(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】アイソレータ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/768 20060101AFI20241127BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20241127BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241127BHJP
H01F 19/04 20060101ALI20241127BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20241127BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241127BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H01L21/90 M
H01F17/00 B
H01F19/04 Z
H01L21/318 C
H01L21/90 K
H01L27/04 L
(21)【出願番号】P 2021070841
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅基
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150241(JP,A)
【文献】特開2016-028407(JP,A)
【文献】特開2004-119872(JP,A)
【文献】特開2021-150579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/318
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 23/522-23/532
H01F 17/00
H01F 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体と、
前記第1導体に対向する第2導体と、
前記第1導体と前記第2導体との間に設けられ、シリコンと、酸素と、窒素と、を含む第1絶縁膜と、
前記第1導体と前記第1絶縁膜との間に設けられ、シリコンと、酸素と、を含み、前記第1絶縁膜の前記窒素の組成比よりも小さい組成比の窒素をさらに含むか、もしくは、窒素を含まない第2絶縁膜であって、前記第1導体から前記第2導体に向かう第1方向において、前記第1絶縁膜は、前記第2導体と前記第2絶縁膜との間
において第1膜厚を有し、前記第2絶縁膜は、前記第1膜厚よりも薄い前記第1方向の第2膜厚を有するように設けられる第2絶縁膜と、
前記第1導体と前記第2絶縁膜との間に設けられ、前記第1膜厚よりも薄い前記第1方向の第3膜厚を有し、前記第1絶縁膜の組成および前記第2絶縁膜の組成とは異なる組成を有する第3絶縁膜と、
前記第2導体を覆う第6絶縁膜であって、前記第2導体は、前記第1絶縁膜と前記第6絶縁膜との間に設けられる、第6絶縁膜と、
第1絶縁膜と前記第6絶縁膜との間に設けられ、前記第1絶縁膜とは異なる材料を含む第1中間絶縁膜と、
前記第1中間絶縁膜と前記第6絶縁膜との間に設けられ、前記第1中間絶縁膜とは異なる材料を含む第2中間絶縁膜と、
を備え、
前記第2導体は、前記第1および第2中間絶縁膜中に設けられ、
前記第1導体と前記第2導体との間の距離は、前記第1導体と前記第1中間絶縁膜との間の距離よりも短い、アイソレータ。
【請求項2】
前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜の比誘電率よりも小さい比誘電率を有する請求項1記載のアイソレータ。
【請求項3】
前記第3絶縁膜は、シリコンと、窒素と、を含み、
前記第3絶縁膜は、酸素を含まないか、もしくは、酸素を含む場合には、前記第3絶縁膜における窒素の組成比は、前記第1絶縁膜の前記窒素の組成比よりも大きい請求項1または2記載のアイソレータ。
【請求項4】
前記第3絶縁膜は、前記第1絶縁膜の比誘電率および前記第2絶縁膜の比誘電率よりも大きい比誘電率を有する請求項1~3のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項5】
