(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】存否判定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20241127BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20241127BHJP
A61G 7/043 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61B5/0245 100C
A61G7/043
(21)【出願番号】P 2021542674
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029522
(87)【国際公開番号】W WO2021039288
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019158494
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】清水 厚輝
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-210367(JP,A)
【文献】特開平07-204166(JP,A)
【文献】特開2015-008920(JP,A)
【文献】特開2013-146532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
A61B 5/02- 5/03
A61B 5/00- 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域上に生体が存在するか否かを判定する存否判定装置であって、
前記検出領域に敷設されて、入力振動に応じた検出信号を出力する柔軟な圧電型センサシートと、
該圧電型センサシートの該検出信号から心弾動に応じた心弾動信号を取り出す心弾動信号取得部と、
該心弾動信号に基づいて該検出領域上に前記生体が存在しない不存在判定を行う不存在判定部とを、有しており、
該心弾動信号が不存在閾値を下回る状態が不存在判定時間を超えて持続する場合に、該不存在判定部が該不存在判定を行う
と共に、
該心弾動信号に基づいて前記検出領域上に前記生体が存在する存在判定を行う存在判定部を有しており、
該存在判定部は、該心弾動信号が存在閾値を上回る状態が存在判定時間を超えて持続する場合に該存在判定を行っており、且つ、
該心弾動信号に基づいて前記検出領域上の前記生体の体動を判定する体動判定を行う体動判定部を有していると共に、該体動判定部において該体動判定に用いられる体動閾値が前記存在閾値よりも大きな値で設定されており、
該心弾動信号の値が該体動閾値を上回ると共に、該心弾動信号の値が該体動閾値を上回る前後の所定時間に亘って前記存在判定部が該生体の存在を検知して前記存在判定を行う場合に、該体動判定部が該生体の体動を検知して該体動判定を行う存否判定装置。
【請求項2】
前記存在判定時間が0.5秒~30秒の範囲内で設定されている請求項
1に記載の存否判定装置。
【請求項3】
前記存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の代表値と前記存在閾値との比較によって前記存在判定を行う請求項
1又は
2に記載の存否判定装置。
【請求項4】
前記存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れか一つと存在閾値との比較によって前記存在判定を行う請求項
1又は
2に記載の存否判定装置。
【請求項5】
前記存在閾値と前記不存在閾値が互いに異なる値で独立して設けられている請求項
1~
4の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項6】
前記存在閾値が前記不存在閾値の3倍以上とされている請求項
5に記載の存否判定装置。
【請求項7】
前記圧電型センサシートの前記検出信号を周波数解析して、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルを含むバイタルスペクトルを算出するバイタル周波数解析部を備え、
前記心弾動信号取得部が該バイタルスペクトルに基づいた前記心弾動信号を取得する請求項1~
6の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項8】
検出領域上に生体が存在するか否かを判定する存否判定装置であって、
前記検出領域に敷設されて、入力振動に応じた検出信号を出力する柔軟な圧電型センサシートと、
該圧電型センサシートの該検出信号から心弾動に応じた心弾動信号を取り出す心弾動信号取得部と、
該心弾動信号に基づいて該検出領域上に前記生体が存在しない不存在判定を行う不存在判定部とを、有しており、
該心弾動信号が不存在閾値を下回る状態が不存在判定時間を超えて持続する場合に、該不存在判定部が該不存在判定を行っており、
前記圧電型センサシートの前記検出信号を周波数解析して、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルを含むバイタルスペクトルを算出するバイタル周波数解析部を備え、
前記心弾動信号取得部が該バイタルスペクトルに基づいた前記心弾動信号を取得すると共に、
該圧電型センサシートの
該検出信号を周波数解析して、
該バイタルスペクトルの周波数域であるバイタル周波数域よりも高周波数域のパワースペクトルであるノイズスペクトルを算出するノイズ周波数解析部を備えており、
該ノイズスペクトルに基づくノイズ信号に対する前記心弾動信号の比であるS/N比と前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定部による前記不存在判定が実行され
る存否判定装置。
【請求項9】
前記バイタルスペクトルが、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルである心弾動スペクトルと、該生体の呼吸に起因するパワースペクトルである呼吸スペクトルとを併せ持つパワースペクトルとされている請求項
7又は8に記載の存否判定装置。
【請求項10】
前記心弾動信号が前記バイタルスペクトルの代表値に基づいて取得される請求項
7~9の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項11】
前記バイタルスペクトルの代表値が、該バイタルスペクトルの最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れかとされている請求項
10に記載の存否判定装置。
【請求項12】
前記圧電型センサシートが前記生体を載せるクッション体の下側に配されている請求項
7~
11の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項13】
前記不存在判定時間が0.5秒~60秒の範囲内で設定されている請求項
1~12の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項14】
前記不存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の代表値と前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定を行う請求項1
~13の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項15】
前記不存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れか一つと前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定を行う請求項1
~13の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項16】
前記心弾動信号を増幅する信号増幅部を備えている請求項1~
15の何れか一項に記載の存否判定装置。
【請求項17】
前記信号増幅部によって増幅された前記心弾動信号から心拍波形を算出する心拍波形演算部を備えている請求項
16に記載の存否判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出領域上に生体が存在するか否かを判定する存否判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療や介助の現場における患者(要介助者)がベッド上にいるかどうかの把握、更には、飲食店や映画館、電車などの多数の座席を有する場における空席の把握などにおいて、特定領域に人が存在しているか否かの判定を、人による確認などの労力を要することなく行うことが求められる場合がある。
【0003】
また、例えば睡眠の質を判定する際には、夜間に起きてベッドからいなくなる回数や時間を測定することが有効である。
【0004】
そこで、感圧センサを用いて、ベッド上や椅子の座面上などの検出領域上に人がいるか否かを圧力の検出結果に基づいて判定する存否判定装置が提案されている。例えば、特開2015-8920号公報(特許文献1)には、寝具に圧力センサが設けられており、当該圧力センサにより検出される使用者の体荷重(体圧)に基づいて、使用者の寝具上の存否が判定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感圧センサによる検出では、患者などの使用者の体重が軽い場合に、検出精度が低下するおそれがある。
【0007】
また、感圧センサと使用者との間にベッドパッドや座布団などのクッションが介在する場合にも、圧力の検出精度が低下する。
【0008】
さらに、寝返りや座り直しなどの体動に際して、感圧センサに作用する圧力が一時的に軽減乃至は解除されると、使用者がいなくなったという誤判定が生じたり、使用者がいなくなった時に寝返りや座り直しなどの体動をしたという誤判定が生じたりし得る。
