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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】保温防水紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/10 20060101AFI20241127BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20241127BHJP
   D21H 21/54 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
D21H19/10 Z
D21H19/20
D21H21/54
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021056432
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022153750
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】川真田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】畠山 知也
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-051130(JP,A)
【文献】特開2010-202996(JP,A)
【文献】特開2002-052652(JP,A)
【文献】特開2000-129594(JP,A)
【文献】特開2006-233386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0081509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/10
D21H 19/20
D21H 21/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水剤と保温剤を含む塗工層を板紙上に設けた保温防水紙であって、
防水剤が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種類の合成樹脂を含み、保温剤が、中空粒子、熱膨張性マイクロカプセルの少なくとも1種類を含み、塗工層が顔料を含有しないものである、上記保温防水紙。
【請求項2】
前記塗工層の塗工量が4g/m以上であり、塗工層に含まれる保温剤と防水剤の重量比(保温剤/防水剤)が1/9以上である、請求項1に記載の保温防水紙。
【請求項3】
前記保温防水紙のコッブ吸水度が、120秒で3g/m以下であるか、30分で25g/m以下である、請求項1もしくは2に記載の保温防水紙。
【請求項4】
前記板紙のコッブ吸水度が、120秒で25g/m 以下である、請求項1~3のいずれかに記載の保温防水紙。
【請求項5】
前記熱膨張性マイクロカプセルが熱可塑性樹脂の外殻を持ち、内部に膨張剤である低沸点炭化水素を内包している、請求項1~のいずれかに記載の保温防水紙。
【請求項6】
前記熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度が60℃以上120℃以下である、請求項1~のいずれかに記載の保温防水紙。
【請求項7】
前記中空粒子の外殻部に無機元素を含み、中空粒子の内部が真空状態である、請求項1~のいずれかに記載の保温防水紙。
【請求項8】
前記板紙が多層抄き板紙である、請求項1~7のいずれかに記載の保温防水紙。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の保温防水紙を製造する方法であって、
防水剤保温剤を混合した塗工液を板紙上に塗工後、乾燥することを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保温防水紙に関し、より詳細には、防水性および断熱・保温性が要求される食品等の輸送に適した保温防水紙に関する。
【背景技術】
【0002】
鮮魚をはじめとする冷蔵・冷凍食品や、弁当等の加熱品を保温しながら輸送するための梱包手段として、発泡スチロール製の輸送箱が広く用いられている。発泡スチロール製輸送箱は軽量ながら高い耐水性および断熱・保温性を備えているといった長所がある一方、製造の際に型枠を用いることから、使用後の分解や解体に労力がかかり、廃棄時の減量化に難点があった。
【0003】
近年、環境保護の観点から脱プラスチックの動きが高まり、包装・輸送業界においても発泡スチロール代替品の開発が求められている。その一つとして、紙製の段ボール箱が注目されている。
【0004】
段ボール箱は用途に応じ様々な機能を付与することができ、その一つとして断熱・保温性が挙げられる。段ボール箱への断熱・保温機能の付与方法として、主に抄紙時に用いる内添薬品によるもの、紙表面への保温材塗工、段ボール箱加工時に保温構造とする等が挙げられる。特許文献1に記載の保温段ボール原紙は少なくとも中層に熱発泡性粒子凝集体中層に添加し発泡層とすることで断熱・保温性能を付与することを開示する。また特許文献2に記載の断熱段ボール原紙は基紙に中空無機粒子と熱発泡性粒子とバインダーとを含有した塗工液を塗布して塗工層を設けることで断熱・保温性を付与することを開示する。さらに特許文献3においては外箱の中に内箱を設けると共に、内箱のコの字状の開放部分が、外箱のコの字状の開放部分とは逆向きとなるように外箱に収容された構造により保温機能を有する段ボール箱が開示されている。
【0005】