前記第1方向において、前記第1導体および前記第2導体に並ぶ基板と、
前記基板と前記第1導体との間に設けられた第4絶縁膜と、
をさらに備え、
前記第1導体は、前記基板と前記第2導体との間に設けられる請求項1~4のいずれか1つに記載のアイソレータ。
【請求項6】
前記第3絶縁膜と前記第4絶縁膜との間に設けられた第5絶縁膜をさらに備え、
前記第1導体は、前記第5絶縁膜中に設けられる請求項5記載のアイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気結合された2つのコイル間において信号を伝達するアイソレータがある。このようなアイソレータでは、例えば、2つのコイル間に厚い絶縁膜を設け、所望の絶縁耐圧を維持しながら、コイル間の絶縁破壊を防ぐことが望ましい。しかしながら、絶縁膜を厚くするとその内部応力が大きくなり、絶縁膜が形成されたウェーハに反りを発生させる。このため、アイソレータの製造プロセスに支障をきたす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、2つの導体と、その間に設けられる絶縁膜と、を含む構造体の応力を低減できるアイソレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るアイソレータは、第1導体と、前記第1導体に対向する第2導体と、第1から第3絶縁膜と、を備える。前記第1絶縁膜は、前記第1導体と前記第2導体との間に設けられ、シリコンと、酸素と、窒素と、を含む。前記第2絶縁膜は、前記第1導体と前記第1絶縁膜との間に設けられ、シリコンと、酸素と、を含み、前記第1絶縁膜の前記窒素の組成比よりも小さい組成比の窒素をさらに含むか、もしくは、窒素を含まない。前記第1絶縁膜は、前記第1導体から前記第2導体に向かう第1方向において、前記第2導体と前記第2絶縁膜との間の第1膜厚を有し、前記第2絶縁膜は、前記第1膜厚よりも薄い前記第1方向の第2膜厚を有する。前記第3絶縁膜は、前記第1導体と前記第2絶縁膜との間に設けられ、前記第1膜厚よりも薄い前記第1方向の第3膜厚を有し、前記第1絶縁膜の組成および前記第2絶縁膜の組成とは異なる組成を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係るアイソレータを表す模式断面図である。
【
図2】実施形態に係るアイソレータを表す模式平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るアイソレータの製造過程を表す模式断面図である。
【
図4】
図3に続く製造過程を表す模式断面図である。
【
図5】実施形態の変形例に係るアイソレータを表す模式断面図である。
【
図6】実施形態の別の変形例に係るアイソレータを表す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
以下の説明では、XYZ直交座標系を用いて、各構成要素の配置を説明する場合がある。Z軸方向をZ方向、Z方向に対して垂直であり、相互に直交する2方向をX方向およびY方向とする。また、Z方向を「上」、その反対方向を「下」と言及する場合がある。これらの方向は、各要素の相対的な位置関係を表し、例えば、上下は重力方向に限定される訳ではない。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るアイソレータ100を表す模式断面図である。実施形態は、例えば、デジタルアイソレータ、ガルバニックアイソレータ、ガルバニック絶縁素子と呼ばれるデバイスに関する。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態に係るアイソレータ100は、基板SS、第1導体10、第2導体20、第3導体30、接続配線40、第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2、第3絶縁膜IF3、第4絶縁膜IF4、第5絶縁膜IF5、第6絶縁膜IF6、第7絶縁膜IF7、第8絶縁膜IF8、第1ボンディングパッドBP1および第2ボンディングパッドBP2を含む。
【0011】
基板SSは、例えば、シリコン基板である。基板SSは、導電性を有しても良いし、絶縁性基板であっても良い。
【0012】
