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特許7594515機能材含有層付ヒーターエレメント及び車室浄化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】機能材含有層付ヒーターエレメント及び車室浄化システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20241127BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20241127BHJP
   H05B 3/40 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H05B3/14 A
B60H1/22 611C
H05B3/40 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021156063
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047122
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】桝田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】馬場 悠介
(72)【発明者】
【氏名】松元 昂
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-306644(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125771(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/036067(WO,A1)
【文献】特開2020-104774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02 - 3/82
B01D 53/02 - 53/12
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、入口端面から出口端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、
前記隔壁の表面に設けられ、入口端面から出口端面に向かって厚みが大きくなる機能材含有層であって、空気中の除去対象成分を吸着する機能を有する吸着材、及び/又は、触媒を含有する機能材含有層と、
を備えるヒーターエレメント。
【請求項2】
前記機能材含有層の厚みが前記入口端面から前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって0である領域を有する請求項1に記載のヒーターエレメント。
【請求項3】
前記所定の長さは、前記ハニカム構造体の流路の延びる方向の長さに対して1/10以上1/2以下である請求項2に記載のヒーターエレメント。
【請求項4】
前記機能材含有層の厚みが前記出口端面に近づくにつれて連続的に大きくなる領域を有する請求項1~3の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項5】
前記機能材含有層の厚みが前記入口端面から前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって0である第一領域と、
第一領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に所定の長さにわたって延び、前記機能材含有層の厚みが前記出口端面に近づくにつれて連続的に大きくなる第二領域と、
第二領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に前記出口端面まで延び、前記機能材含有層の厚みが前記出口端面まで一定である第三領域と、
を有する請求項1~4の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項6】
前記第一領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、前記ハニカム構造体の流路の延びる方向の長さに対して1/4以上1/3以下の長さであり、
前記第二領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、前記ハニカム構造体の流路の延びる方向の長さに対して1/6以上1/4以下の長さである、
請求項5に記載のヒーターエレメント。
【請求項7】
前記機能材含有層の厚みは最大で300μm以下である請求項1~6の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項8】
前記流路の延びる方向に、前記流路の長さに対して1/2以上9/10以下の長さで延び、前記機能材含有層の厚みがセルの水力直径の1/100以上1/3以下である連続した領域を有する請求項1~7の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項9】
前記機能材含有層の量が、前記ハニカム構造体の容積に対して、50g/L以上500g/L以下である請求項1~8の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項10】
前記機能材含有層が水蒸気、二酸化炭素、及びにおい成分から選択される一種又は二種以上を吸着する機能を有する機能材を含有する請求項1~9の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項11】
前記機能材含有層が触媒を含有する請求項1~10の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項12】
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.125mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.0mm以上である請求項1~11の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項13】
前記ハニカム構造体は、前記隔壁の厚さが0.08mm以上0.36mm以下、セル密度が2.54セル/cm2以上140セル/cm2以下、前記セルの開口率が0.80以上である請求項1~11の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項14】
PTC特性を有する前記材料の25℃における体積抵抗率が0.5Ω・cm以上20Ω・cm以下である請求項1~13の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項15】
PTC特性を有する前記材料はチタン酸バリウムを主成分とし、鉛を実質的に含まない材料で構成されている、請求項1~14の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項16】
前記ヒーターエレメントは、前記入口端面及び前記出口端面に一対の電極を備える請求項1~15の何れか一項に記載のヒーターエレメント。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載の少なくとも一つのヒーターエレメントと、
前記ヒーターエレメントに電圧を印加するための電源と、
車室と前記ヒーターエレメントの前記入口端面とを連通する流入配管と、
前記ヒーターエレメントの前記出口端面と前記車室とを連通する第一経路を有する流出配管と、
前記車室からの空気を前記流入配管を介して前記ヒーターエレメントの前記入口端面に流入させるための通風機と、
を備える車室浄化システム。
【請求項18】
前記流出配管は、前記第一経路に加えて、前記ヒーターエレメントの前記出口端面と車外とを連通する第二経路を有しており、
前記流出配管は、前記流出配管を流通する空気の流れを前記第一経路と前記第二経路の間で切替え可能な切替えバルブを有しており、
前記電源からの印加電圧をオフとし、前記流出配管を流通する空気が前記第一経路を通るように前記切替えバルブを切替え、前記通風機をオンとする第1のモードと、
前記電源からの印加電圧をオンとし、前記流出配管を流通する空気が前記第二経路を通るように前記切替えバルブを切替え、前記通風機をオンとする第2のモードと、
