(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
(21)【出願番号】P 2021190755
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2023-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社東海近畿クボタ 2021年6月24日販売 [刊行物等] 株式会社南東北クボタ 2021年6月25日販売 [刊行物等] 株式会社北陸近畿クボタ 2021年7月9日販売 [刊行物等] 株式会社北海道クボタ 2021年7月19日販売 [刊行物等] 株式会社関東甲信クボタ 2021年7月19日販売 [刊行物等] 株式会社新潟クボタ 2021年7月21日販売 [刊行物等] 株式会社北陸近畿クボタ 2021年9月7日販売 [刊行物等] 株式会社北陸近畿クボタ 2021年10月13日販売 [刊行物等] 株式会社関東甲信クボタ 2021年10月13日販売 [刊行物等] 株式会社北陸近畿クボタ 2021年10月21日販売
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-052651(JP,A)
【文献】特開2020-165504(JP,A)
【文献】特開2019-154442(JP,A)
【文献】特開2017-063688(JP,A)
【文献】特開2001-196755(JP,A)
【文献】特開平11-237270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を備える送水制御装置に取り付けられて、前記変位機構を作動させる電動アクチュエータであって、
前記変位機構を駆動する駆動機構、
前記駆動機構に電力を供給する蓄電池、
前記駆動機構を制御する制御部、および
前記駆動機構、前記蓄電池および前記制御部を収容する本体ケースを備え、
前記本体ケースの底壁には、通気口および排水口として、所定値以下の開口幅を有し、かつ所定値以上の開口面積を有する1または複数のスリットが
直接形成されており、
前記スリットは、幅方向に切断した断面形状が下方に向かって先細りとなるテーパ部を有する、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記スリットの開口幅は、蟻が当該スリットを通過できない大きさに設定されている、請求項1記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記スリットの開口幅は、0.3mm以上1.0mm以下に設定されている、請求項1または2記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記スリットの開口面積をA[mm
2]、前記スリットの数をB[個]、前記蓄電池が備える単電池の数をC[個]、前記蓄電池の容量をD[Ah]としたとき、前記スリットの開口面積は、A×B/(C×D)≧1[mm
2/Ah]の条件を満たすように設定されている、請求項1から3のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動アクチュエータに関し、特にたとえば、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を備える送水制御装置に取り付けられて、変位機構を作動させる、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動アクチュエータの一例が特許文献1に開示される。特許文献1の電動アクチュエータは、本体ケースを備える。この本体ケース内には、制御盤(電子基板)、蓄電池、モータおよびギア等が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では言及されていないが、本体ケース内に蓄電池(小型制御弁式鉛蓄電池)を収容する電動アクチュエータでは、ガスが発生した場合の安全性を考慮して、所定開口面積以上の通気口を本体ケースに形成することが望ましい(JIS C8702-3参照)。また、本体ケース内には結露水が生じる場合があるので、本体ケースは結露水を排水する排水口を有する方が好ましい。そこで、本体ケースの底壁に複数の孔(開口)を形成し、これを通気口および排水口として用いることが考えられる。しかしながら、単に円形の孔を形成するだけだと、この孔から蟻などの虫が本体ケース内に侵入してしまい、電子基板をショートさせる等の不具合が生じる恐れがある。これを防止するため、小さな孔を多数形成するようにすると、結露水を適切に排水できない恐れがある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、電動アクチュエータを提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、通気および排水を適切に行いつつ、本体ケース内への虫の侵入を防止できる、電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を備える送水制御装置に取り付けられて、変位機構を作動させる電動アクチュエータであって、変位機構を駆動する駆動機構、駆動機構に電力を供給する蓄電池、駆動機構を制御する制御部、および駆動機構、蓄電池および制御部を収容する本体ケースを備え、本体ケースの底壁には、通気口および排水口として、所定値以下の開口幅を有し、かつ所定値以上の開口面積を有する1または複数のスリットが直接形成されており、スリットは、幅方向に切断した断面形状が下方に向かって先細りとなるテーパ部を有する、電動アクチュエータである。
