(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】給紙機構
(51)【国際特許分類】
B65H 3/56 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B65H3/56 330E
(21)【出願番号】P 2021032469
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 幹夫
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-139197(JP,A)
【文献】特開平11-334922(JP,A)
【文献】特開2009-91143(JP,A)
【文献】特開平8-67371(JP,A)
【文献】特開2008-39840(JP,A)
【文献】特開2015-140246(JP,A)
【文献】特開2016-179900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0138736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面上でシートを収容するトレイと、
前記トレイから前記シートを取り出し、取り出し方向へ搬送する第1ローラと、
前記第1ローラにより取り出された前記シートを搬送する第2ローラと、
前記第2ローラに対向するようにあり、前記第2ローラとの間に前記シートを挟む第3ローラと、
前記第2ローラの回転軸に直交する平面において、前記第2ローラと前記第3ローラとにより形成されるニップと、前記第1ローラと、の間にあり、前記取り出し方向に沿う第1基準線、及び、前記第1ローラが前記シートに接触する接触位置と前記ニップとを結ぶ第2基準線を遮り、前記第1基準線と
自身との間
であって、前記第1基準線よりも前記支持面側であって、自身よりも前記シートが搬送される上流側になす第1角度が鋭角である第1弾性体と、
前記ニップと、前記第1弾性体と、の間にあり、前記第1基準線と
自身との間
であって、前記第1基準線よりも前記支持面側であって、自身よりも前記上流側になす第2角度が前記第1角度よりも小さい第2弾性体と、
を備える、給紙機構。
【請求項2】
前記第1弾性体における、前記シートが搬送される下流側の端部には、切欠きがある、請求項1に記載の給紙機構。
【請求項3】
前記第1弾性体は、複数の板を、前記第1基準線に沿って重ねて構成される、請求項1または2に記載の給紙機構。
【請求項4】
前記第1基準線に沿う方向に隣り合う前記板のうち、前記シートが搬送される下流側の前記板における前記下流側の先端は、前記シートが搬送される上流側の前記板における前記下流側の先端よりも前記下流側に突出している、請求項3に記載の給紙機構。
【請求項5】
前記第2弾性体を支持する支持部と、
前記支持部に設けられ、前記第2ローラの回転軸に沿う幅方向に互いに間隔を空けて配置された複数の突部と、
を備え、
前記第1弾性体は、前記幅方向に隣り合う前記突部の間の前記支持部に設けられ、
前記第1弾性体の厚さは、前記複数の突部が突出する長さよりも薄い、請求項1から4のいずれか一項に記載の給紙機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、給紙機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばMFP(Multi-Function Peripherals)である画像処理装置は、給紙機構を持つ。給紙機構のトレイには、複数のシートが、シートの厚さ方向に重ねて収容される。給紙機構から、一度に複数のシートが搬送される(以下では、シートの重送と言う)と問題が生じる。給紙機構は、最も上方のシートを通過させ、そのシートよりも下方のシートを堰き止める機能(以下では、前さばき機能と言う)を持ち合わせていない場合がある。一方で、給紙機構は、高価なゴム材や前さばき機能を高める専用摩擦部材などを装備して、シートの重送に対応している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-140246号公報
【文献】特開2016-052951号公報
