(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車載システム
(51)【国際特許分類】
B62H 5/00 20060101AFI20241127BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20241127BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20241127BHJP
B62J 50/22 20200101ALI20241127BHJP
【FI】
B62H5/00 Z
B62J45/00
B62M6/45
B62J50/22
(21)【出願番号】P 2022073950
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 裕
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534199(JP,A)
【文献】特開2019-081539(JP,A)
【文献】特開2014-094589(JP,A)
【文献】特開2012-250552(JP,A)
【文献】特開2018-144780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 5/00
B62J 1/00 ー 99/00
B62M 6/00 ー 6/90
B62J 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車に搭載される複数の電装部品を含む車載システムであって、
前記複数の電装部品の各々は、前記自転車の機能の一部を担い、
前記複数の電装部品の少なくとも1つは、前記自転車に対して脱着可能であり、
前記複数の電装部品は、前記自転車に搭載された状態で、互いに電気的に接続され、
前記複数の電装部品の少なくとも1つは、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶部を有し、
前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能が異なり、
ユーザが認証設定のための所定の操作をした場合に、前記記憶部に対して、
前記所定の操作時に前記自転車に搭載されている複数の電装部品の個体識別情報を、認証済み電装部品の個体識別情報
の組み合わせとして記録する認証設定部が、前記複数の電装部品の少なくとも1つに設けられ
、
前記認証設定部は、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせ、又は、前記記憶部に記録された前記認証済み電装部品の個体識別情報の少なくとも1つに基づいて、前記所定の操作時に前記自転車に搭載されている複数の電装部品の個体識別情報を、前記認証済み電装部品の個体識別情報の組み合わせとして前記記憶部への記録することを制限する、車載システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載システムであって、
前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致しない場合に、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能は、合致する場合に比べて制限される、車載システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車載システムであって、
前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否かを判断する認証部と、
前記認証部の判断結果に基づいて、前記複数の電装部品の少なくとも1つで実現される機能の範囲を制御する、機能範囲制御部とが、
前記複数の電装部品の少なくとも1つに設けられる、車載システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車載システムであって、
前記認証設定部は、前記記憶部に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されていない場合に、前記ユーザが、前記所定の操作をした場合に、
前記所定の操作時に前記自転車に搭載されている複数の電装部品の個体識別情報を、認証済み電装部品の個体識別情報
の組み合わせとして前記記憶部に記録し、前記記憶部に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されている場合に、前記ユーザが、前記所定の操作をしても、認証済み電装部品の個体識別情報の記録を許可しない、車載システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車載システムであって、
前記認証設定部は、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する状態で、前記ユーザ
が所定の設定操作をすることを条件として、前記記憶部
の認証済み電装部品の個体識別情報の更新を許可する、車載システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の車載システムであって、
前記複数の電装部品は、モータの駆動ユニット、前記自転車の状態を表示する表示ユニット、前記自転車に対するユーザの入力を受け付ける操作ユニット、前照灯、及び、バッテリのうち少なくとも2つを含む、車載システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の車載システムにおける前記複数の電装部品の1つであるモータの駆動ユニットであって、
前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記モータの駆動による実現可能な前記自転車の機能を異ならせる、モータの駆動ユニット。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の車載システムにおける前記複数の電装部品の1つである、前記自転車の状態を表示する表示ユニットであって、
前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能を異ならせる、表示ユニット。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の車載システムにおける前記複数の電装部品の1つであるバッテリであって、
前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品の少なくとも1つに対して供給する電力を異ならせる、バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動アシスト自転車のような電動システム自転車は、複数の電装部品を備える場合がある。複数の電装部品として、例えば、バッテリ、駆動ユニット、メータ等が挙げられる。また、自転車の複数の電装部品には、自転車に脱着可能な部品が含まれる場合がある。例えば、バッテリ及びメータは、ユーザが、自転車から取り外し可能に構成される場合がある。また、自転車の複数の電装部品の一部を、ユーザが、互換性のある他の電装部品と取り換え可能である場合もある。
【0003】
一方、電装部品の盗難も課題である。例えば、電装部品が互換性を有するがゆえに、電装部品のみ盗難して転売される事が考えられる。そこで、例えば、特開2013-147123号公報(特許文献1)には、盗難防止装置を備えた電動車両が開示されている。この盗難防止装置は、バッテリ本体を車体に固定する際の施錠又は解錠を検知する施錠検知スイッチと、バッテリ本体の車体への搭載を検知する搭載検知スイッチと、警告を発する警告部と、制御装置とを備える。制御装置は、施錠検知スイッチ、搭載検知スイッチからの信号に基づいて警告部を作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、自転車の車載システムを構成する複数の電装部品の組み合わせを、ユーザがある程度、自由に設定できる点に着目した。そして、この点を利用して、電装部品の盗難を抑制する仕組みを検討した。
【0006】