の間で切り替えを実行可能な制御部を備える、請求項17に記載の車室浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能材含有層付ヒーターエレメント及び車室浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの各種車両において、車室環境の向上に対する要求が高まっている。具体的な要求としては、車室内のCO2を低減して運転者の眠気を抑制すること、車室内を調湿すること、及び、車室内のにおい成分やアレルギー誘因成分などの有害な揮発成分を除去することなどが挙げられる。このような要求に有効な対策として換気が挙げられるが、換気は、冬場のヒーターエネルギーを大きくロスする要因となり、冬場のエネルギー効率の悪化を招く。特に電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)では、そのエネルギーロスにより、航続距離が大幅に減少するという問題がある。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、特許文献1及び特許文献2には、車室の空気中の水蒸気及びCO2などの除去対象成分を吸着材などの機能材に捕捉した後、加熱によって除去対象成分を反応又は離脱させて車外に放出し、機能材を再生する車室浄化システムが開示されている。このような車室浄化システムでは、除去対象成分の捕捉性能を確保するために空気と機能材との接触ができるだけ多いこと、及び機能材の再生を促進するために機能材を所定の温度に加熱できることが求められる。再生は、例えば、機能材に吸着した物質を酸化反応により除去する方法、及び、機能材に吸着した物質を脱離させて排出する方法等により行われるが、何れにしても吸着物質に応じて機能材を適切な温度に加熱することが必要である。
【0004】
他方、特許文献3には、外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、第1の端面から第2の端面まで流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有する柱状ハニカム構造部を備え、隔壁がPTC特性を有しており、隔壁の平均厚みが0.13mm以下であり、第1及び第2の端面における開口率が0.81以上であるヒーターエレメントが開示されている。このヒーターエレメントは、車室暖房用ヒーターに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-104774号公報
【文献】特開2020-111282号公報
【文献】国際公開第2020/036067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載のヒーターエレメントは、車室の暖房用途に用いられるものであるが、ハニカム構造を有することで加熱面積を大きくすることができるので、効率の良い加熱手段である。従って、このようなヒーターエレメントを機能材の担体として使用すると、機能材の再生時間の短縮化に貢献できると考えられる。
特に、特許文献3に記載のヒーターエレメントは、通電による加熱が可能であり且つPTC特性を有するため、機能材を容易に加熱できる一方で、過剰な発熱を抑制し、機能材の熱劣化を抑制することもできると考えられる。また、過剰な温度になってしまう恐れが回避されるので、初期抵抗を小さく設定して加熱速度を速めても安全を確保でき、短時間での昇温が可能である。
【0007】
しかしながら、本発明者の検討の結果、特許文献3に記載のヒーターエレメントのセルを区画形成する隔壁の表面に機能材含有層を設けた場合、ヒーターエレメントの入口側近傍は温度が上昇しにくく、入口側近傍に担持した機能材が昇温しにくい。このため、入口側近傍に担持した機能材は再生効率が低く、有効活用することができない。また、機能材が触媒であるとき、触媒活性化のために加熱が必要な場合があるが、入口側近傍に担持した触媒の昇温が不十分だと触媒を有効活用することができない。有効活用できない機能材含有層を設けることはヒーターエレメントのコストパフォーマンスを低下させる要因となる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、コストパフォーマンスが改善された機能材含有層付ヒーターエレメントを提供することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、そのような機能材含有層付ヒーターエレメントを備えた車室浄化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、入口端面から出口端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体と、
前記隔壁の表面に設けられ、入口端面から出口端面に向かって厚みが大きくなる機能材含有層と、
を備えるヒーターエレメントが提供される。
【0010】
本発明の別の一実施形態によれば、少なくとも一つの前記ヒーターエレメントと、
前記ヒーターエレメントに電圧を印加するための電源と、
車室と前記ヒーターエレメントの前記入口端面とを連通する流入配管と、
前記ヒーターエレメントの前記出口端面と前記車室とを連通する第一経路を有する流出配管と、
前記車室からの空気を前記流入配管を介して前記ヒーターエレメントの前記入口端面に流入させるための通風機と、
を備える車室浄化システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、機能材含有層付ヒーターエレメントのコストパフォーマンスを改善することが可能になる。より具体的には、当該ヒーターエレメントは温度上昇し易い、すなわち機能材の再生が容易な箇所における機能材含有層の厚みが大きいことから、再生困難で有効活用されない機能材及び/又は昇温不十分のために機能が発揮されないことにより有効活用されない機能材の割合を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの模式的な斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に直交する断面の模式図である。
図3A】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に延びる中心軸Oを通る流路方向に平行な断面の模式図である(態様1)。
図3B】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に延びる中心軸Oを通る流路方向に平行な断面の模式図である(態様2)。
図3C】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に延びる中心軸Oを通る流路方向に平行な断面の模式図である(態様3)。
図3D】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に延びる中心軸Oを通る流路方向に平行な断面の模式図である(態様4)。
図3E】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に延びる中心軸Oを通る流路方向に平行な断面の模式図である(態様5)。
図3F】本発明の一実施形態に係るヒーターエレメントの流路方向に延びる中心軸Oを通る流路方向に平行な断面の模式図である(態様6)。
図4】本発明の一実施形態に係る車室浄化システムの構成を示す模式図である。
図5】シミュレーションによるハニカム構造体内部の温度分布を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
(1.機能材含有層付ヒーターエレメント)
本発明の一実施形態に係る機能材含有層付ヒーターエレメント(以下、「ヒーターエレメント」と略す)は、自動車などの各種車両における車室浄化システムに用いられるヒーターエレメントとして好適に利用可能である。車両としては、特に限定されないが、自動車及び電車が挙げられる。自動車としては、特に限定されないが、ガソリン車、ディーゼル車、CNG(圧縮天然ガス)やLNG(液化天然ガス)などを用いるガス燃料車、燃料電池自動車、電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車が挙げられる。本発明の実施形態に係るヒーターエレメントは、特に電気自動車及び電車のような内燃機関を持たない車両に好適に利用可能である。
【0015】
図1図2、及び図3A図3Fに示されるように、ヒーターエレメント100は、外周壁11と、外周壁11の内側に配設され、入口端面12aから出口端面12bまで延びる流路を形成する複数のセル13を区画形成する隔壁14とを有するハニカム構造体10と、隔壁14の表面に設けられた機能材含有層20とを備える。また、ヒーターエレメント100は、ハニカム構造体10の入口端面12a及び出口端面12bに設けられた一対の電極30a、30bを更に備えることができる。なお、本明細書においては、ヒーターエレメント100から機能材含有層20を除いたハニカム構造体10及び一対の電極30a、30bで構成される部材を「ハニカムヒーターデバイス」と称する。
以下、ヒーターエレメント100の各構成部材について詳細に説明する。
【0016】
(1-1.ハニカム構造体)
ハニカム構造体10の形状は、特に限定されない。例えば、ハニカム構造体10の流路方向(セル13が延びる方向)に直交する断面の外形を、多角形(四角形(長方形、正方形)、五角形、六角形、七角形、八角形など)、円形、オーバル形状(卵形、楕円形、長円形、角丸長方形など)などにすることができる。なお、端面(入口端面12a及び出口端面12b)は、当該断面と同一の形状である。また、断面及び端面が多角形の場合、角部は面取りしてもよい。
