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特許7594557タウ発現を減少させるための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】タウ発現を減少させるための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241127BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20241127BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241127BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241127BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20241127BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241127BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241127BHJP
   C07H 21/00 20060101ALI20241127BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7115
A61K31/712
A61K31/7125
A61K47/54
A61P9/10
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
C07H21/00
C07H21/04 B
C07H21/04 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022021494
(22)【出願日】2022-02-15
(62)【分割の表示】P 2018550880の分割
【原出願日】2016-12-19
(65)【公開番号】P2022065096
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】62/270,165
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ポリドーロ オフェンガイム,マニュエラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイラー,ヤン
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/148260(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/010135(WO,A2)
【文献】特表平07-508657(JP,A)
【文献】特表2015-516953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0010947(US,A1)
【文献】国際公開第2014/153236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GGTTGACATC GTCTGCCTGT (配列番号480)の核酸塩基配列からなる、微小管に関連するタンパク質タウ(MAPT)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記核酸塩基配列のいずれかにおけるCがシトシンまたは5-メチルシトシンのどちらかであり、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドが2’-修飾を有し、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシド間連結がホスホロチオエート連結であり、前記オリゴヌクレオチドが、タウmRNAまたはタンパク質発現レベルを減少させることができる、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
少なくとも5個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
少なくとも7個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
10個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記核酸塩基配列における各Cが5-メチルシトシンである、請求項1~4のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記2’-修飾が、2’-フルオロ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、および2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記2’-修飾が2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記核酸塩基配列の第1から第5のヌクレオチドは、2’-O-MOEで修飾されたヌクレオシドを各々含み、前記核酸塩基配列の第6から第15のヌクレオチドは、2’-デオキシヌクレオシドを各々含み、前記核酸塩基配列の第16から第20のヌクレオチドは、2’-O-MOEで修飾されたヌクレオシドを各々含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項10】
その必要がある対象において、タウに関連する疾患を治療するのに用いるための、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記タウに関連する疾患が、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン症候群-認知症複合病(ALS-PDC)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)、英国型アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、パンチドランカー、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化症、ダウン症候群、ドラベ症候群、癲癇、前頭側頭型認知症(FTD)、17番染色体と連鎖するパーキンソン症候群を伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、前頭側頭葉変性症、神経節膠腫、神経節細胞腫、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、ハラーホルデン・スパッツ病、ハンチントン病、封入体筋炎、鉛脳症、リティコ・ボディグ病、髄膜腫血管腫症、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、ニーマンピック病C型(NP-C)、神経原線維変化を伴う非グアマニアン運動神経病、ピック病(PiD)、脳炎後パーキンソン症候群、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維変化優位型認知症(tangle only dementia)、神経原線維変化優位型認知症(Tangle-predominant dementia)、多発梗塞性認知症、虚血性脳卒中、または結節性硬化症の群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記タウに関連する疾患が、進行性核上麻痺(PSP)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記タウに関連する疾患が、アルツハイマー病(AD)である、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2015年12月21日出
願の米国特許仮出願第62/270165号明細書の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、タウmRNAおよびタンパク質発現を減少させるための組成物および方法を
提供する。これらの組成物および方法は、タウに関連する疾患を治療するのに有用である
【0003】
背景
タウは、微小管を安定化して軸索の輸送を容易にする、微小管に関連するタンパク質で
ある。タウタンパク質は、チューブリンと相互作用して、微小管を安定化し、チューブリ
ンアセンブリが微小管になることを促進する。微小管ネットワークは、細胞骨格の形成な
らびに細胞の構造および形態の維持、ならびに小胞、細胞小器官および高分子の細胞内輸
送のためのプラットホームの提供を含む多くの重要な細胞過程に関与する。微小管に対す
るタウの結合は、微小管を安定化するので、タウは、これらの細胞過程のうちで最も重要
なメディエーターである。
【0004】
少なくとも6種のタウアイソフォームがヒトの脳中に存在し、352~441アミノ酸
残基長の範囲にある。タウアイソフォームは、17番染色体に位置する単一の遺伝子MA
PT(微小管に関連するタンパク質タウ)に由来する。MAPT転写物は、複雑な、調節
された代替的スプライシングを受けて、複数のmRNA種を生ずる。MAPTのエクソン
2および3は、それぞれ29-または58アミノ酸の配列をコードして、したがってエク
ソン2および/または3の代替的スプライシングは、0N、1N、または2Nタウと、そ
れぞれ称される、N末端で29アミノ酸の酸性ドメインのゼロ、1、または2個のコピー
の包含を生ずる。MAPTのエクソン10は、微小管結合ドメインをコードしており、し
たがって、エクソン10の包含は、追加の微小管結合ドメインの存在を導く。タウには他
の場所に3個の微小管結合ドメインがあるので、エクソン10を含むタウアイソフォーム
は、微小管結合ドメインの4回の繰り返しを有するタウタンパク質を意味する「4Rタウ
」と称される。エクソン10を含まないタウアイソフォームは「3Rタウ」と称され、そ
れは、微小管結合ドメインの3回の繰り返しを有するタウタンパク質を意味する。4Rタ
ウアイソフォームは、3Rタウアイソフォームよりも強く微小管に結合すると思われ、そ
の理由は、4Rタウアイソフォームが1個多くの微小管結合ドメインを有するからである
。4Rタウに対する3Rタウの比は、発生時に調節されて、胎児組織はもっぱら3Rタウ
を発現して、成人ヒト組織は、およそ等しいレベルの3Rタウおよび4Rタウを発現する
【0005】
タウはリンタンパク質であり、最も長いタウアイソフォームでは、約85箇所のリン酸
化可能な部位(Ser、Thr、またはTyr)を有する(Pedersen and Sigurdsson, T
rends in Molecular Medicine 2015, 21 (6): 394)。リン酸化は、正常タウタンパク質
ではこれらの部位の約半分で報告されている。タウは、細胞サイクル中に絶えずリン酸化
されて脱リン酸化される。タウは、その脱リン酸化された形態でのみ微小管と会合できる
ので、したがって、タウのリン酸化は、ニューロン内で直接微小管会合-解離のスイッチ
として作用する。病理学的条件下で、タウタンパク質は、過度にリン酸化されて、チュー
ブリン結合の喪失および微小管の不安定化を生じ、続いて病原性の神経原線維変化におけ
るタウの凝集および堆積が生ずる。タウのプロテアーゼ切断フラグメント(Asp13、
Glu391、およびAsp421)も神経原線維変化において同定されている。
【0006】
発明の概要
ヒト微小管に関連するタンパク質タウ(MAPT)を標的とするアンチセンスオリゴヌ
クレオチド、該アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物、およびこれらのアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドを使用して、タウmRNAおよびタンパク質の発現を減少させる
方法が本明細書で提供される。本明細書で提供される組成物および方法は、タウに関連す
る疾患の治療に有用である。
【0007】
一態様において、表2~17で示される核酸塩基配列のいずれかと少なくとも70%(
例えば、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、
87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、
97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有する核酸塩基配列を含むオ
リゴヌクレオチドであって、核酸塩基配列のいずれかにおけるCが、シトシンまたは5-
メチルシトシンのどちらかであり、該オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチ
ドが2’-修飾を有する、オリゴヌクレオチドが本明細書で提供される。これらのオリゴ
ヌクレオチドは、ヒトMAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。2
’-修飾は、2’-フルオロ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2
’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-
AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチ
ルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチ
ル(2’-O-DMAEOE)、および2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-
NMA)からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、2’-修
飾は、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)である。いくつかの実施形態にお
いて、核酸塩基配列のいずれかにおける各Cは、5-メチルシトシンである。
【0008】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、12から30核酸塩基の長さである。例えば、MAPTを標的とするアンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、
22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の核酸塩基を含むこと
ができる。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌク
レオチドは、12から25核酸塩基の長さである。例えば、MAPTを標的とするアンチ
センスオリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、20
、21、22、23、24、または25個の核酸塩基を含むことができる。いくつかの実
施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、15から2
0核酸塩基の長さである。例えば、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドは、15、16、17、18、19、または20個の核酸塩基を含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、立体的遮断剤である。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオ
チドは、タウmRNAおよび/またはタンパク質の発現を、RNAseHとは独立に減少
させる。立体的遮断剤のヌクレオシド間連結は、ホスホジエステルまたはホスホロチオエ
ート連結のいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるM
APTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表2~8で示される配列のいず
れかと少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、81%、82%、83%、
84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、
94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有
する核酸塩基配列を含む立体的遮断剤であり、ここで、核酸塩基配列のいずれかにおける
Cは、シトシンまたは5-メチルシトシンのどちらかであり、オリゴヌクレオチドの各ヌ
クレオチドは2’-修飾を有する。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とする
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、表2~8で示される配列のいずれかと、少なくとも
80%の配列同一性を有する核酸塩基配列を含む。いくつかの実施形態において、MAP
Tを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表2~8で示される配列のいずれか
と、少なくとも90%の配列同一性を有する核酸塩基配列を含む。いくつかの実施形態に
おいて、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表2~8で示される
核酸塩基配列のいずれかを含む。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするア
ンチセンスオリゴヌクレオチドは、表2~8で示される核酸塩基配列のいずれかからなる
。いくつかの実施形態において、核酸塩基配列のいずれかにおける各Cは、5-メチルシ
トシンである。
【0010】
いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、各ヌクレオチドサブユニットにおいて2’-O-MOE修飾を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、オリゴヌクレオチドの3’末端にリン酸架橋を通して付着したリンカーを含み、該オ
リゴヌクレオチドは、以下の構造のいずれかを有する:
【0012】
【化1】
【0013】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドはギャップマーであり、それは、5’および3’末端における2つ
のウィングセグメント(それぞれ、5’ウィングおよび3’ウィングとも言われる)の間
に位置する連続した2’-デオキシリボヌクレオチドの中央ギャップセグメントを有する
。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNAseHを活性化することにより
タウmRNAおよび/またはタンパク質の発現を減少させる。該ギャップマーのヌクレオ
シド間連結は、ホスホロチオエートまたはホスホジエステル連結であることができる。い
くつかの実施形態において、ギャップマーは、少なくとも5個(例えば、5、6、7、8
、9、10、11、12個)の連続した2’-デオキシリボヌクレオチドのストレッチを
含み、5’および3’ウィングセグメントは、1つまたは複数の2’-修飾されたヌクレ
オチドを含む。いくつかの実施形態において、そのようなオリゴヌクレオチドは、少なく
とも7個(例えば、7、8、9、10、11、12個)の連続した2’-デオキシリボヌ
クレオチドを含む。いくつかの実施形態において、そのようなオリゴヌクレオチドは、1
0個の連続した2’-デオキシリボヌクレオチドを含む。2’-修飾は、2’-フルオロ
、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2
’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチル
アミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O
-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE
)、および2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)からなる群から選択
することができる。いくつかの実施形態において、ギャップマーは、5’ウィングおよび
3’ウィングに2’-O-MOEで修飾されたヌクレオチドを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、タウを標的とするギャップマーは、20ヌクレオシドの
長さである5-10-5ギャップマーであり、そこで、中央ギャップセグメントは10個
の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含み、5’ウィングおよび3’ウィングと隣接
し、各ウィングは各々2’-O-MOE修飾を有する5個のヌクレオシドを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、表9~15および17で示される配列のいずれかと少なくとも
70%(例えば、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、
86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、
96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有する核酸塩基配列
を含むギャップマーであり、ここで、核酸塩基配列のいずれかにおけるCは、シトシンま
たは5-メチルシトシンのどちらかであり、該オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌ
クレオチドが2’-修飾を有する。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とする
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、表9~15および17で示される配列のいずれかと
少なくとも80%の配列同一性を有する核酸塩基配列を含む。いくつかの実施形態におい
て、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表9~15および17で
示される核酸塩基配列のいずれかと少なくとも90%の配列同一性を有する核酸塩基配列
を含む。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレ
オチドは、表9~15および17で示される核酸塩基配列のいずれかを含む。いくつかの
実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表9~1
5および17で示される核酸塩基配列のいずれかからなる。いくつかの実施形態において
、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表9
~15および17のいずれかで示される核酸塩基配列のいずれかを含む5-10-5ギャ
ップマーであり、ここで、第1から第5のヌクレオチドは、2’-O-MOEで修飾され
たヌクレオシドを各々含み、第6から第15のヌクレオチドは、2’-デオキシヌクレオ
シドを各々含み、第16から第20のヌクレオチドは、2’-O-MOEで修飾されたヌ
クレオシドを各々含む。いくつかの実施形態において、核酸塩基配列のいずれかにおける
各Cは、5-メチルシトシンである。
【0016】
いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、配列番号208、284、285、313、329、335、366、384、38
