(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
G01N27/409 100
(21)【出願番号】P 2021173694
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】松山 大介
(72)【発明者】
【氏名】米津 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 優人
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132493(JP,A)
【文献】特開2016-1105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0323986(US,A1)
【文献】中国実用新案第211263287(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端側に検出部を有するセンサ素子と、
前記センサ素子の周囲を取り囲む筒状の主体金具と、
径方向外側に突出する鍔部を有し、前記主体金具の後端側に配置されて前記センサ素子の後端側を取り囲む絶縁性のセパレータと、
前記セパレータを覆いつつ前記主体金具の後端側に配置される筒状の外筒と、
前記鍔部の先端向き面に接しつつ前記外筒に固定される環状の留め金具と、
を備えるガスセンサであって、
前記留め金具は、前記セパレータの外側面を取り囲む筒状の周壁部と、前記周壁部から径方向内部へ向けて折り返された折り返し部を介して先端側へ延びて前記セパレータの前記外側面に接し、前記セパレータを弾性的に保持する複数の長片と、周方向に沿って前記長片の間に設けられて前記鍔部の先端向き面に接する複数の肩部と、を有し、
前記鍔部の先端向き面と前記折り返し部とが離間していると共に、
前記軸線方向に沿う断面において、前記肩部の厚みをtとし、前記鍔部の先端向き面と、前記鍔部の先端向き面に平行な仮想線を先端側へ平行移動させたときに前記折り返し部又は前記長片に最初に接触する接触点との前記軸線方向の移動距離をLとしたとき、t<Lの関係を満たすことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記長片は、前記折り返し部に繋がる曲面部と、該曲面部に繋がるストレート部と、該ストレート部に繋がり前記ストレート部よりも径方向内側に曲がる先端部とを有し、
前記軸線方向に見て、前記先端部の長さM1、前記ストレート部の長さM2が、M1>M2の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子の後端をセパレータに収容した構成を有し、特定ガス成分の濃度を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関の燃費向上や燃焼制御を行うガスセンサとして、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサや空燃比センサが知られている。
このようなガスセンサとして、特定ガスの濃度検出を行うセンサ素子を主体金具に保持し、センサ素子の後端側の表面に配置された電極取出部(電極パッド)を筒状のセラミック製セパレータで囲んだ構造が一般的に用いられている。そして、セパレータに取付けられた端子金具がセンサ素子の各電極パッドにそれぞれ電気的に接続され、セパレータよりも後端側にはゴム製のグロメットが配置され、セパレータ及びグロメットが金属製の外筒に覆われている。又、端子金具にはリード線が接続され、リード線はグロメットの貫通孔を通して外部に引き出される。
【0003】
ここで、セパレータと外筒との間には環状の留め金具が配置されている。留め金具は筒状の周壁部と、周壁部から径方向内部へ向けて折り返された複数の長片(バネ片)とを有しており、長片がセパレータの外側面に当接してセパレータを周壁部内で弾性的に保持している(特許文献1)。そして、セパレータの鍔部の先端向き面が留め金具の後端向き面に係止すると共に、セパレータの後端向き面が外筒に係止することで、セパレータの先後が外筒内で固定されている。
そして、特許文献1の留め金具では、留め金具の後端側の折り返し部がセパレータの鍔部に押されて潰れて長辺が径方向外側へ広がらないよう、周方向に隣接する折り返し部の間に、鍔部の先端向き面に接する肩部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、ガスセンサのコストや重量等の理由からセパレータの小径化が要求されている。しかしながら、外筒ひいては留め金具の外径が変わらない状態でセパレータを小径にすると、留め金具の折り返し部とセパレータの鍔部との径方向の距離が長くなり、折り返し部から延びる長片も長くなるので、バネ力が低下するという問題がある。又、長辺が長くなっても、従来と同様、肩部によって留め金具の折り返し部をセパレータの鍔部から離間させて折り返し部が潰れることを抑制する必要がある。
