(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】センサシステム及びセンサユニット
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B60S1/62 110B
B60S1/62 110A
B60S1/62 120B
B60S1/62 120C
(21)【出願番号】P 2021553497
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039578
(87)【国際公開番号】W WO2021079911
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2019192595
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019192596
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019192597
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019192598
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019195180
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019199532
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019199533
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 晃宜
(72)【発明者】
【氏名】蜂矢 泰士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一弘
(72)【発明者】
【氏名】速水 寿文
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 雄介
(72)【発明者】
【氏名】三和 正幸
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0003895(US,A1)
【文献】特開2018-199483(JP,A)
【文献】特開2018-026305(JP,A)
【文献】特開2009-286216(JP,A)
【文献】特開2019-059463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0182980(US,A1)
【文献】特開2018-184023(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/62
G01C 3/06
G01S 17/87,17/89
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるセンサシステムであって、
単一のLiDARと、
単一のカメラと、
前記LiDAR及び前記カメラを収容するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられて、前記LiDARに対応する第一洗浄対象面と前記カメラに対応する第二洗浄対象面とを洗浄液により同時に洗浄可能な複数のノズルを有する
単一のクリーナと、を備え、
前記複数のノズルは、前記第一洗浄対象面に向けて前記洗浄液を噴射する第一ノズルと、前記第二洗浄対象面に向けて前記洗浄液を噴射する第二ノズルとを含み、
前記クリーナは、シリンダと、前記シリンダに摺動自在に収容されたピストンと、をさらに有し、
前記第一ノズルおよび前記第二ノズルは、前記ピストンの先端に設けられている、センサシステム。
【請求項2】
前記第一洗浄対象面及び前記第二洗浄対象面は、前記ハウジングの開口部に取り付けられた透過カバーから構成され、
前記透過カバーの前記第一洗浄対象面には、可視光を遮光するフィルタが設けられている、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記透過カバーは、前記LiDARの光軸に直交する面に対して傾斜方向に延びるように形成されている、請求項2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記ピストンは、前記シリンダに前記洗浄液が流入することにより、前記シリンダの中心軸に沿って所定方向に移動され、前記第一ノズルおよび前記第二ノズルが前記ハウジングの開口部から前記所定方向に突出することで前記第一洗浄対象面および前記第二洗浄対象面に前記洗浄液が噴射される、請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項5】
車両に搭載されるセンサユニットであって、
単一のLiDARと、
単一のカメラと、
前記LiDAR及び前記カメラを収容するハウジングと、
前記LiDAR及び前記カメラに対応する洗浄対象面を洗浄液により洗浄可能な複数の液ノズルを有する
単一の液クリーナと、
前記洗浄対象面を空気により洗浄可能な少なくとも1つのエアノズルを有するエアクリーナと、を備え、
前記液クリーナは、前記ハウジングの上部に取り付けられ、
前記エアクリーナは、前記ハウジングの側部に取り付けられ、
前記複数の液ノズルは、前記洗浄対象面のうち前記LiDARから出射する光が透過する領域に向けて前記洗浄液を噴射する第一ノズルと、前記洗浄対象面のうち前記カメラのレンズに対応する領域に向けて前記洗浄液を噴射する第二ノズルとを含み、
前記液クリーナは、シリンダと、前記シリンダに摺動自在に収容されたピストンと、をさらに有し、
前記第一ノズルおよび前記第二ノズルは、前記ピストンの先端に設けられている、センサユニット。
【請求項6】
前記ハウジングの開口部を覆うように設けられて、前記洗浄対象面として構成される透過カバーをさらに備え、
前記透過カバーは、前記LiDARの光軸に直交する面に対して傾斜方向に延びるように形成されている、請求項5に記載のセンサユニット。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記透過カバーの左右方向の少なくとも一方において外側に張り出す張出部を備え、
前記少なくとも1つのエアノズルは、前記張出部に配置されている、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記透過カバーの前記LiDARに対応する面には、可視光を遮光するフィルタが設けられている、請求項6または7に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記液クリーナ及び前記エアクリーナを制御するクリーナ制御部をさらに備え、
前記クリーナ制御部は、前記ハウジングに一体的に取り付けられている、請求項5から8のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項10】
前記ピストンは、前記シリンダに前記洗浄液が流入することにより、前記シリンダの中心軸に沿って所定方向に移動され、前記第一ノズルおよび前記第二ノズルが前記ハウジングの開口部から前記所定方向に突出することで前記洗浄対象面に前記洗浄液が噴射される、請求項5から9のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項11】
車両に搭載されるセンサユニットであって、
前記車両の外部情報を取得可能なセンサと、
前記センサを収容するハウジングと、
前記ハウジングの開口部を覆うように設けられて、前記センサから出射される光または前記センサに入射する光を透過する透過カバーと、
前記ハウジングに取り付けられて、前記透過カバーを洗浄液により洗浄可能な少なくとも一つのノズルを有する
単一のクリーナと、を備え、
前記透過カバーは、前記ハウジングの開口端から中心部に向かって凹むように形成され、
前記センサは、
単一のLiDARと、
単一のカメラと、を含み、
前記少なくとも一つのノズルは、前記透過カバーのうち前記LiDARに対応する第一領域に向けて前記洗浄液を噴射する第一ノズルと、前記透過カバーのうち前記カメラに対応する第二領域に向けて前記洗浄液を噴射する第二ノズルとを含み、
前記クリーナは、シリンダと、前記シリンダに摺動自在に収容されたピストンと、をさらに有し、
前記第一ノズルおよび前記第二ノズルは、前記ピストンの先端に設けられている、センサユニット。
【請求項12】
前記透過カバーは、前記センサの光軸に直交する方向へ延びる中央領域と、前記中央領域の周囲に設けられて前記光軸に直交する面に対して傾斜する方向へ延びる外周領域と、を有している、請求項11に記載のセンサユニット。
【請求項13】
前記透過カバーの前記LiDARから出射された光が透過する領域には、可視光を遮光するフィルタが設けられている、請求項11または12に記載のセンサユニット。
【請求項14】
前記ピストンは、前記シリンダに前記洗浄液が流入することにより、前記シリンダの中心軸に沿って所定方向に移動され、前記第一ノズルおよび前記第二ノズルが前記ハウジングの開口部から前記所定方向に突出することで前記第一領域および前記第二領域に向けて前記洗浄液が噴射される、請求項11から13のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項15】
前記透過カバーは、上方向から下方向に向かうにつれて前記ハウジングの内側に向かうように形成されている、請求項6から8のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項16】
前記透過カバーは、上方向から下方向に向かうにつれて前記ハウジングの内側に向かうように形成されている、請求項3に記載のセンサシステム。
【請求項17】
前記クリーナを制御するクリーナ制御部をさらに備え、
前記クリーナ制御部は前記ハウジングに一体的に取り付けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム及びセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のヘッドランプクリーナが特許文献1などに知られている。
【0003】
近年は自動運転可能な車両の開発が試みられている。自動運転を実現するにあたっては、例えば、LiDARやカメラなどのセンサを利用して車両外部の情報を取得することが求められる。特許文献2には、車両に搭載されるセンサシステムであって、複数のLiDARがランプユニットに内蔵されている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2016-187990号公報
【文献】国際公開WO2018/051909号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動運転を実現するにあたっては、例えば、LiDARやカメラの感度を良好に維持することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、LiDARとカメラとが一体化されたユニットを効果的に洗浄可能なセンサシステムを提供することを目的の一つとする。
【0007】
加えて、本発明は、複数のセンサを効果的に洗浄可能なセンサシステムを提供することを目的の一つとする。
【0008】
加えて、本発明は、透過カバーの清浄度を維持可能なセンサユニットを提供することを目的の一つとする。
【0009】
また、様々なセンサが搭載された自動運転車の車両全体を統括する車両制御部の処理負荷の軽減については改善の余地がある。
【0010】
そこで、本発明は、車両制御部の処理負荷を増加させることなく、センサの洗浄制御が可能なセンサシステムを提供することを目的の一つとする。
【0011】
また、特許文献2に記載のようなセンサシステムにおいて、様々な種類のセンサのうちどのセンサを組み合わせて搭載するかについては改善の余地がある。
【0012】
そこで、本発明は、LiDARと赤外カメラを一体化した新規なセンサユニットを提供することを目的の一つとする。
【0013】
加えて、本発明は、LiDARと赤外カメラとを備えたセンサシステムにおいて、精度の高いセンシングを可能とすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的の一つを達成するために、本発明の一側面に係るセンサシステムは、
車両に搭載されるセンサシステムであって、
LiDARと、
カメラと、
前記LiDAR及び前記カメラを収容するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられて、前記LiDARに対応する第一洗浄対象面と前記カメラに対応する第二洗浄対象面とを洗浄媒体により同時に洗浄可能な少なくとも1つのノズルを有するクリーナと、を備えている。
【0015】
上記目的の一つを達成するために、本発明の一側面に係るセンサユニットは、
車両に搭載されるセンサユニットであって、
LiDARと、
カメラと、
前記LiDAR及び前記カメラを収容するハウジングと、
前記LiDAR及び前記カメラに対応する洗浄対象面を洗浄液により洗浄可能な少なくとも1つの液ノズルを有する液クリーナと、
前記洗浄対象面を空気により洗浄可能な少なくとも1つのエアノズルを有するエアクリーナと、を備え、
前記液クリーナは、前記ハウジングの上部に取り付けられ、
前記エアクリーナは、前記ハウジングの側部に取り付けられている。
【0016】
上記目的の一つを達成するために、本発明の一側面に係るセンサシステムは、
車両に搭載されるセンサシステムであって、
第一センサと、
第二センサと、
前記第一センサに対応する第一洗浄対象面と前記第二センサに対応する第二洗浄対象面とを洗浄媒体により洗浄可能な少なくとも1つのノズルを有するクリーナと、