【文献】特開2015-171938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、シートの重送を抑制することができる給紙機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の給紙機構は、トレイと、第1ローラと、第2ローラと、第3ローラと、第1弾性体と、第2弾性体と、を持つ。前記トレイは、支持面上でシートを収容する。前記第1ローラは、前記トレイから前記シートを取り出し、取り出し方向へ搬送する。前記第2ローラは、前記第1ローラにより取り出された前記シートを搬送する。前記第3ローラは、前記第2ローラに対向するようにあり、前記第2ローラとの間に前記シートを挟む。前記第1弾性体は、前記第2ローラの回転軸に直交する平面において、前記第2ローラと前記第3ローラとにより形成されるニップと、前記第1ローラと、の間にある。前記第1弾性体は、取り出し方向に沿う第1基準線、及び、前記第1ローラが前記シートに接触する接触位置と前記ニップとを結ぶ第2基準線を遮る。前記第1弾性体は、前記第1基準線と自身との間であって、前記第1基準線よりも前記支持面側であって、自身よりも前記シートが搬送される上流側になす第1角度が鋭角である。前記第2弾性体は、前記ニップと、前記第1弾性体と、の間にあり、前記第1基準線と自身との間であって、前記第1基準線よりも前記支持面側であって、自身よりも前記上流側になす第2角度が前記第1角度よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態の給紙機構を備える画像処理装置の概略構成図。
【
図5】同画像処理装置の給紙機構における動作を説明する断面図。
【
図6】同画像処理装置の第1弾性体の動作を説明する図。
【
図7】一実施形態の第1変形例の給紙機構における第1弾性体の正面図。
【
図8】一実施形態の第2変形例の給紙機構における第1弾性体の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の給紙機構を、図面を参照して説明する。
【0008】
本実施形態では、給紙機構が画像処理装置の手差しトレイに用いられている例を説明する。給紙機構は、画像処理装置の給紙カセットなどに用いられてもよい。
図1は、画像処理装置1の概略構成図である。実施形態の画像処理装置1は、画像形成装置である。画像処理装置1は、シートSに画像を形成する処理を行う。
画像処理装置1は、ハウジング15と、スキャナ部2と、画像形成ユニット3と、シート供給部4と、搬送部5と、給紙機構6と、排紙トレイ7と、反転ユニット8と、コントロールパネル9と、制御部12と、を有する。
【0009】
ハウジング15は、画像処理装置1の外形を形成する。
スキャナ部2は、複写対象物の画像情報を光の明暗として読み取り、画像信号を生成する。スキャナ部2は、生成した画像信号を画像形成ユニット3に出力する。
画像形成ユニット3は、スキャナ部2から受信した画像信号または外部から受信した画像信号に基づいて、トナーなどの記録剤により出力画像を形成する。以下、出力画像をトナー像という。画像形成ユニット3は、トナー像をシートSの表面上に転写する。画像形成ユニット3は、シートSの表面上のトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。
【0010】
シート供給部4は、画像形成ユニット3がトナー像を形成するタイミングに合わせて、シートSを1枚ずつ搬送部5に供給する。シート供給部4は、供給トレイ20と、第1供給ローラ21と、第2供給ローラ22と、第3供給ローラ23と、を有する。
供給トレイ20は、所定のサイズおよび種類のシートSを、収納する。
第1供給ローラ21は、供給トレイ20からシートSを1枚ずつ取り出す。第2供給ローラは、第1供給ローラ21により取り出されたシートSを、シートSが搬送される下流側に向かって搬送部5へ搬送する。第3供給ローラ23は、第2供給ローラ22に対向するようにある。第3供給ローラ23は、第2供給ローラ22との間にシートSを挟む。
【0011】
搬送部5は、シート供給部4から供給されるシートSを画像形成ユニット3に搬送する。搬送部5は、搬送ローラ26と、レジストローラ27と、を有する。
搬送ローラ26は、供給ローラ22,23から供給されるシートSをレジストローラ27へ搬送する。搬送ローラ26は、シートSの下流側の先端をレジストローラ27のニップNAに突き当てる。
レジストローラ27は、ニップNAにおいてシートSを撓ませることにより、シートSの下流側の先端の位置を整える。レジストローラ27は、画像形成ユニット3がトナー像をシートSに転写するタイミングに応じて、シートSを搬送する。
【0012】
給紙機構6は、手差しトレイである。
図2及び
図3に示すように、給紙機構6は、トレイ30と、第1ローラ31と、第2ローラ32と、第3ローラ33と、トルクリミッタ34と、下方ガイド35と、上方ガイド36と、第1弾性体37と、第2弾性体38と、を有する。なお、
図2及び
図5では、説明の便宜のため、シートSを実際よりも厚く示す。
図2に示すように、トレイ30は、厚さ方向に重ねられた複数のシートSを収容する容器である。トレイ30の底面は、複数のシートSを支持する支持面29である。トレイ30は、支持面29上に複数のシートSを収容する。トレイ30の上部には、トレイ30内に複数のシートSを収容するための第1開口39がある。
