(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ミラーユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20241127BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20241127BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G02B26/10 Z
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2021558187
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2020035051
(87)【国際公開番号】W WO2021100300
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019210634
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】井出 智行
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-17832(JP,A)
【文献】特開平8-184775(JP,A)
【文献】特開2015-195330(JP,A)
【文献】特開2001-56442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ミラー部を有する光走査デバイスと、
前記光走査デバイスを収容するパッケージと、を備え、
前記パッケージは、
所定方向の一方側に開口する光入射開口が設けられ、前記光入射開口から入射した光が前記可動ミラー部に入射可能となるように前記光走査デバイスを保持する本体部と、
前記光入射開口の縁に沿って延在するように前記本体部の頂面に設けられた突起と、
前記突起の内側において前記頂面上に配置され、前記光入射開口を覆う平板状の窓部材と、を有し、
前記突起における前記一方側の端面は、前記窓部材よりも前記一方側に位置しており、
前記突起の厚さは、前記突起の前記頂面からの高さよりも小さく、
前記所定方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、前記窓部材において前記突起によって覆われている部分の長さは、前記窓部材において前記突起から露出している部分の長さよりも長い、ミラーユニット。
【請求項2】
前記窓部材の側面と前記突起の内面との間には、隙間が形成されている、請求項1に記載のミラーユニット。
【請求項3】
前記突起の厚さは、前記窓部材の厚さよりも薄い、請求項1又は2に記載のミラーユニット。
【請求項4】
前記光走査デバイスは、前記可動ミラー部のミラー面が前記窓部材に対して傾斜した状態で、前記本体部に保持されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項5】
前記突起は、前記本体部と一体に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項6】
前記本体部及び前記突起の少なくとも一方は、樹脂により形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項7】
前記本体部の前記頂面には、前記一方側を向いた平坦な当接面を有する当接部が突設されており、
前記窓部材は、前記当接面に接触している、請求項1~6のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項8】
前記窓部材と前記本体部の前記頂面との間には、隙間が形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【請求項9】
前記突起は、前記所定方向から見た場合に、環状に形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のミラーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、ミラーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
可動ミラー部を有する光走査デバイスと、光走査デバイスを収容するパッケージと、を備えるミラーユニットが知られている(例えば特許文献1,2参照)。このようなミラーユニットにおいては、可動ミラー部に入射する光を通過させる光入射開口がパッケージに設けられ、光入射開口を覆うように窓部材が配置される。光は外部から窓部材を介して可動ミラー部に入射して可動ミラー部で反射され、窓部材を介して外部に出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-99567号公報
【文献】特開2018-17832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミラーユニットでは、パッケージ上に窓部材が載置されている。この場合、窓部材に外力が作用して窓部材が破損するおそれがある。一方、特許文献2に記載のミラーユニットでは、パッケージの頂面に光入射開口を囲むように突起が設けられており、当該突起の内側に窓部材が嵌め込まれている。この場合、窓部材に外力が作用することを抑制し、窓部材の保護を図ることができる。
【0005】
しかしながら、単に突起の内側に窓部材を嵌め込んだだけでは、例えば環境温度の変化等によりパッケージが熱収縮又は熱膨張(以下、併せて熱変形とも記す)した場合に、パッケージによって押圧されることで窓部材が撓んでしまうおそれがある。窓部材に撓みが生じると、窓部材における光の屈折角度が変化するため、光走査を精度良く行うことが難しい。
【0006】
特に、上述したミラーユニットのように可動ミラー部を揺動させて光を走査する構成においては、可動ミラー部の角度によっては窓部材への光の入射角度が大きくなり、窓部材から出射する光の屈折角度が大きくなる。そのため、高精度な光走査を実現するためには、窓部材での屈折の影響を考慮する必要がある。そこで、窓部材を薄く形成して窓部材における屈折量を低減することで、窓部材での屈折の影響を抑制することが考えられる。しかしながら、窓部材を薄く形成すると、パッケージが熱変形した際に窓部材が撓み易くなってしまう。特に、窓部材への光の入射角度が大きい場合、窓部材の撓み変形が光走査の精度に与える影響が大きい。
【0007】
