(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】官能化ヒドロキシシラン、シリル化ポリウレタン、及びそれらを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241127BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20241127BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C07F7/18 N CSP
C08G18/28 090
C08G18/10
(21)【出願番号】P 2021524388
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 FR2019052621
(87)【国際公開番号】W WO2020094973
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-31
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コリン, ボリ
(72)【発明者】
【氏名】ミショー, ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】フーケイ, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シモン, フレデリク
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0291265(US,A1)
【文献】特開2004-292517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08G18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(上式中、
- R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ、互いに独立して、H;1から20個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基;及び-C(O)-X-R
9基からなる群から選択され、ここで、
・ Xは、酸素原子又はNR
10基を表し;
・ R
9は、1から60個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
・ R
10は、水素原子;1から60個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子、1から20個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基、又は-R
6-SiR
7
p(OR
8)
3-p基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7は、1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- 各R
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表すか;又は二つのR
8基が一緒になって3から12個の炭素原子を含む環を形成してもよく;かつ
- pは0、1又は2を表し;
但し、R
1、R
2、R
3又はR
4基のうちの1つが-C(O)-X-R
9基を表す)
の化合物。
【請求項2】
以下の式(I-1):
(上式中、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びpが、請求項1に記載の通りであり、R
3又はR
4のうちの1つが-C(O)-X-R
9基を表し、X及びR
9が請求項1に記載の通りである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
- R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びpが、請求項1に記載の通りであり、R
3又はR
4のうちの1つが-C(O)-O-R
9基を表し、R
9が請求項1に記載の通りである式(I-1-A)の化合物と;
- R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びpが、請求項1に記載の通りであり、R
3又はR
4のうちの1つが-C(O)-N(R
10)R
9基を表し、R
9及びR
10が請求項1に記載の通りである式(I-1-B)の化合物
から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
以下の式(I-2):
(上式中、R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8及びpが、請求項1に記載の通りであり、R
1又はR
2のうちの1つが-C(O)-X-R
9基を表し、X及びR
9が請求項1に記載の通りである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
- R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8及びpが、請求項1に記載の通りであり、R
1又はR
2のうちの1つが-C(O)-O-R
9基を表し、R
9が請求項1に記載の通りである式(I-2-A)の化合物;又は
- R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8及びpが、請求項1に記載の通りであり、R
1又はR
2のうちの1つが-C(O)-N(R
10)R
9基を表し、R
9及びR
10が請求項1に記載の通りである式(I-2-B)の化合物
から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
以下の式(I-3):
(上式中、R
5、R
6、R
7、R
8、X、R
9及びpが、請求項1に記載の通りである)を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
以下の式(I-4):
(上式中、R
5、R
6、R
7、R
8、X、R
9及びpが、請求項1に記載の通りである)を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
- p=0;及び/又は
- R
8=メチル;及び/又は
- R
6=プロピレン;及び/又は
- R
5=H又はブチル
を特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R
9が、1から60個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基を表す、請求項1から8の何れか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R
10が、1から60個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基を表す、請求項1から9の何れか一項に記載の化合物。
【請求項11】
次の化合物:
から選択される、請求項1から10の何れか一項に記載の化合物。
【請求項12】
式(II):
(上式中、R
5、R
6、R
7、R
8及びpは請求項1から11の何れか一項に記載の通りである)の化合物と、以下の式(III):
(上式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は請求項1から11の何れか一項に記載の通りであり、R
1、R
2、R
3又はR
4のうちの1つが-C(O)-X-R
9基を表し、XとR
9が請求項1から11の何れか一項に記載の通りである)の化合物との間の反応を含む、請求項1から11の何れか一項に記載の式(I)の化合物を調製するための方法。
【請求項13】
請求項1から11の何れか一項に記載の式(I)の二つの異なる化合物を含む組成物C。
【請求項14】
- 式(I-3):
の化合物と
- 式(I-4):
の化合物(上式中、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、X及びpは、請求項1から11の何れか一項に記載の通りである)
を含む、請求項13に記載の組成物C。
【請求項15】
- 少なくとも一の、請求項1から11の何れか一項に記載の式(I)の化合物と、
- 以下の式(IV):
(上式中、tは2から4の範囲の整数又は非整数を表し、Bは多価有機基を表す)のプレポリマーと
の間の反応工程を含む、ポリウレタンPを得るための方法。
【請求項16】
次の工程:
- E1)
iii)少なくとも一のポリイソシアネートと;
