(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ステンレス鋼の帯を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/24 20060101AFI20241127BHJP
B21B 1/22 20060101ALI20241127BHJP
B21B 3/02 20060101ALI20241127BHJP
B21B 45/00 20060101ALI20241127BHJP
B21B 45/06 20060101ALI20241127BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20241127BHJP
C21D 9/52 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B21B1/24
B21B1/22 H
B21B1/22 J
B21B1/22 K
B21B3/02
B21B45/00 B
B21B45/06 L
B21B45/06 R
B21B45/06 S
C21D9/46 Q
C21D9/52 101
(21)【出願番号】P 2021542109
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 FI2020050037
(87)【国際公開番号】W WO2020157377
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】591064047
【氏名又は名称】オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】プーッコ、エサ
(72)【発明者】
【氏名】オーラ、レーニ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-532633(JP,A)
【文献】特開2013-227659(JP,A)
【文献】特表2002-532254(JP,A)
【文献】特開平10-130734(JP,A)
【文献】特開平09-256067(JP,A)
【文献】特開2003-154405(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02067541(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0055906(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼の帯を製造するための方法であって、初期工程(A)における熱間圧延、続いて冷間圧延ライン(B)における冷間圧延を含み、前記帯の厚さが1.5~6.5mmの厚さに減少したら、前記熱間圧延が止められ、前記帯が、後続の前記冷間圧延において、前記冷間圧延ラインに少なくとも1回通され、後続の前記冷間圧延が、前記ラインの初期部分の少なくとも1つの冷間圧延ミル(11~13)と、前記
ラインの初期
部分の少なくとも1つの冷間圧延ミル(複数可)後の、少なくとも1つの焼き鈍し区間(17)、スケールブレーキング段階(21)、ショットブラスチング段階(23)、並びに複数の酸の混合物を利用した少なくとも1つの酸洗い区間(26、27)の順番でのこれらと、含み、前記帯は、前記帯が前記ラインの前記初期部分の前記少なくとも1つの冷間圧延ミルを初めて通るときに、前記初期工程中に前記帯の熱間条件において得た暗色の残留酸化物と共に圧延され、前記方法は、熱間圧延された前記帯が、最終熱間圧延温度から、急冷を通して700℃未満に冷却され、前記酸洗いのために、硝酸HNO
3、フッ化水素酸HF、及び硫酸H
2SO
4を使用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ステンレス鋼
の帯の前記厚さは、前記ステンレス鋼
の帯が初めて前記少なくとも1つの冷間圧延ミル(11~13)を通るときに、10~60%減少し、前記ステンレス鋼
の帯が初めて終端の冷間圧延ミル(32)を通るときに、最大15%減少することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記帯が冷間圧延され、前記帯が初めて前記終端の冷間圧延ミル(32)を通るときに、前記帯の厚さが少なくとも3%、最大で12%減少することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記帯の厚さが少なくとも8%減少することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記帯の前記厚さは、前記帯が2回目に前記少なくとも1つの冷間圧延ミル(11~13)を通るときに、20~60%減少することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記帯は、前記帯が2回目に