本願は、自転車の電装部品の盗難を抑制することができる、自転車の車載システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における車載システムは、自転車に搭載される複数の電装部品を含む車載システムである。前記複数の電装部品の各々は、前記自転車の機能の一部を担う。前記複数の電装部品の少なくとも1つは、前記自転車に対して脱着可能である。前記複数の電装部品は、前記自転車に搭載された状態で、互いに電気的に接続される。前記複数の電装部品の少なくとも1つは、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶部を有する。前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能が異なる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における自転車を示す左側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における車載システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す車載システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、記憶部1に記録される個体識別情報の例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す車載システムの他の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図2に示す車載システムの他の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、機能範囲制御部3による機能範囲の制御の例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図2に示す車載システムの認証設定部の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8に示す処理における条件と認証処理との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(構成1)
本発明の実施形態における車載システムは、自転車に搭載される複数の電装部品を含む車載システムである。前記複数の電装部品の各々は、前記自転車の機能の一部を担う。前記複数の電装部品の少なくとも1つは、前記自転車に対して脱着可能である。前記複数の電装部品は、前記自転車に搭載された状態で、互いに電気的に接続される。前記複数の電装部品の少なくとも1つは、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶部を有する。前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能が異なる。
【0010】
上記構成1によれば、自転車に搭載され、個体識別された複数の電装部品の組み合わせが、記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報に合致するか否かによって、複数の電装部品により実現可能な自転車の機能が異なる。これにより、認証済みでない電装部品の組み合わせを搭載した場合、自転車の機能が、認証済み電装部品の組み合わせを搭載した場合と、異なることになる。そのため、電装部品の盗難を抑制できる。例えば、自転車に搭載された複数の電装部品の組み合わせが、記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致しない場合に、複数の電装部品により実現可能な自転車の機能を、合致する場合に比べて制限するか、又は、追加することができる。この場合、電装部品を盗難して、他の自転車に取り付けても、その自転車が所定の機能を発揮できない、又は、冗長な機能が発揮されることになる。その結果、電装部品の盗難を抑制できる。
【0011】
上記構成1において、前記複数の電装部品の各々は、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するか、自らの個体識別のための個体識別情報を保持してもよい。自転車に搭載され、組み合わされた複数の電装部品の間で、個体識別情報が交換されることで、前記複数の電装部品のうち少なくとも1つの電装部品において、前記組み合わされた複数の電装部品が、認証済の個体であるか否かを判断することができる。
【0012】
また、上記構成1では、搭載された電装部品が認証済みか否かを判断するために、外部の機器(例えば、認証サーバ等)とネットワークを介して通信しなくてもよい。そのため、認証のためにネットワークを用いたインフラを構築しなくてもよい。その結果、ネットワーク通信に頼らず、自転車に搭載される電装部品によって効率よく盗難を抑制できる車載システムが提供できる。
【0013】
(構成2)
上記構成1において、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致しない場合に、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能は、合致する場合に比べて制限されてもよい。これにより、盗難した電装部品、又は、自転車の機能が制限される。そのため、盗難抑止効果が高まる。制限される機能は、例えば、前記自転車の走行に関する機能であってもよい。
【0014】
一例として、上記構成2では、前記自転車に搭載され固体識別された電装部品が、認証済み電装部品の個体識別情報が示す電装部品と異なる場合、又は、認証済み電装部品の個体識別情報が示す電装部品が、前記自転車から取り外され、搭載されていない場合に、前記自転車の機能が制限されてもよい。
【0015】
(構成3)
上記構成1又は2において、前記複数の電装部品の少なくとも1つに、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否かを判断する認証部と、前記認証部の判断結果に基づいて、前記複数の電装部品の少なくとも1つで実現される機能の範囲を制御する、機能範囲制御部とが、設けられてもよい。これにより、搭載された電装部品の組み合わせを用いた機能制限を効率よく実現できる。なお、前記認証部と前記機能範囲制御部は、1つの電装部品に設けられてもよいし、2以上の電装部品に分散して設けられてもよい。
【0016】
前記認証部は、例えば、前記複数の電装部品のうち脱着可能でない電装部品に設けられてもよい。前記認証設定部は、例えば、前記複数の電装部品のうち脱着可能でない電装部品に設けられてもよい。認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶部は、例えば、前記複数の電装部品のうち脱着可能でない電装部品に設けられてもよい。
【0017】
固体識別とは、1つの現存する具体的な部品を一意に識別することである。例えば、機種が同じ複数の部品は、それぞれが異なる固体として識別される。固体識別は、例えば、個体識別子を用いて識別される。また、例えば、個体を識別する主体がその個体である部品に含まれる場合には、その個体は識別されたものとして取り扱われてもよい。
【0018】
前記認識部は、前記自転車に搭載された前記複数の電装部品を示す情報を取得し、これと、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報とを比較することにより、上記判断を行ってもよい。
【0019】
例えば、前記認証部は、前記自転車に搭載された前記複数の電装部品のうち少なくとも脱着可能な電装部品の個体識別子を取得してもよい。前記認証部は、脱着可能な電装部品の個体識別子と、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報とを比較することにより、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否かを判断することができる。
【0020】
(構成4)
上記構成1~3のいずれかにおいて、ユーザが所定の操作をした場合に、前記記憶部に対して、認証済み電装部品の個体識別情報を記録する認証設定部が、前記複数の電装部品の少なくとも1つに設けられてもよい。これにより、ユーザが、認証済み電装部品を設定することができる。
