(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ゲーティングカメラ、自動車、車両用灯具、画像処理装置、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/894 20200101AFI20241127BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20241127BHJP
B60Q 1/24 20060101ALI20241127BHJP
G01S 7/495 20060101ALI20241127BHJP
G01S 17/18 20200101ALI20241127BHJP
【FI】
G01S17/894
B60Q1/00 C
B60Q1/24 Z
G01S7/495
G01S17/18
(21)【出願番号】P 2021548999
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020036106
(87)【国際公開番号】W WO2021060397
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019176006
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019176007
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019180897
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大騎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 昌之
(72)【発明者】
【氏名】伊多波 晃志
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-257983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0056498(US,A1)
【文献】国際公開第2019/167350(WO,A1)
【文献】特表2015-527761(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110416(WO,A1)
【文献】特開2014-197824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0234976(US,A1)
【文献】米国特許第04920412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G06T 1/00 - 1/40
3/00 - 5/50
9/00 - 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
奥行き方向について区切られた複数の撮影レンジの各々について前記照明装置による前記プローブ光の照射のタイミングと前記イメージセンサによる露光のタイミングを相違させることにより、それぞれに各撮影レンジに含まれる物体のみが写った複数のスライス画像を取得するカメラコントローラと、
所定の注目物体が複数のスライス画像に跨って含まれている
かを判断し、含まれていると判断された場合、当該複数のスライス画像を合成して当該注目物体の全体が含まれ
るとともに当該複数のスライス画像の一つのみに含まれる物体が除かれた最終画像を生成する画像処理部と、
を備えることを特徴とするゲーティングカメラ。
【請求項2】
前記所定の注目物体は車両であり、前記複数のスライス画像の一つのみに含まれる物体は人物であることを特徴とする請求項1に記載のゲーティングカメラ。
【請求項3】
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
奥行き方向について区切られた複数の撮影レンジの各々について前記照明装置による前記プローブ光の照射のタイミングと前記イメージセンサによる露光のタイミングを相違させることにより、それぞれに各撮影レンジに含まれる物体のみが写った複数のスライス画像を取得するカメラコントローラと、
前記複数のスライス画像を合成して合成画像を生成し、当該合成画像に基づいて最終画像を生成する画像処理部と、
を備えており、
前記合成画像を形成する複数の画素の各々は、前記複数のスライス画像において対応する画素が有する複数の輝度値から所定の条件を満たすように選ばれた一つの輝度値を示す輝度値情報と、当該一つの輝度値を有する画素を含む前記複数のスライス画像の一つに対応する距離を示す距離情報とを含んでおり、
前記最終画像は、前記距離情報に基づいて抽出された少なくとも一つの注目物体を含んでいることを特徴とするゲーティングカメラ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載のゲーティングカメラと、
前記ゲーティングカメラの出力を処理する演算処理装置と、
を備えることを特徴とする自動車。
【請求項5】
請求項1から
3のいずれかに記載のゲーティングカメラを備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
ゲーティングカメラ用の画像処理装置であって、
前記ゲーティングカメラは、
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
奥行き方向について区切られた複数の撮影レンジの各々について前記照明装置による前記プローブ光の照射のタイミングと前記イメージセンサによる露光のタイミングを相違させることにより、それぞれに各撮影レンジに含まれる物体のみが写った複数のスライス画像を取得するカメラコントローラと、
を備え、
前記画像処理装置は、
所定の注目物体が複数のスライス画像に跨って含まれている
かを判断し、含まれていると判断された場合、当該複数のスライス画像を合成して当該注目物体の全体が含まれ
るとともに当該複数のスライス画像の一つのみに含まれる物体が除かれた最終画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
ゲーティングカメラにおける画像処理方法であって、
前記ゲーティングカメラは、
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
奥行き方向について区切られた複数の撮影レンジの各々について前記照明装置による前記プローブ光の照射のタイミングと前記イメージセンサによる露光のタイミングを相違させることにより、それぞれに各撮影レンジに含まれる物体のみが写った複数のスライス画像を取得するカメラコントローラと、
を備え、
前記画像処理方法は、
所定の注目物体が複数のスライス画像に跨って含まれているかを判断するステップと、
所定の注目物体が複数のスライス画像に跨って含まれている
かを判断し、含まれていると判断された場合、当該複数のスライス画像を合成して当該注目物体の全体が含まれ
るとともに当該複数のスライス画像の一つのみに含まれる物体が除かれた最終画像を生成するステップと、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
ゲーティングカメラ用の画像処理装置であって、
前記ゲーティングカメラは、
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
奥行き方向について区切られた複数の撮影レンジの各々について前記照明装置による前記プローブ光の照射のタイミングと前記イメージセンサによる露光のタイミングを相違させることにより、それぞれに各撮影レンジに含まれる物体のみが写った複数のスライス画像を取得するカメラコントローラと、
を備え、
前記画像処理装置は、
前記複数のスライス画像を合成することにより合成画像を生成し、当該合成画像に基づいて最終画像を生成し、
前記合成画像を形成する複数の画素の各々は、前記複数のスライス画像において対応する画素が有する複数の輝度値から所定の条件を満たすように選ばれた一つの輝度値を示す輝度値情報と、当該一つの輝度値を有する画素を含む前記複数のスライス画像の一つに対応する距離を示す距離情報とを含んでおり、