終端の冷間圧延ミル(32)を通るときに、0,5%スキンパス圧延されることを特徴とする、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記帯は、前記帯が2回目に
終端の冷間圧延ミル(32)を通るときに、2~15%冷間圧延されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記帯は、前記帯が2回目に
終端の冷間圧延ミル(32)を通るときに、8~12%冷間圧延されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行工程で、帯鋳造を通して製造され、かつ/又は熱間圧延された、帯の冷間条件における圧延を含む、ステンレス鋼の帯を製造するための方法に関する。本発明は、方法の実施時に使用される圧延ミルラインにも関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼帯の冷間圧延は、1つ又はいくつかの目的で行われる。この基本的な目的は、概して、1.5mm未満、通常は2~6mm程度であるが最高10mmであってもよい熱間圧延された帯の厚さに、通常、先行熱間圧延ラインにおいて圧延された開始時の帯の厚さを減少させることである。従来は、初期の焼き鈍し、冷却、及びデスケーリングショットブラスチングとともに1つ以上の段階における酸洗いも、先行熱間圧延からの酸化物及びスケール残留物がなく冷間圧延で出発材料を得るように、冷間圧延に先行する。代替方法として、熱間圧延が、完全に又は部分的に、帯が、熱間圧延された帯には標準であるか又は数ミリ厚い厚さまで減った厚さを有する可能性があるだけではなく、この場合、通常、この技法がすべて実施された程度まで、初期の焼き鈍し、冷却、デスケーリングショットブラスチング、及び酸洗いが冷間圧延に先行する、鋳造を通した帯の製造に置き換えられてもよい。従来、ことによると焼き鈍し、冷却、デスケーリング、及び酸洗いの作業と交互に実施される、複数の途切れのない冷間圧延作業で実施される冷間圧延では、厚さが、1mm又はもっと薄い標準寸法にまで減少し得る。同時に、これらの従来の冷間圧延ミルでは、圧延が熱処理、酸洗い、及びスキンパス圧延によって完了する場合には、極微細面、いわゆる2B表面を有する、又は光輝焼鈍しが採用される場合には更に細かい(BA表面)を有する、帯を作り出すことが可能である。冷間圧延では又、主要目的として又は追加目的として、帯材料の強度を上げることがあり得る。この目的のために、冷間圧延に対する補足として、欧州特許第0738781号では、その厚さが減少すると同時に、帯が可塑化され、永続的に伸びるように、帯を冷間延伸し、続いて、焼き鈍しすることも提案している。又、米国特許第5197179号及び欧州特許第0837147号における、望ましい最終標準寸法に帯をするために、熱処理、酸洗い、又あり得る更なる冷間圧延の作業の前に、少なくとも、冷めた熱間圧延された帯に対して又は冷めた鋳造帯に対して最初の冷間圧延作業を行うことが知られている。ただし、それは、それらが、費用がかさみ、かつ/又は最終製品の帯の厚さ、表面状態、及び強度に関する限り、広く様々な要件に適合しにくいことがこれまで知られている方法及び圧延ミルラインに特有である。これは、特に、熱間圧延及び後続の冷間圧延とともに、熱間圧延及び冷間圧延に関連する作業が一体式の生産工程として考えられる場合に当てはまる。
欧州特許第1637243号では、規定の厚さに熱間圧延し、続いて薄い厚さに冷間圧延することを含み、それにより、この工程が焼き鈍し及び酸洗いとともに、2回の冷間圧延ラインの通過を含む、ステンレス鋼帯を製造するための方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記の問題の複雑さに取り組み、解決することにある。これは、本発明の第1の態様により、請求項1による特徴と相まった方法で実現することができる。
【0004】