iv)少なくとも一のポリオールとの、NCO/OHモル比(r1)が厳密に1より大きくなる量での、重付加反応による、請求項15に記載の式(IV)の-NCO末端基を有するポリウレタンプレポリマーの調製工程;
及び
- E2)
工程E1)の終了時に形成された生成物と、請求項1から11の何れか一項に記載の式(I)の少なくとも一の化合物との反応工程
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下の式(V):
(上式中、
- B及びtは請求項15に記載の通りであり;
- R
1、R
2、R
3、R
4、R
9、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、X及びpは請求項1から11の何れか一項に記載の通りである)
を有するポリウレタンP’。
【請求項18】
以下の式(VII)、(VIII)又は(IX):
(上式中、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、X及びpは請求項17に記載の通りである)
の一つを有する、請求項17に記載のポリウレタンP’。
【請求項19】
請求項17及び18の何れかに記載のポリウレタンP’と、触媒、フィラー、酸化防止剤、光安定剤/UV吸収剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、発泡剤、殺生物剤、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、レオロジー剤、衝撃改質剤、接着促進剤、蛍光増白剤、難燃剤、防湿剤、核形成剤、溶剤、反応性希釈剤及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を含む配合物。
【請求項20】
接着剤、コーティング又はマスチックの調製のための、請求項19に記載の配合物、又は請求項15及び16の何れかに記載の方法により得られるポリウレタンP、又は請求項17及び18の何れかに記載のポリウレタンP’の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化ヒドロキシシランと、またそれを調製するための方法とに関する。
本発明はまた、前記官能化ヒドロキシシランから得られるシリルポリウレタンと、それを含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
シリルポリマーは、典型的には、例えば航空、自動車、又は建設業界で、接着剤、マスチック、及びコーティングとして使用される。そのようなポリマーは、ポリエーテル又はポリウレタンタイプの主鎖に直接的又は間接的に結合したアルコキシシランタイプの末端基を一般に含む。
【0003】
シリルポリウレタンは、アルコキシシラン官能基を含むヒドロキシシラン誘導体から得ることができる。しかしながら、ヒドロキシシランは、特にヒドロキシシランのヒドロキシル官能基とアルコキシシラン官能基との間で起こりうるトランス-アルコキシル化のために、典型的には安定性の問題を有する。この副反応は、分子内及び/又は分子間反応によるオリゴマー副生成物を生じる場合があり、これがシリルポリマーの架橋特性に影響を及ぼし、機械的特性の低下につながる可能性がある。
加えて、シリルポリウレタンは典型的には粘度が高いため、取り扱いや使用が難しくなる。
従って、上述の欠点の少なくとも一つを有利に解消できる新規なヒドロキシシラン誘導体が必要とされている。
上述の欠点の少なくとも一つを持たない新規なシリルポリウレタンがまた必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本特許出願では、特に明記しない限り、
- パーセント形で表される量は、重量/重量パーセントに対応する。
- アルコール化合物のヒドロキシル価は、生成物1グラム当たりのヒドロキシル官能基の数を表し、生成物1グラム当たりのヒドロキシル官能基のアッセイに使用される水酸化カリウム(KOH)のミリグラム当量数の形で表される。
- 23℃(又は100℃)での粘度測定は、ISO2555規格に準拠してブルックフィールド粘度計を使用して実施されうる。典型的には、23℃(又は100℃)でなされる測定は、粘度範囲に適したスピンドルを備えたルックフィールドRVT粘度計を使用して、毎分20回転(rpm)の回転速度で実施されうる。
- g/モルで表されるポリオールの数平均分子量(Mn)は、それらのヒドロキシル価とそれらの官能性から計算される。
【0005】
[A.化合物]
本発明は式(I):
(上式中、
- R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ、互いに独立して、H;1から20個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基;及び-C(O)-X-R
9基からなる群から選択され、ここで、
・ Xは、酸素原子又はNR
10基を表し;
・ R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
・ R
10は、水素原子;1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子、1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基、又は-R
6-SiR
7
p(OR
8)
3-p基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から3個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- 各R
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表すか;又は二つのR
8基が一緒になって3から12個の炭素原子を含む環を形成してもよく;かつ
- pは0、1又は2を表し;
但し、R
1、R
2、R
3又はR
4基のうちの基が-C(O)-X-R
9基を表す)
の化合物に関する。
【0006】
好ましくは、上記式(I)の化合物は、
- R
1=R
2=R
3=Hであり、R
4が-C(O)-X-R
9基を表し、ここでXとR
9は先に記載した通りであり;あるいは
- R
1=R
4=R
3=Hであり、R
2が-C(O)-X-R
9基を表し、ここでXとR
9は先に記載した通りである、
ものである。
式(I)の化合物は、以下の式(I-1)及び(I-2):
(上式中、
- R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びpは、上に記載の通りであり、
- R
3及びR
4のうちの基は-C(O)-X-R
9基を表し、
- R
1及びR
2のうちの基は-C(O)-X-R
9基を表し、
- Xは、酸素原子又はNR
10基を表し、
- R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で場合により中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
10は、水素原子;1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択される)の化合物から選択されうる。
【0007】
式(I-1)の化合物は、特に、R1=R2=Hである上述の式(I)の化合物である。
式(I-2)の化合物は、特に、R3=R4=Hである上述の式(I)の化合物である。
【0008】
式(I-1)の化合物の中で、挙げることができる例には、
- R3、R4、R5、R6、R7、R8及びpが、上に記載の通りであり、R3及びR4のうちの基が-C(O)-O-R9基を表し、R9が上に記載の通りである式(I-1-A)の化合物;
又は
- R3、R4、R5、R6、R7、R8及びpが、上に記載の通りであり、R3及びR4のうちの基が-C(O)-N(R10)R9基を表し、R9及びR10が先に記載の通りである式(I-1-B)の化合物
が含まれる。
【0009】
式(I-2)の化合物の中で、挙げることができる例には、
- R1、R2、R5、R6、R7、R8及びpが、上に記載の通りであり、R1及びR2のうちの基が-C(O)-O-R9基を表し、R9が上に記載の通りである式(I-2-A)の化合物;
又は
- R1、R2、R5、R6、R7、R8及びpが、上に記載の通りであり、R1及びR2のうちの基が-C(O)-N(R10)R9基を表し、R9及びR10が先に記載の通りである式(I-2-B)の化合物
が含まれる。
【0010】
一実施態様によれば、式(I)の化合物は、以下の式(I-3):
(上式中、
- Xは、酸素原子又はNR
10基を表し、
- R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