第1導体10および第2導体20は、基板SSの上方に設けられる。基板SS、第1導体10および第2導体20は、例えば、Z方向に並ぶ。第1導体10は、第2導体20に対向するように設けられる。第1導体10は、基板SSと第2導体20との間に設けられる。
【0013】
第1導体10および第2導体20は、例えば、平面コイルである。第1導体10および第2導体20は、それぞれ、X-Y平面に平行な平面内において、例えば、渦状に設けられる。第1導体10および第2導体20は、Z方向おいて対向し、相互に磁気結合される。
【0014】
第3導体30は、例えば、X-Y平面に平行な平面内において、第1導体10および第2導体20の外側に設けられる。接続配線40は、第1導体10と第3導体30とを電気的に接続する。第3導体30および接続配線40は、例えば、第1導体10と、周辺回路もしくは周辺電位と、を電気的に接続する。また、第2導体20は、例えば、外部回路ないし外部電位に接続される。
【0015】
第1絶縁膜IF1は、第1導体10と第2導体20との間に設けられる。第1絶縁膜IF1は、例えば、シリコン(Si)と、酸素(O)と、窒素(N)と、を含む。第1絶縁膜IF1は、例えば、シリコン酸窒化膜(SiON)である。
【0016】
第2絶縁膜IF2は、第1導体10と第1絶縁膜IF1との間に設けられる。第2絶縁膜IF2は、例えば、シリコン(Si)と、酸素(O)とを含む。第2絶縁膜IF2は、第1絶縁膜IF1における窒素の組成比よりも小さい組成比の窒素をさらに含んでも良し、窒素を含まなくても良い。また、第2絶縁膜IF2の比誘電率は、例えば、第1絶縁膜IF1の比誘電率よりも小さい。第2絶縁膜IF2は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)である。
【0017】
第3絶縁膜IF3は、第1導体10と第2絶縁膜IF2との間に設けられる。第3絶縁膜IF3は、第1絶縁膜IF1および第2絶縁膜IF2とは異なる組成を有する。第3絶縁膜IF3は、例えば、シリコン(Si)と窒素(N)とを含む。また、第3絶縁膜IF3の比誘電率は、例えば、第1絶縁膜IF1の比誘電率および第2絶縁膜IF2の比誘電率よりも大きい。第3絶縁膜IF3は、例えば、シリコン窒化膜(SiN)である。また、第3絶縁膜IF3は、シリコン酸窒化膜(SiON)であっても良いが、第3絶縁膜IF3における窒素の組成比は、第1絶縁膜IF1の窒素の組成比よりも大きい。さらなる別の例では、第3絶縁膜IF3は、炭化シリコン膜(SiC)もしくはシリコン炭窒化膜(SiCN)であっても良い。
【0018】
第4絶縁膜IF4は、基板SSと第1導体10との間に設けられる。第4絶縁膜IF4は、第1導体10を基板SSから電気的に絶縁する。第4絶縁膜IF4は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0019】
第5絶縁膜IF5は、第4絶縁膜IF4と第3絶縁膜IF3との間に設けられる。第5絶縁膜IF5は、例えば、シリコン酸化膜である。第1導体10は、第5絶縁膜IF5中に設けられ、第3絶縁膜IF3に接する。第3絶縁膜IF3は、例えば、第1導体10を酸化させないように、酸素を含まない組成を有する。
【0020】
第6絶縁膜IF6は、第1絶縁膜IF1上に設けられる。第6絶縁膜IF6は、例えば、シリコン窒化膜である。
【0021】
第2導体20は、第1絶縁膜IF1と第6絶縁膜IF6との間に設けられる、第2導体20は、例えば、第1絶縁膜IF1中に設けられ、第6絶縁膜IF6に接する。第6絶縁膜IF6は、例えば、第2導体20を酸化させないように、酸素を含まない組成を有する。
【0022】
第7絶縁膜IF7は、第6絶縁膜IF6上に設けられる。第7絶縁膜IF7は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0023】
第8絶縁膜IF8は、第7絶縁膜IF7上に設けられる。第8絶縁膜IF8は、例えば、ポリイミドなどの樹脂を含む。第8絶縁膜IF8は、第7絶縁膜IF7上において、第1ボンディングパッドBP1および第2ボンディングパッドBP2を囲むように設けられる。
【0024】
第1ボンディングパッドBP1は、第7絶縁膜IF7上に設けられ、第6絶縁膜IF6および第7絶縁膜IF7に設けられたコンタクトホールを介して、第3導体30に電気的に接続される。第1ボンディングパッドBP1は、例えば、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)を含む。