【0008】
第1の発明では、電動アクチュエータは、駆動機構、蓄電池、制御部およびこれらを収容する本体ケースを備え、給水栓などの送水制御装置に取り付けられて、送水制御装置が有する変位機構を作動させる。本体ケースの底壁には、所定値以下の開口幅を有し、かつ所定値以上の開口面積を有する1または複数のスリットが形成されている。スリットは、本体ケースの通気口および排水口として用いられる。また、スリットは、幅方向に切断した断面形状が下方に向かって先細りとなるテーパ部を有している。
【0009】
第1の発明によれば、所定値以下の開口幅を有しかつ所定値以上の開口面積を有するスリットを通気口および排水口として用いるので、本体ケースの通気および排水を適切に行いつつ、本体ケース内への虫の侵入を防止できる。また、スリットがテーパ部を有するので、本体ケース内で生じた結露水をより適切に排出できると共に、ダイカスト成形によって本体ケースの底壁を適切に製造できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、スリットの開口幅は、蟻が当該スリットを通過できない大きさに設定されている。
【0011】
第2の発明によれば、本体ケース内への蟻の侵入を適切に防止できる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、スリットの開口幅は、0.3mm以上1.0mm以下に設定されている。
【0015】
第3の発明によれば、本体ケース内への蟻の侵入を適切に防止できる。
【0016】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に従属し、スリットの開口面積をA[mm2]、スリットの数をB[個]、蓄電池が備える単電池の数をC[個]、蓄電池の容量をD[Ah]としたとき、スリットの開口面積は、A×B/(C×D)≧1[mm2/Ah]の条件を満たすように設定されている。
【0017】
第4の発明によれば、通気で必要とされる開口面積(総開口面積)を確保できると共に、本体ケース内で生じた結露水を適切に排出できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、所定値以下の開口幅を有しかつ所定値以上の開口面積を有するスリットを通気口および排水口として用いるので、本体ケースの通気および排水を適切に行いつつ、本体ケース内への虫の侵入を防止できる。
【0019】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の一実施例である電動アクチュエータを備える圃場水管理システムを示す図解図である。
【
図2】電動アクチュエータの内部構造を示す図解図である。
【
図5】本体ケースが備える底壁部材を示す斜視図である。
【
図7】
図6のVII-VII線で切断した底壁部材の断面を示す断面図である。
【
図8】底壁部材のスリット部分の断面を拡大して示す部分断面図である。
【
図10】スリットの断面形状の他の例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して、この発明の一実施例である電動アクチュエータ16は、圃場100に設置される給水栓12および落水口14などの送水制御装置に取り付けられて、送水制御装置が有する変位機構を作動させる。詳細は後述するように、電動アクチュエータ16は、電子基板46および蓄電池48などが収容される本体ケース30を備え、本体ケース30の底壁には、通気口および排水口として用いられるスリット90が形成される。
【0022】
この実施例では、電動アクチュエータ16は、圃場水管理システム10(以下、単に「システム10」と言う。)に用いられる。以下では、先ず、システム10の構成の一例について簡単に説明する。ただし、システム10の構成(給水栓12、落水口14および電動アクチュエータ16の具体的構成など)については、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0023】
図1に示すように、システム10は、圃場100の水管理を遠隔操作または予め記憶されたプログラムに基づく自動制御などによって行う圃場用設備である。この実施例では、システム10は、給水栓12と落水口14とを備え、給水栓12および落水口14のそれぞれには、電動アクチュエータ16が取り付けられる。つまり、給水栓12および落水口14の変位機構を駆動する電動アクチュエータとしては、同じ構造を有する電動アクチュエータ16が用いられる。
【0024】
図示は省略するが、圃場100には、圃場水位を検出する超音波センサ等の水位センサ、気温や水温を検出する各温度センサ、気圧を検出する圧力センサ、土壌水分を検出する土壌水分センサ等のセンサ端末が適宜設けられる。センサ端末は、配線を介して電動アクチュエータ16と接続される。
【0025】