【0013】
トレイ30における、下流側の端部には、傾斜部40と、平坦部41とがある。傾斜部40の上面は、下流側に向かうに従い漸次、上方に向かうように傾斜している。平坦部41は、傾斜部40における下流側の端部から、下流側に、支持面29に沿う長さを有する。
平坦部41における下流側の端部の上方には、トレイ30内に収容された複数のシートSをトレイ30から取り出すための第2開口42がある。すなわち、トレイ30では、シートSが搬送される下流側が開口している。第2開口42は、第1開口39に連なる。トレイ30は、下流側に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜する。
【0014】
トレイ30は、図示しない昇降機構により支持される。昇降機構が、トレイ30を支持する方法については、後述する。
【0015】
図2及び
図3に示すように、ローラ31,32,33は、それぞれ円柱状または円筒状である。第1ローラ31は、第1ローラ31の回転軸CA回りに回転可能に支持されている。例えば、第1ローラ31は、回転軸CAが水平面に沿うようにある。
図2は、給紙機構6の、回転軸CAに直交する平面における断面図である。言い換えれば、
図2は、給紙機構6を、回転軸CAに沿うように見た断面図である。
図2に示すように、回転軸CAは、トレイ30における傾斜部40と平坦部41との接続部の上方にある。第1ローラ31は、トレイ30からシートSを取り出す。
以下では、第1ローラ31がシートSに接触する位置を、接触位置PAと言う。第1ローラ31により取り出されたシートSから取り出し方向に沿う基準線を、第1基準線LAと言う。第1基準線LAは、第1ローラ31により取り出されたシートSから支持面29に沿う長さを有する。第1ローラ31は、シートSを、接触位置PAから、第1基準線LAに沿った下流側である取り出し方向へ搬送する。
【0016】
図2及び
図3に示すように、第2ローラ32は、第1ローラ31よりも下流側にある。例えば、第2ローラ32は、回転軸CBが水平面に沿うようにある。第2ローラ32は、第1ローラ31により取り出されたシートSを下流側に搬送する。第2ローラ32は、シートSの第1面SAに接触する。
第3ローラ33は、第2ローラ32の下方に、第2ローラ32に対向するようにある。例えば、第3ローラ33は、回転軸CCが水平面に沿うようにある。第3ローラ33は、第2ローラ32との間にシートSを挟む。第2ローラ32と第3ローラ33とにより、ニップNBが形成される。第3ローラ33は、シートSにおける第1面SAの裏側である第2面SBに接触する。
ローラ31,32,33は、互いの回転軸CA,CB,CCが平行になるように配置される。
ここで、接触位置PAとニップNBとを結ぶ基準線を、第2基準線LBと言う。第2ローラ32の回転軸CBに沿う幅方向の第2ローラ32の中心を含み、幅方向に直交する面を、基準面と言う。ローラ31,32,33は、基準面に対してそれぞれ対称(面対称)である。
【0017】
例えば、トルクリミッタ34は、第3ローラ33内にある。トルクリミッタ34は、第3ローラ33と同軸である。
予め定められたトルク閾値以下のトルクが第3ローラ33とトルクリミッタ34との間に作用するときには、トルクリミッタ34は第3ローラ33と一体になって、回転軸CC回りに回転する。トルク閾値を超えるトルクが第3ローラ33とトルクリミッタ34との間に作用するときには、トルクリミッタ34は第3ローラ33に対して滑ることによって、第3ローラ33を回転軸CC回りにトルク閾値相当の反トルクを伴いながら回転可能に支持する。すなわち、トルクリミッタ34は、シートSの第2面SBに、シートSが搬送される上流側の力を発生させるために、第3ローラ33に反トルクを与える。
なお、第1ローラ31の線速よりもローラ32,33の線速が速くなるように、ローラ31,32,33は制御される。
【0018】
下方ガイド35は、支持部45と、複数の突部46と、を有する。
支持部45は、第1支持板49と、第2支持板50と、第3支持板51と、第4支持板52と、を有する。
第1支持板49は、第3ローラ33とトレイ30との間にある。第1支持板49は、上下方向に長さを有する。上下方向において、第1支持板49の上端、及び第3ローラ33を回転軸CCは、互いに同等の位置である。
【0019】
トレイ30を支持する前記昇降機構は、接触位置PAで第1ローラ31にシートSが接触するように、トレイ30を第1支持板49に沿って上下方向に移動させる。すなわち、昇降機構は、トレイ30に比較的多くのシートSが収容されているときには、トレイ30を比較的低い位置で保持する。一方で、昇降機構は、トレイ30に比較的少ないシートSが収容されているときには、トレイ30を比較的高い位置で保持する。
【0020】