【0009】
本発明の解決課題は、上述の如き問題の少なくとも一つを改善し得て、使用者の検出領域上における存否を優れた精度で判定することができる、新規な存否判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0011】
第一の態様は、検出領域上に生体が存在するか否かを判定する存否判定装置であって、前記検出領域に敷設されて、入力振動に応じた検出信号を出力する柔軟な圧電型センサシートと、該圧電型センサシートの該検出信号から心弾動に応じた心弾動信号を取り出す心弾動信号取得部と、該心弾動信号に基づいて該検出領域上に前記生体が存在しない不存在判定を行う不存在判定部とを、有しており、該心弾動信号が不存在閾値を下回る状態が不存在判定時間を超えて持続する場合に、該不存在判定部が該不存在判定を行うと共に、該心弾動信号に基づいて前記検出領域上に前記生体が存在する存在判定を行う存在判定部を有しており、該存在判定部は、該心弾動信号が存在閾値を上回る状態が存在判定時間を超えて持続する場合に該存在判定を行っており、且つ、該心弾動信号に基づいて前記検出領域上の前記生体の体動を判定する体動判定を行う体動判定部を有していると共に、該体動判定部において該体動判定に用いられる体動閾値が前記存在閾値よりも大きな値で設定されており、該心弾動信号の値が該体動閾値を上回ると共に、該心弾動信号の値が該体動閾値を上回る前後の所定時間に亘って前記存在判定部が該生体の存在を検知して前記存在判定を行う場合に、該体動判定部が該生体の体動を検知して該体動判定を行うものである。
【0012】
本態様の存否判定装置によれば、不存在を心弾動に基づいて判定することにより、生体の体重等による圧力に基づいた判定に比して、より精度の高い判定が可能になる。
【0013】
また、患者の見守り等において問題となり易い、患者がベッドからいなくなるなどの不存在判定について、単に寝返りによる姿勢の変化等で圧電型センサシートへ入力される振動の振幅が小さくなった場合にも直ちに不存在と判定されるのではなく、不存在判定時間を設けたことから、より高精度な判定が可能となる。
さらに、存在判定において、仮に外部からの振動ノイズなどに起因して一時的に振動のレベルが増大しても、直ちに存在していると誤判定されることがなく、より正確な判定が可能になる。
加えて、臥位での寝返りや座位での座り直しなどの体動をより正確に検知することができる。
第二の態様は、前記第一の態様に係る存否判定装置において、前記存在判定時間が0.5秒~30秒の範囲内で設定されているものである。
本態様の存否判定装置によれば、存在判定時間を上記範囲内で設定することにより、正確な判定が可能になる。即ち、存在判定時間が短すぎると、外部からの振動などに対して誤った存在判定がなされてしまうおそれがある。また、存在判定時間が長すぎると、検出領域に短時間だけ居る場合に、正しく存在判定されないおそれがある。
第三の態様は、前記第一又は第二の態様の存否判定装置において、前記存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の代表値と前記存在閾値との比較によって前記存在判定を行うものである。
本態様の存否判定装置によれば、目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
第四の態様は、前記第一又は第二の態様の存否判定装置において、前記存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れか一つと存在閾値との比較によって前記存在判定を行うものである。
本態様の存否判定装置によれば、例えば存在閾値と比較する値として、心弾動信号の所定時間内の最大値を採用することで簡易に心弾動波形の最大振幅を得ることができて、存否を高精度に判定することができる。また、心弾動信号の所定時間内の最小値や平均値、中央値を採用すれば、ノイズによって不存在時に誤って存在判定される誤判定が生じ難くなる。或いは、心弾動信号の総和を採用すれば、存在判定の演算処理が簡単になることで負荷の軽減が図られる。
第五の態様は、前記第一~第四の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記存在閾値と前記不存在閾値が互いに異なる値で独立して設けられているものである。
本態様の存否判定装置によれば、存在と不存在をより精度よく判定することができる。
第六の態様は、前記第五の態様に係る存否判定装置において、前記存在閾値が前記不存在閾値の3倍以上とされているものである。
本態様の存否判定装置によれば、存在と不存在を更に精度よく判定することができる。
第七の態様は、前記第一~第六の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記圧電型センサシートの前記検出信号を周波数解析して、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルを含むバイタルスペクトルを算出するバイタル周波数解析部を備え、前記心弾動信号取得部が該バイタルスペクトルに基づいた前記心弾動信号を取得するものである。
本態様の存否判定装置によれば、圧電型センサシートに入力される振動の振幅が小さく、検出信号が微弱な場合にも、検出信号の周波数解析結果に基づいて高精度な存否判定が可能になる。それゆえ、例えば、圧電型センサシートがマットレスの下側に敷かれるなどして、圧電型センサシートに対する入力の振幅が小さい場合にも、使用者の存否を精度よく判定することができる。
第八の態様は、検出領域上に生体が存在するか否かを判定する存否判定装置であって、前記検出領域に敷設されて、入力振動に応じた検出信号を出力する柔軟な圧電型センサシートと、該圧電型センサシートの該検出信号から心弾動に応じた心弾動信号を取り出す心弾動信号取得部と、該心弾動信号に基づいて該検出領域上に前記生体が存在しない不存在判定を行う不存在判定部とを、有しており、該心弾動信号が不存在閾値を下回る状態が不存在判定時間を超えて持続する場合に、該不存在判定部が該不存在判定を行っており、前記圧電型センサシートの前記検出信号を周波数解析して、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルを含むバイタルスペクトルを算出するバイタル周波数解析部を備え、前記心弾動信号取得部が該バイタルスペクトルに基づいた前記心弾動信号を取得すると共に、該圧電型センサシートの該検出信号を周波数解析して、該バイタルスペクトルの周波数域であるバイタル周波数域よりも高周波数域のパワースペクトルであるノイズスペクトルを算出するノイズ周波数解析部を備えており、該ノイズスペクトルに基づくノイズ信号に対する前記心弾動信号の比であるS/N比と前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定部による前記不存在判定が実行されるものである。
本態様の存否判定装置によれば、不存在を心弾動に基づいて判定することにより、生体の体重等による圧力に基づいた判定に比して、より精度の高い判定が可能になる。
また、患者の見守り等において問題となり易い、患者がベッドからいなくなるなどの不存在判定について、単に寝返りによる姿勢の変化等で圧電型センサシートへ入力される振動の振幅が小さくなった場合にも直ちに不存在と判定されるのではなく、不存在判定時間を設けたことから、より高精度な判定が可能となる。
さらに、圧電型センサシートに入力される振動の振幅が小さく、検出信号が微弱な場合にも、検出信号の周波数解析結果に基づいて高精度な存否判定が可能になる。それゆえ、例えば、圧電型センサシートがマットレスの下側に敷かれるなどして、圧電型センサシートに対する入力の振幅が小さい場合にも、使用者の存否を精度よく判定することができる。
加えて、ノイズ信号に対する心弾動信号の比であるS/N比と不存在閾値とを比較して存否の判定を行うことにより、例えば、バイタル周波数域のパワースペクトルがホワイトノイズによって底上げされて不存在時に誤って存在すると判定される誤判定が生じ難くなる。
なお、好適には、ノイズ信号はノイズスペクトルの代表値に基づいて取得される。ノイズスペクトルの代表値は、例えば、ノイズスペクトルの最大値、最小値、平均値、中央値、総和などから適宜に選択される。目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
第九の態様は、前記第七又は第八の態様に係る存否判定装置において、前記バイタルスペクトルが、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルである心弾動スペクトルと、該生体の呼吸に起因するパワースペクトルである呼吸スペクトルとを併せ持つパワースペクトルとされているものである。
本態様の存否判定装置によれば、バイタルスペクトルが心弾動スペクトルに比して大きく得られる呼吸スペクトルを含むことにより、バイタルスペクトルを大きく得ることができる。それゆえ、検出信号が微弱な場合にも、バイタルスペクトルに基づいて取得される心弾動信号を強く得ることができて、存否判定を精度よく行うことができる。
第十の態様は、前記第七~第九の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記心弾動信号が前記バイタルスペクトルの代表値に基づいて取得されるものである。
本態様の存否判定装置によれば、目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
第十一の態様は、前記第十の態様に係る存否判定装置において、前記バイタルスペクトルの代表値が、該バイタルスペクトルの最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れかとされているものである。