上記の本発明の背景の説明に述べたように、2~6mmの最終熱間圧延帯標準寸法に帯を熱間圧延することが月並みであり、1.5mmにまで熱間圧延がなされることも起こり得る。熱間圧延の最も複雑な部分は、最終部分、すなわち、熱間圧延がかなり薄い帯に作用しているときである。この段階は、制御が難しく、帯の厚さに関係して帯上にかなりの酸化物ももたらされる。又、帯の厚さが減少すればするほど、熱間圧延ミルの生産における歩留まりが減少する。後続の冷間圧延に使用される出発材料を更に改善するためには、冷却中の機械的ストレス及び熱い帯の非平坦さを避け、とりわけ、一方でできる限り薄い酸化物層をもたらす工程進行中に再現性を高め、他方で、表面層における粒界炭化物の沈殿を避けるために、最終圧延温度からの帯を700℃未満に急冷することも好都合である。本発明の別の態様によれば、この目的は、熱間圧延ミルラインにおける障害のリスクを少なくすることを含む熱間圧延ミルにおける能力向上により、全体的な視点から良好な生産経済性とともに、優れた品質に関する限り、高い要件を満たすことができる冷間圧延後の最終製品を実現するように、帯の初期熱間圧延及び処理と、後続の冷間圧延を伴う熱間圧延とを相まって統合することにある。本発明のこの態様によれば、本発明は、ステンレス鋼の帯を製造するための方法に関し、この方法は、初期工程における熱間圧延、続いて圧延ミルラインにおける冷間圧延を含み、帯の厚さが、2.0~6.5mm、好ましくは3~5mmの厚さに減少したら、熱間圧延が止められ、このように熱間圧延された帯が、最終熱間冷間温度から急冷を通して700℃未満に冷却され、後続の冷間圧延において、そのラインの初期部分に少なくとも1つの冷間圧延ミルを備える当該冷間圧延ラインに少なくとも1回通され、当該初期冷間圧延ミル、少なくとも1つの焼き鈍し区間、及び少なくとも1つの酸洗い区間の後、当該帯が、初めてそのラインの初期部分の少なくとも1つの冷間圧延ミルを通るとき、初期工程中に帯の熱間条件において帯が得た、暗色の酸化物を伴って圧延される、ことを特徴とする。
【0005】
初期、及び任意選択的にステンレス鋼の冷間圧延のみにおいて、帯鋼の両側に暗色の酸化物被覆がある場合、その酸化被覆が鋼の熱間状態における初期工程と相まって形成され、酸化物スケールのひび割れがある程度起こる。これは、焼き鈍しの後、帯が酸洗いされる前に、後で行われる効果的なデスケーリングを促進することができる、初期デスケーリング作用と考えることができる。当該初期ひび割れが、後のデスケーリング及び酸洗いを促進するために効果的に利用されることを可能にするために、初期ひび割れが、可能な限り、焼き鈍しと相まってなくされように、すなわち、酸化物層における亀裂又は割れ目が焼き鈍しにおいて治されないようにすることが望ましい。
本発明によれば、焼き鈍しに続いて、デスケーリング段階が行われ、スケールブレーカ及びショットブラスチング段階がそれに続く。
本発明によれば、ショットブラスチング段階に続いて、鋼が、硝酸、フッ化水素酸、及び任意選択的に硫酸の組み合わせを使用して、酸洗い段階を受ける。
冷却区画(I)後に平面度不良が消え、それにより、ショットブラスチングの前に、帯には平面度不良がなくなり、最大限のショットブラスチング効率を約束するように、スケールブレーカの伸び対象が設定される。
必要な伸びは、以下のように算出され得る。
伸び(スケールブレーカ)[%]=材料の降伏点における伸び[%]+I/10000[%]、ここで、(1)
I=I-単位で定義される平面度不良、
I-単位は、平面度不良の高さ/波長関係を定義するのに一般的である。
【0006】
本発明の更なる特性及び態様は、添付の特許請求の範囲から、又当該圧延ミルラインの、又本発明が好ましい実施形態により実施されるようにどのように縮小され得るかの以下の発明を実施するための形態から分かるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態及び圧延ミルラインを半概略的に示す。
【
図2】
図2は、帯の製造方法の好ましい実施形態を非常に概略的に示す。
【
図3】
図3は、帯の製造方法の好ましい実施形態を非常に概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~3は、ステンレス帯を製造するいくつかの異なる方法を概略的に示す。オーステナイト系又はフェライト系のステンレス鋼の帯が、本発明による方法の実施時に使用される、後続の圧延ミルライン(
図2及び
図3)における工程用の出発材料を構成するのが好ましい。又、フェライト-オーステナイト系鋼も考えられる。出発材料を製造する3つの方法を
図1に示す。方法Iによれば、スラブ1が、熱間圧延帯には標準的であり得る厚さ、すなわち1.5~6.5mmの厚さの熱間圧延帯の製造用の熱間圧延ミルラインにおいて熱間圧延される。ただし、本発明の一態様によれば、熱間圧延は、厚さが2.5mmに減少する前か又は遅くとも減少した時点で、帯が標準寸法範囲2~6,5mm内、好ましくは3~5mmの厚さを得るように、止められる。熱間圧延帯は、急冷区間3において、強烈な水噴霧を通して好適に、700℃より低い温度に急冷される。その上、帯は、巻かれてコイル4になり、更に100℃以下に冷却される。