【0021】
(構成5)
上記構成4において、前記認証設定部は、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせ、又は、前記記憶部に記録された前記認証済み電装部品の個体識別情報の少なくとも1つに基づいて、前記認証済み電装部品の個体識別情報の前記記憶部への記録を制限してもよい。このように、認証済み電装部品の設定が制限されることで、盗難した部品又は自転車における認証済み電装部品の設定を制限できる。そのため、盗難抑制効果がより高まる。
【0022】
(構成6)
上記構成5において、前記認証設定部は、前記記憶部に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されていない場合に、前記ユーザが、前記所定の操作をした場合に、認証済み電装部品の個体識別情報を前記記憶部に記録してもよい。この場合、前記認証設定部は、前記記憶部に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されている場合に、前記ユーザが、前記所定の操作をしても、認証済み電装部品の個体識別情報の記録を許可しないよう構成されてもよい。これにより、例えば、出荷された自転車を購入した時などの初期に認証済み電装部品を設定した後、ユーザによる認証済み電装部品の設定が制限される。そのため、盗難抑制効果がより高まる。
【0023】
(構成7)
上記構成5又は6において、前記認証設定部は、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する状態で、前記ユーザが所定の設定操作をすることを条件として、前記記憶部に認証済み電装部品の個体識別情報の更新を許可することができる。これにより、既に、認証済み電装部品が設定されている状態において、ユーザによる設定の更新が制限される。そのため、盗難抑制効果がより高まる。なお、前記所定の設定操作は、前記所定の操作と同じであってもよいし、異なっていてもよい。認証済み電装部品の個体識別情報の更新は、例えば、認証済み電装部品の個体識別情報の削除又は追加の少なくとも1つであってもよい。
【0024】
(構成8)
前記複数の電装部品は、モータの駆動ユニット、前記自転車の状態を表示する表示ユニット、前記自転車に対するユーザの入力を受け付ける操作ユニット、前照灯、及び、バッテリのうち少なくとも2つを含んでもよい。
【0025】
(構成9)
上記構成1~8のいずれの車載システムにおける前記複数の電装部品の1つであるモータの駆動ユニットは、本発明の実施形態に含まれる。前記モータの駆動ユニットは、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記モータの駆動による実現可能な前記自転車の機能を異ならせるよう構成されてもよい。
【0026】
前記駆動ユニットは、前記自転車に搭載される他の電装部品と、互いに電気的に接続される。前記駆動ユニット又は前記他の電装部品の少なくとも1つは、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶部を有する。前記自転車に搭載された前記駆動ユニットと前記自転車に搭載され、個体識別された前記他の電装部品との組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記モータの駆動により実現可能な前記自転車の機能が異なる。前記自転車の機能は、例えば、前記モータの駆動により実現可能な前記自転車の走行アシストの範囲であってもよい。一例として、合致しない場合に、モータの駆動により実現される自転車の走行アシスト機能が制限されてもよいし、又は、冗長なアシスト機能が追加されてもよい。前記駆動ユニットは、例えば、前記認証部及び前記機能範囲制御部を有してもよい。前記機能範囲制御部は、前記モータ駆動により実現される走行アシスト機能の範囲を制御してもよい。
【0027】
(構成10)
上記構成1~8のいずれか1項に記載の車載システムにおける前記複数の電装部品の1つである、前記自転車の状態を表示する表示ユニットも、本発明の実施形態に含まれる。前記表示ユニットは、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能を異ならせるよう構成されてもよい。
【0028】
前記表示ユニットは、前記自転車に搭載される他の電装部品と、互いに電気的に接続される。前記表示ユニット又は前記他の電装部品の少なくとも1つは、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶部を有する。前記自転車に搭載され、個体識別された前記表示ユニットと前記他の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能が異なる。前記自転車の機能は、例えば、前記表示ユニットが表示する情報の範囲であってもよい。一例として、合致しない場合に、表示ユニットによる自転車の状態又は操作受付の表示項目が制限されるか、又は、冗長な表示項目が追加されてもよい。前記表示ユニットは、例えば、前記認証部及び前記機能範囲制御部を有してもよい。前記機能範囲制御部は、前記表示ユニットが表示する情報の範囲を制御してもよい。
【0029】
(構成11)
上記構成1~8のいずれか1項に記載の車載システムにおける前記複数の電装部品の1つである、バッテリも、本発明の実施形態に含まれる。前記バッテリは、前記自転車に搭載され、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記複数の電装部品の少なくとも1つに対して供給する電力を異ならせるよう構成されてもよい。これにより、前記複数の電装部品により実現可能な前記自転車の機能を異ならせることができる。
【0030】
前記バッテリは、前記自転車に搭載される他の電装部品と、互いに電気的に接続される。前記バッテリ又は前記他の電装部品の少なくとも1つは、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶部を有する。前記自転車に搭載され、個体識別された前記表示ユニットと前記他の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記バッテリが、前記複数の電装部品の少なくとも1つに対して供給する電力が異なる。前記バッテリは、例えば、前記認証部及び前記機能範囲制御部を有してもよい。前記機能範囲制御部は、前記バッテリが出力する電力の範囲を制御してもよい。
【0031】
上記構成1~8のいずれか1項に記載の車載システムにおける前記複数の電装部品の1つである、前照灯も、本発明の実施形態に含まれる。例えば、前記自転車に搭載され、個体識別された前記前照灯と前記他の電装部品の組み合わせが、前記記憶部に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致する場合と、合致しない場合とで、前記前照灯の機能が異なってもよい。例えば、自転車に搭載され、個体識別された前照灯及び他の電装部品の組み合わせが、認証済み電装部品の個体識別情報と合致しない場合に、前照灯の光照射機能が低下する、又は、前照灯が激しく点滅してもよい。これにより、盗難した前照灯又は自転車の使用の継続が困難になる。結果として、盗難抑制効果が向上する。
【0032】
上記構成1~8のいずれか1項に記載の車載システムを備えた自転車も、本発明の実施形態に含まれる。一例として、前記自転車は、電動補助自転車であってもよい。前記電動補助自転車は、前記電動補助自転車のクランク軸に接続されたペダルの踏力を検出するトルクセンサと、前記踏力を補助する補助力を発生させるモータと、前記踏力に応じて前記モータの前記補助力を制御する制御装置とを備えてもよい。この場合、例えば、前記複数の電装部品の1つが駆動ユニットであってもよい。前記駆動ユニットは、前記トルクセンサ、前記モータ、及び、前記制御装置を含んでもよい。前記駆動ユニットは、例えば、脱着可能ではない電装部品であってもよい。
【0033】
自転車に対して脱着可能な電装部品は、ユーザが自転車の通常使用において脱着可能に構成された電装部品である。例えば、自転車のクランク軸が貫通するように自転車に取り付けられた駆動ユニットは、特別な工具を用いて分解すれば、自転車から取り外すことができる。しかし、このような駆動ユニットは、ユーザが通常使用において脱着可能であるは言えない。