前記最終画像は、前記距離情報に基づいて抽出された少なくとも一つの注目物体を含んでいることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
ゲーティングカメラにおける画像処理方法であって、
前記ゲーティングカメラは、
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
奥行き方向について区切られた複数の撮影レンジの各々について前記照明装置による前記プローブ光の照射のタイミングと前記イメージセンサによる露光のタイミングを相違させることにより、それぞれに各撮影レンジに含まれる物体のみが写った複数のスライス画像を取得するカメラコントローラと、
を備え、
前記画像処理方法は、
前記複数のスライス画像を合成して合成画像を生成するステップと、
前記合成画像に基づいて最終画像を生成するステップと、
を備え、
前記合成画像を形成する複数の画素の各々は、前記複数のスライス画像において対応する画素が有する複数の輝度値から所定の条件を満たすように選ばれた一つの輝度値を示す輝度値情報と、当該一つの輝度値を有する画素を含む前記複数のスライス画像の一つに対応する距離を示す距離情報とを含んでおり、
前記最終画像は、前記距離情報に基づいて抽出された少なくとも一つの注目物体を含んでいることを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーティングカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転やヘッドランプの配光の自動制御のために、車両の周囲に存在する物体の位置および種類をセンシングする物体識別システムが利用される。物体識別システムは、センサと、センサの出力を解析する演算処理装置を含む。センサは、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)、ミリ波レーダ、超音波ソナーなどの中から、用途、要求精度やコストを考慮して選択される。
【0003】
一般的な単眼のカメラからは、奥行きの情報を得ることができない。したがって、異なる距離に位置する複数の物体が重なっている場合に、それらを分離することが難しい。
【0004】
奥行き情報が得られるカメラとして、TOFカメラが知られている。TOF(Time Of Flight)カメラは、発光デバイスによって赤外光を投光し、反射光がイメージセンサに戻ってくるまでの飛行時間を測定し、飛行時間を距離情報に変換した画像を得るものである。
【0005】
本出願人は、TOFカメラに代わるアクティブセンサとして、ゲーティングカメラ(Gating CameraあるいはGated Camera)を提案している(特許文献1,2)。ゲーティングカメラは、撮影範囲を複数の撮影レンジに区切り、撮影レンジごとに露光タイミングおよび露光時間を変化させて複数回、撮像する。これにより、対象の撮影レンジごとにスライス画像が得られ、各スライス画像は対応する撮影レンジに含まれる物体のみを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-257983号公報
【文献】国際公開WO2017/110413A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1. 本発明者らは、ゲーティングカメラについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
図1(a)、(b)は、ゲーティングカメラにおいて発生する問題を説明する図である。
図1(a)は、ゲーティングカメラによる撮影シーンの一例である。撮影レンジの奥行きを狭くすると、ある物体が、複数の撮影レンジに跨がって存在することとなる。
図1(a)では、撮影レンジの奥行きを1.5mとして、自動車を正面から撮影する様子を示す。
図1(b)は、
図1(a)の撮影シーンにおいて得られる複数のスライス画像を示す。ある撮影レンジに対応するスライス画像IMGs
iには、自動車のバンパーやボンネットの一部のみが映り、別のスライス画像IMGs
i+1には、自動車のボンネットの一部やフロントガラスのみが写る。したがって、個々のスライス画像IMGsからは、物体が何であるかを認識することは難しい。
【0008】
この問題は、撮影レンジの奥行きを数十m程度まで拡大することにより解決することができる。しかしながら撮影レンジの奥行きを大きくしすぎると、あるレンジに注目物体以外の物体が含まれる可能性が高くなり、ゲーティングカメラの利点が損なわれる。
【0009】
1. 本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、撮影レンジの奥行きを小さくしつつ、物体全体を含む画像を生成可能なゲーティングカメラの提供にある。
【0010】
2. ゲーティングカメラにおいて、イメージセンサから画像処理部への画像の伝送速度がボトルネックとなる。つまりイメージセンサのフレームレートは非常に高く設定できるが、ゲーティングカメラが全撮影レンジのスライス画像を生成するのに要する時間(以下、ゲーティングカメラの撮影時間という)は、伝送速度によって制限を受けることとなる。
【0011】
本開示は、係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、撮影時間を短縮可能なゲーティングカメラの提供にある。
【0012】
3. ゲーティングカメラをはじめとするアクティブセンサは、物体にプローブ光を照射し、その反射光を検出する。アクティブセンサは、主として、物体に光を照射する投光器(照明)と、物体からの反射光を検出する光センサを備える。アクティブセンサは、プローブ光の波長とセンサの感度波長域を合わせることで、パッシブセンサよりも外乱に対する耐性を高めることができるという利点を有する。
【0013】
アクティブセンサの近傍に、アクティブセンサの照明装置と同じ波長を有し、整数倍あるいは整数分の周期で発光するパルス光源が存在すると、アクティブセンサの検出精度が著しく低下する。
【0014】
本開示は係る課題に鑑みて成されたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、周囲のパルス光源の影響を低減可能なアクティブセンサの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0016】
1. 一実施形態に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、奥行き方向を複数の撮影レンジに区切り、撮影レンジをシフトしながら、各撮影レンジにおいてイメージセンサが出力するスライス画像が、対応する撮影レンジに含まれる物体のみを含むように、照明装置によるプローブ光の照射のタイミングと、イメージセンサによる露光のタイミングを制御するカメラコントローラと、複数の撮影レンジに対応する複数のスライス画像にもとづいて、注目物体(OOI:Object Of Interest)の全体を含む最終画像を生成する画像処理部と、を備える。
【0017】
この態様によれば、撮影レンジの奥行きを小さくしつつ、注目物体の全体を含む最終画像を生成できる。
【0018】
最終画像は、注目物体のみを含んでもよい。注目物体以外を除去することにより、ディスプレイに表示した場合の視認性を高めることができる。あるいは、注目物体の物体認識などの後段の処理が容易となる。
【0019】
画像処理部は、複数のスライス画像を合成し、各画素が距離情報を有する合成画像を生成し、合成画像の中から注目物体を含む領域を抽出してもよい。中間画像の距離情報を参照することにより、物体の分離が容易となる。
【0020】
一実施形態に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、奥行き方向を複数の撮影レンジに区切り、撮影レンジをシフトしながら、各撮影レンジにおいてイメージセンサが出力するスライス画像が、対応する撮影レンジに含まれる物体のみを含むように、照明装置によるプローブ光の照射のタイミングと、イメージセンサによる露光のタイミングを制御するカメラコントローラと、複数の撮影レンジに対応する複数のスライス画像を合成し、各画素が距離情報を有する合成画像を生成する画像処理部と、を備える。
