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7594518糸計測装置及び糸計測装置を組み込んだ糸処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】糸計測装置及び糸計測装置を組み込んだ糸処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/08 20060101AFI20241127BHJP
   G01B 11/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B65H63/08 W
G01B11/04 101Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021176572
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2023066072
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-095397(JP,A)
【文献】特開2006-047137(JP,A)
【文献】特開平05-316906(JP,A)
【文献】特開2005-278494(JP,A)
【文献】米国特許第05345691(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 63/08
G01B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3種類の色が長手方向に沿って所定間隔で繰り返すように塗り分けられた糸について、その移動量を検出する光センサを備えた糸計測装置であって、
前記光センサからの検出信号に基づいて、糸に付されている色を判別する色識別手段と、
前記糸が移動して塗分けられた糸が変化したことを検出し、この検出結果に基づいて糸長を算出する糸長算出手段と、
を有し、
前記色識別手段は、判別中の色を第1の色、その他の色の中で最も出力値が高いものを第2の色とした場合、第2の色の出力値が第1の色の出力値を所定値以上上回った際に、第2の色と判別する糸計測装置。
【請求項2】
少なくとも3種類の色が長手方向に沿って所定間隔で繰り返すように塗り分けられた糸について、その移動量を検出する光センサを備えた糸計測装置であって、
前記光センサからの検出信号に基づいて、糸に付されている色を判別する色識別手段と、
前記糸が移動して塗分けられた糸が変化したことを検出し、この検出結果に基づいて糸長を算出する糸長算出手段と、
を有し、
前記色識別手段は、判別中の色を第1の色、前記第1の色に隣接して放出方向にある色を第2の色、前記第1の色に隣接して巻き取り方向にある色を第3の色とした場合、
第2の色の出力値と第1の色の出力値の差分が所定値以上上回った際に、第2の色と判別し、
前記第2の色の出力値と第1の色の出力値の差分が所定値を満たさず、第3の色の出力値と第1の色の出力値の差分が所定値以上上回った際に、第3の色と判別する糸長計測装置。
【請求項3】
前記糸長算出手段は、判別された前記第2の色の判別回数を+1、判別された前記第3の色の判別回数を-1とし、その合計の回数に前記糸に塗り分けられた色の所定間隔の値を乗じることで糸長を算出することを特徴とする請求項2に記載の糸長計測装置。
【請求項4】
前記所定値は、現在判別されている第1の色の出力値の0.5~50%の範囲で設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の糸長計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の糸計測装置を釣竿に設置したことを特徴とする糸処理装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の糸計測装置を糸巻装置に設置したことを特徴とする糸処理装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の糸計測装置を中通し浮きに設置したことを特徴とする糸処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子と受光素子とを備えた光センサを用いて、糸長を計測可能な糸計測装置、及び、糸計測装置を組み込んだ糸処理装置に関する。