【0034】
複数の電装部品が、電気的に接続される形態として、例えば、複数の電装部品のうち少なくとも2つの電装部品が、有線又は無線で接続される形態を含む。
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による自転車について説明する。図中、同一又は相当部分には、同一符号を付して、その部材についての説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。なお、以下の説明において、自転車の前後、左右、上下は、乗員(ユーザ)が、サドル(シート)に着座し且つハンドルを握った状態を基準とした前後、左右、及び上下を意味する。自転車の前後、左右、及び上下の各方向は、自転車の車体すなわち車体フレームの前後、左右及び上下の各方向と同じである。また、自転車の進行方向は、自転車の前後方向と同じである。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
<自転車の全体構成例>
図1は、本実施形態における自転車10を示す左側面図である。
図1における符号F、B、U、Dは、それぞれ前、後、上、下を表す。
【0037】
図1に示すように、自転車10は、車体フレーム51を有する。車体フレーム51は、前後方向に延びている。車体フレーム51の前部にヘッドパイプ51aが設けられる。ヘッドパイプ51aは、操舵軸24を回転可能に支持する。操舵軸24の上部にはステム25を介してハンドル23が取り付けられる。操舵軸24の下部は、前輪21を回転可能に支持するフロントフォーク26が取り付けられる。
【0038】
車体フレーム51には、シート28が取り付けられる。シート28の後方において、後輪22が、車体フレーム51の後部に回転可能に支持される。車体フレーム51には、クランク軸32が回転可能に支持される。クランク軸32には、クランクアーム31及びペダル33が取り付けられる。自転車10は、クランク軸32の回転を後輪22へ伝達する伝達機構を備える。
【0039】
クランク軸32の周りには、ユーザ(乗員)の踏力を検出するトルクセンサ62が設けられる。トルクセンサ62は、クランク軸32を軸周りに回転させるトルクを検出する。トルクセンサ62は、例えば、磁歪式のような非接触式、又は、弾性体変量検出式のような接触式のトルクセンサを用いることができる。磁歪式トルクセンサは、磁歪効果を有し、クランク軸の回転力を受ける磁歪材と、磁歪材の力による透磁率の変化を検出する検出コイルを有する。
【0040】
車体フレーム51には、バッテリ35及び駆動ユニット40が取り付けられる。バッテリ35は、駆動ユニット40に電力を供給する。バッテリ35は、車体フレーム51に対して脱着可能に構成される。バッテリ35と駆動ユニット40は、例えば、ケーブルによって電気的に接続される。
【0041】
駆動ユニット40は、ハウジング43及び、ハウジング43内に収納されたモータ41及び制御装置(
図1では図示略)を有する。モータ41は、ユーザの踏力を補助する補助力を発生させる。制御装置は、トルクセンサ62で検出される踏力に応じてモータ41の補助力を制御する。制御装置は、例えば、モータ41を制御するインバータ、モータ41への指令値を計算するMCU(micro controller unit)又はMPU(micro-processing unit)等の演算部を有する。
【0042】
モータ41の回転は、伝達機構によって、後輪22へ伝達される。例えば、モータ41の回転と、クランク軸32の回転を合成する合力機構、及び、合力を後輪へ伝達する合力伝達機構が、伝達機構に含まれる。
【0043】
ハンドル23の周辺に、表示ユニット36が取り付けられる。表示ユニット36は、自転車10の状態を表示する。表示ユニット36は、ディスプレイ又はランプ等の表示装置を備える。また、表示ユニット36は、自転車10に対するユーザの入力を受け付けるスイッチ又はタッチパネル等の入力装置を有してもよい。このように、表示ユニット36は、操作ユニットと一体的に構成されてもよい。或いは、表示ユニット36とは別に、操作ユニットが設けられてもよい。操作ユニットは、例えば、スイッチ又はボタン等の入力装置と、入力装置に対する操作を電気信号に変換する変換部とを含む。なお、表示ユニット36及び操作ユニットは、例えば、ハンドル23、ステム25、操舵軸24、又は、車体フレーム51のいずれかに取り付けられてもよい。表示ユニット36は、ユーザから視認可能であり、且つ、操作可能な位置に取り付けられる。表示ユニット36は、自転車10に対して脱着可能であってもよい。例えば、表示ユニット36は、自転車10に取り付けられたクレードル(ホルダ)に脱着可能に構成されてもよい。クレードルは、操作ユニットを含んでもよい。
【0044】
自転車10は、前照灯37を有する。
図1の例では、前照灯37は、ハンドル23に取り付けられるが、フロントフォーク26等、ハンドル23以外の場所に取り付けられてもよい。前照灯37は、自転車10に対して脱着可能であってもよい。例えば、前照灯37は、自転車10に取り付けられたクレードル(ホルダ)に脱着可能に構成されてもよい。
【0045】
図1の例では、フロントフォーク26に、前輪21の回転を検出する車速センサ(スピードセンサ)61が設けられている。車速センサ61は、例えば、前輪21とともに回転する被検出素子と、車体フレーム51に対して固定され、被検出素子の回転を検出する検出素子を有する。検出素子は、機械的、磁気的又は光学的に被検出素子を検出する。なお、車速センサ61は、前輪21に限らず、例えば、後輪22、モータ41、クランク軸32、伝達ギヤ、チェーン等、自転車10の進行に伴って回転する回転体の回転を検出するものであってもよい。また、自転車10は、車速センサの他に、車両の状態を検出するセンサを備えてもよい。自転車10は、例えば、角速度センサ(ジャイロセンサ)、又は、加速度センサ等を備えてもよい。或いは、自転車10は、クランク軸32の回転を検出するクランク軸回転センサを備えてもよい。
【0046】
バッテリ35、表示ユニット36、前照灯37、及び、駆動ユニット40は、電気的に接続される。これにより、バッテリ35の電力は、駆動ユニット40、表示ユニット36、及び前照灯37に供給される。例えば、バッテリ35は、表示ユニット36、前照灯37、駆動ユニット40のそれぞれに直接接続されてもよいし、駆動ユニット40を介して、表示ユニット36及び前照灯37と接続されてもよい。
【0047】
また、駆動ユニット40は、バッテリ35、表示ユニット36、及び前照灯37と、通信可能に構成される。この通信は、有線でもよいし無線でもよい。本例では、駆動ユニット40が、電装部品間の通信のハブになるが、電装部品の間のネットワーク構成(ネットワークトポロジ)はこれに限られない。例えば、表示ユニット36がハブとなってもよい。または、ハブを有するスター型の他に、バス型、リング型、又は、フルメッシュ型等その他のネットワーク構成が採用されてもよい。
【0048】
表示ユニット36と駆動ユニット40は、例えば、ケーブル(電線)を介して、電気的に接続される。例えば、表示ユニット36を脱着可能なクレードルと駆動ユニット40がケーブルで接続されてもよい。この場合、クレードルと、クレードルに装着された表示ユニット36が、有線又は無線により電気的に接続されてもよい。例えば、表示ユニット36がクレードルに装着されると、表示ユニット36が、クレードルの端子及びケーブルを介して、駆動ユニット40の制御装置と電気的に接続される。同様に、駆動ユニット40は、前照灯37と、ケーブル及びクレードルの端子を介して接続されてもよい。駆動ユニット40とバッテリ35も、ケーブル及び接続端子を介して電気的に接続されてもよい。
【0049】
表示ユニット36は、例えば、車速センサ61等の自転車10が備えるセンサに電気的に接続されてもよい。表示ユニット36とセンサは、ケーブルで接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。なお、表示ユニット36に接続されるケーブルの少なくとも一部は、車体フレーム51の内部を通ってもよい。表示ユニット36は、他の電装部品、例えば、前照灯37と電気的に接続されてもよい。
【0050】