【0017】
セル13の形状は、特に限定されないが、ハニカム構造体10の流路方向に直交する断面において、多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形など)、円形、オーバル形状にすることができる。これらの形状は、単一であってもよいし、又は二種以上を組み合わせてもよい。また、これらの形状の中でも四角形又は六角形が好ましい。このような形状のセル13を設けることにより、空気が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。なお、図1及び2は、流路方向に直交する断面において、断面の外形及びセル13の形状が四角形であるハニカム構造体10を一例として示している。
【0018】
ハニカム構造体10は、複数のハニカムセグメントと、複数のハニカムセグメントの外周側面同士間を接合する接合層とを有するハニカム接合体であってもよい。ハニカム接合体を用いることにより、クラックの発生を抑えながら空気の流量確保に重要なセル13の総断面積を増やすことが可能となる。
なお、接合層は、接合材を用いて形成することができる。接合材としては、特に限定されないが、セラミックス材料に、水などの溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。接合材は、PTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する材料を含有してもよく、外周壁11及び隔壁14と同一の材料を含有してもよい。接合材は、ハニカムセグメント同士を接合する役割に加えて、ハニカムセグメントを接合した後の外周コート材として用いることも可能である。
【0019】
ハニカム構造体10の強度確保、空気がセル13を通過する際の圧力損失の低減、機能材の担持量確保、及び、セル13内を流れる空気との接触面積の確保等の観点から、隔壁14の厚さ、セル密度、及びセルピッチ(又はセルの開口率)を好適に組み合わせることが望ましい。
本明細書において隔壁14の厚さとは、ハニカム構造体10の流路方向に直交する断面において、隣接するセル13の重心同士を線分で結んだときに当該線分が隔壁14を横切る長さを指す。隔壁14の厚さは、全ての隔壁14の厚さの平均値を指す。
本明細書においてセル密度とは、ハニカム構造体10の一方の端面の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)でセル数を除して得られる値である。
本明細書においてセルピッチとは、以下の計算によって求められる値を指す。まず、セル数で、ハニカム構造体10の一方の端面の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)を除して1セル当たりの面積を算出する。次いで、1セル当たりの面積の平方根を算出し、これをセルピッチとする。
本明細書においてセルの開口率とは、ハニカム構造体10の流路方向に直交する断面において、隔壁によって区画されるセル13の合計面積を、一方の端面の面積(外周壁11を除く隔壁14及びセル13の合計面積)で除して得られた値である。なお、セルの開口率を算出するに当たり、機能材含有層20は考慮しない。
【0020】
十分な量の機能材を担持する観点で有利な実施形態においては、隔壁の厚さが0.125mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.0mm以上である。好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.100mm以下、セル密度が70セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.2mm以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.080mm以下、セル密度が65セル/cm2以下、且つ、セルピッチが1.3mm以上である。
【0021】
上記の各実施形態において、ハニカム構造体の強度を確保すること、及び電気抵抗を低く保つ観点から、隔壁の厚さの下限は、0.010mm以上であることが好ましく、0.020mm以上であることがより好ましく、0.030mm以上であることが更により好ましい。
上記の各実施形態において、ハニカム構造体の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セル密度の下限は、30セル/cm2以上であることが好ましく、35セル/cm2以上であることがより好ましく、40セル/cm2以上であることが更により好ましい。
上記の各実施形態において、ハニカム構造体の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、離脱を促進する観点から、セルピッチの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることが更により好ましい。
【0022】
圧力損失の低減と強度の維持とを両立する観点で有利な実施形態においては、隔壁の厚さが0.08mm以上0.36mm以下、セル密度が2.54セル/cm2以上140セル/cm2以下、セルの開口率が0.80以上である。好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.09mm以上0.35mm以下、セル密度が15セル/cm2以上100セル/cm2以下、セルの開口率が0.83以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁の厚さが0.14mm以上0.30mm以下、セル密度が20セル/cm2以上90セル/cm2以下、セルの開口率が0.85以上である。
【0023】
上記の各実施形態において、ハニカム構造体の強度を確保する観点から、セルの開口率の上限は、0.94以下であることが好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更により好ましい。
【0024】
外周壁11の厚さは、特に限定されないが、次の観点に基づいて決定することが好ましい。まず、ハニカム構造体10を補強するという観点から、外周壁11の厚さは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.08mm以上である。一方、電気抵抗を大きくして初期電流を抑える観点、及び空気が流通する際の圧力損失を低減する観点から、外周壁11の厚さは、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下、更により好ましくは0.3mm以下である。
本明細書において外周壁11の厚さとは、ハニカム構造体10の流路方向に直交する断面において、外周壁11と最も外周側のセル13又は隔壁14との境界からハニカム構造体10の側面までの、当該側面の法線方向の長さを指す。
【0025】
ハニカム構造体10の流路方向の長さ及び流路方向に直交する断面積は、要求されるヒーターエレメント100のサイズにあわせて調整すればよく、特に限定されない。例えば、所定の機能を確保しつつコンパクトなヒーターエレメント100に用いられる場合、ハニカム構造体10は、流路方向の長さを2~20mm、流路方向に直交する断面積を10cm2以上とすることができる。なお、流路方向に直交する断面積の上限値は、特に限定されないが、例えば、300cm2以下である。
【0026】
ハニカム構造体10を構成する隔壁14は、通電によって発熱可能な材料で構成されており、具体的にはPTC特性を有する材料で構成される。必要に応じて外周壁11も隔壁14と同様にPTC特性を有する材料で構成されていてもよい。
【0027】
発熱する隔壁14(及び必要に応じて外周壁11)からの伝熱によって機能材含有層20を加熱することが可能である。また、PTC特性を有する材料は、温度が上昇してキュリー点を超えると、急激に抵抗値が上昇して電気が流れ難くなるという特性を有する。そのため、隔壁14(及び必要に応じて外周壁11)は、ヒーターエレメント100が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、ヒーターエレメント100の過剰な発熱が抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する機能材含有層20の熱劣化を抑制することも可能である。
【0028】
PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の下限は、適度な発熱を得る観点からは、0.5Ω・cm以上であることが好ましく、1Ω・cm以上であることがより好ましく、5Ω・cm以上であることが更に好ましい。PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の上限は、低い駆動電圧で発熱させるという観点からは、20Ω・cm以下であることが好ましく、18Ω・cm以下であることがより好ましく、16Ω・cm以下であることが更に好ましい。本明細書において、PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0029】
通電発熱可能であり、且つ、PTC特性を有するという観点から、外周壁11及び隔壁14は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする材料であることが好ましく、Baの一部が希土類元素で置換されたチタン酸バリウム(BaTiO3)系結晶粒子を主成分とする材料で構成されるセラミックスであることがより好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、成分全体に占める割合が50質量%を超える成分のことを意味する。BaTiO3系結晶粒子の含有量は、例えば、蛍光X線分析などにより求めることができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0030】
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子の組成式は、(Ba1-xx)TiO3で表すことができる。組成式中、Aは一種以上の希土類元素を表し、0.0001≦x≦0.010である。
Aは、希土類元素であれば特に限定されないが、好ましくはLa、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Y及びYbからなる群から選択される一種以上であり、より好ましくはLaである。xは、室温における電気抵抗が高くなり過ぎることを抑制する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.0015以上である。一方、xは、焼結不足となって室温における電気抵抗が高くなりすぎることを抑制する観点から、好ましくは0.009以下である。
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子のセラミックスにおける含有量は、主成分となる量であれば特に限定されないが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上である。なお、BaTiO3系結晶粒子の含有量の上限値は、特に限定されないが、一般的に99質量%、好ましくは98質量%である。
このBaTiO3系結晶粒子の含有量は、例えば、蛍光X線分析によって測定することができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0031】
外周壁11及び隔壁14に用いられる材料は、環境負荷を軽減するという観点から、鉛(Pb)を実質的に含まないことが望ましい。具体的には、外周壁11及び隔壁14は、Pb含有量が、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。Pb含有量が少ないことにより、例えば、発熱中の隔壁14に接触させることで加温された空気をヒトなどの生物に安全に当てることができる。なお、外周壁11及び隔壁14において、Pb含有量は、PbOに換算すると、好ましくは0.03質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0質量%である。鉛の含有量は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)により求めることができる。
【0032】
外周壁11及び隔壁14を構成する材料のキュリー点の下限は、空気を効率良く加熱する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは125℃以上である。また、キュリー点の上限については、車室又は車室近傍に置かれる部品としての安全性の観点から、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは225℃以下であり、更に好ましくは200℃以下であり、更により好ましくは150℃以下である。
【0033】
外周壁及び隔壁を構成する材料のキュリー点は、シフターの種類及び添加量によって調整可能である。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)のキュリー点は約120℃であるが、Ba及びTiの一部をSr、Sn及びZrの一種以上で置換することにより、キュリー点を低温側にシフトさせることができる。
【0034】
本明細書において、キュリー点は以下の方法により測定される。試料を測定用の試料ホルダーに取りつけ、測定槽(例:MINI-SUBZERO MC-810P エスペック株式会社製)内に装着して、10℃から昇温したときの温度変化に対する試料の電気抵抗の変化を、直流抵抗計(例:マルチメーター3478A YOKOGAWA HEWLETT PACKARD,LTD製)を用いて測定する。測定により得られた電気抵抗-温度プロットにより、抵抗値が室温(20℃)における抵抗値の2倍になるときの温度をキュリー点とする。
【0035】
(1-2.機能材含有層)
機能材含有層20は、ハニカム構造体10の隔壁14の表面に設けられる。具体的には、機能材含有層20は、ハニカム構造体10のセル13に面する隔壁14の表面、すなわちセル13の内壁に設けられる。機能材含有層20は、セル13に面する外周壁11に設けることもできる。
【0036】
機能材含有層20が含有する機能材としては、所望の機能を発揮することのできる材料であれば特に限定されないが、吸着材、触媒などを用いることができる。吸着材は、空気中の除去対象成分、例えば水蒸気、二酸化炭素、及びにおい成分から選択される一種又は二種以上を吸着する機能を有することが好ましい。その他、有害な揮発成分を吸着する機能を有することも好ましい。また、触媒を用いることにより、除去対象成分を浄化することができる。更に、吸着材による除去対象成分の捕捉機能を高めるなどの目的で、吸着材と触媒とを併用してもよい。
【0037】
吸着材は、除去対象成分、例えば、水蒸気、二酸化炭素及び有害な揮発成分(例えば、アルデヒド、におい成分など)等を-20~40℃で吸着し、60℃以上の高温で離脱することが可能な機能を有することが好ましい。このような機能を有する吸着材としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、アルミナ、シリカ、低結晶性粘土、非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体などが挙げられる。吸着材の種類は、除去対象成分の種類に応じて適宜選択すればよい。吸着材は一種類を単独使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
触媒としては、酸化還元反応を促進させることが可能な機能を有することが好ましい。このような機能を有する触媒としては、Pt、Pd、Agなどの金属触媒、CeO2、ZrO2などの酸化物触媒などが挙げられる。触媒は一種類を単独使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
車室の空気中に含まれる有害な揮発成分は、例えば、揮発性有機化合物(VOC)やにおい成分などである。有害な揮発成分の具体例としては、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、N-メチルカルバミン酸-2-(1-メチルプロピル)フェニルなどが挙げられる。
【0040】
機能材を再生するためにヒーターエレメント100を通電発熱させる際、ハニカム構造体10の入口端面12aからセル13内に流入する空気は、入口側近傍において温度上昇しにくい。このため、入口付近に機能材を設けても再生が難しいため、有効活用できない。そこで、入口端面12aから出口端面12bに向かって機能材含有層20の厚みを大きくすることで、ヒーターエレメント100内に設けた機能材のうち再生可能な機能材の割合を高めることができるので、コストパフォーマンスが向上する。
【0041】
入口端面12aから出口端面12bに向かって機能材含有層20の厚みを大きくするというのは、セル13の内壁を区画形成する隔壁表面に設けられた機能材含有層20の厚みが入口端面12aから出口端面12bに近づくにつれて、段差状又は連続的(徐々に)に大きくなる領域がある一方で、入口端面12aから出口端面12bに近づくにつれて、段差状又は連続的(徐々に)に小さくなる領域はないことを意味する。
【0042】
好ましい実施形態においては、機能材含有層20の厚みが入口端面12aから前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって0である領域(機能材含有層を設けない領域)を有する。これは、入口端面12aの近傍は機能材を有効活用するのが難しいためである。前記所定の長さは、ハニカム構造体10の流路の延びる方向の長さに対して1/10以上1/2以下であることが好ましく、1/8以上2/5以下であることがより好ましく、1/6以上3/10以下であることが更により好ましい。