6、405、473、および474のいずれか1つから選択される核酸塩基配列を含む。
いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは
、配列番号284と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有する
核酸塩基配列を含む。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンス
オリゴヌクレオチドは、配列番号284を含む。いくつかの実施形態において、MAPT
を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号285または208と少なく
とも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97
%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有する核酸塩基配列を含む。いく
つかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配
列番号285または208を含む。
【0017】
別の態様において、1、2、または3箇所のミスマッチを有する、配列番号487~5
06のいずれか1つの少なくとも12個の連続した核酸塩基と相補的である核酸塩基配列
を含むオリゴヌクレオチドであって、該オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオ
チドが、2’-修飾を有するオリゴヌクレオチドが本明細書で提供される。これらのオリ
ゴヌクレオチドは、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いく
つかの実施形態において、そのようなオリゴヌクレオチドは、配列番号487~506の
いずれか1つの少なくとも12個の連続した核酸塩基と100%相補的である核酸塩基配
列を含む。いくつかの実施形態において、そのようなオリゴヌクレオチドは、1つまたは
複数の5-メチルシトシンを含む。いくつかの実施形態において、そのようなオリゴヌク
レオチドは2’-修飾を有する。該2’-修飾は、2’-フルオロ、2’-デオキシ-2
’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2
’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-
O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-
O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、および2’-O-
N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)からなる群から選択され得る。いくつかの
実施形態において、該2’-修飾は、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)で
ある。いくつかの実施形態において、そのようなオリゴヌクレオチドは、少なくとも5個
(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12個)の連続した2’-デオキシリボヌ
クレオチドを含む。いくつかの実施形態において、そのようなオリゴヌクレオチドは、少
なくとも7個(例えば、7、8、9、10、11、12個)の連続した2’-デオキシリ
ボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、そのようなオリゴヌクレオチドは
、10個の連続した2’-デオキシリボヌクレオチドを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、インビトロで、タウmRNAまたはタンパク質の発現レベルを
、少なくとも30%減少させることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、インビボで、タウmRNAまたはタンパク質の発現レベルを少
なくとも30%減少させることができる。
【0020】
別の態様において、本明細書に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれか
、および薬学的に許容される担体を含む組成物が、本明細書で提供される。
【0021】
さらなる態様において、例えば、タウに関連する疾患に罹患しているかまたは罹患しや
すい対象におけるタウ発現レベルを、該対象に、本明細書に記載されたアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドのいずれかの治療有効量を投与することにより減少させる方法が、本明細
書で提供される。いくつかの実施形態において、そのような方法は、第2の作用物質を対
象に投与することを含むことができる。いくつかの実施形態において、MAPTを標的と
するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、対象に、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、経口、静脈
内、または皮下経路を通して投与することができる。いくつかの実施形態において、対象
はヒトである。
【0022】
それを必要とする対象、例えば、タウに関連する疾患に罹患しているか、または罹患し
やすい対象におけるタウに関連する疾患を治療するのに使用するための、本明細書に記載
されたアンチセンスオリゴヌクレオチドも提供される。本明細書に記載されたアンチセン
スオリゴヌクレオチドまたは医薬組成物の、それを必要とする対象におけるタウに関連す
る疾患を治療するための使用も含まれる。本開示は、それを必要とする対象におけるタウ
に関連する疾患の治療に使用するための医薬の製造における本明細書に記載されたアンチ
センスオリゴヌクレオチドの使用も含む。
【0023】
タウに関連する疾患は、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソ
ン症候群-認知症複合病(ALS-PDC)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)、英国型アミ
ロイド血管症、脳アミロイド血管症、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症
(CBD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、パンチドランカー、石灰化を伴う
びまん性神経原線維変化症、ダウン症候群、ドラベ症候群、癲癇、前頭側頭型認知症(F
TD)、17番染色体(FTDP-17)と連鎖するパーキンソン症候群を伴う前頭側頭
型認知症、前頭側頭葉変性症、神経節膠腫、神経節細胞腫、ゲルストマン・ストロイスラ
ー・シャインカー病、ハラーホルデン・スパッツ病、ハンチントン病、封入体筋炎、鉛脳
症、リティコ・ボディグ病、髄膜腫血管腫症、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、
C型ニーマンピック病(NP-C)、神経原線維変化を伴う非グアマニアン運動神経病、
ピック病(PiD)、脳炎後パーキンソン症候群、プリオンタンパク質脳アミロイド血管
症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、亜急性硬化性全脳炎、神経
原線維変化優位型認知症(tangle only dementia)、神経原線維変化優位型認知症(Tang
le-predominant dementia)、多発梗塞性認知症、虚血性脳卒中、または結節性硬化症か
ら選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1-1】図1A~1Eは、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの物理的特徴付けを示す。図1Aは、配列番号284を含み、式C230H321N72O120P19S19および7212.3Daの予想される分子量を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の構造を示す。図1Bは、配列番号284を含み、7214.3の測定されたピーク質量を有するASOの液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)のデータを示す。図1Cは、配列番号284を含むASOについてのLC-MSのデコンヴォリューションピークの報告を示す。図1Dは、配列番号285を含み、7232.5の測定されたピーク質量を有するASOのLC-MSデータを示す。図1Eは、配列番号285を含むASOについてのLC-MSのデコンヴォリューションピークの報告を示す。
図1-2】(前記の通り。)
図1-3】(前記の通り。)
図2図2A~2Eは、アンチセンスオリゴヌクレオチド処置前および後の、代表的なhTau BACトランスジェニックマウス系統におけるヒトタウmRNAおよびタンパク質の発現レベルを示す。図2Aは、6種全てのヒトタウ転写物が、hTau BACトランスジェニックマウス(トランスジェニック系統510、月齢2ヵ月の雌マウス)の前脳で見出されたことを示す代表的RT-PCR結果である。エクソン2、3および10が、交互にスプライシングされて、6種のタウアイソフォーム:2-3-10-;2+3-10-;2+3+10-;2-3-10+;2+3-10+;2+3+10+を生ずる。4Rは、エクソン10を有するタウアイソフォームを表し、3Rは、エクソン10を有しないタウアイソフォームを表し;0Nは、エクソン2もエクソン3も有しないタウアイソフォームを表し;1Nは、エクソン2またはエクソン3のどちらかを有するタウアイソフォームを表し;2Nは、エクソン2およびエクソン3の両方を有するタウアイソフォームを表す。図2Bは、48~67kDの分子量を有し、アミノ酸範囲が352~441の6種のタウタンパク質アイソフォームを示す代表的ウェスタンブロットである。それらは、(1)29アミノ酸のN末端部分のゼロ、1または2個の挿入物の包含(0N、1N、または2N)、または(2)3または4個の微小管結合ドメインの包含(3Rまたは4R)において異なる。図2Cは、hTau BACトランスジェニックマウスの脳中における、ヒトタウに特異的な抗体で染色したヒトタウの正常軸索の分布を示す代表的免疫組織化学画像である。図2Dは、配列番号285を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドによる単回処置後4週間目のhTau BACトランスジェニックマウスの皮質におけるタウmRNAのノックダウンを示す棒グラフである。図2Eは、配列番号285を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドによる単回処置後4週間目のhTau BACトランスジェニックマウスの海馬におけるタウタンパク質ノックダウンを示す代表的ウェスタンブロットである。
図3図3は、hTau BACトランスジェニックマウスにおける配列番号285のアンチセンスオリゴヌクレオチドの広い脳分布を示す一連のin situハイブリダイゼーション画像である。
図4図4Aおよび4Bは、配列番号285のアンチセンスオリゴヌクレオチドの1、10、50、200、または400μgの単回ICV注射後4週間または12週間目のhTau BACトランスジェニックマウス中におけるヒトタウmRNA(図4A)およびタンパク質(図4B)発現の用量依存性の阻害を示すドットプロットである。
図5図5Aおよび5Bは、配列番号285のアンチセンスオリゴヌクレオチドの200μgを単回ICV注射後した後のhTau BACトランスジェニックマウス中におけるヒトタウmRNA(図5A)およびタンパク質(図5B)の発現レベルの時間経過を示すドットプロットである。
【0025】
詳細な記載
微小管に関連するタンパク質タウ(MAPT)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレ
オチド、該アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物、およびこれらのアンチセンス
オリゴヌクレオチドを使用してタウ発現を減少させる方法が、本明細書で提供される。本
明細書で提供される組成物および方法は、タウに関連する疾患の治療に有用である。
【0026】
定義
本明細書および請求項で使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文
脈により明確に他のように指示されていない限り、複数の言及を含む。例えば、用語「a
cell」は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0027】
全ての数的表示、例えば、範囲を含むpH、温度、時間、濃度、および分子量は、(+
)または(-)0.1刻みで変化した近似である。常に明示的に述べられるとは限らない
が、全ての数的表示の前に「約」という用語が先行すると理解されるべきである。常に明
示的に述べられるとは限らないが、本明細書に記載される試薬は、単なる例であり、その
ような試薬の等価物は、当技術分野において知られているということも理解されるべきで
ある。
【0028】
用語「2’-修飾」は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドのフラノース環の2’-位に
おけるHまたはOHの別の基による置換を指す。
【0029】
本明細書において使用する「2’-O-メトキシエチル」、「2’-MOE」、または
「2’-OCH2CH2-OCH3」は、フラノース環の2’位におけるO-メトキシエ
チル修飾を指す。2’-O-メトキシエチルで修飾された糖は、修飾された糖である。「
2’-MOEヌクレオシド/ヌクレオチド」または「2’-O-メトキシエチルヌクレオ
シド/ヌクレオチド」は、2’-MOEで修飾された糖部分を含むヌクレオシド/ヌクレ
オチドを指す。
【0030】
「5-メチルシトシン」は、5’位に付着したメチル基で修飾されたシトシンを指す。
【0031】
本明細書において使用する用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、標的核酸、例
えば、標的ゲノム配列、プレmRNA、またはmRNA分子の対応するセグメントに相補
的である核酸塩基配列を有する一本鎖のオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態
において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、12から30核酸塩基の長さである。
【0032】
用語「相補性」または「相補的な」は、対応する核酸塩基間の水素結合(例えば、Wa
tson-Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen水素結合)によ
り媒介される、第1の核酸鎖の核酸塩基と第2の核酸鎖の核酸塩基の間の塩基対形成能力
を指す。例えば、DNAでは、アデニン(A)はチミン(T)と相補的であり、グアノシ
ン(G)はシトシン(C)と相補的である。例えば、RNAでは、アデニン(A)はウラ
シル(U)と相補的であり、グアノシン(G)はシトシン(C)と相補的である。ある実
施形態では、相補的な核酸塩基は、その標的核酸の核酸塩基と塩基対を形成することがで
きるアンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基を意味する。例えば、アンチセンスオリ
ゴヌクレオチドのある位置における核酸塩基が、標的核酸のある位置における核酸塩基と
水素結合することができれば、その場合には、該オリゴヌクレオチドと該標的核酸の間の
水素結合の位置が、その核酸塩基対で相補的であるということになる。ある修飾を含む核
酸塩基は、カウンターパートの核酸塩基と対を形成する能力を保つことができ、したがっ
て、やはり核酸塩基相補的であり得る。
【0033】
「有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な量を指す。例えば、治
療量は、所望の治療効果を達成する量である。この量は、疾患の発症または疾患症状を予
防するために必要な量である予防有効量と同じであるかまたは異なることができる。有効
量は、1回または複数回の投与、適用または投薬で投与することができる。治療用の化合
物の「治療有効量」(すなわち、効果的な投薬量)は、治療用の化合物の選択に依存する
。本発明の組成物は、1日当たり1回または複数回から、1日おきに1回を含む1週間当
たり1回または複数回投与することができる。当業者は、疾患または障害の重症度、以前
の治療、対象の一般的健康および/または年齢および存在する他の疾患を含むが、これら
に限定されない、ある因子が、対象を効果的に治療するために必要とされる投薬量および
タイミングに影響し得ることを認識するであろう。その上、本明細書に記載された治療用
の化合物の治療有効量を用いる対象の治療は、単回処置または一連の処置を含むことがで
きる。
【0034】
本明細書において使用する用語「ギャップマー」は、連続した2’-デオキシリボヌク
レオチドからなる中央ギャップセグメントを含むキメラアンチセンスオリゴヌクレオチド
を指し、それは、RNAseHを活性化することができ、5’および3’末端で、各々ヌ
クレアーゼ分解に対する増大した耐性を与える1つまたは複数の修飾されたヌクレオチド
を含む2つのウィングセグメントと隣接している。
【0035】
用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸鎖の塩基対形成および二重鎖構造の形
成を指す。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖の間またはミスマッチした
重要でない領域を含有する「実質的に相補的な」核酸鎖の間で起こり得る。特定の機構に
制約されないが、対形成の最も一般的な機構は、水素結合を含み、それは、核酸鎖の相補
的核酸塩基の間のWatson-Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogst
eenの水素結合であってもよい。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を
通して対となる相補的核酸塩基である。ハイブリダイゼーションは、変化するストリンジ
ェントな状況下で起こり得る。本明細書において使用するハイブリダイゼーションとは、
少なくとも比較的低いストリンジェント条件下における相補的核酸鎖の塩基対形成および
二重鎖構造の形成を指し、例えば、2×SSC(0.3M塩化ナトリウム、0.03Mク
エン酸ナトリウム)、0.1%SDS中の37℃におけるハイブリダイゼーションと、そ
れに続く4×SSC、0.1%SDS含有溶液中の洗浄は、37℃で使用することができ
、最終的に1×SSC中45℃で洗浄される。
【0036】
用語「阻害する」または「阻害」は、標的核酸またはタンパク質の発現または活性の低
下または遮断を指し、標的の発現または活性の完全排除は必ずしも示さない。
【0037】
用語「ヌクレオシド間連結」は、ヌクレオシド間の化学結合を指す。
【0038】
用語「ノックダウン」または「発現のノックダウン」は、試薬、例えば、アンチセンス
オリゴヌクレオチドの処置後における遺伝子の低下したmRNAまたはタンパク質の発現
を指す。発現のノックダウンは、転写、mRNAスプライシング、または翻訳中に起こり
得る。
【0039】
用語「ミスマッチ」は、第1の核酸鎖の核酸塩基が、第2の核酸鎖の対応する核酸塩基
と相補的でない場合を指す。
【0040】
用語「核酸塩基配列」は、任意の糖、連結基、および/または核酸塩基の修飾とは独立
の連続した核酸塩基の順序を指す。
【0041】
用語「オリゴヌクレオチド」は、各々修飾されているかまたは修飾されていない、連結
したデオキシリボヌクレオチド(DNA)および/またはリボヌクレオチド(RNA)の
ポリマーを指す。特に限定しない限り、該用語は、天然核酸と同様に結合する性質を有す
る天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸、およびホスホジエステル連結以外の
代替的ヌクレオシド間連結を有する核酸を包含する。
【0042】
用語「ホスホロチオエート連結」は、ホスホジエステル結合が、非架橋の酸素原子の1
個を硫黄原子で置き換えることにより修飾されたヌクレオシド間連結を指す。
【0043】
用語「センス鎖」は、二本鎖構造からなるDNA分子のコード鎖、プラスの鎖、または
非テンプレート鎖を指す。コード鎖は、DNA中のチミン(T)がRNA中ではウラシル
(U)により置き換えられていることを除いて、mRNA配列と同じ配列を有する。「ア
ンチセンス鎖」は、DNA分子の非コード鎖またはmRNAの合成のためのテンプレート
としてはたらくテンプレート鎖を指す。それ故、アンチセンス鎖の配列は、センス鎖およ
びmRNA(RNA中ではTの位置にU)の配列と相補的である。
【0044】
本明細書において使用する用語「立体的遮断剤」は、標的核酸(例えば、標的ゲノム配
列、プレmRNA、またはmRNA分子)とハイブリダイズして、RNAseHを活性化
することなく、標的核酸の転写、スプライシング、および/または翻訳に干渉するアンチ
センスオリゴヌクレオチドを指す。
【0045】
本明細書において使用する「標的とする」または「標的とされる」は、標的核酸、例え
ば、標的ゲノム配列、プレmRNAもしくはmRNA分子、またはそれらのフラグメント
またはバリアントと特異的にハイブリダイズすることができ、標的核酸の転写、スプライ
シング、および/または翻訳をモジュレートすることができるアンチセンスオリゴヌクレ
オチドの設計および選択を指す。
【0046】
本明細書において使用する「タウ」(「微小管に関連するタンパク質タウとしても知ら
れている」、MAPT、MSTD;PPND;DDPAC;MAPTL;MTBT1;M
TBT2;FTDP-17;PPP1R103)は、遺伝子MAPTによりコードされた
、微小管に関連するタンパク質を指す。ヒトのMAPT遺伝子は、染色体の位置17q2
1.1にマッピングされており、ヒトMAPT遺伝子のゲノム配列は、GenBankに
おいてNG_007398.1(配列番号304)に見出すことができる。MAPTイン
トロンおよびエクソン配列および分岐点は、転写物:MAPT-203ENST0000
0344290を使用してEnsemblゲノムデータベースウェブサイトに基づいて決
定することができる。ヒトでは、複雑な交互スプライシングに基づいて、8種のタウアイ
ソフォームが存在する。用語「タウ」は、タウの全てのアイソフォームを総称的に指して
使用される。最も長いヒトタウアイソフォームのタンパク質およびmRNA配列は:
ホモサピエンスの微小管に関連するタンパク質タウ(MAPT)、転写物のバリアント6
、mRNA(NM_001123066.3)
【0047】
【化2-1】
【0048】
【化2-2】
【0049】
【化2-3】
ホモサピエンス微小管に関連するタンパク質タウアイソフォーム6(NP_00111
6538.2)
【0050】
【化3】
である。
他のヒトタウアイソフォームのmRNAおよびタンパク質配列は、GenBankにお
いて以下の受託番号で見出すことができる:
タウアイソフォーム1:NM_016835.4(mRNA)→NP_058519.
3(タンパク質);
タウアイソフォーム2:NM_005910.5(mRNA)→NP_005901.
2(タンパク質);
タウアイソフォーム3:NM_016834.4(mRNA)→NP_058518.
1(タンパク質);
タウアイソフォーム4:NM_016841.4(mRNA)→NP_058525.