図1に示す例では、制御装置は、駆動ユニット40のハウジング43に内蔵される。変形例として、制御装置は、ハウジング43の外に設けられてもよい。例えば、制御装置は、ハンドル23、ステム25、操舵軸24、又は、車体フレーム51に取り付けられるクレードル(ホルダ)に設けられてもよい。
【0051】
図1の例では、バッテリ35、表示ユニット36、前照灯37、及び、駆動ユニット40が、車載システムを構成する複数の電装部品となる。一例として、表示ユニット36、前照灯37及びバッテリ35は、自転車10に対して脱着可能に構成される脱着可能電装部品である。駆動ユニット40は、自転車10に対して固定され、脱着不可能に構成される車両固定電装部品である。
【0052】
<車載システムの構成例>
図2は、自転車10の車載システム100の構成例を示す機能ブロック図である。
図2に示す例では、車載システム100は、電装部品として、バッテリ35、表示ユニット36、前照灯37、及び駆動ユニット40を備える。駆動ユニット40は、モータ41及び制御装置42を含む。バッテリ35は、制御装置42と電気的に接続される。制御装置42は、モータ41、表示ユニット36、及び、前照灯37と電気的に接続される。
【0053】
制御装置42は、モータ41を制御する。例えば、制御装置42は、トルクセンサ62で検出される踏力に応じてモータ41を制御する。これにより、ユーザのペダリングを補助するアシスト機能が発揮される。なお、制御装置42は、トルクセンサ62の他、車速センサ61、又はその他のセンサで検出された情報を基にモータ41を制御してもよい。制御装置42は、複数の走行モードのうち指定された走行モードで、モータ41を制御することができる。走行モードは、アシスト制御のモードである。各走行モードでは、例えば、踏力及びその他の条件(例えば、車速等)に応じたモータの補助力の決め方が定義されている。走行モードを切り替えることで、踏力その他の条件に応じた補助力の決め方を変更できる。
【0054】
制御装置42は、駆動ユニット40の電力の入出力を制御してもよい。例えば、制御装置は、バッテリ35から供給された電力を、モータ41の他、表示ユニット36及び前照灯37へ供給することができる。前照灯37は、バッテリ35から供給される電力により、自転車10の前方へ向けて光を照射する。なお、前照灯37は、電池を内蔵してもよい。前照灯37の光の照射のオン/オフは、ユーザ操作により、又は、光センサの検出結果に応じて自動的に切り替えられる。
【0055】
表示ユニット36は、自転車10の状態を表示する。表示ユニット36は、制御装置42等の電装部品、及び自転車10に設けられたセンサから得られた情報を基に、自転車10の状態を示す情報を生成して表示する。表示ユニット36は、自転車10の状態として、自転車10の走行に関する状態を表示することができる。例えば、走行距離(ODD、TRIP)、車速、走行モード、バッテリの残容量、残アシスト可能距離、又は、電装部品の状態(故障診断結果)等が、表示ユニット36により表示される。
【0056】
表示ユニット36は、ユーザからの操作を受け付ける操作ユニットを含んでもよい。この場合、表示ユニット36は、操作ユニットに対するユーザの操作、又は操作に伴う動作指令を、駆動ユニット40の制御装置42へ送信する。制御装置42は、踏力、クランク軸回転、車速そのた等の自転車の状態を示す情報を、表示ユニット36に送信する。表示ユニット36は、制御装置42から送られた情報を表示する。
【0057】
このように、車載システム100の電装部品により、自転車10の様々な機能が実現される。
図2の車載システム100は、自転車10に搭載された複数の電装部品の組み合わせが、認証済みの組み合わせか否かによって、複数の電装部品により実現可能な自転車10の機能の範囲を異ならせる。そのため、複数の電装部品の少なくとも1つに、記憶部1、認証部2、機能範囲制御部3、及び認証設定部4が設けられる。これらの機能部のそれぞれは、1つの電装部品に集中して設けられてもよいし、複数の電装部品に分散して設けられてもよい。
図2では、一例として、車両固定電装部品の一部である制御装置42に、記憶部1、認証部2、機能範囲制御部3、及び認証設定部4が設けられる。
【0058】
記憶部1は、認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための記憶装置である。記憶部1は、例えば、電力供給がなくても記憶情報を維持できる不揮発メモリ(一例として、EEPROM)であってもよい。これにより、車載システム100の電源を切っても、記憶部1の情報が保持される。或いは、記憶部1が、バッテリ35又はその他の電池から常に電力供給を受けられる場合は、揮発性メモリであってもよい。
【0059】
認証部2は、自転車10に搭載された、個体識別された前記複数の電装部品の組み合わせが、記憶部1に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否かを判断する。認証部2は、自転車10に搭載された電装部品の個体識別情報を取得し、記憶部1に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と比較する。認証部2は、判断結果として、例えば、この合致するか否か(すなわち、合致又は不一致)を示す情報か、又は、認証済み電装部品の個体識別情報が記憶部1に記録されていないことを示す情報を出力することができる。
【0060】
自転車10に搭載される複数の電装部品のうち、少なくとも、認証部2を有する電装部品以外の電装部品(他の電装部品)は、自らの個体識別情報を保持することができる。この場合、認証部2は、自転車10に搭載された他の電装部品と通信をして、他の電装部品の個体識別情報を取得する。認証部2は、取得した他の電装部品の個体識別情報が、記憶部1に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否かを判断する。これにより、自転車10に搭載された電装部品の組み合わせが、認証済みの組み合わせであるか否かが判断される。
【0061】
認証部2の判断結果が合致を示す場合は、自転車10に搭載された電装部品の組み合わせが、認証済みの組み合わせとなっている場合である。認証部2の判断結果が不一致を示す場合は、自転車10に搭載された電装部品の組み合わせが、認証済みの組み合わせとなっていない場合である。例えば、認証済み電装部品の組み合わせのうち、1つの電装部品が自転車10に搭載されていない、すなわち、取り外されている場合、又は、認証済みでない電装部品が自転車10に搭載されている場合は、判断結果が不一致となる。
【0062】
なお、認証部2は、他の電装部品の個体識別情報を取得して、取得した個体識別情報が、認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否かを判断する構成に限られない。例えば、認証部2は、搭載された電装部品の個体識別情報の組み合わせと認証済み電装部品の個体識別情報との照合結果を他の電装部品から受信し、照合結果に基づいて判断する構成であってもよい。
【0063】
機能範囲制御部3は、認証部2の判断結果に基づいて、複数の電装部品の少なくとも1つで実現される機能の範囲を制御する。機能範囲制御部3は、認証部2の判断結果が合致する場合と、不一致の場合とで、自転車10に搭載された複数の電装部品のうち少なくとも1つで実現される機能の範囲が異なるように、当該少なくとも1つの電装部品を制御する。これにより、複数の電装部品で実現可能な自転車10の機能が、認証部2の判断結果によって異なることになる。例えば、機能範囲制御部3は、電装部品の動作で用いられるパラメータの設定を変更することで、その電装部品で実現される機能の範囲を変更することができる。
【0064】
機能範囲制御部3は、例えば、判断結果が不一致の場合に複数の電装部品で実現可能な機能を、判断結果が合致である場合に実現可能な機能に比べて、制限することができる。これにより、例えば、盗難された電装部品等、認証済みでない電装部品が搭載された自転車10で実現される機能が制限される。その結果、盗難が抑制される。他の例として、機能範囲制御部3は、判断結果が不一致の場合に複数の電装部品で実現される機能を、判断結果が合致である場合に実現可能な機能に比べて、冗長なものにすることができる。冗長な機能として、例えば、駆動ユニット40による著しく不快なアシスト、又は、前照灯37の激しい点滅等が、挙げられる。冗長な機能の発揮が、盗難された電装部品を使用し続けることの抵抗となる。その結果、盗難が抑制される。