【0025】
第2ボンディングパッドBP2は、第7絶縁膜IF7上に設けられ、第6絶縁膜IF6および第7絶縁膜IF7に設けられたコンタクトホールを介して、第2導体20に電気的に接続される。第2ボンディングパッドBP2は、例えば、金(Cu)またはアルミニウム(Al)を含む。
【0026】
図1に示すように、第1導体10は、例えば、金属コア13とバリア層15とを含む。金属コア13は、例えば、銅(Cu)を含む。バリア層15は、例えば、タンタル(Ta)もしくは窒化タンタル(TaN)を含む。バリア層15は、例えば、金属コア13と第4絶縁膜IF4との間、および、金属コア13と第5絶縁膜IF5との間、に設けられる。バリア層15は、金属コア13から第4絶縁膜IF4および第5絶縁膜IF5への金属原子の拡散を防ぐ。
【0027】
第2導体20は、例えば、金属コア23とバリア層25とを含む。金属コア23は、例えば、銅(Cu)を含む。バリア層25は、例えば、金属コア23と第1絶縁膜IF1との間に設けられる。バリア層25は、例えば、第1絶縁膜IF1に接するように設けられる。バリア層25は、例えば、タンタル(Ta)もしくは窒化タンタル(TaN)を含む。バリア層25は、金属コア23から第1絶縁膜IF1への金属原子の拡散を防ぐ。
【0028】
第3導体30は、第1部分30aと、第2部分30bと、第3部分30cと、を含む。第1部分30a、第2部分30bおよび第3部分30cは、Z方向に並ぶ。第2部分30bは、第1部分30aと第3部分30cとの間に設けられ、第1部分30aと第3部分30cとを電気的に接続する。第3部分30cは、Z方向において、第2導体20と同じレベルに設けられる。
【0029】
第3導体30の第1部分30aは、Z方向において、第1導体10と同じレベルに設けられる。すなわち、第1部分30aは、第5絶縁膜IF5中に設けられる。第3導体30の第1部分30aは、例えば、第1導体10と同時に形成され、金属コア31とバリア層33とを含む。バリア層33は、例えば、金属コア31と第4絶縁膜IF4との間、および、金属コア31と第5絶縁膜IF5との間、に設けられる。バリア層33は、金属コア31から第4絶縁膜IF4および第5絶縁膜IF5への金属原子の拡散を防ぐ。
【0030】
第3導体30の第2部分30bは、第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2および第3絶縁膜IF3の中を-Z方向(Z方向とは反対の方向)に延在し、第1部分30aに接続される。
【0031】
第2部分30bは、金属コア35とバリア層36とを含む。金属コア35は、例えば、銅(Cu)を含む。バリア層36は、例えば、タンタル(Ta)もしくは窒化タンタル(TaN)を含む。バリア層36は、例えば、金属コア35と第1絶縁膜IF1との間、金属コア35と第2絶縁膜IF2との間、金属コア35と第3絶縁膜IF3との間、金属コア35と第1部分30aとの間にそれぞれ設けられる。バリア層36は、例えば、金属コア35から第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2および第3絶縁膜IF3への金属原子の拡散を防ぐ。
【0032】
第3導体30の第3部分30cは、Z方向において、第2導体20と同じレベルに設けられる。すなわち、第3部分30cは、第1絶縁膜IF1中に設けられ、第6絶縁膜IF6に接する。第3部分30cは、例えば、第2導体20と同時に形成され、金属コア37およびバリア層38を含む。バリア層38は、例えば、金属コア37と第1絶縁膜IF1との間、および、金属コア37と第2部分30bとの間、に設けられる。バリア層38は、金属コア37から第1絶縁膜IF1への金属原子の拡散を防ぐ。
【0033】
第3部分30cは、第2部分30bに接続される。また、第3部分30cは、第1ボンディングパッドBP1に電気的に接続される。
【0034】
接続配線40は、第4絶縁膜IF4と第5絶縁膜IF5との間に設けられる。接続配線40は、例えば、銅(Cu)を含む。接続配線40は、第1導体10の最外周に位置する部分の下面、および、第3導体30の第1部分30aの下面に接続される。
【0035】