本態様の存否判定装置によれば、例えば不存在閾値と比較する値として、バイタルスペクトルの最大値に基づく心弾動信号を採用することにより、存否を高精度に判定することができる。また、バイタルスペクトルの最小値や平均値、中央値に基づく心弾動信号を採用すれば、不存在時に、ノイズによって誤って存在していると判定される誤判定が生じ難くなる。或いは、バイタルスペクトルの総和に基づく心弾動信号を採用すれば、不存在判定の演算処理が簡単になることで負荷の軽減が図られる。
第十二の態様は、前記第七~第十一の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記圧電型センサシートが前記生体を載せるクッション体の下側に配されているものである。
本態様の存否判定装置によれば、圧電型センサシートの上にクッション体があることによって、使用者の体動による圧電型センサシートのずれや変形などが防止される。また、圧電型センサシートの上面がクッション体で覆われることから、感度の高い圧電型センサシートを採用しても、検出信号が風などの影響を受け難い。
【0014】
第十三の態様は、前記第一~第十二の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記不存在判定時間が0.5秒~60秒の範囲内で設定されているものである。
【0015】
本態様の存否判定装置によれば、不存在判定時間を上記範囲内で設定することにより、正確な判定が可能になる。即ち、不存在判定時間が短すぎると、誤検出などで心弾動信号のレベルが一時的に低下した場合に、誤判定が生じてしまうおそれがある。また、不存在判定時間が長すぎると、検出領域から一度離れてから戻った場合にも不存在判定されないおそれがある。
【0016】
第十四の態様は、前記第一~第十三の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記不存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の代表値と前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定を行うものである。
【0017】
本態様の存否判定装置によれば、目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
【0018】
第十五の態様は、前記第一~第十三の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記不存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れか一つと前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定を行うものである。
【0019】
本態様の存否判定装置によれば、例えば不存在閾値と比較する値として、心弾動信号の所定時間内の最大値を採用することで簡易に心拍波形の最大振幅を得ることができて、存否を高精度に判定することができる。また、心弾動信号の所定時間内の最小値や平均値、中央値を採用すれば、ノイズによって不存在時に誤って存在判定される誤判定が生じ難くなる。或いは、心弾動信号の総和を採用すれば、不存在判定の演算処理が簡単になることで負荷の軽減が図られる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
第十六の態様は、前記第一~第十五の何れか一つの態様に係る存否判定装置において、前記心弾動信号を増幅する信号増幅部を備えているものである。
【0035】
本態様の存否判定装置によれば、信号増幅部によって増幅された心弾動信号に基づいて存在判定と不存在判定を行うことにより、判定精度の向上が図られる。
【0036】
第十七の態様は、前記第十六の態様に係る存否判定装置において、前記信号増幅部によって増幅された前記心弾動信号から心拍波形を算出する心拍波形演算部を備えているものである。
【0037】
本態様の存否判定装置によれば、心弾動信号に基づいて不存在判定を行うに際して、例えば心弾動信号を直接に用いて判定する場合よりも、心弾動信号から得られた心拍波形を用いて判定することで、ノイズ等による影響を抑えて判定精度の向上を図ることも可能になる。また、例えば心拍波形をモニタに表示等することもできて、モニタに表示される心拍波形の有無で使用者の存否が判定されるようになっていてもよい。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【発明の効果】
【0051】
本発明に係る存否判定装置によれば、不存在判定時間を設けることで、検出領域上に生体が存在するか否かの不存在判定がより正確に行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての存否判定装置を説明するための説明図
【
図2】
図1に示された存否判定装置を構成する圧電型センサシートを説明するための説明図
【
図3】
図2に示された圧電型センサシートを構成するセンサ本体を示す平面図
【
図5】圧電型センサシートにより取得された心弾動を含む振動波形の具体的な一例を示すグラフ
【
図6】
図5に示された振動波形から心弾動成分の波形を抽出して示すグラフ
【
図7】
図6に示された波形を信号増幅部により信号を増幅して示すグラフ
【
図8】(i)~(v)の各状態における存否を説明するために用いられる心弾動信号を例示的に示すグラフ
【
図9】
図7に示された増幅された信号から心拍成分の波形を抽出して示すグラフ
【
図10】本発明の第二の実施形態としての存否判定装置を説明するための説明図
【
図11】圧電型センサシートにより取得された心弾動を含む振動波形の具体的な一例を示すグラフ
【
図12】
図10に示す存否判定装置における存否判定のフローチャート
【
図13】
図11に示された振動波形において離床判定される時間帯T1を拡大して示すグラフ
【
図14】
図13に示された振動波形を周波数解析して算出されたパワースペクトルのグラフ
【
図15】
図11に示された振動波形において呼吸が止まった状態で在床判定される時間帯T2を拡大して示すグラフ
【
図16】
図15に示された振動波形を周波数解析して算出されたパワースペクトルのグラフ
【
図17】
図11に示された振動波形において呼吸した状態で在床判定される時間帯T3を拡大して示すグラフ
【
図18】
図17に示された振動波形を周波数解析して算出されたパワースペクトルのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0054】
先ず、
図1には、本発明の第一の実施形態としての存否判定装置10が示されている。この存否判定装置10は、生体としての使用者Aの呼吸や心臓の拍動等に伴う身体の微小な体動や寝返り等の比較的大きな体動が入力されて、これら入力された体動(振動)に応じた検出信号を出力する圧電型センサシート12と、圧電型センサシート12から出力された検出信号を解析する解析装置14とを含んで構成されている。
【0055】
より詳細には、圧電型センサシート12は、例えば
図2の如き構造とされており、略矩形シート状の柔軟なセンサ本体16を備えている。このセンサ本体16は、
図3,4に示すように、圧電層18と、一対の電極層20a,20bと、一対の保護層22a,22bとを備えている。
【0056】
圧電層18の材質としては、セラミックスや合成樹脂、ゴム弾性体(エラストマを含む)等が採用され得るが、本実施形態では、ゴム弾性体により構成されている。圧電層18の材質として採用されるゴム弾性体は、例えば架橋ゴム及び熱可塑性エラストマから選ばれる一種以上を用いることが好適であり、例えばウレタンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。また、官能基を導入する等して変性したエラストマを用いてもよい。変性エラストマとしては、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基から選ばれる一つ以上を有する水素化ニトリルゴムが好ましい。
【0057】
また、圧電層18は、圧電粒子を含んでいる。圧電粒子は、圧電性を有する化合物の粒子である。圧電性を有する化合物としては、ペロブスカイト型の結晶構造を有する強誘電体が知られており、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウムナトリウム、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ビスマスランタン(BLT)、タンタル酸ビスマスストロンチウム(SBT)のうちの一種類又は二種類以上の混合物が好適に採用され得る。
【0058】
電極層20a,20bは、圧電層18に追従して変形し得る柔軟性を有することが好ましい。このような電極層20a,20bは、例えばバインダーに導電材を配合した導電材料、導電性繊維等から形成することができる。バインダーとしては、上述の圧電層18を構成する架橋ゴム及び熱可塑性エラストマと同様の材質が採用され得る。
【0059】
また、電極層20a,20bに配合される導電材は、限定されるものではないが、例えば銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、及びこれらの合金等からなる金属粒子、酸化亜鉛、酸化チタン等からなる金属酸化物粒子、チタンカーボネート等からなる金属炭化物粒子、銀、金、銅、白金、及びニッケル等からなる金属ナノワイヤ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、薄層黒鉛、グラフェン等の導電性炭素材料の中から適宜選択され得る。
【0060】
保護層22a,22bの材質としては、上述の圧電層18を構成する架橋ゴム及び熱可塑性エラストマと同様の材質が採用され得る。
【0061】
