法、スプールの内側にフォトセンサを配置し、スプール内部にスリットプレートや反射板を配置する方法も考えられる。当該スプールの回転を検出する方法は、検出箇所、被検出部及びセンサ等様々な態様が考えられ、特定の態様に限定されるものではない。
【0050】
次に、図7を参照して、ベールの作動の検出に基づく放出釣糸の糸長の算出方法についてさらに具体的に説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、投擲を検出する方法としてベールの作動検出する方法とした場合に、投擲時に操作するベールの作動を検出し、これをトリガーとしてデータ検出を開始する。
【0051】
図示のように、ハンドルの回転とスプールの回転状態を監視し、ハンドルが回転した場合は、その回転量から回収された糸長L1を算出し、スプールが回転した場合は、その回転量から放出された糸長L2を算出する。ハンドルが回転し、かつスプールが回転していない場合は、回収糸長(回収距離)はL3=L1となる。ハンドルが回転し、かつスプールが回転した場合は、放出糸長(推定飛距離)L3=L1-L2となる。その後、ベールが作動した時点で、投擲の終了と判断し、算出された糸長を推定飛距離L3として出力を行う。ここで、通常のスピニングリール(レバーブレーキ付きリールを除く)の場合、糸の放出時にはリールを構成する各部品は回転等の動作をせず、静止状態である。このため、リール内部の部品を測定しても、糸の放出量を検出することはできない。
しかしながら、通常の釣りの動作において、放出開始時点での糸長はほぼ同じ長さにそろえることがほとんどである。したがって、釣糸の伸びや切断が無視できる場合は、放出開始までの釣糸の回収量を計測することによって、直前の釣糸の放出量とみなすことができる。
【0052】
投擲検出部として、その他に、釣竿や魚釣用リール等に取付けた加速度センサにより加速度値を用いることができ、その場合、加速度値に一定の閾値を設け、それを超えた場合に投擲開始と判断して、各種検出・算出処理やその出力を行うことができる。
【0053】
各投擲の間の検出情報は常に出力されるようにしてもよく、各種出力装置に現在の巻取り量やドラグによる放出量等を常時表示するようにしてもよい。次の投擲の場合は、前の投擲に係るこれらの出力情報は初期化(リセット)される。
【0054】
次に、図8を参照して、ハンドル回転の平均速度を出力する方法について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1において、魚釣用リール1のハンドルの回転平均速度を出力する場合、投擲動作でベールの作動を検出した後、糸ふけを回収しルアーを任意の水深まで沈めるという動作が発生する。この間の回転速度を無視するために、ルアーの回収動作を始めてから、例えば、5回転目でマイコンのタイマー機能によりその時の時間T1を取得し、回収動作を始めてから15回目で再度マイコンのタイマー機能により時間T2を取得する。T1とT2との間のハンドルの回転速度を取得し、T2を取得した時点でのT1-T2間のハンドル回転の平均速度V1を算出する。ルアーを回収して次回の投擲時のベールの作動を検出した時点でV1の出力を行うことができる。このようにすることで、釣り人が次以降の投擲を行い、記憶された前回以前のハンドル回転速度を再現しようとする際に、より正確に算出されたハンドル回転速度を参照することができる利点がある。
【0055】
次に、図9a、9bを参照して、放出釣糸の糸長の補正方法について説明する。図示に示す糸長の補正方法は、予め測定したスプール28の底径Dと、巻回された糸長Lを巻き取るために必要なハンドルの回転数Nとの関係から、ハンドルの回転数Nに対して回収(放出)された糸長の補正値を算出することで、径D’が釣糸の回収(放出)により変化することに起因する、スプール28の1回転あたりの回収量(放出量)Zを補正して、糸長の算出を行う。当該回収量(放出量)Zは、以下のように表すことができる。

回収量(放出量)Z=ハンドル回転数N×ギア比×糸長の補正値

このようにして、より正確な糸長の算出を行うことができる。
【0056】
次に、図10a、10bを参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1による投擲終了の検出方法のその他の態様について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、投擲終了(投擲開始)を検出する投擲検出部を備えるが、図10a、10bに示すように、ベール部の操作に伴って突出するように構成された被検出部33を魚釣用リールの回転部31側に設け、当該被検出部33が突出した際(図10bの状態)に当該被検出部33と接触するように検出部34を魚釣用リール1の本体部32側に設けている。このようにして、ベール部の動作に起因する被検出部33の検出部34への接触を検出することで、投擲終了(投擲開始)を検出することができる。
【0057】