前記クリーナを制御するクリーナ制御部と、を備え、
前記クリーナ制御部は、前記第一センサ及び前記第二センサの少なくとも一方により検知された汚れ情報に基づいて、前記第一洗浄対象面及び前記第二洗浄対象面を洗浄するように、前記クリーナを制御する。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るセンサユニットは、
車両に搭載されるセンサユニットであって、
前記車両の外部情報を取得可能なセンサと、
前記センサを収容するハウジングと、
前記ハウジングの開口部を覆うように設けられて、前記センサから出射される光または前記センサに入射する光を透過する透過カバーと、を備え、
前記透過カバーは、前記ハウジングの開口端から中心部に向かうにつれて凹むように形成されている。
【0018】
上記目的の一つを達成するために、本発明の一側面に係るセンサシステムは、
車両に搭載されるセンサシステムであって、
センサと、
前記センサの洗浄対象面を洗浄媒体により洗浄可能な少なくとも1つのノズルを有するクリーナと、
前記センサを制御するセンサ制御部と、
前記クリーナを制御するクリーナ制御部と、
を備え、
前記センサ制御部は、前記センサにより検知された情報に基づいて生成した汚れ信号を、前記車両の全体を制御する車両制御部を介さずに、前記クリーナ制御部へ送信する。
【0019】
上記目的の一つを達成するために、本発明の一側面に係るセンサユニットは、
車両に搭載されるセンサユニットであって、
LiDARと、
赤外カメラと、
前記LiDARと前記赤外カメラとを収容するハウジングと、
を備えている。
【0020】
上記目的の一つを達成するために、本発明の一側面に係るセンサシステムは、
車両に搭載されるセンサシステムであって、
LiDARと、
赤外カメラと、
前記LiDARおよび前記赤外カメラを制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記LiDARにより取得した前記車両周囲の対象物に関する距離情報を用いて、前記赤外カメラで取得した前記対象物のデータを補完して、距離画像データを生成するように構成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、LiDARとカメラとが一体化されたユニットを効果的に洗浄可能なセンサシステムを提供することができる。
【0022】
加えて、本発明によれば、複数のセンサを効果的に洗浄可能なセンサシステムを提供することができる。
【0023】
加えて、本発明によれば、透過カバーの清浄度を維持可能なセンサユニットを提供することができる。
【0024】
加えて、本発明によれば、車両制御部の処理負荷を増加させることなく、センサの洗浄制御が可能なセンサシステムを提供することができる。
【0025】
加えて、本発明によれば、LiDARと赤外カメラを一体化した新規なセンサユニットを提供することができる。
【0026】
加えて、本発明によれば、LiDARと赤外カメラとを備えたセンサシステムにおいて、精度の高いセンシングを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第一実施形態に係るセンサシステムを搭載した車両の上面図である。
【
図2】
図1のセンサシステムが組み込まれる車両システムのブロック図である。
【
図4】
図1のセンサシステムが備えるセンサユニットの斜視図である。
【
図5】
図4のセンサユニットの内部構成を示す模式図である。
【
図6】
図1のセンサシステムが備える液クリーナの斜視図である。
【
図7】
図1のセンサシステムが備えるエアクリーナの高圧空気生成部を示す図である。
【
図8】第一実施形態の変形例に係るセンサシステムが備えるセンサユニットの内部構成を示す模式図である。
【
図9】
図8のセンサシステムの動作例を示すフローチャートである。
【
図10】第二実施形態に係るセンサユニットの斜視図である。
【
図13】透過カバーの空間に滞留する空気の働きを説明する図である。
【
図14】第三実施形態に係るセンサシステムが組み込まれる車両システムのブロック図である。
【
図15】
図14のセンサシステムが備えるクリーナユニットのブロック図である。
【
図16】
図14のセンサシステムが備えるLiDAR制御部とクリーナ制御部の機能を説明するブロック図である。
【
図17】
図14のセンサシステムの動作例を示すフローチャートである。
【
図18】透過カバーの迷光情報を説明する模式図である。
【
図19】第四実施形態に係るセンサシステムが組み込まれる車両システムのブロック図である。
【
図20】
図19のセンサシステムが備えるセンサユニットの斜視図である。
【
図21】
図20のセンサユニットの内部構成を示す模式図である。
【
図22】
図21のセンサユニットが備える赤外カメラの構成を示すブロック図である。
【
図23】各ターゲット距離領域を撮像する際の、発光部の動作とカメラゲートの動作との時間的な関係を示す図である。
【
図24】自車両前方の異なる位置に4つの異なる対象物が存在している状況を示す図である。
【
図25】複数の連続する撮像領域の一部がオーバーラップする状態を示す図である。
【
図26】各対象物に対応する画素の時間的な輝度変化を示す模式図である。
【
図27】発光周期および撮像タイミングと撮像画像とを示す図である。
【
図28A】通常の方式で撮像されたカメラ画像を示す図である。
【
図28B】タイム・オブ・フライト(Time of Flight)方式で撮像された画像に基づいて生成された処理画像を示す図である。
【
図29】
図19のセンサシステムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0029】
また、本発明の実施形態(以下、本実施形態と称す)の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0030】
図1は、本実施形態に係るセンサシステム100が搭載された車両1の上面図である。
図2は、センサシステム100が組み込まれる車両システム2のブロック図である。車両1は、センサシステム100を備えている。本実施形態において、車両1は自動運転モードで走行可能な自動車である。
【0031】
まず、
図2を参照して車両1の車両システム2について説明する。
図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、内部センサ5と、外部センサ6と、ランプ7と、HMI8(Human Machine Interface)と、GPS9(Global Positioning System)と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。また、車両システム2の車両制御部3にはクリーナ制御部113を有するセンサシステム100が通信可能に接続されている。
【0032】
車両制御部3は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。車両制御部3は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、各種車両制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種車両制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)とにより構成されている。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されるプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。
【0033】
内部センサ5は、自車両の情報を取得可能なセンサである。内部センサ5は、例えば、加速度センサ、速度センサ、車輪速センサ及びジャイロセンサ等の少なくとも一つである。内部センサ5は、車両1の走行状態を含む自車両の情報を取得し、該情報を車両制御部3に出力するように構成されている。内部センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、車内に人がいるかどうかを検出する人感センサなどを備えていてもよい。
【0034】
外部センサ6は、自車両の外部の情報を取得可能なセンサである。外部センサは、例えば、カメラ、レーダ、LiDAR等の少なくとも一つである。外部センサ6は、車両1の周辺環境(他車、歩行者、道路形状、交通標識、障害物等)を含む自車両の外部の情報を取得し、該情報を車両制御部3に出力するように構成されている。あるいは、外部センサ6は、天候状態を検出する天候センサや車両1の周辺環境の照度を検出する照度センサなどを備えていてもよい。
カメラは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラは、可視光を検出するカメラや、赤外線を検出する赤外線カメラである。
レーダは、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。
LiDARとは、Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Rangingの略語である。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質、物体の色などの情報を取得するセンサである。
【0035】
ランプ7は、車両1の前部に設けられるヘッドランプやポジションランプ、車両1の後部に設けられるリヤコンビネーションランプ、車両の前部または側部に設けられるターンシグナルランプ、歩行者や他車両のドライバーに自車両の状況を知らせる各種ランプなどの少なくとも一つである。
【0036】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイである。
【0037】
GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車の走行情報を他車から受信すると共に、車両1の走行情報を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。地図情報記憶部11は、地図情報が記憶されたハードディスクドライブ等の外部記憶装置であって、地図情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0038】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0039】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0040】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0041】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0042】
図1に戻り、車両1は、外部センサ6として、前LiDAR6f、後LiDAR6b、右LiDAR6r、左LiDAR6l、前カメラ6g、後カメラ6c、右カメラ6s、左カメラ6mを有している。前LiDAR6fおよび前カメラ6gは、車両1の前方の情報を取得するように構成されている。後LiDAR6bおよび後カメラ6cは、車両1の後方の情報を取得するように構成されている。右LiDAR6rおよび右カメラ6sは、車両1の右方の情報を取得するように構成されている。左LiDAR6lおよび左カメラ6mは、車両1の左方の情報を取得するように構成されている。
【0043】
なお、
図1に示す例では、前LiDAR6fと前カメラ6gは車両1の前部に設けられ、後LiDAR6bと後カメラ6cは車両1の後部に設けられ、右LiDAR6rと右カメラ6sは車両1の右部に設けられ、左LiDAR6lと左カメラ6mは車両1の左部に設けられた例を示しているが、本発明はこの例に限られない。例えば、車両1の天井部に前LiDAR、前カメラ、後LiDAR、後カメラ、右LiDAR、右カメラ、左LiDAR、左カメラがまとめて配置されていてもよい。
【0044】
車両1は、ランプ7として、右ヘッドランプ7rと左ヘッドランプ7lを有している。右ヘッドランプ7rは車両1の前部のうちの右部に設けられ、左ヘッドランプ7lは車両1の前部のうちの左部に設けられている。右ヘッドランプ7rは、左ヘッドランプ7lよりも右方に設けられている。
【0045】
車両1は、フロントウィンドウ1fと、リヤウィンドウ1bを有している。
【0046】
車両1に搭載されたセンサシステム100は、対象物に付着する水滴や泥や塵埃等の異物を除去、あるいは、対象物へ異物が付着することを防止するクリーナユニット110を備えている。例えば、本実施形態において、クリーナユニット110は、フロントウィンドウ1fを洗浄可能な前ウィンドウウォッシャ(以降、前WWと称す)101と、リヤウィンドウ1bを洗浄可能な後ウィンドウウォッシャ(以降、後WWと称す)102を有する。クリーナユニット110は、前LiDAR6fおよび前カメラ6gを洗浄可能な前センサクリーナ(以降、前SCと称す)103と、後LiDAR6bおよび後カメラ6cを洗浄可能な後センサクリーナ(以降、後SCと称す)104を有する。クリーナユニット110は、右LiDAR6rおよび右カメラ6sを洗浄可能な右センサクリーナ(以降、右SCと称す)105と、左LiDAR6lおよび左カメラ6mを洗浄可能な左センサクリーナ(以降、左SCと称す)106を有する。クリーナユニット110は、右ヘッドランプ7rを洗浄可能な右ヘッドランプクリーナ(以降、右HCと称す)107と、左ヘッドランプ7lを洗浄可能な左ヘッドランプクリーナ(以降、左HCと称す)108を有する。
各々のクリーナ101~108は一つ以上のノズルを有し、ノズルから洗浄液や空気等の洗浄媒体を対象物に向けて噴射する。
【0047】
