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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】配管構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20241127BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20241127BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20241127BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20241127BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
F16L5/04
E03C1/122 Z
E03C1/12 E
E04B1/94 F
F16L5/00 N
F16L5/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021051883
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2021162158
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2020065001
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183422(JP,A)
【文献】特開平09-152065(JP,A)
【文献】特開2020-033867(JP,A)
【文献】特開2017-014769(JP,A)
【文献】特開2013-072515(JP,A)
【文献】実開平04-073681(JP,U)
【文献】特開平11-141793(JP,A)
【文献】特開平10-311485(JP,A)
【文献】特開2007-056537(JP,A)
【文献】特表平05-506494(JP,A)
【文献】国際公開第91/019127(WO,A2)
【文献】特開2014-005689(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103510587(CN,A)
【文献】特開2020-038005(JP,A)
【文献】特開2017-014762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/04
E03C 1/122
E03C 1/12
E04B 1/94
F16L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の集合継手と、繊維状物の集合体である被覆材とを有し、
前記集合継手は、上部接続管と、前記上部接続管の下方に位置する下部接続管と、熱膨張材を含有する樹脂製シート状の熱膨張部材とを有し、
前記上部接続管は、縦管接続部と横管接続部とを有し、
前記下部接続管は、前記上部接続管から下方に向かい漸次窄まる傾斜管部と、前記傾斜管部の下方に位置する下側管部とを有し、
前記被覆材は、前記熱膨張部材及び前記傾斜管部の外周面の一部又は全部を覆い、
前記熱膨張部材は、前記集合継手の外周面であって前記傾斜管部の上端より上方かつ前記横管接続部の下端より下方に位置し、
床スラブに設置された際に、前記上部接続管の下端が前記床スラブよりも高い位置であり、かつ、前記熱膨張部材の下端が、前記床スラブの上面と同等又は前記床スラブよりも高い位置である、配管構造。
【請求項2】
前記被覆材は、フェルトである、請求項1の配管構造。
【請求項3】
前記熱膨張部材は、前記集合継手の外周面を周回している、請求項1又は2に記載の配管構造。
【請求項4】
前記上部接続管と前記下部接続管との間に枝浮かし部材を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛直上下方向の流路を有する管に、略水平方向に延びる横管の接続部を有する部材(集合継手)を有する配管構造において、火災時に耐火性を発現させる方法が提示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の配管構造では、集合継手の外周面に熱膨張部材が位置し、かつ熱膨張部材は、床スラブの貫通孔内に位置している。火災時には、熱によって熱膨張部材が径方向の内方に膨張して、配管構造の管路を閉塞する。このため、特許文献1の発明は、火災時に火炎や煙等が配管構造を通じて上階に上昇するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-014769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上層階の設備の位置や規格を変えると、集合継手を床スラブの上方へずらす場合がある。集合継手を上方へずらすと、熱膨張部材が床スラブの上方に位置することとなり、火災時に熱膨張部材が管路を充分に閉塞できないおそれがある。このため、上層階の設計の自由度を高められない。
