(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】高炉装入物の堆積形状測定装置および高炉
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20241127BHJP
G01B 15/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C21B7/24 302
G01B15/04 C
(21)【出願番号】P 2021079762
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】高山 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 祐輝
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100648(JP,A)
【文献】特開2019-158607(JP,A)
【文献】特開2017-020078(JP,A)
【文献】特開平10-237517(JP,A)
【文献】特開2013-159800(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0058545(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00- 7/24
G01B 15/00-15/08
F27D 21/00-21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉装入物の堆積形状測定装置であって、
高炉炉頂部に設けられる電子走査型のマイクロ波距離計を備え、
前記マイクロ波距離計は、サウンジング位置とプロフィル測定位置との間で昇降可能であって、かつ、前記サウンジング位置で前記高炉装入物のサウンジングを行い、前記プロフィル測定位置で前記高炉装入物のプロフィル測定を行うことが可能な構成を有していることを特徴とする、堆積形状測定装置。
【請求項2】
前記マイクロ波距離計は、三次元マイクロ波距離計であることを特徴とする、請求項1に記載の堆積形状測定装置。
【請求項3】
前記マイクロ波距離計は、電子走査型定在波レーダであることを特徴とする、請求項1に記載の堆積形状測定装置。
【請求項4】
高炉炉頂部に設けられた、高炉装入物のサウンジングを行う複数のサウンジング装置と、
請求項1~3のいずれか一項に記載の堆積形状測定装置と、を備え、
前記サウンジング装置と前記堆積形状測定装置は、互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする、高炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉装入物の堆積形状を測定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業における高炉操業では、炉頂部に設置された原料装入装置によって炉内に焼結鉱とコークスが交互に装入され、層状に堆積した鉱石層とコークス層が形成される。そして、原料が堆積した炉内に羽口から熱風が吹き込まれることで、コークスが燃焼し、その燃焼反応によりCOガスが生成され、生成されたCOガスで焼結鉱が加熱されることにより酸化鉄が還元されて鉄が分離する。これにより軟化融着帯が形成され、鉄の溶滴、すなわち溶銑が、副生されたスラグとともに炉底部に滴下される。その後、炉底部に貯留した溶銑が適時出銑口から出銑される。
【0003】
上記のような高炉操業を安定的に行うためには、炉頂部に装入された装入物(焼結鉱やコークス)の降下量および装入物表面の堆積形状(プロフィル)を監視し、適正量の装入物が適切に堆積している状態を維持する必要がある。このため、装入物の高さレベルを測定するサウンジング装置や、装入物のプロフィルを測定するプロフィル測定装置の開発が進められている。
【0004】
特許文献1には、炉頂部から高炉装入物に向かってマイクロ波を送信するとともに、受信した高炉装入物の反射エコーに基づいて高炉装入物の高さレベルを測定するマイクロ波式サウンジング装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、回動角度が可変である反射板を有した機械走査型のマイクロ波距離計を複数備えたプロフィル計が開示されている。特許文献2に記載のプロフィル計は、装入物の表面領域を分割し、各分割領域における装入物のプロフィル測定を担当するマイクロ波距離計を割り当て、割り当てられた各々のマイクロ波距離計で各分割領域のプロフィルを測定している。