【0043】
入口端面12aから出口端面12bに向かって機能材含有層20の厚みを大きくする態様としては、限定的ではないが、例えば、以下の(態様1)~(態様6)が挙げられる。
【0044】
(態様1)
入口端面12aから出口端面12bまでセル13内部における機能材含有層20の厚みが常に0を超えており、入口端面12aから前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって延び、機能材含有層20の厚みが一定である第一領域と、機能材含有層20の厚みが第一領域における厚みより大きい領域であって、第一領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に出口端面12bまで延び、機能材含有層20の厚みが一定である第二領域とを有する態様(図3A)。
【0045】
(態様1)において、第一領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、ハニカム構造体10の流路の延びる方向の長さ(入口端面12aから出口端面12bまでの距離)に対して1/10以上1/2以下の長さとすることが好ましく、1/8以上2/5以下の長さとすることがより好ましく、1/6以上3/10以下の長さとすることが更により好ましい。
【0046】
(態様1)において、“厚みが一定である”とは、厚みが実質的に一定であることを意味し、若干の変動は許容される概念である。具体的には、機能材含有層20の厚みが、第一領域の入口側端部における厚みに対して±10%の範囲で入口端面12aから出口端面12bに向かって連続する領域を第一領域とみなす。同様に、機能材含有層20の厚みが、第二領域の出口側端部における厚みに対して±10%の範囲で出口端面12bから入口端面12aに向かって連続する領域を第二領域とみなす。
【0047】
(態様2)
入口端面12aから出口端面12bまでセル13内部における機能材含有層20の厚みが常に0を超えており、入口端面12aから出口端面12bに近づくにつれて連続的に機能材含有層20の厚みが大きくなる態様(図3B)。
【0048】
(態様3)
入口端面12aから出口端面12bまでセル13内部における機能材含有層20の厚みが常に0を超えており、入口端面12aから前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって延び、機能材含有層20の厚みが出口端面12bに近づくにつれて連続的に大きくなる第一領域と、第一領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に出口端面12bまで延び、機能材含有層20の厚みが出口端面12bまで(第一領域における最大厚みで)一定である第二領域とを有する態様(図3C)。
【0049】
(態様3)において、第一領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、ハニカム構造体10の流路の延びる方向の長さ(入口端面12aから出口端面12bまでの距離)に対して1/10以上1/2以下の長さとすることが好ましく、1/8以上2/5以下の長さとすることがより好ましく、1/6以上3/10以下の長さとすることが更により好ましい。
【0050】
(態様3)において、“厚みが一定である”とは、厚みが実質的に一定であることを意味し、若干の変動は許容される概念である。具体的には、機能材含有層20の厚みが、第二領域の出口側端部における厚みに対して±10%の範囲で出口端面12bから入口端面12aに向かって連続する領域を第二領域とみなす。
【0051】
(態様4)
機能材含有層20の厚みが入口端面12aから前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって0である第一領域と、機能材含有層20の厚みが0を超える領域であって、第一領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に出口端面12bまで延び、機能材含有層20の厚みが一定である第二領域とを有する態様(図3D)。
【0052】
(態様4)において、第一領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、ハニカム構造体10の流路の延びる方向の長さ(入口端面12aから出口端面12bまでの距離)に対して1/10以上1/2以下の長さとすることが好ましく、1/8以上2/5以下の長さとすることがより好ましく、1/6以上3/10以下の長さとすることが更により好ましい。
【0053】
(態様4)において、“厚みが一定である”とは、厚みが実質的に一定であることを意味し、若干の変動は許容される概念である。具体的には、機能材含有層20の厚みが、第二領域の出口側端部における厚みに対して±10%の範囲で出口端面12bから入口端面12aに向かって連続する領域を第二領域とみなす。
【0054】
(態様5)
機能材含有層20の厚みが入口端面12aから前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって0である第一領域と、機能材含有層20の厚みが0を超える領域であって、第一領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に出口端面12bまで延び、機能材含有層20の厚みが出口端面12bに近づくにつれて連続的に大きくなる第二領域とを有する態様(図3E)。
【0055】
(態様5)において、第一領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、ハニカム構造体10の流路の延びる方向の長さ(入口端面12aから出口端面12bまでの距離)に対して1/10以上1/2以下の長さとすることが好ましく、1/8以上2/5以下の長さとすることがより好ましく、1/6以上3/10以下の長さとすることが更により好ましい。
【0056】
(態様6)
機能材含有層20の厚みが入口端面12aから前記流路の延びる方向の所定の長さにわたって0である第一領域と、第一領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に所定の長さにわたって延び、機能材含有層20の厚みが出口端面12bに近づくにつれて連続的に大きくなる第二領域と、第二領域の出口側端部に隣接し、前記流路の延びる方向に出口端面12bまで延び、機能材含有層20の厚みが出口端面12bまで(第二領域における最大厚みで)一定である第三領域とを有する態様(図3F)。
【0057】
(態様6)において、第一領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、ハニカム構造体10の流路の延びる方向の長さ(入口端面12aから出口端面12bまでの距離)に対して1/4以上1/3以下の長さとすることが好ましい。
(態様6)において、第二領域の前記流路の延びる方向の所定の長さは、ハニカム構造体10の流路の延びる方向の長さ(入口端面12aから出口端面12bまでの距離)に対して1/6以上1/4以下の長さとすることが好ましい。
【0058】
(態様6)において、“厚みが一定である”とは、厚みが実質的に一定であることを意味し、若干の変動は許容される概念である。具体的には、機能材含有層20の厚みが、第三領域の出口側端部における厚みに対して±10%の範囲で出口端面12bから入口端面12aに向かって連続する領域を第三領域とみなす。
【0059】
(態様1)~(態様6)の中では、機能材含有層20を有効活用できる割合を高くすることができるという理由や、機能材含有層20の加熱時の電力を低減できるという理由により、(態様4)~(態様6)が好ましく、(態様6)がより好ましい。
【0060】
何れの実施形態においても、圧力損失を低く抑える観点から、機能材含有層20の厚みは最大で300μm以下であることが好ましく、最大で250μm以下であることがより好ましく、最大で200μm以下であることが更により好ましい。
【0061】
何れの実施形態においても、前記流路の延びる方向に、前記流路の長さ(入口端面12aから出口端面12bまでの距離)に対して1/2以上9/10以下、好ましくは3/5以上7/8以下の長さで延び、機能材含有層20の厚みがセル13の水力直径の1/100以上1/3以下、好ましくは1/50以上1/4以下である連続した領域を有することが、機能材がヒーターエレメント100内で所望の機能を発揮する上で有利である。
【0062】
セルの水力直径とは、上述したセルピッチP(mm)から隔壁の厚さt(mm)を控除することよって求められる値(P-t)である。
【0063】