本開示の一側面は、上記事情に鑑みてなされたものであり、窓部材の確実な保護を図りつつ、高精度な光走査を実現することができるミラーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係るミラーユニットは、可動ミラー部を有する光走査デバイスと、光走査デバイスを収容するパッケージと、を備え、パッケージは、所定方向の一方側に開口する光入射開口が設けられ、光入射開口から入射した光が可動ミラー部に入射可能となるように光走査デバイスを保持する本体部と、光入射開口の縁に沿って延在するように本体部の頂面に設けられた突起と、突起の内側において頂面上に配置され、光入射開口を覆う平板状の窓部材と、を有し、突起における一方側の端面は、窓部材よりも一方側に位置しており、突起の厚さは、突起の頂面からの高さよりも小さく、所定方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材において突起によって覆われている部分の長さは、窓部材において突起から露出している部分の長さよりも長い。
【0009】
このミラーユニットでは、本体部の頂面に光入射開口の縁に沿って延在するように突起が設けられており、突起の内側における頂面上に窓部材が配置されている。そして、突起における一方側の端面が、窓部材よりも一方側に位置している。また、所定方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材において突起によって覆われている部分の長さが、窓部材において突起から露出している部分の長さよりも長い。これにより、窓部材に外力が作用するのを抑制し、窓部材の確実な保護を図ることができる。また、突起の厚さが、突起の頂面からの高さよりも小さくなっている。これにより、本体部及び突起を小さく形成することができ、本体部及び突起の熱変形量を低減することができる。その結果、本体部及び突起が熱変形した際に窓部材に応力が作用するのを抑制することができる。したがって、窓部材を薄く形成することができ、窓部材での屈折の影響を低減することができる。また、窓部材を薄く形成したとしても、本体部及び突起の熱変形に起因して窓部材が撓み変形するのを抑制することができる。更に、突起の厚さが突起の頂面からの高さよりも小さいため、突起が撓み易い。そのため、仮に本体部及び突起が熱変形して突起が窓部材に接触したとしても、突起から窓部材に応力が伝わり難い。このことによっても、窓部材を薄く形成して窓部材での屈折の影響を低減することができると共に、本体部及び突起の熱変形に起因して窓部材が撓み変形するのを抑制することができる。以上により、このミラーユニットによれば、窓部材の確実な保護を図りつつ、高精度な光走査を実現することができる。
【0010】
窓部材の側面と突起の内面との間には、隙間が形成されていてもよい。この場合、本体部及び突起が熱変形したとしても突起が窓部材に接触し難いため、窓部材に応力が作用するのを一層抑制することができる。
【0011】
突起の厚さは、窓部材の厚さよりも薄くてもよい。この場合、本体部及び突起が熱変形した際に窓部材に応力が作用するのをより一層抑制することができる。
【0012】
光走査デバイスは、可動ミラー部のミラー面が窓部材に対して傾斜した状態で、本体部に保持されていてもよい。この場合、ミラー面からの光が窓部材で反射した後にミラー面に戻るのを抑制することができる。一方、この場合、窓部材への光の入射角度が一層大きくなる。これに対し、このミラーユニットでは、本体部及び突起が熱変形した際に窓部材に応力が作用するのを十分に抑制することができ、高精度な光走査を実現することができる。
【0013】
突起は、本体部と一体に形成されていてもよい。この場合、本体部及び突起が熱変形した際に窓部材によって押圧されて突起が破損するのを抑制することができる。
【0014】
本体部及び突起の少なくとも一方は、樹脂により形成されていてもよい。この場合、本体部及び突起の少なくとも一方が熱変形し易くなるが、このミラーユニットでは、本体部及び突起が熱変形した際に窓部材に応力が作用するのを十分に抑制することができ、高精度な光走査を実現することができる。
【0015】
本体部の頂面には、一方側を向いた平坦な当接面を有する当接部が突設されており、窓部材は、当接面に接触していてもよい。この場合、当接面との接触により窓部材が本体部に対して位置決めされるため、窓部材の配置角度が所望の角度からずれてしまうのを抑制することができる。また、窓部材の表面を完全に平坦に形成することは難しいが、このミラーユニットでは、少なくとも当接面との接触箇所を平坦に形成すればよいため、窓部材の製造を容易化することができる。
【0016】
窓部材と本体部の頂面との間には、隙間が形成されていてもよい。この場合、本体部及び突起が熱変形した際に窓部材に応力が作用するのをより一層抑制することができる。また、当該隙間を通気口として機能させることができ、パッケージ内で結露が生じるのを抑制することができる。
【0017】
突起は、所定方向から見た場合に、環状に形成されていてもよい。この場合、窓部材の一層確実な保護を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一側面によれば、窓部材の確実な保護を図りつつ、高精度な光走査を実現することができるミラーユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るミラーユニットの平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿っての断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿っての断面図である。
【
図6】ミラーユニットにおける光の進行経路の例を示す断面図である。
【
図7】比較例に係るミラーユニットにおける光の進行経路の例を示す断面図である。
【
図8】第1変形例に係るミラーユニットの平面図である。
【
図9】
図8に示される矢印B1側から見たミラーユニットの側面図である。
【
図10】
図8に示される矢印B2側から見たミラーユニットの側面図である。
【
図11】
図8に示される矢印B3側から見たミラーユニットの側面図である。
【
図12】(a)は、第2変形例に係るパッケージの平面図であり、(b)は、(a)に示される矢印B4側から見たパッケージの側面図である。
【
図13】(a)は、第3変形例に係るパッケージの平面図であり、(b)は、(a)に示される矢印B5側から見たパッケージの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[ミラーユニットの全体構成]
【0021】
図1~
図4に示されるように、ミラーユニット100は、光走査デバイス1と、光走査デバイス1を収容するパッケージ40と、を備えている。パッケージ40は、本体部41と、窓部材51と、を有している。本体部41には、所定方向(Z軸方向)の一方側S1に開口する光入射開口41aが設けられている。本体部41は、光入射開口41aから入射した光が光走査デバイス1に入射可能となるように、光走査デバイス1を保持している。窓部材51は、光入射開口41aを覆うように配置されている。
[光走査デバイスの構成]
【0022】