また、段ボール箱に付与する機能として、耐水性が挙げられる。耐水性の付与方法については、紙表面への耐水材塗工や表面のラミネートフィルム被覆等が挙げられ、例えば特許文献4に開示された耐水性塗工液を塗布することにより耐水性を付与する方法や、特許文献5に開示されたラミネートフィルムによる被覆を行うことにより耐水性を付与する方法等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-133030号公報
【文献】特開2008-127703号公報
【文献】特開2018-111521号公報
【文献】特開平05-025796号公報
【文献】特開2002-284140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの技術においては、製造工程および工程管理上の問題を有していた。保温性を付与する引用文献1に記載の保温段ボール原紙を製造する際、熱発泡性粒子懸濁液を内添することに伴い抄紙系の汚れが蓄積しやすくなり、安定して抄紙するためには煩雑な管理が必要となる。引用文献3に記載の段ボール箱は既存の紙を用いることができるが、保温性能を向上させるために箱自体が二重構造となっており、加工工程や物品収容時の取扱が煩雑である。さらに、耐水性付与に着目した特許文献5に記載の技術は、別途ラミネート加工作業が必要となる。
【0008】
また従来技術において、保温機能の付与と耐水機能の付与は別個に行われることが一般的であり、特に塗工技術のみで付与しようとした場合は所望の耐水性及び保温性が担保できなくなる場合が多い。特許文献2に記載の技術は、保温材を混合した塗工液を塗工することにより保温性は付与可能だが、耐水性を有していない。また特許文献4に記載の技術は、塗工液に耐水性機能を付与しているが、保温性は有していない。
【0009】
かかる事情を鑑み、従来技術よりも簡便な方法により、保温性と耐水性を併せ持った紙を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは創意工夫した結果、従来実現が困難であった塗工層のみでの保温性と耐水性を同時に付与する技術を見出し、本発明に至った。本発明は限定されないが以下の態様を含む。
(1)紙基材に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種類の合成樹脂を含み、かつ、中空粒子、熱膨張性マイクロカプセルの少なくとも1種類を含む塗工層を設けた、保温防水紙。
(2)前記塗工層の塗工量が4g/m以上である、(1)に記載の保温防水紙。
(3)前記保温防水紙のコッブ吸水度が、120秒で3g/m以下であるか、30分で25g/m以下である、(1)もしくは(2)に記載の保温防水紙。
(4)前記熱膨張性マイクロカプセルが熱可塑性樹脂の外殻を持ち、内部に膨張剤である低沸点炭化水素を内包している、(1)~(3)のいずれかに記載の保温防水紙。
(5)前記熱膨張性マイクロカプセルの膨張温度が60℃以上120℃以下であることを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の保温防水紙。
(6)前記中空粒子の外殻部に無機元素を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の保温防水紙。
(7)前記中空粒子の内部が真空状態であることを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載の保温防水紙。
(8)前記紙基材が多層抄き板紙である、(1)~(7)のいずれかに記載の保温防水紙。
(9)スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種類の合成樹脂を含む防水剤と、中空粒子、熱膨張性マイクロカプセルの少なくとも1種類を含む保温剤を混合した塗工液を塗工後、乾燥することを特徴とする、保温防水紙の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、塗工工程のみといった従来よりも簡便な方法で保温性と耐水性を両立させた塗工層を設けた紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のシートを保温評価する方法として、シートをセットした型をはめこんだ発泡スチロールの蓋の裏側を示す写真である。
図2】本発明のシートを保温評価する方法を示す全体写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、保温防水紙に関する。本発明において保温防水紙とは、包装した内容物を保温することができるとともに長時間水にさらしても水が浸みこまない機能を有する紙のことを指す。また、本発明の好ましい態様において、本発明に係る保温防水紙は、紙容器に氷を入れて20時間以上放置しても容器内の気温が維持されるとともに、水を入れて3週間放置しても水の浸み出しが発生せず容器の形状が変形しない、あるいは、若干変形はみられるが容器形状が維持されるものをいう。
【0014】
本発明に係る保温防水紙の用途には特に制限はなく、例えば、保温・保冷機能を有する段ボール箱などの輸送箱や、洗剤等の吸湿性のあるものを内容物とする包装個箱等として用いることができる。本発明に係る保温防水紙の坪量は特に制限されないが、例えば、30~800g/mとすることができる。紙基材が単層紙である場合、保温防水紙の坪量は、例えば、30~350g/mや50~300g/mとすることができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、保温防水紙の坪量は75~800g/mや200~600g/mとすることができる。