なお、ここでの糸処理装置とは、放出/巻き取りされる糸(ロープなどを含む)の放出距離を表示可能な各種の装置が該当し、例えば、魚釣用リール、釣竿、中通し浮き等の釣具、更には、ウインチのような糸巻装置等が該当する。
【背景技術】
【0002】
釣糸の放出距離を測定するために、例えば、特許文献1のような糸計測装置が提案されている。この糸計測装置では、釣糸の長さ方向に所定の間隔ごとに、光学的に検出可能な目印を付しておき、所定の間隔を置いて設けた2つの光学センサ(フォトリフレクタ)によってその目印を検出し、検出した回数を数えることで糸長を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-095507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されている糸計測装置は、明度の違いを2値的に判断するものであるため、釣糸の移動方向を検出するためには、所定の間隔を置いて2つの光学センサを配置する必要があり、これが装置全体を小型化する上で妨げとなっている。
【0005】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、1つの光学センサによって糸長の計測を行なえるようにした糸計測装置及びそのような糸計測装置を組み込んだ糸処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る糸計測装置は、少なくとも3種類の色が長手方向に沿って所定間隔で繰り返すように塗り分けられた糸について、その移動量を検出する光センサを備えており、前記光センサからの検出信号に基づいて、糸に付されている色を判別する色識別手段と、前記糸が移動して塗分けられた糸が変化したことを検出し、この検出結果に基づいて糸長を算出する糸長算出手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記した構成の糸計測装置は、少なくとも3種類の色が長手方向に沿って所定間隔で繰り返すように塗り分けられた糸を検出する構成であるため、1つの光センサからの検出信号であっても、その糸の移動距離(移動方向を考慮した移動距離)を算出することが可能となり、装置全体を小型化することが可能となる。
【0008】
そして、このような糸計測装置は、例えば、魚釣用リール、釣竿、仕掛け等の釣具、更には、ロープ(糸)を繰り出したり、巻き取る各種のウインチなど糸処理装置に組み込むことが可能である。すなわち、このような糸処理装置に用いられる糸について、少なくとも3色以上の色分けが成されていれば、糸計測装置を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つの光学センサによって糸長の計測が行なえることから、装置全体の小型化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る糸計測装置を示す分解斜視図。
図2図1に示す糸計測装置の組み立て状態の平面断面図。
図3】糸計測装置によって計測される3色(赤、青、緑)を付した釣糸の一例を示す図。
図4図3に示す釣糸を光センサで検知した際の検知信号の例を示すグラフ。
図5】釣糸の放出距離を算出する一工程例を示したフローチャート。
図6】本発明に係る糸計測装置を釣具(糸処理装置)に組み込んだ使用例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る糸計測装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、糸計測装置の一実施形態を示しており、図1は分解斜視図、図2は組み立て状態の平面断面図である。なお、本実施形態では、計測される糸を釣糸として説明する。
【0012】
本実施形態の糸計測装置1は、略立方体形状の筐体2を備えており、一側面2Aに矩形形状の開口2aが形成され、対向する他側面2Bに切欠部2bが形成されている。また、これらの側面2A,2Bと直交する上下面2C,2Dには、それぞれ釣糸50を挿通させて案内する案内部5a,5bが同一直線上に設けられている。本実施形態の案内部5a,5bは、断面円形の筒状体として構成されており、それぞれ上下面2C,2Dに対して圧入され、釣糸50を上下方向に案内するようにしている(以降の説明では、案内部5a,5bの中心軸線を案内軸Xと定義する)。