10は、水素原子;1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子、1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基、又は-R
6-SiR
7
p(OR
8)
3-p基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- 各R
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表すか;又は二つのR
8基が一緒になって3から12個の炭素原子を含む環を形成してもよく;かつ
- pは0、1又は2を表す)の化合物である。
【0011】
別の実施態様によれば、式(I)の化合物は、以下の式(I-4):
(上式中、
- Xは、酸素原子又はNR
10基を表し、
- R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
10は、水素原子;1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子、1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基、又は-R
6-SiR
7
p(OR
8)
3-p基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- 各R
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表すか;又は二つのR
8基が一緒になって3から12個の炭素原子を含む環を形成してもよく;かつ
- pは0、1又は2を表す)の化合物である。
【0012】
一実施態様によれば、上述の式(I)、(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(I-4)の化合物は、
- p=0;及び/又は
- R8=メチル;及び/又は
- R6=プロピレン;及び/又は
- R5=H又はブチル
であるものである。
特に、上述の式(I)、(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(I-4)の化合物は、
- p=0;及び
- R8=メチル;及び
- R6=プロピレン;及び
- R5=H又はブチル
であるものである。
【0013】
一実施態様によれば、上記の式(I)、(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(I-4)の化合物において、R9基は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基を表す。
好ましくは、上記の式(I)、(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(I-4)の化合物において、R9基は、
- 1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基、優先的にはブチル基;又は
- 1から12個の炭素原子、好ましくは5から12個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、好ましくは-CH2-CH(CH2CH3)-(CH2)3-CH3基;又は
- 式-(CH(Me)-CH2-O)n-(CH2)m-CH3(該式中、m及びnはそれぞれ1から5の範囲の整数、好ましくは1、2又は3を表す)
を表す。
【0014】
一実施態様によれば、上記の式(I)、(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(I-4)の化合物において、R10基は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基を表す。
好ましくは、R10基は、1から12個の炭素原子、優先的には1から5個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基を表し、R10基は有利にはメチルである。
【0015】
好ましい実施態様によれば、式(I)の化合物は、次の化合物から選択される:
【0016】
[B.化合物を調製するための方法]
本発明はまた式(II):
(上式中、R
5、R
6、R
7、R
8及びpは先に記載の通りである)の化合物と、以下の式(III):
(上式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は先に記載の通りであり、R
1、R
2、R
3及びR
4基のうちの基が-C(O)-X-R
9基を表し、R
9が先に記載の通りである)の化合物との間の反応を含む、上述の式(I)の化合物を調製するための方法に関する。
【0017】
式(III)の化合物は、例えば国際公開第2011/157551号、国際公開第2012/065879号及び国際公開第2013/092011号に開示されているように、対応するエポキシドから慣用的に調製することができる。
【0018】
式(II)の化合物のなかで、例えば次の化合物を挙げることができる:
- 4-アミノブチルトリエトキシシラン;
- 3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン;
- N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン;
- 3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン;
- 3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン;
- 3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン;
- 3-アミノプロピルトリエトキシシラン;
- 3-アミノプロピルトリメトキシシラン;
- 3-N-メチルアミノプロピルトリエトキシシラン;
- N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アスパラギン酸エチル;
- N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2-アミノメチルコハク酸エチル;
- N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2-アミノメチルマロン酸エチル;
- ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン。
好ましくは、式(II)の化合物は、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及び3-アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0019】
式(III)の化合物は、以下の式(III-1):
(上式中、XとR
9は先に記載の通りである)の化合物から選択されうる。
【0020】
式(III)の化合物として、例えば次の化合物を挙げることができる:
【0021】
反応は無水条件下で実施されうる。
反応は、15℃から100℃、好ましくは20℃から95℃の範囲の温度で、優先的には室温(23℃)又は90℃において実施されうる。
反応は、溶媒、例えば、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ブタノン、又はそれらの混合物の存在下で実施されうる。
好ましくは、反応は、1.2から0.8、好ましくは1.1から0.9の範囲の化合物(II)/化合物(III)モル比で実施され;該比は優先的には1である。
反応時間は、使用される試薬の性質、その濃度及び反応温度に応じて特に変わりうる。反応は、赤外線分光法、カーボネートのカルボニルについてのIRバンドの消失をモニターすることによって、又は1H及び/又は13C NMRによってモニターすることができる。
反応の終わりに、式(I)の化合物は、特に反応溶媒を蒸発させることによって回収され得、場合によっては精製工程に供される。
【0022】
[C.化合物C]
本発明はまた、異なる式(I)の二つの化合物を含む組成物Cに関し、式(I)は、先に記載した通りである。
一実施態様によれば、上述の組成物Cは、
- 式(I-1):
の化合物と
- 式(I-2):
の化合物
(上式中、
- R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ、互いに独立して、H;1から20個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基;及び-C(O)-X-R
9基からなる群から選択され、ここで、
・ Xは、酸素原子又はNR
10基を表し;
・ R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