1(タンパク質);
タウアイソフォーム5:NM_001123067.3(mRNA)→NP_0011
16539.1(タンパク質);
タウアイソフォーム7:NM_001203251.1(mRNA)→NP_0011
90180.1(タンパク質);
タウアイソフォーム8:NM_001203252.1(mRNA)→NP_0011
90181.1(タンパク質)。
本明細書で使用する、ヒトタウタンパク質は、タウアイソフォームのいずれかと、その
全長にわたって、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76
%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86
%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96
%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するタンパク質も包含する
。マウス、サル、および他の動物のタウタンパク質の配列は当技術分野において知られて
いる。
【0051】
用語「タウに関連する疾患」は、異常なタウタンパク質の発現、分泌、リン酸化、切断
、および/または凝集と関連する疾患を含むが、これらに限定されない。タウに関連する
疾患は、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン症候群-認知症
複合病(ALS-PDC)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)、英国型アミロイド血管症、脳
アミロイド血管症、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、クロ
イツフェルト・ヤコブ病(CJD)、パンチドランカー、石灰化を伴うびまん性神経原線
維変化症、ダウン症候群、ドラベ症候群、癲癇、前頭側頭型認知症(FTD)、17番染
色体(FTDP-17)と連鎖するパーキンソン症候群を伴う前頭側頭型認知症、前頭側
頭葉変性症、神経節膠腫、神経節細胞腫、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー
病、ハラーホルデン・スパッツ病、ハンチントン病、封入体筋炎、鉛脳症、リティコ・ボ
ディグ病、髄膜腫血管腫症、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、ニーマンピック病
C型(NP-C)、神経原線維変化を伴う非グアマニアン運動神経病、ピック病(PiD
)、脳炎後パーキンソン症候群、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下
グリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維変化優位型
認知症(tangle only dementia)、神経原線維変化優位型認知症(Tangle-predominant d
ementia)、多発梗塞性認知症、虚血性脳卒中、および結節性硬化症を含むが、これらに
限定されない。
【0052】
用語「相同性」または「同一性」は、2個のポリマー分子間、例えば、2個の核酸分子
間、例えば、2個のDNA分子もしくは2個のRNA分子間、または2個のポリペプチド
分子間のサブユニットの配列同一性を指す。2個の分子の両方におけるサブユニット位置
が、同じモノマーのサブユニットにより占められている場合;例えば、2個のDNA分子
の各々における位置が、アデニンにより占められていれば、その場合、それらは、その位
置において相同であるか、または同一である。2個の配列間の相同性は、一致する、すな
わち相同性の位置の数の直接の関数である。例えば、2つの配列における位置の半分(例
えば、ポリマー中10個のサブユニットの長さのうちの5つの位置)が相同であれば、2
つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10のうち9)が一致する、すな
わち相同であれば、2つの配列は90%相同である。「配列同一性」のパーセンテージは
、2つの最適に整列された配列を、比較ウィンドウにわたって比較することにより決定す
ることができ、その場合、比較ウィンドウにおけるアミノ酸配列のフラグメントは、2つ
の配列の最適な整列について参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、付加ま
たは欠失(例えば、ギャップまたは重なり)を含んでもよい。該パーセンテージは、同一
のアミノ酸残基が両方の配列で現れる位置の数を決定し、一致した位置の数を得て、一致
した位置の数を比較ウィンドウにおける位置の合計数により除して、その結果に100を
乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算することができる。出された結
果は問題にしている配列に関する対象配列の同一性のパーセントである。
【0053】
用語「単離された」は、天然の状態から変更されたかまたは取り出されたことを指す。
例えば、生きている動物中に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離されて」いな
いが、その天然の状態で共存する材料から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸また
はペプチドは、「単離され」ている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製
された形態で存在することができるか、または自然のままでない環境、例えばホスト細胞
などの中で存在することができる。
【0054】
用語「治療する」または「治療」は、治療処置および予防的または防止手段の両方を指
し、その目的は、望ましくない生理学的変化または障害を予防するかまたは減速させるこ
とである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能または検出
不可能のいずれにせよ、症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化した(すなわち、
悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、病態の緩和または一時的軽減、および寛
解(不完全かまたは完全のいずれにせよ)を含むが、これらに限定されない。「治療」は
、治療を受けない場合に予想される生存と比較して長期化された生存も意味することがで
きる。
【0055】
用語「対象」は、本発明の方法による治療が提供される動物、ヒトまたは非ヒトを指す
。獣医学的および非獣医学的適用が企図される。該用語は、哺乳動物、例えば、ヒト、他
の霊長類、ブタ、齧歯類、例えばマウスおよびラット、ウサギ、モルモット、ハムスター
、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジおよびヤギを含むが、これらに限定されない。典型的
な対象は、ヒト、家畜、および家庭の愛玩動物、例えば、ネコおよびイヌなどを含む。
【0056】
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明
が関係する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載され
たものと同様なまたは等価の方法および材料が、本発明を実施するために使用され得るが
、適当な方法および材料が下に記載される。本明細書で言及された全ての出版物、特許出
願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合に
は、定義を含む本明細書が支配するものとする。それに加えて、材料、方法、および例は
、例示のためだけであり、限定を意図するものではない。
【0057】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および下の記載で記述される
。本発明の他の特徴、目的、および利点は、記載および図面、および請求項から明らかで
あろう。
【0058】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、RNAの低下、翻訳の抑止、miRN
Aの阻害、スプライシングモジュレーション、およびポリアデニル化箇所の選択を含む、
ますます多くの用途で利用される強力かつ多機能の作用物質である。アンチセンスオリゴ
ヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの十分な数の核酸塩基が標的核酸の対
応する核酸塩基と水素結合を形成できる場合に標的核酸に結合して、標的核酸の転写およ
び/または翻訳をモジュレートする。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核
酸塩基配列は、標的核酸、例えば、標的ゲノム配列、プレmRNA、またはmRNA分子
の核酸塩基配列と相補的である。ハイブリダイゼーションは、水素結合(例えば、Wat
son-Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen水素結合)が、ア
ンチセンスオリゴヌクレオチドの相補的核酸塩基と標的核酸との間で形成される場合に起
こる。アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的核酸との間の非相補的核酸塩基は、アンチ
センスオリゴヌクレオチドが、依然として標的核酸と特異的にハイブリダイズすることが
できる限り、許容され得る。
【0059】
ASOは、RNaseH依存またはRNaseH独立のいずれかの様式により標的タン
パク質の発現を減少させるように設計され得る(Watts JK, et al., J Pathol. 2012 Jan
uary; 226(2): 365-379を参照されたい)。DNAの連続したストレッチを含むASOが
標的RNAとハイブリダイズした場合、DNA-RNAヘテロ二重鎖はRNaseHを動
員し、それが二重鎖の標的RNAを切断し、それに続く細胞ヌクレアーゼによるRNAフ
ラグメントの分解を促進する。ASOは、プレmRNAのプロセシングおよび/またはm
RNAのタンパク質への翻訳を立体的に遮断することにより、RNAseHとは独立に、
標的の発現を減少させることもできる。
【0060】
微小管に関連するタンパク質タウ(MAPT)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレ
オチドが本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるア
ンチセンスオリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、または5箇所のミスマッチを有する
、MAPTゲノムDNA、プレmRNA、またはmRNAのセグメントと相補的な核酸塩
基配列を有する。完全な塩基対形成が起これば(例えば、AとTの間およびCとGの間の
対形成)、オリゴヌクレオチドと対応する標的核酸との間でミスマッチは数えられること
になる。ミスマッチは、2つの配列が最高に整列されたときに、第1の核酸の核酸塩基が
第2の核酸の対応する核酸塩基と対形成することができない場合に起こる。例えば、第1
の配列中の位置が核酸塩基Aを有し、第2の配列の対応する位置がAと対を形成できない
核酸塩基(例えば、CまたはG)を有するならば、それはミスマッチを構成する。一方の
配列中の位置が核酸塩基を有し、他方の配列の対応する位置が核酸塩基を有しない場合に
も、ミスマッチは数えられる。ヌクレオチドまたはヌクレオシド間連結の糖部分に対する
修飾は、ミスマッチとはされない。したがって、一方の配列がGを含み、第2の配列の対
応する核酸塩基が修飾されたC(例えば、5-メチルシトシン)を含む場合には、数えら
れるミスマッチはないであろう。
【0061】
核酸のストレッチに関係して、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、MAPTゲノムDNA、プレmRNA、またはmRNAのセグメントと、セグメント
の全長にわたって、少なくとも、70%、80%、85%、86%、87%、88%、8
9%、90%、91%,92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、9
9%、または100%相補的である。アンチセンスオリゴヌクレオチドの標的核酸との相
補性のパーセントは、当技術分野において知られた日常的方法、例えば、BLASTプロ
グラム(basic local alignment search tools)ま
たはPowerBLASTプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., 1990, 215, 4
03 410; Zhang and Madden, Genome Res., 1997, 7, 649 656)を使用して決定すること
ができる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌク
レオチドは、MAPTゲノムDNA、プレmRNA、またはmRNAのセグメントと10
0%相補的な(すなわち、完全に相補的な)核酸塩基配列を有する。本明細書において使
用する、「完全に相補的な」または「100%相補的な」は、アンチセンス化合物の各核
酸塩基が、標的核酸の対応する核酸塩基と精密な塩基対を形成することができることを指
す。例えば、20個の核酸塩基アンチセンス化合物は、アンチセンス化合物と完全に相補
的である標的核酸の対応する20個の核酸塩基部分がある限り、400核酸塩基の長さの
標的配列と完全に相補的である。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、1、2、または3箇所のミスマッチを有する、表1で示されるいずれかの配列の少な
くとも12個の連続した核酸塩基(例えば、12、13、14、15、16、17、また
は18個の連続した核酸塩基)と相補的である核酸塩基配列を含む。いくつかの実施形態
において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表1で示されるい
ずれかの配列のうち少なくとも12個の連続した核酸塩基(例えば、12、13、14、
15、16、17、または18個の連続した核酸塩基)と100%相補的である核酸塩基
配列を含む。
【0063】
本明細書で提供されるアンチセンス化合物は、特定のヌクレオチド配列、配列番号、ま
たはそれらの一部と定義されたパーセント同一性を有することもある。本明細書において
使用する、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それが同じ核酸塩基対形成能力を有する
ならば、本明細書で開示された配列と同一である。例えば、ウラシルおよびチミジンは両
方ともアデニンと対を形成するので、開示されたDNA配列におけるチミジンの位置にウ
ラシルを含有するRNAは、上記DNA配列と同一と考えられるであろう。本明細書で提
供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドに対して非同一の塩基を有する本明細書に記載
されたアンチセンスオリゴヌクレオチドならびにオリゴヌクレオチドの短縮および延長し
た形式も企図される。非同一の塩基は、互いに隣接していることもあり、またはアンチセ
ンスオリゴヌクレオチド全体に分散されていることもある。アンチセンスオリゴヌクレオ
チドの配列同一性のパーセントは、それが比較されている配列に対して同一の塩基対形成
を有する塩基の数に従って計算することができる。配列同一性のパーセントは、当技術分
野において知られた日常的方法、例えば、BLASTプログラム(basic loca
l alignment search tools)またはPowerBLASTプロ
グラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., 1990, 215, 403 410; Zhang and Madden, Ge
nome Res., 1997, 7, 649 656)を使用して;またはギャッププログラム(Unixのた
めのウィスコンシン配列分析パッケージ、バージョン8 Genetics Compu
ter Group、 University Research Park、 Mad
ison ウィスコンシン州)により、SmithおよびWatermanのアルゴリズ
ム(Adv. Appl. Math. , 1981, 2, 482-489)を使用する初期設定を使用して、決定する
ことができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、表2~17のいずれかで示される核酸塩基配列のいずれ
かと少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、81%、82%、83%、8
4%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を有す
る核酸塩基配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、核酸塩基配列のいずれ
かのCが、シトシンまたは5-メチルシトシンのどちらかであり、該オリゴヌクレオチド
の少なくとも1つのヌクレオチドが2’-修飾を有する、アンチセンスオリゴヌクレオチ
ドが本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、表2~17のいずれかで示さ
れる核酸塩基配列のいずれかと、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、
93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同
一性を有する核酸塩基配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドが本明細書で提供され
る。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドは、表2~17のいずれかで示される核酸塩基配列のいずれかを含む。いくつかの実施
形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表2~17の
いずれかで示される核酸塩基配列のいずれかからなる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、12から30核酸塩基の長さである。例えば、MAPTを標的とするアンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、
22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の核酸塩基を含むこと
ができる。いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌク
レオチドは、12から25核酸塩基の長さである。例えば、MAPTを標的とするアンチ
センスオリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、20
、21、22、23、24、または25個の核酸塩基を含むことができる。いくつかの実
施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、15から2
0核酸塩基の長さである。例えば、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドは、15、16、17、18、19、または20個の核酸塩基を含むことができる。い
くつかの実施形態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
17個の核酸塩基を含む。活性を除くことなく、アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さ
を増大または減少することおよび/またはアンチセンスオリゴヌクレオチド中にミスマッ
チ塩基(例えば、1、2、3、4、または5箇所のミスマッチ)を導入することは可能で
ある。
【0066】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの化学的修飾
オリゴヌクレオチドは、ヌクレオシド間のホスホジエステル結合により連結されて一緒
になっている繰り返しヌクレオチド単位からなる。各ヌクレオチドは、糖部分と連結され
た核酸塩基、および糖部分に共有結合で連結された1つまたは複数のリン酸基を含むヌク
レオシドで構成される。ホスホジエステル結合は、プリン(グアニンおよび/またはアデ
ニン)および/またはピリミジン塩基(DNAについてはチミンおよびシトシン;ならび
にRNAについてはウラシルおよびシトシン)にグリコシドの結合を通して連結された糖
残基(RNAのためのリボースまたはDNAのためのデオキシリボースのいずれか、総称
でフラノース)で作られている。
【0067】
本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾され
たヌクレオチドのサブユニットおよび/またはヌクレオシド間連結を含有することができ
る。オリゴヌクレオチドに対する化学的修飾は、ヌクレオシド間連結、糖部分、核酸塩基
、および/または骨格における変化を包含する。修飾は、アンチセンスオリゴヌクレオチ
ドの安定性、有効性を改善すること、および/または免疫原性を低下させることができる
。例えば、オリゴヌクレオチドは、修飾されていないオリゴヌクレオチドと比較した場合
、ヌクレアーゼに対する増大した耐性、核酸標的に対する増強された結合親和性、増強さ
れた細胞による取り込み、および/または増大した阻害活性を有するように修飾すること
ができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、自然に生ずるホスホジエステルとヌクレオシド間連結を含む。ホスホジエステル連結
は、他のリン含有連結、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホス
ホネートなど、もしくはホスホルアミデート連結、または非リン含有連結に修飾され得る
。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、1つまたは複数の修飾されたヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態におい
て、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート連結
を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオシ
ド間連結は、ホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結である。
【0069】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、化学的に修飾された糖部分を含む。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、フ
ラノース環における2’修飾、二環式核酸(BNA)を形成する非ジェミナル環原子の架
橋、糖環の酸素原子の他の原子による置き換え、またはそれらの組合せを含むことができ
る。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチドは
、2’-修飾されたフラノース環を有する。典型的2’-修飾は、2’-フルオロ、2’
-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O
-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノ
エチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DM
AP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、お
よび2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)を含む。いくつかの実施形
態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの各ヌクレオチドは、糖部分に2’-O-
MOE修飾を有する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、所与の位置におけるヌクレオチドの同じヌクレオチドの修飾された形式による置換を
含むことができる。例えば、ヌクレオチド(A、G、CまたはT)は、対応するヒポキサ
ンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、ベータ-D-ガラクロシルクエオシン、イ
ノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2
,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシ
ン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、ベータ-D-マンノシ
ルクエオシン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン、ク
エノシン、2-チオシトシン、または2,6-ジアミノプリンにより置き換えられ得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、オリゴヌクレオチドの免疫原性を低下させる化学的に修飾されたオリゴヌクレオチド
を含む。例えば、5-メチルシトシンまたは2’-O-MOE修飾を含有するオリゴヌク
レオチドは、マウスにおいて減少した免疫刺激を示すことが示されている(Henry S. et
al., J Pharmacol Exp Ther. 2000 Feb; 292(2):468-79)。いくつかの実施形態において
、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、シトシンの代わりに5-メ
チルシトシンを含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンス
オリゴヌクレオチドは、2’-O-MOE修飾を含む。いくつかの実施形態において、本
明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-メチルシトシンおよび2’
MOE修飾を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、3’末端に以下の構造を有するC6リンカーを含み:
【0073】
【化4】
該リンカーは、オリゴヌクレオチドの3’末端にリン酸架橋を通して付着し、ここで、R
=PO2-O-オリゴヌクレオチド(ホスホジエステルヌクレオシド間連結のため)また
はR=POS-O-オリゴヌクレオチド(ホスホロチオエートヌクレオシド間連結のため
)である。そのような3’C6リンカーは、3’-エキソヌクレアーゼの攻撃を遮断する
ことができ、それ故、アンチセンスオリゴヌクレオチドの安定性および効果の持続期間を
増強する(siRNAに適用される同様な戦略について、2005/021749号パン
フレットを参照されたい)。いくつかの場合に、3’C6リンカーは、アンチセンスオリ
ゴヌクレオチドの合成および/または精製を容易にすることもできる。いくつかの実施形
態において、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、任意の以下の構
造を有することができる。
【0074】
【化5】
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、代替的骨格、例えば、モルホリノ、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(U
NA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、および/またはペプチ
ド核酸(PNA)を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供さ
れるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、糖環の2個の炭素原子をつなぐ架橋を含む二環
式ヌクレオシド(BNA)を含むことができる。例えば、そのようなBNAは、糖部分の
4’-炭素と2’-炭素をつなぐ4’-CH(CH3)-O-2’架橋を含む「束縛され
たエチル」(または「cEt」)を含むことができる。いくつかの実施形態において、本
明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖単位の4’位
と2’位の間で2個の炭素原子をつなぐ架橋を含むロックド核酸(LNA)を含むことが
できる。そのようなLNAは、α-L-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)LN
A、β-D-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)LNA、エチレンオキシ(4’
-(CH-O-2’)LNA、アミノオキシ(4’-CH-O-N(R)-2’
)LNA、オキシアミノ(4’-CH-N(R)-O-2’)LNA、または米国特許
第7,053,207号明細書;第6,268,490号明細書;第6,770,748
号明細書;第6,794,499号明細書;第7,034,133号明細書;第6,52
5,191号明細書;第7,696,345号明細書;第7,569,575号明細書;
第7,314,923号明細書;第7,217,805号明細書;第7,084,125
号明細書;または第6,670,461号明細書;国際公開第98/39352号パンフ
レットまたは国際公開第99/14226号パンフレットに記載された任意の他のLNA
を含むことができる。他の適当なLNAは、Braasch et al., Chern. Biol. 8: l-7, 200
1; Elayadi et al., Curr. Opinion Invens. Drugs 2: 558-561, 2001; Frieden et al.,
Nucleic Acids Research, 21: 6365-6372, 2003; Koshkin et al., Tetrahedron, 54: 3
607-3630, 1998; Morita et al., Bioorganic Medicinal Chemistry, 11: 2211-2226, 20
03; Orum et al., Curr. Opinion Mol. Ther. 3: 239-243, 2001; Singh et al., Chem.