【0021】
中間画像の距離情報を参照することにより、物体の分離が容易となる。
【0022】
2. 一実施形態に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、奥行き方向を複数の撮影レンジに区切り、撮影レンジをシフトしながら、各撮影レンジにおいてイメージセンサが出力するスライス画像が、対応する撮影レンジに含まれる物体のみを含むように、照明装置によるプローブ光の照射のタイミングと、イメージセンサによる露光のタイミングを制御するカメラコントローラと、イメージセンサからスライス画像を受信し、スライス画像を処理する画像処理部と、を備える。カメラコントローラは、イメージセンサから画像処理部に伝送されるスライス画像のデータ量を適応的に制御可能に構成される。
【0023】
この態様によれば、状況に応じて伝送するスライス画像のデータ量を削減することにより、伝送時間を短縮でき、ひいては撮影時間を短縮できる。
【0024】
カメラコントローラは、イメージセンサあるいは、イメージセンサと画像処理部の間のインタフェース(画像伝送回路)によって、スライス画像の一部をクロップさせることにより、伝送するスライス画像のサイズを小さくしてもよい。必要な部分だけをクロップして伝送することにより、データ量を削減できる。
【0025】
クロップに代えて、あるいはそれに加えて、ビニングや間引き処理によって解像度を低下させて、データ量を削減してもよい。
【0026】
近距離の物体はスライス画像内を相対的に速く移動するため、ある時点を基準にクロップ領域を決めたとしても、その後、クロップ領域から物体が逸脱する可能性が高くなる。一方、遠距離の物体は、スライス画像の中を相対的に遅く移動するため、クロップ領域内に留まる時間が長くなる。また遠方の物体は、消失点近傍に集中的に現れる可能性が高い。そこで、所定距離より近い撮影レンジ群に対応するスライス画像群については、常にクロップせずに伝送され、所定距離より遠い撮影レンジ群に対応するスライス画像群については、クロップの有無が制御されてもよい。これにより、注目物体を含むスライス画像を伝送することができる。
【0027】
ゲーティングカメラは、複数のスライス画像をクロップせずに伝送し、クロップされない複数のスライス画像にもとづいて、その後の複数のスライス画像のクロップの有無を決定してもよい。これにより、クロップされないスライス画像にもとづいて、将来のスライス画像の状況を予測、推定し、クロップの有無を決定することができる。
【0028】
第1モードにおいて、すべての撮影レンジに対応するすべてのスライス画像がクロップせずに伝送され、第1モードにおいて伝送された複数のスライス画像のうち、所定距離より遠い撮影レンジ群に対応する遠方スライス画像群に、単一の注目物体のみが含まれる場合、第2モードに遷移してもよい。第2モードにおいて、遠方スライス画像群について、注目物体を包含する注目領域をクロップして伝送してもよい。
【0029】
照明装置は、プローブ光を集光、拡散させることにより、照射範囲を可変に構成されてもよい。カメラコントローラは、クロップして伝送すべきスライス画像を撮影する際に、照明装置にプローブ光を集光させてもよい。遠方の撮影レンジを撮影する際には、プローブ光とその反射光の減衰量が大きいため、1回の露光では、十分な明るさのスライス画像を生成できない。このような場合、遠方の撮影レンジについては、複数回の露光を行い、露光ごとに得られるスライス画像をコンポジットして、1枚のスライス画像を生成する必要がある。プローブ光を集光することにより、1回の露光で得られるスライス画像の明るさを明るくできるので、露光の回数、ひいてはスライス画像の伝送の回数を減らすことができる。これにより、撮影時間を短縮できる。
【0030】
一実施形態に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置であって、プローブ光を集光、拡散させることにより、照射範囲を可変に構成される照明装置と、イメージセンサと、奥行き方向を複数の撮影レンジに区切り、撮影レンジをシフトしながら、各撮影レンジにおいてイメージセンサが出力するスライス画像が、対応する撮影レンジに含まれる物体のみを含むように、照明装置によるプローブ光の照射のタイミングと、イメージセンサによる露光のタイミングを制御するカメラコントローラと、イメージセンサからスライス画像を受信し、スライス画像を処理する画像処理部と、を備える。カメラコントローラは、画像処理部の検出結果にもとづいて、照明装置の照射範囲を制御する。
【0031】
遠方の撮影レンジを撮影する際、あるいは濃霧の中で撮影する際には、プローブ光とその反射光の減衰量が大きくなる。この場合、1回の露光では、十分な明るさのスライス画像を生成できず、複数回の露光を行い、露光ごとに得られるスライス画像をコンポジットして、1枚のスライス画像を生成する必要がある。プローブ光を集光することにより、1回の露光で得られるスライス画像の明るさを明るくできるので、露光の回数、ひいてはスライス画像の伝送の回数を減らすことができる。これにより、撮影時間を短縮できる。
【0032】
第1モードにおいて、プローブ光は、全照射範囲に照射されてもよい。画像処理部が、第1モードにおいて、所定の撮影レンジのスライス画像内に注目物体を検出したときに、第2モードに遷移し、第2モードにおいて、所定の撮影レンジを撮影する際に、プローブ光は、注目物体を含む注目領域に照射されてもよい。
【0033】
一実施形態に係るアクティブセンサは、不均一な時間間隔で複数回、パルス発光する発光装置と、発光装置の発光ごとに、それと同期したタイミングで物体からの反射光を検出し、複数回の検出結果を積算して出力する光センサと、を備える。
【0034】
光センサは、同じアクティブセンサ内の発光装置と同期しているため、発光タイミングが変化しても、光センサには、同じタイミングで物体からの反射光が入射することとなる。したがって反射光の検出値が積算されて大きな信号成分を得ることができる。他のノイズ光源の発光タイミングは光センサの露光タイミングとは非同期となるため、ノイズ光源からのノイズ光が光センサに入射するタイミングが、光センサの露光タイミングに含まれる頻度を低下させることができる。これにより、周囲のパルス光源の影響を低減できる。
【0035】
発光装置の1回の発光と光センサの1回の露光を含む1回のセンシングは、所定周期で繰り返し行われ、センシングごとに、所定周期内における発光装置の発光タイミングが変化してもよい。
【0036】
アクティブセンサは、奥行き方向について複数のレンジに区切り、レンジ毎に、発光と撮像の時間差を変化させることにより、複数のレンジに対応する複数の画像を取得可能なゲーティングカメラであってもよい。
【0037】
アクティブセンサは、TOF(Time Of Flight)カメラであってもよい。
【0038】
アクティブセンサは、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)であってもよい。
【発明の効果】
【0039】
一実施形態によれば、撮影レンジの奥行きを小さくしつつ、注目物体の全体を含む画像を生成できる。一実施形態によれば、ゲーティングカメラの撮影時間を短縮できる。一実施形態によれば、周囲のアクティブセンサから受ける影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1(a)、(b)は、ゲーティングカメラにおいて発生する問題を説明する図である。
【
図2】実施形態1に係るゲーティングカメラのブロック図である。
【
図3】ゲーティングカメラの撮影動作を説明する図である。
【
図5】
図4の走行シーンにおいて得られる全スライスIMGs
1~IMGs
Nのうちの3枚のスライス画像IMGs
i~IMGs
i+2を示す図である。
【
図6】画像処理部が生成する最終画像IMGfを示す図である。
【
図7】画像処理部が生成する合成画像IMGcを説明する図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、画像処理部における合成画像IMGcの生成処理の具体例を示す図である。
【
図9】