そこで、本発明は、熱膨張部材が床スラブの上方に位置しても、火災時に管路を閉塞できる配管構造を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
樹脂の集合継手と、繊維状物の集合体である被覆材とを有し、
前記集合継手は、上部接続管と、前記上部接続管の下方に位置する下部接続管と、熱膨張部材とを有し、
前記上部接続管は、縦管接続部と横管接続部とを有し、
前記下部接続管は、前記上部接続管から下方に向かい漸次窄まる傾斜管部と、前記傾斜管部の下方に位置する下側管部とを有し、
前記被覆材は、前記傾斜管部の外周面の一部又は全部を覆い、
前記熱膨張部材は、前記被覆材よりも上方かつ前記横管接続部の下方に位置し、
床スラブに設置された際に、前記熱膨張部材の下端が、前記床スラブの上面と同等又は前記床スラブよりも高い位置である、配管構造。
<2>
前記被覆材は、フェルトである、<1>の配管構造。
<3>
前記熱膨張部材は、前記集合継手の外周面を周回している、<1>又は<2>に記載の配管構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配管構造は、熱膨張部材が床スラブの上方に位置しても、火災時に管路を閉塞できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態の配管構造の一部を破断した正面図である。
図2】本発明の第2の実施形態の配管構造の一部を破断した正面図である。
図3】本発明の第3の実施形態の配管構造の一部を破断した側面図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】本発明の第3の実施形態の配管構造の工程図である。
図6】他の実施形態の配管構造の一部を破断した正面図である。
図7】他の実施形態の配管構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の配管構造は、樹脂の集合継手と、繊維状物の集合体である被覆材と、熱膨張性部材とを有する。
以下、本発明に係る実施形態の配管構造について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、床スラブ103を貫通する集合継手10と、集合継手10の外周面を覆う被覆材20とを有する。
以下の説明において、縦管接続部13の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向に沿う縦管接続部13の上部接続管11側を上方、下部接続管12側を下方という。また、軸方向から見た平面視で、中心軸線Oと直交する方向を径方向といい、軸方向から見た平面視で中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の配管構造1は、多層建築物(建築物)101に用いられる。多層建築物101では、上下方向に複数の層102が重なっている。複数の層102同士(即ち、上層階と下層階)の間を床スラブ103が仕切っている。床スラブ103は、上下方向に貫通する貫通孔103aを有する。
【0012】
配管構造1は、床スラブ103に設置された集合継手10を有する。集合継手10は、上部接続管11と、上部接続管11に接続された下部接続管12と、を有する。
上部接続管11は、第1の縦管P1に接続可能な縦管接続部13と、縦管接続部13の側面に突設されて横管P3を接続可能な横管接続部14と、を有している。上部接続管11は、一体成形物である。上部接続管11の上端部は、第1の縦管P1に接続している。
【0013】
下部接続管12は、上部接続管11の下方に位置している。下部接続管12は、接続管部16と、傾斜管部17と、下側管部18と、を有する。
接続管部16は、下部接続管12の上端寄りに位置し、上部接続管11の下方に接続している。傾斜管部17は、接続管部16の下方に位置し、接続管部16から下方に向かうに従い漸次縮径している。即ち、下部接続管12は、上部接続管11から下方に向かい、漸次窄まっている。下側管部18は、傾斜管部17の下端部から下方に延び、第2の縦管P2と接続している。
本実施形態において、接続管部16の下端は、床スラブ103から距離h上方に離れている。即ち、接続管部16の下端は、床スラブ103よりも高い位置である。なお、接続管部16の下端は、床スラブ103の上面と同等の位置でもよい。
【0014】
傾斜管部17は、貫通孔103a内に位置している。傾斜管部17の外周面は、被覆材20で覆われている。被覆材20は、傾斜管部17の一部を覆っていてもよいし、全部を覆っていてもよい。本実施形態において、被覆材20は、傾斜管部17の外周面を周回して覆っている。
床スラブ103内において、貫通孔103aの開口周縁部と被覆材20との間には、モルタル104が充填されている。
【0015】
上部接続管11について、以下に説明する。