図3は、センサシステム100が備えるクリーナユニット110のブロック図である。クリーナユニット110は、クリーナ101~108の他に、タンク111、ポンプ112、クリーナ制御部113を有している。
【0048】
前WW101、後WW102、前SC103、後SC104、右SC105、左SC106、右HC107、左HC108は、ポンプ112を介してタンク111に接続されている。ポンプ112はタンク111に貯留された洗浄液を、前WW101、後WW102、前SC103、後SC104、右SC105、左SC106、右HC107、左HC108に送る。
【0049】
各々のクリーナ101~108には、ノズルを開状態にさせて洗浄液を洗浄対象物に噴射させるアクチュエータ(図示省略)が設けられている。各々のクリーナ101~108に設けられたアクチュエータは、クリーナ制御部113に電気的に接続されている。また、クリーナ制御部113は、ポンプ112、車両制御部3にも電気的に接続されている。クリーナ101~108、ポンプ112等の動作は、クリーナ制御部113によって制御される。クリーナ制御部113で取得された情報と車両制御部3で取得された情報とは相互間で送受信される。なお、本実施形態では、車両制御部3とクリーナ制御部113は、別個の構成として設けられているが、車両制御部3とクリーナ制御部113は一体的に構成されてもよい。この点において、車両制御部3とクリーナ制御部113は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0050】
図4は、LiDARやカメラ等のセンサとクリーナとが一体化されたセンサユニットの構成を示す斜視図である。
図5は、センサユニットの内部構成を示す模式図である。
図4および
図5に示す例では、センサシステム100に含まれる複数のセンサユニットのうち、車両1の前部に設けられる前センサユニット120fについて説明する。なお、
図1に示すように、車両1は、車両1の前部に設けられる前センサユニット120fのほかに、車両1の後部に設けられる後センサユニット120b、右部に設けられる右センサユニット120r、左部に設けられる左センサユニット120lを有している。後センサユニット120b、右センサユニット120r、左センサユニット120lについては、前センサユニット120fと同様の構成であるため説明を省略する。
【0051】
図4および
図5に示すように、前センサユニット120fは、ハウジング121と、前LiDAR6fと、前カメラ6gと、液クリーナ103Aと、エアクリーナ103Bと、クリーナ制御部113と、を備えている。液クリーナ103Aとエアクリーナ103Bは、前SC103を構成するクリーナである。
【0052】
ハウジング121は、例えば、合成樹脂製であり、略箱型形状に形成されている。
図4では図示は省略するが、ハウジング121内には、前LiDAR6fと前カメラ6gが収容されている。前LiDAR6fと前カメラ6gとは、
図5に示す光出射面6faとレンズ6gaとを前方に向けて、ハウジング121内に例えば左右方向に並んで収容されている。
図1に示すように、本例では、車両1の右側に前LiDAR6fが配置され、車両1の左側に前カメラ6gが配置されている。前LiDAR6fと前カメラ6gの配置関係は、本例と反対であってもよい。ハウジング121の開口部122は、例えば、少なくともハウジング121内に収容されている前LiDAR6fと前カメラ6gの前面領域が含まれる大きさに形成されている。
【0053】
ハウジング121の開口部122には、当該開口部122を隙間なく覆うように、透過カバー123が取り付けられている。透過カバー123は、例えば、透明または半透明の合成樹脂で形成されている。透過カバー123は、開口部122を覆うことによって、ハウジング121内に収容されている前LiDAR6fと前カメラ6gの前面領域も覆うように取り付けられている。透過カバー123は、前LiDAR6fと前カメラ6gの前面領域を覆うように取り付けられることで、前センサユニット120fにおける前LiDAR6fおよび前カメラ6gに対応した洗浄対象面として構成されている。
【0054】
透過カバー123は、ハウジング121内に収容されている前LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜する方向へ延びるように取り付けられている。透過カバー123は、上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込むように傾斜して取り付けられている。例えば、透過カバー123は、上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の奥側(後側)に向かって傾斜している。また、透過カバー123は、上方向から下方向に向かうにつれて左右方向の幅が狭くなるように(ハウジング121の側壁から離れるように)形成されている。
なお、透過カバー123の傾斜方向はこの傾斜方向に限られない。前LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜する方向であれば、例えば、右(左)方向から左(右)方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込むように傾斜していてもよい
【0055】
ハウジング121は、上記のように透過カバー123が傾斜して取り付けられることにより、透過カバー123の左右方向において透過カバー123の面よりも外側(前方側)に張り出す張出部124を有する。本実施形態では、透過カバー123が上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込んでいるため、透過カバー123の左右方向にそれぞれ三角錐状の張出部124が形成される。なお、透過カバー123が右(左)方向から左(右)方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込むような変形例では、張出部124は、例えば、透過カバー123の左(右)方向だけ(または、上方及び下方)に形成される。
【0056】
液クリーナ103Aは、前LiDAR6fおよび前カメラ6gに対応する洗浄対象面を、すなわち前LiDAR6fおよび前カメラ6gの前面領域を覆う透過カバー123を、洗浄液により洗浄可能なクリーナである。また、エアクリーナ103Bは、同様に、前LiDAR6fおよび前カメラ6gの前面領域を覆う透過カバー123を、空気により洗浄可能なクリーナである。
【0057】
液クリーナ103Aは、洗浄液を噴射可能に構成された液ノズル131を有する。例えば、液クリーナ103Aは、前LiDAR6fから出射した光が透過する透過カバー123の第一領域123aに向けて洗浄液を噴射する第一液ノズル131a(第一ノズルの一例)と、前カメラ6gのレンズを覆う透過カバー123の第二領域123bに向けて洗浄液を噴射する第二液ノズル131b(第二ノズルの一例)と、を有する。例えば、液クリーナ103Aは、ハウジング121内の上部に取り付けられている。液クリーナ103Aは、ハウジング121の透過カバー123上方に設けられた開口部125内に収容されている。第一液ノズル131aおよび第二液ノズル131bは、開口部125から突出可能なポップアップ式のノズルである。液クリーナ103Aは、第一領域123aと第二領域123bとを同時に洗浄することが可能である。
【0058】
エアクリーナ103Bは、空気を噴射可能に構成されたエアノズル141を有する。例えば、エアクリーナ103Bは、左右の張出部124内に一つずつ取り付けられている。右側のエアクリーナ103Bは、前LiDAR6fに対応する第一領域123aに向けて空気を噴射する第一エアノズル141aを有している。左側のエアクリーナ103Bは、前カメラ6gに対応する第二領域123bに向けて空気を噴射する第二エアノズル141bを有している。各エアクリーナ103Bは、ハウジング121内の側部に取り付けられている。
【0059】
なお、
図4の第一領域123aと第二領域123bは、洗浄対象面の範囲として説明上示した一例であり、これに限られない。実際の洗浄対象面としては、前LiDAR6fおよび前カメラ6gが情報を取得するのに関わる全領域が対象であり、両領域は
図4に図示された第一領域123aと第二領域123bよりも広く互いに重複した領域であってもよい。
【0060】
透過カバー123の第一領域123a、すなわち前LiDAR6fから出射した光が透過する領域には、可視光を遮光するフィルタ126が設けられている。フィルタ126は、外部から第一領域123aに入射しようとする可視光を遮光することができるように構成されている。フィルタ126は、例えば、第一領域123aの裏面側に張り付けられている。フィルタ126は、例えば、透過カバー123に蒸着されていてもよい。
【0061】
クリーナ制御部113は、ハウジング121に一体的に取り付けられている。本実施形態では、クリーナ制御部113は、ハウジング121内の後部に取り付けられている。
【0062】
クリーナ制御部113は、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bの動作を制御する。クリーナ制御部113は、液クリーナ103Aの第一液ノズル131aと第二液ノズル131bとによって第一領域123aと第二領域123bとを同時に洗浄することができるように液クリーナ103Aを制御する。また、クリーナ制御部113は、エアクリーナ103Bの第一エアノズル141aと第二エアノズル141bとによって第一領域123aと第二領域123bとを同時に洗浄することができるようにエアクリーナ103Bを制御する。
【0063】
図6は、液クリーナ103Aの斜視図である。
図6に示すように、液クリーナ103Aは、シリンダ132と、ピストン133と、液ノズル131(第一液ノズル131a,第二液ノズル131b)と、を有している。
【0064】
シリンダ132は、円筒状に形成され、その後方側に連結部134が設けられている。連結部134には、洗浄液を供給するためのホース(図示省略)が接続される。ホースは、タンク111から洗浄液を供給するポンプ112に接続されている。
【0065】
ピストン133は、シリンダ132に摺動自在に収容されている。ピストン133は、シリンダ132の中心軸に沿って前後方向へ進退可能である。
【0066】
第一液ノズル131aと第二液ノズル131bは、ピストン133の先端近傍において左右一対に設けられており、同一の構成を有している。第一液ノズル131aの下面には、洗浄液を透過カバー123の第一領域123aへ向けて噴射可能な第一噴射口131a1が設けられている。第二液ノズル131bの下面には、洗浄液を透過カバー123の第二領域123bへ向けて噴射可能な第二噴射口131b1が設けられている。第二各液ノズル131a,131bは、例えば、フルイディクス式ノズル(揺動噴射ノズル)として機能する。フルイディクス式ノズルとは、ノズル内部を流れる流体を互いに干渉させることにより流体の噴射方向を変化させるノズルである。
なお、液ノズル131の数は2個に限定されず、例えば、ピストン133の先端部に1個のみ設けられていてもよいし、3個以上設けられていてもよい。
【0067】
クリーナ制御部113から送信された駆動信号によりポンプ112が駆動すると、タンク111から洗浄液がホースを介してシリンダ132に供給される。洗浄液の流入により、ピストン133がシリンダ132の中心軸に沿って前方向に移動して、ハウジング121の開口部125から突出する。すなわち、ピストン133の先端に設けられた第一液ノズル131aと第二液ノズル131bが前方向にポップアップされる。ピストン133内を通過した洗浄液は、各液ノズル131a,131b内に供給され、各液ノズル131a,131bの噴射口131a1,131b1から、第一領域123a及び第二領域123bのそれぞれに向けて噴射される。
【0068】
クリーナ制御部113から送信された停止信号によりポンプ112の駆動が停止すると、タンク111からシリンダ132への洗浄液の供給が停止される。これにより、各液ノズル131a,131bからの洗浄液の噴射が終了するとともに、ピストン133がシリンダ132の中心軸に沿って後方向へ移動して、各液ノズル131a,131bがハウジング121の開口部125内へと収容される。
【0069】
なお、本実施形態においては、ポップアップノズル式の液クリーナ103Aを用いているが、この例に限られない。ノズルがポップアップしない固定式の液クリーナを用いてもよい。
【0070】
図7は、エアクリーナ103Bの高圧空気生成部150を示す図である。エアクリーナ103Bは、エアノズル141から噴射される高圧空気を生成するための高圧空気生成部150を有している。高圧空気生成部150は、空気を圧縮して高圧空気を生成するポンプ151と、回転運動によりポンプ151を駆動させるモータ152と、モータ152の回転運動をポンプ151へ伝達するウォーム機構153と、を有している。
【0071】
ウォーム機構153は、モータ152の回転軸152aに固定されてモータ152の回転に伴って回転されるウォーム154と、ウォーム154に噛合されてウォーム154の回転に伴って回転されるウォームホイール(図示省略)と、ウォームホイールと同軸に軸支されるピニオン155を有している。
【0072】
ポンプ151は、空気が流入されるシリンダ156と、空気を外部へ送り出すピストン157と、ピストン157を付勢する付勢バネ158と、ピストン157に連続して延びるラック159と、空気が出射される出射口160と、を有している。
【0073】