【0006】
特許文献3には、一対の赤外線カメラによる装入物表面の温度パターンから三次元的に高炉装入物のプロフィルを測定するプロフィル計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-020078号公報
【文献】特開2019-158607号公報
【文献】特開2008-096298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高炉装入物のプロフィルを精度良く測定するためには、炉頂部に複数のプロフィル計を設けることが好ましいが、従来の高炉においては、炉頂部にサウンジング装置やプロフィル計などの複数の装置が設置されるため、プロフィル計の設置スペースには限りがある。
【0009】
しかしながら、特許文献1~3には、サウンジング装置やプロフィル計の設置スペースの省スペース化については考慮されていない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高炉装入物の堆積状態を監視するための装置の設置スペースについて、省スペース化を図ることを目的とする。また、装置の設置には、炉体の開口から耐環境対策を含め多大な設置コストを必要とするため、これを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、高炉装入物の堆積形状測定装置であって、高炉炉頂部に設けられる電子走査型のマイクロ波距離計を備え、前記マイクロ波距離計は、サウンジング位置とプロフィル測定位置との間で昇降可能であって、かつ、前記サウンジング位置で前記高炉装入物のサウンジングを行い、前記プロフィル測定位置で前記高炉装入物のプロフィル測定を行うことが可能な構成を有していることを特徴としている。
【0012】
前記マイクロ波距離計は、三次元マイクロ波距離計であってもよい。
【0013】
前記マイクロ波距離計は、電子走査型定在波レーダであってもよい。
【0014】
別の観点による本発明は、高炉であって、高炉炉頂部に設けられた、高炉装入物のサウンジングを行う複数のサウンジング装置と、上記の堆積形状測定装置と、を備え、前記サウンジング装置と前記堆積形状測定装置は、互いに間隔をおいて配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高炉装入物の堆積状態を監視するための装置の設置スペースについて、省スペース化を図ることができる。また、装置の設置コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る高炉装入物の堆積形状測定装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】マイクロ波距離計の設置位置を示す説明図である。
【
図3】マイクロ波距離計の昇降動作の説明図である。
【
図4】比較例および実施例における堆積形状測定装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る高炉装入物の堆積形状測定装置の概略構成を示す説明図である。
図2は、マイクロ波距離計の設置位置を示す説明図であり、高炉炉頂部を上方から見た模式図である。
【0019】
図1に示すように、高炉10の炉頂部11においては、炉内に装入される装入物として焼結鉱とコークスが装入された状態にあり、焼結鉱とコークスが層状に重なって堆積することで鉱石層12とコークス層13が形成されている。また、装入物は、略水平なテラス部14と、テラス部14から高炉中心Cに向かって下方に傾斜した傾斜部15とをなすように堆積している。
【0020】
高炉装入物の堆積形状測定装置1は、炉頂部11に設けられるマイクロ波距離計2を備えている。マイクロ波距離計2は、装入物に向かってマイクロ波を送信し、装入物で反射したエコーを検知することが可能な構成を有している。なお、マイクロ波距離計2としては、装入物のプロフィル測定に使用される公知のマイクロ波距離計を適用することができる。また、マイクロ波距離計2は、二次元マイクロ波距離計であっても、三次元マイクロ波距離計であってもよい。また、マイクロ波距離計2は、電子走査型定在波レーダであってもよい。
【0021】
マイクロ波距離計2は、2つ設置されており、各々のマイクロ波距離計2の設置位置から高炉中心Cまでの距離は互いに略同一である。