図5に示されるように、光走査デバイス1は、支持部2と、支持部2に対して揺動可能な可動ミラー部10と、磁界発生部Mと、を有している。可動ミラー部10は、第1可動部3と、第2可動部4と、一対の第1連結部5と、一対の第2連結部6と、ミラー7と、を有している。支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1連結部5及び一対の第2連結部6は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板により一体的に形成されている。つまり、光走査デバイス1は、MEMSデバイスとして構成されている。磁界発生部Mは、例えば、ハルバッハ配列がとられた永久磁石を含んで構成されており、略直方体状に形成されている。
【0023】
第1可動部3は、例えば矩形板状に形成されている。第2可動部4は、光軸方向Aから見た場合に隙間を介して第1可動部3を囲むように、例えば矩形環状に形成されている。支持部2は、光軸方向Aから見た場合に隙間を介して第2可動部4を囲むように、例えば矩形枠状に形成されている。つまり、支持部2は、光軸方向Aから見た場合に第1可動部3及び第2可動部4を囲むように枠状に形成されている。
【0024】
第1可動部3は、第1軸線X1周りに揺動可能となるように、一対の第1連結部5を介して第2可動部4に連結されている。つまり、第1可動部3は、支持部2において第1軸線X1周りに揺動可能となるように支持されている。第1可動部3は、第1部分31と、第2部分32と、を含んでいる。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に例えば円形状に形成されている。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に例えば矩形環状に形成されている。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に第2部分32に囲まれており、複数(この例では2つ)の接続部分33を介して第2部分32と接続されている。つまり、第1部分31と第2部分32との間には、複数の接続部分33を除いて隙間が形成されている。
【0025】
接続部分33は、例えば、第2部分32の矩形状の内縁のうち第2軸線X2に交差する2辺の中央部に位置している。すなわち、この例では、接続部分33は、第2軸線X2上に位置している。第1部分31は、少なくとも第2軸線X2に沿った方向において第2部分32に接続されていればよい。
【0026】
第2可動部4は、第2軸線X2周りに揺動可能となるように、一対の第2連結部6を介して支持部2に連結されている。つまり、第2可動部4は、支持部2において第2軸線X2周りに揺動可能となるように支持されている。第1軸線X1及び第2軸線X2は、光軸方向Aに垂直であり、互いに交差している(この例では互いに直交している)。なお、第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に矩形状又は多角形状に形成されていてもよい。第1部分31は、光軸方向Aから見た場合に、円形状(例えば楕円形状)に形成されていてもよい。第2部分32は、光軸方向Aから見た場合に五角形以上の多角形環状又は円環状に形成されていてもよい。
【0027】
一対の第1連結部5は、第1可動部3の第2部分32と第2可動部4との間の隙間において、第1可動部3を挟むように第1軸線X1上に配置されている。各第1連結部5は、トーションバーとして機能する。一対の第2連結部6は、第2可動部4と支持部2との間の隙間において、第2可動部4を挟むように第2軸線X2上に配置されている。各第2連結部6は、トーションバーとして機能する。
【0028】
ミラー7は、第1可動部3の第1部分31に設けられている。ミラー7は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点を含むように、第1部分31における磁界発生部Mとは反対側の表面に形成されている。ミラー7は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、金又は銀等の金属材料により、円形、楕円形又は矩形の膜状に形成されている。ミラー7における第1可動部3とは反対側の表面は、光軸方向Aと垂直に延在するミラー面7aを構成している。ミラー7の中心は、光軸方向Aから見た場合に、第1軸線X1と第2軸線X2との交点に一致している。このように、複数の接続部分33を介して第2部分32と接続された第1部分31にミラー7が設けられているため、第1可動部3が共振周波数レベルで第1軸線X1周りにおいて揺動しても、ミラー7に撓み等の変形が生じるのを抑制することができる。
【0029】
更に、光走査デバイス1は、第1駆動用コイル11と、第2駆動用コイル12と、配線15a,15bと、配線16a,16bと、電極パッド21a,21bと、電極パッド22a,22bと、を有している。なお、
図2では、説明の便宜上、第1駆動用コイル11及び第2駆動用コイル12が一点鎖線で示され、配線15a,15b及び配線16a,16bが実線で示されている。
【0030】
第1駆動用コイル11は、第1可動部3の第2部分32に設けられている。第1駆動用コイル11は、光軸方向Aから見た場合におけるミラー7の外側の領域(すなわち、第2部分32)においてスパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第1駆動用コイル11には、磁界発生部Mにより発生させられる磁界が作用する。
【0031】
第1駆動用コイル11は、第1可動部3の表面に形成された溝内に配置されている。つまり、第1駆動用コイル11は、第1可動部3に埋め込まれている。第1駆動用コイル11の一端は、配線15aを介して電極パッド21aに接続されている。配線15aは、第1可動部3から、一方の第1連結部5、第2可動部4及び一方の第2連結部6を介して、支持部2まで延在している。配線15a及び電極パッド21aは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。第1駆動用コイル11と配線15aとは、互いに接続されている。
【0032】
第1駆動用コイル11の他端は、配線15bを介して電極パッド21bに接続されている。配線15bは、第1可動部3から、他方の第1連結部5、第2可動部4及び他方の第2連結部6を介して、支持部2まで延在している。配線15b及び電極パッド21bは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。第1駆動用コイル11と配線15bとは、互いに接続されている。
【0033】
第2駆動用コイル12は、第2可動部4に設けられている。第2駆動用コイル12は、第2可動部4においてスパイラル状(渦巻き状)に複数回巻かれている。第2駆動用コイル12には、磁界発生部Mにより発生させられる磁界が作用する。第2駆動用コイル12は、第2可動部4の表面に形成された溝内に配置されている。つまり、第2駆動用コイル12は、第2可動部4に埋め込まれている。