縦管接続部13は、上端部に、径方向の外側に向けて突出するリブ19を複数有する。図示の例では、軸方向に互いに間隔をあけた3つのリブ19を、周方向に互いに間隔をあけて4組有する。
4組のリブ19は、周方向に互いに等間隔に配置されている。リブ19の径方向の大きさは、特に限定されない。
集合継手10を多層建築物101に施工する際に、支持金具(図示せず)がリブ19に対して径方向の外側から当接することで、集合継手10が保持される。
【0016】
横管接続部14は、縦管接続部13の周壁から径方向の外側に向けて延びている。図示の例では、横管接続部14を3つ有する。
3つの横管接続部14のうちの2つは、中心軸線Oを径方向に挟んで位置している。残りの横管接続部14は、径方向のうち、前記2つの横管接続部14それぞれが延びる方向と、平面視で90°をなす方向に延びている。なお、横管接続部14はこのような態様に限られず、横管接続部14の数量及び延びる方向は、任意に変更することができる。
図2に示すように、横管接続部14における径方向の外端部には、横管P3が各々別に接続される横部接続管15が取付けられている。横部接続管15の外径は、横管接続部14の外径よりも大きい。
【0017】
上部接続管11は、例えば、樹脂組成物を射出成形等で一体に成形した部材である。
樹脂組成物を構成する樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を例示でき、ポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。「ポリオレフィン系樹脂」とは、ポリオレフィン単体の樹脂か、複数種の樹脂を含む場合、最も多い樹脂がポリオレフィンである樹脂を意味する。同様に「ポリ塩化ビニル系樹脂」とは、ポリ塩化ビニル単体の樹脂か、複数種の樹脂を含む場合、最も多い樹脂がポリ塩化ビニルである樹脂を意味する。
【0018】
集合継手10における上部接続管11及び下部接続管12は、透明でもよいし、透明でなくてもよい。透明にすることで、上部接続管11及び下部接続管12の接続状態を視認することができる。また、集合継手10に非熱膨張黒鉛や水酸化マグネシウム等の難燃剤を配合してもよい。
【0019】
下部接続管12について、以下に説明する。
接続管部16の外径は、上部接続管11の縦管接続部13の外径と同等である。傾斜管部17の下端部における外径は、接続管部16の外径よりも小さい。傾斜管部17の軸方向の大きさは、接続管部16の軸方向の大きさよりも大きい。
【0020】
下側管部18の外径は、接続管部16の外径よりも小さく、かつ傾斜管部17における下端部の外径よりも大きい。下側管部18の軸方向の大きさは、接続管部16の軸方向の大きさよりも小さい。下側管部18は、第2の縦管P2を下方から受け入れて、第2の縦管P2と接続する。
【0021】
接続管部16は、樹脂と熱膨張材とを含有する。本実施形態において、接続管部16が熱膨張部材である。例えば、接続管部16は、樹脂と熱膨張材とを含有する樹脂組成物を押出成形することで製造できる。
接続管部16を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂を例示でき、中でも、ポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。ポリ塩化ビニル系樹脂であれば、火災時に管路をより確実に閉塞できる。
熱膨張材としては、火災時に発生する熱により膨張する素材であればよく、例えば、熱膨張性黒鉛等を例示できる。
【0022】
接続管部16は、接続管部16の全体が単一の樹脂組成物からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。接続管部16が複層構造の場合、いずれかの層が熱膨張材を含有する樹脂組成物から形成されていればよい。例えば、接続管部16が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合には、中間層が熱膨張材を含有する樹脂組成物から形成されたものが挙げられる。
【0023】
表層、中間層及び内層は、吸熱剤を含有していてもよい。吸熱剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物(カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト)やハイドロタルサルサイト等の無機水酸化物、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、マイカ、石英、ゼオライト、ワラストナイト、ネフェリンサイアナイト等の吸水作用のある無機化合物を例示できる。
【0024】
中間層が熱膨張性黒鉛を含有する場合、中間層は黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