【0009】
方法IIによれば、ステンレス鋼帯は、それ自体知られている可能性があり、その特定の運用モードに関する限り、本発明の一部を形成せず、したがって、より詳細には説明しない、いずれの技法にも従って帯の形状に鋳造される。ただし、例として、当業者には知られている技法である、ツインロールによるいわゆるステンレス鋼帯鋳造を利用することができる。鋳造ステンレス鋼帯は、熱間圧延ミルライン2’において、ステンレスの熱間圧延帯には月並みである厚さ、又はやや厚めの2~6mm(上記参照)の厚さに熱間圧延され、その時点で、帯は、すぐに冷却区間3において急冷され、コイル4を形成するように巻かれる。
【0010】
方法IIIによれば、ステンレス鋼帯は、ステンレス鋼帯に標準的である厚さ、又はことによるとやや厚めの厚さ、すなわち約1.5~6,5mmの厚さを有する帯の形状に鋳造され、その時点で、帯は、冷却区間3’において700℃を下回る温度に急冷されるこのようにして作られた帯は、コイル4’状に巻かれる。
【0011】
圧延ミルライン(
図2及び
図3)における後続の作業用の出発材料は、このように鋳造及び/又は熱間圧延されたステンレス鋼帯4、4’からなる。ステンレス鋼帯のこのようなコイル4、4’は、それがデコイラ6からほどかれるとして図に示される。補助デコイラは、6Aと示される。帯を接合するための溶接機、第1の帯ルーパ、第1のマルチロールSミルは、それぞれ、7、8、9と示される。次に、3つの冷間圧延ミル11、12、13からなる、初期冷間圧延区間10が続き、これらのミルは、いわゆるZ高又は6高型のものであり、それらのそれぞれが、加工ロールと、加工ロールのそれぞれ上と下との2つの支持ロールとの対を有することを意味する。
【0012】
初期冷間圧延区間10の後、脱脂機器14、第2のマルチロールSミル15、及び第2の帯ルーパ16が続く。
【0013】
コイル6からほどかれた帯は、5と示される。初期冷間圧延区間10を通った後、帯は5’と示される。帯ルーパ16から、帯5’は、焼き鈍し炉7と、2つの冷却チェンバ18及び19で構成されている冷却区間とに送り込まれる。次に、第3のマルチロールSミル20、デスケーラ21、及びショットブラスチング段階23が続く。デスケーラ21の各側には、それぞれ、第4のマルチミル20、第5のマルチミル22がある。本発明によれば、ショットブラスチングデバイスの前のデスケーラに、金属帯における平坦さを高め、一次ひび割れをもたらし、ショットブラスチング段階の有効性を高める作用を持たせる。
【0014】
デスケーラ21は、冷間伸延ミルからなり、この冷間伸延ミルの設計は、参照により本明細書に組み込まれている、上に述べた欧州特許第0738781号において
図3に詳細に示されている。このタイプの冷間伸延ミルは、帯が永続的に冷間伸延を通して長くなると同時に、帯を様々な方向に交互に曲がらせる、一連のロールを備える。酸化物層の下の帯の表面を損なうことなく、このタイプの冷間伸延ミルによって、有効なデスケーリングを実現することが可能であることが確認されている。
【0015】
ショットブラストユニットの後、例えば、初期neolyte又は他の電解酸洗い区間26及び混合酸酸洗い区間27からなり得る酸洗い区間が続く。酸混合物は、硝酸HNO3、及びフッ化水素酸HF、及び任意選択的に硫酸H2SO4からなる。5’’と示される酸洗いされた帯は、次に、第3の帯ルーパ28に収められ得る。
【0016】
更なる終端の冷間圧延ミルは、32と示される。このミルは、この実施形態によれば、4高ミル、すなわち、ステンレス鋼の種類(オーステナイト系又はフェライト系、フェライト系鋼は、通常、オーステナイト系鋼よりも高い割合の減少で圧延されることが可能である)に応じて、15~20%までの減少を伴う圧延を可能にする、加工ロールと、加工ロールのそれぞれ上と下との支持ロールとの対の圧延ミルからなる。あるいは、仕上げの冷間圧延ミルは、スキンパス圧延のみを目的とする2高ミルからなり得る。圧延ミル32に続いて、帯5’’’がコイラ38上でコイル40を形成するように巻かれる前に、第6のマルチロール直線化ミル34が備えられている。補助コイラは、38Aと示されている。
【0017】
本発明の様々な態様によれば、ステンレス鋼帯は、少なくとも1回、
図2の圧延ミルラインを通る。好ましい実施形態によれば、帯は、2回、圧延ミルラインを通る。ここで、最も基本的な装備のみ示されているが、溶接機、S-ミル、偏向及びガイドローラ、ルーパなどの他の部品が本発明の原理がより明確になるようにするために省かれている