そこで、本発明は、セパレータを小径にしても留め金具の保持力の低下を抑制することができるガスセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、先端側に検出部を有するセンサ素子と、前記センサ素子の周囲を取り囲む筒状の主体金具と、径方向外側に突出する鍔部を有し、前記主体金具の後端側に配置されて前記センサ素子の後端側を取り囲む絶縁性のセパレータと、前記セパレータを覆いつつ前記主体金具の後端側に配置される筒状の外筒と、前記鍔部の先端向き面に接しつつ前記外筒に固定される環状の留め金具と、を備えるガスセンサであって、前記留め金具は、前記セパレータの外側面を取り囲む筒状の周壁部と、前記周壁部から径方向内部へ向けて折り返された折り返し部を介して先端側へ延びて前記セパレータの前記外側面に接し、前記セパレータを弾性的に保持する複数の長片と、周方向に沿って前記長片の間に設けられて前記鍔部の先端向き面に接する複数の肩部と、を有し、前記鍔部の先端向き面と前記折り返し部とが離間していると共に、前記軸線方向に沿う断面において、前記肩部の厚みをtとし、前記鍔部の先端向き面と、前記鍔部の先端向き面に平行な仮想線を先端側へ平行移動させたときに前記折り返し部又は前記長片に最初に接触する接触点との前記軸線方向の移動距離をLとしたとき、t<Lの関係を満たすことを特徴とする。
【0007】
留め金具を外筒に組み付ける際、セパレータを内包した留め金具を、治具を介して後端側へ強く押圧する。そこで、本発明のガスセンサによれば、セパレータの鍔部の先端向き面と折り返し部とが離間しているため、折り返し部が鍔部に押されて潰れることが抑制される。その結果、折り返し部の変形によって長片が径方向外側へ広がることが抑制され、セパレータの保持の確実性を高めることができる。
ここで、外筒及び留め金具の外径を変えずにセパレータを小径にすると、留め金具の折り返し部とセパレータの鍔部との径方向の距離が長くなる。このため、鍔部の先端向き面に肩部を当接させるには、肩部を径方向内側へより多く突出させる必要があるが、そうすると、セパレータを先端側へ相対的に押圧したときに肩部がより撓みやすくなる。
【0008】
そこで、t<Lとすることで、肩部がtを超えて軸線方向に撓んだとしても、その撓み量がLになるまでは、鍔部の先端向き面が折り返し部又は長片に接することができない。
その結果、折り返し部が鍔部の先端向き面に押されて潰れることを抑制し、折り返し部の変形によって長片が径方向外側へ広がることが抑制される。これにより、セパレータを小径にしても留め金具の保持力の低下を抑制できる。
さらに、t<Lとするには、折り返し部から径方向内側へ向かって長片を斜めに向けることになるので、折り返し部から径方向内側へ水平に延ばした後で先端に曲げて長片とした場合に比べ、長片の全長を短くすることができる。
その結果、長片の長さを短くすることで、バネ力の低下、ひいては留め金具の保持力の低下を抑制できる。
【0009】
本発明のガスセンサにおいて、前記長片は、前記折り返し部に繋がる曲面部と、該曲面部に繋がるストレート部と、該ストレート部に繋がり前記ストレート部よりも径方向内側に曲がる先端部とを有し、前記軸線方向に見て、前記先端部の長さM1、前記ストレート部の長さM2が、M1>M2の関係を満たしてもよい。
このガスセンサによれば、長片の長さをより短くすることができる。さらに、M1<M2の場合に比べて、前記軸線方向に対する前記先端部の角度が小さくできる。これにより、セパレータを留め金具に組み付ける際に、セパレータの先端部分に前記先端部から受ける力を低減させ、セパレータの破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、セパレータを小径にしても留め金具の保持力の低下を抑制することができるガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
【
図3】セパレータと留め金具との係合状態を示す軸線方向に沿う断面図である。
【
図4】従来のセパレータ及び留め金具における、tとLの大小関係を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態のセパレータ及び留め金具における、tとLの大小関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、
図1~
図3を参照し、本発明の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)100について説明する。
図1は本発明の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)200の軸線O方向に沿う全体断面図、
図2は留め金具169の斜視図、
図3はセパレータ166と留め金具169との係合状態を示す断面図である。
このガスセンサ200は、自動車や各種内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサである。
なお、詳しくは後述するが、本発明は、
図1に示すように、セパレータ166が従来より小径化され、セパレータ166の外径D2が、外筒144ひいては留め金具169の外径D1よりも顕著に小さくなっている場合に特に有効である。なお、D1,D2はいずれも最大外径である。