Commun. 4: 455-456, 1998; Singh et al., J. Org. Chem., 63: 10035-10039, 1998;ま
たはWahlestedt et al., PNAS 97: 5633-5638, 2000に記載されたLNAを含む。
【0076】
立体的遮断剤
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸に結合して、DNAまたはRNAに結合
するタンパク質、転写因子、スプライシング因子、リボソーム、および/または翻訳機構
の標的核酸への接近を立体的に遮断することができ、したがってRNAseHを活性化せ
ずに、標的発現を減少させる。例えば、そのような立体的遮断剤は、標的の開始コドンの
周囲の配列にハイブリダイズして、イントロンの分岐点配列を遮断して、スプライス部位
を標的とし、イントロンおよび/またはエクソンの配列を挟み、またはエクソンスプライ
シングエンハンサーなどの調節配列を標的とすることにより、標的タンパク質の発現を低
下させることができる。立体的遮断剤は、前もって決定されているかまたは予測されたイ
ントロン-エクソンの境界および遺伝子構造に基づいて設計することができ、異なるアン
チセンスオリゴヌクレオチドのパネルを、同じ箇所を遮断するために発生させることがで
きる。BLAST分析は、各ASOについて、オフターゲットハイブリダイゼーションを
最小化するために実施することができる。
【0077】
立体的遮断剤は、異常なmRNAを認識して分解する内因性の細胞サーベイランス経路
を活用することにより、mRNA低下を達成することができる。1つのそのような経路は
、ナンセンス-媒介mRNA崩壊(NMD)であり、それは、遺伝子発現をモジュレート
して、可能性として毒性のタンパク質がmRNAから生成することを防止する。プレmR
NAプロセシングにおける欠陥は、早期の停止コドン(PTC)が導入された場合に、タ
ンパク質の機能喪失をもたらして、オープンリーディングフレームを破壊する。そのよう
なPTC-含有mRNAは、翻訳リボソームと必須NMD因子UPF1を含むエクソン接
合複合体の構成要素との間の情報交換を含み、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレア
ーゼの活性によりRNAを分解するNMDのための基質であることができる。ASOは、
標的mRNAをNMD経路に向かわせることにより、標的mRNAの低下を起こさせるよ
うに、合理的に設計することができる。これは、立体的遮断剤の配列を、特定のコードエ
クソン、イントロン-エクソン接合、または適当なプレmRNAプロセシングに必要な他
の配列と相補的であるように設計して、エクソンスキッピング、フレームシフティングを
導入し、および/またはPTCを導入することにより達成することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、立体的遮断剤、例えば、表2~8のいずれかで示される核酸塩
基配列のいずれかと少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、81%、82
%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配
列同一性を有する核酸塩基配列を含むオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態に
おいて、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは
、表2~8のいずれかで示される核酸塩基配列のいずれかを含む立体的遮断剤である。い
くつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、表2~8のいずれかで示される核酸塩基配列のいずれかからなる立
体的遮断剤からなる。下の実施例で詳述されるように、立体的遮断剤は、標的タウを構成
するエクソン(例えば、エクソン1、4、5、7、9、11、12、13)、MAPTの
開始コドンを挟む配列、スプライスアクセプターおよびドナー、スプライシングの分岐点
、ポリピリミジントラック関連配列、またはスプライシングのエンハンサーまたは阻害剤
の配列を標的とするように設計された。開始コドンおよびエクソン1を標的とすることは
、翻訳の開始を遮断する可能性がある。スプライシングに干渉して、および/またはエク
ソンスキッピングを誘発するASOは、フレームシフティングおよび/または下流の早期
の停止コドンの導入をもたらして、MAPTmRNAおよび/またはタウタンパク質の低
下を導くことになる。
【0079】
化学的修飾は、立体的遮断剤中に組み込まれて、それらの安定性、有効性、および/ま
たは細胞の取り込みを改善することができる。立体的遮断剤は、各ヌクレオチド位置でま
たはいくつかの選択された位置で化学的修飾を有することができる。例えば、糖環の2’
-修飾(2’-O-メトキシエチル、MOEなど)の組み込み、ロックド核酸(LNA)
の包含および/または骨格修飾(ホスホロチオエートなど)は、ヌクレアーゼ分解を減少
させ、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合親和性を増大させることが
できる。糖および/または骨格の修飾の他に、立体的遮断剤がDNAまたはRNAと非常
に異なるオリゴマーから作製され得る。ペプチド核酸(PNA)は、オリゴヌクレオチド
模倣体であり、その核酸塩基がアミド結合により連結されている。アミド骨格は無荷電な
ので、結合は、高い率の会合および高い親和性により特徴付けられる(Bentin T, Bioche
mistry. 1996; 35:8863-8869; Smulevitch SV, Nat Biotech. 1996; 14:1700-1704を参照
されたい)。ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMOまたは「モルホリノ類
」と一般的に呼ばれている)は、別の無荷電のDNA類似体である。PMOは、PNA結
合を特徴付ける高い親和性で相補的な標的と結合することはないが、細胞内部の効果的な
作用物質であることが証明されている(Summerton J, Antisense Nucleic Acid Drug Dev
. 1997; 7:187-195; Corey DR, Genome Biol. 2001; 2:REVIEWS1015を参照されたい)。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、2’-修飾されたヌクレオチドを含む立体的遮断剤である。2
’-修飾は、2’-フルオロ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2
’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-
AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチ
ルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチ
ル(2’-O-DMAEOE)、および2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-
NMA)からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、本明細書
で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、各ヌクレオチド
サブユニットで2’-O-MOE修飾を有する立体的遮断剤である。
【0081】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、ヌクレオシド間のホスホジエステルまたはホスホロチオエート
連結を有する立体的遮断剤である。
【0082】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、RNaseHの結合を妨げる骨格修飾を含有する立体的遮断剤
である。そのような立体的遮断剤は、修飾されたヌクレオシド間連結、例えば、メチルホ
スホネート連結、メチルホスホノチオエート連結、ホスホロモルホリデート連結、ホスホ
ロピペラジデート連結またはホスホラミダイト連結を含むことができる。いくつかの実施
形態において、ヌクレオシド間の1つ置きの連結が、2’低級アルキル部分(例えば、C
1~C4、直鎖状または分岐、飽和または不飽和アルキル、例えば、メチル、エチル、エ
テニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、およびイソプロピルなど)または
それらの組合せを有する修飾されたリン酸エステルを含有することもある。いくつかの実
施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレ
オチドは、米国特許第5,149,797号明細書に記載された1つまたは複数の修飾さ
れたヌクレオシド間連結を含む立体的遮断剤である。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とする立体的遮断
剤は、3’末端に以下の構造を有するC6リンカーを含み:
【0084】
【化6】
上記構造は、リン酸架橋を通してオリゴヌクレオチドの3’末端に付着しており、式中、
R=PO2-O-オリゴヌクレオチド(ホスホジエステルヌクレオシド間連結について)
またはR=POS-O-オリゴヌクレオチド(ホスホロチオエートヌクレオシド間連結に
ついて)である。したがって、MAPTを標的とする、ホスホジエステルのヌクレオシド
間連結を有する立体的遮断剤は、以下の構造を有することができ:
【0085】
【化7】
MAPTを標的とする、ホスホロチオエートのヌクレオシド間連結を有する立体的遮断剤
は、以下の構造を有することができる。
【0086】
【化8】
【0087】
ギャップマー
DNAの連続したストレッチを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞のエンド
ヌクレアーゼRNaseHを、標的RNA:DNAヘテロ二重鎖に動員し、RNA:DN
A二重鎖中の標的RNAを切断することができる。ギャップマーは、キメラアンチセンス
化合物である。キメラアンチセンス化合物は、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する増
大した耐性、増大した細胞の取り込み、標的核酸に対する増大した結合親和性、および/
または増大した阻害活性を与えるように修飾された少なくとも1つの領域、および第1領
域のヌクレオチドと化学的に異なるヌクレオチドを有する第2の領域を含有する。
【0088】
ギャップマーは、5’および3’末端で修飾されたヌクレオチドからなる2個のウィン
グセグメント間に位置する連続した2’-デオキシリボヌクレオチドのストレッチからな
る中央ギャップセグメントを有する。ギャップセグメントは、エンドヌクレアーゼRNA
seH切断のための基質として役割を果たすが、一方、修飾されたヌクレオチドを有する
ウィングセグメントは、他のヌクレアーゼ分解に対する増大した耐性を与える。ウィング
-ギャップ-ウィングセグメントは、「X-Y-Z」と記載することもでき、「X」は、
5’ウィングの長さを表し、「Y」は、ギャップの長さを表し、「Z」は3’ウィングの
長さを表す。「X」および「Z」は、一様な、変異した、または交互の糖部分を含むこと
もできる。
【0089】
いくつかの実施形態において、ギャップマーの中央ギャップセグメントは、少なくとも
5個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12個)の連続した2’-デオキシリ
ボヌクレオチドからなり、5’および3’ウィングセグメントは、1つまたは複数の2’
-修飾されたヌクレオチドを含む。4個までの連続した2’-デオキシリボヌクレオチド
のストレッチを含むキメラオリゴヌクレオチドは、RNAseHを活性化しないことが報
告されている。米国特許第9,157,081号明細書を参照されたい。いくつかの実施
形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオ
チドは、少なくとも7個(例えば、7、8、9、10、11、12個)の連続した2’-
デオキシリボヌクレオチドを含むギャップマーである。いくつかの実施形態において、本
明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、10個の
連続した2’-デオキシリボヌクレオチドを含むギャップマーである。2’-修飾は、2
’-フルオロ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキ
シエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-
O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピ
ル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-
DMAEOE)、および2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)からな
る群から選択することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、MAPTを標的とするギャップマーは、20ヌクレオシ
ドの長さである5-10-5ギャップマーであり、ここで、中央ギャップセグメントは1
0個の2’-デオキシヌクレオシドを含み、2’-修飾を各々有する5個のヌクレオシド
を各々含む5’および3’ウィングセグメントと隣接している。他の適当なギャップマー
は、5-9-5ギャップマー、5-8-5ギャップマー、4-8-6ギャップマー、6-
8-4ギャップマー、または5-7-6ギャップマーを含むが、これらに限定されない。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、ギャップマーであり、例えば、表9~15および17のいずれ
かで示される核酸塩基配列のいずれかと少なくとも70%(例えば、70%、75%、8
0%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、9
0%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、ま
たは100%)の配列同一性を有する核酸塩基配列を含むオリゴヌクレオチドである。い
くつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、表9~15および17のいずれかで示される核酸塩基配列のいずれ
かを含むギャップマーである。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMA
PTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、表9~15および17のいずれか
で示される核酸塩基配列のいずれかからなるギャップマーである。下の実施例で詳述する
ように、ギャップマーは、開始コドンの周囲の配列、エクソン1、またはMAPT転写物
の3’非翻訳領域(UTR)を標的とするように設計された。いくつかの実施形態におい
て、ギャップマーは、3’UTRを標的とするように設計された。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるMAPTを標的とするアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、表9~15および17のいずれかで示される核酸塩基配列のい
ずれかを含む5-10-5ギャップマーであり、ここで、第1から第5のヌクレオチドは
、2’-O-MOEで修飾されたヌクレオシドを各々含み、第6から第15のヌクレオチ
ドは、2’-デオキシヌクレオシドを各々含み、第16から第20ヌクレオチドは、2’
-O-MOEで修飾されたヌクレオシドを各々含む。
【0093】
アンチセンスオリゴヌクレオチドにより標的とされるMAPTゲノム配列
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、MAPTゲノム配
列(GenBank受託番号NG_007398.1;配列番号304)の特定の領域ま
たは対応するタウmRNAまたは転写物(配列番号306)の領域を標的とするように設
計されている。MAPTのイントロンおよびエクソン配列および分岐点は、Ensemb
lゲノムデータベースのウェブサイトに基づいて転写物:MAPT-203 ENST0
0000344290を使用して決定した。ヒトMAPT遺伝子のエクソン、イントロン
、およびイントロン/エクソン接合のスクリーニングにより、MAPT遺伝子または転写
物中のいくつかの領域を、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより標的とすることは、他
の領域を標的とするよりもタウ発現を低下させるために一層効果的であることが明らかに
なった。例えば、表1には、MAPT遺伝子または転写物中で、アンチセンスオリゴヌク
レオチドにより標的とされ得るいくつかの好ましい領域の配列をリストに挙げる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、1、2、または3箇所のミスマッチを有する、配列番号487~506のいずれか1
つの少なくとも12個の連続した核酸塩基(例えば、12、13、14、15、16、1
7、または18個の連続した核酸塩基)と相補的である核酸塩基配列を含む。いくつかの
実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号
487~506のいずれか1つの少なくとも12個の連続した核酸塩基(例えば、12、
13、14、15、16、17、または18個の連続した核酸塩基)と100%相補的で
ある核酸塩基配列を含む。
【0095】
【表1】
【0096】
アンチセンスオリゴヌクレオチドコンジュゲート
アンチセンスオリゴヌクレオチドと別の部分とのコンジュゲーションは、アンチセンス
オリゴヌクレオチドの活性、細胞の取り込み、および/または組織分布を改善することが
できる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1種または複数の診断用化合物、
レポーター基、架橋剤、ヌクレアーゼ-耐性を付与する部分、親油性分子、コレステロー
ル、脂質、レクチン、リンカー、ステロイド、ウバオール、ヘシゲニン、ジオスゲニン、
テルペン、トリテルペン、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導
体化リトコール酸、ビタミン、ビオチン、炭水化物、デキストラン、染料、プルラン、キ
チン、キトサン、合成炭水化物、オリゴラクテート15量体、天然ポリマー、低または中
分子量ポリマー、イヌリン、シクロデキストリン、ヒアルロン酸、タンパク質、タンパク
質結合剤、インテグリン標的分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミン、ペプチド模倣
体、トランスフェリン、クマリン、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アント
ラキノン、アクリジン、フルオレセイン、および/またはローダミンと共有結合で連結す
ることができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、リンカー分子に付着している。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、脂質またはコレステロールと連結されている。いく
つかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、中性リポソーム(NL)
または脂質ナノ粒子(LNP)と連結されている。LNPは、自己集合するカチオン性脂
質に基づくシステムであり、それは、例えば、中性脂質(リポソーム基部);カチオン性
脂質(オリゴヌクレオチド装荷のため);コレステロール(リポソームを安定化するため
);およびPEG-脂質(製剤の安定化、電荷遮蔽および血流における拡張された循環の
ため)を含むことができる。中性リポソーム(NL)は、非カチオン性脂質に基づく粒子
である。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、脂肪酸、例えば、オメガ-3脂肪酸またはオメガ-6脂肪酸と連結されている。適当
なオメガ-3脂肪酸は、例えば、α-リノレン酸(ALA)、ドコサヘキサエン酸(DH
A)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサテト
ラエン酸(ETA)、エイコサトリエン酸(ETE)、エイコサペンタエン酸(EPA)
、ヘキサデカトリエン酸(HTA)、ヘンエイコサペンタエン酸(HPA)、ステアリド
ン酸(SDA)、テトラコサペンタエン酸、およびテトラコサヘキサエン酸を含む。
【0099】
アンチセンスオリゴヌクレオチド活性の試験