【0065】
認証設定部4は、ユーザが認証設定のための所定の操作をした場合に、記憶部1に対して、認証済み電装部品の個体識別情報を記録する。所定の操作は、自転車10に対するユーザの操作であり、予め決められた操作である。例えば、所定のスイッチを、所定時間以上継続して押し続ける等、通常の自転車10の使用では、生じ得ない操作を、所定の操作とすることができる。これにより、認証済みの電装部品の組み合わせを、ユーザが登録できる。
【0066】
認証設定部4は、ユーザが自転車10に対して所定の操作をしたことを検出すると、その操作時に、自転車10に搭載されている電装部品の個体識別情報を取得し、認証済み電装部品の個体識別情報として、記憶部1に記録する。これにより、認証済み電装部品の個体識別情報が登録される。この際に、認証設定部4は、予め決められた認証のための条件を満たしている場合にのみ、認証済み電装部品の個体識別情報の記録を許可してもよい。認証のための条件は、例えば、自転車に搭載され、個体識別された複数の電装部品の組み合わせ、又は、記憶部1に記録された認証済み電装部品の個体識別情報の少なくとも1つに基づく条件であってもよい。
【0067】
例えば、自転車10における認証済みの電装部品の登録をユーザが極めて容易にできるとすると、盗難された電装部品を、他の自転車の認証済みの電装部品として使用することが容易になる可能性がある。又は、脱着可能な電装部品を外しておいた自転車が盗難され、盗難した自転車に、別の個体の電装部品を装着して認証済み電装部品とすることが容易になされる可能性がある。そのため、ユーザによる認証済み電装部品の個体識別情報の登録は、予め決められた条件によって制限されることが好ましい。
【0068】
例えば、すでに、認証済の電装部品が存在する場合、すなわち記憶部1にすでに認証済み電装部品の個体識別情報が記録されている場合は、ユーザが、所定の操作をしても、認証設定部4は、記憶部1の認証情報(認証済み電装部品の個体識別情報)は更新しないようにしてもよい。一方、自転車10の出荷後の初期状態のように、認証情報が無い、すなわち、記憶部1に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されていない状態において、ユーザが所定の操作をした場合は、認証設定部4は、そのときに自転車10に搭載された電装部品の個体識別情報を、認証済み電装部品の個体識別情報として、記憶部1に追加記録することができる。
【0069】
ユーザは、認証済みの電装部品の組み合わせを変更したい場合がある。例えば、使用回数が増え性能が劣化したバッテリを交換することが想定される。この場合、例えば、認証済みの電装部品の組み合わせが自転車10に搭載されている状態で、ユーザが、認証済み電装部品の個体識別情報の削除(リセット)する操作(所定の設定操作の一例)をすることを条件として、新たな電装部品の組み合わせを、認証済みの組み合わせとして登録できるようにしてもよい。この場合、認証済み電装部品の個体識別情報が削除され、記憶部1に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されていない状態になる。この状態で、ユーザは、元のバッテリを取り外し、新しいバッテリを自転車10に装着する。新しいバッテリを含む電装部品の組み合わせが自転車10に搭載された状態で、ユーザが、認証設定のための所定の操作をすれば、新しいバッテリを含む電装部品の組み合わせが、認証済みの組み合わせとして、記憶部1に記録される。
【0070】
また、ユーザは、認証される電装部品の組み合わせを追加したい場合がある。例えば、複数のバッテリを所持し、交互に順に使い分けることが考えられる。この場合、例えば、認証済みの電装部品の組み合わせが自転車10に搭載されている状態で、ユーザが、認証済み電装部品の個体識別情報の追加を許可する特定の設定操作(所定の設定操作の一例)をすることを条件として、新たな電装部品を、認証済み電装部品として追加登録できるようにしてもよい。すなわち、認証済みの電装部品の組み合わせが自転車10に搭載された状態でユーザが追加を許可する特定の設定操作をすることで、認証設定部4は、現在保持している認証済み電装部品に対して、新たな個体を認証済み電装部品として追加可能な状態となる。その後、ユーザは、追加したい新たなバッテリを装着し、新たなバッテリを含む電装部品の組み合わせが自転車10に搭載された状態で、認証設定のための所定の操作をすれば、認証設定部4は、そのバッテリの個体識別情報を、認証済みの電装部品の個体識別情報として、記憶部1に追加記録する。
【0071】
このように、電装部品の組み合わせの認証設定に制限を設けることで、第三者によって不当に認証設定がされることが抑制される。その結果、盗難抑制効果がより高まる。一方で、ユーザは、希望する電装部品の組み合わせの認証設定が可能になる。
【0072】
認証部2、機能範囲制御部3、及び認証設定部4は、複数の電装部品の少なくとも1つが備えるコンピュータ又は電子回路によって構成することができる。認証部2、機能範囲制御部3、及び認証設定部4の機能は、例えば、プロセッサが所定のプログラムを実行することで実現されてもよいし、電子回路の動作によって実現されてもよい。
【0073】
<車載システムの動作例:機能範囲制御>
図3は、
図2に示す車載システム100の動作例を示すフローチャートである。
図3は、一例として、車両固定電装部品(例えば、駆動ユニット40)に、記憶部1、認証部2及び機能範囲制御部3が設けられる場合のフローチャートである。
図3の例では、車両固定電装部品の電源がオンになると、認証部2は、認証済み電装部品の個体識別情報を記憶部1から読み出す(S1)。
【0074】
図4は、記憶部1に記録される個体識別情報の例を示す図である。
図4に示す例では、個体識別情報は、電装部品のモデル及びシリアル番号を含む。モデルは、電装部品の機種を示す。シリアル番号は、同じ機種の複数の製品のそれぞれにユニークに割り当てられた固有の番号である。承認済み電装部品の個体識別情報として、自転車10に搭載される複数の電装部品(本例では、バッテリ35、表示ユニット36、及び前照灯37)のそれぞれの電装部品の個体識別情報が、記憶部1に記録される。本例では、駆動ユニット40の個体識別情報は記録されていない。これは、駆動ユニット40の制御装置42に記憶部1と認証部2が設けられ、駆動ユニット40が、認証情報の保持及び認証処理と主体となるため、駆動ユニット40については個体識別がされているとみなせるためである。なお、個体識別情報は、
図4に示す例に限られない。
【0075】
再び
図3を参照し、記憶部1に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されている場合(S2でYES)、認証部2は、自転車10に搭載された他の電装部品(例えば、バッテリ35、表示ユニット36、及び前照灯37)のそれぞれに個体識別情報を要求する(S3)。他の電装部品(脱着可能電装部品)のそれぞれは、この要求を受け(S11)、各電装部品のメモリから、自身の個体識別情報を読み出し(S12)、車両固定電装部品の認証部2へ送信する(S13)。
【0076】
認証部2は、他の電装部品のそれぞれの個体識別情報を受信する(S4)。認証部2は、他の電装部品のそれぞれの個体識別情報が、記憶部1から読み出した認証済み電装部品の個体識別情報に合致するか否かを判断する(S5)。認証部2は、例えば、他の電装部品のいずれの個体識別情報も、認証済み電装部品の個体識別情報と一致する場合は、合致(S5でYES)と判断する。他の電装部品のいずれか1つの個体識別情報が、認証済み電装部品の個体識別情報として記録されていない場合、認証部2は、不一致(S5でNO)と判断する。
【0077】
S5でYES(合致)と判断された場合、機能範囲制御部3は、車両固定電装部品の実現機能範囲を予め設定された通常の範囲に設定する(S6)。すなわち、機能範囲制御部3は、車両固定電装部品の通常機能を有効にする。例えば、駆動ユニット40の制御装置42は、機能制限なく補助力を出力するようモータ41を制御する。これにより、ユーザは、例えば、予め決められた全ての走行モード、又はアシスト機能を使用することができる。
【0078】