図3に関連して、これをより詳細に開示する。括弧内の参照番号は、2回目に圧延ミルラインBを通るのに従って処理される帯材料を示す。
【0018】
圧延ミルラインにおける圧延は、帯材料のコイル4、4’からのステンレス鋼の熱間圧延された又は鋳造の帯5をほどくことによって開始される。それにより、帯には、まだ部分Aにおける先行工程で帯が得たその暗い酸化被覆がある。この帯は、初期冷間圧延区間10の圧延ミル11、12、13のうちの1つ、2つ、又は全3つにおける合わせて少なくとも10%、又最大で75%の厚さ減少、好ましくは20~50%面積減少で冷間圧延される。熱間圧延又は鋳造の後の急冷において得られた帯表面上の比較的薄い暗い酸化物層は、初期冷間圧延区間10における冷間圧延作用を通して、酸化物層が基材から、すなわち金属表面から緩む程度までばらばらにならないほど延性である。ただし、酸化物層、すなわち鋼帯ひび上のスケールに割れ目が形成される。これは、後続の酸洗いにとっては欠くことのできない重要なものであり、そこではその有効性が促進され、その次には、最終製品における細表面の実現にとって重要になる。
【0019】
焼き鈍し炉17では、このように冷間圧延された帯5’が、帯が完全に加熱され、再結晶するほど長い時間、鋼等級で決まってくる温度範囲780~1200℃内の温度への加熱を通して焼き鈍しされる。又、帯をその温度に制御するのに、粒サイズモデルが適用される。
【0020】
冷却チェンバ19では、帯5’が、繰り返しの曲げ加工下で複数のロール間でデスケーラ21において伸長される前に、100℃未満に冷却され、それにより、酸化物スケールが壊され、良好な平坦さが実現される。
・帯は、次に、ショットブラスチング区間23においてショットブラスチングされ、これは、帯表面からの酸化物及びスケールの取り除きのための2番目の処置である。
デスケーリング及び後続のショットブラスチングは、酸化物スケールが完全に取り除かれる、酸洗いユニット26及び27における酸洗いに対する準備処置である。
・帯の伸延ミル21後の表面は、酸洗いされる前に、最初に区間26、次に、硝酸(HNO3)、フッ化水素酸(HF)、及び任意選択的に硫酸(H2SO4)の混合物である混合酸における電解酸洗いを通して、スチールショットによりショットブラスチングユニット23においてショットブラスチングされる。
【0021】
このように酸洗いされた帯5’’は、次に、帯5’’が最高20%更に厚さを減少させることができるような寸法に形作られる、終端の付加的な冷間圧延ミル32でも冷間圧延される。仕上げの冷間圧延ミル32における帯標準寸法減少が、少なくとも3%、通常15%未満であるのが好ましい。次に、帯5’’’は、帯コイル40を形成するように巻かれる。
【0022】
冷間伸延ミル21におけるデスケーリングは、完全に省かれてもよく、又は、わずかな程度、約0.4~2%までしか行われない冷間伸延である。ただし、本発明のある態様によれば、より広範囲の、好ましくは3%未満の冷間圧延も考えられ得る。その後、帯’は、酸洗い区間26、27において酸洗いされ、最後にコイル状に巻かれる。
【0023】
本発明のある態様によれば、帯は、もう一度、第1の通過時と同じ方向に圧延ミルラインに通される。
本発明の別の態様によれば、第1の通過からの製品は、最終製品である。
【0024】
本発明のある態様によれば、ある期間後、とりわけ、施設における生産の物流計画によって決まってくる期間後の帯コイル40は、圧延ミルラインの開始位置にあるデコイラ6又は6Aに運ばれ、そこでは、帯(5’’’)は、帯の圧延ミルラインの2回目の通過で再びほどかれる。最初の通過時の帯は、おそらく初期冷間圧延区間10の圧延ミル11~13のうちの1つ又は2つにおいて圧延されただけであるが、この時、それが帯の望ましい最終標準寸法を基本的に実現するように、ミル11~13のうちの2つ又は3つにおいて圧延される。帯のこの区間の2回目の通過における圧延ミル区間10における総厚さ減少は、合わせて60%で又少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%に達することができる。2回目に冷間圧延区間10を通った後、ここでは(5V)で示される帯の冷間圧延が終了する。最終処理は、帯を焼き鈍し炉18、冷却チェンバ18及び19、並びに酸洗い区間26及び27に再び通すことからなる。ただし、この時、この場合の帯表面の酸化がそれほど大したことがないので、冷間伸延ミル21におけるデスケーリングもブラスチングミル23におけるブラスチングも必要ではないことから、デスケーラ21でもショットブラスチングユニット23でも帯は、全く処理されない。そのため、焼き鈍しされた帯は、冷却後、すぐに酸洗いユニット26及び27において酸洗いされ得る。この処理は、冷間圧延ミル32におけるスキンパス圧延によって0.2~1.5%、好ましくは約0.5%、若しくはハード圧延(hard rolling)によって2~20%、好ましくは10~15%、及び/又は、最終コイル巻き前に、直線化ミル34における伸延を通した伸延によって、仕上げられる。