実施形態に係るアイソレータ100では、第2導体20は、第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2および第3絶縁膜IF3により第1導体10から電気的に絶縁される。第1絶縁膜IF1は、例えば、第2導体20と第2絶縁膜IF2との間において、Z方向の第1膜厚T1を有する。第2絶縁膜IF2は、Z方向の第2膜厚T2を有する。第3絶縁膜IF3は、Z方向の第3膜厚T3を有する。
【0036】
第1導体10と第2導体20との間の絶縁耐圧は、第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2および第3絶縁膜IF3のトータル厚(T1+T2+T3)により決まる。すなわち、トータル厚(T1+T2+T3)を厚くすることにより、第1導体10と第2導体20との間の絶縁耐圧を高くすることができる。第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2および第3絶縁膜IF3のトータル厚は、好ましくは、5マイクロメートル(μm)以上である。また、より好ましくは、8μm以上である。
【0037】
例えば、基板SSとしてシリコン基板を用い、第1絶縁膜IF1および第2絶縁膜IF2にシリコン酸化膜を用い、第1絶縁膜IF1および第2絶縁膜IF2を厚くして、トータル厚(T1+T2+T3)を5μm以上とすると、第1絶縁膜IF1および第2絶縁膜IF2の内部応力が大きくなり、基板SSに反りが生じる。このため、アイソレータ100の製造過程において、ウェーハの自動搬送などに支障をきたす場合がある。
【0038】
アイソレータ100では、第1絶縁膜IF1として、例えば、シリコン酸窒化膜(SiON)を用いることにより、第1絶縁膜IF1中の応力を低減し、ウェーハの反りを抑制することができる。すなわち、シリコン酸化膜に代えて、窒素の組成比を好適に制御したシリコン酸窒化膜を用いることにより、第1絶縁膜IF1中の応力を低減することができる。
【0039】
また、第1絶縁膜IF1の第1膜厚T1は、第2絶縁膜IF2の第2膜厚T2よりも厚い。第1絶縁膜IF1の第1膜厚T1は、第3絶縁膜IF3の第3膜厚T3よりも厚い。すなわち、第1絶縁膜IF1の第1膜厚T1を厚くすることにより、ウェーハの反りを抑制しながら、第1導体10と第2導体20との間において所望の絶縁耐圧を得ることができる。
【0040】
図2は、第1実施形態に係るアイソレータ100を表す模式平面図である。
図2では、第6絶縁膜IF6、第7絶縁膜IF7および第8絶縁膜IF8を除いたアイソレータ100の上面を表している。なお、
図1は、
図2中のA1-A2線に沿った断面図である。
【0041】
図2に示すように、アイソレータ100は、第1回路50、第2回路60、接続配線70および第3ボンディングパッドBP3をさらに備える。第1回路50は、第1導体10に電気的に接続される。第2回路60は、第2導体20に電気的に接続される。
【0042】
第1回路50および第2回路60の一方は、例えば、送信回路として用いられる。第1回路50および第2回路60の他方は、例えば、受信回路として用いられる。以下、第1回路50を送信回路、第2回路60を受信回路として説明する。
【0043】
第1回路50は、第1導体10(平面コイル)の一端に電気的に接続される。第1回路50は、接続配線70を介して、第2導体20の下に位置する第1導体10に電気的に接続される。第1導体10の他端は、接続配線40を介して第3導体30に電気的に接続される(
図1参照)。
【0044】
第2回路60は、第2導体20(平面コイル)の一端に、第1金属ワイヤWR1および第2ボンディングパッドBP2を介して電気的に接続される。また、第2回路60は、第2金属ワイヤWR2および第3ボンディングパッドBP3を介して、第2導体20に電気的に接続される。
【0045】
第3ボンディングパッドBP3は、例えば、第7絶縁膜IF7上に設けられ、第2導体20の他端の上に位置する。第3ボンディングパッドBP3は、第2ボンディングパッドBP2(
図1参照)と同様に、第6絶縁膜IF6および第7絶縁膜IF7に設けられるコンタクトホール(図示しない)を介して第2導体20の他端に電気的に接続される。
【0046】
図2に示すように、第1ボンディングパッドBP1は、第3導体30の上に設けられる。第3導体30は、例えば、第1ボンディングパッドBP1上にボンディングされる金属ワイヤ(図示しない)を介して、外部回路(図示しない)もしくは基準電位に電気的に接続される。また、第3導体30の第1部分30aは、例えば、第1ボンディングパッドBP1上の金属ワイヤを介することなく、第1の基準電位に接続されてもよい。第1の基準電位は、例えば、第1の接地電位である。