S5でNO(不一致)と判断された場合、機能範囲制御部3は、車両固定電装部品の実現機能範囲を通常より制限する(S7)。また、記憶部1に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されていない場合(S2でNO)も、機能範囲制御部3は、車両固定電装部品の実現機能範囲を通常より制限する(S7)。機能範囲制御部3は、例えば、駆動ユニット40の制御装置42によるモータ41の制御を、制限された範囲に設定する。機能の制限は、例えば、モータによるアシスト(ペダリングアシスト、押し歩き)をしない又は制限する、若しくは、走行モードを一部に制限する等とすることができる。これにより、ユーザは、ユーザに、認証されていない電装部品の組み合わせを搭載した自転車10で使用できる機能が制限される。その結果、盗難が抑制される。
【0079】
なお、機能の制限の内容は、ユーザが設定可能としてもよい。機能範囲制御部3は、例えば、表示ユニット36を介して、ユーザから、機能の制限の内容の指示入力を受け付けてもよい。
【0080】
なお、機能範囲制御部3は、認証部2を有する電装部品に限らず、他の電装部品の機能の範囲を制御してもよい。例えば、機能範囲制御部3は、認証部2で不一致と判断された場合に、表示ユニット36の表示項目を制限してもよいし、前照灯37の光照射機能を低下させてもよい。また、機能範囲制御部3は、不一致と判断された場合に、機能を制限する代わりに、機能を拡張してもよい。機能の拡張の例として、例えば、表示ユニット36の警告の表示又は音出力、前照灯37の点滅、駆動ユニット40による特別なアシスト等の冗長な機能が挙げられる。冗長な機能を追加することで、ユーザに、認証されていない電装部品の組み合わせを搭載した自転車10を使用することを躊躇させることができる。
【0081】
図3に示す例では、車両固定電装部品に、記憶部1、認証部2及び機能範囲制御部3が設けられる場合の例である。この変形例として、記憶部1、認証部2及び機能範囲制御部3は、脱着可能な電装部品(例えば、表示ユニット36)に設けられてもよい。この場合、脱着可能な電装部品が、
図3のS1~S7の処理を実行し、他の電装部品(車両固定電装部品を含む)が、
図3のS11~S13の処理を実行する。
【0082】
図5は、
図2に示す車載システム100の他の動作例を示すフローチャートである。
図5は、変形例として、脱着可能電装部品(例えば、表示ユニット36)が認証部2及び機能範囲制御部3を有し、車両固定電装部品(例えば、駆動ユニット40)が、記憶部1を有する場合のフローチャートである。
【0083】
図5に示す例では、脱着可能電装部品は、電源がオンになると、脱着可能電装部品のメモリから自身の個体識別情報を読み出し(S21)、記憶部1を有する車両固定電装部品へ送信する(S22)。車両固定電装部品は、脱着可能電装部品及びその他の搭載された電装部品のそれぞれから個体識別情報を受信する(S31)。車両固定電装部品は、記憶部1から認証済み電装部品の個体識別情報を読み出し(S32)、S31で受信した個体識別情報と照合する(S33)。照合結果は、脱着可能電装部品へ送信される。照合結果には、例えば、S31で受信した脱着可能電装部品及びその他の電装部品のそれぞれの個体識別情報が、記憶部1に記録された認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否か(合致又は不一致)を示す情報、及び、認証済み電装部品の個体識別情報の有無を示す情報が含まれる。
【0084】
脱着可能電装部品の認証部2は、照合結果を取得する(S23)。認証部2は、照合結果を基に、認証済み電装部品の個体識別情報があるか否か(S24)を判断する。S24でYESの場合、認証部2は、自転車10に搭載された電装部品の組み合わせが、認証済み電装部品の個体識別情報に合致するか否か(合致又は不一致)を、照合結果を基に判断する(S25)。
【0085】
S25でYES(合致)と判断された場合、機能範囲制御部3は、脱着可能電装部品の実現機能範囲を予め設定された通常の範囲に設定する(S26)。S25でNO(不一致)と判断された場合、機能範囲制御部3は、脱着可能電装部品の実現機能範囲を通常より制限する(S27)。また、記憶部1に認証済み電装部品の個体識別情報が記録されていない場合(S24でNO)も、機能範囲制御部3は、脱着可能電装部品の実現機能範囲を通常より制限する(S7)。なお、機能範囲制御部3は、他の電装部品(例えば、車両固定電装部品)の実現機能範囲を制御してもよい。また、機能範囲制御部3は、電装部品の実現機能範囲を拡張してもよい。
【0086】
図5の例では、記憶部1を有する車両固定電装部品(例えば、駆動ユニット40)に、自転車に搭載された他の電装部品の個体識別情報が集められる。この変形として、認証部2を有する脱着可能電装部品(例えば、表示ユニット36)に、他の電装部品の個体識別情報が集められてもよい。この場合、認証部2は、車両固定電装部品から、記憶部1に記録された認証済み電装部品の個体識別情報を受信する。これにより、認証部2は、自転車に搭載された電装部品の組み合わせが、認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否かを判断できる。
【0087】
図6は、
図2に示す車載システム100の他の動作例を示すフローチャートである。
図6は、変形例として、車両固定電装部品(例えば、駆動ユニット40)が、記憶部1、認証部2及び機能範囲制御部3を有し、脱着可能電装部品(例えば、バッテリ35)が、認証部2及び機能範囲制御部3を有する場合のフローチャートである。
図6のS1~S7、及びS11~S13は、
図3のS1~S7、及びS11~S13と同様である。
【0088】
図6のS8では、車両固定電装部品における照合結果が、脱着可能電装部品に送信される。照合結果には、例えば、自転車10に搭載された複数の電装部品のそれぞれの個体識別情報が、認証済み電装部品の個体識別情報と合致するか否か(合致又は不一致)を示す情報、及び、認証済み電装部品の個体識別情報の有無を示す情報が含まれる。脱着可能電装部品の認証部2は、照合結果を受信し(S14)、照合結果に基づいて、合致か不一致かを判断する(S15)。S15でYES(合致)と判断された場合、機能範囲制御部3は、脱着可能電装部品の実現機能範囲を予め設定された通常の範囲に設定する(S16)。S15でNO(不一致)と判断された場合、機能範囲制御部3は、脱着可能電装部品の実現機能範囲を通常より制限する(S17)。
【0089】
このように、認証部2及び機能範囲制御部3は、複数の電装部品に設けられてもよい。例えば、
図6における脱着可能電装部品が、バッテリ35である場合、バッテリ35のメモリは、電力の供給を常に受けられるため、揮発性メモリ(例えば、DRAM等)であってもよい。また、バッテリ35の機能範囲の制御の例として、機能範囲制御部3は、バッテリ35の最大出力電流を設定してもよい。この場合、バッテリ35は、駆動ユニット40に対して使用可能な最大電流を通知してもよい。駆動ユニット40の制御装置42は、通知された範囲でモータ出力を調整することができる。バッテリ35が、使用可能最大電流を低く制限することで、駆動ユニット40のモータ出力が抑制される。この例では、例えば、バッテリ35が保持する個体識別情報と自転車10に搭載された他の電装部品の個体識別情報の組み合わせが、認証済みの個体識別情報と不一致である判断されると、バッテリ35の出力が抑制される。その結果、駆動ユニット40の機能が制限される。
【0090】
上記例のように、バッテリ35は、認証部2及び機能範囲制御部3を有してもよい。バッテリ25は、出力電力を制御する電池制御部を備えてもよい。機能範囲制御部3は、電池制御部の機能範囲を制御することができる。一例として、バッテリ35は、1以上のセルと、セルの電圧及び温度に応じてセルの電力の入出力を制御する電池管理システム(BMS)とを備えてもよい。この場合、電池制御部は、BMSに含まれてもよい。認証部2及び機能範囲制御部3は、BMSに含まれてもよいし、BMSと接続されたコンピュータ又は回路で構成されてもよい。
【0091】
なお、複数の電装部品における、記憶部1、認証部2、及び機能範囲制御部3の配置は、上記例に限られない。記憶部1、認証部2、及び機能範囲制御部3のぞれぞれは、車両固定電装部品又は脱着可能電装部品の少なくとも一方に設けることができる。
【0092】