ピストン157は、シリンダ156の長手方向へ往復運動が可能である。付勢バネ158は、シリンダ156内の空気を外部へ送り出す方向へピストン157を付勢する。ピストン157が付勢バネ158の付勢により移動することで、シリンダ156内の空気が圧縮され高圧となって出射口160から出射される。ラック159には、ラック歯159aが設けられている。ラック159は、ピストン157と共にシリンダ156の長手方向へ往復運動される。ラック歯159aは、ウォーム機構153のピニオン155に噛合可能に構成されている。ピニオン155が回転されると、ピニオン155がラック歯159aに噛合して、シリンダ156内に空気(外気)が流入される方向へラック159が移動される。このラック159の移動に伴って、ピストン157が付勢バネ158の付勢に反して、ラック159と共に移動する。
【0074】
高圧空気生成部150は、高圧空気を出射するポンプ151の出射口160がエアノズル141の連結部(図示省略)にホース(図示省略)を介して連結されるように構成されている。クリーナ制御部113から送信された駆動信号によりモータ152が駆動すると、シリンダ156内でピストン157が移動し、ポンプ151の出射口160から高圧空気がホースを介してエアノズル141に供給される。これにより、エアノズル141から、透過カバー123の第一領域123a及び第二領域123bに向けて高圧空気が噴射される。
なお、高圧空気生成部150は、例えば、車体パネルの内側の所定の場所に配置されていてもよいし、ハウジング121内部に配置されていてもよい。
【0075】
なお、本実施形態においては、ピストン式の高圧空気生成部150を備えたエアクリーナ103Bを用いているが、この例に限られない。例えば、エアクリーナとして、非容積式送風手段を備えたものを採用してもよい。非容積式送風手段としては、例えば、プロペラファン、シロッコファン、ターボファン、斜流ファンなどが挙げられる。また、エアクリーナの送風機構として、レシプロ式、ねじ式、ルーツ式、ベーン式などの容積式のファンを採用してもよい。なお送風機構は、ファンの他に、ブロア、ポンプなどと呼ばれることがある。
【0076】
次に、本実施形態に係るセンサシステム100の動作例について
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、第一実施形態の変形例に係るセンサユニット120fAの内部構成を示す模式図である。
図9は、センサシステム100の動作例を示すフローチャートである。
【0077】
LiDAR6fの動作は、当該LiDAR6fに電気的に接続されたLiDAR制御部116(センサ制御部の一例)によって制御される。
図8に示すように、LiDAR制御部116は、本例では、ハウジング121内のLiDAR6fの下部に設けられている。なお、図示は省略するが、LiDAR制御部116は、車両制御部3にも電気的に接続されている。LiDAR制御部116で取得された情報と車両制御部3で取得された情報とは相互間で送受信される。なお、本実施形態では、車両制御部3とLiDAR制御部116は、別個の構成として設けられているが、車両制御部3とLiDAR制御部116は一体的に構成されてもよい。この点において、車両制御部3とLiDAR制御部116は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0078】
LiDAR制御部116は、クリーナ制御部113とも電気的に接続されている。LiDAR制御部116で取得された情報とクリーナ制御部113で取得された情報とは相互間で送受信される。具体的には、LiDAR制御部116で取得された点群データに基づいて検知された汚れ信号がクリーナ制御部113に送信される。
【0079】
図9に示すように、まず、ステップS1において、LiDAR制御部116は、LiDAR6fから出射された光の反射光を受光することによって、3次元マッピングデータ(以下、点群データと称する)を取得する。すなわち、LiDAR制御部116は、所定のフレームレートで車両1の周辺環境を示す点群データを取得する。
【0080】
次に、ステップS2において、LiDAR制御部116は、取得した点群データに基づいて、透過カバー123の汚れ情報を検知する。例えば、LiDAR制御部116は、取得した点群データの欠落を検知する。点群データの欠落は、例えば、LiDAR6fにより受光される光の受光強度に基づいて検知される。具体的には、点群データのうち、受光強度が所定のしきい値以下および/または所定のしきい値以上のデータについては、「欠落(あるいはノイズ)」と判断される。
【0081】
次に、ステップS3において、LiDAR制御部116は、ステップS2で検知された汚れ情報に基づいて、透過カバー123に汚れが付着しているか否かを判定する。例えば、LiDAR制御部116は、点群データの欠落を検知した場合に、その欠落の度合い(欠落度)が所定のしきい値以上であるかを判定する。欠落度は、例えば、全点群データのうちデータ欠落の数に基づいて定義してもよく、欠落領域の大きさに基づいて定義してもよい。
【0082】
ステップS3において、点群データの欠落度が所定のしきい値以上ではないと判定された場合には(ステップS3のNo)、LiDAR制御部116は、処理をステップS1へと戻す。
【0083】
一方、ステップS3において、点群データの欠落度が所定のしきい値以上であると判定された場合には(ステップS3のYes)、ステップS4において、LiDAR制御部116は、汚れ信号をクリーナ制御部113に送信する。
【0084】
LiDAR制御部116から汚れ信号がクリーナ制御部113に送信されると、ステップS5において、クリーナ制御部113は受信した汚れ信号をトリガーとして、液クリーナ103Aのポンプ112と、エアクリーナ103Bのポンプ151とを駆動する。これにより、透過カバー123の第一領域123a及び第二領域123bに対して、液ノズル131から洗浄液を噴射されるとともにエアノズル141から高圧空気が噴射される。その後、本処理は終了する。
【0085】
以上説明したように、本実施形態のセンサユニット120fは、ハウジング121内に前LiDAR6fおよび前カメラ6gを備えるとともに、ハウジング121の上部に液クリーナ103Aを、ハウジング121の側部にエアクリーナ103Bを備えている。そして、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bによって、前LiDAR6fおよび前カメラ6gの前方側を覆う透過カバー123(洗浄対象面)を洗浄することができるように構成されている。この構成によれば、前LiDAR6fと前カメラ6gとが一体化されたセンサユニット120fを効果的に洗浄することができる。
【0086】
ところで、LiDARから出射された光が透過カバーやアウターレンズ等で反射されると、当該反射光がLiDAR6fに入射して迷光となってしまう場合がある。これに対して、本実施形態に係るセンサユニット120fによれば、透過カバー123が、ハウジング121内に収容されている前LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜方向へ延びるように取り付けられている。このため、前LiDAR6fから出射され、透過カバー123で反射されて前LiDAR6fに入射する反射光を低減させることができる。したがって、前LiDAR6fの測定に対する反射光の影響を抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態においては、透過カバー123が、上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かうように傾斜して取り付けられている。このため、外部上方から透過カバー123に外光(特に、太陽光)が入射することを抑制できる。したがって、例えば、太陽光などの外光による前LiDAR6fおよび前カメラ6gへの影響を抑制することができる。
【0088】
また、センサユニット120fのハウジング121は、前部の左右に張出部124を有し、当該張出部124にエアクリーナ103Bのエアノズル141が設けられている。張出部124は、傾斜して取り付けられた透過カバー123の左右方向において透過カバー123の面よりも外側に張り出して設けられた部位である。このため、洗浄対象面である透過カバー123に向けて高圧空気を噴射しやすい。すなわち、ハウジング121に、エアノズル141を効率的に配置することができる。
【0089】
また、本実施形態においては、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bを制御するクリーナ制御部113がハウジング121に一体的に取り付けられている。これにより、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bの制御機能もセンサユニット120fに一体化されるため、車両ECUである車両制御部3の負荷を軽減することができる。
【0090】
また、センサユニット120fによれば、液クリーナ103Aは、前LiDAR6fから出射する光が透過する第一領域123aに向けて洗浄液を噴射する第一液ノズル131aと、前カメラ6gのレンズに対応する第二領域123bに向けて洗浄液を噴射する第二液ノズル131bとを有している。このため、前LiDAR6fに対応する洗浄対象面に対する洗浄と前カメラ6gに対応する洗浄対象面に対する洗浄とを効率的に両立させることができる。
【0091】
また、センサユニット120fを備えたセンサシステム100は、クリーナ103の第一液ノズル131aと第二液ノズル131bとからそれぞれ噴射される洗浄媒体によって、前LiDAR6fおよび前カメラ6gの前方側を覆う透過カバー123の第一領域123aおよび第二領域123b(洗浄対象面)を同時に洗浄することができるように構成されている。この構成によれば、前LiDAR6fと前カメラ6gとが一体化されたセンサシステム100を効果的に洗浄することができる。
【0092】
また、本実施形態においては、前LiDAR6fから出射した光が透過する透過カバー123の第一領域123aに、可視光を遮光するフィルタ126が設けられている。このため、外部から第一領域123aに入射しようとする可視光をフィルタ126によって遮光することができ、前LiDAR6fでのセンシングへの悪影響を低減させることができる。したがって、前LiDAR6fに好適な洗浄対象面と前カメラ6gに好適な洗浄対象面とを備えた透過カバー123を簡便な構成で実現することができる。
【0093】
また、センサユニット120fによれば、前LiDAR6fと前カメラ6gとが一体化されたユニットとして構成することで、前LiDAR6fと前カメラ6gに対する液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bの位置決め精度を高めやすい。また、センサユニット120fの車両1への搭載時に、前LiDAR6fと前カメラ6g、さらにこれらを洗浄するクリーナユニット110をも一緒に組み込むことができるので、車両1への組み付け性も高められる。
【0094】
また、本実施形態のセンサシステム100は、LiDAR6f(第一センサの一例)と、カメラ6g(第二センサの一例)と、LiDAR6fに対応する透過カバー123の第一領域123a(第一洗浄対象面の一例)とカメラ6gに対応する透過カバー123の第二領域123b(第二洗浄対象面の一例)とを洗浄液により洗浄可能なノズル131を有するクリーナ103と、クリーナ103を制御するクリーナ制御部113と、を備えている。そして、クリーナ制御部113は、LiDAR6fが取得した点群データから検知された汚れ情報に基づいて、透過カバー123の第一領域123a及び第二領域123bの両方を洗浄するように、クリーナ103を制御する。このように、本実施形態によれば、ユニット化された複数のセンサのうち一方のセンサ(ここでは、LiDAR6f)の検知情報により、両センサ(LiDAR6f及びカメラ6g)の洗浄対象面に対して洗浄が行われる。これにより、LiDAR6fとカメラ6gとが一体化されたセンサユニット120fの洗浄対象面を効率的に洗浄することができる。
【0095】
また、本実施形態において、クリーナ制御部113は、LiDAR6fが取得した点群データの欠落度が所定のしきい値以上の場合に、透過カバー123の第一領域123a及び第二領域123bの両方を洗浄するように、クリーナ103を制御する。これにより、簡便な構成で、LiDAR6f並びにカメラ6gの洗浄が必要かどうかを判断することができる。
【0096】
また、本実施形態において、液クリーナ103Aは、透過カバー123の第一領域123aに向けて洗浄液を噴射する第一液ノズル131aと、透過カバー123の第二領域123bに向けて洗浄液を噴射する第二液ノズル131bとを有している。また、エアクリーナ103Bは、透過カバー123の第一領域123aに向けて洗浄液を噴射する第一エアノズル141aと、透過カバー123の第二領域123bに向けて洗浄液を噴射する第二エアノズル141bとを有している。このように、各クリーナ103A,103Bによれば、LiDAR6fに対応する第一領域123aに対する洗浄とカメラ6gに対応する第二領域123bに対する洗浄とを効率的に両立させることができる。
【0097】
また、本実施形態において、透過カバー123は、上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かうように傾斜して形成されている。このように、透過カバー123が、LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜方向に延びるように形成されていることで、透過カバー123による反射光や太陽光などの外光による影響を抑制することができる。したがって、LiDAR制御部116にて取得される点群データからの汚れ情報を高精度に検知することができる。
【0098】
また、上述した実施形態では、センサユニット120fに収容されるLiDAR6fとカメラ6gのうちLiDAR6fが取得した点群データから検知された汚れ情報に基づいて、透過カバー123の第一領域123aと第二領域123bの両方を洗浄しているが、この例に限られない。例えば、カメラ6gが取得した画像データから検知された汚れ情報に基づいて、透過カバー123の第一領域123aと第二領域123bの両方を洗浄してもよい。この構成によっても、LiDAR6fとカメラ6gとが一体化されたセンサユニット120fの洗浄対象面を効率的に洗浄することができる。