【0013】
前記筐体2は、内部に閉塞された状態となる空洞部2Eを有するように形成されており、前記案内部5a,5bは、この空洞部2Eでは、案内軸方向に分断された状態で固定されている。このため、釣糸50は、この空洞部2E内で露出した状態で案内される。また、釣糸50は、同軸上に並んだ2つの案内部5a,5bの内側空間を通過することで、その位置が特定される。本実施形態では、各案内部5a,5bの内径を、釣糸50の直径に対して遊びを持たせることで、釣糸50は案内部に対して負荷なく自由に移動可能となっている。
【0014】
本発明の糸計測装置に用いられる糸(釣糸50)は、図3に例示するように、長手方向に所定の間隔L(たとえば10cm)ごとに色の異なる塗料が塗布されて構成されている。塗分けるパターンは、少なくとも3色(本実施形態では、たとえば赤50R、緑50G、青50Bの3色)とされ、この3色は順番に間隔Lで繰り返すように塗り分けられている。
【0015】
前記筐体2の開口2aには、光センサ7が圧入、固定されている。この光センサ7は、発光部7Aと受光部7Bが並んで配置される、いわゆる反射型フォトセンサである。前記発光部7Aは、LEDおよびレンズ等によって構成され、前記案内軸Xに対して直交する光軸Y1を有する。本実施形態では、白色光のLEDを用いており、これにより、釣糸50の色を安定して識別可能となる。
【0016】
前記受光部7Bは、フォトトランジスタ等によって構成され、受光した光の量に応じて信号を出力する。本実施形態では、少なくとも3つの受光素子を有しており、それぞれに異なるカラーフィルタを設けることで、異なる波長の色を検出可能としている。カラーフィルタは、釣糸50の色彩に対応して、赤、青、緑の3色を用いることが一般的であるが、釣糸50に塗り分けた塗料の反射光を識別可能な組み合わせであれば、他の可視光や、赤外光、紫外光等であっても構わない。
【0017】
このため、それぞれのカラーフィルタを透過した光の強度の割合によって、釣糸50の色を判別が行なえる。本実施形態では、赤、青、緑それぞれのフォトダイオードに受光した光の強さに応じて、それぞれの出力信号を電圧の強さに変換(光電変換)して出力する。
【0018】
前記光センサ7には、所定のプログラムを格納したROM、プログラム処理中に検出情報等を一時的に記憶する記憶部(RAM)、これらを制御するCPU等を備えた制御部30が接続されており、制御部30において、各フォトダイオードで光電変換された出力値から色の識別、及び、識別した色に基づいて糸長(釣糸50の移動量)を計測処理する。すなわち、制御部30は、釣糸50に付されている色を判別する色識別手段、及び、釣糸50が移動して塗分けられた糸が変化したことを検出し、この検出結果に基づいて糸長を算出する糸長算出手段を構成する。これらの色識別手段、及び、糸長算出手段による動作については、後述するフローチャートに従って説明する。
【0019】
前記受光部7Bは、前記案内軸Xに対して直交する光軸Y2を有する。したがって、発光部7Aの光軸Y1、受光部7Bの光軸Y2、前記案内部5a,5bによる案内軸Xの3つは、空洞部2E内において、ほぼ一点で交わるような位置関係となるように構成、配設される。これにより、発光部7Aから射出された光は、空洞部内で露出している釣糸50に照射され、その反射光が受光部7Bで受光される(釣糸50に入射した光の箇所の反射率が検出できる)。
【0020】
なお、前記発光部7Aは、射出した光が散乱することなく、露出している釣糸50に向かうように構成されることが好ましい。例えば、発光部7Aの射出面側に、射出される光を露出する釣糸50に対して平行光、又は、収束光にして照射する光学素子(コリメータ、集光レンズ等)7aを配設することが好ましい。
【0021】