機能材含有層20の厚みは、以下の手順で評価する。図3A図3Fに例示されるような、ハニカム構造体10の流路方向に延びる中心軸Oを通り、流路方向に平行な任意の断面を切り出し、走査型電子顕微鏡などで50倍程度の断面画像を取得する。中心軸Oの位置は、ハニカム構造体10の流路方向に直交する断面における重心位置である(図2参照)。断面画像から視認されるすべての機能材含有層20について、機能材含有層20の外表面のプロファイルを描画する。次いで、得られたすべてのプロファイルの平均プロファイルを作成する。当該平均プロファイルに基づき、ヒーターエレメント100における機能材含有層20の厚み変化を調査する。上記態様1~6の何れか又はその他であるかの判別も当該平均プロファイルに基づき行う。上記の厚み変化の調査結果に基づき、厚みが一定である領域が認識された場合は、当該領域の厚みの平均値をその領域における厚みとする。機能材含有層20の厚みの最大値は、上記手順で得られた機能材含有層20の外表面のすべてのプロファイルに基づき測定される厚みの最大値である。なお、機能材含有層20の厚みは、流路の延びる方向に対して垂直な方向に測定する。
【0064】
機能材がヒーターエレメント100内で所望の機能を発揮するという観点から、機能材含有層20の量は、ハニカム構造体10の容積に対して、50g/L以上500g/L以下であることが好ましく、100g/L以上400g/L以下であることがより好ましく、150g/L以上350g/L以下であることが更により好ましい。なお、ハニカム構造体10の容積は、ハニカム構造体10の外形寸法により定まる値である。
【0065】
(1-3.電極)
本発明の一実施形態に係るヒーターエレメント100は、ハニカム構造体10の入口端面12a及び出口端面12bに設けられた一対の電極30a、30bを備えることができる。図1に示す実施形態のヒーターエレメント100は、ハニカム構造体10の入口端面12a及び出口端面12bにおける外周壁11の表面に一対の電極30a、30bを備える。一対の電極30a、30bは、外周壁11の表面のうち入口端面12a(出口端面12b)を形成する面に代えて、或いは、これに加えて、隔壁14の表面のうち入口端面12aを形成する面(出口端面12bを形成する面)に設けられていてもよい。更には、隔壁14の表面のうちセル13の内壁を形成する面にも追加的に設けられていてもよい。各電極を構成する部分はすべて、互いに繋がっていることが好ましい。
別法として、一対の電極30a、30bは、ハニカム構造体10の流路方向に延びる中心軸を挟んで対向する外周側面上に設けることもできる。
【0066】
一対の電極30a、30bの間に電圧を印加することにより、ジュール熱によりハニカム構造体10を発熱させることが可能となる。一対の電極30a、30bは、ハニカム構造体10の外部に向かって延びる延伸部を有していてもよい。延伸部を設けることにより、外部との接続を担うコネクタとの接続が容易になる。
【0067】
電極30a、30bとしては、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Ni及びSiから選択される少なくとも一種を含有する金属又は合金を使用することができる。また、PTC特性を有する外周壁11及び/又は隔壁14とオーミック接触が可能なオーミック電極を使用することもできる。オーミック電極は、例えば、ベース金属としてAu、Ag及びInから選択される少なくとも一種を含有し、ドーパントとしてn型半導体用のNi、Si、Ge、Sn、Se及びTeから選択される少なくとも一種を含有するオーミック電極を使用することができる。また、電極30a、30bは、1層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。電極30a、30bが2層以上の積層構造を有する場合、各層の材質は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0068】
電極30a、30bの厚みは、特に限定されず、電極30a、30bの形成方法に応じて適宜設定することができる。電極30a、30bの形成方法としては、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法が挙げられる。また、電極ペーストを塗布した後、焼き付ける方法や、溶射によっても電極30a、30bを形成することもできる。さらに、金属板又は合金板を接合することによって電極30a、30bとしてもよい。
電極30a、30bの厚みは、電極ペーストの焼付けでは5~30μm程度、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっきでは100~1000nm程度、溶射では10~100μm程度、電解析出及び化学析出のような湿式めっきでは5~30μm程度とすることが好ましい。また、金属板又は合金板の接合では電極30a、30bの厚みを5~100μm程度とすることが好ましい。
【0069】
(2.機能材含有層付ヒーターエレメントの製造方法)
次に、本発明に係る機能材含有層付ヒーターエレメントを製造する方法について例示的に説明する。まず、セラミックス原料に、分散媒及びバインダを含有する原料組成物を混ぜ合わせ、混練して坏土を調製した後、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。原料組成物中には分散剤、半導体化剤、シフター、金属酸化物、特性改善剤、導電体粉末等の添加剤を必要に応じて配合することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0070】
セラミックス原料は、焼成後に残存し、セラミックスとしてハニカム構造体の骨格を構成する部分の原料である。セラミックス原料は例えば粉末の形態で提供することができる。セラミックス原料としては、チタン酸バリウムの主成分となるTiO2やBaCO3など酸化物や炭酸塩原料が使用可能である。また、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのような半導体化剤、Sr、Sn及びZrのような低温側のシフター、(Bi-Na)、(Bi-K)のような高温側のシフター、Mnのような特性改善剤等、酸化物、炭酸塩、又は焼成後酸化物になるシュウ酸塩を用いてもよい。導電率を制御するため、カーボンブラック及びニッケルのような導電体粉末を添加してもよい。
【0071】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0072】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。また、バインダの含有量は、ハニカム成形体の強度を高めるという観点から、セラミックス原料100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるのがより好ましく、6質量部以上であるのが更により好ましい。バインダの含有量は、焼成工程での異常発熱によるキレ発生を抑制する観点から、セラミックス原料100質量部に対して9質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であるのがより好ましく、7質量部以下であるのが更により好ましい。バインダは、一種類を単独で使用するものであっても、二種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0073】
分散剤には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等の界面活性剤を用いることができる。分散剤は、一種類を単独で使用するものであっても、二種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。分散剤の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して0~2質量部であることが好ましい。
【0074】
次いで、得られたハニカム成形体を乾燥する。乾燥工程においては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。なかでも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0075】
次いで、乾燥後のハニカム成形体に対して焼成を行うことでハニカム構造体を製造可能である。焼成の前にバインダを除去するための脱脂工程を行うこともできる。焼成条件は、ハニカム成形体の材質によって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がチタン酸バリウムを主成分とする場合、焼成温度は、1100~1400℃が好ましく、1200~1300℃が更に好ましい。また、焼成時間は、1~4時間程度とすることが好ましい。
【0076】
脱脂工程を実施する際の雰囲気としては、例えば大気雰囲気、不活性雰囲気、減圧雰囲気とすることができる。これらの中でも、原料の酸化による焼結不足を防ぎ、また原料内に含まれる酸化物を還元し易い、不活性雰囲気かつ減圧雰囲気とすることが好ましい。
【0077】
焼成炉としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0078】