【0047】
第1回路50は、例えば、基板SS上に設けられ、第1導体10に電気的に接続されても良い。第1回路50は、例えば、基板SSと第4絶縁膜IF4との間に設けられた複数のトランジスタ(図示しない)と、第4絶縁膜IF4中に設けられる配線(図示しない)と、を含む。
【0048】
第1回路50は、例えば、第1導体10と第2導体20との間の磁気結合を介した伝送に適した信号(電流)を第1導体10へ送る。すなわち、第1導体10の磁界変化に対応した誘導起電力が第2導体20に生じ、第2導体20と第2回路60との間に電流が流れる。第2回路60は、第2導体20に流れる電流を検出し、検出結果に応じた信号を生成する。これにより、第1導体10と第2導体20との間において、信号を伝達することができる。
【0049】
第2回路60は別基板上(図示しない)に設けられ、基板SS上に設けられた第1回路50とも異なる第2の接地電位を有するように設けられる。
【0050】
アイソレータ100は、第1回路50あるいは第2回路60の一方を含くむか、あるいは、いずれからも独立して設けられてもよい。例えば、
図2に示す、第1回路50と、第2回路60と、第1導体10および第2導体20のペアとが、それぞれ別の基板上に設けられ、相互に電気的に絶縁され、磁気結合された第1導体10および第2導体20のペアを介して、第1回路50と第2回路60との間で信号が送受信されるように構成されてもよい。
【0051】
また、アイソレータ100は単独でも機能するが、複数のアイソレータ100を直列に接続し、二重絶縁されたアイソレータとしても機能させることもできる。
【0052】
第3導体30は、X-Y平面に沿って、第1導体10および第2導体20を囲むように設けられる。第3導体30の第1部分30a(
図1参照)は、X-Y平面に平行な平面に沿って第1導体10を囲むように設けられる。第3導体30の第3部分30cは、X-Y平面に沿って、第2導体20を囲む。
【0053】
第3導体30の第2部分30bは、第1部分30a上に設けられる。第2部分30bは、複数設けられ、第1部分30aに沿って並ぶ。第2部分30bは、それぞれZ方向に延在する。第2部分30bの下端は、第1部分30aに接続され、第2部分30bの上端は、第3部分30cに接続される(
図1参照)。
【0054】
次に、
図3(a)~
図4(c)を参照して、第1実施形態に係るアイソレータ100の製造方法を説明する。
図3(a)~
図4(c)は、アイソレータ100の製造過程の一部を表す断面図である。
図3(a)~
図4(c)は、
図2中のA1-A2線に沿った断面に対応する模式図である。
【0055】
図3(a)に示すように、第5絶縁膜IF5上に、第3絶縁膜IF3、第2絶縁膜IF2および第1絶縁膜IF1を順に形成する。第5絶縁膜IF5中には、第3導体30の第1部分30aが形成されている。また、図示しない部分において、第1導体10が第5絶縁膜IF5中に形成されている。
【0056】
第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2および第3絶縁膜IF3は、例えば、プラズマCVD(Plasma enhanced Chemical Vapor Deposition)を用いて形成される。第1絶縁膜IF1は、例えば、シリコン酸窒化膜である。第2絶縁膜IF2は、例えば、シリコン酸化膜である。第3絶縁膜IF3は、例えば、シリコン窒化膜である。
【0057】
図3(b)に示すように、第1絶縁膜IF1上に、エッチングマスク41を形成する。エッチングマスク41は、第3導体30の第1部分30aの上方に位置する開口41fを有する。エッチングマスク41は、例えば、フォトレジストである。
【0058】
図3(c)に示すように、エッチングマスク41を用いて第1絶縁膜IF1を選択的に除去し、コンタクトホールCHを形成する。第1絶縁膜IF1は、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)を用いて除去される。第1絶縁膜IF1は、例えば、シリコン酸窒化膜のエッチング速度がシリコン酸化膜のエッチング速度の少なくとも数倍となる条件下でエッチングされる。これにより、コンタクトホールCHの底面が第2絶縁膜IF2中に到達した時点でエッチングを停止するように、エッチング時間を制御できる。