第2支持板50は、第1支持板49の上端から、第3ローラ33に近づくに従い漸次、上方に長さを有する。第2支持板50の上面には、上流側に向かうに従い漸次深くなる、窪み54がある。
図2に示すように、第3支持板51は、第3ローラ33よりも下流側から、水平面に沿って第3ローラ33から離間する方向に長さを有する。第4支持板52は、第3支持板51の下流側の端部から、下流側に向かうに従い漸次、上方に長さを有する。
【0021】
図2及び
図3に示すように、複数の突部46は、支持部45の第1支持板49における上流側を向く面に設けられる。複数の突部46は、第1支持板49に沿って上下方向に長さを有する。複数の突部46は、幅方向に互いに間隔を空けて配置される。
【0022】
図2に示すように、上方ガイド36は、第2ローラ32よりも下流側にある。上方ガイド36は、下流側に向かうに従い漸次、上方に長さを有する。上方ガイド36における上流側の端部は、第3支持板51及び第4支持板52よりも上方にある。
例えば、下方ガイド35及び上方ガイド36は、ハウジング15に固定される。下方ガイド35と上方ガイド36との間の空間は、搬送ローラ26に向かう。
【0023】
弾性体37,38は、シート状であって、それぞれの厚さ方向に見たときに矩形状を呈する。弾性体37,38は、それぞれポリエステル樹脂などで形成される。弾性体37,38は、それぞれ容易に弾性的に変形できる。
第1弾性体37の厚さは、複数の突部46が突出する長さよりもそれぞれ薄い。第1弾性体37は、ニップNBと、第1ローラ31と、の間にある。
図2及び
図3に示すように、第1弾性体37は、幅方向に隣り合う突部46の間の、支持部45の第1支持板49に設けられる。第1弾性体37の第1端部は、基材層の両面に接着層を有するテープ(以下では、両面テープと言う)などにより、第1支持板49に貼り付けられる。第1弾性体37は、複数の突部46よりも上流側に突出しない。
【0024】
第1弾性体37における第1端部とは反対の第2端部は、第1支持板49よりも上方に長さを有する。第1弾性体37の下端(第1端部側の端)は、前記第1基準線LA及び第2基準線LBよりも下方に配置される。第1弾性体37は、この下端から上方に向かって長さを有する。
図2に示すように、第1弾性体37は、第1基準線LA及び第2基準線LBをそれぞれ遮る。言い換えれば、第1弾性体37における上流側を向く面は、第1基準線LA及び第2基準線LBにそれぞれ交差する。第1弾性体37と第1基準線LAとの間になす第1角度θAは、鋭角である。第1角度θAは、第1弾性体37における上流側を向く面と、第1基準線LAとが、下方(第1弾性体37の第1端部側)、かつ上流側になす角度である。
例えば、第1角度θAは、45°以上80°以下である。
第1弾性体37の上端は、第2基準線LB上にあるか、第2基準線LBよりも上方に1mm程度の長さを有することが好ましい。第1弾性体37の剛性は、第1基準線LAと第1支持板49との間になす角度など基づいて調節することが好ましい。第1弾性体37は、前さばき機能を有する。
【0025】
第2弾性体38は、ニップNBと、第1弾性体37と、の間にある。第2弾性体38の第1端部は、第2支持板50の窪み54内にある。第2弾性体38の第1端部は、両面テープなどにより、窪み54に貼り付けられる。第2弾性体38における第1端部とは反対の第2端部は、第2支持板50よりも下流側に長さを有する。支持部45の第2支持板50は、第2弾性体38を支持する。
第2弾性体38は、第2支持板50よりも下流側に長さを有する。第2弾性体38と第1基準線LAとの間になす第2角度θBは、第1角度θAよりも小さい。第2角度θBは、第2弾性体38における上流側を向く面と、第1基準線LAとが、下方(第2弾性体38の第1端部側)、かつ上流側になす角度である。
第2弾性体38の第1端部から第2端部に向かう向きを延長すると、ニップNBに達する。第2弾性体38は、第3ローラ33から離間する。
弾性体37,38は、前記基準面に対してそれぞれ対称である。
【0026】
画像形成ユニット3について説明する。
図1に示すように、画像形成ユニット3は、複数の画像形成部60と、レーザ走査ユニット61と、中間転写ベルト62と、転写部63と、定着装置64と、を有する。
画像形成部60は、感光体ドラム65を有する。画像形成部60は、スキャナ部2または外部からの画像信号に応じたトナー像を感光体ドラム65に形成する。複数の画像形成部60は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーによるトナー像を形成する。
【0027】
感光体ドラム65の周囲には、帯電器、現像器などが配置される。帯電器は、感光体ドラム65の表面を帯電させる。現像器は、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのトナーを含む現像剤を収容する。現像器は、感光体ドラム65上の静電潜像を現像する。感光体ドラム65上には、各色のトナーによるトナー像が形成される。