表層及び内層の厚みは、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下が好ましく、0.6mm以上1.5mm以下がより好ましい。表層及び内層である被覆層の厚みが0.3mm以上であれば、接続管部16の管としての機械的強度を充分に確保できる。被覆層の厚みが3.0mm以下であれば、接続管部16の耐火性の低下を抑制できる。
また、接続管部16は、JIS K6741、硬質ポリ塩化ビニル管に記載の性能を満たすものが好ましい。
【0025】
接続管部16は、熱膨張材を含まない樹脂組成物で形成されていてもよい。この場合、熱膨張材を含有する樹脂製のシート状の耐火材(以下、耐火シートともいう)を、横管接続部14の下端から傾斜管部17の上端までの間で、集合継手10の外周面に取り付ける。なお、耐火シートとしては軟質の形状保持性のないシート状に限らず、半円筒形や円筒形等に予め賦形され、その形状を保持できる強度を備えたシートでもよい。
【0026】
接続管部16の下端(即ち、熱膨張性部材の下端)と床スラブ103の上面との距離hは、60mm以下が好ましく、45mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。距離hが上記上限値以下であれば、火災時により速やかに管路を閉塞できる。距離hの下限値は、0(即ち、熱膨張性部材の下端と床スラブ103の上面とが同等の高さ)mmである。
【0027】
接続管部16は、傾斜管部17と一体成形物でもよいし、各々を別に成形し、これを接続したものでもよい。
【0028】
傾斜管部17は、例えば、樹脂組成物を射出成形することで製造できる。傾斜管部17を構成する樹脂組成物としては、上部接続管11を構成する樹脂組成物と同様である。
【0029】
下側管部18は、例えば、樹脂組成物を射出成形することで製造できる。下側管部18を構成する樹脂組成物としては、上部接続管11を構成する樹脂組成物と同様である。
【0030】
傾斜管部17と下側管部18とは、一体成形物でもよいし、各々を別に成形し、これを接続したものでもよい。
【0031】
上部接続管11及び下部接続管12は、接着材等により互いに接続されている。
なお、本実施形態では、集合継手10が上部接続管11及び下部接続管12を有するが、集合継手10が上部接続管11及び下部接続管12以外の部材を有してもよい。
【0032】
被覆材20について、以下に説明する。
本実施形態において、被覆材20は、傾斜管部17の外周面に直接接触している。但し、本発明はこれに限定されず、傾斜管部17と被覆材20との間には、本発明の効果を阻害しない範囲で、火災時に傾斜管部17と同程度の温度で溶融する他の部材があってもよい。
【0033】
被覆材20は、繊維状物の集合体であれば特に限定されず、例えば、ニードルフェルト、サーマルフェルト等のフェルト、グラスウール、ロックウール等が挙げられる。中でも、フェルト、グラスウールが好ましく、ニードルフェルト、グラスウールがより好ましく、ニードルフェルトがさらに好ましい。これらの被覆材20であれば、火災時により速やかに管路を閉塞できる。
【0034】
フェルトを構成する繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、アクリロニトリルやアクリロニトリル-塩化ビニル共重合樹脂等のアクリル繊維、ナイロンやアラミド等のポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、ポリイミド繊維等の合成繊維や、羊毛等が挙げられる。被覆材20が複数の繊維材料で構成されている場合、耐熱性や強度の観点から、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミドのいずれかが主成分であることが好ましい。ここで、主成分であるとは、最も質量が大きく、かつ、被覆材20を構成する繊維の総質量に対して、その成分の質量が35質量%以上であることをいう。
【0035】
被覆材20は、無機フィラーを有してもよい。
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
これらのうち、重量とコストのバランスから、無機フィラーとして炭酸カルシウム、硫酸バリウムを用いることが好ましい。なお、これらは、単独で無機フィラーとして用いてもよいし、2種以上を混合して無機フィラーとして用いてもよい。
無機フィラーの含有量は、例えば、樹脂100質量部に対して、300~3000質量部が好ましい。
【0036】
被覆材20は、マッフル炉で400℃、1時間加熱して燃焼させる加熱試験による質量減少率が80質量%以下であることが好ましい。被覆材20の質量減少率が80質量%以下であると、被覆材20は耐火性に優れる。被覆材20の質量減少率は、燃焼前の被覆材20の質量をW1、加熱に用いるルツボの質量をW2、燃焼後の被覆材20とルツボの質量の合計をW3、燃焼後の被覆材20の質量をW4として、下記(1)式により求められる。
質量減少率(%)=(W1-W4)/W1×100=(W1-(W3-W2))/W1×100・・・(1)