本実施形態では、圧電層18、電極層20a,20b、保護層22a,22bが何れも薄肉の矩形板状とされており、圧電層18の厚さ方向両側に電極層20a,20bが固着されていると共に、これら圧電層18及び電極層20a,20bの厚さ方向両側に保護層22a,22bが固着されている。これにより、圧電層18及び電極層20a,20bが外部に露出することなく、保護層22a,22bの内部に埋設されている。かかる構造をもって、センサ本体16が薄肉の略矩形シート状として形成されている。
【0062】
そして、センサ本体16の幅方向中央部分において、圧電層18と電極層20a,20bとが厚さ方向で重なる領域が、感圧部24とされており、当該感圧部24に荷重が及ぼされることにより電荷が発生するようになっている。
【0063】
また、本実施形態の圧電型センサシート12は、制御器26とコネクタ28とを備えており、電極層20a,20bと制御器26とが配線30a,30bにより電気的に接続されていると共に、制御器26がコネクタ28を介して解析装置14に電気的に接続されるようになっている。
【0064】
制御器26は、例えば増幅部やA/D変換部等を有している。増幅部は、圧電型センサシート12の出力(電圧)を増幅するものである。A/D変換部は、増幅部で増幅された出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するものである。尤も、圧電型センサシート12の出力をA/D変換部によりアナログ信号からデジタル信号に変換した後、増幅部により増幅してもよい。
【0065】
解析装置14は、制御器26で制御された信号(即ち、A/D変換部により変換されたデジタル信号)を演算できるようになっていればよく、例えばモニタ部32を含むコンピュータと、当該コンピュータにインストールされて動作を行うコンピュータプログラムにより実現され得る。
【0066】
ここにおいて、本実施形態では、圧電型センサシート12が、使用者Aが横たわる検出領域としてのベッド36の幅方向に延びるように敷設されている。特に、本実施形態では、圧電型センサシート12が、長さが調節可能とされたベルト部38を備えており、ベルト部38がベッド36のマットレスに巻き付けられて、圧電型センサシート12がマットレス上に固定されていると共に、当該圧電型センサシート12が固定されたマットレスの上からシーツが被せられている。これにより、使用者Aは、圧電型センサシート12に直接接触することなく圧電型センサシート12上に横たわっており、本実施形態では、圧電型センサシート12が、使用者Aの胸部付近に設けられている。これにより、例えば寝返り等により使用者Aの姿勢が多少変わったとしても、使用者Aの心弾動が取得し易くされている。
【0067】
そして、使用者Aの呼吸や心臓の拍動、寝返り等に伴って圧電型センサシート12の感圧部24に微小又は大きな広義の体動(振動)が入力されると、圧電層18に電荷が発生すると共に、当該発生した電荷が、制御器26にて電圧や電流の変化として検出されるようになっている。制御器26において検出された電荷(信号)と時間との関係の具体的な一例を
図5のグラフに示す。即ち、
図5のグラフに示される検出信号は、呼吸、心臓の拍動、寝返り等の広義の体動等に由来するものである。なお、
図5に示される検出信号は、加工や補正をしていない生データである。
【0068】
以下、存否判定装置10を利用して、使用者Aの心弾動から、使用者Aがベッド36上に存在するか否かを判定する手順の具体的な一例を説明する。
【0069】
先ず、圧電層18に発生した電荷(信号)を、4Hz未満の周波数成分をカットする(4Hz以上の周波数成分を透過する)ハイパスフィルタ(心弾動フィルタ)を介して検出する。即ち、一般に、心拍は1Hz程度の振動であるが、心弾動(心拍に起因する身体の振動)は4Hz以上の振動であり、4Hz以上の周波数成分を透過するハイパスフィルタや4Hz~20Hzの周波数成分を透過するバンドパスフィルタを用いることで、呼吸、心臓の拍動、寝返り等による広義の体動の中から心臓の拍動による体動(心弾動)の成分が抽出される。なお、ハイパスフィルタ(又はバンドパスフィルタ)を透過して、心弾動由来の成分のみが抽出された時点の波形を
図6に示す。
【0070】
次に、4Hz以上の周波数成分を透過するハイパスフィルタ(又は4Hz~20Hzの周波数成分を透過するバンドパスフィルタ)を介して得られた信号値を2乗して増幅する2乗演算を行う。これにより、
図6のグラフの縦軸の値が2乗されて心弾動の振動のピークが強調される。かかる心弾動が強調された波形を
図7に示す。
【0071】
なお、上記ハイパスフィルタやバンドパスフィルタは、例えば圧電型センサシート12の制御器26に設けられて、所望の周波数での心弾動信号が取得される。従って、圧電型センサシート12の検出信号から心弾動に応じた心弾動信号を取り出す心弾動信号取得部40は、制御器26に設けられてもよい。その後、A/D変換部によりデジタル信号に変換された心弾動信号は、解析装置14のコンピュータに送信されてもよく、以降の演算をコンピュータ上で行うようになっていてもよい。なお、心弾動信号を増幅する信号増幅部42は、制御器26に設けられてもよいし、解析装置14のコンピュータ及び当該コンピュータにインストールされるプログラムを含んで構成されてもよい。
【0072】
ここにおいて、2乗されて強調された心弾動信号(
図7)において、所定時間内の代表値を算出する。この代表値としては、例えば所定時間内の最大値、最小値、平均値、中央値、総和のうちの何れか一つが採用される。本実施形態では、直前の0.1秒間における平均値を算出する。以下の説明では、心弾動信号の代表値を、単に心弾動信号として説明する。
【0073】
図8では、具体的な一例として、使用者Aの心弾動信号を所定時間計測して、その心弾動信号から算出された代表値を例示的に示している。なお、
図8は、単に後述する(i)~(v)の状態を説明するためのグラフであり、グラフ中の縦軸や横軸の値は正確なものではない。また、本実施形態では、かかる心弾動信号と比較される不存在閾値α、存在閾値β、体動閾値γが予め設定されている。そして、心弾動信号と、不存在閾値α、存在閾値β、体動閾値γとの大小関係及び当該大小関係の持続時間に応じて、ベッド36上の使用者Aの状態が判定されるようになっている。
【0074】
すなわち、心弾動信号が不存在閾値αを下回る状態が、不存在判定時間を超えて持続する場合、使用者Aは、ベッド36上に存在しない(不存在)と判定されるようになっている。本実施形態では、不存在閾値αが20[digit]とされている。なお、digitは、デジタル測定機器の最小表示単位である。
【0075】
また、不存在判定時間は、0.5秒以上と設定されることが好ましい。不存在判定時間が0.5秒より短い場合、姿勢の変化や誤検出等で心弾動信号のレベルが一時的に低下した際に、誤って不存在と判定されるおそれがある。更に、不存在判定時間は、60秒以下と設定されることが好ましい。不存在判定時間が60秒より長い場合、例えば一時的にベッド36から離れた際に、不存在と判定されないおそれがある。かかる不存在判定時間は5秒~45秒の範囲内に設定されることがより好ましく、本実施形態では20秒に設定されている。
【0076】
更にまた、心弾動信号が存在閾値βを上回る状態が、存在判定時間を超えて持続する場合、使用者Aは、ベッド36上に存在すると判定されるようになっている。この存在閾値βは、上記不存在閾値αと同じ値を採用してもよいが、存在閾値βと不存在閾値αは互いに独立する異なる値とされることが好ましい。また、存在閾値βは不存在閾値αの3倍以上とされていることが好適であり、本実施形態では、存在閾値βが100[digit]とされている。
【0077】
さらに、存在判定時間は、0.5秒以上と設定されることが好ましい。存在判定時間が0.5秒より短い場合、外部から振動が入力された場合、誤って存在すると判定されるおそれがある。また、存在判定時間は30秒以下と設定されることが好ましい。存在判定時間が30秒より長い場合、例えば一時的にベッド36上に位置する際に、存在すると判定されないおそれがある。かかる存在判定時間は、0.5秒~15秒の範囲内に設定されることがより好ましく、本実施形態では1秒に設定されている。
【0078】
また、心弾動信号が体動閾値γを上回ると共に、心弾動信号が体動閾値γを上回る前後の所定時間(例えば30秒)に亘って、ベッド36上に使用者Aが存在すると判定される場合、使用者Aは、ベッド36上で寝返り等の狭義の体動を行ったと判定されるようになっている。或いは、体動判定時間が設定されてもよく、心弾動信号が体動閾値γを上回った状態が、体動判定時間を超えて持続する場合、使用者Aは、ベッド36上で体動(寝返りや座り直し)したと判定されるようになっていてもよい。本実施形態では、体動判定時間が0.5秒に設定されている。
【0079】
なお、体動閾値γは、存在閾値βよりも大きな値に設定されることが好ましく、本実施形態では、体動閾値γが30000[digit]とされている。
【0080】
図8には、心弾動信号と不存在閾値α、存在閾値β、体動閾値γとの大小関係及び当該大小関係の持続時間に応じて(i)~(v)の状態が示されている。以下、(i)~(v)の各状態について説明する。
【0081】
図8中の(i)では、直前の状態が、心弾動信号が不存在閾値αよりも小さく、使用者Aはベッド36上に存在していない(不存在)と判定される。その後、心弾動信号は存在閾値βを超えるが、その状態が存在判定時間(1秒)を超えて持続しないことから、(i)では、使用者Aがベッド36上に存在していないと判定される。このような一時的なピークは、例えば使用者Aが、ベッド36上の布団を触ること等によって生じ得る。
【0082】
図8中の(ii)では、直前の状態が、不存在と判定されていると共に、心弾動信号が存在閾値βを超えて、且つその状態が存在判定時間(1秒)を超えて持続していることから、(ii)では、使用者Aがベッド36上に存在していると判定される。なお、(ii)では、心弾動信号が体動閾値γを超えて、且つその状態が体動判定時間を超えているが、直前の状態との関係から、使用者Aがベッド36上に寝転がって寝始めた状態であると推定されて、体動(寝返り)とは判定されない。