【0059】
図4(a)に示すように、第2絶縁膜IF2の残りを除去し、第3絶縁膜IF3をコンタクトホールCHの底面に露出させる。第2絶縁膜IF2は、例えば、エッチングマスク41を用いたRIEにより選択的に除去される。第2絶縁膜IF2は、例えば、シリコン酸化膜のエッチング速度がシリコン窒化膜のエッチング速度の10倍を超える条件下でエッチングされる。
【0060】
図4(b)に示すように、第3絶縁膜IF3を選択的に除去し、コンタクトホールCHの底面に第3導体30の第1部分30aを露出させる。第3絶縁膜IF3は、例えば、エッチングマスク41を用いたRIEにより選択的に除去される。
【0061】
図4(c)に示すように、エッチングマスク41を除去後、第3導体30の第2部分30bをコンタクトホールCHの内部に形成する。第2部分30bは、第1部分30aに電気的に接続されるように形成される。第2部分30bは、例えば、反応性スパッタリング法を用いて、コンタクトホールCHの内面を覆う窒化タンタル(TaN)を形成した後、Cuメッキ法を用いて、コンタクトホールCHの内部を充填することにより形成される。
【0062】
上記の製造過程において、例えば、第2絶縁膜IF2を形成しないで、第3絶縁膜IF3の上に、直接、第1絶縁膜IF1を形成すると、第3絶縁膜IF3が露出された時点で第1絶縁膜IF1のエッチングを停止することが難しくなる。すなわち、第1絶縁膜IF1および第3絶縁膜IF3は、共に窒素(N)を含むため、第1絶縁膜IF1と第3絶縁膜IF3との間のエッチングの選択比が大きくなるエッチング条件を設定することが困難になる。したがって、第1絶縁膜IF1および第3絶縁膜IF3は連続してエッチングされ、第3導体30の第1部分30aが露出された時点でエッチングが停止される。
【0063】
このようなエッチング過程では、第3導体30の第1部分30aが、ウェーハの全面において、コンタクトホールCHの底面に露出された時点でエッチングを停止するように、エッチング時間を制御する。このため、ウェーハ面内におけるエッチングの不均一に起因して、第1部分30aが第1絶縁膜IF1および第3絶縁膜IF3のエッチング雰囲気に晒される時間が長くなる部分が生じる。この結果、第1部分30aがエッチングされ、第1部分30aの成分を含む残渣が、例えば、エッチング装置のチャンバ内に残される。
【0064】
第3導体30の第1部分30aは、例えば、銅(Cu)を含む。このため、Cuを含むエッチング残渣がチャンバー内に残り、エッチングガスが失活するなどの不具合を生じさせることがある。これを回避するため、チャンバークリーニングを頻繁に実施してエッチング残渣を除去することになり、製造効率が低下する。
【0065】
これに対し、アイソレータ100の製造過程では、第1絶縁膜IF1のエッチングを第2絶縁膜IF2が露出された時点で停止させ、その後、第2絶縁膜IF2の残りの部分および第3絶縁膜IF3をそれぞれ選択的にエッチングすることが可能となる。これにより、第3導体30の第1部分30aをエッチング雰囲気に晒す時間を短縮することができる。その結果、第1部分30aの成分を含むエッチング残渣の発生を抑制し、チャンバークリーニングの間隔を長くすることができる。
【0066】
例えば、第3絶縁膜IF3のエッチング時間を短縮すれば、第3導体30の第1部分30aがエッチング雰囲気に晒される時間を短縮するすることができる。すなわち、第3絶縁膜IF3の第3膜厚T3は、第2絶縁膜IF2の第2膜厚T2よりも薄いことが好ましい。それぞれのエッチングレートの差を勘案して、第2膜厚T2と第3膜厚T3の比(T2/T3)は、少なくとも5倍であることが好ましい。また、第1膜厚T1と第2膜厚T2の比は、エッチングレートの差に比例して設定される。膜厚比(T1/T2)は、好ましくは、約2倍である。
【0067】
図5は、実施形態の変形例に係るアイソレータ110を示す模式断面図である。
図5に示すように、アイソレータ110は、第9絶縁膜IF9と、第10絶縁膜IF10と、をさらに備える。
【0068】
第9絶縁膜IF9は、第1絶縁膜IF1と第6絶縁膜IF6との間に設けられる。第9絶縁膜IF9は、例えば、シリコン窒化膜である。第9絶縁膜IF9は、第1絶縁膜IF1の第1膜厚T1(
図1参照)よりも薄いZ方向の膜厚を有する。