なお、マッフル炉とは、熱源あるいは発熱体と焼成室との間に、熱伝導性のよい耐火物による隔壁(マッフル)を取り付けた炉のことをいう。間接炎式炉ともいう。
【0037】
被覆材20は、任意の形状に予め成形されたものでもよいし、予め成形されていなくてもよい。予め成形されたものとしては、例えば、傾斜管部17の形状及び大きさに応じたシート状のフェルトを例示できる。
【0038】
被覆材20の密度としては、例えば、30kg/m以上200kg/m以下が好ましく、50kg/m以上150kg/m以下がより好ましく、80kg/m以上120kg/m以下がさらに好ましい。被覆材20の密度が上記下限値以上であれば、被覆材20単独で、その形状を保持しやすく、火災時に残渣が残り閉塞しやすい。被覆材20の密度が上記上限値以下であれば、火災時に被覆材20を構成する繊維と溶融した傾斜管部17を構成する樹脂とが速やかに絡みついて残渣を形成して、管路をより速やかに閉塞できる。
被覆材20の厚みは、3mm以上20mm以下が好ましく、4mm以上15mm以下がより好ましく、5mm以上10mm以下がさらに好ましい。被覆材20の厚みが上記下限値以上であれば、耐火性をより高められる。被覆材20の厚みが上記上限値以下であれば、スラブの貫通孔103aが小さくて済み、施工性及び耐火性をより高められる。
本明細書において、フェルトの密度は、JIS A 9521:2014(建築用断熱材)の6.7.1(人造鉱物繊維断熱材の密度測定)に記載の試験方法に準じて測定される。なお、試験片の原寸は被覆材20の全体とし、密度測定を行う試験片は、原寸の周辺部から10mm以上内側の中央部分から100mm角の正方形に切り取ったものとする。
【0039】
被覆材20の引張弾性率は5~500kg/cmが好ましい。被覆材20の引張弾性率が上記範囲内であれば、被覆材20を傾斜管部17に容易に巻き付けられる。
【0040】
なお、被覆材20の片面又は両面には、合成繊維不織布やガラス繊維不織布等の表面材が位置してもよい。但し、火災時において、より速やかに管路を閉塞する観点から、被覆材20は、傾斜管部17の外周面に直接接触していることが好ましい。
【0041】
被覆材20を傾斜管部17の外周面に固定する方法としては、被覆材20を傾斜管部17に巻き付け、端部を重ね合わせ、重ね合わせた部分を接着テープで固定する方法を例示できる。
接着テープとしては、例えば接着性及び止水性のあるブチルゴムテープ等を例示できる。
接着テープに代えて、被覆材20の端部同士を接着剤により接着してもよい。また、被覆材20の両端部をファスナーや面ファスナーで連結可能とし、被覆材20を傾斜管部17の外周面に着脱可能に固定してもよい。
【0042】
本実施形態の配管構造1では、集合継手10が床スラブ103を貫通し、床スラブ103の上面と同等又は床スラブより高い位置で、かつ横管接続部14よりも低い位置に、熱膨張部材(接続管部16)を有する。床スラブ103の貫通孔103aの内部には、傾斜管部17が位置し、傾斜管部17の外周面を被覆材20が覆っている。即ち、本実施形態の配管構造1では、熱膨張部材が床スラブ103の上方に位置し、その下方で、かつ床スラブ103内に被覆材20を有する。
本実施形態の配管構造1は、上記構成を有することで、下層階で火災が発生した場合、第2の縦管P2に燃え移るか、第2の縦管P2内を伝って、火炎又は熱風が上層階に上昇しようとする。この際、接続管部16が加熱され、熱膨張材が膨張温度に達すると、接続管部16が膨張して、内部の管路を塞ぐように作用する。加えて、接続管部16及び傾斜管部17は熱で軟化し又は溶融し、接続管部16及び傾斜管部17を構成する樹脂が被覆材20と絡み合いながら、貫通孔103aの下端に寄ってくる。このため、貫通孔103a内で、配管構造1の管路を速やか、かつ確実に塞ぐことができる。
【0043】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る配管構造について、図2を参照して説明する。
図2の配管構造2は、床スラブ103を貫通する集合継手10と、集合継手10の外周面を覆うカバー21とを有する。
カバー21は、集合継手10の上部接続管11及び下部接続管12の外周面を覆っている。カバー21は、集合継手10に径方向の外側から巻き付けられて集合継手10の全体を覆う被覆材20aと、被覆材20aを覆うカバーシート22と、を有している。被覆材20aは、縦管接続部13の外周面、接続管部16の外周面、傾斜管部17の外周面及び下側管部18の外周面を周回している。本実施形態において、被覆材20aは、縦管接続部13、接続管部16、傾斜管部17及び下側管部18の外周面の全体を覆っている。
【0044】
被覆材20aは、第1の実施形態における被覆材20と同様である。なお、被覆材20aは、一体成形物でもよいし、2つ以上の部材からなってもよい。被覆材20aが2つ以上の部材からなる場合、例えば、縦管接続部13の外周面を覆う第1片と、接続管部16の外周面を覆う第2片と、傾斜管部17及び下側管部18を覆う第3片とからなる被覆材20aを例示できる。
【0045】