【0013】
図1において、ガスセンサ200は、排気管に固定されるためのねじ部139が外表面に形成された筒状の主体金具138と、軸線O方向(ガスセンサ200の長手方向:図中上下方向)に延びる板状形状をなすセンサ素子10と、センサ素子10の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ106と、軸線方向に貫通する挿通孔166hの先端側の内部に、センサ素子10の後端部の周囲を取り囲む状態で配置されるセラミック製筒状のセパレータ166と、センサ素子10とセパレータ166との間に配置される4個の端子金具21(
図1では、2個のみを図示)と、を備えている。
【0014】
センサ素子10は、軸線O方向に延びる板状をなし、先端部が酸素濃度を検出する検出部10aとなっていて、検出部10aは多孔質保護層20で覆われている。なお、センサ素子10自身は公知の構成であり、図示はしないが酸素イオン透過性の固体電解質体と1対の電極とを有する検出部10aと、検出部10aを加熱して一定温度に保持するヒータ部とを備えている。
そして、センサ素子10の一方の主面の後端側には、2つの電極パッド11が並び、検出部10aからのセンサ出力信号がリード部(図示せず)を介してこれら電極パッド11から出力される。又、主面に対向するように設けられた他方の主面の後端側にも、2つの電極パッド11が並び、リード部(図示せず)を介してヒータ部に電力を供給するようになっている。
【0015】
主体金具138は、ステンレスから構成され、軸線方向に貫通する貫通孔154を有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。この貫通孔154には、センサ素子10の先端部を自身の先端よりも突出させるように当該センサ素子10が配置されている。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0016】
なお、主体金具138の貫通孔154の内部には、センサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で環状形状のアルミナ製のセラミックホルダ151、粉末充填層156(以下、滑石リングともいう)、および上述のセラミックスリーブ106がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。
また、セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されている。そして、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0017】
一方、
図1に示すように、主体金具138の先端側(
図1における下方)外周には、センサ素子10の突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)一重のプロテクタ143が溶接等によって取り付けられている。
【0018】
そして、主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、外筒144の後端側(
図1における上方)の開口部には、センサ素子10の4個の端子金具21(
図1では、2個のみを表示)とそれぞれ電気的に接続される4本のリード線146(
図1では2本のみを表示)が挿通されるリード線挿通孔(図示せず)が形成された、ゴム製のグロメット170が配置されている。
なお、外筒144の外側からグロメット170を加締めてグロメット170が外筒144の内部に保持されている。
【0019】
また、主体金具138の後端部140より突出されたセンサ素子10の後端側(
図1における上方)には、セパレータ166が配置される。なお、このセパレータ166は、センサ素子10の後端側の主面に形成される合計4個の電極パッド11(
図1では2個のみを表示)の周囲に配置される。
このセパレータ166は、軸線方向に貫通する挿通孔166hを有する筒状に形成され、先端側に筒状の外側面166cが設けられると共に、後端側には、外側面166cから拡径するように径方向外側に突出する鍔部167が設けられている。そして、外側面166cと鍔部167とは、先端に向かって縮径する先端向き面167b(テーパー面)により繋がっている。
【0020】
セパレータ166の後端には、グロメット170がセパレータ166と離間して配置され、セパレータ166とグロメット170が金属製の外筒144に覆われている。外筒144の軸線O方向中央付近には、セパレータ166を保持する環状の留め金具169が加締め固定され、さらに外筒144の上記加締め部より後端部が後端側へ向かって縮径して段部144dを形成している。
そして、セパレータ166は、鍔部167が留め金具169を介して外筒144に当接すると共に、セパレータ166の後端向き面が段部144dに当接することで、外筒144の内部に保持される。
ている。
【0021】