【0034】
第2駆動用コイル12の一端は、配線16aを介して電極パッド22aに接続されている。配線16aは、第2可動部4から、一方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線16a及び電極パッド22aは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。なお、第2駆動用コイル12と配線16aとは、互いに接続されている。
【0035】
第2駆動用コイル12の他端は、配線16bを介して電極パッド22bに接続されている。配線16bは、第2可動部4から、他方の第2連結部6を介して、支持部2に延在している。配線16b及び電極パッド22bは、例えば、タングステン、アルミニウム、金、銀、銅又はアルミニウム系合金等の金属材料により一体的に形成されている。なお、第2駆動用コイル12と配線16bとは、互いに接続されている。
【0036】
光走査デバイス1における可動ミラー部10の動作の例を挙げる。第1例としては、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加される。このとき、第1駆動用コイル11には、磁界発生部Mにより発生させられた磁界が作用しているため、第1駆動用コイル11にローレンツ力が発生する。これにより、第1可動部3は、例えば、共振周波数レベルで第1軸線X1周りにおいて揺動させられる。
【0037】
また、第2駆動用コイル12には、一定の大きさの駆動電流が印加される。このとき、第2駆動用コイル12には、磁界発生部Mにより発生させられた磁界が作用しているため、第2駆動用コイル12にローレンツ力が発生する。これにより、第2可動部4は、例えば、駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りにおいて回転させられ、その状態で停止させられる。これにより、光走査デバイス1によれば、所定の光源からの光をミラー7により反射させつつ走査することができる。第1例では、第1可動部3が共振周波数で揺動されると共に第2可動部4が静的に用いられる。
【0038】
第2例としては、第1例の第1可動部3の動作と同様に、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることによって第1可動部3が共振周波数に応じて揺動されると共に、第2駆動用コイル12に高周波数の駆動電流が印加されることによって第2可動部4が共振周波数に応じて揺動される。このように、第2例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、共振周波数で揺動される。
【0039】
第3例としては、第1例の第2可動部4の動作と同様に、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りにおいて回転させられて停止させられると共に、第2駆動用コイル12に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第2可動部4が駆動電流の大きさに応じて第2軸線X2周りにおいて回転させられて停止させられる。このように、第3例では、第1可動部3及び第2可動部4の両方が、静的に用いられる。
【0040】
第4例としては、例えば第2可動部4が設けられていない場合等であって、第1駆動用コイル11に高周波数の駆動電流が印加されることにより、第1可動部3のみが共振周波数に応じて揺動される。さらに、第5例としては、同様の場合であって、第1駆動用コイル11に対して一定の大きさの駆動電流が印加されることによって、第1可動部3が駆動電流の大きさに応じて第1軸線X1周りにおいて回転させられて停止させられる。第4例及び第5例では、第1可動部3のみが駆動される。
【0041】
なお、
図2に示されるように、支持部2が磁界発生部Mによって支持され、第1可動部3及び第2可動部4は、磁界発生部Mから離間している。これにより、第1可動部3及び第2可動部4は、磁界発生部Mに干渉することなく回転可能となっている。
[パッケージの構成]
【0042】
図1~
図4に示されるように、パッケージ40の本体部41は、例えば略直方体状に形成されている。本体部41は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂材料からなり、射出成形により形成される。本体部41は、樹脂材料からなる場合、フィラー強化されていてもよい。本体部41は、Al,Fe又はそれらの合金等の金属材料により形成されてもよい。本体部41には、一方側S1に開口する凹部42が形成されている。凹部42の開口により、上述した光入射開口41aが構成されている。
【0043】
窓部材51は、例えば、ガラス等の透光性材料により形成された矩形平板状の基材の両表面上に反射防止膜が形成されることで構成されている。上述のとおり、窓部材51は、光入射開口41aを覆っている。窓部材51は、Z軸方向と垂直に延在する一対の主面51aと、X軸方向と垂直に延在する一対の側面51bと、Y軸方向と垂直に延在する一対の側面51cと、を有している。一対の側面51b及び一対の側面51cは、一対の主面51aに連続している。
【0044】
本体部41の凹部42は、光走査デバイス1が配置されるデバイス配置部43と、光走査デバイス1から外部へ延在する配線等が配置される配線配置部44と、を含んでいる。デバイス配置部43は、窓部材51の主面51aに対して傾斜して延在する第1面43aと、第1面43aから第1面43aと垂直に延在する第2面43bと、第1面43aからZ軸方向と垂直に延在する一対の第3面43cと、を有している。
【0045】
光走査デバイス1は、磁界発生部Mが第1面43a、第2面43b及び一対の第3面43cに接触した状態で、デバイス配置部43に配置されている。これにより、光走査デバイス1は、可動ミラー部10のミラー面7aが窓部材51の主面51aに対して傾斜した状態となっている。光走査デバイス1は、例えば、第1軸線X1がX軸方向と平行になり且つ第2軸線X2がY軸方向と平行になるように配置されている。
【0046】
配線配置部44は、窓部材51の主面51aに対して傾斜した第1面44aと、第1面44aに連続し且つ湾曲した第2面44bと、を有している。第1面44aには、例えば複数の電極パッドが配置されている。これらの電極パッドには、光走査デバイス1から延在する配線と、第2面44bを通ってパッケージ40の外部へ延在する配線とが、電気的に接続されている。なお、第2面44bは、必ずしも湾曲していなくてもよい。
【0047】
光入射開口41aは、Z軸方向から見た場合に(換言すれば窓部材51の主面51aに垂直な方向から見た場合に)略矩形状を呈している。より具体的には、光入射開口41aは、Z軸方向から見た場合に、デバイス配置部43に対応する矩形状の領域と、配線配置部44に対応する矩形状の領域を含んでいる。配線配置部44に対応する領域のY軸方向における幅は、デバイス配置部43に対応する領域のY軸方向における幅よりも狭くなっている。