図2に示すように、炉頂部11には、マイクロ波距離計2を備える堆積形状測定装置1と、2つのサウンジング装置3が炉周方向Rに間隔をおいて交互に配置されている。隣り合う各堆積形状測定装置1と各サウンジング装置3の間隔は、それぞれ略等間隔であることが好ましい。
【0022】
なお、サウンジング装置3としては、装入物のサウンジングに使用される公知のサウンジング装置を適用することができる。また、本実施形態では、堆積形状測定装置1とサウンジング装置3が2つずつ設けられているが、堆積形状測定装置1とサウンジング装置3の数は、操業に支障がない範囲で適宜変更されてもよい。例えば堆積形状測定装置1が1つであって、サウンジング装置3が3つであってもよい。この場合、隣り合う堆積形状測定装置1とサウンジング装置3の間隔、および、隣り合うサウンジング装置3同士の間隔は、それぞれ略等間隔に配置されることが好ましい。
【0023】
図1に示すように、炉頂周辺の炉壁には、高炉10の高さ方向に延伸するパイプ4が取り付けられている。パイプ4は、マイクロ波距離計2の設置位置に対応する位置に2本設けられており、各パイプ4は、装入物のテラス部14の上方に配置されている。各パイプ4は、マイクロ波距離計2がパイプ4の内方を通過可能な径を有している。
【0024】
マイクロ波距離計2は、図示しない昇降機構により昇降可能に構成されている。マイクロ波距離計2は、初期位置としてパイプ上端部に位置しており、昇降動作時にはパイプ4の内方を移動する。
【0025】
このように構成されたマイクロ波距離計2は、
図3(a)に示すように、パイプ上端部に位置している際には、下方に向かってマイクロ波を送信し、サウンジング装置として機能させることができる。本実施形態においては一次元サウンジング装置として機能する。
【0026】
一方、
図3(b)に示すように、マイクロ波距離計2をパイプ下端部まで下降させた際には、マイクロ波を走査することで、プロフィル計として機能させることができる。本実施形態の場合、2つのマイクロ波距離計2をパイプ下端部に下降させた際に、1つのマイクロ波距離計2の測定視野に炉壁内面から高炉中心Cまでの領域が含まれ、残りの1つのマイクロ波距離計2の測定視野に残りの炉内領域が含まれる。
【0027】
上記のように、マイクロ波距離計2がパイプ上端部とパイプ下端部の間を昇降することで、マイクロ波距離計2はサウンジング装置3として機能する位置からプロフィル計として機能する位置まで移動するように構成されている。換言すると、マイクロ波距離計2は、装入物のサウンジングを行うサウンジング位置と、装入物のプロフィルを測定するプロフィル測定位置との間で昇降可能に構成されている。なお、炉内との遮断に用いる遮断装置等は図示していない。
【0028】
マイクロ波距離計2の昇降移動は、制御部5から出力された動作信号が昇降装置(図示せず)に入力されることで行われる。制御部5からの動作信号は、例えばオペレータによる端末操作によって出力される。この場合、例えばオペレータがプロフィル測定を実施したいタイミングで端末操作を行うことによって、サウンジング中のマイクロ波距離計2の下降動作が開始する。
【0029】
本実施形態における高炉装入物の堆積形状測定装置1は以上のように構成されている。この堆積形状測定装置1を用いた高炉操業においては、例えば通常はマイクロ波距離計2をサウンジング位置に移動させてサウンジング装置3として使用し、プロフィル測定を実施する場合は、マイクロ波距離計2をプロフィル測定位置まで下降させてプロフィル計として使用することができる。
【0030】
すなわち、本実施形態における堆積形状測定装置1は、サウンジング装置とプロフィル計の両方の機能を有しているため、従前のようにサウンジング装置とプロフィル計を別々に設置する必要がない。したがって、既存のサウンジング装置3の設置位置に本実施形態に係る堆積形状測定装置1を設置することができるため、従前の高炉と比較して、炉頂部周辺における各種装置の設置スペースの省スペース化が可能となる。
【0031】
特に、本実施形態における堆積形状測定装置1は、マイクロ波距離計2が昇降可能に構成されているため、装入物のプロフィル測定が完了した後にマイクロ波距離計2を上昇させて装入物から遠ざけることが可能となる。高炉操業においては、装入物の隙間から突発的に高温のガスが吹き上げる「吹き抜け」という現象が起こることがあり、マイクロ波距離計が装入物に近い位置に配置されていると、ガスの吹き抜けに伴う高炉装入物の飛散によりマイクロ波距離計が破損することが懸念される。このため、例えばマイクロ波距離計2がプロフィル測定完了後もプロフィル測定位置に留まっていると、ガスの吹き抜けによりマイクロ波距離計2が破損するおそれがある。これに対し、本実施形態における堆積形状測定装置1によれば、プロフィル測定後にマイクロ波距離計2を上昇させて装入物から遠ざけることができるため、ガスの吹き抜けによるマイクロ波距離計2の破損リスクを低減することが可能となる。