また、この実施例では、システム10は、畦畔102によって区画された複数の耕作区を含むシステムとなっている。給水栓12および落水口14のそれぞれは、各耕作区に設置され、これらに取り付けられた各電動アクチュエータ16は、特定小電力無線規格(920MHz帯)に従った無線通信方法によって中継機(親機)と無線通信可能に接続される。そして、各電動アクチュエータ16は、この中継機およびネットワーク上に設けられた管理サーバ等を経由して、ユーザが所有するスマートフォン、タブレット端末、PDAおよびPCのような遠隔操作端末と無線通信可能に接続される。ただし、電動アクチュエータ16は、中継機を介さずに、管理サーバまたは遠隔操作端末などの外部機器と無線通信を行うようにしてもよい。
【0026】
なお、この無線通信においては、クラウドコンピューティングを利用するとよい。たとえば、各電動アクチュエータ16で取得された情報(給水栓12のバルブ開度および落水口14の排水口高さなどの給水栓12および落水口14の状態に関する情報、およびセンサ端末から受信した圃場水位などのセンサ情報など)を管理サーバの一例であるクラウドサーバに随時送信して記憶しておく。ユーザは、遠隔操作端末からクラウドサーバにアクセスすることで、各電動アクチュエータ16で取得された情報を確認し、遠隔操作端末を用いて各電動アクチュエータ16を遠隔操作することで、圃場100の水管理を行うことができる。
【0027】
給水栓12は、用水パイプライン106から耕作区(圃場100)への給水を制御するための給水装置であって、弁軸および弁体などを含む変位機構を有する。この実施例では、一般的に広く普及している、弁軸の軸回転に伴い弁軸及び弁体が上下動する方式の給水栓12を用いている。このような給水栓12は、畦畔102に設けられた給水桝104内に配置され、畦畔102の下に敷設される用水パイプライン106から分岐して圃場100内まで延びる分岐管108の下流側端部に取り付けられる。そして、給水栓12には、電動アクチュエータ16が取り付けられ、電動アクチュエータ16によって給水栓12の変位機構(弁軸および弁体)が作動される。
【0028】
一方、落水口14は、圃場100からの排水を制御するための排水装置であって、仕切体などを含む変位機構を有する。この実施例では、水位設定機能を有する落水口14を用いている。簡単に説明すると、落水口14は、上端開口が排水口として機能する円筒状の仕切体18を備えており、この仕切体18が上下動することで、排水口を任意の高さに調整することが可能である。このような落水口14は、畦畔102に設けられた排水桝110内に配置され、排水路112まで延びる排水管114の上流側端部に取り付けられる。そして、落水口14には、電動アクチュエータ16が取り付けられ、電動アクチュエータ16によって落水口14の変位機構(仕切体)が上下動される。ただし、落水口14に電動アクチュエータ16を取り付ける際には、電動アクチュエータの回転軸56(
図2参照)の回転力を上下方向(軸方向)の力に変換して仕切体に伝達可能なアダプタ20が用いられる。
【0029】
図1と共に
図2を参照して、電動アクチュエータ16は、給水栓12および落水口14などの送水制御装置の変位機構を作動させるための装置であって、アクチュエータ本体22と、送水制御装置にアクチュエータ本体22を取り付けるための取付台24とを備える。
【0030】
図3に示すように、アクチュエータ本体22は、本体ケース30を備える。本体ケース30は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成された円筒状の側壁32と、側壁32の上端部を封止する円板状の天壁34とを備える。また、側壁32の下端部には、本体ケース30の底壁を構成する底壁部材36が着脱可能に取り付けられる。この底壁部材36の構成については後述する。
【0031】
この実施例では、本体ケース30は、側壁32および天壁34が気密構造を有するように形成される。これにより、本体ケース30の下面側(底壁側)が気密構造となっていなくても、本体ケース30が水没したときに本体ケース30内の空気は抜けなくなるので、本体ケース30内への水の浸入を防ぐことができる(つまり、本体ケース30内に空気を溜めておくことができる)。したがって、仮に給水桝104内に水が溢れて本体ケース30が水没しても、本体ケース30内に配置される部品が水に濡れてしまうことを防止できる。ただし、この発明における「気密」とは、本体ケース30が水没しても、その部分から本体ケース30内の空気が漏れない程度に、耐用期間中は気密性および水密性が保たれることを言う。
【0032】
本体ケース30の上には、太陽電池パネル40が着脱可能に取り付けられる。太陽電池パネル40は、屈曲板状の金属製の保持体42によって所定角度となるように支持される。
【0033】
また、本体ケース30の内部には、電子基板46と、蓄電池48と、モータ50およびメインギア52等を含む駆動機構とが収容される。
【0034】
電子基板46には、図示は省略するが、CPUおよびメモリ等を含む制御部、および無線通信モジュール等を含む無線通信部などが配設される。制御部には、モータ50、操作パネル58、無線通信部およびセンサ端末などが電気的に接続される。制御部のCPUは、電動アクチュエータ16の全体制御を司り、モータ50等の駆動を制御する。メモリは、ROM、RAMおよびHDDなどを包括的に示したものであり、電動アクチュエータ16の動作を制御する制御プログラムを記憶したり、CPUが動作する際のワークエリアとして機能したりする。また、無線通信部は、アンテナと接続され、アンテナを介して中継機などの外部機器と無線通信を行う。