図1では、光入射開口41aの縁が破線で示されている。
【0048】
本体部41は、凹部42を画定する枠状の側壁45を有している。側壁45は、Z軸方向から見た場合に、略矩形環状を呈し、光走査デバイス1を囲んでいる。側壁45は、最も一方側S1に位置する頂面45aと、Z軸方向に沿って延在する内面45bと、頂面45a及び内面45bに接続された傾斜面45cと、を有している。頂面45aは、Z軸方向と垂直に延在しており、傾斜面45cは、頂面45aに近づくにつれて一方側S1に近づくようにZ軸方向に対して傾斜して延在している。
【0049】
また、側壁45は、X軸方向と交差する平面に沿って延在する一対の外面45dと、Y軸方向と交差する平面に沿って延在する一対の外面45eと、を有している。この例では、一対の外面45dは、X軸方向と垂直に延在している。一対の外面45eは、Z軸方向と平行に延在する第1部分45fと、Z軸方向に対して傾斜して延在する第2部分45gを含んでいる。
【0050】
第2部分45gは、第1部分45fに対して他方側(一方側S1とは反対側)に配置され、本体部41における他方側の端部まで延在している。第2部分45gが形成されていることにより、Y軸方向における本体部41(側壁45)の幅は、他方側に近づくにつれて狭くなっている。これにより、本体部41を射出成形により形成する場合に、成形品を成形型から容易に取り出すことができる。また、第2部分45gだけでなく、Z軸方向と平行な第1部分45fが形成されているため、ミラーユニット100を光学系に組み込む際に第1部分45fを押し当てることでミラーユニット100を位置合わせすることができ、ミラーユニット100の位置合わせ精度を向上することができる。
【0051】
パッケージ40は、側壁45の頂面45aに設けられた突起61を更に有している。突起61は、光入射開口41aの縁に沿って延在している。突起61は、Z軸方向から見た場合に、矩形環状を呈し、光入射開口41aを囲んでいる。突起61が形成されていることより、突起61の内面61aと頂面45aとの間には段差部62が形成されている。
【0052】
突起61は、頂面45aの外縁に沿って延在している。Y軸方向から見た場合(
図2)、突起61の外面61bは、側壁45の外面45dと同一平面上に位置している。X軸方向から見た場合(
図3)、突起61の外面61bは、側壁45の外面45eの第1部分45fと同一平面上に位置している。突起61は、例えば、本体部41と同一の樹脂材料からなり、本体部41と一体に形成されている。本体部41及び突起61は、例えば、一回の射出成形により同時に形成され、単一の部材を構成している。
【0053】
側壁45の頂面45aには、3つの当接部63が設けられている。各当接部63は、Z軸方向から見た場合に、突起61よりも内側に配置されている。各当接部63は、一方側S1を向いた平坦な当接面63aを有している。当接面63aは、例えば、Z軸方向と垂直に延在しており、円形状を呈している。
【0054】
窓部材51は、光入射開口41aを覆うように段差部62に配置されている。すなわち、窓部材51は、突起61の内側において頂面45a上に配置され、光入射開口41aを覆っている。窓部材51の一対の主面51aの一方(以下、単に主面51aとも記す)が側壁45の頂面45aと向かい合い、窓部材51の側面51b,51cが突起61の内面61aと向かい合っている。窓部材51の主面51aは、当接部63の当接面63aに接触している(当接させられている)。これにより、頂面45aのうち当接面63aが設けられていない領域においては、窓部材51の主面51aと頂面45aとの間に隙間G1が形成されている。また、窓部材51の側面51b,51cと突起61の内面61aとの間には、隙間G2が形成されている。すなわち、側面51b,51cは、内面61aから離間している。
【0055】
窓部材51は、例えば、低融点ガラス等の接合材70により本体部41に接合されている。窓部材51は、例えば、Z軸方向から見た場合における4つの隅部において本体部41に接合されている。4つの隅部に加えて又は代えて、窓部材51は、当接面63aとの接触箇所において接合材により本体部41に接合されていてもよい。
【0056】
突起61における一方側S1の端面61cは、全周にわたって(端面61cにおけるいずれの位置においても)、窓部材51よりも一方側S1に位置している。すなわち、突起61の頂面45aからの高さHは、窓部材51の厚さ(一対の主面51a間の距離)T1と当接部63の頂面45aからの高さ(Z軸方向における隙間G1の長さ)との和よりも大きい。窓部材51の厚さT1は、例えば0.6mm程度である。
【0057】
突起61の厚さT2は、突起61の頂面45aからの高さHよりも小さい。突起61の厚さT2は、窓部材51の厚さT1よりも薄い。突起61の厚さT2は、突起61の延在方向に垂直な方向における厚さであり、例えば突起61のうちX軸方向と垂直に延在する部分についてはX軸方向における厚さであり、Y軸方向と垂直に延在する部分についてはY軸方向における厚さである。突起61の厚さT2は、突起61の最大厚さである。例えば、実施形態のように突起61の一部が先細り形状に形成されている場合、突起61の厚さT2は、突起61における最も厚い部分における厚さである。この例では、突起61においてY軸方向に沿って延在する一対の部分の一方が、先細り形状に形成され、傾斜面61dを有している。これにより、窓部材51の段差部62への配置作業を容易化することができる。また、突起61を撓み変形し易くすることができる。
【0058】
上述したとおり、突起61はZ軸方向から見た場合に矩形環状を呈しており、窓部材51は、全周にわたって突起61によって囲まれている。また、上述したとおり、突起61における一方側S1の端面61cは、全周にわたって窓部材51よりも一方側S1に位置している。したがって、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51の全体が突起61によって覆われている。換言すれば、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51は突起61から露出していない。すなわち、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さは、窓部材51において突起61から露出している部分の長さよりも長い。この例では、窓部材51の全体が突起61によって覆われており、窓部材51は突起61から露出している部分を有していない。このように、「Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さは、窓部材51において突起61から露出している部分の長さよりも長い」構成には、窓部材51の全体が突起61によって覆われており、窓部材51が突起61から露出している部分を有していない場合が含まれる。