前記筐体2の他側面2Bに形成された切欠部2bには、反射板10が配設される。この反射板10は、光センサ7に対し、前記案内軸Xを挟んで反対側に配置され、表面にアルミ蒸着や金属メッキ、反射テープを貼り付けるなど、発光部7Aから射出される光を効率的に反射できる処理が施されている。また、反射板10は、発光部7Aおよび受光部7Bの光軸を含む断面で破断する(釣糸50に直交し、光センサの光軸を通る面で破断する;図2)と、二次曲線になるような断面を有する。反射板10の表面には、光センサ7において受光可能な波長の反射率を増加させたり、それ以外の波長の光の反射率を低下させたりするような多層膜コーティングや、いわゆるモスアイ構造と呼ばれるような、反射面に光の波長よりも小さな凹凸構造を持たせるような光学処理を施しても良い。
【0022】
前記発光部7Aから射出された光は、上述のように釣糸50に照射され、その箇所で乱反射する。このため、受光部7Bに戻ってくる光は、乱反射した光のうちの一部であり、しかも、釣糸50は表面積が小さいため、受光部7Bに戻ってくる光の光量は少ない。すなわち、釣糸50の表面積が小さいほど(釣糸50が細いほど)、受光部7Bに戻る光の量は少なくなる。
【0023】
また、釣糸50のスムーズな移動を実現させるためには、上述したように、案内部5a,5bには遊びが必要であり、釣糸50を位置決めする精度には限界がある。特に、釣糸50に張力が無くなった場合、釣糸50に弛みが発生することがあり、釣糸50と案内軸Xにずれが生じ、発光部7Aが釣糸50の表面に収束光を照射する構成では、釣糸50は発光部7Aの焦点から外れる。これにより、受光部7Bに戻る光の量は少なくなる。受光部7Bに戻る光の量が少なくなると、受光部7Bから得られる反射信号が弱くなってしまい、正しい検出が行なえなくなる恐れがある。
【0024】
上記したような受光部7Bでの受光量の低下を抑制するように、本発明では、釣糸50に当たって乱反射した光の一部を、反射板10の反射面10Aによって反射させて、受光部7Bに戻る光を増やすように構成している。
【0025】
具体的には、反射板10の反射面10Aの断面形状を上記したように二次曲線状にしており、これにより、反射面が平面状に構成される場合に比べ、光を広い面積に当てて受光部7Bに戻すようにしている。また、発光部7Aから射出された光が、釣糸50に当たらずに反射面10Aに照射され、その反射光が受光部7Bに戻ってくると、釣糸50の検出が正しく行えなくなってしまう。これを避けるため、上記したように、発光部7Aの射出面側に、釣糸50に対して、平行光、又は、収束光にする光学素子7aを配設することで、釣糸50に照射されない光の反射面からの反射光を抑制して、受光部7Bに入射する釣糸50からの反射光を多くしている。
【0026】
さらに、発光部7Aから直接照射される部分となる釣糸50の反対側領域12には、上記した反射面10Aを配置せず、反射率の低くなるような表面処理を施しておくことが好ましい。これにより、発光部7Aからの射出光が、直接、反射面10Aに入射することを抑制することが可能となる。
【0027】
そして、前記案内部5a,5b、光センサ7、反射板10を、筐体2内において、上記したような位置関係で保持することにより、閉塞した空洞部2E内で、軸方向に移動する釣糸50の移動量(糸長)を効果的に検出することが可能となる。例えば、受光部7Bからの反射信号を制御部30に入力し、所定のプログラムに従って処理することで、釣糸の移動距離(糸長)や移動方向を検出することができ、これを制御部30に接続される画像表示部40に表示させることが可能である。
【0028】
前記筐体2については、外乱光を遮光できるように、透過性の低い材質で構成することが好ましい。また、光センサ7の光軸を含む空間と対向する面には、反射防止のための塗料や表面処理を施すと良い。上記したように構成される糸計測装置1は、釣具等に設置することが可能であり、例えば、筐体2に一体形成された連結部2Gを用いて釣竿100等に固定できるように構成することが可能である。このように釣具に適用するのであれば、前記筐体2については、各素子との間でパッキン、防水構造を設けて水密構造にしておくことが好ましい。
【0029】
次に、上記した糸計測装置1による糸長計測の一例について、図3から図5を参照して説明する。
前記光センサ7の受光部7Bの出力信号(赤、緑、青の出力信号)によって、釣糸50に照射されている箇所の色を識別することができる。すなわち、赤フィルタを通るチャンネルの出力信号が強ければ、現在、発光部からの射出光が照射している部分は赤、緑フィルタを通るチャンネルの出力信号が強ければ緑、青フィルタを通るチャンネルの出力信号が強ければ青と識別できる。また、それぞれの出力信号が所定値以下であれば、釣糸が弛む等の理由によって、検出可能範囲に釣糸50が無いと判断できる。