図2に示すように、留め金具169は金属製で略円筒状をなす周壁部169aと、周壁部169aの後端縁から径方向内部へ向けて折り返された折り返し部169bを介して先端側へ延び、周方向に等間隔で並ぶ複数の長片169s(この例では6個)を有している。又、周方向に沿って隣接する長片169sの間には、折り返し部169bから径方向内部へ向け、かつ径方向に平行に延びる複数の肩部169e(この例では6個)がそれぞれ設けられている。
【0022】
そして、留め金具169の折り返し部169b側がセパレータ166の鍔部167の先端向き面167bに嵌め込まれ、肩部169e(の後端向き面)が鍔部167の先端向き面167bに当接すると共に、外筒144の段部144d(の先端向き面)がセパレータ166の後端向き面に係止する。これにより、セパレータ166が先端側と後端側の上下で軸線O方向に挟まれつつ、軸線O方向に主体金具138と離間して保持される。
【0023】
図3に示すように、長片169sは、折り返し部169bに繋がる曲面部169s3と、曲面部169s3に繋がるストレート部169s2と、ストレート部169s2に繋がりストレート部169s2よりも径方向内側に曲がる先端部169s1とを有している。
この長片169sは外側面166cに当接し、長片169sの弾性力により、外筒144に加えられた衝撃がセパレータ166に直接伝わらないようになっている。
なお、ストレート部169s2とは、その主面の軸線O方向に沿う断面が直線になっているものをいう。
【0024】
次に、
図3を参照し、セパレータ166と留め金具169との係合状態について説明する。
図3に示すように、セパレータ166の鍔部167の先端向き面167bは、留め金具169の後端から径方向内側に水平に延びる肩部169eと当接する。
このとき、肩部169eは折り返し部169bと軸線O方向に面一であるが、肩部169eが折り返し部169bよりも径方向内側に突出しているため、テーパ状の先端向き面167bとの位置関係で折り返し部169bが先端向き面167bと離間することになる。これにより、留め金具169を外筒144に組み付ける際、セパレータ166を内包した留め金具169を、治具を介して後端側へ強く押圧しても、留め金具169の折り返し部169bがセパレータ166の鍔部167の先端向き面167bに押されて潰れることが抑制される。その結果、折り返し部169bの変形によって長片169sが径方向外側へ広がることが抑制され、長片169sがセパレータ166の外側面70cに確実に当接して保持する。
【0025】
ここで、従来のセパレータ400が大径であるのに対し、本発明の実施形態のセパレータ166が小径化されている分、留め金具169の肩部169eが従来の留め金具300の肩部300eよりも径方向内側へ突出している。
一方、小径化されたセパレータ166の外側面166cに当接できるよう、長片169sも径方向内側へより突出させる必要があるが、この長片169sの形状、ひいては後述するtとLの大小関係が重要となる。
【0026】
そこで
図4,
図5を参照し、tとLの大小関係を規定した理由について説明する。
図4は、従来のセパレータ400及び留め金具300において、セパレータ400を先端側へ押圧して肩部300eを撓ませ、鍔部の先端向き面400bを折り返し部300b又は長辺300sに接しさせた状態を再現した様子を示す。
ここで、肩部300eの厚みがtである。又、(押圧しない状態から)鍔部の先端向き面400bが折り返し部300b又は長辺300sに最初に接することは、
図4の軸線O方向に沿う断面において、鍔部の先端向き面400bに平行な仮想線V3を先端側へ平行移動させたときに折り返し部300b又は長辺300sに最初に接触する接触点P3で表される。
そして、鍔部の先端向き面400bと、接触点P3との軸線O方向の移動距離がLとなる。
【0027】
なお、「鍔部の先端向き面400bを折り返し部300b又は長辺300sに接しさせる」とは、セパレータ400を先端側へ押圧したときに、留め金具300のうち肩部300e以外に先端向き面400bが最初に接した部位とみなされる。これは、折り返し部300bや長辺300sの形状によっては、折り返し部300bよりも先に長辺300sに接する場合があるからである。
又、先端向き面400bが折り返し部300bよりも先に長辺300sに接した場合であっても、さらにセパレータ400が先端側へ押圧されたときに、長辺300sの変形に伴って折り返し部300bも先端向き面400bに押されて潰れることになる。
【0028】
そして、従来のセパレータ400及び留め金具300では、tとLの関係自体が考慮されていないが、t≧Lと考えられる。
これは、押圧しない状態では肩部300eの厚みt分だけ、鍔部の先端向き面400bと折り返し部300bとが離間していたのを、押圧によって肩部300eが厚みtだけ撓むためと考えられる。
又、肩部300eの厚みtによって、鍔部の先端向き面400bと折り返し部300bとを距離Lだけ離間させている関係から、t<Lとなることも考えにくい。
【0029】
次に、従来のセパレータ400に比べ、セパレータ166を小径化した場合を
図5に示す。この場合、上述のように肩部169eを径方向内側へより多く突出させることで、押圧しない状態では、鍔部167の先端向き面167bに肩部169eが当接するように構成することは従来と同様である。