アンチセンスオリゴヌクレオチドの活性は、インビトロまたはインビボで試験すること
ができる。インビトロで試験するためには、ASOを、培養細胞中にトランスフェクショ
ンまたは電気穿孔により導入することができる。処置期間の後で、ASOで処置された細
胞におけるMAPT(タウ)の発現レベルを決定して、未処置対照細胞におけるMAPT
(タウ)の発現レベルと比較することができる。
【0100】
MAPT発現レベルは、任意の適当な方法により、例えば、MAPT mRNAのレベ
ルの定量により、MAPT mRNAの逆転写によるcDNA産生量を測定することによ
り、またはタウタンパク質の量を決定することにより決定することができる。これらの方
法は、試料基準により試料について実施するかまたは高処理能力分析のために修飾するこ
とができる。
【0101】
MAPT mRNAのレベルは、MAPT転写物のセグメントに特異的にハイブリダイ
ズするプローブにより、例えば、ノーザンブロット分析により検出および定量することが
できる。MAPT mRNAのレベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、MA
PT転写物を認識する一対のプライマーを使用して検出および定量することもできる。P
CRのための一般的手順は、MacPherson et al., PCR: A Practical Approach, (IRL Pre
ss at Oxford University Press (1991))で教示されている。しかしながら、各適用反応
のために使用されるPCR条件は経験的に決定される。多くのパラメーター、例えば、ア
ニーリング温度および時間、増量時間、Mg+および/またはATP濃度、pH、なら
びにプライマー、テンプレート、および/またはデオキシリボヌクレオチドの相対濃度が
、反応の成功に影響する。増幅後、生じたDNAフラグメントは、アガロースゲル電気泳
動に続いて臭化エチジウム染色および紫外照明を用いて可視化することにより検出するこ
とができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、MAPT mRNAのレベルは、任意の市販のリアルタ
イムPCRシステムを使用して、増幅ステップ中に検出可能な染料またはレポーターを同
時に組み込むことにより、標的核酸の増幅をモニターする定量的リアルタイムPCRによ
り検出および定量することができる。
【0103】
あるいは、標識は、元の核酸試料(例えば、mRNA、ポリA、mRNA、cDNA、
その他)に直接付けるか、または増幅が完了した後で増幅生成物に付けてもよい。標識を
核酸に付ける手段は、当業者に周知であり、例えば、核酸のキナーゼ操作およびそれに続
く、試料核酸を標識(例えば、蛍光団)に接合する核酸リンカーの取り付け(ライゲーシ
ョン)によるニックトランスレーションまたは末端標識(例えば、標識されたRNAを用
いて)を含む。
【0104】
本発明で使用するために適当な検出可能な標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免
疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能な任意の組成物を含む。本発
明で有用な標識は、標識されたストレプトアビジンコンジュゲートを用いる染色のための
ビオチン、磁性ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光性染料(例えば、
フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光性タンパク質等)、放射性標識
(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサ
ビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびその他ELISAで一般的に使用さ
れるもの)、および比色標識、例えばコロイド状金または着色ガラスもしくはプラスチッ
ク(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズを含む。そのような
標識の使用を教示する特許は、米国特許第3,817,837号明細書;第3,850,
752号明細書;第3,939,350号明細書;第3,996,345号明細書;第4
,277,437号明細書;第4,275,149号明細書;および第4,366,24
1号明細書を含む。
【0105】
標識の検出は当業者には周知である。したがって、例えば、放射性標識は、写真フィル
ムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出することができ、蛍光性マーカーは
、発光を検出する光検出器を使用して検出することができる。酵素標識は、典型的には、
酵素に基質を提供して該基質に対する酵素の作用による反応生成物の産生を検出すること
により検出され、および比色標識は、着色した標識を単に視覚により検出する。核酸を標
識して標識されてハイブリダイズした核酸を検出する方法の詳細な総説については、Labo
ratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 24: Hybridization
with Nucleic Acid Probes, P. Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)を参照されたい。
【0106】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの活性は、タウタンパク質レベルを、当技術分野にお
いて知られた方法を使用して測定することにより評価することもできる。例えば、タウタ
ンパク質レベルは、ウェスタンブロット分析(イムノブロッティング)、酵素結合免疫吸
着アッセイ(ELISA)、免疫組織化学、免疫測定、免疫沈降、免疫蛍光アッセイ、免
疫細胞化学、蛍光活性化細胞選別(FACS)、放射免疫測定、免疫放射線測定法、高速
液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析法、共焦点顕微鏡、酵素アッセイ、また
は表面プラズモン共鳴(SPR)により定量され得る。
【0107】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビボにおける活性は、動物モデルで試験するこ
ともできる。試験は、正常動物または実験疾患動物モデルで実施することができる。アン
チセンスオリゴヌクレオチドは、薬学的に許容される希釈剤で製剤化することができ、適
当な投与経路を通して送達される。治療期間の後、組織試料、例えば、脳組織、脳脊髄液
(CSF)、脊髄を収集してタウ発現レベルを、上で記載された方法のいずれかを使用し
て測定することができる。組織学的分析を、脳の構造および/または神経原線維変化の存
在を評価するために実施することができる。治療された動物の表現型の変化、例えば、改
善された認知または運動性もモニターして評価することができる。
【0108】
オリゴヌクレオチドの合成および特徴付け
一本鎖のオリゴヌクレオチドは、当技術分野において知られた任意の核酸重合方法、例
えば、ホスホラミダイト法(S. L. Beaucage and R. P. Iyer, Tetrahedron, 1993, 49,
6123; S. L. Beaucage and R. P. Iyer, Tetrahedron, 1992, 48, 2223)を用いる固相合
成、H-ホスホネート、ホスホルトリエステル化学、または酵素的合成を使用して合成す
ることができる。自動化された市販の合成機、例えば、BioAutomation(I
rving、テキサス州)、またはApplied Biosystems(Foste
r City、カリフォルニア州)の合成機を使用することができる。いくつかの実施形
態において、一本鎖のオリゴヌクレオチドは、例えば、Nucleic Acid Chemistry, Beauca
ge, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USA.のCurrent Pr
otocolsに記載されている標準的固相ホスホラミダイト化学を使用して生成される。ホス
ホロチオエート連結は、フェニルアセチルジスルフィドまたはDDTT(((ジメチルア
ミノ-メチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾリン-3-チオン)などの硫
化試薬を使用して導入することができる。同様な技法および市販の修飾されたアミダイト
および制御細孔ガラス(CPG)生成物(controlled-pore glass (CPG) products)、例
えば、ビオチン、フルオレセイン、アクリジンまたはソラレンなどで修飾されたアミダイ
トおよび/またはCPGを、修飾されたオリゴヌクレオチド、または蛍光標識された、ビ
オチン、またはその他とのコンジュゲートオリゴヌクレオチドを合成するために使用する
ことは周知である。
【0109】
出発原料および各合成ステップからの生成物の品質の制御は、最終生成物中の不純物の
レベルを最小化するために極めて重要である。しかしながら、カップリング当たりの合成
ステップの数およびカップリングの数を考慮すれば、不純物の存在は不可避である。精製
方法が、最終のオリゴヌクレオチド生成物から望ましくない不純物を排除するために使用
され得る。一本鎖のオリゴヌクレオチドのために一般的に使用される精製技法は、逆相イ
オン対高速液体クロマトグラフィー(RP-IP-HPLC)、毛細管ゲル電気泳動(C
GE)、アニオン交換HPLC(AX-HPLC)、およびサイズ排除クロマトグラフィ
ー(SEC)を含む。
【0110】
精製後、オリゴヌクレオチドは、質量分析法により分析することができ、260nmの
波長で分光学的に定量される。
【0111】
治療における使用および治療方法
対象、例えば、ヒトにおけるタウ発現レベルを、対象に本明細書に記載されたアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドのいずれかの治療有効量を投与することにより、減少させる方法
が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチ
ドは、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、静脈内、経口、または皮下経路を通して対象に投与され
得る。いくつかの実施形態において、そのような方法は、タウに関連する疾患に罹患して
いるかまたは罹患しやすい対象を同定および選択することをさらに含む。
【0112】
本明細書で提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはそれらの医薬組成物は、
対象におけるタウに関連する疾患を治療または予防するために使用することができる。い
くつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴヌクレ
オチドまたはそれらの医薬組成物を、患者におけるタウに関連する疾患の治療または予防
に使用するために提供する。さらなる実施形態において、本発明は、患者におけるタウに
関連する疾患の治療または予防に使用するための医薬の製造における、本明細書に記載さ
れたアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0113】
タウに関連する疾患は、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソ
ン症候群-認知症複合病(ALS-PDC)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)、英国型アミ
ロイド血管症、脳アミロイド血管症、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症
(CBD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、パンチドランカー、石灰化を伴う
びまん性神経原線維変化症、ダウン症候群、ドラベ症候群、癲癇、前頭側頭型認知症(F
TD)、17番染色体(FTDP-17)と連鎖するパーキンソン症候群を伴う前頭側頭
型認知症、前頭側頭葉変性症、神経節膠腫、神経節細胞腫、ゲルストマン・ストロイスラ
ー・シャインカー病、ハラーホルデン・スパッツ病、ハンチントン病、封入体筋炎、鉛脳
症、リティコ・ボディグ病、髄膜腫血管腫症、多系統萎縮症、筋緊張性ジストロフィー、
ニーマンピック病C型(NP-C)、神経原線維変化を伴う非グアマニアン運動神経病、
ピック病(PiD)、脳炎後パーキンソン症候群、プリオンタンパク質脳アミロイド血管
症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、亜急性硬化性全脳炎、神経
原線維変化優位型認知症(tangle only dementia)、神経原線維変化優位型認知症(Tang
le-predominant dementia)、多発梗塞性認知症、虚血性脳卒中、および結節性硬化症を
含むが、これらに限定されない。
【0114】
組合せ療法
上で記載された種々のオリゴヌクレオチドは、他の治療パートナーとの組合せで使用す
ることができる。したがって、本明細書に記載されたタウに関連する疾患を治療する方法
は、第2の作用物質を、治療を必要とする対象に投与することをさらに含むことができる
。例えば、微小管が関連するタンパク質タウ(MAPT)を標的とするアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドは、タウタンパク質に特異的に結合する抗体および/またはアミロイドベ
ータ(Aβ)を標的とする作用物質、例えば、Aβまたはベータセクレターゼ(BACE
)阻害剤に結合する抗体との組合せで使用することができる。いくつかの実施形態におい
て、MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、タウタンパク質に特異的
に結合する抗体との組合せで使用される。いくつかの実施形態において、MAPTを標的
とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、BACE阻害剤との組合せで使用される。
【0115】
用語「組合せ」は、1つの単位剤形で固定された組合せ、または本発明の化合物および
組合せパートナー(例えば下で説明される別の薬、「治療剤」または「共作用物質」とも
称される)が、独立に、同時にまたは組合せパートナーが協同的、例えば、相乗的効果を
示すことを可能にする時間間隔内に別々に投与されてもよい組合せ投与のいずれかを指す
。単一構成要素は、キット中に梱包されても、または別々に梱包されてもよい。構成要素
(例えば、散剤または液剤)の一方または両方が投与の前に所望の用量に再構成または希
釈されてもよい。本明細書で利用される用語「共投与」または「組合せ投与」等は、選択
された組合せパートナーをそれを必要とする単独の対象(例えば患者)に投与することを
包含することを意味し、該活性物質が同じ経路の投与によりまたは同時に投与される必要
があるとは限らない治療計画を含むことが意図される。本明細書において使用する用語「
薬学的組合せ」は、2種以上の治療剤の混合または組合せから生ずる製品を意味し、治療
剤の固定された組合せおよび固定されない組合せの両方を含む。用語「固定された組合せ
」は、治療剤、例えば、本発明のオリゴヌクレオチドおよび組合せパートナーが、両方と
も単一の実体または剤形で、患者に同時に投与されることを意味する。用語「固定されな
い組合せ」は、治療剤、例えば、本発明のオリゴヌクレオチドおよび組合せパートナーが
、両方とも患者に別々の実体として、同時に、並行して、または順次にのいずれかで特定
の時間制限なく投与されることを意味し、そのような投与は、患者の身体中における上記
2種の化合物の治療的に有効なレベルを提供する。後者は、カクテル療法、例えば3種以
上の治療剤の投与にも適用される。
【0116】
本明細書において使用する用語「薬学的組合せ」は、1つの単位剤形に固定された組合
せか、または2種以上の治療剤が、独立に、同時にまたは別々に時間間隔内に投与される
ことができ、特にこれらの時間間隔が、組合せパートナーが協同的、例えば、相乗的効果
を示すことを可能にする固定されない組合せもしくは組合せ投与のためのキットオブパー
ツのいずれかを指す。
【0117】
用語「組合せ療法」は、本開示で記載された治療的状態または障害を治療するための2
種以上の治療剤の投与を指す。そのような投与は、実質的に同時の様式で、例えば、有効
成分の比が固定された単一のカプセル剤で、これらの治療剤を共投与することを包含する
。あるいは、そのような投与は、複数の、または各有効成分について別々の容器(例えば
、錠剤、カプセル剤、散剤、および液剤)で共投与することを包含する。散剤および/ま
たは液剤は、投与の前に所望の用量に再構成または希釈することができる。それに加えて
、そのような投与は、ほぼ同時または異なる時期のいずれかにおける逐次様式における各
タイプの治療剤の使用も包含する。いずれの場合にも、治療計画は、本明細書に記載され
た状態または障害の治療における薬物の組合せの有益な効果を提供するであろう。
【0118】
試料の調製
組織試料は、当技術分野において知られた任意の方法を使用してアンチセンスオリゴヌ
クレオチドで治療される対象から、例えば、生検または手術により得ることができる。例
えば、脳脊髄液を含む試料は、注射器に取り付けられた細い注射針が、腰部で脊柱管中に
挿入されて、真空が作られ、脳脊髄液が注射針を通して吸引されて注射器に収集され得る
腰部穿刺により得ることができる。CT撮像、超音波、または内視鏡が、このタイプの手
順を導くために使用され得る。
【0119】
試料は、瞬間凍結して、後で使用するために-80℃で貯蔵することもできる。試料は
、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、または酢酸/エタノールなどの固定剤で固
定することもできる。RNAまたはタンパク質は、新鮮な、凍結したまたは固定された試
料から分析のために抽出することもできる。
【0120】
医薬組成物、投薬量、および投与
組成物、例えば、本明細書で提供される1種または複数のアンチセンスオリゴヌクレオ
チドを含む医薬組成物も本明細書で提供される。医薬組成物は、典型的には、薬学的に許
容される担体を含む。本明細書において使用する「薬学的に許容される担体」という言葉
は、医薬投与と適合可能な生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗
真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。医薬組成物は、典型的には、その意図される
投与経路と適合可能であるように製剤化される。投与経路の例は、髄腔内、頭蓋内、鼻腔
内、静脈内、経口、または皮下投与を含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、血液脳関門を越えることができる抗体とコンジュゲート化することができ(例えば、
トランスフェリン受容体、インスリン、レプチン、またはインスリン様成長因子1と結合
する抗体)、静脈内に送達され得る(Evers et al., Advanced Drug Delivery Reviews 8
7 (2015): 90-103)。
【0122】
適当な医薬組成物を製剤化する方法は、当技術分野において知られており、例えば、Re
mington: The Science and Practice of Pharmacy. 21st ed., 2005;およびDrugs and th
e Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)のシ
リーズの書物を参照されたい。例えば、非経口的、皮内、髄腔内、または皮下適用のため
に使用される溶液または懸濁液は、以下の構成要素:滅菌希釈剤、例えば、注射用の水、
生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコ
ールまたは他の合成溶媒など;抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラ
ベンなど;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなど;キレート
剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸など;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩または
リン酸塩など;および等張性調整剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなど
を含むことができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて
調整することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスまたは
プラスチックでできた複数の用量のバイアル中に封入することができる。
【0123】