【0015】
本発明の保温防水紙は、好ましい態様において、表面の120秒コッブ吸水度が3g/m以下であり、2g/m以下がより好ましく、1g/m以下であってよい。なお、120秒コッブ吸水度を測定した際に1g/m未満(吸水せず測定限界値未満の場合も含む)である紙においては、好ましい態様において、表面の30分コッブ吸水度が25g/m以下であり、20g/m以下がより好ましく、10g/m以下であってよい。本発明においてコッブ吸水度は、JIS P8140(コッブ法)に準拠して、100mlの蒸留水を塗工層に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定する。測定時間を伸ばした条件下でもコッブ吸水度が低いほど、塗工層の吸水性が低いものとなる。
【0016】
(紙基材)
本発明に係る保温防水紙は、紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面に設けられた保温防水塗工層と、を少なくとも有している。本発明において紙基材の坪量は特に制限されず、例えば、10~800g/mとすることができる。紙基材が単層紙である場合、坪量は10~300g/mの範囲で適宜設定することができ、例えば、紙基材がクラフト紙の場合、坪量を30~250g/mの範囲で設定することができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、その坪量は70~800g/mの範囲で適宜設定することができ、例えば、段ボールのライナの場合、坪量を80~600g/mの範囲で設定することができる。
【0017】
本発明に用いる紙基材は、保温塗工層を設けられることができるのであれば保温防水塗工層を設ける面の120秒コッブ吸水度はとくに限定されないが、好ましくは25g/m以下、より好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは15g/m以下としてもよい。また、本発明に用いる紙基材は、120秒コッブ吸水度を好ましくは5g/m以上、より好ましくは7g/m以上、さらに好ましくは10g/m以上としてもよい。本発明においては、ワックスなどの撥水剤を塗工するなどして紙基材の120秒コッブ吸水度を調整することができるが、紙基材の120秒コッブ吸水度が上記の範囲であることにより、保温防水塗料の溶媒中に含まれた水分の過剰な浸透による紙力低下防止と、保温防水塗料中の固形分が紙層表面へ滞留することにより確実な被覆が行われ保温性、防水性、防湿性の向上を満足させることができる。
【0018】
紙基材の物性は特に制限されず、保温防水紙の用途に応じて適宜設定することができる。本発明においては、例えば、縦伸びが1.0~15.0%、横伸びが2.0~12.0%、比圧縮強度が100~350N・m/g、比破裂強度が2.80~5.00kPa・m/g、防水塗工層を設ける面の水接触角が75度以上、より好ましくは77度以上となるように設定することができる。また好ましい態様において、塗工層を設ける面の王研式平滑度が13秒以上であり、より好ましくは15秒以上であり、さらに好ましくは17秒以上としてもよい。上限は特に限定しないが、好ましくは100秒以下であり、より好ましくは90秒以下、さらに好ましくは80秒以下、最も好ましくは70秒以下としてよい。さらに、防水塗工層を設ける側より測定した透湿度が1500g/m・24h以上であり、より好ましくは1750g/m・24h以上、さらに好ましくは2000g/m・24h以上としてよい。透湿度の上限は特に限定されないが、好ましい態様において、5000g/m・24h以下であり、より好ましくは4500g/m・24h以下、さらに好ましくは4000g/m・24h以下としてよい。
【0019】
紙基材の原料パルプとしては、特に制限なく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材繊維由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプを挙げることができる。
【0020】
紙基材は、古紙パルプを含有するものであってもよく、また、古紙パルプを含有しないものであってもよい。古紙パルプを含有する場合であって、例えば、紙基材が単層紙である場合、好ましくは全パルプに占める古紙パルプの配合率は10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上とすることができ、また、100質量%(古紙由来のパルプのみからなる)とすることができる。また、古紙パルプ以外のパルプとしてクラフトパルプを配合してもよく、全量クラフトパルプとしてもよい。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、1層あたりの古紙パルプ配合率を上記の通りとすることができ、各層における古紙パルプ配合率が異なるものであってもよい。
【0021】
古紙パルプとしては、段ボール古紙、上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を離解した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に印刷された古紙、および筆記された古紙、廃棄機密文書等の紙類、雑誌古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)等を使用することができる。
【0022】