図9(a)~(c)は、合成画像IMGcにもとづく最終画像IMGfの生成を説明する図である。
【
図10】実施形態2に係るゲーティングカメラのブロック図である。
【
図11】ゲーティングカメラの撮影動作を説明する図である。
【
図12】
図12(a)、(b)は、スライス画像IMGsのクロップ処理の一例を説明する図である。
【
図13】
図13(a)、(b)は、スライス画像の撮影および伝送を説明する図である。
【
図14】ゲーティングカメラにおけるモード制御の一例のフローチャートである。
【
図15】第2モードに遷移する状況の一例を示す図である。
【
図16】実施形態3に係るゲーティングカメラのブロック図である。
【
図17】実施形態4に係るゲーティングカメラのブロック図である。
【
図18】実施形態5に係るアクティブセンサのブロック図である。
【
図19】発光装置の発光タイミングと、光センサの露光タイミングの関係を示すタイムチャートである。
【
図20】比較技術に係るアクティブセンサの動作波形図である。
【
図22】一実施例に係るゲーティングカメラのブロック図である。
【
図23】ゲーティングカメラの動作を説明する図である。
【
図24】
図24(a)、(b)は、ゲーティングカメラにより得られる画像を説明する図である。
【
図25】ゲーティングカメラあるいはアクティブセンサを内蔵する車両用灯具を示す図である。
【
図26】物体識別システムを備える車両用灯具を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0042】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係るゲーティングカメラ20のブロック図である。ゲーティングカメラ20は、奥行き方向について複数N個(N≧2)の撮影レンジRNG
1~RNG
Nに区切って撮像を行う。例えば1つの撮影レンジの奥行きは1~2m程度(たとえば1.5m)であり、N=100とする。
【0043】
ゲーティングカメラ20は、照明装置22、イメージセンサ24、カメラコントローラ26、画像処理部28を備える。
【0044】
照明装置22は、カメラコントローラ26から与えられる発光タイミング信号S1と同期して、プローブ光L1を車両前方に照射する。プローブ光L1は赤外光であることが好ましいが、その限りでなく、所定の波長を有する可視光であってもよい。
【0045】
イメージセンサ24は、カメラコントローラ26から与えられる露光タイミング信号S2と同期した露光制御が可能であり、スライス画像IMGsを生成可能に構成される。イメージセンサ24は、プローブ光L1と同じ波長に感度を有しており、物体OBJが反射した反射光(戻り光)L2を撮影し、スライス画像IMGsを出力する。
【0046】
カメラコントローラ26は、撮影レンジRNG1~RNGNごとに予め定められた発光タイミングと露光タイミングを保持している。カメラコントローラ26は、ある撮影レンジRNGiを撮影するとき、その撮影レンジに対応する発光タイミングと露光タイミングにもとづいて発光タイミング信号S1および露光タイミング信号S2を生成し、撮影を行う。i番目のスライス画像IMGsiには、対応する撮影レンジRNGiに含まれる物体が写ることとなる。
【0047】
本実施形態においてカメラコントローラ26は、撮影レンジRNGiを奥行き方向にシフトしながら撮影を行い、全撮影レンジRNG1~RNGNについて、スライス画像IMGs1~IMGsNを生成する。
【0048】
図3は、ゲーティングカメラ20の撮影動作を説明する図である。
図3にはi番目の撮影レンジRNG
iを興味レンジ(ROI:Range Of Interest)として測定するときの様子が示される。照明装置22は、発光タイミング信号S1と同期して、時刻t
0~t
1の間の発光期間τ
1の間、発光する。最上段には、横軸に時間、縦軸に距離をとった光線のダイアグラムが示される。ゲーティングカメラ20から、撮影レンジRNG
iの手前の境界までの距離をd
MINi、撮影レンジRNG
iの奥側の境界までの距離をd
MAXiとする。
【0049】
ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMINiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMINiは、
TMINi=2×dMINi/c
である。cは光速である。
【0050】
同様に、ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMAXiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMAXiは、
TMAXi=2×dMAXi/c
である。
【0051】
撮影レンジRNGiに含まれる物体OBJを撮影したいとき、カメラコントローラ26は、時刻t2=t0+TMINiに露光を開始し、時刻t3=t1+TMAXiに露光を終了するように、露光タイミング信号S2を生成する。これが1回の露光動作である。
【0052】
i番目の撮影レンジRNGiを撮影する際に、複数回の露光を繰り返し行ってもよい(多重露光)。この場合、カメラコントローラ26は、所定の周期τ2で、上述の露光動作を複数回にわたり繰り返せばよい。
【0053】
図2に戻る。画像処理部28は、複数の撮影レンジRNG
1~RNG
Nに対応する複数のスライス画像IMGs
1~IMGs
Nが入力される。画像処理部28は、複数のスライス画像IMGs
1~IMGs
Nにもとづいて、注目物体(OOI)を含む1枚の最終画像IMGfを生成する。
【0054】
以上がゲーティングカメラ20の構成である。続いてその動作を説明する。
【0055】
図4は、撮影シーンの一例を示す図である。ゲーティングカメラ20の前方には、車両OBJ1と、歩行者OBJ2が存在する。車両OBJ1は、複数の撮影レンジRNG
i~RNG
i+2に跨がって存在しており、歩行者OBJ2は、撮影レンジRNG
iに含まれている。
【0056】
図5は、
図4の走行シーンにおいて得られる全スライスIMGs
1~IMGs
Nのうちの3枚のスライス画像IMGs
i~IMGs
i+2を示す図である。スライス画像IMGs
iには、対応する撮影レンジRNG
iに含まれる物体のみが写ることとなる。したがって、スライス画像IMGs
iには、歩行者2と、車両OBJ1の一部OBJ1
Aが含まれ、スライス画像IMGs
i+1には、車両OBJ1の一部OBJ1
Bが含まれ、スライス画像IMGs
i+2には、車両OBJ1の一部OBJ1
Cが含まれる。
【0057】
たとえば画像処理部28は、全スライス画像IMGs
1~IMGs
Nをスキャンし、それに含まれる注目物体の候補を設定する。この例では画像処理部28は、スライス画像IMGs
iに含まれる車両の一部分を検出すると、車両を注目物体として設定する。そして、全スライス画像IMGs
1~IMGs
Nを改めてスキャンし、同じ車両OBJ1の別の部分OBJ1
B,OBJ1
Cを含むスライス画像IMGs
i+1,IMGs
i+2を検出する。そして、これらのスライス画像IMGs
i~IMGs
i+2の中から、同一の注目物体を構成する部分OBJ1
A~OBJ1
Cを抽出して、それらを合成する。
図6は、画像処理部28が生成する最終画像IMGfを示す図である。この最終画像IMGfには、注目物体ではない歩行者OBJ2は含まれていないことに留意されたい。
【0058】
以上がゲーティングカメラ20の動作である。このゲーティングカメラ20によれば、撮影レンジRNGの奥行きを小さくしつつ、注目物体を抽出し、その全体を含む最終画像IMGfを生成できる。
【0059】
ゲーティングカメラ20は、注目物体以外の物体を、最終画像から取り除くことができるという利点を有する。この利点は、
図4のような撮影シーンのほか、降雪時など、特定の状況下において特に発揮される。降雪時は、小さい多くの雪粒が各スライス画像に含まれる。ゲーティングカメラ20によれば、雪粒を最終画像IMGfから取り除くことができるため、視認性に優れた画像を生成できる。
【0060】
続いて画像処理部28における処理の具体例を説明する。画像処理部28は、最終画像IMGfの生成工程において、合成画像IMGcを生成し、合成画像IMGcにもとづいて、最終画像IMGfを生成してよい。