【0083】
図8中の(iii)では、直前の状態がベッド36上に存在すると判定されていると共に、心弾動信号が体動閾値γを超えて、且つその状態が体動判定時間(0.5秒)を超えて持続している。また、直後の状態(iv)では、心弾動信号が不存在閾値αと略等しいかそれより僅かに小さくなっているが、持続時間が不存在判定時間(20秒)よりも短いことから、不存在とは判定されない。即ち、心弾動信号が体動閾値γを上回る前後の所定時間(例えば30秒)に亘って、使用者Aがベッド36上に存在すると判定されることから、(iii)の状態は体動(寝返りや座り直し)と判定される。
【0084】
図8中の(iv)では、上述のように、心弾動信号が不存在閾値αと略等しいか僅かに小さいが、持続時間が不存在判定時間(20秒)よりも短いことから、不存在とは判定されず、直前の状態に鑑みて、使用者Aはベッド36上に存在すると判定される。なお、(iv)では、寝返りによる姿勢の変化等により、心弾動信号が一次的に低下したものと思われる。
【0085】
図8中の(v)では、心弾動信号が不存在閾値αを下回り、且つその状態が不存在判定時間(20秒)を超えて持続していることから、不存在と判定される。即ち、直前の状態と併せて考慮すると、ベッド36から離床したものと考えられる。
【0086】
なお、上述の手順では、使用者Aの心弾動から、使用者Aがベッド36上に存在するか否かを判定していたが、使用者Aの心拍から使用者Aがベッド36上に存在するか否かを判定してもよい。
【0087】
すなわち、4Hz以上の周波数成分を透過するハイパスフィルタ(又は4Hz~20Hzの周波数成分を透過するバンドパスフィルタ)によって、圧電層18に発生した電荷に基づく検出信号から心弾動由来の成分を抽出すると共に、その信号値を2乗して増幅する。心弾動由来の成分中には心拍由来の成分が含まれていることから、増幅した信号値に対して、0.8Hz~2.0Hzの周波数成分を透過するバンドパスフィルタでフィルタリングを行うことで、心拍由来の成分が抽出される。これにより、
図9に示されるように、心拍の波形が得られる。
【0088】
このように心弾動の信号に基づいて得られる心拍の信号値を利用して、所定時間内の代表値を算出して、予め設定した不存在閾値、存在閾値、体動閾値等と比較することで、使用者Aがベッド36上に存在するか否かが判定されてもよい。なお、この代表値としては、直前の10秒間における平均値であったり最大値が採用されてもよい。また、不存在閾値、存在閾値、体動閾値は、比較される信号値(心弾動信号であるか、又は心拍信号であるか、或いは、代表値として、最大値と最小値と平均値と中央値と総和との何れを採用するか等)に応じて適宜に設定され得る。
【0089】
上記の如き、ベッド36上に使用者Aが存在しないことを判定する(不存在判定を行う)不存在判定部44と、ベッド36上に使用者Aが存在することを判定する(存在判定を行う)存在判定部46と、ベッド36上の使用者Aの寝返り等の体動の有無を判定する(体動判定を行う)体動判定部48と、増幅された心弾動信号から心拍波形を算出する心拍波形演算部50とは、例えば解析装置14のコンピュータ及び当該コンピュータにインストールされるプログラムを含んで構成され得る。
【0090】
以上の如き本実施形態の存否判定装置10では、従来の圧力センサのように、体荷重(体圧)に基づいて存否を判定するのではなく、心拍や、それに基づく心弾動により使用者Aの存否を判定するものであることから、検出精度が低下したり誤判定が生じるおそれが低減され得る。
【0091】
また、心弾動信号が不存在閾値αを下回った時点で直ちに不存在と判定されるのではなく、不存在判定時間を設けて、心弾動信号が不存在閾値αを下回った状態が不存在判定時間を超えて持続することで不存在と判定されることから、例えば寝返り等の姿勢の変化で一時的に心弾動信号が低下した場合にも不存在と誤判定される不具合等が回避され得る。
【0092】
さらに、本実施形態では、存在判定時間を設けて、心弾動信号が存在閾値βを上回った状態が存在判定時間を超えて持続することで存在と判定されるようにしたことから、存在している場合に不存在と判定されるおそれが低減され得る。更にまた、寝返り等の体動については、心弾動信号が体動閾値を上回ると共に、その前後の所定時間に亘って存在と判定されることで体動があったと判定されることから、単に体動閾値を上回ることで体動があったと判定される場合に比べてより正確な判定がなされ得る。
【0093】
また、本実施形態では、不存在閾値αや存在閾値β、体動閾値γと比較される心弾動信号又は心拍信号が、所定時間内の代表値とされており、代表値としては、例えば最大値や最小値、平均値、中央値、総和とされる。代表値として最大値を採用することで、心弾動信号の数値を全体的に大きくすることができて、高精度な判定が可能となる。更に、代表値として最小値を採用することで、ノイズとして入力される外部からの振動の数値も小さく抑えられて、誤判定のおそれが低減され得る。更にまた、代表値として平均値を採用することで、上記の如き最大値を採用したときの効果と最小値を採用した時の効果の両方が達成されて、バランスの良い存否判定装置が提供され得る。
【0094】
さらに、本実施形態では、不存在閾値αと存在閾値βが互いに異なる値で独立して設けられている。即ち、例えば存在閾値βを比較的大きめに設定することも可能であり、これにより、ノイズとして入力される外部からの振動により、不存在の状態でも存在と判定される不具合が回避され得る。同様に、不存在閾値αを比較的小さめに設定することも可能であり、これにより、存在の状態でも不存在と判定される不具合が回避され得る。即ち、不存在閾値αと存在閾値βとは大きく離隔していることが好適であり、例えば3倍以上や5倍以上、使用態様によっては20倍以上とすることも可能である。
【0095】
更にまた、信号増幅部42により心弾動信号を増幅することで精度の向上を図ることも可能であるし、増幅された心弾動信号を利用して心拍波形を算出することで、当該心拍波形によりベッド36上に使用者Aが存在するか否かを判定することも可能である。
【0096】
図10には、本発明の第二の実施形態としての存否判定装置60が示されている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0097】
存否判定装置60は、使用者Aの体動(振動)に応じた検出信号を出力する圧電型センサシート12と、圧電型センサシート12から出力された検出信号を解析する解析装置62とを、含んで構成されている。
【0098】
解析装置62は、圧電型センサシート12に対して制御器26を介して配線によって電気的に接続されている。解析装置62は、制御器26で制御された信号を演算できるようになっている。解析装置62は、不存在判定部44と存在判定部46とを備えている。
【0099】
解析装置62は、圧電型センサシート12の検出信号を周波数解析して、使用者Aの心弾動及び呼吸に関するパワースペクトルであるバイタルスペクトルを算出するバイタル周波数解析部64を、備えている。
【0100】
バイタル周波数解析部64は、圧電型センサシート12の検出信号を周波数解析することによって、心弾動に起因するパワースペクトルである心弾動スペクトルと、呼吸に起因するパワースペクトルである呼吸スペクトルとを併せ持つパワースペクトルであるバイタルスペクトルを算出する。バイタルスペクトルにおいて、呼吸スペクトルは必須ではなく、例えば睡眠時無呼吸症候群によって睡眠中に一時的に呼吸が停止する場合などには、バイタルスペクトルは呼吸スペクトルを含まない。バイタル周波数解析部64は、高速フーリエ変換(FFT)による周波数解析処理を実行するものであって、例えば周波数解析プログラム等がインストールされたコンピュータによって構成される。
【0101】
なお、心弾動スペクトルは1Hz~5Hz程度の周波数域に主に現れ、呼吸スペクトルは0.1Hz~2Hz程度の周波数域に主に現れる。周波数解析において、バイタルスペクトルとして処理する周波数域は適宜に設定されるが、例えば、バイタルスペクトルは0.1Hz~5Hzの周波数域のパワースペクトルとして算出される。
【0102】
解析装置62は、バイタル周波数解析部64によって算出されたバイタルスペクトルの代表値を演算する代表値設定部66を備えている。バイタルスペクトルの代表値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて選択されるが、例えば、所定時間におけるバイタルスペクトルの最大値、最小値、平均値、中央値、総和などが採用される。本実施形態の代表値設定部66は、バイタルスペクトルの最大値をバイタルスペクトルの代表値として求める処理を実行する。代表値設定部66は、例えば代表値の演算処理プログラム等がインストールされたコンピュータによって構成される。
【0103】
解析装置62は、代表値設定部66が設定したバイタルスペクトルの代表値に基づいて、心弾動信号を取得する心弾動信号取得部68を備えている。心弾動信号取得部68は、例えば心弾動信号の生成処理プログラム等がインストールされたコンピュータによって構成される。
【0104】
解析装置62は、圧電型センサシート12の検出信号を周波数解析することによって、バイタルスペクトルの周波数域(バイタル周波数域)よりも高い周波数域のパワースペクトルであるノイズスペクトルを算出するノイズ周波数解析部70を、備えている。ノイズ周波数解析部70は、高速フーリエ変換(FFT)による周波数解析処理を実行するものであって、例えば周波数解析プログラム等がインストールされたコンピュータによって構成される。なお、ノイズスペクトルは、心弾動や呼吸による影響が小さい周波数域のパワースペクトルであることが望ましく、例えば、20Hz~25Hzのパワースペクトルとして算出される。
【0105】
代表値設定部66は、ノイズ周波数解析部70によって算出されたノイズスペクトルの代表値を演算する。ノイズスペクトルの代表値は、特に限定されるものではなく、目的に応じて選択されるが、例えば、所定時間におけるノイズスペクトルの最大値、最小値、平均値、中央値、総和などが採用される。本実施形態の代表値設定部66は、ノイズスペクトルの平均値をノイズスペクトルの代表値として求める処理を実行する。