【0030】
図3に示すように、釣糸50は、長手方向に沿って、赤50R、緑50G、青50B、の順番で所定距離L毎に3色の色が繰り返し塗分けられている。したがって光センサ7で現在の色(色1とする)を常に監視し、色変化を検出したら、色の変化に応じて移動距離を所定距離分(この例では10cm)変化させる。ここで、色の変化と移動距離の加減の対応については、下記の表1のように設定する。
【表1】
【0031】
表1において、(+)は、釣糸50が放出されていることを示し、(-)は、釣糸50が巻き取られていることを示す。これを図3に示す釣糸50が移動した際の動作に関連付けして説明する。
図3において、釣糸50がD2方向に移動すると放出方向であり、(+)が割り当てられ、釣糸50がD1方向に移動すると巻き取り方向であり、(-)が割り当てられる。すなわち、現在、光センサ7によって識別されている色1が赤である場合、釣糸50が移動して青50Bが検出されると(+)が割り当てられて、現在、釣糸はD2方向(放出方向)に移動していることが認識できる。また、釣糸50が移動して緑50Gが検出されると(-)が割り当てられて、現在、釣糸はD1方向(巻き取り方向)に移動していることが認識される。
【0032】
このように設定することで、一つの光センサにより、糸長が増えていくことと、減っていくことの双方を検出することができ、現時点で、放出された状態にある糸長を検出し、この数値を画像表示部40に表示することができる。これにより、装置全体の小型化や、低コスト化を実現できる。また、この方法によれば、釣糸50の色の塗分ける間隔を変えるだけで、光センサの配置によらず、糸長の検出が行なえる(光センサを2個使う方式では、光センサの間隔と糸の塗分け間隔Lが一致していると、糸長の検出が行なえなくなり、糸計測装置のレイアウトは糸の塗分け間隔Lの制約を受けてしまう。光センサの間隔は、糸の塗分け間隔Lの半分にするのが一般的である)。
【0033】
図4は、釣糸50が移動したときの、光センサ7から得られる出力値を示したグラフである。赤と表示した変位曲線は、赤のカラーフィルタを通して得られた信号、青と表示した変位曲線は、青のカラーフィルタを通して得られた信号、緑と表示した変位曲線は、緑のカラーフィルタを通して得られた信号である。各信号の出力値については、釣糸50に塗ったそれぞれの対応色を検出しているときの値が同程度になるように、ゲインが調整されている。したがって、図4のグラフの最大出力となるチャンネルを確認することで、現在の光センサ7が検出している釣糸50の色を識別することができる。
【0034】
この場合、識別に際しては、出力信号が一定の閾値S1を超えたときに、現在の色の識別をするようにしている。このため、図4のグラフのErr領域で示すように、各色の出力信号が閾値S1を超えないときには、釣糸50の弛みなどの理由によって光センサ7の検出範囲から外れてしまったときなど、光センサ7の出力値が全体的に弱くなり、ノイズ信号に埋もれてしまったと判断する。このときは色の識別をあきらめ、エラー処理を実行する。これにより、釣糸50が動いていないにも関わらず、現在の識別色がノイズ信号によって次々と変わってしまう現象を避けることができる。
【0035】
図5は、光センサ70の出力値から、糸長を計測するための具体的な処理形態の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、図1に示した制御部30における制御プログラムによって実行される。
このフローチャートにおいて、Nは、色の変更回数を意味しており、これに色の塗分け間隔L(10cm)を乗ずることで、実際の釣糸の放出距離を算出することができる。
【0036】
最初、プログラム開始時点では、Nを0に初期化してRAMの作業領域に格納する。このとき、色は未識別状態である(ステップS1)。次に、ステップS2において、光センサ7の各色の出力信号から最大出力のものを探し、その色を現在の識別色(色1)とする。ここでは、色1を赤として説明する。
【0037】