・ R
10は、水素原子;1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子、1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基、又は-R
6-SiR
7
p(OR
8)
3-p基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- 各R
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表すか;又は二つのR
8基が一緒になって3から12個の炭素原子を含む環を形成してもよく;かつ
- pは0、1又は2を表し;
- R
3及びR
4のうちの基が-C(O)-X-R
9基を表し;かつ
- R
1及びR
2のうちの基が-C(O)-X-R
9基を表す)
を含む。
【0023】
好ましくは、上述の組成物Cにおいて、
- 式(I-1)のR5基は、式(I-2)のR5基と同一であり;
- 式(I-1)のR6基は、式(I-2)のR6基と同一であり;
- 式(I-1)のR7基は、式(I-2)のR7基と同一であり;
- 式(I-1)のR8基は、式(I-2)のR8基と同一であり;
- 式(I-1)のpは、式(I-2)のR8基と同一であり;かつ
- 式(I-2)のR1(又はR2)基は、式(I-1)のR3(又はそれぞれR4)基と同一である。
【0024】
上述の組成物Cにおいて、式(I-1)の化合物/式(I-2)の化合物のモル比は、1/100から100/1、好ましくは10/90から90/10、優先的には20/80から80/20、例えば30/70から70/30の範囲でありうる。
【0025】
別の実施態様によれば、本発明に係る組成物Cは、
- 式(I-3):
の化合物と
- 式(I-4):
の化合物
(上式中、
・ Xは、酸素原子又はNR
10基を表し;
・ R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
・ R
10は、水素原子;1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子、1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基、又は-R
6-SiR
7
p(OR
8)
3-p基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- 各R
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表すか;又は二つのR
8基が一緒になって3から12個の炭素原子を含む環を形成してもよく;かつ
- pは0、1又は2を表す)
を含む。
【0026】
好ましくは、上述の組成物Cにおいて、
- 式(I-3)のR5基は、式(I-4)のR5基と同一であり;
- 式(I-3)のR6基は、式(I-4)のR6基と同一であり;
- 式(I-3)のR7基は、式(I-4)のR7基と同一であり;
- 式(I-3)のR8基は、式(I-4)のR8基と同一であり;
- 式(I-3)のX基は、式(I-4)のX基と同一であり;
- 式(I-3)のR9基は、式(I-4)のR9基と同一であり;かつ
- 式(I-3)のpは、式(I-4)のR8基と同一である。
【0027】
上述の組成物Cにおいて、式(I-3)の化合物/式(I-4)の化合物のモル比は、1/100から100/1、好ましくは10/90から90/10、優先的には20/80から80/20、例えば30/70から70/30の範囲でありうる。
【0028】
好ましくは、組成物Cは、次の組成物から選択される:
を含む組成物C1、
を含む組成物C2、
を含む組成物C3、
を含む組成物C4、
を含む組成物C5。
【0029】
本発明はまた、ポリマーを調製するための、先に記載した式(I)の化合物又は上述の組成物Cの使用に関する。
【0030】
[D.ポリマー]
本発明はまた、
- 少なくとも一、好ましくは少なくとも二の上に記載した式(I)の化合物と、
- 以下の式(IV):
(上式中、tは2から4の範囲でありうる整数又は非整数を表し、Bは多価有機基を表す)のプレポリマー、好ましくはポリウレタンプレポリマーと
の間の反応工程を含む方法によって得られるポリウレタンPに関する。
【0031】
好ましくは、本発明に係るポリウレタンPは、
- 上述の式(I-3)の化合物、
- 上述の式(I-4)の化合物、及び
- 上述の式(IV)のプレポリマー
の間の反応工程を含む方法によって得られ;
好ましくは、式(I-3)及び(I-4)の化合物は、
- 式(I-3)のR5基が、式(I-4)のR5基と同一であり;
- 式(I-3)のR6基が、式(I-4)のR6基と同一であり;
- 式(I-3)のR7基が、式(I-4)のR7基と同一であり;
- 式(I-3)のR8基が、式(I-4)のR8基と同一であり;
- 式(I-3)のX基が、式(I-4)のX基と同一であり;
- 式(I-3)のR9基が、式(I-4)のR9基と同一であり;かつ
- 式(I-3)のpが、式(I-4)のR8基と同一である
ものである。
【0032】
式(IV)のプレポリマーは、-NCO基を末端基とするプレポリマーの調製に対して当業者に知られている任意の方法によって得ることができる。
一実施態様では、上述の式(IV)のプレポリマーは、
a)好ましくはジイソシアネート、トリイソシアネート、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも一のポリイソシアネートと;
b)好ましくはポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも一のポリオールとの、NCO/OHモル比(r1)が厳密に1より大きく、好ましくは1.2から2の範囲になる量での、重付加反応により得られるポリウレタンである。
【0033】
一実施態様では、本発明に係るポリウレタンPは、次の工程:
- E1)
i)好ましくはジイソシアネート、トリイソシアネート、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも一のポリイソシアネートと;
ii)好ましくはポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも一のポリオールとの、NCO/OHモル比(r1)が厳密に1より大きくなる量での、重付加反応による、上述の式(IV)の-NCO末端基を有するポリウレタンプレポリマーの調製工程;
及び
- E2)
特にNCO/OHモル比(r2)が、好ましくは1.3と5の間である量での、工程E1)の終了時に形成された生成物と、先に記載した式(I)の少なくとも一、好ましくは二の化合物との反応工程
を含む方法により調製される。
【0034】
本発明の文脈では、特に明記しない限り、(r1)は、工程E1)の反応媒体中に存在するポリイソシアネート及びポリオールの全てが有しているヒドロキシル基(OH)数に対するイソシアネート基(NCO)数のモル比に対応するNCO/OHモル比である。
【0035】
本発明の文脈では、特に明記しない限り、(r2)は、工程E2)の反応媒体中に存在するイソシアネート(特に、NCO末端基を有するポリウレタンプレポリマーと場合によっては、工程E1の最後に反応しなかったポリイソシアネートに関して)と式(I)の化合物の全てがそれぞれ有しているヒドロキシル基数に対するイソシアネート基数のモル比に対応するNCO/OHモル比である。
【0036】
NCO末端基を有するポリウレタンが工程E1)中にポリイソシアネート又は連続的に加えられる幾つかのポリイソシアネートの混合物から得られる場合、比率(r1)の計算は、先ず反応中に工程E1)の媒体中に存在するポリイソシアネートの全てが有するNCO基を考慮に入れ、第二に工程E1)の反応媒体中に存在するポリオールが有するOH基を考慮に入れる。
工程E1)の間、重付加反応は、好ましくは95℃未満の温度で、好ましくは無水条件下で実施される。
【0037】
工程E1)
本発明に従って使用される上述の式(IV)のプレポリマーを調製するために使用されうるポリオールは、数平均分子量(Mn)が300から20000g/モル、好ましくは400から15000g/モル、優先的には500から12000g/モルの範囲のものから選択することができる。
好ましくは、それらのヒドロキシル官能価は、2から3の範囲である。ヒドロキシル官能価は、ポリオール1モル当たりのヒドロキシル官能基の平均数である。
本発明に従って使用されうるポリオールは、ポリオール1グラム当たり9から570ミリグラムのKOH(mg KOH/g)、好ましくは35から430mg KOH/g、より好ましくは55から340mg KOH/gの範囲の(平均)ヒドロキシル価(IOH)を有しうる。
【0038】
ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びそれらの混合物から選択されうる。好ましくは、工程E1)は、ポリエーテルポリオールを用いて実施される。
本発明に従って使用されうるポリエーテルポリオールは、好ましくはポリオキシアルキレンポリオールから選択され、その直鎖状又は分枝状のアルキレン部分は2から4個の炭素原子、より優先的には2から3個の炭素原子を含む。
より優先的には、本発明に従って使用されうるポリエーテルポリオールは、好ましくは、ポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオールから選択され、その直鎖状又は分枝状のアルキレン部分は、1から4個の炭素原子、より優先的には2から3個の炭素原子を含む。
【0039】
本発明に従って使用されうるポリオキシアルキレンジオール又はトリオールの例として、次のものを挙げることができる:
- 300から20000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリオキシプロピレンジオール又はトリオール(ポリプロピレングリコール(PPG)ジオール又はトリオールとも呼ばれる);
- 300から15000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリオキシエチレンジオール又はトリオール(ポリエチレングリコール(PEG)ジオール又はトリオールとも呼ばれる);
- 300から20000g/モルの範囲の数平均分子量を有するポリオキシブチレンジオール又はトリオール((PBG)ジオール又はトリオールとも呼ばれる);
- 250から4000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリテトラメチレンジオール又はトリオール(ポリTHF又はPTMEGとも呼ばれる);
- 300から20000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有する、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドに基づくジオール又はトリオール共重合体又は三元重合体;
- 及びそれらの混合物。
【0040】
上述のポリエーテルポリオールは、常套的に調製することができ、広く市販されている。それらは、塩基性触媒(例えば水酸化カリウム)又は二重金属/シアン化物錯体に基づく触媒の存在下で、対応するアルキレンオキシドを重合することにより得ることができる。
【0041】
ヒドロキシル官能価が2に等しいポリプロピレングリコールとしては、次のものが挙げられる:
- Voranol(登録商標)EP1900: 約4008g/モルの数平均分子量と、28mgKOH/gに等しいヒドロキシル価IOHを持つ二官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)8200: 8016g/モルの数平均分子量と、14mgKOH/gに等しいヒドロキシル価IOHを持つ二官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)12200: 11222g/モルの数平均分子量と、10mgKOH/gに等しいヒドロキシル価IOHを持つ二官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)18200: 17265g/モルの数平均分子量と、6.5mgKOH/gに等しいヒドロキシル価IOHを持つ二官能性PPG。
【0042】
ヒドロキシル官能価が3に等しいポリプロピレングリコールとしては、次のものが挙げられる:
- Voranol(登録商標)CP755: 約710g/モルの数平均分子量と、237mgKOH/gに等しいヒドロキシル価IOHを持つ三官能性PPG;
- Voranol(登録商標)CP3355: 約3544g/モルの数平均分子量と、47.5mgKOH/gに等しいヒドロキシル価IOHを持つ三官能性PPG;
- Acclaim(登録商標)6300: 約5948g/モルの数平均分子量と、28.3mgKOH/gに等しいヒドロキシル価IOHを持つ三官能性PPG。
【0043】
ヒドロキシル官能価が2に等しいポリテトラメチレングリコールとしては、次のものが挙げられる:
- Terathane(登録商標)PTMEG250: 約4008g/モルの数平均分子量と、230から270mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価IOHを持つ二官能性PolyTHF;
- Terathane(登録商標)PTMEG2900: 約4008g/モルの数平均分子量と、37.7から39.7mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価IOHを持つ二官能性PolyTHF。
【0044】
本発明の文脈では、「ポリエーテルポリオールのヒドロキシル官能価」という用語は、ポリエーテルポリオール1モル当たりのヒドロキシル官能基の平均数を意味する。
ポリエステルポリオールは、ポリエステルジオール及びポリエステルトリオールから、好ましくはポリエステルジオールから選択することができる。
【0045】
挙げることができるポリエステルジオール又はトリオールの例には、次のものが含まれる:
- およそ1000g/モルの数平均分子量(Mn)と108から116mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を持つ、Cray Valley社から販売されているRealkyd(登録商標)XTR10410。これは、アジピン酸、ジエチレングリコール及びモノエチレングリコールの縮合から生じた生成物である;
- 240から8000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有する、参照CAPAポリオールとしてPerstorp社から販売されているポリカプロラクトンジオール又はトリオール。
ポリカーボネートポリオールは、特に300g/モルから12000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有する、ポリカーボネートジオール又はトリオールから選択されうる。
【0046】
挙げることができるポリカーボネートジオールの例には、次のものが含まれる:
- それぞれ1000及び2000g/モルに等しい各数平均分子量(Mn)と、それぞれ112及び56mgKOH/gであるヒドロキシル価を持つ、Novomer社から販売されているConvergeポリオール212-10及びConvergeポリオール212-20、
- 326g/モルに等しい数平均分子量(Mn)と、344mgKOH/gであるヒドロキシル価を持つ、Covestroから販売されているDesmophen(登録商標)C XP2716、
- 500から3000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)と、224から37mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を持つ、クラレから販売されているポリオールC-590、C1090、C-2090及びC-3090。
上述の式(IV)のプレポリマーを調製するために使用することができるポリイソシアネートは、順次添加するか、又は混合物の形で反応させることができる。
【0047】
一実施態様によれば、使用されうるポリイソシアネートは、好ましくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-HMDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアナト-2-メチルペンタン(MPDI)、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン(TMDI)、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(TIN)、(2,5)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2,5-NBDI)、(2,6)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2,6-NBDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-H6-XDI)、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-H6-XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)(特にm-キシリレンジイソシアネート(m-XDI))、トルエンジイソシアネート(特に2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)及び/又は2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI))、ジフェニルメタンジイソシアネート(特に4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)及び/又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI))、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)(特にテトラメチル(メタ)キシリレンジイソシアネート)、及びそれらの混合物からなる群から選択されるジイソシアネートである。