【0069】
第10絶縁膜IF10は、第9絶縁膜IF9と第6絶縁膜IF6との間に設けられる。第10絶縁膜IF10は、第1絶縁膜IF1の第1膜厚T1よりも薄いZ方向の膜厚を有する。また、第10絶縁膜IF10は、第9絶縁膜IF9の材料に対するエッチングの選択比が大きい材料を含む。第10絶縁膜IF10は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0070】
この例では、第2導体20は、第9絶縁膜IF9および第10絶縁膜IF10の中に設けられる。第2導体20は、例えば、第10絶縁膜IF10の上面から第1絶縁膜IF1に至る深さの溝の内部に設けられる。
【0071】
第9絶縁膜IF9は、第2導体20を形成する過程において、例えば、第10絶縁膜IF10のエッチングストップ膜として用いられる。すなわち、第10絶縁膜IF10の上面から第9絶縁膜IF9に至る深さの溝を形成し、その後、第9絶縁膜IF9をエッチングする。第9絶縁膜IF9のZ方向の厚さは、第10絶縁膜IF10のZ方向の厚さよりも薄い。これにより、第2導体20の下端の位置の制御が容易になる。
【0072】
第2導体20の下端は、例えば、第1絶縁膜IF1と第9絶縁膜IF9との境界よりも下のレベルに位置する。言い換えれば、第1導体10と第2導体20の下端との間の距離は、第1導体10と第9絶縁膜IF9との間の距離よりも短い。これにより、第1導体10と第2導体20との間の絶縁膜の応力を緩和することができる。
【0073】
第3導体30の第3部分30cも第2導体20と同様に形成される。すなわち、第3部分30cは、第9絶縁膜IF9および第10絶縁膜IF10の中に設けられる。第3部分30cの下端は、第1絶縁膜IF1と第9絶縁膜IF9との境界よりも下のレベルに位置する。
【0074】
図6は、実施形態の別の変形例に係るアイソレータ200を表す模式断面図である。アイソレータ200の第1導体10および第2導体20は、それぞれ平板状に設けられ、対向して配置される。第2導体20は、第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2および第3絶縁膜IF3により、第1導体10から電気的に絶縁される。
【0075】
アイソレータ200をZ方向に見た時、第1導体10および第2導体20は、例えば、円形、楕円形もしくは多角形の形状を有しても良い。第1導体10および第2導体20は、例えば、第1導体10の上面と第2導体20の下面が平行となるように設けられる。
【0076】
アイソレータ200は、磁界の変化に代えて、電界の変化を利用して信号を伝達する。例えば、第1回路50により第1導体10(入力側)の電位を変化させると、第2導体20(出力側)に誘起される電荷量が変化する。これにより、第2導体20と第2回路60との間に電荷が流れる。第2回路60は、この電荷量の変化に起因した電圧を検出し、検出結果に基づいて信号を生成する。これにより、第1導体10と第2導体20との間において信号を伝達することができる。
【0077】
この例でも、第1絶縁膜IF1は、シリコン(Si)と、酸素(O)と、窒素(N)と、を含み、その応力を低減し、ウェーハの反りを抑えることができる。また、第2絶縁膜IF2として、窒素(N)を含まない絶縁膜、もしくは、第1絶縁膜IF1の窒素の組成比よりも小さい窒素の組成比を有する絶縁膜を用いることにより、アイソレータ200の製造過程においてエッチングの残差を抑制し、製造効率を向上させることができる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…第1導体、 13、23、31、35、37…金属コア、 15、25、33、36、38…バリア層、 20…第2導体、 30…第3導体、 30a…第1部分、 30b…第2部分、 30c…第3部分、 40、70…接続配線、 41…エッチングマスク、 41f…開口、 50…第1回路、 60…第2回路、 100、200…アイソレータ、 BP1…第1ボンディングパッド、 BP2…第2ボンディングパッド、 BP3…第3ボンディングパッド、 CH…コンタクトホール、 IF1…第1絶縁膜、 IF2…第2絶縁膜、 IF3…第3絶縁膜、 IF4…第4絶縁膜、 IF5…第5絶縁膜、 IF6…第6絶縁膜、 IF7…第7絶縁膜、 IF8…第8絶縁膜、 SS…基板、 WR1、WR2…金属ワイヤ