また、紙基材の抄造では、サイズ剤や撥水剤を内添または外添させることができ、更に、強度を向上させるために紙力増強剤を内添させることができる。サイズ剤としては、例えば、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸等、また、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤等が挙げられる。また、撥水剤としては、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックス等が挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)や変性でん粉等の従来から使用されている紙力増強剤が挙げられる。本発明においては、ワックスを含む撥水剤を、防水層を設ける側に外添させることが好ましく、パラフィン系ワックスを含む撥水剤を外添させることがより好ましい。撥水剤と外添する場合の塗工量は、3g/m以下が好ましく、2g/m以下がより好ましい。
【0023】
また、必要に応じて紙基材に公知の填料を内添させることができる。填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料、及び尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料等が挙げられる。
【0024】
さらに、紙基材の品質に影響のない範囲で、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物、多価金属化合物、シリカゾル等を内添して使用してもよい。
【0025】
紙基材は、公知の抄紙方法で製造される。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機等を用いて行うことができるが、これらに限定されない。
【0026】
また、本発明の紙基材の平滑度を調整するため、必要に応じ平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理には、通常のカレンダ、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、熱カレンダ、シューカレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温、線圧等を適宜調整してよい。
【0027】
(保温防水塗工層)
本発明に係る保温防水紙は、紙基材上に設けられた保温防水塗工層を有していることを特徴としており、本発明において保温防水塗工層は、保温材、合成樹脂およびワックスを含有する。このことにより、従来技術に比べて簡素な構成で保温性と防水性を両立させた機能を紙基材に対して容易に付与することができる。
【0028】
本発明に用いられる保温材は、熱膨張性マイクロカプセルもしくは中空粒子を用いることが好ましい。熱膨張性マイクロカプセルは熱可塑性樹脂の外殻を持ち、内部に膨張剤である低沸点炭化水素を内包したものである。外殻を構成する熱可塑性合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリル酸またはその塩、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル等を挙げることができる。また、外殻内に封入される低沸点溶剤としては、特に限定されず、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、ネオペンタン、プロパン、プロピレン、ブテン、メタンのハロゲン化物(塩化メチル、メチレンクロリド等)、テトラアルキルシラン等を挙げることができ、二種以上を適宜選択してもよい。本発明において、保温材として熱膨張性マイクロカプセルを用いる場合、熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度および最大膨張温度が、後述する防水剤の乾燥温度条件に応じて選択することが好ましく、防水性能を発現するために最適な乾燥温度の範囲内であるものを選択することがより好ましい。具体的にはマイクロカプセルの発泡開始温度が60~120℃の範囲であることが好ましく、70~110℃がより好ましく、75~105℃がさらに好ましい。
【0029】
また、中空粒子は固体の外殻を持ち、その内部が空隙となっている(いわゆるバルーン構造を有する)微細粒子である。外殻を構成する物質としては、本発明の実施及び効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、無機元素もしくは無機化合物であることが好ましく、例えば、アルミニウムおよびその化合物、ケイ素およびその化合物、アルカリ金属およびその化合物、2族元素およびその化合物、4族元素およびその化合物、ホウ素およびその化合物等を挙げることができ、またこれらの群から1種又は2種以上使用することができる。また、保温効果を向上させる効果を高めるため、空隙部を真空状態にした真空バルーン構造の中空粒子を使用することが好ましい。中空粒子の平均粒子径および粒子の外殻の平均厚さについても、本発明の実施及び効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、平均粒子径が5~200μm、外殻部の平均厚さが0.1~20μmの中空粒子を使用することができる。
【0030】
本発明において、保温材として中空粒子を用いる場合、その耐熱温度が後述する防水剤の乾燥温度条件に応じて選択することが好ましく、防水性能を発現するために最適な乾燥温度を超えるものを選択することがより好ましい。具体的には中空粒子の耐熱温度は120℃以上であることが好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。