【0028】
レーザ走査ユニット61は、帯電した感光体ドラム65にレーザ光Lを走査して感光体ドラム65を露光する。レーザ走査ユニット61は、各色の画像形成部60の感光体ドラム65を、各別のレーザ光LY,LM,LC,LKで露光する。レーザ走査ユニット61は、感光体ドラム65に静電潜像を形成する。
【0029】
中間転写ベルト62には、感光体ドラム65の表面のトナー像が1次転写される。
転写部63は、中間転写ベルト62上に1次転写されたトナー像を2次転写位置においてシートSの表面上に転写する。
定着装置64は、シートSに転写されたトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。
【0030】
反転ユニット8は、シートSの裏面に画像を形成するためシートSを反転させる。反転ユニット8は、定着装置64から排出されるシートSを、スイッチバックにより表裏反転させる。反転ユニット8は、反転したシートSをレジストローラ27に向けて搬送する。
排紙トレイ7は、画像が形成されて排出されたシートSを載置する。
コントロールパネル9は、操作者が画像処理装置1を操作するための情報を入力する入力部の一部である。コントロールパネル9は、タッチパネルや各種ハードキーを有する。
制御部12は、画像処理装置1の各部の制御を行う。
【0031】
図4は、画像処理装置1のハードウエア構成図である。画像処理装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)71、メモリ72、補助記憶装置73などを備え、プログラムを実行する。画像処理装置1は、プログラムの実行によってスキャナ部2、画像形成ユニット3、シート供給部4、搬送部5、給紙機構6、反転ユニット8、コントロールパネル9、通信部70を備える装置として機能する。
【0032】
CPU71は、メモリ72および補助記憶装置73に記憶されたプログラムを実行することによって制御部12として機能する。制御部12は、画像処理装置1の各機能部の動作を制御する。
補助記憶装置73は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。補助記憶装置73は、情報を記憶する。
通信部70は、画像処理装置1を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部70は、通信インタフェースを介して外部装置と通信する。
【0033】
次に、以上のように構成された画像処理装置1の動作について、給紙機構6での動作に重点をおいてについて説明する。
操作者は、給紙機構6のトレイ30内に複数のシートSを収容する。操作者がコントロールパネル9を操作することにより画像処理装置1が動作すると、第1ローラ31が回転軸CA回りの所定の向きに回転する。このとき、
図5に示すように、トレイ30から複数のシートSが取り出し方向(下流側)に取り出されたとする。以下では、複数のシートSのうち、最も上方に位置するシートSをシートSCとも言う。複数のシートSのうち、シートSC以外をシートSDとも言う。
シートSCが、第1基準線LAに沿って取り出し方向に搬送される。シートSCは、第1弾性体37の第2端部に突き当たる。シートSCは高速で搬送されるため、空気の抵抗を受けなどする。
図6に示すように、シートSCの取り出し方向の端は、幅方向に波状に変形する。
図6では、シートSCおよび支持部45の第1支持板49を二点鎖線で示す。
【0034】
第1角度θAは鋭角であるため、シートSCが突き当たった第1弾性体37の第2端部は、取り出し方向に向かって曲がる。シートSCは、第1弾性体37を取り出し方向に乗り越える。シートSCは、第2弾性体38によりニップNBに案内される。第1ローラ31の線速よりもローラ32,33の線速が速いため、シートSCは第2基準線LBに沿って張られた状態で搬送される。
シートSCとともに搬送されたシートSDは、第1弾性体37に突き当たり、上方がシートSCにより閉塞された状態になる。複数のシートS間に、空気が入る。シートSDは、第1弾性体37よりも取り出し方向に搬送されない。
シートSCは、下方ガイド35と上方ガイド36との間を通って、取り出し方向に搬送される。シートSCは、レジストローラ27へ搬送される。
【0035】