【0099】
また、上述した実施形態では、点群データの欠落度に基づいて、透過カバー123に汚れが付着しているか否か、すなわち、透過カバー123の洗浄が必要であるか否かを判定しているが、この例に限られない。例えば、点群データから算出される距離情報に基づいて、LiDAR6fから点群データに含まれるある特定領域までの距離がLiDAR6fから透過カバー123までの距離と略等しくなった場合に、透過カバー123に汚れが付着していると判定してもよい。
【0100】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係るセンサユニットについて、
図10から
図13を参照して説明する。
図10は、LiDARやカメラ等のセンサとクリーナとが一体化されたセンサユニットの構成を示す斜視図である。
図11は、センサユニットの内部構造を示す縦断面図である。
図12は、センサユニットの内部構造を示す横断面図である。
図10から
図12に示す例では、センサシステムに含まれる複数のセンサユニットのうち、車両1の前部に設けられる第二実施形態に係る前センサユニット220fについて説明する。
【0101】
図10から
図13に示すように、第二実施形態に係る前センサユニット220fは、ハウジング221と、前LiDAR6fと、前カメラ6gと、液クリーナ103Aと、エアクリーナ103Bと、クリーナ制御部113と、を備えている。液クリーナ103Aとエアクリーナ103Bは、前SC103を構成するクリーナである。
【0102】
透過カバー223は、ハウジング221における開口部222の開口縁よりも奥側(後側)へ入り込むように設けられている。透過カバー223は、ハウジング221内に収容されている前LiDAR6fの例えば光軸に直交する方向へ延びるように設けられている中央平坦部223A(中央領域の一例)と、前LiDAR6fの例えば光軸に直交する面に対して傾斜する方向へ延びるように設けられている外周領域223Bと、を有している。
【0103】
外周領域223Bは、開口部222の開口端から開口部222の中心部に向かうにつれて凹状に傾斜するように形成されている。また、外周領域223Bは、中央平坦部223Aの周囲に連続するように形成されている。外周領域223Bは、中央平坦部223Aの上部に連続する上部外周領域223B1と、下部に連続する下部外周領域223B2と、左部に連続する左部外周領域223B3と、右部に連続する右部外周領域223B4と、を有している。
【0104】
透過カバー223の外周領域223Bは、開口部222の開口縁から奥側へ向かうにつれてハウジング221の内側に入り込むように形成されている。例えば、上部外周領域223B1は、下方内側に向かって傾斜している。下部外周領域223B2は、上方内側に向かって傾斜している。左部外周領域223B3は、右方内側に向かって傾斜している。右部外周領域223B4は、左方内側に向かって傾斜している。外周領域223Bから中央平坦部223Aへと連続する領域、すなわち外周領域223Bと中央平坦部223Aとの境界領域224は、例えば湾曲状に形成されている。なお、境界領域224は、外周領域223Bの面と中央平坦部223Aの面とによって鈍角を構成するように形成されていてもよい。また、各外周領域223B1~223B4の傾斜する面は、平面状に形成されていてもよいし、湾曲状に形成されていてもよい。
【0105】
透過カバー223の中央平坦部223Aは、ハウジング221の開口部222よりも面積が小さくなるように形成されている。中央平坦部223Aは、少なくともハウジング221内に収容されている前LiDAR6fと前カメラ6gの前面領域を覆うことができる大きさに形成されている。中央平坦部223Aは、前LiDAR6fから出射される光または前LiDAR6fに入射する光が透過される領域である。
【0106】
このような構成により、ハウジング221の開口部222には、透過カバー223の表面の中央平坦部223Aと外周領域223Bとによって凹状空間225が画成されている。また、ハウジング221の左側壁と透過カバー223の左部外周領域223B3との間には、左部外周領域223B3が傾斜していることに伴って、略三角柱状の空間226(
図12参照)が形成されている。同様に、ハウジング221の右側壁と透過カバー223の右部外周領域223B4との間には、右部外周領域223B4が傾斜していることに伴って、略三角柱状の空間226が形成されている。
【0107】
透過カバー223の第一領域223Cは、前LiDAR6fから出射された光が透過する領域である。透過カバー223の第二領域223Dは、前カメラ6gのレンズを覆う領域である。液ノズル131の第一液ノズル131a(第一ノズルの一例)は、例えば、透過カバー223の第一領域223Cに向けて洗浄液を噴射する。液ノズル131の第二液ノズル131b(第二ノズルの一例)は、透過カバー223の第二領域223Dに向けて洗浄液を噴射する。液クリーナ103Aは、第一領域223Cと第二領域223Dとを同時に洗浄することが可能である。
【0108】
右側のエアクリーナ103Bは、前LiDAR6fに対応する第一領域223Cに向けて空気を噴射する第一エアノズル141aを有している。左側のエアクリーナ103Bは、前カメラ6gに対応する第二領域223Dに向けて空気を噴射する第二エアノズル141bを有している。
【0109】
なお、
図10の第一領域223Cと第二領域223Dは、洗浄対象面の範囲の一例として図示されたものであり、これに限られない。実際の洗浄対象面としては、前LiDAR6fおよび前カメラ6gが情報を取得するのに関わる全領域が対象であり、両領域は
図10に図示された第一領域223Cと第二領域223Dよりも広く互いに重複した領域であってもよい。
【0110】
透過カバー223の第一領域223C、すなわち前LiDAR6fから出射した光が透過する領域には、可視光を遮光するフィルタ228が設けられている。フィルタ228は、外部から第一領域223Cに入射しようとする可視光を遮光することができるように構成されている。フィルタ228は、例えば、第一領域223Cの裏面側に張り付けられている。フィルタ228は、例えば、透過カバー223に蒸着されていてもよい。
【0111】
クリーナ制御部113は、ハウジング221に一体的に取り付けられている。本実施形態では、クリーナ制御部113は、ハウジング221内の後部に取り付けられている。
【0112】
クリーナ制御部113は、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bの動作を制御する。クリーナ制御部113は、液クリーナ103Aの第一エアノズル141aと第二エアノズル141bとによって第一領域223Cと第二領域223Dとを同時に洗浄することができるように液クリーナ103Aを制御する。また、クリーナ制御部113は、エアクリーナ103Bの第一エアノズル141aと第二エアノズル141bとによって第一領域223Cと第二領域223Dとを同時に洗浄することができるようにエアクリーナ103Bを制御する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態のセンサユニット220fは、ハウジング221の開口部222に設けられた透過カバー223が、ハウジング221の開口端から中心部に向かって後方に凹むように形成されている。すなわち、透過カバー223は、ハウジング221内に収容されている前LiDAR6fの光軸に直交する方向へ延びる中央平坦部223Aと、前LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜する方向へ延びる外周領域223Bと、を有している。この構成によれば、
図13に示すように、ハウジング221の開口部222に、透過カバー223の表面の中央平坦部223Aと外周領域223Bとによって凹状空間225が画成される。このため、例えば、車両1の走行中に前方から外気W1~W4がセンサユニット220fに向かって吹き付けられたとしても、透過カバー223の凹状空間225に空気A1,A2が滞留しているために、凹状空間225内まで外気W1~W4が入り込みにくい。例えば、ハウジング221の上部に向かって吹き付けられる外気W1や、下部に向かって吹き付けられる外気W2は、凹状空間225に空気A1,A2が滞留するために、ハウジング221の上下の外方へ流される。また、ハウジング221の中央部付近に向かって吹き込まれる外気W3,W4は、凹状空間225に空気A1,A2が滞留するために、ハウジング221の上下方向へ流される。したがって、外気W1~W4中に混じる塵や埃等の汚れが透過カバー223の表面に付着するのを抑制することができる。これにより、前LiDAR6fと前カメラ6gとが一体化されたセンサユニット220fにおける透過カバー223の清浄度を良好に維持することができる。
【0114】
また、センサユニット220fは、透過カバー223を洗浄媒体により洗浄可能な少なくとも1つのノズル131を有する前センサクリーナ103を備えている。この構成によれば、透過カバー223の清浄度をさらに良好に維持することができる。
【0115】
また、センサユニット220fにおける少なくとも一つのノズル131は、透過カバー223のうち前LiDAR6fに対応する領域に向けて洗浄液を噴射する第一液ノズル131aと、前カメラ6gに対応する領域に向けて洗浄液を噴射する第二液ノズル131bとを含んでいる。この構成によれば、前LiDAR6fの洗浄対象面(第一領域223C)に対する洗浄と前カメラ6gの洗浄対象面(第二領域223D)に対する洗浄とを効率的に両立させることができる。
【0116】
また、本実施形態においては、前LiDAR6fから出射した光が透過する透過カバー223の第一領域223Cに、可視光を遮光するフィルタ228が設けられている。このため、外部から第一領域223Cに入射しようとする可視光をフィルタ228によって遮光することができ、前LiDAR6fでのセンシングへの可視光による影響を低減させることができる。したがって、前LiDAR6fのセンシングに好適な透過カバー223を提供することができる。
【0117】
また、本実施形態においては、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bを制御するクリーナ制御部113がハウジング221に一体的に取り付けられている。これにより、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bの制御機能もセンサユニット220fに一体化されるため、車両ECUである車両制御部3の処理負荷を軽減することができる。
【0118】
上述した第二実施形態では、前LiDAR6fと前カメラ6gとが一体化されたセンサユニット220fの透過カバー223の構成について説明したが、この例に限られない。LiDARとカメラのいずれか一方を備えたセンサユニットや、LiDARやカメラ以外のセンサを備えたセンサユニットの透過カバーが、上記実施形態の透過カバー223のような構成を備えていてもよい。
【0119】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態に係るセンサシステムについて、
図14から
図18を参照して説明する。
図14および
図15に示すように、第三実施形態に係るセンサシステム300は、クリーナ制御部113に加えて、LiDAR制御部116を備えている。
【0120】
本実施形態では、クリーナ制御部113は、ハウジング121内の後部に取り付けられている。LiDAR制御部116もまたハウジング121に一体的に取り付けられている。第一実施形態の変形例と同様に、LiDAR制御部116は、ハウジング121内の下部に取り付けられている(
図8)。
なお、ハウジング121内において、クリーナ制御部113およびLiDAR制御部116が取り付けられる位置は、本実施形態の位置に限定されない。
【0121】
次に、
図16を参照して、第三実施形態に係るセンサシステム300の機能構成について説明する。
図16は、LiDAR制御部116とクリーナ制御部113の機能を説明するブロック図である。
図16に示すように、本例においては、各LiDAR6f,6b,6r,6lに対してLiDAR制御部116(116f,116b,116r,116l)とクリーナ制御部113(113f,113b,113r,113l)とが設けられている。なお、
図16においては、右LiDAR6rと、右LiDAR6rに対応するLiDAR制御部116r及びクリーナ制御部113rの図示は省略している。
【0122】
各LiDAR制御部116f,116b,116r,116lは、それぞれ対応するクリーナ制御部113f,113b,113r,113lに電気的に接続されている。各LiDAR制御部116f,116b,116r,116lで取得された情報と各クリーナ制御部113f,113b,113r,113lで取得された情報とは相互間で送受信される。LiDAR制御部116fは、前LiDAR6fに電気的に接続され、前LiDAR6fの動作を制御する。クリーナ制御部113fは、前SC103(液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103B)と、ポンプ112に電気的に接続されている。クリーナ制御部113は、前SC103とポンプ112の動作を制御する。
【0123】