【0106】
解析装置62は、代表値設定部66が設定したノイズスペクトルの代表値に基づいて、ノイズ信号を取得するノイズ信号取得部72を備えている。ノイズ信号取得部72は、例えばノイズ信号の生成処理プログラム等がインストールされたコンピュータによって構成される。
【0107】
解析装置62は、ノイズとしてのノイズ信号に対するシグナルとしての心弾動信号の比(S/N比)を算出するS/N比演算部74を備えている。S/N比演算部74は、例えば演算処理プログラム等がインストールされたコンピュータによって構成される。
【0108】
そして、S/N比演算部74によって算出されたノイズ信号に対する心弾動信号の比に基づいて、不存在判定部44と存在判定部46が存否判定を実行する。不存在判定部44は、算出されたS/N比を予め設定された不存在閾値に対して比較し、S/N比が不存在閾値を所定の不存在判定時間以上にわたって連続して下回る場合に不存在判定を行う。存在判定部46は、算出されたS/N比を予め設定された存在閾値に対して比較し、S/N比が存在閾値を所定の存在判定時間以上にわたって連続して上回る場合に存在判定を行う。なお、不存在閾値、存在閾値、不存在判定時間、存在判定時間は、何れも圧電型センサシート12への入力の大きさ(信号の強さ)や、周辺環境からのノイズ、要求される判定精度等に応じて適宜に設定されるものであって、特に限定されない。
【0109】
このような存否判定装置60は、例えば使用者Aの就寝時の見守りなどに用いられて、使用者Aがベッド36上にいるかいないかを判定する。使用者Aが横たわる検出領域としてのベッド36は、床板76の上にクッション体としてのマットレス78が載置されており、存否判定装置60のセンサ本体16が床板76とマットレス78の間に配される。要するに、センサ本体16は、マットレス78の下側に配されており、使用者Aがマットレス78に及ぼす振動(心弾動や体動等)が、マットレス78を介してセンサ本体16に間接的に入力される。マットレス78は、汚れの付着や摩耗の防止などを目的として、シーツによって覆われていてもよく、例えば、センサ本体16をマットレス78とともにシーツで覆うこともできる。なお、センサ本体16は、前記第一の実施形態と同様に、上面視において使用者Aの胸部付近に配置されることが望ましい。センサ本体16は、床板76やマットレス78に対して、バンドやホックなどによって位置決めされていてもよい。特に、背上げ機能を有する介護用ベッドに適用する場合には、背上げによるセンサ本体16のずれや脱落を防ぐために、位置決めされていることが望ましい。また、センサ本体16がベッド36に対して位置決めされる場合には、位置決めを解除可能とすることが望ましく、好適にはセンサ本体16がベッド36に対して着脱可能とされる。
【0110】
このように存否判定装置60がベッド36にセットされた状態において、使用者Aの心拍や呼吸、体動等に起因する入力の変化が、圧電型センサシート12によって検出される。
図11には、圧電型センサシート12による検出結果の一例をグラフとして示す。
図11のグラフにおいて、縦軸は、検出された振幅、換言すれば検出信号の強さであって、単位はdigitであり、横軸は、時間であって、単位は秒である。なお、
図11のグラフは、圧電型センサシート12から出力された検出信号の生波形であって、使用者Aの心弾動や呼吸、体動等に起因する振動波形の他、電磁的なノイズの波形や床からベッド36へ入力される振動の波形なども含む。
【0111】
そして、解析装置62は、圧電型センサシート12から送信された検出信号に基づいて、
図12のフローチャートに示す存否判定を実行することによって、使用者Aがベッド36上にいるか否かを判定する。以下に、
図11において特徴的な3つの時間帯T1,T2,T3について、それぞれ存否判定装置60による存否判定の例を説明する。
【0112】
図11に示す時間帯T1は、使用者Aがベッド36上にいない離床状態の時間帯である。
図13に拡大して示すように、T1において、圧電型センサシート12が出力する検出信号の波形は略平坦となっている。
【0113】
図12のステップ(以下、S)0において解析装置62に送られた検出信号は、S1において、バイタル周波数解析部64及びノイズ周波数解析部70により、高速フーリエ変換(FFT)による周波数解析処理を実行される。T1における検出信号を周波数解析した結果が、
図14に示すグラフである。
図14のグラフにおいて、横軸は周波数であり、縦軸はパワースペクトルの強さである。
図14のグラフによれば、0.1Hzよりも低周波においてノイズによるパワースペクトルの上昇が確認されるが、0.1Hz~5Hzの周波数域におけるパワースペクトルであるバイタルスペクトルは、数値が極めて小さくなっている。また、20Hz~25Hzの周波数域におけるパワースペクトルであるノイズスペクトルも、数値が極めて小さくなっている。
【0114】
S2において、心弾動信号取得部68は、代表値設定部66が設定した0.1Hz~5Hzのパワースペクトル(バイタルスペクトル)の代表値に基づいて、心弾動信号を取得する。バイタルスペクトルの代表値は、特に限定されないが、例えば、バイタルスペクトルの最大値、最小値、平均値、中央値、総和が好適に採用される。本実施形態では、バイタルスペクトルの代表値として最大値が採用されている。
【0115】
S3において、ノイズ信号取得部72は、代表値設定部66が設定した20Hz~25Hzのパワースペクトル(ノイズスペクトル)の代表値に基づいて、ノイズ信号を取得する。ノイズ信号の代表値は、特に限定されないが、例えば、ノイズスペクトルの最大値、最小値、平均値、中央値、総和が好適に採用される。本実施形態では、ノイズスペクトルの代表値として平均値が採用されている。バイタルスペクトルの代表値の算出方法と、ノイズスペクトルの代表値の算出方法は、例えば両方を平均値とするなど互いに同じであってもよいし、本実施形態のように互いに異なっていてもよい。
【0116】
S4において、解析装置62のS/N比演算部74が、ノイズスペクトルの代表値に基づいたノイズ信号に対するバイタルスペクトルの代表値に基づいた心弾動信号の比を、シグナル/ノイズ比(S/N比)として算出する。
【0117】
S5において、使用者Aが前回の判定時にベッド36上に存在したか否かを判定する。なお、初回のS5判定時には、存在した(y)と判定する。すなわち、患者(使用者A)の見守り等に存否判定装置60を使用するケースにおいて、使用者Aの就寝直後の在床は、介助者等が確認することから、初回の判定は在床とされている。その後、存否判定装置60によって離床の見守りを行うことにより、在床判定よりも判定時間が長くノイズ等の影響による誤判定が生じ難い不在判定によって、最初の離床を正確に把握することができる。なお、上述のように初回のS5判定を在床(y)とすると、判定開始から20秒間はS6の判定結果が常に存在判定となるが、20秒という短い時間であることから、例えば介助者等がその間だけ目視で確認したとしても負担にはなり難く、また、その間の誤判定が重大な問題になるおそれもほとんどない。
【0118】
もっとも、初回のS5判定において、存在しない(n)と判定するようにしてもよい。これによれば、万が一誤判定が生じた場合に、使用者Aが実際にはベッド36上に存在するにもかかわらず不存在判定をしてしまう安全側の誤判定となることから、問題が生じ難い。また、S7において設定されている存在判定時間(2秒)は、S6において設定されている不在判定時間(20秒)よりも短く、より速やかに通常の判定が可能になることから、多忙な介助者等の拘束時間が更に短くなる。
【0119】
S5において、使用者Aがベッド36上に存在した(y)と判定されると、S6において、不存在判定部44が離床を判定する。即ち、S4において記憶したS/N比が予め設定された不存在閾値よりも小さい(不存在閾値を下回る)状態が、予め設定された不存在判定時間を超えて持続した場合には、不存在判定されて、使用者Aがベッド36上からいなくなった(離床した)と判定される。一方、S/N比が不存在閾値よりも小さい状態が、生じていない場合、或いは不存在判定時間を超えて持続しなかった場合には、使用者Aがベッド36上にいる(在床継続)と判定される。なお、不存在閾値の大きさは、圧電型センサシート12の性能や周辺環境のノイズの大きさなどに応じて適宜に設定される。また、不存在判定時間の長さは、要求される誤判定の生じ難さ等に応じて適宜に設定され、例えば、好適には20秒とされる。
【0120】
S5において、使用者Aがベッド36上に存在しなかった(n)と判定されると、S7において、存在判定部46が在床を判定する。即ち、S4において記憶したS/N比が予め設定された存在閾値よりも大きい(存在閾値を上回る)状態が、予め設定された存在判定時間を超えて持続した場合には、存在判定されて、使用者Aがベッド36上にいる(在床)と判定される。一方、S/N比が存在閾値よりも大きい状態が、生じていない場合、或いは存在判定時間を超えて持続しなかった場合には、使用者Aがベッド36上にいない(離床継続)と判定される。なお、存在閾値の大きさは、圧電型センサシート12の性能や周辺環境のノイズの大きさなどに応じて適宜に設定される。また、存在判定時間の長さは、要求される誤判定の生じ難さ等に応じて適宜に設定され、例えば、好適には2秒とされる。好適には、存在判定時間は、不存在判定時間よりも短くされる。
【0121】
図14に示すT1のパワースペクトルによれば、S/N比が小さくなることから、S7において、存在判定がなされることなく離床継続と判定される。従って、T1では、ベッド36上に使用者Aが存在しないと判定される。
【0122】
図11に示す時間帯T2は、使用者Aがベッド36上にいる在床状態の時間帯であって、使用者Aの呼吸が一時的に止まっている時間帯である。