【0035】
蓄電池48は、太陽電池パネル40によって発電された電力を蓄電する。この実施例では、蓄電池48として、6つの単電池を備え、容量が5Ahである小型制御弁式鉛蓄電池が用いられる。モータ50は、蓄電池48に蓄えられた電力によって駆動される。このモータ50の出力軸50aの先端部には、小ギア54が設けられており、メインギア52は、この小ギア54と連結されることで、モータ50からの駆動力を受けて軸線回りに回転する。
【0036】
メインギア52は、両ボス型のギアであり、メインギア52の軸部には、略円柱状の回転軸56が挿通される。この回転軸56の下端部には、給水栓12の弁軸などと連結されるカップリング部56aが形成される。また、メインギア52の軸部の内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝52aが形成され、回転軸56の外周面には、キー溝52aと嵌合される滑りキー56bが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸56は、メインギア52が回転すると共に回転し、かつメインギア52の軸部に対して軸方向に摺動可能となる。
【0037】
また、本体ケース30の外側面には、使用者が電動アクチュエータ16を直接操作するための操作パネル58が設けられる。操作パネル58には、主電源スイッチ、上昇ボタン、下降ボタン、および電動アクチュエータ16の動作モード(遠隔モード、自動モードまたは手動モード等)を切り替えるための選択ボタン等が適宜設けられる。この操作パネル58には、センサ端末から延びる配線を接続するための接続端子なども設けられる。
【0038】
図4に示すように、取付台24は、円筒状の側壁部60と、側壁部60の下端部に設けられる底板部62とを含む。側壁部60は、たとえば、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成され、底板部62は、アルミニウムおよびステンレス等の金属または硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。
【0039】
側壁部60には、回転軸56などの動作確認および清掃などの維持管理作業を行うための点検口60aが形成される。また、側壁部60の上端部には、周方向に所定間隔で並ぶ複数の孔60bが形成される。一方、底板部62の中央部には、給水栓12の弁軸などが挿通される通孔62aが形成される。また、底板部62には、通孔62aの周囲に、周方向および径方向に並ぶ複数の孔62bが形成されており、この孔62bを用いて給水栓12の上面などに取付台24(延いては電動アクチュエータ16)がボルト止めされる。
【0040】
続いて、
図5-
図7を参照して、底壁部材36の構成について具体的に説明する。
図5-
図7に示すように、底壁部材36は、本体ケース30の底壁を構成する円板状の基板70を備え、アルミニウムおよびステンレス等の金属または硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。底壁部材36の製造方法は特に限定されないが、この実施例では、アルミニウムを素材とするダイカスト(ダイキャスト)成形によって底壁部材36を製造している。
【0041】
基板70の中央部には、メインギア52の軸部下部および回転軸56が挿通される短円筒状の挿通部72が形成される。また、基板70の上面には、メインギア52の軸受を支持するための4つの支柱74が形成される。
【0042】
また、底壁部材36は、基板70の囲繞するように形成される短円筒状の第1嵌合部76、第1嵌合部76の下端から外方に突出する鍔状の支持部78、および支持部78の下面から下方に突出する短円筒状の第2嵌合部80を備える。
【0043】
第1嵌合部76には、固定ボルト82と螺合する複数の第1ボルト孔76aが周方向に所定間隔をあけて形成される。一方、側壁32の下端部には、複数の第1ボルト孔76aと対応する位置に孔32aが形成される。側壁32の下端部に第1嵌合部76を嵌め入れると共に、孔32aを介して第1ボルト孔76aに固定ボルト82を締結することで、側壁32に対して底壁部材36が一体化される(
図3参照)。また、第2嵌合部80には、固定ボルト84と螺合する複数の第2ボルト孔80aが周方向に所定間隔をあけて形成される。取付台24の側壁部60の上端部に第2嵌合部80を嵌め入れると共に、取付台24の孔60bを介して第2ボルト孔80aに固定ボルト84を締結することで、本体ケース30の下端部に取付台24が固定される(
図2参照)。
【0044】
上述のような電動アクチュエータ16においては、本体ケース30の内部に蓄電池48(小型制御弁式鉛蓄電池)を収容しているので、所定開口面積以上の通気口を本体ケース30に形成することが望ましい。また、本体ケース30内で生じた結露水を排水する排水口を有することが好ましい。しかしながら、単に円形の孔(開口)を形成するだけだと、この孔から蟻等の虫が本体ケース30内に侵入する恐れが生じる。一方、虫の侵入を防止するために孔を小さくすると、結露水を適切に排出できない恐れが生じる。
【0045】