次に、図11a、11bを参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1等による投擲終了の検出方法のその他の態様について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1が設けられた釣竿30は、投擲終了(投擲開始)を検出する投擲検出部を備えるが、図11a、11bに示すように、釣糸に被検出部35を設け、釣竿30に非接触のリミットスイッチ等の検出部36を設け、当該検出部36は当該被検出部35の接近を検知する(図11b)。このようにして、釣糸に設けられた被検出部35の検出部36への接近を検出することで、投擲終了を検出することができる。ここで、図示の例では、検出部36が釣竿30に設けられるとして説明したが、検出部36は魚釣用リール1に設けられるようにしてもよい。
【0058】
次に、図12を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1等による投擲終了の検出方法のその他の態様について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の付近のその他の釣具に投擲終了(投擲開始)を検出する検出部38を設ける。他方で、釣糸に被検出部37を設け、当該検出部38は当該被検出部との通信状態や距離を判別できるように構成される。このようにして、釣糸に設けられた被検出部35との通信状態(通信可能状態、通信遮断状態)又は距離(所定の距離未満、所定の距離以上)に基づき、被検出部37投擲中の領域にあるか、又は非投擲中の領域にあるかを判断することで、投擲終了(投擲開始)を検出することができる。ここで、図示の例では、検出部38がその他の釣具に設けられるとして説明したが、検出部38は魚釣用リール1又は釣竿30に設けられるようにしてもよい。
【0059】
次に、図13を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1におけるハンドル回転検出部3及びドラグ放出量検出部8の別の実施形態について説明する。ここで、ドラグ機構は、上述の図6に示した、スプールとメインシャフト間を相対回転させる方式以外にも、ロータとハンドルの間を相対回転させる方式でも実現可能である。以下、図13を用いて、その方式についてより具体的に説明する。
【0060】
図13に示すように、スプール28はメインシャフト(主軸)39に固定され、メインシャフト39はリール本体40に対して回転不能に支持される。このとき、ロータ41の回転に応じてメインシャフト39を軸方向に上下させることで、釣糸をスプール28に均等に巻き付けるつけるオシレータ機構を備えてもよい。当該オシレータ機構は、従来公知のものを適宜利用でき、簡略化のため図13においては省略されている。
【0061】
ロータ41はピニオンギア42に固定され、当該ピニオンギア42のフェースギア43より回転伝達を受ける。そして、ロータ41とハンドル44との間にドラグ機構を設ける。これにより、設定値以上のトルクを受けた際にハンドル44に対してロータ41を空転させることで、釣糸の破断を避けることができる。図示の例では、ハンドル44とフェースギアとの間に従来公知のドラグ機構を設けているが、ピニオンギア42とロータ41の間にドラグ機構を設けても、同様の機能を実現できる。
【0062】
図13に示す構成では、ロータ41の回転数を読み取ることで糸の回収量を取得できる。そのため、ロータ41やロータ41に従属して回転する部位(ロータ自体、ピニオンギア、フェースギア等)に被検出部(例えば、ロータ被検出部45)を設け、リール本体40の、該被検出部に対向する箇所に検出部(例えば、ロータ検出部46)を設ける。ロータ検出部46の出力値から、糸の回収量を取得できる。ここで、ロータ検出部46の具体的構成については、図4に示したものと同様の方式で実現できる。
【0063】
また、ロータ回転数とハンドル回転数の差を得ることで、ドラグ放出量を取得してもよい。そのため、ハンドル44と同期して回転する部位(ハンドル自体、ドラグ機構の一部等)に被検出部(例えば、ドラグ機構49に設けたハンドル被検出部47)を設け、リール本体40の、該被検出部に対抗する箇所にハンドル検出部48を設ける。ハンドル検出部48とロータ検出部46の出力値の差から、ドラグ放出量を検出できる。ここで、ハンドル検出部48の具体的構成については、図4に示したものと同様の方式で実現できる。
【0064】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 魚釣用リール
擲検出部
3 ハンドル回転検出部
4 糸長算出部
5 記憶部
6 表示部
7 送受信部
8 ドラグ放出量検出部
10 情報処理装置
14 糸長算出部
15 記憶部
16 表示部
21 ハンドル軸
22 スリットプレート
23 フォトインタラプタ
24 ベール部
25 磁石
26 リールフット部
27 ホール素子
28 スプール
29 回転体
30 釣竿
31 回転部
32 本体部
33 被検出部
34 検出部
35 被検出部
36 検出部
37 被検出部
38 検出部
39 メインシャフト
40 リール本体
41 ロータ
42 ピニオンギア
43 フェースギア
44 ハンドル
45 ロータ被検出部
46 ロータ検出部
47 ハンドル被検出部
48 ハンドル検出部
49 ドラグ機構
100 釣情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13