図15に拡大して示すように、T2において、圧電型センサシート12が出力する検出信号の波形は、呼吸による大振幅の波形がなく、心拍由来の心弾動に起因する小振幅の波形が定期的に表れている。なお、T2の存否判定についても、T1の存否判定と同様に代表値やS/N比の算出等の処理を実行するが、説明を簡略化するために、T1と実質的に同一の処理については説明を省略する。
【0123】
図16は、T2における検出信号を周波数解析した結果のグラフである。T2において、バイタルスペクトルは、呼吸スペクトルを含まない心弾動スペクトルとされる。
図16によれば、バイタルスペクトルが20Hz程度まで表れており、特に0.1Hz~3Hz程度の周波数域においてバイタルスペクトルの数値が大きくなっている。一方、20Hz~25Hzの周波数域におけるパワースペクトルであるノイズスペクトルは、T1と同様に数値が極めて小さくなっている。従って、T2では、T1に比して、ノイズ信号に対する心弾動信号の比であるS/N比が大きい。
【0124】
図12に示す判定処理のフローチャートにおいて、T2の存否判定では、S5において前回の判定では在床であったと判定される。それゆえ、S6において、S/N比が不存在判定閾値未満の状態を20秒以上持続したか否かを判定する。T2では、心弾動によってS/N比が大きくなることから、S6の判定において、不存在判定が否定され、使用者Aはベッド36上に存在すると判定される。
【0125】
このように、使用者の呼吸が一時的に止まって呼吸スペクトルがない状態となっても、心弾動スペクトルに基づいた呼吸スペクトルを含まない心弾動信号によって、正確に存否判定をすることができる。
【0126】
図11に示す時間帯T3は、使用者Aがベッド36上にいる在床状態の時間帯であって、使用者Aが呼吸をしている時間帯である。
図17に拡大して示すように、T3において、圧電型センサシート12が出力する検出信号の波形は、呼吸による大振幅の波形と、心拍由来の心弾動に起因する小振幅の波形とが複合した波形となっている。なお、T3の存否判定についても、T1と同様の処理については説明を省略する。
【0127】
図18は、T3における検出信号を周波数解析した結果のグラフである。
図18によれば、心弾動に起因する心弾動スペクトルと呼吸に起因する呼吸スペクトルとが合わさったバイタルスペクトルが、20Hz程度まで表れており、特に0.1Hz~十数Hz程度の周波数域においてバイタルスペクトルの数値が大きくなっている。一方、20Hz~25Hzの周波数域におけるパワースペクトルであるノイズスペクトルは、数値が極めて小さくなっている。従って、T3では、T1に比して、ノイズスペクトルに基づいたノイズ信号の代表値(平均値)に対するバイタルスペクトルに基づいた心弾動信号の代表値(最大値)の比であるS/N比が大きい。更に、T3では、心弾動信号を構成するバイタルスペクトルが、心弾動スペクトルに加えて呼吸スペクトルを併せ持つことから、バイタルスペクトルが呼吸スペクトルを含まないT2に比して、心弾動信号が大きくなって、S/N比がより大きくなる。
【0128】
図12に示す判定処理のフローチャートにおいて、T3の存否判定では、S5において前回の判定では在床であったと判定される。それゆえ、S6において、S/N比が不存在判定閾値未満の状態を20秒以上持続したか否かを判定する。T3では、心弾動と呼吸によってS/N比が大きくなることから、S6の判定において、不存在判定が否定され、使用者Aはベッド36上に存在すると判定される。
【0129】
このように、使用者Aが通常通り呼吸しながらベッド36上にいる場合には、心弾動スペクトルに加えて呼吸スペクトルを含むバイタルスペクトルに基づいて生成される心弾動信号によって、呼吸が止まっている場合よりも大きなS/N比を得ることができる。それゆえ、誤判定がより生じ難い高精度な存否判定をすることができる。
【0130】
本実施形態に係る存否判定装置60によれば、圧電型センサシート12のセンサ本体16がマットレス78の下側に配されて、センサ本体16への入力がマットレス78によって緩衝されて小さくなる場合にも、周波数解析によって心弾動信号に基づいた高精度な判定を実現することができる。なお、本実施形態の存否判定装置60において、圧電型センサシート12のセンサ本体16は、マットレス78の上側に配することもできる。
【0131】
センサ本体16がマットレス78の下側に敷かれていることによって、使用者Aの入床や離床、寝返り等の体動によって、センサ本体16が厚さ方向に曲がったり、マットレス78に対する位置がずれたりするのを防ぐことができる。しかも、センサ本体16に対する風などの外部環境の影響が、マットレス78で覆われることによって低減されて、検出信号を精度よく得ることができる。
【0132】
不存在判定部44と存在判定部46は、心弾動信号とノイズ信号の比であるS/N比と閾値との比較によって不存在判定或いは存在判定を行う。それゆえ、例えば、全周波数域において略一様なノイズ(ホワイトノイズ)が入力される場合に、当該ノイズの影響が低減されて、正確な判定を行うことができる。尤も、不存在判定部44と存在判定部46は、心弾動信号と閾値との比較によって不存在判定或いは存在判定を行うようにしてもよく、その場合には、ノイズ周波数解析部70、ノイズ信号取得部72、S/N比演算部74を省略することができる。
【0133】
心弾動信号取得部68が心弾動信号をバイタルスペクトルの代表値に基づいて取得すると共に、ノイズ信号取得部72がノイズ信号をノイズスペクトルの代表値に基づいて取得する。これにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
【0134】
特に本実施形態では、バイタルスペクトルの代表値が最大値とされていると共に、ノイズスペクトルの代表値が平均値とされていることにより、S/N比を大きく得ることができると共に、例えば電磁ノイズのように瞬間的に大きなノイズが入る場合において、当該ノイズの影響を抑えることができる。
【0135】
なお、前記第一の実施形態と同様に、解析装置62に体動判定部を設けて、使用者Aの寝返り等の体動を判定してもよい。この場合、体動判定部による体動判定は、例えば、S/N比演算部74が求めたS/N比と体動閾値とを比較した結果に基づいてなされる。
【0136】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0137】
代表値は、分布の傾向を要約的に示す特性値であって、算術平均、幾何平均、調和平均、平方平均等の計数的代表値と、中央値、最頻値、四分位数、最大値、最小値などの位置的代表値を含む。一般に、計数的代表は全ての値を包含して要約した特性を把握でき、位置的代表値はデータ中の極端な値の影響を軽減した特性を示すことが可能になる。それ故、例えば特定のノイズ等が懸念される場合には最大値よりも最頻値等を採用したり、最小値(極大ノイズ)を採用するのが良い場合もある。特定しがたいノイズ(寝返りで極小と極大がある等)などの場合には、平均値を採用してもよいし、演算の簡略化も考慮して最大値や平均値、総和などを採用してもよい。
【0138】
前記実施形態に記載されたフィルタリング周波数や閾値、判定時間などに関する具体的な数値は、あくまでも例示であって、限定的に解釈されるものでなく、例えば使用者の状態や環境などに応じて適宜に調節することができる。
【0139】
また、信号増幅部による心弾動信号の増幅は2乗に限定されないが、正負の問題から偶数乗であることが好ましい。また、より小さい数の方が演算が容易となることから、2乗であることが好ましい。尤も、信号増幅部は必須なものではなく、例えば前述の
図6の波形に示される心弾動の信号値に基づいて、検出領域上に使用者Aが存在するか否かが判断されてもよい。
【0140】
さらに、検出領域はベッドに限定されず、例えば椅子であってもよい。即ち、飲食店や映画館、電車の椅子や座席に本発明に係る存否判定装置を適用することで、空席状況等を容易に確認することができる。
また、本発明は、もともと以下(i)~(xix)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 検出領域上に生体が存在するか否かを判定する存否判定装置であって、前記検出領域に敷設されて、入力振動に応じた検出信号を出力する柔軟な圧電型センサシートと、該圧電型センサシートの該検出信号から心弾動に応じた心弾動信号を取り出す心弾動信号取得部と、該心弾動信号に基づいて該検出領域上に前記生体が存在しない不存在判定を行う不存在判定部とを、有しており、該心弾動信号が不存在閾値を下回る状態が不存在判定時間を超えて持続する場合に、該不存在判定部が該不存在判定を行う存否判定装置、
(ii) 前記不存在判定時間が0.5秒~60秒の範囲内で設定されている(i)に記載の存否判定装置、
(iii) 前記不存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の代表値と前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定を行う(i)又は(ii)に記載の存否判定装置、
(iv) 前記不存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れか一つと前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定を行う(i)又は(ii)に記載の存否判定装置、
(v) 前記心弾動信号に基づいて前記検出領域上に前記生体が存在する存在判定を行う存在判定部を有しており、該存在判定部は、該心弾動信号が存在閾値を上回る状態が存在判定時間を超えて持続する場合に該存在判定を行う(i)~(iv)の何れか一項に記載の存否判定装置、
(vi) 前記存在判定時間が0.5秒~30秒の範囲内で設定されている(v)に記載の存否判定装置、
(vii) 前記存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の代表値と前記存在閾値との比較によって前記存在判定を行う(v)又は(vi)に記載の存否判定装置、