[ミラーユニットにおける光の進行経路]
【0059】
図6及び
図7を参照しつつ、ミラーユニット100における光の進行経路の例を説明する。
図6及び
図7では、可動ミラー部10又は可動ミラー部110が動作していない状態における光の進行経路の例が実線で示され、可動ミラー部10又は可動ミラー部110が動作している状態における光の進行経路の例が破線で示されている。
図6では、実施形態のミラーユニット100において窓部材51が撓んでおらず平坦である場合の例が示されており、
図7では、比較例のミラーユニット1100において窓部材151が光走査デバイス101側に向けて撓んでいる場合の例が示されている。
【0060】
ミラーユニット100では、光は、外部から窓部材51を介して光走査デバイス1の可動ミラー部10に入射し、可動ミラー部10で反射され、窓部材51を介して外部に出射する。
図6に示されるように、可動ミラー部10が動作している状態において窓部材51から出射する光の屈折角r1は、可動ミラー部10が動作していない状態において窓部材51から出射する光の屈折角r2よりも大きくなることがある。そのため、ミラーユニット100において高精度な光走査を実現するためには、窓部材51での屈折の影響を考慮する必要がある。
【0061】
図7に示される比較例のミラーユニット1100では、例えば本体部141及び突起161が熱変形(熱収縮又は熱膨張)した場合、突起161によって押圧されることで窓部材151が撓んでしまうことが考えられる。この場合、窓部材151が撓んでいる状態において窓部材151から出射する光の屈折角r3は、窓部材151が撓んでいない状態において窓部材151から出射する光の屈折角r4よりも大きくなる。このように窓部材151に撓みが生じると窓部材151における光の屈折角が変化するため、光走査を精度良く行うことが難しい。
【0062】
特に、窓部材への光の入射角度、及び窓部材からの光の出射角度が大きい場合、窓部材の撓み変形が光走査の精度に与える影響が大きくなる。したがって、可動ミラー部を揺動させて光を走査する光走査デバイスを備えるミラーユニットにおいては、可動ミラー部の角度によっては窓部材への光の入射角度が大きくなり、窓部材から出射する光の屈折角度が大きくなるため、窓部材の撓み変形を抑制する必要性が高い。なお、上記例では、窓部材51(窓部材151)に対して光が正面側から入射して側方へ出射される場合について説明したが、窓部材51(窓部材151)に対して光が側方側から入射して正面側へ出射される場合についても同様である。
[作用及び効果]
【0063】
実施形態に係るミラーユニット100では、本体部41の頂面45aに光入射開口41aの縁に沿って延在するように突起61が設けられており、突起61の内側における頂面45a上に窓部材51が配置されている。そして、突起61における一方側S1の端面61cが、窓部材51よりも一方側S1に位置している。また、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さが、窓部材51において突起61から露出している部分の長さよりも長い。これにより、窓部材51に外力が作用するのを抑制し、窓部材の確実な保護を図ることができる。また、ミラーユニット100を光学系に組み込む際に、突起61の端面61cを押し当てることでミラーユニット100を位置合わせすることができる。そのため、例えば、窓部材51が突起61の端面61cよりも一方側S1に位置しており、窓部材51を押し当てることでミラーユニット100を位置合わせする場合と比べて、ミラーユニット100の位置合わせ精度を向上することができる。これは、窓部材51の位置には、窓部材51の製造公差及び窓部材51と本体部41とを接合する接合材の厚さの公差により、ずれが生じ易いためである。
【0064】
また、突起61の厚さT2が、突起61の頂面45aからの高さHよりも小さくなっている。これにより、本体部41及び突起61を小さく形成することができ、本体部41及び突起61の熱変形量を低減することができる。すなわち、突起61の厚さT2が薄くなると、突起61が設けられる本体部41の側壁45の厚さも薄くなる。そのため、突起61の厚さT2を薄く形成することで、本体部41及び突起61を小さく形成することができる。その結果、本体部41及び突起61が熱変形した際に窓部材51に応力が作用するのを抑制することができる。したがって、窓部材51を薄く形成することができ、窓部材51での屈折の影響を低減することができる。また、窓部材51を薄く形成したとしても、本体部41及び突起61の熱変形に起因して窓部材51が撓み変形するのを抑制することができる。更に、突起61の厚さT2が突起61の頂面45aからの高さHよりも小さいため、突起61が撓み易い。そのため、仮に本体部41及び突起61が熱変形して突起61が窓部材51に接触したとしても、突起61から窓部材51に応力が伝わり難い(応力が分散される)。このことによっても、窓部材51を薄く形成して窓部材51での屈折の影響を低減することができると共に、本体部41及び突起61の熱変形に起因して窓部材51が撓み変形するのを抑制することができる。以上により、ミラーユニット100によれば、窓部材51の確実な保護を図りつつ、高精度な光走査を実現することができる。
【0065】
ミラーユニット100では、窓部材51の側面51b,51cと突起61の内面61aとの間には、隙間G2が形成されている。これにより、本体部41及び突起61が熱変形したとしても突起61が窓部材51に接触し難いため、窓部材51に応力が作用するのを効果的に抑制することができる。
【0066】
ミラーユニット100では、突起61の厚さT2が、窓部材51の厚さT1よりも薄い。これにより、本体部41及び突起61が熱変形した際に窓部材51に応力が作用するのを一層効果的に抑制することができる。
【0067】
ミラーユニット100では、光走査デバイス1が、可動ミラー部10のミラー面7aが窓部材51に対して傾斜した状態で、本体部41に保持されている。これにより、ミラー面7aからの光が窓部材51で反射した後にミラー面7aに戻るのを抑制することができる。一方、この場合、窓部材51への光の入射角度が更に大きくなる。これに対し、ミラーユニット100では、本体部41及び突起61が熱変形した際に窓部材51に応力が作用するのを十分に抑制することができ、高精度な光走査を実現することができる。
【0068】
ミラーユニット100では、突起61が、本体部41と一体に形成されている。これにより、本体部41及び突起61が熱変形した際に窓部材51によって押圧されて突起61が破損するのを抑制することができる。
【0069】
ミラーユニット100では、本体部41及び突起61が、樹脂により形成されている。この場合、本体部41及び突起61が熱変形し易くなるが、ミラーユニット100では、本体部41及び突起61が熱変形した際に窓部材51に応力が作用するのを十分に抑制することができ、高精度な光走査を実現することができる。