【0031】
本発明に用いられる合成樹脂は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種類を含有することが好適である。特に、合成樹脂がスチレン系樹脂および/またはアクリル系樹脂であることが好適である。
【0032】
本発明を構成する保温防水塗工層が含有することのできるスチレン系樹脂とは、構造中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上であることが好ましく、スチレン系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0033】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等が挙げられる。
【0034】
また、スチレン単量体と共重合可能な単量体として、例えば、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン等の共役ジエン等が挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0035】
本発明を構成する保温防水塗工層が含有することのできるアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体であるアクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂であり、アクリル系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0036】
アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル等を挙げることができ、アクリル系樹脂は、これらのアクリル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってよい。
【0037】
また、アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0038】
本発明においては、保温防水塗工層にワックスが含有されていてもよい。保温防水塗工層が含有するワックスとしては、例えば、ポリエチレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、油脂系合成ワックス(脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、水素硬化油等の合成ワックス、蜜蝋、木蝋、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス等を挙げることができる。これらのワックスは、1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができ、特に、パラフィンを含む炭化水素系ワックスが好適である。
【0039】
本発明において、保温性と防水性を両立させる観点から、防水剤100重量部に対して保温材を0.1~100重量部添加することが好ましい。保温材の添加部数は、より好ましくは75重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下としてよい。保温材を0.1重量部以下添加した場合は保温性が失われ、また保温材を100重量部以上添加した場合は防水性が失われる。
【0040】
本発明では、白色度を向上させることを目的として、保温防水性を損なわない範囲で保温防水塗工層に顔料を含有させてもよい。この場合、顔料を含有させることで保温防水塗工層の表面の白色度が、紙基材の白色度と比較して1%以上高くなっていることが好ましい。このような顔料としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーティッドクレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカ、モンモリトナイト等の無機顔料を挙げることができ、これらの顔料を1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。これらの顔料の中で、特に、保温防水塗工層の防湿性、防水性を阻害し難い点で、粒子が扁平な形状であるカオリンや炭酸カルシウムもしくはマイカが好適である。このような扁平形状の無機顔料は、アスペクト比が10以上であることが好ましい。防水塗工層における顔料の含有量は、5質量%以上、40質量%以下、好ましくは10質量%以上、35質量%以下とすることができる。顔料の含有量が5質量%未満であると、白色度の向上効果が十分に得られず、40質量%を超えると、合成樹脂成分が有する保温防水塗工層の防湿性、防水性の機能が十分発揮できないことがあるので好ましくない。また、その他の塗工剤として、例えば、バインダー、安定剤、消泡剤、粘性改良剤、保水剤、防腐剤、着色剤等を含有させてもよい。
【0041】
本発明において保温防水塗工層は、上記のような成分を含有する塗工剤を紙基材上に塗工して乾燥することにより形成することができる。保温防水塗工層の塗工量は、4~20g/mとすることが好ましく、20g/mを超えると、保温性および防水性の更なる向上は望めない一方で、製造コストの増大を来すことがある。
【0042】