図7は、機能範囲制御部3による機能範囲の制御の例を示す図である。
図7の例に示すように、駆動ユニット40の機能の範囲として、例えば、使用可能な走行モード、モータ41によるペダリングアシストの範囲、又は、押し歩きアシストの有無の少なくとも1つが制御されてもよい。また、表示ユニット36の機能の範囲として、自転車の状態に関する表示項目が制御されてもよい。外部機器への給電機能は、電装部品に設けられた、外部機器の電源線を接続可能な接続ポートから、接続ポートに接続された外部機器へ電力を供給する機能である。例えば、表示ユニット36、駆動ユニット40又は、バッテリ35に接続ポートが設けられる。接続ポートを介した外部機器への給電の有無又は、給電量が、機能範囲制御部3によって制御されてもよい。無線機能は、電装部品と外部機器との無線通信の機能である。例えば、バッテリ35、表示ユニット36又は駆動ユニット40と、外部機器との無線通信の可否又は通信性能が、機能範囲制御部3によって制御されてもよい。このように、自転車10に搭載される複数の電装部品によって実現される複数の自転車10の機能の範囲が、複数の電装部品の組み合わせが認証済みか否かによって、異なるように制御される。なお、機能範囲制御部3による機能範囲の制御も上記例に限られない。
【0093】
<車載システムの動作例:認証設定>
図8は、
図2に示す車載システム100の認証設定部4の動作例を示すフローチャートである。
図8の例では、認証設定部4は、ユーザによる認証設定のための所定の操作が検出された場合(S41でYES)に、認証設定の処理を開始する。認証設定部4は、認証済み電装部品の個体識別情報を記憶部1から読み出す(S42)。また、認証設定部4は、自転車10に搭載された電装部品に個体識別情報を要求し(S43)、電装部品から個体識別情報を受信する(S44)。
【0094】
認証設定部4は、認証済み電装部品の個体識別情報が記憶部1に記録されているか否かを判断する(S45)。すなわち、認証設定部4は、認証済み電装部品の個体識別情報が、すでに設定されているか否かを判断する。S45でNO、すなわち未設定の場合、認証設定部4は、その時に搭載されている電装部品の個体識別情報を、認証済み電装部品の個体識別情報として記憶部1に記録する(S50)。すなわち、認証設定部4は、S44で受信した個体識別情報を、認証済み電装部品の個体識別情報として記憶部1に記録する。これにより、例えば、自転車10が、出荷後の初期状態である場合、又は、認証情報が削除(リセット)されて初期状態に戻った場合等に、ユーザの所定の操作で、搭載中の電装部品を認証済み電装部品として設定することが可能になる。
【0095】
S45でYES(設定済み)の場合、認証設定部4は、S44で受信した搭載された電装部品の個体識別情報と、認証済み電装部品の個体識別情報が合致するか否か(合致又は不一致)を判断する(S46)。すなわち、搭載された電装部品の組み合わせが、認証済みの組み合わせか否かが判断される。S46でYES(合致)と判断された場合、認証設定部4は、認証設定の編集操作をユーザから受け付ける(S47)。
【0096】
例えば、認証設定部4は、表示ユニット36に、編集操作を受け付ける画面を表示させる。認証設定部4は、編集操作として、例えば、すでに設定されている認証済み電装部品の個体識別情報を削除、すなわち、認証情報をリセットする操作を受け付けることができる。
【0097】
また、認証設定部4は、新たな電装部品の認証の追加の許可/不許可の設定をユーザから受け付けることができる。追加許可を設定する操作がユーザから入力された場合、認証設定部4は、認証設定の状態を、追加許可の状態にする。例えば、認証設定部4は、記憶部1に、追加許可状態であることを示す情報を記録する。追加の不許可を設定する操作がユーザから入力された場合、認証設定部4は、認証設定の状態を、追加不許可の状態にする。例えば、認証設定部4は、記憶部1に、追加不許可状態であることを示す情報を記録する。
【0098】
S46でNO(不一致)と判断された場合、認証設定部4は、新たな電装部品の認証の追加の許可/不許可を表す情報(追加許可情報)を記憶部1から読み出す(S48)。追加許可情報が、追加許可を示す場合(S49でYES)、認証設定部4は、その時に搭載されている電装部品の個体識別情報を、認証済み電装部品の個体識別情報として記憶部1に記録する(S50)。追加許可情報が、追加不許可を示す場合(S49でNO)、認証設定部4は、新たな電装部品の個体識別情報を、認証済み電装部品の個体識別情報として記憶部1に記録しない。これにより、ユーザが、認証済みの電装部品の組み合わせが搭載されている状態で、追加許可操作をすることを条件として、追加の電装部品の認証ができるようになる。
【0099】
図9は、
図8に示す処理における条件と認証処理との関係を示す図である。
図9では、認証済み電装部品、搭載された電装部品、及び追加許可情報の状態と、各状態における機能範囲制御及び認証設定処理が示される。
図9の例では、既に認証済み電装部品が設定されており(有)、搭載された電装部品が認証済みである場合は、追加許可情報に関わらず、認証設定の編集が可能になる。搭載された電装部品が、認証済み電装部品と不一致の場合、追加許可情報が、許可でなければ、新たな電装部品の認証設定はできない(無効)。認証済み電装部品がない(未設定)の場合は、追加許可情報に関わらず、新たな電装部品の認証設定が可能である。
【0100】
図8に示す処理により、自転車10が初期状態でない場合は、新たな電装部品の認証の設定が制限される。すなわち、初期状態でなければ、新たに認証済み電装部品の個体識別情報を記録するための条件が課されることになる。上記例では、この条件は、自転車10に搭載された電装部品の個体識別情報の組み合わせ、及び、記憶部1における認証済み電装部品の個体識別情報の記録状況について条件である。このように、新たな電装部品の認証に条件、すなわち制限が課されることで、盗難された電装部品を認証済みとして設定すること、及び、盗難された自転車への電装部品の認証設定が容易ではなくなる。そのため、盗難の抑制効果がより高くなる。
【0101】
なお、認証設定部4の動作は、上記例に限れられない。例えば、新たな認証設定の条件は、
図8及び
図9に示す条件と異なってもよい。また、認証設定部4は、複数の電装部品のうち少なくとも1つに設けられる。認証設定部4は、車両固定電装部品に設けられてもよいし、脱着可能電装部品に設けられてもよい。追加許可情報が記録される記憶装置は、認証済み電装部品の個体識別情報が記録される記憶部1と同じでもよいし、異なってもよい。上記の認証設定部4の構成によれば、電装部品の認証をユーザ操作により設定するために、外部の機器(例えば、認証サーバ等)とネットワークを介して通信しなくてもよい。そのため、ネットワーク通信に頼らず、ユーザ操作による電装部品の認証設定が可能になる。
【0102】
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、
図1において、認証設定部4は、省略されてもよい。この場合、ユーザ操作により、新たな電装部品の認証設定することができない。この場合は、電装部品の認証設定は、例えば、専用の機器(専用のアプリケーションがインストールされ、専用のインタフェースを有するコンピュータ)を用いて、業者が行ってもよい。
【0103】
車載システムを構成する電装部品となり得る電装部品は、上記の駆動ユニット、バッテリ、表示ユイット、操作ユニット、及び、前照灯に限られない。例えば、トルクセンサ、車速センサ等の車載センサ、その他の自転車10に取り付けられる電子デバイスが、電装部品となり得る。
【0104】
本発明は、電動アシスト自転車以外の自転車の車載システムにも適用可能である。例えば、駆動ユニット(モータ)を有さない自転車の車載システムにも、本発明を適用できる。
【0105】
本発明は、盗難抑制を目的とした車載システム及び電装部品に限られない。例えば、自転車又は部品のレンタルサービスにおいて、不正な使用を抑制、又は、使用範囲を制御するための車載システム又は電装部品に、本発明が適用されてもよい。
【0106】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1:記憶部、2:認証部、3:機能範囲制御部、4:認証設定部、10:自転車、35:バッテリ、36:表示ユニット、37:前照灯、40:駆動ユニット