LiDAR制御部116fは、前LiDAR6fによって取得された情報を前LiDAR6fから受信する。LiDAR制御部116fは、前LiDAR6fから受信した情報に基づいて、洗浄対象物である透過カバー123が汚れているか否か判定する。LiDAR制御部116fは、透過カバー123が汚れていると判定された場合、その旨を示す汚れ信号を生成し、生成した汚れ信号をクリーナ制御部113fに送信する。LiDAR制御部116fは、例えば、前LiDAR6fによって取得される反射光の点群データあるいは反射光の迷光情報に基づいて、透過カバー123が汚れているか否か判定する。点群データとは、LiDARから出射された光の反射光に基づいて取得される反射対象物の3次元マッピングデータのことをいう。迷光情報とは、LiDARから出射された光の反射光に基づいて取得される反射対象物での光の散乱情報のことをいう。
【0124】
クリーナ制御部113fは、LiDAR制御部116fから受信した汚れ信号に基づいて前SC103を制御し、洗浄対象面である透過カバー123を洗浄する。クリーナ制御部113fは、例えば、液クリーナ103Aの第一液ノズル131aと第二液ノズル131bとによって透過カバー123の第一領域123aと第二領域123bとを同時に洗浄することができるように液クリーナ103Aを制御する。また、クリーナ制御部113fは、エアクリーナ103Bの第一エアノズル141aと第二エアノズル141bとによって第一領域123aと第二領域123bとを同時に洗浄することができるようにエアクリーナ103Bを制御する。
【0125】
なお、図示は省略するが、各LiDAR制御部116f,116b,116r,116lは車両制御部3に電気的に接続されていてもよい。LiDAR制御部116f,116b,116r,116lで取得された情報と車両制御部3で取得された情報とは相互間で送受信される。また、クリーナ制御部113f,113b,113r,113lは車両制御部3に電気的に接続されていてもよい。クリーナ制御部113f,113b,113r,113lで取得された情報と車両制御部3で取得された情報とは相互間で送受信される。また、本実施形態では各LiDAR制御部116f,116b,116r,116lは、各LiDAR6f,6b,6r,6lと各クリーナ制御部113f,113b,113r,113lとの間に設けられているが、これに限られない。例えば、各LiDAR制御部116f,116b,116r,116lは、各LiDAR6f,6b,6r,6lと車両制御部3とを接続する通信ラインL上に設けられていてもよい。また、
図16に示す例では各LiDAR6f,6b,6r,6lに対してLiDAR制御部116f,116b,116r,116lとクリーナ制御部113f,113b,113r,113lとが設けられているが、これに限られない。例えば、全LiDAR6f,6b,6r,6lに対してLiDAR制御部116とクリーナ制御部113が一つずつ設けられるようにしてもよい。
【0126】
次に、第三実施形態に係るセンサシステム300の動作例について
図17と
図18を参照して説明する。
図17は、センサシステム300の動作例を示すフローチャートである。
図18は、前LiDAR6fが取得する透過カバー123の迷光情報を示す模式図である。
【0127】
図17に示すように、まず、ステップS31において、LiDAR制御部116は、前LiDAR6fから出射される光と前LiDAR6fが受光する反射光とに基づいて、反射対象物における光の迷光情報を取得する。すなわち、LiDAR制御部116は、所定のフレームレートで車両1の周辺環境を示す迷光情報を取得する。
【0128】
次に、ステップS32において、LiDAR制御部116は、取得した迷光情報に基づいて、透過カバー123の汚れ情報を検知する。例えば、LiDAR制御部116は、受光された反射光の散乱状況を検知する。
【0129】
例えば、
図18に示すように、透過カバー123に汚れが付着していない領域123cでは、前LiDAR6fから出射された光は透過カバー123を通過して車両外部の対象物に反射し、正規の反射光の波形Waとして前LiDAR6fに受光される。これに対して、透過カバー123に塵Dなどの汚れが付着している領域123dでは、前LiDAR6fから出射された光は透過カバー123に付着する塵Dに反射し、不必要に散乱する不正規の反射光(反射迷光)の波形Wbとして前LiDAR6fに受光される。
【0130】
次に、ステップS33において、LiDAR制御部116は、ステップS2で検知された汚れ情報に基づいて、透過カバー123に汚れが付着しているか否かを判定する。例えば、LiDAR制御部116は、反射迷光を検知した場合に、その反射迷光の度合い(反射迷光度)が所定のしきい値以上であるかを判定する。反射迷光度は、例えば、受光された全反射光に対する反射迷光の割合に基づいて定義してもよく、透過カバー123における反射迷光の領域の大きさに基づいて定義してもよい。
【0131】
ステップS33において、反射迷光度が所定のしきい値以上ではないと判定された場合には(ステップS33のNo)、LiDAR制御部116は、処理をステップS31へと戻す。
【0132】
一方、ステップS33において、反射迷光度が所定のしきい値以上であると判定された場合には(ステップS33のYes)、ステップS34において、LiDAR制御部116は、汚れ信号を生成し、生成した汚れ信号をクリーナ制御部113に送信する。
【0133】
LiDAR制御部116から汚れ信号がクリーナ制御部113に送信されると、ステップS35において、クリーナ制御部113は受信した汚れ信号をトリガーとして、例えば、液クリーナ103Aおよびポンプ112を駆動する。これにより、透過カバー123の第一領域123aおよび第二領域123bに対して、液クリーナ103Aの第一液ノズル131aと第二液ノズル131bから洗浄液が噴射される。その後、本処理は終了する。
【0134】
(変形動作例)
上述したセンサシステム300の動作例では、LiDAR制御部116は透過カバー123の迷光情報に基づいて、透過カバー123に汚れが付着しているか否かを判定しているが、これに限られない。例えば、LiDAR制御部116は、前LiDAR6fが取得する点群データに基づいて、透過カバー123に汚れが付着しているか否かを判定してもよい。
【0135】
例えば、LiDAR制御部116は、前LiDAR6fから出射される光と前LiDAR6fが受光する反射光とに基づいて、反射対象物における光の3次元マッピングデータ(点群データ)を取得する。次に、LiDAR制御部116は、取得した点群データの欠落に基づいて、透過カバー123の汚れ情報を検知する。点群データの欠落は、例えば、LiDAR6fにより受光される光の受光強度に基づいて検知される。具体的には、点群データのうち、受光強度が所定のしきい値以下および/または所定のしきい値以上のデータについては、「欠落(あるいはノイズ)」と判断される。そして、LiDAR制御部116は、点群データの欠落度合いが所定のしきい値以上であると判定した場合に、透過カバー123に汚れが付着していると判定し、汚れ信号をクリーナ制御部113に送信するようにしてもよい。
【0136】
以上説明したように、第三実施形態のセンサシステム300は、前LiDAR6fと、前LiDAR6fを覆う透過カバー123を洗浄媒体により洗浄可能なノズル131を有する前センサクリーナ103と、前LiDAR6fを制御するLiDAR制御部116(センサ制御部の一例)と、前センサクリーナ103を制御するクリーナ制御部113と、を備えている。そして、LiDAR制御部116は、前LiDAR6fにより検知された情報に基づいて生成した汚れ信号を、車両1の全体を制御する車両制御部3を介さずに、クリーナ制御部113へ送信する。このように、本実施形態によれば、前LiDAR6fの洗浄対象面である透過カバー123に汚れが付着しているかどうかを、車両制御部3とは別に設けられるLiDAR制御部116によって判定し、その判定結果が車両制御部3を介さずに、クリーナ制御部113に直接送信される。これにより、車両制御部3の処理負荷を増加させることなく、センサの洗浄動作を制御することができる。
【0137】
また、本実施形態において、クリーナ制御部113及びLiDAR制御部116は、ハウジング121に一体的に取り付けられている。これにより、クリーナの制御機能もセンサシステム300に一体化されるため、LiDAR制御部116からクリーナ制御部113への汚れ信号の送信を効率的に行うことができる。また、前センサクリーナ103や前LiDAR6fの制御機能もセンサシステム300に一体化されるため、車両ECUである車両制御部3の処理負荷を軽減することができる。
【0138】
また、本実施形態において、クリーナ制御部113は前LiDAR6fが取得する点群データあるいは前LiDAR6fが取得する透過カバー123の迷光情報に基づいて、透過カバー123に汚れが付着しているかどうかを示す汚れ信号を生成する。このため、本実施形態によれば、前LiDAR6fが取得する点群データあるいは迷光情報を用いて簡便に汚れ信号を生成することができる。
【0139】
なお、上述した第三実施形態では、前センサユニット320f内に前LiDAR6fと前カメラ6gとが収容される場合について説明したが、これに限られない。例えば、各センサユニット内にLiDARのみが収容されるようにしてもよい。すなわち、LiDARとカメラとは一体型でなくてもよい。
【0140】
また、上述した第三実施形態では、前センサユニット320fに収容される前LiDAR6fと前カメラ6gのうち前LiDAR6fが取得した点群データや迷光情報から検知される汚れ情報に基づいて、汚れ信号を生成しているが、これに限られない。例えば、前カメラ6gが取得した画像データから検知される汚れ情報に基づいて、汚れ信号を生成してもよい。
【0141】
また、上述した第三実施形態では、点群データの欠落度合いに基づいて、透過カバー123に汚れが付着しているか否か、すなわち、透過カバー123の洗浄が必要であるか否かを判定しているが、この例に限られない。例えば、点群データから算出される距離情報に基づいて、前LiDAR6fから点群データに含まれるある特定領域までの距離が前LiDAR6fから透過カバー123までの距離と略等しくなった場合に、透過カバー123に汚れが付着していると判定してもよい。
【0142】
(第四実施形態)
図19は、第四実施形態に係るセンサシステム400が組み込まれる車両システム2のブロック図である。
【0143】
図19に示すように、車両システム2の車両制御部3には、クリーナ制御部113とセンサ制御部115とを有するセンサシステム400が通信可能に接続されている。
【0144】
図20は、LiDARや赤外カメラ等のセンサとクリーナとが一体化されたセンサユニットの構成を示す斜視図である。
図21は、
図21のセンサユニットの内部構成を示す模式図である。以下に示す例では、センサシステム400に含まれる複数のセンサユニットのうち、車両1の前部に設けられる前センサユニット420fについて説明する。
【0145】
図20および
図21に示すように、第四実施形態に係るセンサシステム400が備える前センサユニット420fは、ハウジング121と、前LiDAR6fと、前赤外カメラ406gと、液クリーナ103Aと、エアクリーナ103Bと、クリーナ制御部113と、センサ制御部115と、を備えている。液クリーナ103Aとエアクリーナ103Bは、前SC103を構成するクリーナである。
【0146】
ハウジング121は、例えば、合成樹脂製であり、略箱型形状に形成されている。
図20では図示は省略されているが、ハウジング121内には、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gが収容されている。前LiDAR6fと前赤外カメラ406gとは、
図21に示す光出射面6faとレンズ6gaとを前方に向けて、ハウジング121内に例えば左右方向に並んで収容されている。
【0147】
ハウジング121の開口部122には、当該開口部122を隙間なく覆うように、透過カバー123が取り付けられている。透過カバー123は、例えば、透明または半透明の合成樹脂で形成されている。透過カバー123は、開口部122を覆うことによって、ハウジング121内に収容されている前LiDAR6fと前赤外カメラ406gの前面領域も覆うように取り付けられている。透過カバー123は、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gの前面領域を覆うように取り付けられることで、前センサユニット420fにおける前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gに対応した洗浄対象面として構成されている。
【0148】
透過カバー123は、ハウジング121内に収容されている前LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜する方向へ延びるように取り付けられている。透過カバー123は、上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込むように傾斜して取り付けられている。例えば、透過カバー123は、上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の奥側(後側)に向かって傾斜している。また、透過カバー123は、上方向から下方向に向かうにつれて左右方向の幅が狭くなるように(ハウジング121の側壁から離れるように)形成されている。
なお、透過カバー123の傾斜方向はこの傾斜方向に限られない。前LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜する方向であれば、例えば、右(左)方向から左(右)方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込むように傾斜していてもよい。
【0149】
ハウジング121は、上記のように透過カバー123が傾斜して取り付けられることにより、透過カバー123の左右方向において透過カバー123の面よりも外側(前方側)に張り出す張出部124を有している。本実施形態では、透過カバー123が上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込んでいるため、透過カバー123の左右方向にそれぞれ三角錐状の張出部124が形成されている。