次に、ステップS3において、所定時間経過(例えば10ms)を待ち、ステップS4において、全色の最大出力が所定の閾値S1を越えているかを確認する。上記のように、釣糸50が弛みなどの理由によって光センサ7の検出範囲から外れてしまったときなど、最大出力値がS1を越えないことがあり(図4のErr領域)、このような状態では、光センサ7の出力値が全体的に弱くなってノイズ信号に埋もれてしまったと判断する。このときは色の識別をあきらめ、エラー処理を行う(ステップS4A)。このエラー処理は、例えば、エラーログに保存した後、後述するステップS7,S8のようなカウントアップ、カウントダウン処理を行うことなく、前記ステップS3の通常処理に戻す等が該当する。
これにより、釣糸50が動いていないにも関わらず、現在の識別色がノイズ信号によって次々と変わってしまうような現象を避けることができる。
【0038】
前記ステップS4において、各色の最大値がS1より大きければ(ステップS4;YES)、引き続き、ステップS5において、現在の識別色(色1;赤)と、+方向にあたる色2(ここでは青;放出方向の色であり、色2と定義する)との出力値を比べ、その差が所定値S2より大きくなっているか否かを判断する(色2-色1>S2)。ここで、出力値が同じであれば、現在の識別色は色1のままであり、色2が色1に対して、所定値S2を上回ったことが検出されれば、ステップS7のように、現在の識別色を色2へと変更する。これにより、色1から色2へ変更する際の、出力が同程度になっている状態のハンチング現象を避けることができる。すなわち、現在、識別している色の中の最大色の出力が、その前に出力された色の出力値に対して、所定値を上回ったときに、第2の色と判別することで、色と色の境界部分で生じ易いハンチング現象を抑制することができる。
【0039】
前記所定値S2は、例えば色1の出力値の0.5~50%(好ましくは2~20%)などに設定することでハンチング現象を効果的に抑制することが可能となる。また、識別色を変更した際は、RAMの作業領域において、色の変更処理、及び、上記のN値に+1を加えたN値の更新処理(カウントアップ処理)が行なわれる。そして、引き続き、ステップS9において、距離の算出処理(糸長検出)が行なわれる。この算出処理は、更新したN値に、塗分け間隔L(10cm)を乗じた値である。
【0040】
算出した糸長については、LCD等の画像表示装部40(図1参照)等の出力装置に表示したり、図示しない通信手段で、携帯電話等の外部表示機器に送信して、ユーザに音声等で伝えることが可能である。そして、ステップS9において、距離の算出処理が行なわれた後、再びステップS3に戻る。
【0041】
前記ステップS5において、現在の識別色(色1;赤)と、+方向にあたる色2(ここでは青;放出方向の色であり、色2と定義する)との出力値を比べ、その差が所定値S2より大きくない場合は、釣糸50は、巻き取り方向へ移動していることが考えられる。すなわち、前記ステップS5において、NOであれば、引き続き、ステップS6の処理を行う。ここでは、現在の識別色(色1;赤)と、-方向にあたる色(ここでは緑;巻き取り方向の色であり、色3と定義する)との出力値を比べ、その差が所定値S2より大きくなっているか否かを判断する(色3-色1>S2)。ここで、出力値が同じであれば、現在の識別色は色1のままであり、色3が色1に対して、所定値S2を上回った際に、ステップS8のように、現在の識別色を色3へと変更する。これにより、ステップS7と同様、色1から色3へ変更する際の、出力が同程度になっている状態のハンチング現象を避けることができる。
【0042】
また、識別色を変更した際は、RAMの作業領域において、色の変更処理、及び、上記のN値に-1を加えたN値の更新処理(カウントダウン処理)が行なわれる。そして、ステップS9において、距離の算出処理(糸長検出)が行なわれた後、ステップS3に戻る。
【0043】
なお、上記したステップS5、及び、ステップS6の処理において、識別色に変更がない(色の変化がない)場合、釣糸50が移動していないものと判断し、ステップS3に戻る(ステップS5;NO、ステップS6;NO)。
【0044】
以上のように、ステップS3~S9の処理を繰り返すことで、ハンチングやノイズ信号の影響を避けながら、随時Nの値を監視することができ、これにより、更新処理されたN値にLを乗じることで、現在の糸長を算出し、表示装置などに表示することが可能となる。