本発明の保温防水紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、保温防水剤を塗工し、塗工した保温防水剤を乾燥することによって製造することができる。保温防水塗工層の形成は、公知の塗工方式を使用して塗工剤を塗工して行うことができ、例えば、エアナイフ塗工、カーテン塗工、ブレード塗工、ゲートロール塗工、ダイ塗工等の塗工方式を用いることができる。また、塗工層は、単層であっても複数層であってもよく、複数の塗工層を順次塗工してもよく、カーテン塗工などにより2層以上を同時に塗工してもよい。塗工層を乾燥する際、好ましくは、乾燥工程出口の塗工層温度が120℃未満となるように調整する。塗工剤を塗工する際の塗工速度は、塗工剤の粘度、目標塗工量を考慮して適宜設定することができる。
【0043】
好ましい態様として、紙基材への塗工剤の塗工を、エアナイフ塗工やカーテン塗工といった輪郭塗工方式により行うことにより、紙基材表面への塗工剤の塗工量が均一となり、したがって塗膜厚みが均一となり、後工程である乾燥工程において塗工層におけるブリスターの発生を抑制することができる。また、接触塗工方式に比べて塗工剤の使用量を低減することができ、製造コストを抑えることができる。
【0044】
紙基材に塗工された塗工剤を乾燥して塗工層とするが、この乾燥工程では、出口での塗工層温度が保温材の熱膨張と防水剤のブリスター発生抑制を両立させた乾燥条件が必要である。乾燥工程出口における塗工層温度の好ましい範囲として、120℃以下とすることが好ましく、100℃以下となるように調整してもよい。出口での塗工層温度が120℃を超えると、塗工層におけるブリスターの発生率が高くなることがあり、また、塗工層が形成された後に巻き取られた保温防水紙にブロッキングが発生することがある。一方、出口での塗工層温度は、60℃以上が好ましく、70℃がより好ましく、80℃以上とすることもできる。出口での塗工層温度が60℃未満であると、場合によって、塗工層が形成された後に巻き取られた保温防水紙にブロッキングが発生することがあるだけでなく、保温材の熱膨張が阻害され、また塗工層の乾燥が不十分であるため保温、防水、防湿性能を十分に発現できないことがある。またその際、保温性、防水性、防湿性をすべて両立する観点から、前述の通り保温材に熱膨張マイクロカプセルを用いる場合、発泡開始温度が60~120℃である熱膨張マイクロカプセルを用いることが好ましい。発泡開始温度が120℃を超えるマイクロカプセルを用いた場合、塗工層におけるブリスターの発生率が高くなることがあり、保温性と両立すべき防水性および防湿性が劣ることがある。また 保温材として中空粒子を用いる場合、その耐熱温度が120℃以上であることが好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。耐熱温度が120℃未満であると、乾燥工程において保温材が熱により破壊され保温性能が劣ることがある。
【0045】
乾燥工程出口での塗工層温度の設定は、紙基材の坪量および紙厚を考慮して設定することができる。例えば、紙基材が多層抄き板紙であって坪量および紙厚の大きい段ボールのライナの場合、単層紙であって坪量および紙厚が相対的に小さいクラフト紙に比べて塗工層の表面にブリスターが発生し易い傾向にある。その理由は限定されないが、段ボールのライナの場合、クラフト紙に比べて坪量および紙厚が大きいと共に透気性が低いことが多く、クラフト紙と同じ紙中水分値であっても、乾燥工程において紙基材内部で気化した多くの水分が十分に逃げきれないため、塗工層の表面にブリスターが発生し易くなると考えられる。このため、紙基材の坪量および紙厚が大きいほど、乾燥工程出口での塗工層温度を、上記の範囲内で低目に調整することが好ましい。
【0046】
ここで、乾燥工程の出口とは、乾燥工程における乾燥ゾーンが1個の場合、当該乾燥ゾーンの出口であり、乾燥工程における乾燥ゾーンが複数個の場合、最も下流側の乾燥ゾーンの出口である。
【0047】
乾燥工程出口での塗工層温度の調整は、乾燥時間、乾燥ゾーンの温度の調節により行うことができる。乾燥時間は、紙基材の送り速度、乾燥ゾーンの個数、長さ、乾燥ゾーンの機器能力(風量、赤外線出力)等で決定される。また、乾燥方式としては、公知の乾燥方式を用いることができ、例えば、蒸気シリンダ加熱乾燥方式、熱風乾燥方式、ガス式赤外線乾燥方式、電気式赤外線乾燥方式等を挙げることができ、これらのいずれか1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0048】
上記保温防水紙を段ボールライナとして用いることで、冷蔵保存が必要な鮮魚保存・輸送用の段ボール箱として使用してもよい。鮮魚を輸送する際、冷凍もしくは冷蔵状態下においた鮮魚と共に大量の氷を箱詰めの上輸送するが、本発明で得られた保温防水紙を用いた輸送箱は、保温性が良いため氷が溶けにくく、また防水性を有することにより長時間の輸送においても荷崩れしにくいことから省資源及び輸送効率の向上に寄与することが期待できる。
【実施例
【0049】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
[紙基材の準備]
針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を63質量%、古紙パルプを37質量%の割合で使用し、3層抄きで坪量280g/mとなるようライナ用の板紙を抄造して紙基材とした(紙基材サンプル)。
【0050】
[実施例1]
【0051】
中空粒子(松本油脂製薬株式会社製 MFL-100MCA、耐熱温度150~160℃)と、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂とパラフィンを含む炭化水素系ワックスが混合分散された防水材(マイケルマン社製 VAPORCOAT2200.S)を固形分重量比で1:9の割合で混合し、塗工液を調製した。調製した塗工液を、メイヤーバーを用いて塗工量が10g/mとなるよう紙基材に塗工後、送風乾燥機で105℃、1分間乾燥させて、保温防水紙を得た(サンプル1)。