なお、透過カバー123が右(左)方向から左(右)方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かって入り込むような変形例では、張出部124は、例えば、透過カバー123の左(右)方向だけ(または、上方及び下方)に形成される。
【0150】
液クリーナ103Aは、前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gに対応する洗浄対象面を、すなわち前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gの前面領域を覆う透過カバー123を、洗浄液により洗浄可能なクリーナである。また、エアクリーナ103Bは、同様に、前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gの前面領域を覆う透過カバー123を、空気により洗浄可能なクリーナである。
【0151】
液クリーナ103A及びエアクリーナ103Bを制御するクリーナ制御部113は、ハウジング121に一体的に取り付けられている。本実施形態では、クリーナ制御部113は、ハウジング121内の後部に取り付けられている。センサ制御部115もまたハウジング121に一体的に取り付けられている。本実施形態では、センサ制御部115は、ハウジング121内の下部に取り付けられている。
なお、ハウジング121内において、クリーナ制御部113およびセンサ制御部115が取り付けられる位置は、本実施形態の位置に限定されない。
【0152】
センサ制御部115には、前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gが電気的に接続されている。センサ制御部115は、前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gの動作を制御する。センサ制御部115は、前LiDAR6fによって取得される車両周囲の対象物に関する距離情報や方向情報等を前LiDAR6fから受信する。また、センサ制御部115は、前赤外カメラ406gによって取得される車両周囲の対象物に関する画像情報や距離情報等を前赤外カメラ406gから受信する。センサ制御部115は、例えば、前赤外カメラ406gによって撮像される画像を補完処理して新たな撮像画像を生成する。センサ制御部115は、例えば、前LiDAR6fによって取得される車両周囲の対象物に関する距離情報を用いて、前赤外カメラ406gによって取得される車両周囲の対象物の撮像画像を補完処理する。また、センサ制御部115は、例えば、車両周囲の天候条件に応じて、前LiDAR6fによって取得される車両周囲の対象物に関する距離情報または前赤外カメラ406gによって取得される車両周囲の対象物に関する距離情報のいずれか一方の距離情報を優先して使用する。
【0153】
クリーナ制御部113とセンサ制御部115とは電気的に接続されている。クリーナ制御部113で取得された情報とセンサ制御部115で取得された情報とは相互間で送受信される。なお、図示は省略するが、センサ制御部115は車両制御部3に電気的に接続されている。センサ制御部115で取得された情報と車両制御部3で取得された情報とは相互間で送受信される。また、本実施形態では、センサ制御部115と車両制御部3とは、別個の構成として設けられているが、センサ制御部115と車両制御部3は一体的に構成されてもよい。この点において、センサ制御部115と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。また、本実施形態では各センサユニット120f,120b、120r、120lに対してクリーナ制御部113とセンサ制御部115とが設けられているが、これに限られない。例えば、全センサユニット120f,120b、120r、120lに対してクリーナ制御部113とセンサ制御部115が一つずつ設けられるようにしてもよい。
【0154】
次に、各センサユニットに搭載されている赤外カメラについて説明する。
図22は、前赤外カメラ406g及びセンサ制御部115の構成を示すブロック図である。
図23は、前赤外カメラ406gにより各ターゲット距離領域を撮像する際の、発光部の動作(発光動作)とゲートの動作(カメラゲート動作)との時間的な関係を示す図である。前赤外カメラ406gは、車両周囲の映像をタイム・オブ・フライト(Time of Flight)方式(以下、ToF方式と称する)によって撮像可能なカメラである。ToF方式による撮像とは、所定周期でパルス光を出射し、ターゲット距離に応じて設定される撮像タイミングでターゲット距離からの反射光を撮像し、それにより得られたターゲット距離の異なる複数の撮像画像における同一画素の輝度に基づいて、画素毎の物体までの距離を表す距離画像データを生成することをいう。以下に赤外カメラ406gによるToF方式による距離画像の撮像について詳しく説明する。
【0155】
図22に示すように、前赤外カメラ406gは、発光部171と、対物レンズ172と、光増倍部173と、画像取得部174と、タイミングコントローラ(タイミング制御部)175と、を有している。また、前赤外カメラ406gに接続されているセンサ制御部115は、画像処理部146と、対象物認識処理部(物体認識処理部)147と、判断部148と、コントロール部149と、を有している。
【0156】
発光部171は、例えば、車両1の前端部に配置した赤外線LDまたは赤外線LEDである。
図23に示すように、発光部171は、タイミングコントローラ175から出力される発光パルス信号に応じて、所定の発光時間tL(例えば、5ns)の間、所定方向(例えば、車両1の前方)にパルス光を出射する。発光部171から出射されるパルス光の発光周期tPは、例えば、10μs以下の間隔である。
【0157】
対物レンズ172は、例えば、車両1の前方の所定範囲を撮像できる画角とするように設定された光学系であって、対象物(物体)からの反射光を受光する。対物レンズ172は、発光部171と近接して配置されていても良く、離隔して配置されていてもよい。
【0158】
光増倍部173は、ゲート173aとイメージインテンシファイア173bとを備えている。ゲート173aは、タイミングコントローラ175からの開閉指令信号に応じて開閉する。本実施形態では、ゲート173aの開放時間(ゲート時間)tGを、例えば、発光時間tLと同じ5nsとしている。ゲート時間tGは、領域1から領域nまでの全撮像領域における各領域(ターゲット距離領域)の撮像する対象の長さ(撮像する対象の深さ)に比例する。ゲート時間tGを長くするほど各領域の撮像対象長さは長くなる。撮像対象長さは、光速度×ゲート時間tGから求められ、本実施形態では、ゲート時間tG=5nsとしているため、撮像対象長さは、「光速度(約3×108m/s)×ゲート時間(5ns)」より、1.5mとなる。イメージインテンシファイア173bは、極微弱な光(対象物からの反射光等)を一旦電子に変換して電気的に増幅し、再度蛍光像に戻すことで光量を倍増してコントラストのついた像を見るためのデバイスである。イメージインテンシファイア173bにより増幅された光は画像取得部174のイメージセンサに導かれる。
【0159】
画像取得部174は、タイミングコントローラ175からの指令信号に応じて、光増倍部173から発せられた像を取得し、取得した撮像画像をセンサ制御部115の画像処理部146へ出力する。本実施形態では、例えば、解像度640×480(横:縦)、輝度値1~255(256段階)、100fps以上の画像取得部を用いている。
【0160】
タイミングコントローラ175は、画像取得部174により取得される撮像画像が、狙った撮像領域であるターゲット距離領域から帰ってくる反射光に基づいて取得されるタイミングの撮像画像となるように、撮像タイミングを制御する。例えば、タイミングコントローラ175は、発光部171の発光開始時点からゲート173aを開くまでの時間であるディレイ時間tD(
図23では、tDn,tDn+1)を設定し、ディレイ時間tDに応じた開閉指令信号を出力することで、撮像タイミングを制御する。ディレイ時間tDは、車両1からターゲット距離領域までの距離(撮像対象距離)を決める値である。ディレイ時間tDと撮像対象距離との関係は、以下の式(1)から求められる。
撮像対象距離=光速度(約3×10
8m/s)×ディレイ時間tD/2 ・・・(1)
【0161】
タイミングコントローラ175は、ターゲット距離領域が車両1の前方(遠方)へと連続的に離れるように、ディレイ時間tDを所定間隔(例えば、10ns)ずつ長くすることで、画像取得部174の撮像範囲を車両1の前方側へ変化させる。なお、タイミングコントローラ175は、ゲート173aが開く直前に画像取得部174の撮像動作を開始させ、ゲート173aが完全に閉じた後に撮像動作を終了させる。
【0162】
タイミングコントローラ175は、設定された所定のターゲット距離領域(領域1、領域2、…、領域nの各領域)毎に複数回の発光および露光を行うよう発光部171、ゲート173aおよび画像取得部174を制御する。画像取得部174が受光した光は電荷に変換され、複数回の発光および露光を繰り返すことで蓄積される。所定の電荷蓄積時間ごとに得られる1枚の撮像画像をフレームと呼ぶ。なお、画像取得部174は、ターゲット距離領域ごとに1枚の撮像画像(1フレーム)を取得してもよく、あるいは各ターゲット距離領域において複数の撮像画像(数フレーム)を取得してもよい。
【0163】
このようにして、画像取得部174は、ターゲット距離領域の異なる複数の撮像画像をToF方式により取得することができる。画像取得部174は、取得した複数の撮像画像をセンサ制御部115の画像処理部146へ出力する。
【0164】
画像処理部146は、画像取得部174により取得された全撮像領域の各撮像画像に基づいて、画素毎の対象物までの距離を表す距離画像データを生成し、生成した距離画像データを対象物認識処理部147へ出力する。
【0165】
対象物認識処理部147は、距離画像データに含まれる対象物を特定する。対象物の特定方法は、パターンマッチング等、周知の技術を用いることができる。
【0166】
判断部148は、対象物認識処理部147により特定された対象物(人、自動車、標識等)と自車両(車両1)との関係(距離、方向等)を判断する。
【0167】
コントロール部149は、判断部148により判断された対象物に関する距離情報、方向情報等に基づいて、前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gの動作を制御する。また、コントロール部149は、前赤外カメラ406gによりToF方式によって取得された距離画像データを補完処理して処理画像データを生成する。また、コントロール部149は、前赤外カメラ406gの各部を制御するタイミングコントローラ175に対して、制御内容を指示する指示信号を出力する。
【0168】
次に、本実施形態に係る距離画像取得の作用を説明する。
タイミングコントローラ175は、画像取得部174により取得される撮像画像が、所定のターゲット距離領域から帰ってくる反射光に基づく撮像画像となるように、ディレイ時間tDを設定し、画像取得部174の撮像タイミングを制御する。ターゲット距離領域に対象物が存在している場合、発光部171から出射された光がターゲット距離領域から戻ってくる時間は、車両1とターゲット距離領域との間の距離(撮像対象距離)を光が往復する時間となる。このため、ディレイ時間tDは、撮像対象距離と光速度から求めることができる。
【0169】
上記方法で取得された画像取得部174の撮像画像において、ターゲット距離領域に対象物が存在する場合、当該対象物の位置に対応する画素の輝度値データは、反射光の影響を受けるため他の画素の輝度値データよりも高い値を示す。これにより、各画素の輝度値データに基づいて、ターゲット距離領域に存在する対象物との距離を求めることができる。
【0170】
図24は、車両1の前方の異なる位置に4つの対象物A~Dが存在している状況を示している。対象物Aは傘をさした人物であり、対象物Bは対向車線側のバイクであり、対象物Cは歩道側の樹木であり、対象物Dは対向車線側の車両(対向車)である。車両1と各対象物との距離の関係は、A<B<C<Dとする。
【0171】
このとき、本実施形態では、1つの対象物で反射される反射光が、連続する複数の撮像領域における撮像画像の画素に反映されるように、撮像領域の一部をオーバーラップさせて画像を撮像している。すなわち、
図25に示すように、撮像対象距離をE1→E2→E3→…と連続的に変化させながら撮像する際、撮像領域の撮像対象長さFよりも撮像対象距離の増加量(E2-E1),(E3-E2)を短くすることで、撮像領域の一部がオーバーラップしながら変化するように撮像対象距離の増加量を設定している。
【0172】
図26は、各対象物A~Dに対応する画素の時間的な輝度変化を示している。上記のように撮像領域の一部をオーバーラップさせることで、連続する複数の撮像画像における輝度値は、
図26に示すように、徐々に増加し、各対象物A~Dの位置でピークとなった後に徐々に小さくなる三角波状の特性を示す。このように、1つの対象物から反射される反射光が複数の撮像画像に含まれるように画像を撮像することで、輝度の時間的変化が三角波状となるため、当該三角波状のピークと対応する撮像領域を車両1から各対象物A~Dまでの距離とすることにより対象物の検出精度を高められる。
【0173】
次に、
図27および
図28A、
図28Bを参照して、ToF方式によって取得された複数の撮像画像を処理して生成される処理画像の一例について説明する。
図27は、発光部171の発光周期および画像取得部174の撮像タイミングと、各撮像タイミングで撮像される画像を示す図である。