そこで、この実施例では、本体ケース30の底壁(基板70)に、所定値以下の開口幅を有し、かつ所定値以上の開口面積を有するスリット90を形成し、このスリット90を通気口および排水口として用いるようにした。すなわち、通水口兼排水口となる開口をスリット形状(細長の孔)にすることで、開口幅を抑えて虫の侵入を防止しながらも、開口面積を確保して通気および排水を適切に行えるようにした。
【0046】
具体的には、
図5-
図9に示すように、基板70には、直線状に延びる複数のスリット90が分散して形成される。この実施例では、挿通部72の周囲に、中心部から放射状に延びる(つまり径方向に延びる)4つのスリット90が90度間隔で形成される。
【0047】
各スリット90の開口幅W(短手方向の長さ)は、蟻がスリット90を通過できない大きさに設定することが好ましく、たとえば0.3mm以上1.0mm以下に設定されることが好ましい。これにより、スリット90から蟻が本体ケース30内に侵入することを適切に防止できる。なお、ここで言う開口幅Wは、基板70の厚み方向(上下方向)において開口幅が最小となる部分の開口幅のことを示す。開口面積についても同様である。
【0048】
また、各スリット90の開口面積A[mm2]は、スリット90の数をB[個]、蓄電池48が備える単電池の数をC[個]、蓄電池の容量をD[Ah]としたとき、A×B/(C×D)≧1[mm2/Ah]の条件を満たすように設定されることが好ましい。この実施例では、蓄電池48は、6つの単電池を備え、その容量は5Ahである。また、スリット90の数は4つである。したがって、各スリット90の開口面積Aは、7.5mm2以上に設定されることが好ましい。これにより、通気で必要とされる必要開口面積(総開口面積)を確保できると共に、本体ケース30内で生じた結露水を適切に排出できる。
【0049】
この実施例では、各スリット90は、開口幅Wが0.75mmであり、長さL(長手方向の長さ)が11mmである。すなわち、各スリット90の開口面積Aは、8.25mm2であり、4つのスリット90の開口面積Aを合計した総開口面積は、33mm2である。
【0050】
ただし、各スリット90の開口幅Wが小さい場合、たとえば開口幅Wが0.5mm未満の場合には、表面張力の影響で結露水の排出(通過)が阻害されないようにするため、スリット90周りの表面張力を下げる(つまり濡れ性ないし親水性を増す)ように表面を荒らしたり界面活性剤を塗布したりしておくとよい。
【0051】
また、
図8からよく分かるように、各スリット90の上部には、幅方向に切断した断面形状が下方に向かって先細りとなる(つまりスリット90を形成する両側面が徐々に近づく)テーパ部90aが形成される。これにより、本体ケース30内で生じた結露水をより適切に排出できる。また、ダイカスト成形によって底壁部材36を製造する際、スリット90には金型に形成される突出部が入るが、開口幅Wの小さいスリット90を形成しようとすると、突出部の厚みも小さくなるため、突出部の強度が小さくなって破損し易くなる。これに対して、テーパ部90aを有するスリット90を形成するようにすると、金型の突出部の根元部分の厚みを大きくできるので、突出部の強度が大きくなって金型の破損を防止できる。したがって、ダイカスト成形によって底壁部材36(本体ケース30の底壁)を適切に製造できる。
【0052】
以上のように、この実施例によれば、所定値以下の開口幅Wを有しかつ所定値以上の開口面積Aを有するスリット90を通気口および排水口として用いるので、本体ケース30の通気および排水を適切に行いつつ、本体ケース30内への虫の侵入を防止できる。
【0053】
なお、上述の実施例では、本体ケース30の底壁(基板70)に4つのスリット90を形成したが、スリット90は少なくとも1つ形成されていればよく、スリット90の数は適宜変更可能である。ただし、底壁に複数のスリット90を形成して分散配置することで、バランスよく排水および通気を行うことができる。
【0054】
また、上述の実施例では、スリット90を直線状に形成したが、スリット90の形状はこれに限定されない。たとえば、
図9に示すように、曲線状、L字状、T字状および十字状などの各種の形状にスリット90を形成することもできる。ただし、L字状、T字状および十字状などに形成すると、線の交差部分または屈曲部分において開口幅Wが大きくなるので、スリット90は、一直線状または曲線状に形成することが好ましい。また、複数のスリット90を形成する場合には、各スリット90の形状を必ずしも同じにする必要はない。
【0055】
さらに、上述の実施例では、スリット90が下方に向かって先細りとなるテーパ部90aを有するようにしたが、これに限定されない。
図10(a)に示すように、スリット90は、厚み方向の全長に亘って幅が一様となるように(つまり両側面が平行に延びるように)形成することもできる。また、
図10(b)に示すように、スリット90の厚み方向の全長に亘るようにテーパ部90aを形成することもできる。
【0056】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 …圃場水管理システム
12 …給水栓(送水制御装置)
14 …落水口(送水制御装置)
16 …電動アクチュエータ
30 …本体ケース
46 …電子基板(制御部)
48 …蓄電池
50 …モータ(駆動機構)
52 …メインギア(駆動機構)
70 …基板(本体ケースの底壁)
90 …スリット
100 …圃場