ニップNBに2枚のシートSが重送されても、トルクリミッタ34により下方のシートSを分離可能である。第1弾性体37は、ニップNBに3枚以上のシートSが重送されるのを抑制できる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の給紙機構6では、第1弾性体37が第1基準線LAを遮るため、第1ローラ31によりトレイ30から取り出されたシートSCが、第1弾性体37に突き当たる。第1角度θAは鋭角であるため、シートSCが突き当たった第1弾性体37は、取り出し方向に向かって曲がる。第1弾性体37が第2基準線LBを遮るため、第2基準線LBに沿って張られた状態で搬送されるシートSCが、第1弾性体37に突き当たった、重送されたシートSDの上方を塞ぐ。第2角度θBは第1角度θAよりも小さいため、シートSCは第2弾性体38によりニップNBに案内される。シートSCは、ローラ32,33により取り出し方向に向かって搬送される。
以上のように、給紙機構6により、シートSの重送を抑制することができる。第1弾性体37という安価な部材で、前さばき機能を実現することができる。
【0037】
基準面に対して、ローラ31,32,33、及び弾性体37,38は、それぞれ対称である。各種サイズのシートSを幅方向の中心基準で処理して、このシートSに画像を形成することができる。
第1弾性体37は、幅方向に隣り合う突部46の間の支持部45に設けられ、第1弾性体37の厚さは、複数の突部46が突出する長さよりもそれぞれ薄い。トレイ30の下流側の第2開口42からシートSが搬送されても、シートSは複数の突部46には接触するが、第1弾性体37には接触しない。シートSが搬送される際の第1弾性体37の動きを安定させることができる。
【0038】
第2弾性体38には、シートSをニップNBへ導入する機能と、第3ローラ33の表面への早期のシートSの衝突を防止する機能が求められる。一方、第1弾性体37は、3枚以上重送したシートSの下流側の端に接触して、シートS間に空気層を入れて重送されたシートSを分離する、即ち前さばき機能が求められる。弾性体37,38は共に給紙機構6に必要であり、安定的かつ確実に1枚のシートSを給紙できる給紙機構6の提供、という相乗効果が得られる。
【0039】
本実施形態の給紙機構6の第1弾性体37は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図7に示す第1弾性体80のように、第1弾性体80における下流側の端部には、切欠き81があってもよい。切欠き81は、第1弾性体80を、第1弾性体80の厚さ方向に貫通している。切欠き81は、下流側に向かって開口する。
切欠き81により、第1弾性体80の第2端部は、幅方向に複数の弾性片82に分割される。
切欠き81により、シートSCが突き当たらない弾性片82の基端部(上流側の端部)に、シートSCが突き当たることに生じる強い外力が作用するのを抑制できる。
図7では、第1弾性体80に複数(2つ)の切欠き81があるが、第1弾性体80の切欠き81は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0040】
図8及び
図9に示すように、第1弾性体85が、複数の板86を、第1基準線LAに沿って重ねて構成されてもよい。第1基準線LAに沿う方向に隣り合う板86のうち、下流側の板86における下流側の先端は、上流側の板86における下流側の先端よりも下流側に突出している。すなわち、複数の板86の下流側の先端は、下流側の板86ほど下流側に長さを有する。
各板86の剛性は、第1弾性体37の剛性よりも小さい。第1基準線LAに沿う方向に隣り合う板86の第1端部同士は、両面テープ87により互いに貼り付けられる。シートSCが突き当たる部分の板86同士は、互いに貼り付けられない。
【0041】
第1弾性体85が複数の板86により構成されるため、シートSCが1枚の板86に突き当たったときに、シートSCが複数の板86に突き当たった場合に比べて、1枚の板86を容易に曲げることができる。
さらに、第1基準線LAに沿う方向に隣り合う板86のうち、下流側の板86における下流側の先端は、上流側の板86における下流側の先端よりも下流側に突出している。第1基準線LAに沿って板86が重なる数が少ない、複数の板86における下流側の端部を、シートSCにより容易に曲げることができる。
なお、複数の板86における下流側の先端の位置は、互いに等しくてもよい。
【0042】
ローラ31,32,33、及び弾性体37,38は、基準面に対してそれぞれ対称でなくてもよい。
下方ガイド35は、複数の突部46を有しなくてもよい。
【0043】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1弾性体37,80,85を持つことにより、シートSの重送を抑制することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
6…給紙機構、30…トレイ、31…第1ローラ、32…第2ローラ、33…第3ローラ、37,80,85…第1弾性体、38…第2弾性体、45…支持部、46…突部、81…切欠き、86…板、CB…回転軸、LA…第1基準線、LB…第2基準線、NB…ニップ、PA…接触位置、S…シート、θA…第1角度、θB…第2角度