図28Aは通常の可視光カメラにより撮像されたカメラ画像を示す。
図28BはToF方式により撮像された
図27の画像に基づいて生成された処理画像を示す。
【0174】
上述の通り、撮像対象距離は「光速×ディレイ時間tD/2」から求められる。そのため、ディレイ時間tDを徐々に変化させることで、異なる撮像対象距離に応じた撮像画像を取得することができる。
図27には、異なる撮像タイミングで撮像された複数の画像のうち、例えば、露光1から露光4の撮像タイミングで撮像された画像401から画像404を示す。画像401は、車両1とターゲット距離領域との間の距離、すなわち撮像対象距離が25mのときの撮像画像である。同様に、画像402は撮像対象距離が50mのときの撮像画像である。画像403は撮像対象距離が75mのときの撮像画像である。画像404は撮像対象距離が100mのときの撮像画像である。なお、本例において、車両1は、雪が降っている悪天候下で走行しており、視界条件が悪い状況にあるとする。
【0175】
センサ制御部115の画像処理部146は、画像取得部174により取得される画像401から画像404に基づいて、各画像の距離画像データを生成する。
対象物認識処理部147は、パターンマッチング法により距離画像データに含まれる対象物(人、自動車、標識等)を特定する。本例の場合、画像402の距離画像データにおいては、自転車に乗る子供と降っている雪とが対象物として特定される。また、画像404の距離画像データにおいては、スマホを持って歩く男性と降っている雪とが対象物として特定される。また、画像401と画像403の距離画像データにおいては、降っている雪が対象物として特定される。
判断部148は、対象物認識処理部147により特定された各画像の対象物について、自車両(車両1)に対する対象物の距離情報、方向情報等を判断する。
【0176】
コントロール部149は、判断部148により判断された対象物に関する距離情報、方向情報等に基づいて、画像401から画像404の中から所定の画像を選択する。選択される画像は、車両1の前方に存在する対象物として正確に認識されることが必要な対象物が含まれる画像である。本例においてコントロール部149は、自転車に乗る子供が対象物として含まれている画像402と、スマホを持って歩く男性が対象物として含まれている画像404とを選択する。コントロール部149は、選択された画像に基づき車両1の前方の撮像画像として処理画像を生成する。本例においてコントロール部149は、選択された画像402と画像404とを組み合わせることにより、
図28Bに示すような処理画像を生成する。
【0177】
ところで、雪が降っている悪天候の状況において、通常の可視光カメラで撮像されたカメラ画像の場合、
図28Aに示すように、雪のために視界が悪く、前方の対象物として正確に認識することが必要な自転車に乗る子供やスマホを持って歩く男性を認識することが難しい撮像画像になる。
【0178】
これに対して、本実施形態によれば、コントロール部149が、ToF方式により撮像された画像の中から必要な画像のみを選択して処理画像を生成することができる。このため、
図28Bに示すように、自転車に乗る子供やスマホを持って歩く男性を鮮明に認識することが可能な画像を前赤外カメラ406gから取得される画像として生成することができる。
【0179】
次に、本実施形態に係るセンサシステム400の動作例について
図29を参照して説明する。
図29は、赤外カメラにより取得される距離画像を天候条件に応じて適宜処理する場合の動作を示すフローチャートである。
【0180】
まず、ステップS41において、センサ制御部115は、天候センサ(外部センサの一例)によって検出される天候情報を天候センサから受信する。次に、ステップS42において、センサ制御部115は、受信された天候情報に基づいて、車両1の周囲の天候状態を判定する。
【0181】
ステップS42において、車両1の周囲の天候が良い(例えば、雨や雪等が降っていない)と判定された場合には(ステップS42のYes)、ステップS43において、センサ制御部115は、前赤外カメラ406gによってToF方式で取得された車両周囲の対象物に関する距離画像データを生成する際に、前LiDAR6fによって取得される車両周囲の対象物に関する距離情報を用いて当該距離画像データを生成する。
【0182】
例えば、センサ制御部115は、車両1の前方に存在する対象物Xに関する距離情報を前LiDAR6fと前赤外カメラ406gから受信し、両センサの距離情報に違いがある場合、前LiDAR6fから受信された対象部Xに関する距離情報に基づいて、ToF方式で撮像された複数の撮像画像(
図27)のうち処理画像を生成するための所定の画像を選択する。すなわち、センサ制御部115は、前赤外カメラ406gの撮像画像を前LiDAR6fの距離情報により補完処理して処理画像を生成する。天候が良い状態では、前LiDAR6fによって取得される距離情報の方が前赤外カメラ406gによって取得される距離情報よりも正確性が高い場合が多い。このため、車両1の周囲の天候が良い場合には前LiDAR6fによって取得される距離情報を用いて前赤外カメラ406gで取得された距離画像データを補完することにより、正確な距離画像データを生成することができる。よって、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gとを備えたセンサシステム400において、精度の高いセンシングを実現することができる。
【0183】
一方、ステップS42において、車両1の周囲の天候が悪いと判定された場合には(ステップS42のNo)、ステップS44において、センサ制御部115は、前赤外カメラ406gによって距離画像データを生成する際に、前赤外カメラ406gによって取得される距離情報をそのまま用いる。天候が悪いとは、例えば、雨、雪、霧など視界が悪い状態であることを指す。天候が悪い状態では、前赤外カメラ406gによって取得される距離情報の方が前LiDAR6fによって取得される距離情報よりも正確性が高い場合が多い。このため、前赤外カメラ406gによって取得される距離情報をそのまま用いて、距離画像データを生成することにより、前LiDAR6fで取得した距離情報の精度が落ちる可能性の高い天候条件(悪天候)の場合であっても、センシングの品質を維持することができる。
【0184】
以上説明したように、第四実施形態の前センサユニット420fは、前LiDAR6fと、前赤外カメラ406gと、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gとを収容するハウジング121と、を備えている。したがって、この構成によれば、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gが一体化された新規な構成の前センサユニット420fを提供することができる。
【0185】
また、本実施形態において、前赤外カメラ406gは、ToF方式で撮像可能なカメラである。このため、ToF方式を採用した前赤外カメラ406gを用いることで、悪天候時にも車両1の外部の情報を適切に取得することができる。従来のカメラセンサでは視界条件が悪くなると機能が停止するため、悪天候下では自動運転機能を停止してドライバーに操作がゆだねられていた。したがって、本実施形態によれば、悪天候時であっても車両1の自動運転機能が停止することを防止できる。
【0186】
また、本実施形態のセンサシステム400は、車両1の周囲の天候が良い場合に、前LiDAR6fによって取得された距離情報を用いて前赤外カメラ406gの撮像画像を補完処理して距離画像データを生成する。天候が良い状態では、前LiDAR6fによって取得される距離情報の方が前赤外カメラ406gによって取得される距離情報よりも正確性が高い場合が多い。このため、車両1の周囲の天候が良い場合に前LiDAR6fによって取得される距離情報を用いることにより、正確な距離画像データを生成することができる。よって、本実施形態の構成によれば、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gとを備えたセンサシステム400において、精度の高いセンシングを実現することができる。
【0187】
また、本実施形態において、車両1の周囲の天候が悪い場合には、前赤外カメラ406gによって取得される距離情報をそのまま用いて、前赤外カメラ406gの距離画像データを生成している。天候が悪い状態では、前赤外カメラ406gによって取得される距離情報の方が前LiDAR6fによって取得される距離情報よりも正確性が高い場合が多い。このため、本実施形態の構成によれば、前LiDAR6fで取得した距離情報の精度が落ちる可能性の高い天候条件(悪天候)の場合であっても、センシングの品質を維持することができる。
【0188】
また、本実施形態においては、前LiDAR6fに対応する第一領域123aに向けて洗浄液を噴射する第一液ノズル131aと、前赤外カメラ406gに対応する第二領域123bに向けて洗浄液を噴射する第二液ノズル131bと、を有する液クリーナ103Aを備えている。このため、前赤外カメラ406gと前LiDAR6fとが一体化されたセンサユニット120fの洗浄対象面の清浄度を保つことができる。また、前赤外カメラ406gに対応する洗浄対象面に対する洗浄と前LiDAR6fに対応する洗浄対象面に対する洗浄とを効率的に両立させることができる。
【0189】
ところで、LiDARから出射された光が透過カバーやアウターレンズ等で反射されると、当該反射光がLiDARに入射して迷光となってしまう場合がある。これに対して、本実施形態のセンサユニット120fによれば、透過カバー123が、ハウジング121内に収容されている前LiDAR6fの光軸に直交する面に対して傾斜方向へ延びるように取り付けられている。このため、前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gから出射され、透過カバー123で反射されて前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gに入射する反射光を低減させることができる。したがって、前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gの測定に対する反射光の影響を抑制することができる。
【0190】
また、本実施形態においては、透過カバー123が、上方向から下方向に向かうにつれてハウジング121の内側に向かうように傾斜して取り付けられている。このため、外部上方から透過カバー123に外光(特に、太陽光)が入射することを抑制できる。したがって、例えば、太陽光などの外光による前LiDAR6fおよび前赤外カメラ406gへの影響を抑制することができる。
【0191】
また、本実施形態においては、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bを制御するクリーナ制御部113がハウジング121に一体的に取り付けられている。これにより、液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bの制御機能もセンサユニット120fに一体化されるため、車両ECUである車両制御部3の負荷を軽減することができる。
【0192】
また、センサユニット420fによれば、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gとが一体化されたユニットとして構成することで、前LiDAR6fと前赤外カメラ406gに対する液クリーナ103Aおよびエアクリーナ103Bの位置決め精度を高めやすい。また、センサユニット420fの車両1への搭載時に、前LiDAR6fと前赤外カメラ406g、さらにこれらを洗浄するクリーナユニット110をも一緒に組み込むことができるので、車両1への組み付け性も高められる。
【0193】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0194】
上述した実施形態では、センサユニット等を備えるセンサシステムを自動運転可能な車両に搭載した例を説明したが、センサシステムは自動運転不可能な車両に搭載してもよい。
【0195】
また、上述した実施形態では、洗浄液を噴射する液クリーナ103Aをハウジング121の上部に取り付けているが、これに限られない。例えば、空気を噴射するエアクリーナをハウジング121の上部に取り付けるようにしてもよい。エアクリーナは、液クリーナ103Aと同様に、第一領域123aと第二領域123bとを同時に洗浄することができるように構成される。また、この場合、ハウジング121の側部に取り付けられるクリーナを、液クリーナとしてもよい。この構成によれば、洗浄媒体として適した洗浄液または空気を選択して使用することができる。
【0196】
センサユニット120fの液クリーナ103Aが噴射する洗浄液は、水、あるいは洗剤を含む。フロント・リヤウィンドウ1f,1b、ヘッドランプ7r,7l、LiDAR6f,6b,6r,6l、カメラ6c,6g,6m,6sのそれぞれに噴射する洗浄媒体は、相異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0197】
本出願は、2019年10月23日出願の日本特許出願2019-192595号、2019年10月23日出願の日本特許出願2019-192596号、2019年10月23日出願の日本特許出願2019-192597号、2019年10月23日出願の日本特許出願2019-192598号、2019年10月28日出願の日本特許出願2019-195180号、2019年11月1日出願の日本特許出願2019-199532号、及び2019年11月1日出願の日本特許出願2019-199533号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。