注射用に使用するために適当な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散
液、および注射用滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌散剤を含むことができる
。静脈内投与のために適当な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(
商標)(BASF、Parsippany、ニュージャージー州)またはリン酸緩衝生理
食塩水(PBS)を含む。全ての場合に、組成物は、滅菌されていなければならず、容易
に注射できる程度に流体であるべきである。組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定で
あるべきで、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保持されなければならない
。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレング
リコール、および液体ポリエチレングリコール等)、および適当なそれらの混合物を含有
する溶媒または分散媒であることができる。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコ
ーティングの使用により、分散液の場合に必要とされる粒子サイズの維持により、および
界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤お
よび抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チ
メロサール等により達成することができる。多くの場合、組成物中に、等張化剤、例えば
、糖類、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどを
含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長期にわたる吸収は、組成物中に、吸収を
遅らせる作用物質、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを含むことに
よりもたらされ得る。
【0124】
注射用滅菌溶液は、活性化合物を必要とされる量で適当な溶媒中に1種または上で列挙
した成分の組合せで組み込み、必要な時には、続いて濾過滅菌することにより調製するこ
とができる。
【0125】
一般的に、分散液は、基本的な分散媒および上で列挙したものから必要とされる他の成
分を含有する滅菌ビヒクル中に、活性化合物を組み込むことにより調製される。注射用滅
菌溶液の調製のための滅菌散剤の場合には、調製の好ましい方法は真空乾燥および凍結乾
燥であり、それらの方法は、有効成分に任意の追加の所望の成分を加えて、それらの前も
って滅菌濾過した溶液から粉末を生ずる。
【0126】
経口組成物は、不活性希釈剤または可食性の担体を一般的に含む。経口治療投与の目的
のために、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれて、錠剤、トローチ剤、またはカプセ
ル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物は、うがい薬とし
て使用するために、流体担体を使用して調製することもできる。薬学的に適合性の結合剤
、および/または補助材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤
、トローチ剤等は、任意の以下の成分、または同様な性質の化合物:結合剤、例えば、微
結晶性セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなど;賦形剤、例えば、デンプン
もしくはラクトースなど;崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、もしくはトウ
モロコシデンプンなど;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはStero
teなど;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素など;甘味剤、例えば、スクロ
ースもしくはサッカリンなど;または着香剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル
、もしくはオレンジ着香料などを含有することができる。
【0127】
吸入による投与のために、化合物は、適当な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを
含有する加圧された容器またはディスペンサーまたはネブライザーから、エアロゾルスプ
レーの形態で送達することができる。そのような方法は、米国特許第6,468,798
号明細書に記載されたものを含む。本明細書に記載された治療用の化合物の全身投与は、
経粘膜または経皮手段によることもできる。経粘膜または経皮投与のために、バリアを透
過するために適当な浸透剤が製剤中で使用される。そのような浸透剤は、当技術分野にお
いて一般的に知られており、例えば、経粘膜投与のためには、洗剤、胆汁酸塩、およびフ
シジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレー剤または坐剤の使用により遂行する
ことができる。経皮投与のためには、活性化合物が、当技術分野で一般的に知られている
軟膏剤、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化される。
【0128】
一実施形態において、治療用の化合物は、身体からの急速な排出に対して治療用の化合
物を保護する担体を用いて、埋め込みおよびマイクロカプセル化された送達システムを含
む、排出が制御放出製剤などに調製される。
【0129】
医薬組成物は、容器、パック、またはディスペンサー中に、投与のための使用説明書と
一緒に含めることができる。
【0130】
非限定的な例において、少なくとも1種の医薬剤を含有する医薬組成物が、液剤(例え
ば、熱硬化性液剤)として、固体の構成要素(例えば、粉末または生分解性生体適合性ポ
リマー(例えば、カチオン性生分解性生体適合性ポリマー))として、またはゲルの構成
要素(例えば、生分解性生体適合性ポリマー)として製剤化される。いくつかの実施形態
において、少なくとも1種の医薬剤を含有する少なくとも組成物が、アルギン酸塩ゲル(
例えば、アルギン酸ナトリウム)、セルロース系ゲル(例えば、カルボキシメチルセルロ
ースまたはカルボキシエチルセルロース)、またはキトサン系ゲル(例えば、キトサング
リセロホスフェート)の群から選択されるゲルとして製剤化される。本明細書に記載され
た任意の医薬組成物を製剤化するために使用され得る薬物溶出ポリマーの追加の例には、
カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニ
ルアルコールと組み合わされたデキストラン、ポリアクリル酸と組み合わされたデキスト
ラン、ポリガラクツロン酸、ガラクツロン多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、タマリン
ドガム、キサンタムガム、セルロースガム、グアーガム(カルボキシメチルグアー)、ペ
クチン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、N-イソプロピルポリアクリルアミド、ポ
リオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、プルロン酸、ポリ乳酸、シクロデキストリン
、シクロアミロース、レシリン、ポリブタジエン、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタ
クリルアミド(HPMA)コポリマー、無水マレイン酸-アルキルビニルエーテル、ポリ
デプシペプチド、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、
ポリエチレングリコール、ポリオルガノホスホラゼン、ポリオルトエステル、ポリビニル
ピロリドン、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、ポリアンヒドリド、ポリシラ
ミン、ポリN-ビニルカプロラクタム、およびゲランが含まれるが、これらに限定されな
い。
【0131】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの標的組織への送達は
、カチオン性リポソーム、シクロデキストリン、ポルフィリン誘導体、分岐鎖デンドリマ
ー、ポリエチレンイミンポリマー、ナノ粒子および微小球(Dass CR. J Pharm Pharmacal
2002; 54(1):3-27)を含むが、これらに限定されない担体媒介送達により増強され得る
【0132】
「有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な量である。例えば、治
療量は、所望の治療効果を達成する量である。この量は、疾患の発症または疾患症状を予
防するために必要な量である予防有効量と同じであるかまたは異なることもできる。有効
量は、1回または複数の投与、適用または投薬量で投与することができる。治療用の化合
物の治療有効量(すなわち、効果的な投薬量)は、治療用の化合物の選択に依存する。組
成物は、1日に1回または複数回から1週間に1回または1日おきに1回を含む複数回投
与することができる。当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的健
康および/または年齢、および存在する他の疾患を含むが、これらに限定されないある要
因が、対象を効果的に治療するために必要な投薬量およびタイミングに影響し得ることを
認識するであろう。その上、本明細書に記載された治療用の化合物の治療有効量を用いる
対象の治療は、単回処置または一連の処置を含むことができる。
【0133】
治療用の化合物の投薬量、毒性および治療有効性は、細胞培養または実験動物における
、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)、およびED50(集団の50%の
治療的に有効な用量)を決定するための標準的薬学的手順により決定することができる。
毒性と治療効果の間の用量比は、治療の指標であり、それはLD50/ED50の比とし
て表すことができる。高い治療の指標を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合
物が使用されることもあるが、感染されていない細胞を損傷する可能性を最小化して、そ
れにより、副作用を低下させるために、そのような化合物を罹患した組織の部位に向ける
送達システムを設計するように注意が払われるべきである。
【0134】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを使用して、ヒトで使用するため
の投薬量の範囲を製剤化することができる。そのような化合物の投薬量は、毒性が殆どま
たは全くなく、ED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投薬量は、用い
られる剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化してもよい。本発明の方
法で使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイにより
概算することができる。用量は、細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最高
の半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環する血漿中の濃度範囲を達成する
ように、動物モデルで製剤化することができる。そのような情報は、ヒトにおいて有用な
用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高
速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、投与するために、滅菌水、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、または脳
脊髄液(CSF)に溶解される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたア
ンチセンスオリゴヌクレオチドは、髄腔内に、例えば、L3またはL4椎間板スペースに
ボーラス注射により、または髄腔内ポンプを使用して点滴により投与される。
【0136】
いくつかの実施形態において、約0.001~1000mg(例えば、約0.1~80
0mg、約1~600mg、約10~500mg、約50~450mg、約80~300
mg、約100~200mg)の本明細書に記載されたアンチセンスオリゴヌクレオチド
が、それを必要とする対象に投与される。
【0137】
キット
上で記載された1種または複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび使用説明書を
含むキットも提供される。使用説明書は、タウに関連する疾患の診断または治療のための
指示を含むことができる。本明細書で提供されるキットは、任意の本明細書に記載された
方法に従って使用することができる。当業者は、本明細書で提供されるキットについて他
の適当な使用を知っており、キットをそのような用途に用いることができるであろう。本
明細書で提供されるキットは、試料を分析のために、例えば実験室に返送するため使用す
ることができる郵送用容器(例えば、郵便料金支払い済みの封筒または郵送パック)を含
むこともできる。キットが、試料のための1つまたは複数の容器を含むことができるか、
または試料が標準的な血液収集バイアル中にあることができる。キットは、1つまたは複
数のインフォームドコンセント用紙、試験請求用紙、および本明細書に記載された方法で
キットをどのように使用するかについての指示を含むことができる。そのようなキットを
使用するための方法も本明細書に含まれる。1つまたは複数の用紙(例えば、試験請求用
紙)および試料を保存する容器を、例えば、試料を提供した対象を同定するためのバーコ
ードでコード化することができる。
【0138】
当業者は、本明細書に記載されたものと同様なまたは等価の多くの方法および材料を認
識し、それらを本発明の実施で使用することができるであろう。実際、本発明は、本明細
書に記載された方法および材料に決して限定されない。
【実施例
【0139】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらの実施例は請求項に記載された本発
明の範囲を限定しない。
【0140】
[実施例1]
一般的材料および方法
アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成および精製
本発明に記載された、修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標準的ホスホラ
ミダイト化学を使用して、インビトロで使用するためのMermade 192 Syn
thesizer(BioAutomation)およびインビボ目的のためのMerm
ade12(BioAutomation)で調製した。ホスホルアミダイトを、アセト
ニトリル中に0.15M濃度(Mermade 192では0.08M)で溶解して;カ
ップリングを、5-エチルチオテトラゾールのアセトニトリル中の0.5M溶液(Mer
made 192では0.25M)によりホスホルアミダイトを活性化することにより行
った。カップリング時間は通常3~4分の間であった。硫化を、フェニルアセチルジスル
フィドの0.2M溶液を5分使用することにより行った。酸化は、ピリジン中の0.02
Mヨウ素溶液(20%)/水(9.5%)/テトラヒドロフラン(70.5%)により2
分間行った。キャッピングを、標準的キャッピング試薬を使用して行った。オリゴヌクレ
オチドの成長鎖を、次のカップリングのためにトルエン中3%ジクロロ酢酸によりデトリ
チル化した。配列の完了後、支持体に結合した化合物を切断して、液体水酸化アンモニウ
ムにより65℃で2時間脱保護した。得られた粗溶液を、直ちにHPLC(Akta E
xplorer)により精製した。精製された分画を質量分析法により分析して、260
nMにおけるそれらの吸光係数に従ってUVにより定量した。抜き取られた分画を脱塩し
て凍結乾燥した。
【0141】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビトロ試験
ヒトの細胞株、例えばHuh7細胞、Hela細胞、およびSH-SY5Y細胞など、
およびCOS1ミドリザルの細胞株を含むが、これらに限定されない種々の細胞株で、ア
ンチセンスオリゴヌクレオチドをインビトロで試験した。細胞は、市販の業者(例えば、
American Type Culture Collection(ATCC)、M
anassas、バージニア州)から得て、業者の使用説明に従って培養した。
【0142】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、米国のウィスコンシン州Madisonに所在の
WiCell Research Institute, Inc.から得たヒト胚幹細
胞(hESC)由来ヒトニューロンでも試験した。hESCを、ニューロゲニン-2(N
gn2)、ニューロンの系統に特異的な転写因子の強制発現により、機能的ニューロン細
胞に変換した。rtTAの構成性の発現およびtetOプロモーターによって駆動される
外因性タンパク質のテトラサイクリン誘導性の発現のために、レンチウイルス送達を使用
することにより、Ngn2構築物をhESCに送達した。試料は、the Nation
al Council Institute of Medicine of theN
ational Academiesにより確立されたthe Guidelines
for human Embryonic Stem Cell Research(「
NAS指針)およびヒト対象の保護のためのthe Office for Human
Research Protections、Department of Heal
th and Human Services(「DHHS」)の規制(連邦規則集第4
5編パート1Q)に準拠する。
【0143】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを、培養細胞中に、培養で細胞が約60~80%のコ
ンフルエンシーに達した時に、トランスフェクションまたはヌクレオフェクションのいず
れかにより導入した。トランスフェクションのために、アンチセンスオリゴヌクレオチド
は、OptiFect(商標)トランスフェクション試薬(Life Techのカタロ
グ番号12579-017)と適当な細胞培養培地中で混合されて、所望のアンチセンス
オリゴヌクレオチド濃度および100nMアンチセンスオリゴヌクレオチド当たり2から
12μg/mLの範囲のOptiFect(商標)濃度に達した。ヌクレオフェクション
のためには、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞中に
Amaxa Nucleofector-IIデバイス(Lonza、Walkersv
ille、メリーランド州)を用いて導入した。ASOの有効性を試験するために、ヌク
レオフェクションを96ウェルのプレートで実施した。予備実験の後、高い生存能力およ
び効率的なトランスフェクションに基づいてNucleofector溶液SFを選択し
た。ヌクレオフェクションの当日に、60~80%コンフルエントの培養物をトリプシン
処理し、細胞を各ウェルにプレーティングした。hESC由来ヒトニューロンを、1また
は10μMアンチセンスオリゴヌクレオチドを培地中に添加することにより処置して受動
取り込みにより取り込ませた。
【0144】
細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチド処置後24~72時間に採取して、直ぐにタウ
mRNAまたはタンパク質を単離して、当技術分野において知られたおよび本明細書に記
載された方法を使用して測定した。一般的に、処置が複数の繰り返しで実施された場合、
データは、繰り返された処置の平均として表した。使用したアンチセンスオリゴヌクレオ
チドの濃度は、細胞株によって変化した。特定の細胞株について最適のアンチセンスオリ
ゴヌクレオチド濃度を決定する方法は、当技術分野において周知である。アンチセンスオ
リゴヌクレオチドは、典型的には、OptiFectを用いてトランスフェクトされた場
合には1nMから1,000nMの範囲の濃度で;およびヌクレオフェクションを使用し
てトランスフェクトされた場合には25nMから20,000nMの範囲の濃度で使用し
た。
【0145】
MAPT(タウ)mRNAのレベルの定量は、ViiA7リアルタイムPCRシステム
(Life Technologies)をメーカーの使用説明書に従って使用して定量
的リアルタイムPCRによって遂行した。リアルタイムPCRに先行して、単離されたR