このようにして得られたハニカム構造体に、一対の電極を接合することで、ハニカムヒーターデバイスを製造することができる。電極は、ハニカム構造体の入口端面及び出口端面に、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法によって形成することができる。また、電極は、ハニカム構造体の入口端面及び出口端面に、電極ペーストを塗布した後、焼き付けることによって形成することもできる。更には溶射によって形成することもできる。電極は単層で構成してもよいが、組成の異なる複数の電極層で構成することもできる。上記の方法で電極を端面上に形成するとき、電極層の厚みを過度に大きくならないように設定すれば、セルを塞がないようにすることができる。例えば、電極の厚みはペーストの焼付けでは5~30μm程度、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっきでは100~1000nm程度、溶射では10~100μm程度、電解析出及び化学析出のような湿式めっきでは5~30μm程度とすることが好ましい。
【0079】
次いで、このようにして得られたハニカムヒーターデバイスの隔壁14に機能材含有層20を形成することで、機能材含有層付ヒーターエレメントが得られる。
機能材含有層20の形成方法は、特に限定されないが、例えば、上述した(態様1)~(態様6)に応じて以下の方法が挙げられる。
(態様1)の場合は、まず、機能材、有機バインダ及び水を含むスラリーを、ハニカム構造体10のセル13内に入口端面12aの側から流し込み、出口端面12bの側から負圧を用いた吸引を行うことにより隔壁14にスラリーを塗布する。別法として、浸漬等によってハニカム構造体10のセル13内をスラリーで充填させた後、余剰スラリーを入口端面12aの側からのエアブローで除去することで隔壁14にスラリーを塗布しても良い。スラリーの粘性制御のため、スラリーには分散剤や増粘剤を添加しても良い。
さらに、先ほどと逆の端面側からエアブロー及び/又は吸引を行うことで、スラリー層の厚みを均一化する。
その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカムヒーターデバイスを加熱しながら行うことができる。
次いで、機能材、有機バインダ及び水を含むスラリーにハニカム構造体10の第二領域を形成すべき部分を所定時間浸漬する。その後、余剰スラリーをハニカム構造体10の入口端面12aの側からのエアブロー及び/又は出口端面12bの側からの吸引により除去する。スラリーの粘性制御のため、スラリーには分散剤や増粘剤を添加しても良い。
さらに、先ほどと逆の端面側からエアブロー及び/又は吸引を行うことで、スラリー層の厚みを均一化する。
その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカムヒーターデバイスを加熱しながら行うことができる。
スラリー塗布、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の量及び厚さの機能材含有層20を隔壁14に設けることができる。
【0080】
(態様2)の場合は、機能材、有機バインダ及び水を含むスラリーを、ハニカム構造体10のセル13内に入口端面12aの側から流し込み、出口端面12bの側から負圧を用いた吸引を行うことにより隔壁14にスラリーを塗布する。別法として、浸漬等によってハニカム構造体10のセル13内をスラリーで充填させた後、余剰スラリーを入口端面12aの側からのエアブローで除去することで隔壁14にスラリーを塗布しても良い。入口端面12aが風上となるように風を流すことで、出口端面12bに向かって機能材含有層20の厚みを大きくすることが可能になる。スラリーの粘性制御のため、スラリーには分散剤や増粘剤を添加しても良い。
その後、スラリーを乾燥させることで隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカム構造体10を加熱しながら行うことができる。
スラリー塗布、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の量及び厚さの機能材含有層20を隔壁14に設けることができる。
【0081】
(態様3)の場合は、まず、機能材、有機バインダ及び水を含むスラリーを、ハニカム構造体10のセル13内に入口端面12aの側から流し込み、出口端面12bの側から負圧を用いた吸引を行うことにより隔壁14にスラリーを塗布する。別法として、浸漬等によってハニカム構造体10のセル13内をスラリーで充填させた後、余剰スラリーを入口端面12a側からエアブローで除去することで隔壁14にスラリーを塗布しても良い。スラリーの粘性制御のため、スラリーには分散剤や増粘剤を添加しても良い。
その後、先ほどと逆の端面側からエアブロー及び/又は吸引を行うが、この時のエアブロー条件及び/又は吸引条件を調整することで、部分的に厚みの均一なスラリー層を形成する。
その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカム構造体10を加熱しながら行うことができる。
スラリー塗布、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の量及び厚さの機能材含有層20を隔壁14に設けることができる。
【0082】
(態様4)の場合は、まず、機能材、有機バインダ及び水を含むスラリーにハニカム構造体10の第二領域を形成すべき部分を所定時間浸漬し、ハニカム構造体10のセル13内をスラリーで充填する。その後、余剰スラリーをハニカム構造体10の入口端面12aの側からのエアブロー、及び/又は出口端面12bの側からの吸引によって除去する。スラリーの粘性制御のため、スラリーには分散剤や増粘剤を添加しても良い。
さらに、先ほどと逆の端面側からエアブロー及び/又は吸引を行うことで、スラリー層の厚みを均一化する。
その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカムヒーターデバイスを加熱しながら行うことができる。
スラリー塗布、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の量及び厚さの機能材含有層20を隔壁14に設けることができる。
【0083】
(態様5)の場合は、まず、機能材、有機バインダ及び水を含むスラリーにハニカム構造体10の第二領域を形成すべき部分を所定時間浸漬し、ハニカム構造体10のセル13内をスラリーで充填する。その後、余剰スラリーをハニカム構造体10の入口端面12aの側からのエアブロー、及び/又は出口端面12bの側からの吸引によって除去する。入口端面12aが風上となるように風を流すことで、出口端面12bに向かって機能材含有層20の厚みを大きくすることが可能になる。スラリーの粘性制御のため、スラリーには分散剤や増粘剤を添加しても良い。
その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカムヒーターデバイスを加熱しながら行うことができる。
スラリー塗布、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の量及び厚さの機能材含有層20を隔壁14に設けることができる。
【0084】
(態様6)の場合は、まず、機能材、有機バインダ及び水を含むスラリーにハニカム構造体10の第二領域及び第三領域を形成すべき部分を所定時間浸漬し、ハニカム構造体10のセル13内をスラリーで充填する。その後、余剰スラリーをハニカム構造体10の入口端面12aの側からのエアブロー、及び/又は出口端面12bの側からの吸引によって除去する。スラリーの粘性制御のため、スラリーには分散剤や増粘剤を添加しても良い。
その後、先ほどと逆側からエアブロー及び/又は吸引を行うが、この時のエアブロー条件及び/又は吸引条件を調整することで、部分的に厚みの均一なスラリー層を形成する。その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。
その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁14に機能材含有層20を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカムヒーターデバイスを加熱しながら行うことができる。
スラリー塗布、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の量及び厚さの機能材含有層20を隔壁14に設けることができる。
【0085】
(3.車室浄化システム)
本発明の一実施形態によれば、上述した機能材含有層付ヒーターエレメントを備える車室浄化システムが提供される。当該車室浄化システムは、自動車などの各種車両に好適に利用可能である。
【0086】
図4は、本発明の一実施形態に係る車室浄化システムの構成を示す模式図である。