一方、仮に、従来の留め金具300の長片300sを、セパレータ166が縮径した分だけ径方向内側へ水平移動させた留め金具350(と長片350s)を考える。
この場合、tとLの大小関係は、長片300sを水平移動しただけで軸線O方向に変化がないので、
図4と同様、t≧L1と考えられる。ここで、セパレータ166を先端側へ押圧して肩部169eを撓ませた場合を想定し、
図5の軸線O方向に沿う断面において、鍔部の先端向き面167bに平行な仮想線V1を先端側へ平行移動させたときに仮想的な留め金具350の折り返し部(又は長辺)に最初に接触する接触点をP1で表す。
そして、
図4と同様、鍔部の先端向き面167bと、接触点P1との軸線O方向の移動距離をL1とする。
【0030】
しかしながら、セパレータ166を小径化し、肩部169eの径方向内側への突出量が多くなると、セパレータ166を先端側へ押圧したときの肩部169eの撓み量も多くなり、軸線O方向にtを超えて容易に撓む可能性がある。
このような場合、t≧L1であると、肩部169eがtを超えて撓んだときに、鍔部の先端向き面167bが留め金具350の折り返し部(又は長辺)に接触点P1で直ぐに接してしまうことになる。
その結果、留め金具350の折り返し部が鍔部167の先端向き面167bに押されて潰れ易く、折り返し部の変形によって長片350sが径方向外側へ広がってセパレータ166の保持が不十分となる。
【0031】
そこで、本発明の実施形態では、留め金具169の折り返し部169bから径方向内側へ向かって長片169sを斜めに向けることで、鍔部167の先端向き面167bに平行な仮想線V2が折り返し部169b又は長片169sに最初に接する接触点P2をより先端側へ位置させることができる。
このとき、L1に対応する移動距離をL2とすると、t<L2となるので、肩部169eがtを超えて撓んだとしても、その撓み量が移動距離L1を超えてさらにL2になるまでは、鍔部の先端向き面167bが折り返し部169b又は長片169sに接することができない。
その結果、折り返し部169bが鍔部167の先端向き面167bに押されて潰れることを抑制し、折り返し部169bの変形によって長片169sが径方向外側へ広がることが抑制される。これにより、セパレータ166を小径にしても留め金具169の保持力の低下を抑制できる。
【0032】
又、本発明の実施形態では、留め金具169の折り返し部169bから径方向内側へ向かって長片169sを斜めに向けることで、折り返し部169bから径方向内側へ水平に延ばした後で先端に曲げて長片350sとした仮想的な留め金具350に比べ、長片169sの全長を短くすることができる。
その結果、長片169sの長さを短くすることで、バネ力の低下、ひいては留め金具169の保持力の低下を抑制できる。
【0033】
なお、Lの求め方は、ガスセンサ内で
図4、
図5のようにセパレータ166と留め金具169が組み付けられた断面写真を用意し、上記仮想線V2が折り返し部169b又は長片169sに接触点P2で接したときの上記した移動距離を測定すればよい。
【0034】
さらに、本発明の実施形態では、長片169sは、折り返し部169bに繋がる曲面部169s3と、曲面部169s3に繋がるストレート部169s2と、ストレート部169s2に繋がりストレート部169s2よりも径方向内側に曲がる先端部169s1とを有している。
そして、軸線O方向に見て、先端部169s1の長さM1、ストレート部169s2の長さM2が、M1>M2の関係を満たす。
このようにすると、長片169sの長さをより短くすることができる。ここで、留め金具169にセパレータ166を嵌合する際の軸合わせは、先端部169s1及び肩部169eの先端で行っている。
【0035】
なお、ストレート部169s2を設けずに、曲面部169s3に先端部169s1が直接繋がっていてもよい。又、曲面部169s3は、留め金具169の折り返し部169bから径方向内側へ向かって長片169sを斜めに向けるための部位でもある。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、セパレータ及び留め金具の形状は上記に限定されない。
又、センサとしては、酸素センサの他、NOxセンサ、HC、H2等のガス濃度を測定するためのガスセンサに適用することもできる。
又、本発明はセパレータ166の外径D2と、留め金具169の外径D1がD1>D2であればいかなる場合にも適用できるが、特にD1×0.8>D2のようにD2がD1よりも顕著に小さくなっている場合に特に有効である。
又、本発明は肩部169eの突出し長さが大きく、特に2mm以上のようになっている場合に、移動距離Lをより大きくすることができるため特に有効である。
【符号の説明】
【0037】
10 センサ素子
10a 検出部
138 主体金具
144 外筒
166 セパレータ
167 セパレータの鍔部
167b 鍔部の先端向き面
166c セパレータの外側面
169 留め金具
169a 周壁部
169b 折り返し部
169e 肩部
169s 長片
169s1 長片の先端部
169s2 長片のストレート部
169s3 長片の曲面部
200 ガスセンサ
O 軸線
V1~V3 仮想線
P1~P3 接触点