(viii) 前記存在判定部が前記心弾動信号の所定時間内の最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れか一つと存在閾値との比較によって前記存在判定を行う(v)又は(vi)に記載の存否判定装置、
(ix) 前記存在閾値と前記不存在閾値が互いに異なる値で独立して設けられている(v)~(viii)の何れか一項に記載の存否判定装置、
(x) 前記存在閾値が前記不存在閾値の3倍以上とされている(ix)に記載の存否判定装置、
(xi) 前記心弾動信号に基づいて前記検出領域上の前記生体の体動を判定する体動判定を行う体動判定部を有していると共に、該体動判定部において該体動判定に用いられる体動閾値が前記存在閾値よりも大きな値で設定されており、
該心弾動信号の値が該体動閾値を上回ると共に、該心弾動信号の値が該体動閾値を上回る前後の所定時間に亘って前記存在判定部が該生体の存在を検知して前記存在判定を行う場合に、該体動判定部が該生体の体動を検知して該体動判定を行う(v)~(x)の何れか一項に記載の存否判定装置、
(xii) 前記心弾動信号を増幅する信号増幅部を備えている(i)~(xi)の何れか一項に記載の存否判定装置、
(xiii) 前記信号増幅部によって増幅された前記心弾動信号から心拍波形を算出する心拍波形演算部を備えている(xii)に記載の存否判定装置、
(xiv) 前記圧電型センサシートの前記検出信号を周波数解析して、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルを含むバイタルスペクトルを算出するバイタル周波数解析部を備え、前記心弾動信号取得部が該バイタルスペクトルに基づいた前記心弾動信号を取得する(i)~(xiii)の何れか一項に記載の存否判定装置、
(xv) 前記バイタルスペクトルが、前記生体の心弾動に起因するパワースペクトルである心弾動スペクトルと、該生体の呼吸に起因するパワースペクトルである呼吸スペクトルとを併せ持つパワースペクトルとされている(xiv)に記載の存否判定装置、
(xvi) 前記心弾動信号が前記バイタルスペクトルの代表値に基づいて取得される(xiv)又は(xv)に記載の存否判定装置、
(xvii) 前記バイタルスペクトルの代表値が、該バイタルスペクトルの最大値と最小値と平均値と中央値と総和の何れかとされている(xvi)に記載の存否判定装置、
(xviii) 前記圧電型センサシートの前記検出信号を周波数解析して、前記バイタルスペクトルの周波数域であるバイタル周波数域よりも高周波数域のパワースペクトルであるノイズスペクトルを算出するノイズ周波数解析部を備えており、該ノイズスペクトルに基づくノイズ信号に対する前記心弾動信号の比であるS/N比と前記不存在閾値との比較によって前記不存在判定部による前記不存在判定が実行される(xiv)~(xvii)の何れか一項に記載の存否判定装置、
(xix) 前記圧電型センサシートが前記生体を載せるクッション体の下側に配されている(xiv)~(xviii)の何れか一項に記載の存否判定装置、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、不存在を心弾動に基づいて判定することにより、生体の体重等による圧力に基づいた判定に比して、より精度の高い判定が可能になる。また、患者の見守り等において問題となり易い、患者がベッドからいなくなるなどの不存在判定について、単に寝返りによる姿勢の変化等で圧電型センサシートへ入力される振動の振幅が小さくなった場合にも直ちに不存在と判定されるのではなく、不存在判定時間を設けたことから、より高精度な判定が可能となる。
上記(ii)に記載の発明では、不存在判定時間を上記範囲内で設定することにより、正確な判定が可能になる。即ち、不存在判定時間が短すぎると、誤検出などで心弾動信号のレベルが一時的に低下した場合に、誤判定が生じてしまうおそれがある。また、不存在判定時間が長すぎると、検出領域から一度離れてから戻った場合にも不存在判定されないおそれがある。
上記(iii)に記載の発明では、目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
上記(iv)に記載の発明では、例えば不存在閾値と比較する値として、心弾動信号の所定時間内の最大値を採用することで簡易に心拍波形の最大振幅を得ることができて、存否を高精度に判定することができる。また、心弾動信号の所定時間内の最小値や平均値、中央値を採用すれば、ノイズによって不存在時に誤って存在判定される誤判定が生じ難くなる。或いは、心弾動信号の総和を採用すれば、不存在判定の演算処理が簡単になることで負荷の軽減が図られる。
上記(v)に記載の発明では、存在判定において、仮に外部からの振動ノイズなどに起因して一時的に振動のレベルが増大しても、直ちに存在していると誤判定されることがなく、より正確な判定が可能になる。
上記(vi)に記載の発明では、存在判定時間を上記範囲内で設定することにより、正確な判定が可能になる。即ち、存在判定時間が短すぎると、外部からの振動などに対して誤った存在判定がなされてしまうおそれがある。また、存在判定時間が長すぎると、検出領域に短時間だけ居る場合に、正しく存在判定されないおそれがある。
上記(vii)に記載の発明では、目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
上記(viii)に記載の発明では、例えば存在閾値と比較する値として、心弾動信号の所定時間内の最大値を採用することで簡易に心弾動波形の最大振幅を得ることができて、存否を高精度に判定することができる。また、心弾動信号の所定時間内の最小値や平均値、中央値を採用すれば、ノイズによって不存在時に誤って存在判定される誤判定が生じ難くなる。或いは、心弾動信号の総和を採用すれば、存在判定の演算処理が簡単になることで負荷の軽減が図られる。
上記(ix)に記載の発明では、存在と不存在をより精度よく判定することができる。
上記(x)に記載の発明では、存在と不存在を更に精度よく判定することができる。
上記(xi)に記載の発明では、臥位での寝返りや座位での座り直しなどの体動をより正確に検知することができる。
上記(xii)に記載の発明では、信号増幅部によって増幅された心弾動信号に基づいて存在判定と不存在判定を行うことにより、判定精度の向上が図られる。
上記(xiii)に記載の発明では、心弾動信号に基づいて不存在判定を行うに際して、例えば心弾動信号を直接に用いて判定する場合よりも、心弾動信号から得られた心拍波形を用いて判定することで、ノイズ等による影響を抑えて判定精度の向上を図ることも可能になる。また、例えば心拍波形をモニタに表示等することもできて、モニタに表示される心拍波形の有無で使用者の存否が判定されるようになっていてもよい。
上記(xiv)に記載の発明では、圧電型センサシートに入力される振動の振幅が小さく、検出信号が微弱な場合にも、検出信号の周波数解析結果に基づいて高精度な存否判定が可能になる。それゆえ、例えば、圧電型センサシートがマットレスの下側に敷かれるなどして、圧電型センサシートに対する入力の振幅が小さい場合にも、使用者の存否を精度よく判定することができる。
上記(xv)に記載の発明では、バイタルスペクトルが心弾動スペクトルに比して大きく得られる呼吸スペクトルを含むことにより、バイタルスペクトルを大きく得ることができる。それゆえ、検出信号が微弱な場合にも、バイタルスペクトルに基づいて取得される心弾動信号を強く得ることができて、存否判定を精度よく行うことができる。
上記(xvi)に記載の発明では、目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
上記(xvii)に記載の発明では、例えば不存在閾値と比較する値として、バイタルスペクトルの最大値に基づく心弾動信号を採用することにより、存否を高精度に判定することができる。また、バイタルスペクトルの最小値や平均値、中央値に基づく心弾動信号を採用すれば、不存在時に、ノイズによって誤って存在していると判定される誤判定が生じ難くなる。或いは、バイタルスペクトルの総和に基づく心弾動信号を採用すれば、不存在判定の演算処理が簡単になることで負荷の軽減が図られる。
上記(xviii)に記載の発明では、ノイズ信号に対する心弾動信号の比であるS/N比と不存在閾値とを比較して存否の判定を行うことにより、例えば、バイタル周波数域のパワースペクトルがホワイトノイズによって底上げされて不存在時に誤って存在すると判定される誤判定が生じ難くなる。なお、好適には、ノイズ信号はノイズスペクトルの代表値に基づいて取得される。ノイズスペクトルの代表値は、例えば、ノイズスペクトルの最大値、最小値、平均値、中央値、総和などから適宜に選択される。目的に応じた代表値を採用することにより、存否の高精度な判定や、ノイズによる誤判定の低減、存否判定の演算処理の簡略化などが図られる。
上記(xix)に記載の発明では、圧電型センサシートの上にクッション体があることによって、使用者の体動による圧電型センサシートのずれや変形などが防止される。また、圧電型センサシートの上面がクッション体で覆われることから、感度の高い圧電型センサシートを採用しても、検出信号が風などの影響を受け難い。
【符号の説明】
【0141】
10 存否判定装置(第一の実施形態)
12 圧電型センサシート
14 解析装置
16 センサ本体
18 圧電層
20a,20b 電極層
22a,22b 保護層
24 感圧部
26 制御器
28 コネクタ
30a,30b 配線
32 モニタ部
36 ベッド
38 ベルト部
40 心弾動信号取得部
42 信号増幅部
44 不存在判定部
46 存在判定部
48 体動判定部
50 心拍波形演算部
A 使用者(生体)
α 不存在閾値
β 存在閾値
γ 体動閾値
60 存否判定装置(第二の実施形態)
62 解析装置
64 バイタル周波数解析部
66 代表値設定部
68 心弾動信号取得部
70 ノイズ周波数解析部
72 ノイズ信号取得部
74 S/N比演算部
76 床板
78 マットレス