カバーシート22は、被覆材20aの外周面を覆っている。
カバーシート22は、一体成形物でもよいし、2つ以上の部材からなってもよい。カバーシート22が2つ以上の部材からなる場合、被覆材20aの第1片、第2片、第3片に対応した部材からなってもよい。
【0046】
カバーシート22としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等の樹脂シートを例示できる。カバーシート22としては、例えば、ポリオレフィン等の基材樹脂100質量部に対して、無機フィラー300~3000質量部を含有する樹脂組成物をシート成形したものを例示できる。
【0047】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等を例示できる。
これらの無機フィラーの中でも、配合量とコストのバランスから、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを用いることが好ましい。これらの無機フィラーは、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0048】
カバーシート22の引張弾性率は5~500kg/cmであることが好ましい。引張弾性率が上記範囲内であれば、集合継手10にカバーシート22を巻き付けることが、より容易である。カバーシート22の引張弾性率が100kg/cm程度であると、カバーシート22が柔らかすぎず、硬すぎず巻きやすい。
なお、カバーシート22の片面または両面に、合成繊維不織布やガラス繊維不織布等の表面材を積層してもよい。
【0049】
本実施形態によれば、被覆材20aをカバーシート22で覆うため、施工が容易である。加えて、被覆材20aと集合継手10とをより密着できる。さらに、繊維状物の集合体である被覆材20aが集合継手全体を覆っているため、管路を水が流れた場合の音を外部に漏れにくくできる。
【0050】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る配管構造について、図面を参照して説明する。
図3の配管構造3は、床スラブ103を貫通する集合継手10と、集合継手10の外周面を覆うカバー21とを有する。
カバー21は、集合継手10における横管接続部14の下方から、接続管部16及び傾斜管部17にかけて、これらの外周面を覆っている。
上部接続管11の縦管接続部13の内部には、上下方向に延びる縦リブ30が設けられている。縦リブ30は、横管接続部14の基端開口部を避けて形成されている。
傾斜管部17の内部には、上下方向に延びる整流板32が設けられている。本実施形態において、配管構造3は整流板32を有してもよいし、有していなくてもよい。
本実施形態において、接続管部16は、被覆材20aの下端よりも上方に位置している。即ち、熱膨張部材は、被覆材よりも上方に位置している。
【0051】
図4は、領域Sの拡大図である。図4に示すように、カバー21の上端部は、接着テープ23によって、縦管接続部13に接合されている。
被覆材20aの上端及びカバーシート22の上端は、横管接続部14の基端部の下端(以下、「横管接続部の下端」ということがある)から離間している。加えて、被覆材20aの上端は、カバーシート22の上端よりも下方に位置する。これにより、被覆材20aの上端部は、カバーシート22の上端から突出している。
接着テープ23は、カバーシート22の上端部と、露出した被覆材20aと、上部接続管11の外面とに、接着している。このような構成とすることで、接着テープ23は、被覆材20aを縦管接続部13の外面に、より確実に密着できる。被覆材20aが縦管接続部13の外面に密着すると、下層階で火災が発生した際に、配管構造3の管路をより速やか、かつより確実に塞ぐことができる。
【0052】
接着テープ23は、縦リブ30の下端の位置を含む領域にされることが好ましい。縦リブ30の位置する領域は剛性が高く、縦リブ30の位置する領域において縦管接続部13の歪みは小さい。このため、縦リブ30の位置する領域に接着テープ23を接着することで、接着テープ23と縦管接続部13との間に隙間が生じること、接着テープ23が縦管接続部13から剥離すること、を防止できる。これにより、下層階で火災が発生した際に、配管構造3の管路をより速やかに、かつより確実に塞ぐことができ、また、被覆材20aと縦管接続部13との間への水の浸入を防止できる。
【0053】
横管接続部14の下端から、カバーシート22の上端までの距離Dは、例えば、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましい。距離Dが上記下限値以上であれば、上部接続管11において、接着テープ23を接着する領域を充分に確保して、縦管接続部13に対する被覆材20aの密着性を高められる。距離Dの上限値は特に限定されないが、カバー21の上端を横管接続部14に近づけたい場合には、例えば、30mm以下が好ましい。
【0054】