NAを逆転写反応にかけて、相補性DNA(cDNA)を産生させて、それを次にリアル
タイムPCR増幅のための基質として使用した。逆転写およびリアルタイムPCR反応を
、同じ試料ウェル中で順次実施した。Fastlane cell multiplex
キット(Qiagen カタログ番号216513)を、ウェル中の細胞を溶解するため
に使用して、培養細胞からRNAを精製せずに、mRNAを直接cDNAに逆転写した。
次にcDNAを、定量的リアルタイムPCRを使用してタウ発現を分析するために使用し
た。リアルタイムPCRにより決定されたタウmRNAのレベルを、発現レベルが細胞で
一定であるハウスキーピング遺伝子の発現レベル、例えば、ヒトグリセルアルデヒド3-
リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ヒトTATA-ボックス結合タンパク質(TB
P)、またはヒトヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPR
T1)などを使用して標準化した。
【0146】
QuantiTect Multiplex RT-PCRキット(Qiagen カ
タログ番号204643)に記載されたプロトコルに従って、デュプレックスRT-PC
R(duplex RT-PCR)反応を使用して、TaqMan遺伝子発現アッセイを、リアルタイ
ム定量的RT-PCRのために実施した。ヒトMAPT(Life Tech Assa
yID番号Hs00902194_m1:FAM-MGB)、ヒトGAPDH(Life
Tech AssayID番号Hs02758991_g1:VIC-MGB)、ヒトT
BP(LifeTech カタログ番号4326322E)またはヒトHPRT1(Li
feTech カタログ番号4333768T)に特異的なTaqmanプローブを使用
した。デュプレックスRT-PCRのために推奨されるサイクリング条件に従って、試料
をViiA7リアルタイムPCRシステム(Life Technologies)で実
行した。全てのデータをcDNA入力の量に対して制御して、タウmRNAのレベルを内
因性の参照遺伝子のレベルに対して標準化した。タウおよび対照の遺伝子を、同様な高い
PCR効率を有する同じ反応で増幅して、ΔΔCT法による相対定量を可能にした。結果
は、PBSで処置された対照細胞に対する残存タウmRNAのパーセントとして表示した
【0147】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビボにおける試験
MAPTに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ASOをマウスの脳脊髄液(C
SF)中に頭蓋内空洞(ICV)投与により送達することにより、インビボで試験した。
マウスを5%イソフルランで麻酔して、その後、酸素/亜酸化窒素中のイソフルラン含有
率を1.5~2%に低下させて外科処置を通して維持した。直腸温度は、恒温加熱毛布お
よび直腸プローブを用いて36.9±1.0℃に維持した。麻酔されたマウスを定位装置
において頭部の皮膚を剃毛して、ポビドン-ヨウ素溶液(Betadine)で消毒した
。切開の前に、マウスにブプレノルフィン(Temgesic、0.03mg/kg、1
ml/kg、皮下注射)を与えた。その後、切開して、注射のための脳座標を決定するた
めに頭蓋を露出させた。10μlのHamilton注射器およびマイクロポンプ(Ha
rvard Apparatus)付きの28G注射針を使用して、全ての動物について
右側脳室中に、以下の座標:AP=+0.5mm;ML=+1.0mm;DV=-2.5
mmに注射した(合計体積2μl)。流速は1μl/分であり、注射針を、点滴後引き抜
く前に1分間その場に残した。皮膚を閉じて、マウスは単一のケージ中で回復させてから
ホームケージに戻した。追加の用量のブプレノルフィン(Temgesic、0.03m
g/kg、1ml/kg、皮下注射)を、最初の48時間の間、1日に2回投与した。
【0148】
動物は実験室/動物の技術員により毎日モニターされた。動物の一般的状態および創傷
回復がモニターされて、体重が毎日測定された。終点で、動物をナトリウムペントバルビ
タール(60mg/kg Mebunat、OrionPharma、フィンランド)で
深く麻酔した。マウスを大槽穿刺してCSF(1匹のマウス当たり3~5μL)を収集し
た。その後、マウスを心臓穿刺して、血液試料を収集した。約0.4~0.5mLの血液
を500μLのプラスチックのラベンダーK2EDTA抗凝血剤チューブ中に収集し、2
000gで10分間4℃で遠心分離して、血漿を等分した。その後マウスを断頭して脳を
収集し、皮質、海馬、および小脳などの異なる脳領域に切り分けた。それに加えて、脊髄
も収集した。
【0149】
[実施例2]
18量体の2’-O-MOE立体的遮断剤によるHuh7細胞中におけるヒトタウ発現の
阻害
アンチセンスオリゴヌクレオチドの立体的遮断剤は、全てのアイソフォーム中に存在す
る不変のエクソンであるヒトタウにおける構成性のエクソンのイントロン-エクソン接合
を標的とするように設計された。アンチセンスオリゴヌクレオチドの立体的遮断剤は、イ
ントロンの分岐点配列にハイブリダイズし、スプライス部位を直接標的とし、イントロン
およびエクソンの配列、エクソンスプライシングエンハンサー部位を挟むことにより、エ
クソンスキッピングを誘発するように設計された。MAPTを標的とする立体的遮断剤は
、全てのヌクレオシドにおいて立体障害により作用して、RNaseHまたはRISCを
活性化しない2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-O-MOE)リボース糖修飾を
有する、18ヌクレオシドの長さとして、最初に設計された。該ヌクレオシド間連結は隅
から隅までホスホジエステル連結である。無バイアスのスクリーニングを、ホスホジエス
テル骨格を有する上記18量体の均一に修飾された2’-MOEのASOについて実施し
た。オフターゲットハイブリダイゼーションを避けるために、BLAST分析を、各モル
ホリノオリゴヌクレオチド配列について実施した。
【0150】
タウを標的とする18量体の2’-O-MOEの立体的遮断剤を、インビトロで、ヒト
タウmRNAの阻害におけるそれらの活性について試験した。Huh7細胞を1ウェル当
たり10,000細胞の密度でプレーティングし、OptiFect試薬(LifeTe
ch、カタログ番号12579-017)を使用して、25nMのアンチセンスオリゴヌ
クレオチドでトランスフェクトした。48時間の処置期間の後、Fastlane ce
ll multiplexキット(Qiagen、カタログ番号216513)を使用し
て、培養細胞からcDNAを直接調製した。タウmRNAのレベルは、ヒトMAPT(L
ifeTech AssayID番号Hs00902194_m1:FAM-MGB)お
よびヒトTBP(TATA-box結合タンパク質)内因性対照(LifeTech、カ
タログ番号4326322E)に特異的なTaqmanプローブを使用して、デュプレッ
クスRT-PCR反応で定量的リアルタイムPCRにより測定した。全てのデータをcD
NA入力の量に合わせて制御し、タウmRNAのレベルを、内因性の参照遺伝子TBPの
レベルに標準化した。タウおよびTBP対照遺伝子を、同様な高いPCR効率を有する同
じ反応で増幅して、ΔΔCT法による相対定量を可能にした。結果は、PBSで処置され
た対照細胞に対する残存タウmRNAのパーセントとして表示した。表2は、Huh7細
胞中のこれらの18量体の2’-O-MOEの立体的遮断剤の活性を示す。
【0151】
【表2-1】
【0152】
【表2-2】
【0153】
【表2-3】
【0154】
[実施例3]
18量体の2’-O-MOEの立体的遮断剤によるSH-SY5Y細胞中におけるヒトタ
ウ発現の阻害
実施例2でタウ発現を顕著に減少させた立体的遮断剤を選択して、ヒト神経芽細胞腫S
H-SY5Yの細胞で試験した。培養されたSH-SY5Y細胞を、1,000nMの選
択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドでヌクレオフェクトした。約24時間の処置期
間の後、Fastlane cell multiplexキット(Qiagen、カタ
ログ番号216513)を使用して培養細胞からcDNAを直接調製した。タウmRNA
のレベルを、定量的リアルタイムPCRによりデュプレックスRT-PCR反応を使用し
て測定し、ヒトMAPT(LifeTechAssayID番号Hs00902194_
m1:FAM-MGB)およびヒトGAPDH(LifeTechAssayID番号H
s02758991_g1:VIC-MGB)に特異的なTaqmanプローブを使用し
た。全てのデータをcDNA入力の量に合わせて制御し、タウmRNAのレベルを、内因
性の参照遺伝子GAPDHのレベルに標準化した。タウおよびGAPDH対照遺伝子を、
同様な高いPCR効率を有する同じ反応で増幅して、ΔΔCT法による相対定量を可能に
した。結果は、PBSで処置された対照細胞に対する残存タウmRNAのパーセントとし
て表示した。表3は、SH-SY5Y細胞中の選択された18量体の2’-O-MOE立
体的遮断剤の活性を示す。
【0155】
【表3】
【0156】
タウmRNAの有意のインビトロ阻害を示した立体的遮断剤を、異なる用量で試験した
。培養されたSH-SY5Y細胞を、0.125nM、0.25nM、0.5nM、1,
000nM、2,000nM、4,000nMおよび8,000nMの1種の選択された
アンチセンスオリゴヌクレオチドでヌクレオフェクトした。約24時間の処置期間の後、
cDNAを直接調製して、タウmRNAのレベルを、上で記載されたように定量的リアル
タイムPCRにより測定した。50%阻害濃度(IC50)は、用量応答曲線を構築して
、アンチセンスオリゴヌクレオチドのタウmRNAを低下させる異なる濃度の効果を調べ
ることにより決定された。化合物の最大生物学的応答の半分を阻害するために要する濃度
を決定することによりIC50の値を計算して、アンチセンスオリゴヌクレオチドの効力
の測定として使用することができる。表4は、選択された18量体の2’-O-MOE立
体的遮断剤のIC50値を示す。
【0157】
【表4】
【0158】
[実施例4]
12~25量体の2’-O-MOE立体的遮断剤によるSH-SY5Y細胞におけるヒト
タウ発現の阻害
実施例2および3でタウ発現を有意に低下させた立体的遮断剤は、12から25ヌクレ
オシド長の異なる長さを有するように選択して作製した。これらの12~25量体の2’
-O-MOE立体的遮断剤をSH-SY5Y細胞で試験した。培養されたSH-SY5Y
細胞を2,000nMの選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドでヌクレオフェクト
した。約24時間の処置期間の後、cDNAを上で記載されたように直接調製して、タウ
mRNAのレベルを、上で記載されたようにして測定した。表5は、12~25量体の2
’-O-MOE立体的遮断剤のSH-SY5Y細胞における活性を示す。
【0159】
【表5-1】
【0160】
【表5-2】
【0161】
ホスホジエステルヌクレオシド間連結を有する選択された12~25量体2’-O-M
OE立体的遮断剤のIC50の値を、上で記載されたように決定して、表6に示した。
【0162】
ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を有する多くの12~25量体2’-O-MO
E立体的遮断剤を合成して、これらの立体的遮断剤のいくつかのIC50の値を表7に示
した。
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
[実施例5]
SH-SY5Y細胞における17量体の2’-O-MOE立体的遮断剤によるヒトタウ発
現の阻害
17ヌクレオシドの長さの2’-MOE立体的遮断剤を、ヒトタウ中における構成エク
ソンを標的とするように設計した。これらの17量体の2’-O-MOE立体的遮断剤を
SH-SY5Y細胞で試験した。培養されたSH-SY5Y細胞を2,000nMの選択
されたアンチセンスオリゴヌクレオチドでトランスフェクトした。約24時間の処置期間
の後、cDNAを直接調製して、タウmRNAのレベルを上で記載されたようにして測定
した。表8は、17量体の2’-O-MOE立体的遮断剤のSH-SY5Y細胞における
活性を示す。
【0166】
【表8-1】
【0167】
【表8-2】
【0168】
[実施例6]
Huh7細胞における5-10-5ギャップマーによるヒトタウ発現の阻害
アンチセンスオリゴヌクレオチド配列を、最短のタウアイソフォーム、転写物のバリア
ント4、mRNA(GenBank:NM_016841.4)に相補的であるように設
計した。オフターゲットハイブリダイゼーションを避けるためにBLAST分析を各オリ
ゴヌクレオチド配列について実施した。新たに設計されて修飾されたキメラアンチセンス
オリゴヌクレオチドは、20ヌクレオシドの長さである5-10-5ギャップマーとして
設計され、そこで中央ギャップセグメントは10個の2’-デオキシヌクレオシドを含み
、各々2’-O-MOEリボース糖で修飾された5個のヌクレオシドを含む5’方向およ
び3’方向のウィングセグメントと隣接している。各ギャップマー全体を通じてヌクレオ
シド間連結はホスホロチオエート(P=S)連結である。
【0169】
タウを標的とするギャップマーを、ヒトタウmRNA発現の阻害についてインビトロで
試験した。Huh7細胞を1ウェル当たり10,000細胞の密度でプレーティングし、
OptiFect試薬(LifeTech、カタログ番号12579-017)を使用し
て25nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドでトランスフェクトした。48時間の処置
期間の後、cDNAを培養細胞から、Fastlane cell multiplex
キット(Qiagen、カタログ番号216513)を使用して直接調製した。タウmR
NAのレベルを、定量的リアルタイムPCRによりデュプレックスRT-PCR反応で、
ヒトMAPT(LifeTech、AssayID番号Hs00902194_m1:F
AM-MGB)およびヒトTBP(TATA-box結合タンパク質)内因性対照(Li
feTech、カタログ番号4326322E)に特異的なTaqmanプローブを使用
して測定した。全てのデータをcDNA入力の量に合わせて制御し、タウmRNAのレベ
ルを、内因性の参照遺伝子TBPのレベルに標準化した。タウおよびTBP対照遺伝子を
、同様な高いPCR効率を有する同じ反応で増幅して、ΔΔCT法による相対定量を可能
にした。結果は、PBSで処置された対照細胞に対する残存タウmRNAのパーセントと
して表示した。表9は、Huh7細胞におけるギャップマーの活性を示す。
【0170】
【表9-1】
【0171】
【表9-2】
【0172】
[実施例7]
SH-SY5Y細胞中における5-10-5ギャップマーによるヒトタウ発現の阻害
実施例6においてタウmRNAの発現を有意に減少させたギャップマーを選択して、S
H-SY5Y細胞で試験した。培養されたSH-SY5Y細胞を2,000nMのアンチ
センスオリゴヌクレオチドでヌクレオフェクトした。約24時間の処置期間の後、培養細
胞から、Fastlane cell multiplexキット(Qiagenカタロ
グ番号216513)を使用して、cDNAを直接調製した。タウmRNAのレベルを、
定量的リアルタイムPCRによりデュプレックスRT-PCR反応を使用して測定し、ヒ
トMAPT(LifeTech AssayID番号Hs00902194_m1:FA
M-MGB)およびヒトGAPDH(LifeTech AssayID番号Hs027
58991_g1:VIC-MGB)に特異的なTaqmanプローブを使用した。全て
のデータをcDNA入力の量に合わせて制御し、タウmRNAのレベルを、内因性の参照
遺伝子GAPDHのレベルに標準化した。タウおよびGAPDH対照遺伝子を、同様な高
いPCR効率を有する同じ反応で増幅して、ΔΔCT法による相対定量を可能にした。結
果は、PBSで処置された対照細胞に対する残存タウmRNAのパーセントとして表示し
た。表10は、SH-SY5Y細胞における選択された5-10-5ギャップマーの活性
を示す。5-メチルシトシンを有する選択された5-10-5ギャップマーのIC50の
値は、上で記載されたようにSH-SY5Y細胞で決定し、表11に示した。
【0173】
【表10】
【0174】
【表11】
【0175】
[実施例8]
MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの特徴付け
MAPTを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを、Thermo Scien
tificの高速液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)の装置を使用する
ことにより特徴付けた。この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の予想
される質量を確認して、試料の純度および存在する主な構成要素の同定についての情報を
提供するために使用した。例えば、配列番号284を含むアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドは、図1Aに示される構造およびC230H321N72O120P19S19の式を
有する。したがって、配列番号284を含むASOについて予想される分子量は約721
2.3Daである。図1Bは、配列番号284を含むASOについてLC-MSにより測
定されたピーク質量は7214.3Daであることを示す。図1Cは、配列番号284を
含むASOについてLC-MSのデコンヴォリューションピークの報告を示す。
【0176】
配列番号285を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、C230N69O124P
19S19H318の式を有し、概算される分子量は7231.11Daである。図1D
は、配列番号285を含むASOについてLC-MSにより測定されたピーク質量が72
32.5であることを示す。図1Eは、配列番号285を含むASOについてのLC-M
Sのデコンヴォリューションピークの報告を示す。
【0177】
[実施例9]
MAPTを標的とするギャップマーのインビボにおける試験
ヒトタウ(hTau)トランスジェニックマウスの発生
ヒトタウ遺伝子MAPTを含有するBACベクター(pBACe3.6)を、Life
technologiesのヒトゲノムのライブラリーから得た。MAPT遺伝子の全
ての調節領域を含有すると予測される3種のベクターをスクリーニングした。ヒトゲノム
DNAを標準的PCRにかけて、ヒトタウ遺伝子の各エクソン、イントロンにまたがるプ
ライマーおよび調節領域の存在について試験して、クローンの配列を決定するために使用
した。ヒトDNAとの比較により、1つのクローン(RP11669E14)がタウ遺伝
子の全ての部分について完全であることが示された。このBACベクターをhTau B
ACトランスジェニックマウスを発生させるために使用した。精製DNAをC57BL/
6マウスの受精した胚に注射した。始祖の子マウスからの尾部DNAを制限酵素で消化し
て、エクソンに特異的なプローブとハイブリダイズさせ、同様に消化されたヒトDNAを
、導入遺伝子の完全性を試験するための対照として使用した。陽性の始祖の子マウスを増
殖させた。数種のhTau BACトランスジェニック系統が発生して、1系統がヒトM
APTmRNAおよびタンパク質の発現を示した(図2A~2C)。この系統が、ヒト脳
で見出される6種全てのヒト脳転写物およびタンパク質アイソフォームを発現した(図2
A~2C)。ヘテロ接合体のhTau BACトランスジェニックマウスは、1コピーの
導入遺伝子を担持して、RNAおよびヒトタウ発現のレベルは内因性マウスタウ発現とほ
ぼ同等であった。
【0178】
アンチセンスオリゴヌクレオチドによるヒトタウのインビボにおけるノックダウン
選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドをインビボで試験した。5群のhTau
BACトランスジェニックマウスに、1、10、50、200、または400μgの選択
されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを脳室内の(ICV)ボーラス注射により投与す
るか、または対照マウスの群として未処置のままにした。全ての手順は、イソフルオラン
麻酔下で、IACUCの規制に従って実施した。ICVボーラス注射のために、アンチセ
ンスオリゴヌクレオチドを、hTau BACトランスジェニックマウスの右側脳室中に
注射した。100μg/μlのオリゴヌクレオチドを含有する2または4マイクロリット
ルのPBS溶液を注射した。オリゴヌクレオチド投与の直後、1時間、4時間、24時間
、2週間、4週間、12週間または24週間後に組織を収集した。海馬または皮質からR
NAを抽出して、ヒトタウmRNAの発現についてリアルタイムPCR分析により調べた
。ヒトタウmRNAのレベルを上で記載されたように測定した。結果は、対照の未処置マ