【0070】
ミラーユニット100では、本体部41の頂面45aには、一方側S1を向いた平坦な当接面63aを有する当接部63が突設されており、窓部材51が、当接面63aに接触している。これにより、当接面63aとの接触により窓部材51が本体部41に対して位置決めされるため、窓部材51の配置角度が所望の角度からずれてしまうのを抑制することができる。また、窓部材51の主面51aを完全に平坦に形成することは難しいが、このミラーユニット100では、少なくとも当接面63aとの接触箇所を平坦に形成すればよいため、窓部材51の製造を容易化することができる。
【0071】
ミラーユニット100では、窓部材51と本体部41の頂面45aとの間には、隙間G1が形成されている。これにより、本体部41及び突起61が熱変形した際に窓部材51に応力が作用するのをより一層抑制することができる。また、隙間G1を通気口として機能させることができ、パッケージ40内で結露が生じるのを抑制することができる。
【0072】
ミラーユニット100では、突起61が、Z軸方向から見た場合に環状に形成されている。これにより、窓部材51の一層確実な保護を図ることができる。また、突起61の端面61cが、全周にわたって窓部材51よりも一方側S1に位置している。これにより、突起61によって窓部材51の角部の全体が覆われるため、より一層確実に窓部材51を保護することができる。
[変形例]
【0073】
実施形態に係るミラーユニット100では突起61が光入射開口41aを囲むように連続的に設けられていたが、
図8~
図11に示される第1変形例に係るミラーユニット100Aのように、突起61は、光入射開口41aの縁に沿って断続的に設けられていてもよい。突起61は、Y軸方向に沿って延在する一対の第1部分65と、X軸方向に沿って延在する一対の第2部分66と、を有している。各第1部分65の中央部には、開口部65aが設けられている。開口部65aが設けられていることで、各第1部分65は、Y軸方向に並ぶ一対の部分に分離されている。各第2部分66の中央部には、開口部66aが設けられている。開口部66aが設けられていることで、各第2部分66は、X軸方向に並ぶ一対の部分に分離されている。
【0074】
ミラーユニット100Aにおいても、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さは、窓部材51において突起61から露出している部分(突起61によって覆われていない部分)の長さよりも長い。換言すれば、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の面積は、窓部材51において突起61から露出している部分の面積よりも広くなっている。
【0075】
例えば、
図9に示されるように、矢印B1側から見た場合、すなわちZ軸方向に垂直なX軸方向の一方側から見た場合、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL1は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL2よりも長い。長さL1は、窓部材51において突起61によって覆われている部分の総長さであり、長さL1a,L1bの合計の長さである。長さL2は、窓部材51において突起61から露出している部分の総長さである。長さL1,L2は、Z軸方向に垂直な方向に沿っての長さであり、
図9ではY軸方向に沿っての長さである。矢印B1側から見た場合と同様に、矢印B1とは反対側から見た場合、すなわちZ軸方向に垂直なX軸方向の他方側から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL1は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL2よりも長い。
【0076】
他の例として、
図10に示されるように、矢印B2側から見た場合、すなわちZ軸方向に垂直なY軸方向の一方側から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL3は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL4よりも長い。長さL3は、窓部材51において突起61によって覆われている部分の総長さであり、長さL3a,L3bの合計の長さである。長さL4は、窓部材51において突起61から露出している部分の総長さである。長さL3,L4は、Z軸方向に垂直な方向に沿っての長さであり、
図10ではX軸方向に沿っての長さである。矢印B2側から見た場合と同様に、矢印B2とは反対側から見た場合、すなわちZ軸方向に垂直なY軸方向の他方側から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL3は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL4よりも長い。
【0077】
他の例として、
図11に示されるように、矢印B3側から見た場合、すなわちZ軸方向に垂直で且つX軸方向及びY軸方向に傾斜した方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL5は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL6よりも長い。長さL5は、窓部材51において突起61によって覆われている部分の総長さであり、長さL5a,L5b,L5c,L5dの合計の長さである。長さL6は、窓部材51において突起61から露出している部分の総長さであり、長さL6a,L6bの合計の長さである。長さL5,L6は、Z軸方向に垂直な方向に沿っての長さであり、
図11では図中の左右方向に沿っての長さである。換言すれば、長さL5,L6は、矢印B3に垂直な平面に投影した場合の長さである。矢印B3側から見た場合と同様に、矢印B3とは反対側から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL5は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL6よりも長い。
【0078】
第1変形例に係るミラーユニット100Aによっても、実施形態に係るミラーユニット100と同様に、窓部材51の確実な保護を図りつつ、高精度な光走査を実現することができる。また、開口部65a,66aによって突起61が分離されていることにより、突起61を撓み易くすることができる。その結果、窓部材51が突起61に接触した場合でも、突起61から窓部材51に作用する応力が分散され、窓部材51の破損を抑制することができる。なお、第1変化例では、第1部分65の横方向に沿っての長さ(長さL1a)が第1部分65の高さよりも大きいが、第1部分65の横方向に沿っての長さが第1部分65の高さよりも小さくなるように開口部65aが設けられてもよい。この場合、開口部65aは複数設けられてもよい。この点は第2部分66についても同様である。