接着テープ23の上端から被覆材20aの上端までの距離D1は、例えば、3~20mmが好ましく、5~15mmがより好ましい。距離D1が上記下限値以上であれば、縦管接続部13に対して接着テープ23をより強固に接着できる。距離D1が上記上限値以下であれば、カバー21を横管接続部14に対してより近づけられる。
【0055】
被覆材20aの上端からカバーシート22の上端までの距離D2(即ち、カバーシート22から被覆材20aが突出している長さ)は、例えば、3~30mmが好ましく、8~25mmがより好ましく、5~15mmがさらに好ましい。距離D2が上記下限値以上であれば、接着テープ23と被覆材20aとの接触面積が大きくなり、被覆材20aと接着テープ23とが強固に接着できる。距離D2が上記上限値以下であれば、接着テープ23の幅を過度に広くする必要がない。
【0056】
なお、本実施形態において、上部接続管11は露出しているが、上部接続管11を他のカバー21で覆ってもよい。この際、前記他のカバー21は、図3における接着テープ23を覆うことが好ましい。即ち、前記他のカバー21の下端は、図3におけるカバー21の上端よりも下方に位置することが好ましい。
【0057】
次に、本実施形態における、カバー21の接合方法について説明する。
図5(a)に示すように、カバー21を縦管接続部13に外面に巻き付ける。この際、被覆材20aを縦管接続部13の外面に当接させ、被覆材20aの上端をカバーシート22の上端よりも横管接続部14に近づける。
次いで、図5(b)に示すように、接着テープ23を、カバーシート22の上端、被覆材20a及び縦管接続部13の外面に当接させ、縦管接続部13に巻き付ける。
こうして、カバー21を上部接続管11に接合する。
【0058】
(その他の実施形態)
第1の実施形態では、被覆材を覆うカバーシートを有しないが、本発明はこれに限定されず、第一の実施形態においても被覆材を覆うカバーシートを有してもよい。
【0059】
第1~2の実施形態では、集合継手が横管接続部を3つ有しているが、本願発明はこれに限定されず、横管接続部が2つ以下でもよいし、4つ以上でもよい。
【0060】
第1~2の実施形態では、熱膨張部材である接続管部と傾斜管部とが上下方向で隣り合っているが、本発明はこれに限定されず、熱膨張部材と傾斜管部とが上下方向に離間していてもよい。但し、より速やかに管路を閉塞する観点からは、熱膨張部材と傾斜管部とは上下方向で隣接しているか、近接していることが好ましい。熱膨張部材と傾斜管部とが上下方向で近接している場合、両者の距離は、40mm以下が好ましい。
【0061】
第1~2の実施形態では、被覆材が傾斜管部の外周面の全面を覆っているが、本発明はこれに限定されず、被覆材は傾斜管部の外周面の一部を覆っていればよい。
【0062】
上述の実施形態では、管軸Oを鉛直方向とした場合、横管接続部は水平方向に延びている。
本発明はこれに限定されず、横管接続部が斜め上方に屈曲していてもよい。
例えば、図6に示す配管構造4は、斜め上方に屈曲した横管接続部14aを有する。斜め上方に屈曲した横管接続部14aを有することで、床スラブ103の上面から離れた位置の横管P3’と接続できる。
【0063】
また、配管構造4は、縦管接続部13と接続管部16との間に枝浮かし部材40を有する。枝浮かし部材40は、縦管接続部13と接続管部16とを繋ぐ配管である。配管構造4は、枝浮かし部材40を有することで、床スラブ103の上面から離れた位置の横管P3’と接続できる。
【0064】
また、配管構造4は、傾斜管部17内に、上下方向に延びる整流板42を有してもよい。整流板42を有することで、例えば、配管構造4内の排水速度をより高められる。
【0065】
なお、本発明の配管構造は、横管接続部14a、枝浮かし部材40及び整流板42のいずれかのみを有してもよいし、全てを有してもよいし、いずれも有しなくてもよい。
【0066】
本発明の配管構造は、位置決めのためのマークを有してもよい。例えば、図7の配管構造5は、集合継手10の全体がカバー21で覆われている。配管構造5の傾斜管部17の位置には、傾斜管部17を周回する帯体120が形成されている。
帯体120は、接続管部16の下端(即ち、接続管部16と傾斜管部17との境界)から下方に離れている。帯体120の上端は、床スラブ内に配管構造5を設置する際に、スラブ内に位置する。これにより、熱膨張部材である接続管部16が床スラブから離れすぎないように、配管構造5を施工できる。
帯体120は、下地(本実施形態においてはカバー21)と識別可能なものであればよい。帯体120としては、例えば、下地と異なる色調のテープ、印刷層、カバー21の表面に設けたカバー21と一体の凹凸等が挙げられる。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3、4 配管構造
10 集合継手
11 上部接続管
12 下部接続管
15 横部接続管
16 接続管部
17 傾斜管部
18 下側管部
20、20a 被覆材
103 床スラブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7