ウスと比較してGAPDHレベルに標準化したヒトタウmRNA発現の阻害率(パーセン
ト)として計算した。タンパク質は、海馬または皮質から抽出して、ELISAによりヒ
トタウタンパク質発現レベルについて調べ、合計タンパク質のレベルに合わせて標準化し
た。
【0179】
配列番号284または配列番号285を含む5-10-5ギャップマーのインビボにお
ける活性を上で記載された方法を使用して試験した。表12に示したように、両方のアン
チセンスオリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチドの単回のICV注射後
2週間目で、皮質および海馬におけるヒトタウmRNAの発現を有意に阻害した。配列番
号285を含むギャップマーについて、ヒトタウmRNAのノックダウンは、皮質および
海馬の両方で約65%であった。配列番号284を含むギャップマーについては、ヒトタ
ウmRNAのノックダウンは、皮質および海馬の両方で、約42%であった。ASO処置
の2週間後のタウタンパク質レベルについて、配列番号285を含むギャップマーは、皮
質においてタウタンパク質発現の約50%をノックダウンし;配列番号284を含むギャ
ップマーは、皮質においてタウタンパク質発現の約36%をノックダウンした。本発明者
らは、海馬におけるASO処置の2週間後にタウタンパク質レベルの有意の低下を観察し
なかった。
【0180】
【表12】
【0181】
タウmRNAおよびタンパク質レベルを、ギャップマーの単回のICV注射後4週間目
にも試験した。配列番号285を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、脳におけるヒ
トタウmRNA(図2D)およびタンパク質(図2E)の発現を有意に阻害した。配列番
号285を含むギャップマーについて、ヒトタウmRNAのノックダウンは、皮質および
海馬の両方で約60%であった(図2Dおよびデータ不掲載)。ウェスタンブロット分析
は、配列番号285を含むギャップマーがヒトタウタンパク質レベルを、処置後4週間目
に海馬で約50%ノックダウンしたことを示した(図2E)。
【0182】
hTau BACトランスジェニックマウスの脳におけるアンチセンスオリゴヌクレオ
チドの脳分布を検出するために、in situハイブリダイゼーション実験を、二重に
ジゴキシゲニン(DIG)で標識されたロックド核酸(LNA(商標)、Exiqon)
プローブを使用して実施した。標的のアンチセンスオリゴヌクレオチドと相補的である二
重-DIG LNAプローブを終夜ハイブリダイズさせた。次に、プローブを、ヒツジ抗
DIGアルカリホスファターゼコンジュゲート抗体(Roche Diagnostic
s、カタログ番号11093274910)およびニトロブルーテトラゾリウムとアルカ
リホスファターゼの基質である5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸とのコン
ジュゲート(BCIP)の比色反応を使用して検出した。代表的実験における配列番号2
85のアンチセンスオリゴヌクレオチドの脳内分布を図3に示したが、それは、ASOの
脳室からマウス脳実質への初期拡散を示し、分布シグナルは24時間から2週間の間で変
化しない。(図3)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、脳中で4週間後でさえ安定で
ある(データは示さず)。
【0183】
配列番号285のアンチセンスオリゴヌクレオチドによる、hTau BACトランス
ジェニックマウスにおけるヒトタウのmRNA(図4A)およびタンパク質(図4B)の
発現の用量依存性阻害が観察された(図4Aおよび4B)。
【0184】
配列番号285のアンチセンスオリゴヌクレオチド200μgの単回のICV注射後の
hTau BACトランスジェニックマウスにおけるヒトタウmRNA(図5A)および
タンパク質(図5B)発現レベルの時間経過は、配列番号285のアンチセンスオリゴヌ
クレオチドによる、12週間まで持続したタウmRNAおよびタンパク質発現の阻害を示
した(図5Aおよび5B)。
【0185】
[実施例10]
Huh7およびSH-SY5Y細胞における、5-メチルシトシンを有する追加の5-1
0-5ギャップマーによるヒトタウ発現の阻害
タウを標的とする5-メチルシトシンを有する追加のギャップマー配列を、上で記載さ
れたHuh7およびSH-SY5Y細胞におけるヒトタウmRNA発現の阻害について、
インビトロで試験した。結果は、PBSで処置された対照細胞と比較して、残存タウmR
NAのパーセントとして表す。表13は、Huh7およびSH-SY5Y細胞における、
5-10-5ギャップマーの追加のスクリーニングされた配列の活性を示す。
【0186】
【表13-1】
【0187】
【表13-2】
【0188】
【表13-3】
【0189】
【表13-4】
【0190】
表13中でタウmRNA発現を有意に減少させたギャップマーを選択して、SH-SY
5Y細胞で試験した。選択された5-メチルシトシンを有する5-10-5ギャップマー
のIC50の値を上で記載されたようにSH-SY5Y細胞で決定し、表14に示した。
【0191】
【表14】
【0192】
[実施例11]
5-メチルシトシンを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドによるサルおよびヒトのタ
ウ発現の阻害
タウmRNAの発現を有意に減少させたいくつかのギャップマーを選択して、COS1
ミドリザル細胞で試験した。結果は、PBSで処置された対照細胞と比較して残存タウm
RNAのパーセントとして表す。表15は、COS1細胞における選択された5-10-
5ギャップマーの活性を示す。
【0193】
【表15】
【0194】
タウmRNA発現を有意に減少させたいくつかのアンチセンスオリゴヌクレオチドを選
択して、ヒト胚幹細胞(hESC)由来ニューロンで試験した。結果は、PBSで処置さ
れた対照細胞と比較して残存タウmRNAのパーセントとして表す。表16は、ヒトニュ
ーロンにおける選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性を示す。
【0195】
【表16】
【0196】
[実施例12]
MAPTを標的とするギャップマーのインビボにおける試験
選択された5-10-5ギャップマーのインビボにおける活性を、実施例9で記載され
た方法を使用して試験した。表17に示したように、いくつかのアンチセンスオリゴヌク
レオチドは、皮質および海馬においてヒトタウmRNAおよびタンパク質発現を有意に阻
害した。
【0197】
【表17】
【0198】
特に断りのない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、本開示が属す
る分野に通じた専門家により通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0199】
特に指摘されない限り、特に詳細に記載されていない全ての方法、ステップ、技法およ
び操作は、それ自体、当業者には明らかで知られている様式で実施することができ、実施
されてきた。本明細書で言及した標準的便覧および一般的背景技術およびそこで例として
引用されたさらなる参考文献に再び言及する。特に指摘されない限り、本明細書で引用さ
れた参考文献の各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0200】
本発明の請求項は非限定的であり、下で提供される。
【0201】
特定の態様および請求項が、本明細書で詳細に開示されたが、これは例示の目的のため
にのみ、例のために行われたもので、添付の請求項の範囲、または任意の対応する将来の
適用の請求項の対象事物の範囲に関して、限定することは意図されない。特に、請求項に
より規定された本開示の精神および範囲から逸脱することなく、種々の置換、変更、およ
び改変が本開示に対して為され得ることは、本発明者らにより企図されている。関心のあ
る、またはライブラリータイプの核酸出発原料、クローンの選択は、本明細書に記載され
た態様の知識を有する当業者にとって日常的な事柄であると考えられる。他の態様、利点
、および改変も以下の請求項の範囲内であると考えられる。当業者は、日常的実験より多
くを使用せずに、本明細書に記載された本発明の特定の態様の多くの等価の事物を認識し
、または確かめることができるであろう。そのような等価の事物は、以下の請求項によっ
て包含されることが意図されている。後で出願される対応する出願における請求項の範囲
の書き直しは、種々の国の特許法による制限に基づくこともあり、請求項の対象事物の放
棄と解釈されるべきではない。

以下の態様が包含され得る。
[1] 表2~17で示される核酸塩基配列のいずれかと少なくとも90%の配列同一性
を有する核酸塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであって、前記核酸塩基配列のいずれか
におけるCがシトシンまたは5-メチルシトシンのどちらかであり、前記オリゴヌクレオ
チドの少なくとも1つのヌクレオチドが2’-修飾を有する、オリゴヌクレオチド。
[2] 表2~8で示される配列のいずれかと少なくとも90%の配列同一性を有する核
酸塩基配列を含み、前記核酸塩基配列のいずれかにおけるCがシトシンまたは5-メチル
シトシンのどちらかであり、前記オリゴヌクレオチドの各ヌクレオチドが2’-修飾を有
する、上記[1]に記載のオリゴヌクレオチド。
[3] 表2~8で示される配列のいずれかと少なくとも90%の配列同一性を有する核
酸塩基配列を含む、上記[2]に記載のオリゴヌクレオチド。
[4] 表2~8で示される核酸塩基配列のいずれかと少なくとも95%の配列同一性を
有する核酸塩基配列を含む、上記[2]に記載のオリゴヌクレオチド。
[5] 表2~8で示される核酸塩基配列のいずれかを含む、上記[2]に記載のオリゴ
ヌクレオチド。
[6] 表2~8で示される核酸塩基配列のいずれかからなる、上記[2]に記載のオリ
ゴヌクレオチド。
[7] 前記オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結がホスホジエステルまたはホスホ
ロチオエート連結のどちらかである、上記[2]から[6]のいずれかに記載のオリゴヌ
クレオチド。
[8] 前記オリゴヌクレオチドの3’末端にリン酸架橋を通して付着したリンカーを含
み、以下の構造:
【化9】
のいずれかを有する、上記[2]から[7]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[9] RNAseHとは独立に、タウmRNAまたはタンパク質の発現を減少させる、
上記[2]から[8]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[10] 表9~15および17で示される配列のいずれかと少なくとも90%の配列同
一性を有する核酸塩基配列を含み、前記核酸塩基配列のいずれかにおけるCがシトシンま
たは5-メチルシトシンのどちらかであり、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも1つの
ヌクレオチドが2’-修飾を有する、上記[1]に記載のオリゴヌクレオチド。
[11] 表9~15および17で示される配列のいずれかと少なくとも90%の配列同
一性を有する核酸塩基配列を含む、上記[10]に記載のオリゴヌクレオチド。
[12] 表9~15および17で示される核酸塩基配列のいずれかと少なくとも95%
の配列同一性を有する核酸塩基配列を含む、上記[10]に記載のオリゴヌクレオチド。
[13] 表9~15および17で示される核酸塩基配列のいずれかを含む、上記[10
]に記載のオリゴヌクレオチド。
[14] 表9~15および17で示される核酸塩基配列のいずれかからなる、上記[1
0]に記載のオリゴヌクレオチド。
[15] 前記オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結がホスホロチオエート連結であ
る、上記[10]から[14]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[16] 少なくとも5個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、上記[10]
から[15]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[17] 少なくとも7個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、上記[10]
から15のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[18] 10個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、上記[10]から[1
5]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[19] RNAseHを活性化することによりタウmRNAまたはタンパク質発現を減
少させる、上記[10]から[18]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[20] 前記核酸塩基配列のいずれかにおける各Cが5-メチルシトシンである、上記
[1]から[19]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[21] 配列番号487~506のいずれか1つの少なくとも12個の連続した核酸塩
基と相補的である核酸塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオ
チドの少なくとも1つのヌクレオチドが2’-修飾を有する、オリゴヌクレオチド。
[22] 配列番号487~506のいずれか1つの少なくとも12個の連続した核酸塩
基と100%相補的である核酸塩基配列を含む、上記[21]に記載のオリゴヌクレオチ
ド。
[23] 1つまたは複数の5-メチルシトシンを含む、上記[21]に記載のオリゴヌ
クレオチド。
[24] 前記オリゴヌクレオチドの各ヌクレオチドが2’-修飾を有する、上記[21
]に記載のオリゴヌクレオチド。
[25] 少なくとも5個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、上記[21]
に記載のオリゴヌクレオチド。
[26] 少なくとも7個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、上記[21]
に記載のオリゴヌクレオチド。
[27] 10個の連続した2’-デオキシヌクレオシドを含む、上記[21]に記載の
オリゴヌクレオチド。
[28] 12から30個の核酸塩基を含む、上記[1]から[27]のいずれかに記載
のオリゴヌクレオチド。
[29] 12から25個の核酸塩基を含む、上記[1]から[27]のいずれかに記載
のオリゴヌクレオチド。
[30] 15から20個の核酸塩基を含む、上記[1]から[27]のいずれかに記載
のオリゴヌクレオチド。
[31] 前記2’-修飾が、2’-フルオロ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’
-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロ
ピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、
2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノ
エチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、および2’-O-N-メチルアセトア
ミド(2’-O-NMA)からなる群から選択される、上記[1]から[30]のいずれ
かに記載のオリゴヌクレオチド。
[32] 前記2’-修飾が2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)である、上
記[1]から[30]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[33] インビトロで、タウmRNAまたはタンパク質発現レベルを少なくとも30%
減少させることができる、上記[1]から[32]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチ
ド。
[34] インビボで、タウmRNAまたはタンパク質発現レベルを少なくとも30%減
少させることができる、上記[1]から[32]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド

[35] 上記[1]から[34]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドおよび薬学的
に許容される担体を含む組成物。
[36] 上記[1]から[34]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの治療有効量
を対象に投与することを含む、前記対象におけるタウ発現レベルを減少させる方法。
[37] 前記対象が、タウに関連する疾患に罹患しているかまたは罹患しやすい、上記
[36]に記載の方法。
[38] 前記タウに関連する疾患が、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症
/パーキンソン症候群-認知症複合病(ALS-PDC)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)
、英国型アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質
基底核変性症(CBD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、パンチドランカー、
石灰化を伴うびまん性神経原線維変化症、ダウン症候群、ドラベ症候群、癲癇、前頭側頭
型認知症(FTD)、17番染色体(FTDP-17)と連鎖するパーキンソン症候群を
伴う前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、神経節膠腫、神経節細胞腫、ゲルストマン・
ストロイスラー・シャインカー病、ハラーホルデン・スパッツ病、ハンチントン病、封入
体筋炎、鉛脳症、リティコ・ボディグ病、髄膜腫血管腫症、多系統萎縮症、筋緊張性ジス
トロフィー、ニーマンピック病C型(NP-C)、神経原線維変化を伴う非グアマニアン
運動神経病、ピック病(PiD)、脳炎後パーキンソン症候群、プリオンタンパク質脳ア
ミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、亜急性硬化性
全脳炎、神経原線維変化優位型認知症(tangle only dementia)、神経原線維変化優位型
認知症(Tangle-predominant dementia)、多発梗塞性認知症、虚血性脳卒中、または結
節性硬化症から選択される、上記[37]に記載の方法。
[39] 前記オリゴヌクレオチドが、前記対象に、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、経口、静
脈内、または皮下経路を通して投与される、上記[36]に記載の方法。
[40] 第2の作用物質を前記対象に投与することをさらに含む、上記[36]に記載
の方法。
[41] 前記対象がヒトである、上記[36]から[40]のいずれかに記載の方法。
[42] それを必要とする対象におけるタウに関連する疾患を治療するための、上記[
1]から[34]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの使用。
[43] それを必要とする対象におけるタウに関連する疾患の治療に使用するための医
薬の製造における、上記[1]から[34]のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの使
用。
[44] 前記オリゴヌクレオチドが表9~15および17で示される核酸塩基配列のい
ずれかを含み、第1から第5のヌクレオチドが2’-O-MOEで修飾されたヌクレオシ
ドを各々含み、第6から第15のヌクレオチドが2’-デオキシヌクレオシドを各々含み
、第16から第20のヌクレオチドが2’-O-MOEで修飾されたヌクレオシドを各々
含む、上記[10]に記載のオリゴヌクレオチド。
[45] 配列番号208、284、285、313、329、335、366、384
、386、405、473、および474のいずれか1つから選択される核酸塩基配列を
含むオリゴヌクレオチド。
[46] 第1から第5のヌクレオチドが2’-O-MOEで修飾されたヌクレオシドを
各々含み、第6から第15のヌクレオチドが2’-デオキシヌクレオシドを各々含み、第
16から第20のヌクレオチドが2’-O-MOEで修飾されたヌクレオシドを各々含む
、上記[45]に記載のオリゴヌクレオチド。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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