【0048】
好ましくは、ポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネート(特に、異性体2,4-TDI、異性体2,6-TDI又はそれらの混合物)、メタ-キシリレン、IPDI、及びそれらの混合物から選択される。好ましくは、ポリイソシアネートはイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。
【0049】
使用されうるポリイソシアネートは、典型的には広く市販されている。例として、95%のオーダーの純度を有する2,4-TDIに相当する、Vencorex社によって販売されているScuranate(登録商標)TX、99重量%を超える純度を有する2,4-TDIに相当する、Vencorex社によって販売されているScuranate(登録商標)T100、IPDIに相当するCovestro社によって販売されているDesmodur(登録商標)I又はHDIイソシアネートに相当するCovestro社によって販売されているDesmodur(登録商標)N3300、m-XDIに相当する三井化学によって販売されているTakenate(商標)500、m-H6XDIに相当する三井化学によって販売されているTakenate(商標)600、H12MDIに相当するEvonikによって販売されているVestanat(登録商標)H12MDIを挙げることができる。
好ましくは、ポリイソシアネートはイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。
【0050】
工程E1)の重付加反応は、少なくとも一種の反応触媒の存在下又は非存在下で実施されうる。
工程E1)の重付加反応中に使用されうる反応触媒は、少なくとも一種のポリイソシアネートと少なくとも一種のポリオールとの反応によるポリウレタンの形成を触媒するための当業者に知られている任意の触媒でありうる。
工程E1)の反応媒体の重量に対して、0.3重量%までの範囲の量の触媒を使用することができる。特に、工程E1)の反応媒体の全重量に対して0.02重量%から0.2重量%の触媒を使用することが好ましい。
【0051】
工程E2)
工程E2)は、無水条件下で実施されうる。
工程E2)は、40℃から100℃、好ましくは60℃から100℃、有利には80℃から95℃の範囲の温度で実施されうる。
工程E2)の重付加反応は、少なくとも一種の反応触媒の存在下又は非存在下で実施されうる。
工程E2)の重付加反応中に使用されうる反応触媒は、ヒドロキシル化合物とNCO末端プレポリマーとの間のこのタイプの反応を触媒するための当業者に知られている任意の触媒でありうる。
【0052】
工程E2)の反応媒体の重量に対して、0.3重量%までの範囲の量の触媒を使用することができる。特に、工程E2)の反応媒体の全重量に対して0.02重量%から0.2重量%の触媒を使用することが好ましい。
【0053】
式(IV)のプレポリマーは、前記プレポリマーの全質量に対して、0.1%から15%、好ましくは0.3%から10%、優先的には0.5%から8%、有利には0.6%から3%の範囲のNCO基の質量含有率(%NCO)を含みうる。
【0054】
本発明は、特に、以下の式(V):
(上式中、
- Bは多価有機基を表し;
- tは、2から4の範囲でありうる整数又は非整数を表し;
- R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ、互いに独立して、H;1から20個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基;及び-C(O)-X-R
9基からなる群から選択され、ここで、
・ Xは、酸素原子又はNR
10基を表し;
・ R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
・ R
10は、水素原子、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子、1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基、又は-R
6-SiR
7
p(OR
8)
3-p基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- 各R
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表すか;又は二つのR
8基が一緒になって3から12個の炭素原子を含む環を形成してもよく;かつ
- pは0、1又は2を表し;
但し、R
1、R
2、R
3又はR
4基のうちの基が-C(O)-X-R
9基を表す)を有するポリウレタンP’に関する。
【0055】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、X、R10及びpのうちの各一の出現は、各繰り返し単位において同一であっても異なっていてもよい。例えば、t=2の場合、同一でも異なっていてもよい二つの繰り返し単位が存在する。例えば、t=3の場合、同一でも異なっていてもよい三つの繰り返し単位が存在する。
ポリウレタンP’は、上述のポリマーPの特定の例でありうる。
【0056】
ポリウレタンP’は、好ましくは、以下の式(VI):
(上式中、
- R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ、互いに独立して、H;1から20個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基;及び-C(O)-X-R
9基からなる群から選択され、ここで、
・ Xは、酸素原子又はNR
10基を表し;
・ R
9は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
・ R
10は、水素原子、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基;6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基;及びアルキル基が1から12個の炭素原子を含むアリールアルキル基からなる群から選択され;
- R
5は、水素原子又は1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;
- R
6は、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキレン基を表し;
- R
7及びR
8は、互いに独立して、1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、環状又は脂肪族のアルキル基を表し;かつ
- pは0、1又は2を表し;
但し、R
1、R
2、R
3又はR
4基のうちの基が-C(O)-X-R
9基を表す)を有する。
【0057】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、X、R10及びpのうちの各一の各出現は、同一であっても異なっていてもよい。
「R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、X、R10及びpのうちの各一の各出現は、同一であっても異なっていてもよい」という用語は、例えば、 式(VI)におけるR1の各出現が同一であっても異なっていてもよいこと、又はpの各出現が式(VI)において同一であっても異なっていてもよいことを意味する。これは、言及された全ての基についても同様である。例えば、式(VI)の一つのR1基がHを表しうる一方、他のR1基が-C(O)XR9基を表しうる。
一実施態様によれば、上記の式(VI)において、R5、R6、R7、R8、R9、X、R10及びpのうちの各一の各出現は同一であり、R1、R2、R3及びR4のうちの各基の各出現は同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