車室浄化システム1000は、
少なくとも一つのヒーターエレメント100と、
ヒーターエレメント100に電圧を印加するためのバッテリー等の電源200と、
車室とヒーターエレメント100の入口端面12aとを連通する流入配管400と、
ヒーターエレメント100の出口端面12bと車室とを連通する第一経路500aを有する流出配管500と、
車室からの空気を流入配管400を介してヒーターエレメント100の入口端面12aに流入させるための通風機600と、
を備える。
【0087】
流出配管500は、第一経路500aに加えて、ヒーターエレメント100の出口端面12bと車外とを連通する第二経路500bを有することができる。また、流出配管500は、流出配管500を流通する空気の流れを第一経路500aと第二経路500bの間で切替え可能な切替えバルブ300を有することができる。
【0088】
車室浄化システム1000は、
電源200からの印加電圧をオフとし、流出配管500を流通する空気が第一経路500aを通るように切替えバルブ300を切替え、通風機600をオンとする第1のモードと、
電源200からの印加電圧をオンとし、流出配管500を流通する空気が第二経路500bを通るように切替えバルブ300を切替え、通風機600をオンとする第2のモードと、
の運転モードを有することができる。
【0089】
車室浄化システム1000は、第1のモードと第2のモードの間の切り替えを実行可能な制御部900を備えることができる。制御部900は、例えば、第1のモードと第2のモードを交互に実行することができるように構成してもよい。第1のモードと第2のモードの切替えを一定サイクルで繰り返すことにより、車室内の除去対象成分を安定的に車外に排出することが可能となる。
【0090】
第1のモードでは、車室空気の浄化が行われる。具体的には、車室からの空気は、流入配管400を通ってヒーターエレメント100の入口端面12aから流入し、ヒーターエレメント100内を通過した後、ヒーターエレメント100の出口端面12bから流出する。車室からの空気の除去対象成分はヒーターエレメント100を通過する間に機能材に捕捉等されることにより除去される。ヒーターエレメント100の出口端面12bから流出した清浄な空気は、流出配管500の第一経路500aを通って車室へと返送される。
【0091】
第2のモードでは、機能材の再生が行われる。具体的には、車室からの空気は、流入配管400を通ってヒーターエレメント100の入口端面12aから流入し、ヒーターエレメント100内を通過した後、ヒーターエレメント100の出口端面12bから流出する。ヒーターエレメント100は通電により発熱し、これによりヒーターエレメント100に担持されている機能材が加熱されるため、機能材に捕捉等された除去対象成分は機能材から離脱、又は反応する。
【0092】
機能材に捕捉等された除去対象成分の離脱を促進するため、機能材の種類に応じて離脱温度以上に機能材を加熱することが好ましい。例えば、機能材として吸着材を使用する場合は機能材の少なくとも一部、好ましくは全部を70~150℃に加熱することが好ましく、80~140℃に加熱することがより好ましく、90~130℃に加熱することが更により好ましい。また、第2のモードは、機能材の再生が十分に行われるまでの時間行うことが望ましい。機能材の種類にもよるが、例えば、機能材として吸着材を使用する場合、第2のモードでは機能材は上記温度範囲に1~10分間加熱されることが好ましく、2~8分間加熱されることがより好ましく、3~6分間加熱されることが更により好ましい。
【0093】
車室からの空気はヒーターエレメント100を通過する間に機能材から離脱した除去対象成分を同伴しながらヒーターエレメント100の出口端面12bから流出する。ヒーターエレメント100の出口端面12bから流出した除去対象成分を含む空気は、流出配管500の第二経路500bを通って車外へと排出される。
【0094】
ヒーターエレメント100に対する印加電圧のオン及びオフの切り替えは、例えば、電源200とヒーターエレメント100の一対の電極30a、30bとを電線810で電気的に接続し、その途中に設けた電源スイッチ910を操作することで可能である。電源スイッチ910の操作は制御部900が実行可能である。
【0095】
通風機600のオン及びオフの切り替えは、例えば、制御部900と通風機600を電線820又は無線で電気的に接続し、通風機600のスイッチ(図示せず)を制御部900によって操作することで可能である。通風機600は、通風量を制御部900によって変化させることができるように構成することもできる。
【0096】
切替えバルブ300の切り替えは、例えば、制御部900と切替えバルブ300を電線830又は無線で電気的に接続し、切替えバルブ300のスイッチ(図示せず)を制御部900によって操作することで可能である。
【0097】
切替えバルブ300としては、電気で駆動し、流路を切換える機能を有するバルブであれば特に制限はないが、電磁弁及び電動弁が挙げられる。一実施形態において、切替えバルブ300は、回転軸310に支持された開閉ドア312と、回転軸310を回動操作するモータ等のアクチュエータ314を備える。アクチュエータ314は制御部900によって制御可能に構成される。
【0098】
車室浄化システム1000は、上記の機能を安定して確保する観点から、ヒーターエレメント100が車室に近い位置に配置されることが望ましい。したがって、感電防止などの観点から、駆動電圧が60V以下であることが好ましい。ヒーターエレメント100に用いられているハニカム構造体10は、室温における電気抵抗が低いため、この低い駆動電圧でのハニカム構造体10の加熱が可能である。なお、駆動電圧の下限は、特に限定されないが、10V以上であることが好ましい。駆動電圧が10V未満であると、ハニカム構造体10の加熱時の電流が大きくなるため、電線810を太くする必要がある。
【0099】
図4に示す実施形態において、通風機600は、ヒーターエレメント100の上流側に設置されている。より詳細には、通風機600は、ヒーターエレメント100と車室とを連通する流入配管400の途中に設置されており、通風機600を通過した空気がヒーターエレメント100に対して押し込まれるように流入する。別法として、通風機600は、ヒーターエレメント100の下流側に設置してもよい。この場合、通風機600は例えば流出配管500の途中に設置することができ、流入配管400を通過した空気はヒーターエレメント100に吸い込まれるように流入する。
【0100】
(4.シミュレーション)
ハニカム構造体の入口端面から出口端面に向かって空気を流しながら発熱させたときのハニカム構造体内部の温度分布をシミュレーションしたときの結果を示す。
【0101】
[ハニカム構造体の仕様]
シミュレーションに使用するハニカム構造体の仕様は以下とした。
・流路方向に直交するハニカム構造体の断面及び端面の形状:四角形
・流路方向に直交するセルの形状:正方形
・隔壁の厚さ:0.1016mm
・セル密度:62セル/cm2
・セルピッチ:1.270mm
・セルの開口率:0.85
・ハニカム構造体の流路方向に直交する断面のサイズ:10mm×0.635mm
・ハニカム構造体の流路方向の長さ:10mm
・外周壁及び隔壁を構成する材料の25℃における体積抵抗率:14Ω・cm(120℃まではほとんど変化なし)
・外周壁及び隔壁を構成する材料のキュリー点:120℃(チタン酸バリウムを想定)
・外周壁及び隔壁を構成する材料の密度:4500kg/m3
・外周壁及び隔壁を構成する材料の比熱:590J/kg/K
【0102】
[加熱試験]
上記ハニカム構造体の入口端面と出口端面の間に12Vの定電圧を印加しながら、入口端面から出口端面に向かってハニカム構造体のセルに空気(初期温度=20℃)を0.13m/secで流通させたときの、ハニカム構造体内部の定常状態における温度分布を調査する加熱試験をシミュレーションした。シミュレーションには、Fluent Ver2021-R1(Ansys,Inc.製)を使用した。
結果を図5に示す。この結果から入口側からハニカム構造体の長さの約1/4の領域においては、機能材を担持しても再生に有利な60℃以上へ加熱することが困難であり、有効活用できないことが分かる。逆に言えば、当該領域には機能材を設けない又は厚みを小さくすることで有効活用できる機能材の比率が上昇することが理解できる。
【符号の説明】
【0103】
10 :ハニカム構造体
11 :外周壁
12a :入口端面
12b :出口端面
13 :セル
14 :隔壁
20 :機能材含有層
30a :電極
30b :電極
100 :ヒーターエレメント
200 :電源
300 :切替えバルブ
310 :回転軸
312 :開閉ドア
314 :アクチュエータ
400 :流入配管
500 :流出配管
500a :第一経路
500b :第二経路
600 :通風機
810 :電線
820 :電線
830 :電線
900 :制御部
910 :電源スイッチ
1000 :車室浄化システム
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5