【0025】
帯(5V)は、その目的が非常に高い降伏強度を備える帯を作り出すことである場合、スキンパス圧延されるのではなく、帯が初めて終端の冷間圧延ミル32において圧延されたときと同じ大幅な厚さ減少により圧延され得る。
【0026】
上記の発明を実施するための形態は、圧延ミルライン(
図2及び3)を使用する方法の様々な態様による好ましい実施形態を描写している。それは、圧延ミルライン又はその一部が、製造において、非常に細かい明るい表面を有する帯だけではなく、ある用途では、高い強度を備える帯、又は改善の度合いが低くなるが、費用の面からの利点を有する帯など、非常に明るい表面よりも目立って重要である特徴を備える帯を目指す工程でも使用され得る、圧延ミルラインの設計の特別な利点である。後者の目的では、処理が例えば、帯5’’が最初の冷間圧延区間10、焼き鈍し及び冷却区間、並びに酸洗い区間の最初の通過の後、酸洗い区間26、27を通った後にはすでに、止められている場合がある。強度を高めるのが望ましい場合、2~20%冷間圧延が、この場合、帯が初めて終端の冷間圧延ミルを通り、その後、工程が帯をコイル状に巻くことによって終了するのに従って、非潤滑表面上で行われる、終端の冷間圧延ミル32において行われ得る。
【0027】
これらの例及び代替方法は、最終製品に関する限り、様々な要望への圧延ミルラインの多様性及び適合性のよい例となる。
【実施例】
【0028】
等級ASTM 304のステンレス鋼のスラブを1530mmの幅、6.5mmの厚さの帯を得るように、タンデムミルにおいて熱間圧延する。圧延するとすぐに、帯を約900℃の最終圧延温度から650℃超に、水噴霧により約10秒、急冷し、その後、帯をコイル状に巻く。
この概念は、粒界炭化物が上記例に記載の条件下における焼き鈍し、及び標準規模レベルの酸洗いによって制御され得ることから、通常の熱間帯冷却でうまくいく。
【0029】
次に、帯コイルを本発明の圧延ミルラインに運び、ほどき、最初に、初期冷間圧延区間10の圧延ミル11~13のうちの2つにおいて、3.0mmの厚さに、その暗酸化物層とともに冷間圧延し、この場合、酸化物層は、ひび割れるが、緩むことはない。この後、帯を前に述べた焼き鈍し炉で、完全に再結晶させるために、かなり長時間にわたり1120℃の温度で焼き鈍し、その後、帯を、冷却チェンバ18及び19において100℃未満に冷却する。次に、帯が伸延ミル21においてデスケーリングを受け、その後、最初に区間26における、次に酸洗い区間27における混合酸(硝酸HNO3、フッ化水素酸HF、及び硫酸H2SO4の混合物)における電解酸洗いを通して、帯を酸洗いする前に、帯の表面をショットブラスチングユニット23においてスチールショットでショットブラスチングする。仕上げの冷間圧延ミル32では、次に、酸洗いされた帯を標準寸法2.7mmまでの10.0%の厚さ減少で冷間圧延し、その後、帯をコイル状に巻く。
【0030】
次に、帯を開始位置に戻す。帯が圧延ミル32における終端の冷間圧延作用を受けた激しい冷間圧延により、帯が、かなりの程度まで変形硬化され、それにより、簡単には傷まなくなり、又それにより、帯表面が傷むことになるリスクなしに、運び、取り扱うことができる。このように帯をまたほどき、今度は、標準寸法1.7mmまでの37%の総厚さ減少で初期冷間圧延ミル10の3つの圧延ミル11~13すべてにおいて圧延する。この例によれば、圧延ミルラインの最初の通過時と同じように、帯を焼き鈍し、冷却し、次に酸洗いするが、酸洗いの前にショットブラスチングも冷間伸延もしない。最後に、帯を、約0.5%の更なる厚さ減少に加えて、終端の冷間圧延ミル32においてスキンパス圧延し、帯は、表面細度Ra0.2μm、すなわち2B-表面にかなりうまく対応する表面細度を実現する。
【0031】
上記から分かるように、本発明の冷間圧延ミルは、微細表面を有するステンレス帯の製造への、かつ/又は他の望ましい品質又は望ましい特徴を有する帯へのその使用に関する限り、極めて融通が利く。下表1では、圧延ミルライン、すなわち、初期冷間圧延ミル、帯の厚さを減少させるのにも使用され得るデスケーラ/冷間伸延ミル、及び冷間圧延ミル、又は場合によっては、このラインを終端させる、複数の冷間圧延ミルに含まれている様々な厚さ減少ユニットの利用に関連して帯を製造するいくつかのこれらの代替方法を挙げている。
【表1】