【0045】
なお、釣糸50への塗分けを、上述のように可視光内(赤、青、緑)で行うことで、ユーザでもその色の差を識別することができる。一方、可視光外(紫外光や赤外光)の塗分けにより、糸長の計測を行っても良い。これにより、ユーザが視認したい間隔と、検出したい間隔が異なっている場合に、それぞれの間隔に対応することができる。例えば、5mごとには可視光内で色を塗り分け、10cmごとには可視光外で色を塗り分けるようにしても良い。これにより、糸計測装置は、10cm単位での検出が行なえる。また、ユーザは可視光により、釣糸50を視認するだけで5mごとの大まかな変化を把握することができる。
【0046】
また、釣糸50への塗分けを、3色以上にしても良い。これにより、糸計測装置による識別と、ユーザの視認性向上を両立させる、ノイズ対策になる、などの効果がある。
例えば、色1→色2→色3→色4、と3色以上に塗った場合、色1から色2への変更を検出したらNに1を加える。色1から色4への変更を検出したらNに1を減ずる。色1から色3への変更を検出した場合は、誤認識の可能性があるため、例外処理を行なう。例外処理としては、Nを変更しない、4色以上に塗り分けた際は、より近い方の色だと判断する、移動方向の変更はない、とみなし、直前の速度に応じてNに2を加える、または減ずる、等の処理がある。
【0047】
上記した糸計測装置1は、糸処理装置として、釣具である釣竿100に固定している(図1図2、及び、図6の糸計測装置1B参照)。これにより、釣竿内に糸計測装置への給電を行なう電池を配設したり、或いは、糸長の演算を行なうマイコン(制御部)をリール内に配置しやすい、リールを変えても糸長計測装置を変える必要が無い、等のメリットがある。しかし、釣具への配置はこの方法に限らず、下記の手段が考えられる。
【0048】
図6に示す糸計測装置1Aは、糸処理装置であるリール200に取り付けた例を示す。この例では、リール200として両軸リールと呼ばれるタイプのものを用いており、糸計測装置1Aは、ラインガイド部に設けることが可能である。これにより、糸計測装置への給電を行なう電池や、糸長の演算を行なうマイコンをリール内に配置しやすい、釣竿を変えても、糸長計測装置を変える必要が無い、等のメリットがある。
【0049】
また、図6に示す糸計測装置1Cは、糸処理装置である中通しウキ300にとりつけた場合である。筐体全体を、比重1以下の概略球状にして、釣糸50がその中心を貫通可能にしている。筐体内に電池および演算部を設け、電池、演算部、光センサを水密構造内に封入するなどの防水処理を施すことで、水中においても使用することが可能である。
【0050】
これにより、使用中において、糸計測装置自体は水面400に浮かんでいるため、釣竿、リールといったユーザが扱う部分の重量増加を避けることができる。また、釣竿やリールを変えても糸計測装置を変える必要がない、等のメリットがある。
なお、筐体の比重を1より若干重い程度にして、水中ウキとして利用しても良い。この場合は、水圧を受けるため、上述の場合よりも水密性を高くする必要がある。
【0051】
上記した糸計測装置を組み込んだ糸処理装置としては、図6に示すような釣具に限定されることはなく、ドローン用のウインチ、建築作業用、測量作業用の糸巻装置等、糸の放出長さを測定することが可能な各種の糸巻装置等に適用することが可能である。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の糸計測装置は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することができる。例えば、糸計測装置の筐体の構成については、実際に使用される個所に応じて適宜変形することが可能である。また、筐体内に配設される各素子の配置態様、センサの構成等、適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 糸計測装置
2 筐体
5a,5b 案内部
7 光センサ
7A 発光部
7B 受光部
10 反射板
10A 反射面
50 釣糸
100 釣竿
200 魚釣用リール
300 中通し浮き
図1
図2
図3
図4
図5
図6