【0061】
図7は、画像処理部28が生成する合成画像IMGcを説明する図である。スライス画像IMGsおよび中間画像IMGcは、X×Yピクセルを有する。j行i列目のピクセルをP
ijと表記する。中間画像IMGcは、全スライス画像IMGs
1~IMGs
Nを合成した画像である。中間画像IMGcの各画素P
ijは、全スライス画像IMGs
1~IMGs
NのひとつIMGs
k(k=1~N)の対応する画素P
ijの輝度値L、またはその輝度値を演算して得られる輝度値L’を有する。さらに中間画像IMGcの各画素P
ijは、その輝度値の由来となるスライス画像IMGs
kの識別子(この例ではk)を含む。この識別子kは物体までの距離情報と捉えることができ、したがって中間画像IMGcの各画素P
ijは、識別子kに代えて、その画素の起源となった物体までの距離dを用いてもよい。本明細書では、各画素P
ijを[L,k]の形式で表す。
【0062】
なお、中間画像IMGcのフォーマットは特に限定されない。たとえば中間画像IMGcは、輝度値を表すX×Yの画像データと、距離情報を表すX×Yの画像データの2枚の画像データを含んでもよい。
【0063】
図8(a)~(c)は、画像処理部28における合成画像IMGcの生成処理の具体例を示す図である。ここでは理解の容易化のため、N=6とし、各画素の階調を0~7の8階調(3ビット)で表すものとする。
図8(a)には、全撮影レンジに対応する複数のスライス画像IMGs
1~IMGs
6が示される。
【0064】
合成の方法は特に限定されないが、たとえば以下の方法が例示される。
【0065】
図8(b)には、第1の生成方法により得られる中間画像IMGcが示される。第1の生成方法では、中間画像IMGcの各画素P
ijの輝度値は、全スライス画像IMGs
1~IMGs
6それぞれの対応する画素P
ijの輝度値のうち、最大値(またはその最大値を演算して得られる値)を有する。
【0066】
図8(c)には、第2の生成方法により得られる中間画像IMGcが示される。第2の生成方法では、中間画像IMGcの各画素P
ijの輝度値は、全スライス画像IMGs
1~IMGs
6それぞれの対応する画素P
ijの輝度値であって、有効な値を有する輝度値のうち、最も手前(すなわち距離が近い)スライス画像の輝度値(またはそれを演算して得られる値)を有する。有効な値は、非ゼロであってもよいし、所定のしきい値より大きい値であってもよい。
【0067】
以上が合成画像IMGcの説明である。
図9(a)~(c)は、合成画像IMGcにもとづく最終画像IMGfの生成を説明する図である。
【0068】
合成画像IMGcは、輝度値Lに加えて、物体までの距離を表す識別子kを含んでおり、これにより注目物体OOIの分離が容易となる。なぜなら、識別子kに隔たりある画素は、別の物体に属する可能性が高く、識別子kが近い画素は、同じ物体に属する可能性が高いという前提のもと、物体抽出処理のアルゴリズムを作成することができるからである。
【0069】
合成画像IMGcに、複数の注目物体OOI
1,OOI
2が含まれる場合、
図9(b)に示すように、注目物体ごとに最終画像IMGf
1,IMGf
2を生成してもよい。
【0070】
あるいは合成画像IMGcに、複数の注目物体OOI
1,OOI
2が含まれる場合に、
図9(c)に示すように、複数の注目物体を含む1枚の最終画像IMGfを生成してもよい。
【0071】
合成画像IMGcを一旦生成した後は、もとの複数のスライス画像IMGc1~IMGsNのデータを破棄することができる。これにより、メモリ容量を削減できるという利点もある。
【0072】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係るゲーティングカメラ20のブロック図である。ゲーティングカメラ20は、奥行き方向について複数N個(N≧2)の撮影レンジRNG
1~RNG
Nに区切って撮像を行う。例えば1つの撮影レンジの奥行きdは1~2m程度(たとえば1.5m)であり、N=100とする。
【0073】
ゲーティングカメラ20は、照明装置22、イメージセンサ24、カメラコントローラ32、画像処理部34を備える。
【0074】
照明装置22は、カメラコントローラ32から与えられる発光タイミング信号S1と同期して、プローブ光L1を車両前方に照射する。プローブ光L1は赤外光であることが好ましいが、その限りでなく、所定の波長を有する可視光であってもよい。
【0075】
イメージセンサ24は、カメラコントローラ32から与えられる露光タイミング信号S2と同期した露光制御が可能であり、スライス画像IMGsを生成可能に構成される。イメージセンサ24は、プローブ光L1と同じ波長に感度を有しており、物体OBJが反射した反射光(戻り光)L2を撮影し、スライス画像IMGsを出力する。
【0076】
カメラコントローラ32は、撮影レンジRNG1~RNGNごとに予め定められた発光タイミングと露光タイミングを保持している。カメラコントローラ32は、ある撮影レンジRNGiを撮影するとき、その撮影レンジに対応する発光タイミングと露光タイミングにもとづいて発光タイミング信号S1および露光タイミング信号S2を生成し、撮影を行う。i番目のスライス画像IMGsiには、対応する撮影レンジRNGiに含まれる物体が写ることとなる。
【0077】
本実施形態においてカメラコントローラ32は、撮影レンジRNGiを奥行き方向にシフトしながら撮影を行い、全撮影レンジRNG1~RNGNについて、スライス画像IMGs1~IMGsNを生成する。
【0078】
図11は、ゲーティングカメラ20の撮影動作を説明する図である。
図11にはi番目の撮影レンジRNG
iを測定するときの様子が示される。照明装置22は、発光タイミング信号S1と同期して、時刻t
0~t
1の間の発光期間τ
1の間、発光する。最上段には、横軸に時間、縦軸に距離をとった光線のダイアグラムが示される。ゲーティングカメラ20から、撮影レンジRNG
iの手前の境界までの距離をd
MINi、撮影レンジRNG
iの奥側の境界までの距離をd
MAXiとする。
【0079】
ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMINiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMINiは、
TMINi=2×dMINi/c
である。cは光速である。
【0080】
同様に、ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMAXiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMAXiは、
TMAXi=2×dMAXi/c
である。
【0081】
撮影レンジRNGiに含まれる物体OBJを撮影したいとき、カメラコントローラ32は、時刻t2=t0+TMINiに露光を開始し、時刻t3=t1+TMAXiに露光を終了するように、露光タイミング信号S2を生成する。これが1回の露光動作である。
【0082】
i番目の撮影レンジRNGiを撮影する際に、複数回の露光を繰り返し行ってもよい(多重露光)。この場合、カメラコントローラ32は、所定の周期τ2で、上述の露光動作を複数回にわたり繰り返せばよい。
【0083】
図10に戻る。画像処理部34は、イメージセンサ24からスライス画像IMGs
i(i=1,2,…N)を受け、受信したスライス画像IMGs
iを処理する。
【0084】
カメラコントローラ32と画像処理部34は、別々のハードウェアとして実装してもよいし、単一のハードウェアに実装してもよい。たとえばカメラコントローラ32と画像処理部34は、マイコンなどの演算処理装置30と、それにより実行されるソフトウェアプログラムの組み合わせによって実装してもよい。
【0085】
イメージセンサ24と演算処理装置30の間はインタフェース26を介して接続されている。インタフェース26は、イメージセンサ24から画像処理部34にスライス画像IMGsを伝送する。インタフェース26の種類は特に限定されないが、たとえばMIPI(Mobile Industry Processor Interface)やUSB(Universal Serial Bus)などを採用できる。