本発明に係るポリウレタンP’は、好ましくは、以下の式(VII)、(VIII)又は(IX):
(上式中、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、X及びpは先に記載した通りである)の一つを有する。
【0059】
一実施態様によれば、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)及び(IX)のポリウレタンP’は、
- p=0;及び/又は
- R8=メチル;及び/又は
- R6=プロピレン;及び/又は
- R5=H又はブチル
であるものである。
特に、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)及び(IX)のポリウレタンP’は、
- p=0;及び
- R8=メチル;及び
- R6=プロピレン;及び
- R5=H又はブチル
であるものである。
【0060】
好ましくは、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)及び(IX)のポリウレタンP’において、R9基は、
- 1から12個の炭素原子、好ましくは1から5個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基、優先的にはブチル基;又は
- 1から12個の炭素原子、好ましくは5から12個の炭素原子を含む分岐状アルキル基、好ましくは-CH2-CH(CH2CH3)-(CH2)3-CH3基;又は
- 式-(CH(Me)-CH2-O)n-(CH2)m-CH3(該式中、m及びnはそれぞれ1から5の範囲の整数、好ましくは1、2又は3を表す)
を表す。
【0061】
一実施態様によれば、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)及び(IX)のポリウレタンP’において、R10基は、1から60個の炭素原子、好ましくは1から20個の炭素原子、優先的には1から12個の炭素原子を含む、直鎖状又は分岐状、脂肪族又は環状のアルキル基であって、O及びSから選択される一又は複数のヘテロ原子で中断されていてもよく、一又は複数の不飽和を含んでいてもよいアルキル基を表す。
好ましくは、R10基は、1から12個の炭素原子、優先的には1から5個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基を表し、R10基は有利にはメチルである。
【0062】
本発明はまた、接着剤、マスチック又はコーティングの調製のための上述のポリウレタン(P及びP’)の使用に関する。
本発明に係るシリルポリウレタンは、有利には、既存のシリルポリマーよりも低い粘度を有し、それにより、取り扱い及び使用が容易になる。
【0063】
E.ポリマー組成物
本発明は、本発明に係る少なくとも二、好ましくは少なくとも三のポリウレタンP(又はP’)を含む組成物Vに関する。
組成物Vは、100℃で測定して100から3000mPa・sの範囲のブルックフィールド粘度を有しうる。
好ましくは、組成物Vは、
- 上に記載の式(VII)のポリウレタンP’;
- 上に記載の式(VIII)のポリウレタンP’;及び
- 上に記載の式(IX)のポリウレタンP’;
を含み、R5、R6、R7、R8、R9、X、R10及びpのうちの各一の各出現は好ましくは同一である。
【0064】
F.配合物
本発明は、本発明に係る少なくとも一のポリウレタンP又はP’と、触媒、フィラー、酸化防止剤、光安定剤/UV吸収剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、発泡剤、殺生物剤、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、レオロジー剤、衝撃改質剤、接着促進剤、蛍光増白剤、難燃剤、防湿剤、核形成剤、溶剤、反応性希釈剤及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を含む配合物に関する。
【0065】
上述の配合物は、有利には、
- 上に記載した式(VII)のポリウレタンP’;
- 上に記載した式(VIII)のポリウレタンP’;及び
- 上に記載した式(IX)のポリウレタンP’
を含み、R5、R6、R7、R8、R9、X、R10及びpのうちの各一の各出現は好ましくは同一である。
【0066】
通常使用されるフィラーは、例えば、無機又は有機粉末、例えば炭酸カルシウム及びケイ酸カルシウム、及び無機繊維材料、例えばガラス繊維である。炭素繊維のような有機フィラー、有機フィラーと無機フィラーの混合物、例えばガラス繊維と炭素繊維の混合物、又は炭素繊維と無機フィラーの混合物を使用することも可能である。フィラーは、配合物の全重量に対して、1重量%から75重量%の範囲の量で加えることができる。
【0067】
本発明に係る配合物に使用されるUV安定剤、酸化防止剤及び金属不活性化剤は、有利には、良好な耐移行性及び高い熱安定性を有する。それらは、例えば、次の群a)からt)から選択される。群a)からg)及びi)の化合物は光安定剤/UV吸収剤であり、化合物j)からt)は安定剤として作用する:
a)4,4-ジアリールブタジエン
b)ケイ皮酸エステル、
c)ベンゾトリアゾール、
d)ヒドロキシベンゾフェノン、
e)シアノアクリル酸ジフェニル、
f)オキサミド、
g)2-フェニル-1,3,5-トリアジン、
h)酸化防止剤、
i)ニッケル誘導体
j)立体障害アミン、
k)金属不活性化剤、
l)ホスファイト及びホスホナイト、
m)ヒドロキシルアミン、
n)ニトロン、
o)アミンオキシド、
p)ベンゾフラノン及びインドリノン、
q)チオシナジスト(thiosynergists)、
r)過酸化物デストロイヤー(destroyers)、
s)ポリアミド安定剤及び
t)塩基性補助安定剤。
【0068】
触媒は、配合物の全重量に対して、0.01重量%から約10重量%の範囲の割合で場合によっては使用される。
触媒は、次のものから選択されうる:
- 有機チタン誘導体、例えばチタンアセチルアセトナート(DuPont社からTyzor(登録商標)AA75の名で市販)、Ti(OnBu)4(DORF KetalからTyzor(登録商標)TnBTの名で市販);
- 有機アルミニウム誘導体、例えばアルミニウムキレート(King Industries社からK-KAT(登録商標)5218の名で市販);
- 有機亜鉛誘導体、例えばZn[O(C=O)C9H19]2(OMG Borchers社からBorchi(登録商標)KAT15の商品名で入手可能);
- 有機ビスマス誘導体、例えばBi[O(C=O)C9H19]2(OMG Borchers社からBorchi(登録商標)KAT315の商品名で入手可能);
- 有機スズ誘導体、例えばジブチルスズジラウレート(又はDBTL)、ジブチルスズジラウレート(DOTDL)、ジオクチルスズビスアセチルアセトナート(TIB KAT(登録商標)223の名で入手可能)又はTIB KAT(登録商標)425(ジオクチルスズオキシドとビニルトリメトキシシランの混合物);
- 有機アミン:アミジン、例えば1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、及びC1からC6のモノ-、ジ-及びトリアルキルアミン、特にトリエチルアミン及びtert-ブチルアミン。
【0069】
有利に使用される添加剤の選択は、本発明に係る配合物の最終用途に依存し、これは当業者によって応用仕様に応じて調整されうる。
【0070】
溶媒は、例えば非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒及びそれらの混合物から選択される有機溶媒でありうる。
【0071】
本発明はまた、接着剤、マスチック又はコーティングの調製のための上述の配合物の使用に関する。
【0072】
上記の全ての実施態様は、互いに組み合わせることができる。
本発明の文脈において、「xとyの間」又は「xからyの範囲」という用語は、限界値x及びyが含まれる範囲を意味する。例えば、「0%と25%の間」の範囲には、特に0%と25%の値が含まれる。
【0073】
本発明を以下に次の実施例で説明するが、これらは純粋に例示として与えられており、発明の範囲を限定するために解釈されるべきではない。
【実施例】
【0074】
供給業者:
Silquest A-1110: Momentiveから販売されている3-アミノプロピルトリメトキシシラン;
Dynasylan 1189: Evonikから販売されているN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン;