【0032】
また一方で、ガスの吹き抜け対策として装入物から離れた位置に取り付けられた従前のサウンジング装置の設置位置でプロフィル測定を実施しようとすると、マイクロ波の走査範囲が限定され、プロフィルの測定領域も狭くなる。これに対し、本実施形態における堆積形状測定装置1によれば、プロフィル測定時にマイクロ波距離計2を下降させることができるため、マイクロ波の走査範囲を拡大することができ、プロフィルの測定領域が広くなる。これにより、プロフィル測定時には、炉内のより広い領域のプロフィルを測定することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0034】
堆積形状測定装置の構成例を
図4に示す。比較例1の構成は、4つのサウンジング装置3が炉周方向に沿って略等間隔で設置され、それらのサウンジング装置3とは別に電子走査型のプロフィル計20が設置されている。比較例2の構成は、比較例1のプロフィル計20に代えて機械走査型のプロフィル計21が2つ設置されている。なお、比較例1および比較例2のいずれにおいても、プロフィル計の昇降機構は設けられていない。実施例1の構成は、比較例1のプロフィル計20が設置されておらず、前述の実施形態で説明した堆積形状測定装置1が4つのサウンジング装置3のうちの1つのサウンジング装置3に代えて設置されている。実施例2の構成は、前述の実施形態で説明した堆積形状測定装置1がさらに1つ追加され、堆積形状測定装置1とサウンジング装置3が炉周方向において交互に配置されている。
【0035】
上記の各形状測定装置において、装置の設置スペース、プロフィルの測定精度、測定周期、信頼性(破損や故障の発生リスクの低さ)および費用の観点で相対評価を実施すると、下記表1のような結果となる。
【0036】
【0037】
設置スペースの観点において、実施例1、2では、既存のサウンジング装置に代えてプロフィル測定も実施できる堆積形状測定装置1が設置されているため、サウンジング装置とプロフィル計が別々に設置されている比較例1、2に対し、設置スペースの省スペース化の効果が大きい。
【0038】
測定精度の観点において、比較例1と実施例1では、1つのプロフィル計で測定を実施していること、比較例2ではガスの吹き抜け対策として装入物からの距離が離れていることを理由に、実施例2よりも測定精度が劣る。
【0039】
測定周期の観点において、比較例2では機械走査型のプロフィル計が使用されているため、電子走査型の装置が使用されている他の構成例よりも測定時間を要する。実施例2においては、装入物の回転投入装置の回転周期よりも測定周期を短くすることが可能となる。
【0040】
信頼性の観点において、比較例1のプロフィル計は、装入物からの距離が十分に確保されていない。このため、吹き抜けによりプロフィル計が破損するおそれがある。比較例2では、機械走査型のプロフィル計が使用されているため、プロフィル測定が繰り返し実施されることで、可動部などに故障が発生するおそれがある。加えて、機械走査型の構造上、炉内開口部を大きくせざるを得ないため、吹き抜けによりプロフィル計が破損する確率が高い。一方、実施例1、2では、プロフィル測定時以外は、堆積形状測定装置1のマイクロ波距離計2と装入物の距離が十分に確保されるため、ガスの吹き抜けによる破損のリスクが大きく低減される。
【0041】
費用の観点において、実施例1、2では、既存のサウンジング装置の設置位置にプロフィル測定を実施できる堆積形状測定装置1が設置されるため、サウンジング装置とは別のプロフィル計を設置する必要がない。このため、比較例1、2と比較して同等の費用か、または費用を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、高炉装入物の堆積形状測定に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 堆積形状測定装置
2 マイクロ波距離計
3 サウンジング装置
4 パイプ
5 制御部
10 高炉
11 炉頂部
12 鉱石層
13 コークス層
14 テラス部
15 傾斜部
20 電子走査型のプロフィル計
21 機械走査型のプロフィル計
C 高炉中心
R 炉周方向