【0086】
本実施形態において、カメラコントローラ32は、イメージセンサ24とインタフェース26の少なくとも一方を制御し、イメージセンサ24から画像処理部34に伝送されるスライス画像IMGsのデータ量を適応的に制御可能に構成される。
【0087】
本実施形態において、カメラコントローラ32は、イメージセンサ24あるいはインタフェース26において、スライス画像IMGsの一部をクロップさせることにより、伝送されるスライス画像IMGsのサイズ(ピクセル数)を小さくし、それによりデータ量を削減する。カメラコントローラ32は、クロップの有無を指定する制御信号S3を生成する。この制御信号S3は、クロップする領域のサイズや位置の情報を含んでもよい。
【0088】
クロップの方式は特に限定されず、イメージセンサ24において、スライス画像IMGsの一部をクロップしてもよい。すなわち、イメージセンサ24が読み出す画像自体をクロップしてもよい。あるいはインタフェース26において、スライス画像IMGsの一部をクロップしてもよい。すなわち、イメージセンサ24からは全画素を読み出し、読み出したフルサイズの画像の一部の領域をクロップしてもよい。
【0089】
図12(a)、(b)は、スライス画像IMGsのクロップ処理の一例を説明する図である。
図12(a)に示すように、イメージセンサ24において得られるスライス画像IMGsの一部にのみ、物体OBJが存在する可能性が高い場合に、物体OBJを包含する範囲(注目領域ROI)をクロップし、クロップ後のスライス画像(クロップ画像)IMGs’を伝送する。
【0090】
図12(b)に示すように、イメージセンサ24において得られるスライス画像IMGsの広範囲にわたって、ひとつまたは複数の物体OBJが存在する可能性が高い場合には、元のスライス画像IMGsをクロップせずに伝送する。
【0091】
近距離の物体はスライス画像内を相対的に速く移動するため、ある時点を基準にクロップ領域を決めたとしても、その後、クロップ領域から物体が逸脱する可能性が高くなる。そこで本実施形態では、近距離のスライス画像については、常にクロップせずに伝送する。これにより、物体を見失うのを防止できる。
【0092】
一方、遠距離の物体は、スライス画像の中を相対的に遅く移動するため、クロップ領域内に留まる時間が長くなる。また遠方の物体は、消失点近傍に集中的に現れる可能性が高い。
【0093】
そこで、本実施形態では、所定距離(たとえば100m)より近い撮影レンジ群(10~100m)に対応するスライス画像群IMGs1~IMGsYについては、常にクロップせずに伝送し、所定距離(100m)より遠い撮影レンジ群(100~150m)に対応するスライス画像群IMGsY+1~IMGsNについて、クロップの有無を制御してもよい。
【0094】
なお、演算処理装置30からは、イメージセンサ24において得られる「伝送前の」スライス画像IMGsを見ることはできない。そこで本実施形態において、カメラコントローラ32は、過去に画像処理部34が受信した非クロップのスライス画像IMGsにもとづいて、現在のスライス画像IMGsの状態を推定し、クロップの有無を決定する必要がある。
【0095】
そこで、ゲーティングカメラ20は、全スライス画像IMGs1~IMGsNをクロップせずに伝送する。そして、クロップされないスライス画像群IMGs1~IMGNにもとづいて、その後のスライス画像群IMGs1~IMGsNのクロップの有無を決定してもよい。これにより、クロップされないスライス画像にもとづいて、将来のスライス画像の状況を予測、推定し、クロップの有無を決定することができる。このとき、クロップの有無に加えて、クロップ領域の大きさや位置を決定してもよい。
【0096】
以上がゲーティングカメラ20の基本構成である。続いてその動作を説明する。
【0097】
図13(a)、(b)は、スライス画像の撮影および伝送を説明する図である。
図13(a)では、すべての撮影レンジについて、イメージセンサ24により撮影されたスライス画像の全体がそのまま伝送される。
【0098】
図13(b)では、少なくともひとつの撮影レンジRNGにおいて、イメージセンサ24により撮影されたスライス画像IMGsの一部がクロップされ、クロップ後のスライス画像IMGs’が伝送される。クロップ後のスライス画像IMGs’のデータ量は、クロップ前のスライス画像IMGsのデータ量よりも小さいため、伝送時間は短縮される。
【0099】
以上がゲーティングカメラ20の動作である。続いてその利点を説明する。ゲーティングカメラ20の撮影時間は、すべての撮影レンジにおける、露光時間とスライス画像の伝送時間の合計と把握できる。ゲーティングカメラ20によれば、状況に応じて、イメージセンサ24から画像処理部34に伝送されるスライス画像IMGsのデータ量を削減することにより、伝送時間を短縮でき、ゲーティングカメラ20の撮影時間を短縮することができる。
【0100】
特に、スライス画像の一部をクロップすることにより、スライス画像のサイズを小さくしている。必要な部分だけをクロップして伝送することにより、データ量を削減できる。ここで、クロップの代わりに、ビニングや画素間引きを行うことによりデータ量を削減してもよい。ただしこの場合、画像処理部34に入力されるスライス画像の解像度が低下するため、後段の物体認識処理の精度が低下する可能性もある。これに対して、クロップを用いれば、解像度が低下しないため、物体認識の精度の低下の心配がない。
【0101】
続いて、クロップの有無の制御の具体例を説明する。
【0102】
ゲーティングカメラ20は、第1モードと第2モードが切り替え可能となっている。第1モードでは、すべての撮影レンジRNG1~RNGNに対応するすべてのスライス画像IMGs1~IMGsNがクロップせずに伝送される。第2モードでは、近距離の撮影レンジRNG1~RNGYに対応するスライス画像群IMGs1~IMGsYはクロップせずに伝送され、遠距離の撮影レンジRNGY+1~RNGNに対応するスライス画像群IMGsY+1~IMGsNがクロップして伝送される。
【0103】
第2モードへの遷移の有無は、第1モードにおいて伝送された複数のスライス画像IMGs1~IMGsNのうち、所定距離より遠い撮影レンジ群RNGY+1~RNGNに対応する遠方スライス画像群IMGsY+1~IMGsNにもとづいて決定される。具体的には、遠方スライス画像群IMGsY+1~IMGsNに単一の注目物体のみが含まれる場合に、第2モードに遷移する。第2モードでは、注目物体を含む部分が注目領域に設定され、注目部分のみがクロップして伝送される。
【0104】
図14は、ゲーティングカメラ20におけるモード制御の一例のフローチャートである。はじめに第1モードにセットされる(S100)。上述のように、第1モードでは、すべてのスライス画像IMGs
1~IMGs
Nが、画像処理部34に入力される(S102)。
【0105】
画像処理部34は、遠方スライス画像群IMGsY+1~IMGsY+Nに、単一の注目物体(OOI:Object Of Interest)のみが含まれる場合に(S104のY)、ゲーティングカメラ20を第2モードに移行させる(S106)。そうでない場合(S104のN)、第1モードのまま、処理S102に戻る。
【0106】
たとえば処理S104において、画像処理部34は、遠距離スライス画像群IMGsに注目物体を検出すると、その注目物体の位置を算出し、遠距離撮影レンジRNGY+1~RNGNに、注目物体以外の物体が存在しないと判定すると、第2モードに遷移してもよい。
【0107】
図15は、第2モードに遷移する状況の一例を示す図である。ゲーティングカメラ20は、車両800に搭載されている。車両800の前方には、対向車802が存在する。対向車は802は、遠方レンジRNG
Y+1~RNG
Nに存在する注目物体であり、遠方レンジRNG
Y+1~RNG
Nには対向車802以外の注目物体は存在しない。ゲーティングカメラ20はこのような状況を検出すると、第2モードに移行する。
【0108】
図14に戻る。第2モード(S106)に移行する際に、処理S104において検出した注目物体を含むROIのサイズおよび位置が決定される。そして第2モードの間、遠方スライス画像群IMGs
Y+1~IMGs