2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸ブチル(式(IIIa)の化合物)、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸2-エチルヘキシル(式(IIIb)の化合物)及び2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸2-(2-ブトキシプロポキシ)プロピル(式(IIIc)の化合物)は、国際公開第2012/065879号又は国際公開第2011/157551号に記載されている方法に従って合成した。N-メチル-N-ブチル(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキシルアミド(式(IIId)の化合物))は、国際公開第2013/092011号に記載されているようにして合成した。
【0075】
実施例1:
2.0モルの式(IIIa)の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸ブチル(376.3g)を、2リットル反応器の300mlの無水THFに入れ、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル基に特徴的な赤外バンド(赤外線の1740cm
-1のC=Oバンド)が完全に消失し、カルバメート官能基に特徴的なバンド(赤外線の1780cm
-1のC=Oバンド)が出現する点まで、室温において2.1モルの3-アミノプロピルトリメトキシシラン(376.5g)を加える。
次に、THFを減圧下で除去して、次の式:
を有する二種の生成物の混合物を定量的に得る。
【0076】
実施例2:
式(IIIa)の化合物を式(IIIb):
の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸2-エチルヘキシル(488.3g)で置き換えて、実施例1を繰り返した。
次の二種の生成物の混合物が定量的に得られる:
【0077】
実施例3:
式(IIIa)の化合物を式(IIIc)(n=2):
の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸2-(2-ブトキシプロポキシ)プロピル(608.76g)で置き換えて、実施例1を繰り返した。
次の二種の生成物の混合物が定量的に得られる:
【0078】
実施例4:
式(IIIa)の2.0モルの2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸ブチル(376.3g)を、2リットルの反応器の300mlの無水THFに入れ、2.1モルのN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(494.3g)をついで室温において加えた。混合物を、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル基に特徴的な赤外線バンドが完全に消失するまで、50℃において撹拌し続けた。
次にTHFを減圧下で除去し、次の生成物を定量的に得た:
【0079】
実施例5:
式(IIIa)の2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸ブチルを式(IIId)のN-メチル-N-ブチル(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-カルボキシルアミド(402.3g)に置き換えて、実施例1を繰り返した。
次の二種の生成物の混合物が定量的に得られる:
【0080】
実施例6:NCO末端プレポリマー(P0)の調製
683.5gのAcclaim12200(IOH=11.0mgKOH/g又はMn=11200g/モルのCovestroから入手可能なPPG)を2リットルの反応器に入れた。反応媒体を110℃において2時間真空下に置いた(水分含有量≦0.02重量%)。次に、反応器を70℃に冷却して、窒素下で、46.6gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)と0.4gのBorchi KAT315(OMG Borchersから入手可能なネオデカン酸ビスマス)を投入した。1.7%のNCO重量パーセント、すなわち0.40ミリ当量のNCO/gに達するまで、混合物を撹拌し続けた。730.1gのNCO末端ポリウレタンプレポリマー(P0)が得られる。
【0081】
実施例7:シリルポリマーの調製
237.6g(0.096モル又は96ミリ当量のNCO)のプレポリマー(P0)、OH/NCOモル比=1.04の36.7g(0.1モル)の実施例1の混合物、及び0.1gのTIB KAT223(TIB Chemicalsから入手可能なジオクチルスズビス(アセチルアセトナート))を2Lの反応器内に窒素下で入れる。混合物を90℃に加熱し、-NCO官能基に特徴的なバンドが赤外分光法で検出できなくなるまで撹拌した。273.2gのシリルポリウレタンが得られ、この生成物を、湿気から保護されたアルミニウムカートリッジに詰めた。得られた混合物のブルックフィールド粘度は、100℃で1520mPa・sである。
【0082】
実施例8:シリルポリマーの調製
237.6g(0.096モル又は96ミリ当量のNCO)のプレポリマー(P0)、OH/NCOモル比=1.04の42.4g(0.1モル)の実施例2の混合物、及び0.1gのTIB KAT223(TIB Chemicalsから入手可能なジオクチルスズビス(アセチルアセトナート))を2Lの反応器内に窒素下で入れる。混合物を90℃に加熱し、-NCO官能基に特徴的なバンドが赤外分光法で検出できなくなるまで撹拌した。276.2gのシリルポリウレタンが得られ、この生成物を、湿気から保護されたアルミニウムカートリッジに詰める。得られた混合物のブルックフィールド粘度は、100℃で1300mPa・sである。
【0083】
実施例9:シリルポリマーの調製
237.6g(0.096モル又は96ミリ当量のNCO)のプレポリマー(P0)、OH/NCOモル比=1.04の48.4g(0.1モル)の実施例3の混合物、及び0.1gのTIB KAT223(TIB Chemicalsから入手可能なジオクチルスズビス(アセチルアセトナート))を2Lの反応器内に窒素下で入れる。混合物を90℃に加熱し、-NCO官能基に特徴的なバンドが赤外分光法で検出できなくなるまで撹拌した。287.8gのシリルポリウレタン(SPUR3)が得られ、この生成物を、湿気から保護されたアルミニウムカートリッジに詰める。得られた混合物の粘度は、100℃で1260mPa・sである。
【0084】
実施例10:シリルポリマーの調製
237.6g(0.096モル又は96ミリ当量のNCO)のプレポリマー(P0)、OH/NCOモル比=1.04の42.4g(0.1モル)の実施例4で得られた混合物、及び0.1gのTIB KAT223(TIB Chemicalsから入手可能なジオクチルスズビス)アセチルアセトナート))を2Lの反応器内に窒素下で入れる。混合物を90℃に加熱し、-NCO官能基に特徴的なバンドが赤外分光法で検出できなくなるまで撹拌した。287.8gのシリルポリウレタンが得られ、この生成物を、湿気から保護されたアルミニウムカートリッジに詰める。得られた混合物の粘度は、100℃で1390mPa・sである。
【0085】
実施例11:シリルポリマーの調製
237.6g(0.096モル又は96ミリ当量のNCO)のプレポリマー(P0)、OH/NCOモル比=1.04の38.0g(0.1モル)の実施例4で得られた混合物、及び0.1gのTIB KAT223(TIB Chemicalsから入手可能なジオクチルスズビス)アセチルアセトナート))を2Lの反応器内に窒素下で入れる。混合物を90℃に加熱し、-NCO官能基に特徴的なバンドが赤外分光法で検出できなくなるまで撹拌した。287.8gのシリルポリウレタンが得られ、この生成物を、湿気から保護されたアルミニウムカートリッジに詰める。得られた混合物の粘度は、100℃で1420mPa・sである。
【0086】
実施例12:比較シリルポリマーの調製
237.6g(0.096モル又は96ミリ当量のNCO)のプレポリマー(P0)及びNH2/NCOモル比=1.04の17.9g(0.1モル又は100ミリ当量のNH2)の3-アミノプロピルトリメトキシシラン(MomentiveのSilquest A-1110)を2Lの反応器内に窒素下で入れる。混合物を70℃に加熱し、-NCO官能基に特徴的なバンドが赤外分光法で検出できなくなるまで撹拌する。255.5gのシリルポリウレタンが得られ、この生成物を、湿気から保護されたアルミニウムカートリッジに詰める。得られたシリルポリウレタンの粘度は、100℃で5500mPa・sである。
【0087】
従って、実施例7から11のシリルポリマーの粘度は、有利なことに、実施例12(比較例)のシリルポリマーの粘度(100℃において)よりも低い粘度を有しており、これにより特に取り扱い及び使用が容易になる。加えて、より低い粘度は、有利なことに、配合物における可塑剤の追加の使用を回避することを可能にする。