【0079】
図12(a)及び
図12(b)に示される第2変形例のようにパッケージ40が構成されてもよい。第2変形例では、突起61は、Z軸方向から見た場合に円形状に延在している。突起61には、周方向に間隔を空けて、複数(この例では3つ)の開口部61eが設けられている。開口部61eが設けられていることで、突起61は、周方向に並ぶ3つの部分に分離されている。
【0080】
第2変形例においても、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さは、窓部材51において突起61から露出している部分(突起61によって覆われていない部分)の長さよりも長くなっている。
【0081】
例えば、
図12(b)に示されるように、矢印B4側から見た場合、すなわちZ軸方向に垂直な一の方向から見た場合、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL7は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL8よりも長い。長さL7は、窓部材51において突起61によって覆われている部分の総長さであり、長さL7a,L7bの合計の長さである。長さL8は、窓部材51において突起61から露出している部分の総長さである。長さL7,L8は、Z軸方向に垂直な方向に沿っての長さであり、
図12(b)では図中の左右方向に沿っての長さである。換言すれば、長さL7,L8は、矢印B4に垂直な平面に投影した場合の長さである。矢印B4側から見た場合と同様に、Z軸方向に垂直な他の方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL7は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL8よりも長い。
【0082】
第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、窓部材51の確実な保護を図りつつ、高精度な光走査を実現することができる。
【0083】
図13(a)及び
図13(b)に示される第3変形例のようにパッケージ40が構成されてもよい。第3変形例では、突起61は、Y軸方向に沿って延在する一対の第1部分65と、X軸方向に沿って延在する一対の第2部分66と、を有している。各第1部分65は、中央部に設けられた高背部65bと、高背部65bよりも高さが低い低背部65cと、を含んでいる。高背部65bは、低背部65cから一方側S1に突出している。各第2部分66は、中央部に設けられた高背部66bと、高背部66bよりも高さが低い低背部66cと、を含んでいる。高背部66bは、低背部66cから一方側S1に突出している。
【0084】
第3変形例においても、Z軸方向に垂直ないずれの方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さは、窓部材51において突起61から露出している部分(突起61によって覆われていない部分)の長さよりも長くなっている。
図13(b)に示されるように、Z方向に垂直な方向から見た場合に、高背部65bが窓部材51の全体を覆っている一方で、低背部65cは、窓部材51における厚さ方向の一部のみを覆っている。第2部分66についても同様に、Z方向に垂直な方向から見た場合に、高背部66bが窓部材51の全体を覆っている一方で、低背部66cは、窓部材51における厚さ方向の一部のみを覆っている。
【0085】
図13(b)に示されるように、矢印B5側から見た場合、すなわちZ軸方向に垂直な一の方向から見た場合、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL9は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL10よりも長い。長さL9は、窓部材51において突起61によって覆われている部分の総長さである。長さL10は、窓部材51において突起61から露出している部分の総長さであり、長さL10a,L10bの合計の長さである。矢印B5側から見た場合と同様に、Z軸方向に垂直な他の方向から見た場合にも、窓部材51において突起61によって覆われている部分の長さL9は、窓部材51において突起61から露出している部分の長さL10よりも長い。
【0086】
第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、窓部材51の確実な保護を図りつつ、高精度な光走査を実現することができる。
【0087】
本開示は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。上記実施形態では、突起61の端面61cが全周にわたって窓部材51よりも一方側S1に位置していたが、端面61cの少なくとも一部が窓部材51よりも一方側S1に位置していればよい。
【0088】
窓部材51の側面51b,51cと突起61の内面61aとの間に隙間G2が形成されていなくてもよく、窓部材51の側面51b,51cの少なくとも一方は、突起61の内面61aに接触していてもよい。突起61の厚さT2は、突起61の頂面45aからの高さHよりも小さければよく、窓部材51の厚さT1よりも厚くてもよい。光走査デバイス1は、可動ミラー部10のミラー面7aが窓部材51の主面51aと平行な状態で本体部41に保持されていてもよい。
【0089】
突起61は、本体部41と別体に形成されていてもよい。本体部41及び突起61の少なくとも一方は、樹脂以外の材料により形成されていてもよい。当接部63は省略されてもよい。窓部材51の主面51aと頂面45aとの間に隙間G1が形成されていなくてもよく、光入射開口41aが気密に封止されるように窓部材51が本体部41に接合されていてもよい。
【0090】
本体部41は、光入射開口41aから入射した光が光走査デバイス1に入射可能となるように光走査デバイス1を保持していればよく、任意の構成を有していてよい。例えば、光走査デバイス1を支持するベース部が側壁45とは別体に構成されていてもよい。実施形態の光走査デバイス1では可動ミラー部10が電磁力により駆動されたが、可動ミラー部10は静電力又は圧電素子により駆動されてもよい。上記実施形態では、磁界発生部Mがパッケージ40の内部に配置されていたが、磁界発生部Mは、パッケージ40の外部に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
100,100A…ミラーユニット、1…光走査デバイス、7a…ミラー面、10…可動ミラー部、40…パッケージ、41…本体部、41a…光入射開口、45a…頂面、51…窓部材、51b,51c…側面、61…突起、61a…内面、61c…端面、63…当接部、63a…当接面、G1,G2…隙間、S1…一方側。