NについてROIがクロップされ、注目領域ROIを含むスライス画像IMGs
Y+1~IMGs
Nが伝送される。
【0109】
なお上述のように、第2モードにおいても、近距離スライス画像IMGs1~IMGsYについては、クロップされない元のサイズで伝送される。
【0110】
第1モードへの復帰条件が成立しない間は(S108のN)、第2モードが維持される。第1モードへの復帰条件が成立すると(S108のY)、第1モードS100に戻る。
【0111】
第1モードへの復帰条件は所定時間の経過であってもよいし、遠距離撮影レンジRNGY+1~RNGNに複数の注目物体が存在することであってもよいし、遠距離撮影レンジRNGに元の注目物体が存在しなくなったことでもよい。
【0112】
(実施形態3)
図16は、実施形態3に係るゲーティングカメラ20Aのブロック図である。ゲーティングカメラ20Aにおいて、照明装置22は、プローブ光L1を集光、拡散させることにより、照射範囲を可変に構成される。カメラコントローラ32は、制御信号S4によって、照明装置22の照射範囲を適応的に制御可能となっている。
【0113】
カメラコントローラ32は、クロップして伝送すべきスライス画像IMGsを撮影する際に、照明装置22にプローブ光L1を集光させて照射範囲を狭める。
【0114】
たとえばカメラコントローラ32は、第2モードにおいて、遠距離スライス画像群IMGsY+1~IMGsNを撮影する際に、プローブ光L1を集光して、注目領域に集中的に照射する。これにより、照射範囲の照度を高めることができ、鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0115】
以上がゲーティングカメラ20Aの構成である。続いてその利点を説明する。
【0116】
遠方の撮影レンジを撮影する際には、プローブ光L1とその反射光L2の減衰量が大きくなる。したがって1回の露光では、十分な明るさのスライス画像IMGsを生成できない場合が生ずる。このような場合、遠方の撮影レンジについては、複数回の露光を行い、露光ごとに得られるスライス画像をコンポジットして、1枚のスライス画像を生成する必要がある。本実施形態では、プローブ光L1を集光することにより、1回の露光で得られるスライス画像IMGsの明るさを明るくできるので、露光の回数、ひいてはスライス画像の伝送の回数を減らすことができる。これにより、撮影時間を短縮できる。
【0117】
(実施形態4)
図17は、実施形態4に係るゲーティングカメラ20Bのブロック図である。ゲーティングカメラ20Bにおいては、照明装置22の照射範囲の制御のみを行い、スライス画像の伝送時のクロップは行わない。照明装置22の制御については、実施形態3と同様である。このゲーティングカメラ20Bによっても、遠方の撮影レンジを撮影する際の、露光の回数を減らすことができ、鮮明なスライス画像を得ることができる。
【0118】
図18は、実施形態5に係るアクティブセンサ70のブロック図である。アクティブセンサ70は、ゲーティングカメラ、ToFカメラ、LIDARなどであり、発光装置72、光センサ74、コントローラ76を備える。
【0119】
発光装置72は、1回のセンシングに際して、複数回、パルス発光する。本実施形態において、発光装置72の発光タイミングの時間間隔TINTは不均一となっている。時間間隔TINTは周期毎にランダムに決定されてもよいし、予め決められたパターンにしたがって変化してもよい。たとえば時間間隔TINTは、動作周期Tcごとに単調増加してもよいし、単調減少してもよい。
【0120】
発光装置72の出射光L1は、対象物OBJによって反射され、光センサ74に入射する。反射光L2は、出射光L1に対して、τ遅延している。τは、対象物OBJまでの距離zに応じており、式(1)で表される。τを光のラウンドトリップ時間と称する。
τ=2×z/c …(1)
cは光速を表す。
【0121】
光センサ74は、発光装置72の発光ごとに、それと同期して、反射光L1に含まれる各パルスを検出できるように、露光タイミングおよび露光時間が制御される。発光装置72の発光タイミングと、光センサ74の露光タイミングは、コントローラ74によって制御される。
【0122】
発光センサ74には、発光装置72の複数回の発光に応じて、物体からの反射光L2が複数回、入射する。光センサ74は、複数回にわたり受光した反射光を積算し、積算値に応じた信号を出力する。
【0123】
図19は、発光装置72の発光タイミングと、光センサ74の露光タイミングの関係を示すタイムチャートである。たとえば光センサ74の露光の開始時刻は、発光装置72の発光開始時刻から、一定時間Td遅延していてもよい。時間差Tdの決め方は、アクティブセンサ70の種類、方式に応じており、たとえば撮影したい対象物までのラウンドトリップ時間τにもとづいて決定してもよい。露光時間Teは、発光装置72の発光時間(パルス幅)Tpと同一であってもよいし、それより長くてもよい。
【0124】
発光装置72の1回の発光と光センサの1回の露光を含む1回のセンシングは、所定周期Tcで繰り返し行われてもよい。この場合に、センシングごとに、所定周期Tc内における発光装置72の発光タイミング(周期Tcの先頭から発光までの時間Tx)が変化してもよい。i番目とi+1番目の発光タイミングの時間間隔TINTiは、式(2)で表される。
TINTi=Tc+Txi+1-Txi …(2)
【0125】
以上がアクティブセンサ70の構成である。続いてその動作を説明する。
【0126】
アクティブセンサ70の利点を明確とするため、比較技術について先に説明する。比較技術では、一定の時間間隔で発光装置が発光し、光センサの露光も一定の時間間隔で行われる。
図20は、比較技術に係るアクティブセンサの動作波形図である。いま、アクティブセンサの近傍に、動作周期Tcの整数倍、あるいは整数分の1倍の周期Tc’でパルス発光するで別の光源が存在しているとする。
図20では、この別の光源の光を外乱光L3として示しており、この例では、外乱光の発光周期Tc’は、アクティブセンサの動作周期Tcと等しいものとする。
【0127】
外乱光L3の各パルスが、露光期間Teに含まれると、アクティブセンサのセンシングに影響する。比較技術では発光装置72の発光期間TINTが一定(Tc)であり、したがって露光タイミングの間隔も、一定(Tc)となっている。
【0128】
そのため、外乱光L3の各パルスは、常に露光時間Teに含まれることとなり、その影響が積算され、大きな誤差となって現れる。
図20では、誤差成分がハッチングで示される。
【0129】
転じて実施形態5に係るアクティブセンサ70の動作を説明する。
図21は、
図18のアクティブセンサ70の動作波形図である。
【0130】
上述のように、外乱光L3の各パルスが、露光期間Teに含まれると、アクティブセンサ70のセンシングに影響する。本実施形態では、発光装置72の発光期間T
INTが不均一であり、したがって露光開始時間が、動作周期Tcごとに異なっている。そのため、外乱光L3の各パルスは、露光時間Teに含まれたり含まれなかったりする。
図20の例では外乱光L3の先頭のパルスは誤検出されるが、後続するパルスは、露光期間から外れているため、誤検出されない。したがって外乱光L3の影響を低減でき、高精度な検出が可能となる。
【0131】
続いてアクティブセンサ70の用途を説明する。アクティブセンサ70の一実施例は、ゲーティングカメラである。
【0132】
図22は、一実施例に係るゲーティングカメラ20のブロック図である。ゲーティングカメラ20は、奥行き方向について複数N個(N≧2)のレンジRNG
1~RNG
Nに区切って撮像を行う。
【0133】
ゲーティングカメラ20は、照明装置22、イメージセンサ24、カメラコントローラ26、画像処理部28を備える。照明装置22は
図18の発光装置72に対応し、イメージセンサ24は
図18の光センサ74に対応し、カメラコントローラ26は
図18のコントローラ76に対応する。
【0134】
照明装置22は、カメラコントローラ26から与えられる発光タイミング信号S1と同期して、複数個のパルスを含むプローブ光L1を車両前方に照射する。プローブ光L1は赤外光であることが好ましいが、その限りでなく、所定の波長を有する可視光であってもよい。上述のように、パルスの時間間隔は不均一となっている。