【0052】
[実施例2]
セラミック製真空バルーン粒子(有限会社東亜システムクリエイト製 Heatcut Powder、融点1800℃)と、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂とパラフィンを含む炭化水素系ワックスが混合分散された防水剤(マイケルマン社製 VAPORCOAT2200.S)を固形分重量比で1:9の割合で混合し、塗工液を調製した。調製した塗工液を、メイヤーバーを用いて塗工量が10g/mとなるよう紙基材に塗工後、送風乾燥機で105℃、1分間乾燥させて、保温防水紙を得た(サンプル2)。
【0053】
[実施例3]
熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製 F-35D、)と、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂とパラフィンを含む炭化水素系ワックスが混合分散された防水剤(マイケルマン社製 VAPORCOAT2200.S)を固形分重量比で1:9の割合で混合し、塗工液を調製した。調製した塗工液を、メイヤーバーを用いて塗工量が10g/mとなるよう紙基材に塗工後、送風乾燥機で140℃、3分間乾燥させて、保温防水紙を得た(サンプル3)。
【0054】
[実施例4]
熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製 F-48D)と、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂とパラフィンを含む炭化水素系ワックスが混合分散された防水剤(マイケルマン社製 VAPORCOAT2200.S)を固形分重量比で1:9の割合で混合し、塗工液を調製した。調製した塗工液を、メイヤーバーを用いて塗工量が10g/mとなるよう紙基材に塗工後、送風乾燥機で160℃、3分間乾燥させて、保温防水紙を得た(サンプル4)。
【0055】
[実施例5]
熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製 F-78D)と、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂とパラフィンを含む炭化水素系ワックスが混合分散された防水剤(マイケルマン社製 VAPORCOAT2200.S)を固形分重量比で1:9の割合で混合し、塗工液を調製した。調製した塗工液を、メイヤーバーを用いて塗工量が10g/mとなるよう紙基材に塗工後、送風乾燥機で180℃、3分間乾燥させて、保温防水紙を得た(サンプル5)。
【0056】
[比較例1]
中空粒子(松本油脂製薬株式会社製 MFL-100MCA、膨張温度:105℃)と、ポリビニルアルコールを含む塗工液(クラレ社製、PVA117)を固形分重量比で1:9の割合で混合し、塗工液を調製した。調製した塗工液を、メイヤーバーを用いて塗工量が10g/mとなるよう紙基材に塗工後、送風乾燥機で105℃、1分間乾燥させて、保温段ボール原紙を得た(サンプル6)。
【0057】
[比較例2]
スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂とパラフィンを含む炭化水素系ワックスが混合分散された防水剤(マイケルマン社製 VAPORCOAT2200.S)を、メイヤーバーを用いて塗工量が10g/mとなるよう紙基材に塗工後、送風乾燥機で105℃、1分間乾燥させて、防水紙を得た(サンプル7)。
【0058】
[評価方法]
得られた各サンプルに対して以下の試験を行い、評価した。
(1)コッブ吸水度
JIS P 8140に準拠し、コッブ法により測定を行った。すなわち、100mlの蒸留水を塗工層に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定した。なお、測定時間は、通常の規定時間である120秒(2分間)に加え、30分でも測定を行った。
【0059】
(2)熱伝導率
サンプルを50mm×50mmに切断後、8枚重ねたうえでグラファイト紙で挟んだ測定試料を準備した。熱流束計の下部ヒーター上に熱流束測定センサ、測定試料の順に載せた後、上部ヒーターを下降させプレスし、試料表面が30℃となるよう下部ヒーターを18℃、上部ヒーターを42℃に設定し測定した熱抵抗値を用い、試料の熱伝導率を以下の式により求めた:
熱伝導率(W/mK) = 試料厚さ(m)/ 熱抵抗値(m・K/W)
【0060】
(3)保温性
作製したサンプルについて、25℃、50%RH環境下に3時間静置した後、縦200mm×横150mmに裁断し、厚さ5mmのAフルート段ボールに重ね、図1に示すように型枠にはめ込んだ後、上面に温度計を設けた発泡スチロール製の蓋に、試料が箱の内部に向けられるようはめ込んだ。発泡スチロール製容器に、塊状のかち割り氷2kgを入れた後、試料をはめ込んだ蓋にて封をし、23℃、湿度50%の環境下にて10分おきに箱内部の気温を測定した。(図2参照。)
評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
上記の結果より、本発明の保温防水紙(サンプル1~5)は、他のサンプルと比較し、保温性に優れ、かつ、防水性を有していることが明らかとなった。本発明の保温防水紙は、食品等の保温性が要求され、かつ液体が漏洩しない箱や袋などを製造するための紙として好適に使用できる。
図1
図2