【0135】
イメージセンサ24は、カメラコントローラ26から与えられる露光タイミング信号S2と同期した露光制御が可能であり、スライス画像IMGを生成可能に構成される。イメージセンサ24は、プローブ光L1と同じ波長に感度を有しており、物体OBJが反射した反射光(戻り光)L2を撮影する。
【0136】
カメラコントローラ26は、レンジRNGごとに予め定められた発光タイミングと露光タイミングを保持している。カメラコントローラ26は、あるレンジRNGiを撮影するとき、そのレンジに対応する発光タイミングと露光タイミングにもとづいて発光タイミング信号S1および露光タイミング信号S2を生成し、撮影を行う。ゲーティングカメラ20は、複数のレンジRNG1~RNGNに対応する複数のスライス画像IMG1~IMGNを生成することができる。i番目のスライス画像IMGiには、対応するレンジRNGiに含まれる物体が写ることとなる。
【0137】
図23は、ゲーティングカメラ20の動作を説明する図である。
図23にはi番目のレンジRNG
iを測定するときの様子が示される。照明装置22は、発光タイミング信号S1と同期して、時刻t
0~t
1の間の発光期間τ
1の間、発光する。最上段には、横軸に時間、縦軸に距離をとった光線のダイアグラムが示される。ゲーティングカメラ20から、レンジRNG
iの手前の境界までの距離をd
MINi、レンジRNG
iの奥側の境界までの距離をd
MAXiとする。
【0138】
ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMINiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMINiは、
TMINi=2×dMINi/c
である。cは光速である。
【0139】
同様に、ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMAXiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMAXiは、
TMAXi=2×dMAXi/c
である。
【0140】
レンジRNGiに含まれる物体OBJを撮影したいとき、カメラコントローラ26は、時刻t2=t0+TMINiに露光を開始し、時刻t3=t1+TMAXiに露光を終了するように、露光タイミング信号S2を生成する。これが1回の露光動作である。
【0141】
i番目のレンジRNGiを撮影する際には、複数回の発光と露光を繰り返し行い、イメージセンサ24において測定結果を積算する。
【0142】
図24(a)、(b)は、ゲーティングカメラ20により得られる画像を説明する図である。
図24(a)の例では、レンジRNG
1に物体(歩行者)OBJ
1が存在し、レンジRNG
3に物体(車両)OBJ
3が存在している。
図24(b)には、
図24(a)の状況で得られる複数のスライス画像IMG
1~IMG
3が示される。スライス画像IMG
1を撮影するとき、イメージセンサはレンジRNG
1からの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMG
1には、歩行者OBJ
1の物体像OBJ
1が写る。
【0143】
スライス画像IMG2を撮影するとき、イメージセンサはレンジRNG2からの反射光により露光され、したがってスライス画像IMG2には、いかなる物体像も写らない。
【0144】
同様にスライス画像IMG3を撮影するとき、イメージセンサはレンジRNG3からの反射光により露光されるため、スライス画像IMG3には、物体像OBJ3のみが写る。このようにゲーティングカメラ20によれば、レンジ毎に物体を分離して撮影することができる。
【0145】
以上がゲーティングカメラ20の動作である。このゲーティングカメラにおいて、照明装置22の発光の時間間隔を不均一化することにより、周囲のパルス光源の影響を低減でき、ノイズ成分の少ない鮮明な画像を得ることができる。
【0146】
実施形態3に関連する変形例を説明する。
【0147】
(変形例1)
発光装置72のパルス発光の時間間隔T
INTを変化させる方法は、
図19のそれに限定されない。たとえば、Txを一定として、動作周期Tcを、サイクル毎に変化させてもよい。
【0148】
(変形例2)
アクティブセンサ70は、ゲーティングカメラに限定されず、TOF(Time Of Flight)カメラであってもよいし、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)であってもよい。
【0149】
図25は、ゲーティングカメラ20あるいはアクティブセンサ70(以下、ゲーティングカメラとして説明する)を内蔵する車両用灯具200を示す図である。車両用灯具200は、筐体210、アウターレンズ220、ハイビームおよびロービームの灯具ユニット230H/230Lおよびゲーティングカメラ20を備える。灯具ユニット230H/230Lおよびゲーティングカメラ20は、筐体210に収容されている。
【0150】
なお、ゲーティングカメラ20の一部、たとえばイメージセンサ24は、車両用灯具200の外部、たとえばルームミラーの裏側に設置してもよい。
【0151】
図26は、物体識別システム10を備える車両用灯具200を示すブロック図である。車両用灯具200は、車両側ECU304とともに灯具システム310を構成する。車両用灯具200は、光源202、点灯回路204、光学系206を備える。さらに車両用灯具200には、物体識別システム10が設けられる。物体識別システム10は、ゲーティングカメラ20(またはアクティブセンサ70)および演算処理装置40を含む。
【0152】
演算処理装置40は、ゲーティングカメラ20によって得られる複数の撮影レンジRNG1~RNGNに対応する複数のスライス画像IMG1~IMGNにもとづいて、物体の種類を識別可能に構成される。演算処理装置40は、機械学習によって生成された予測モデルにもとづいて実装される分類器を備える。分類器のアルゴリズムは特に限定されないが、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)、R-CNN(Region-based Convolutional Neural Network)、SPPnet(Spatial Pyramid Pooling)、Faster R-CNN、DSSD(Deconvolution -SSD)、Mask R-CNNなどを採用することができ、あるいは、将来開発されるアルゴリズムを採用できる。
【0153】
演算処理装置40は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。演算処理装置40は、複数のプロセッサの組み合わせであってもよい。あるいは演算処理装置40はハードウェアのみで構成してもよい。
【0154】
物体識別システム10が検出した物体OBJに関する情報は、車両用灯具200の配光制御に利用してもよい。具体的には、灯具側ECU208は、物体識別システム10が生成する物体OBJの種類とその位置に関する情報にもとづいて、適切な配光パターンを生成する。点灯回路204および光学系206は、灯具側ECU208が生成した配光パターンが得られるように動作する。
【0155】
また演算処理装置40が検出した物体OBJに関する情報は、車両側ECU304に送信してもよい。車両側ECU304は、この情報を、自動運転あるいは運転支援に利用してもよい。
【0156】
実施形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、ゲーティングカメラに関する。
【符号の説明】
【0158】
10 物体識別システム
20 ゲーティングカメラ
22 照明装置
24 イメージセンサ
26 カメラコントローラ
28 画像処理部
S1 発光タイミング信号
S2 露光タイミング信号
40 演算処理装置
70 アクティブセンサ
72 発光装置
74 光センサ
76 コントローラ
200 車両用灯具
210 筐体
220 アウターレンズ
230 灯具ユニット230
310 灯具システム
304 車両側ECU
200 車両用灯具
202 光源
204 点灯回路
206 光学系
310 灯具システム
304 車両側ECU