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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20241127BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241127BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20241127BHJP
【FI】
H01M50/536
B23K26/21 G
B23K26/70
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022076077
(22)【出願日】2022-05-02
(65)【公開番号】P2023165251
(43)【公開日】2023-11-15
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】山下 竜
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/152080(WO,A1)
【文献】特開2012-213789(JP,A)
【文献】国際公開第01/031719(WO,A1)
【文献】特開平07-068397(JP,A)
【文献】特開2007-175721(JP,A)
【文献】特開2019-067569(JP,A)
【文献】特開2016-018756(JP,A)
【文献】特開2007-111773(JP,A)
【文献】特開平06-304777(JP,A)
【文献】特開2019-141861(JP,A)
【文献】特開2020-263276(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-598
H01M 10/04-39
H01M 4/02-62
H01G 13/00
H01G 11/84-86
B23K 26/20-70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電箔を有する正極と、
集電箔を有する負極と、
前記正極および負極の集電箔の一部とそれぞれ溶接された正極集電体および負極集電体と、
を備える電池の製造方法であって、
前記正負極の少なくとも一方の極において、前記集電箔と前記集電体とを相互に重ね合わせてレーザー溶接することを包含し、
前記レーザー溶接は、基体と該基体に設けられたレーザー透過プレートとを備える溶接治具を前記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に配置し、
前記基体は、筒状の周壁部を備え、前記レーザー透過プレートは、該筒状周壁部の内側に設けられており、
前記溶接治具は、前記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に配置された際に、前記周壁部と前記レーザー透過プレートとに包囲された密閉可能な内部空間が形成されるように構成されており、
前記溶接治具は、前記内部空間からガスを吸引可能な吸引機構および前記内部空間にガスを供給可能なガス供給機構にそれぞれ接続されており、
レーザー光が前記溶接治具のレーザー透過プレートを通過して前記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に到達するようにして前記レーザー溶接を行い、
前記レーザー溶接時及び/又は該レーザー溶接後、前記吸引機構による前記内部空間からスパッタを除去するためのガス吸引処理を実施し、
前記レーザー溶接時、前記ガス供給機構により前記内部空間にガスの供給するためのガス供給処理を実施し、
ここで、前記ガス供給処理では、前記レーザー透過プレートの裏面に向けて前記ガスが吹き付けられる、電池の製造方法。
【請求項2】
前記レーザー透過プレートの厚みが10mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記レーザー透過プレートの表面に、前記レーザー光を透過する反射防止膜を備える請求項1に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池の用途は益々拡大しており、特に、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
上述した電池は、例えば、集電箔をそれぞれ有する正極および負極と、該集電箔を介して正極あるいは負極と電気的に接続された集電体と、を有している。集電箔と集電体とを接合するためには、一般的にはレーザー光(以下、単にレーザーという。)を用いたレーザー溶接が行われる。かかる溶接を行った際、高温の溶融金属が微粒子として発生し、飛散することがある。これらの金属の微粒子はスパッタと呼ばれるものである。かかるスパッタが飛散し、電極体等に付着したまま放置した場合、電池使用時の振動等によって該スパッタが電極体内部に侵入することで、内部短絡が生じる虞がある。ここで、特許文献1では、レーザーを照射するための貫通孔を備えた溶接用治具を用いたレーザー溶接方法が開示されている。また、同様の従来技術として、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-67570号公報
【文献】特開2019-61949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に開示されている溶接用治具を用いたレーザー溶接では、上記貫通孔を通過してレーザー光が集電箔と集電体との重ね合わせ部分(溶接する部分)に照射される。そのため、上記溶接治具の貫通孔からレーザー溶接時に発生したスパッタが上方に飛散する虞がある。かかる上方に飛散したスパッタは、レーザー溶接部分の周囲に広範囲に付着し、不測の影響を及ぼしかねないため、問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、レーザー溶接時に発生するスパッタに関する上記問題を解決するべく、ここで開示される技術は、スパッタの広範囲への飛散を抑制し得るレーザー溶接方法を提供する。また、かかるスパッタの広範囲への飛散を抑制し得るレーザー溶接用治具を提供する。そしてまた、かかる溶接用治具を用いてスパッタの広範囲への飛散を抑制し得るレーザー溶接を伴う、電池の製造方法を提供する。
【0007】
ここに開示される製造方法は、集電箔を有する正極と、集電箔を有する負極と、上記正極および負極の集電箔の一部とそれぞれ溶接された正極集電体および負極集電体と、を備える電池の製造方法である。そして、上記正負極の少なくとも一方の極において、上記集電箔と前記集電体とを相互に重ね合わせてレーザー溶接することを包含する。ここで、上記レーザー溶接は、基体と該基体に設けられたレーザー透過プレートとを備える溶接治具を上記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に配置し、レーザー光が上記溶接治具のレーザー透過プレートを通過して上記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に到達するようにして行う。
【0008】
かかる製造方法によると、レーザー溶接時に発生したスパッタの上方への飛散をレーザー透過プレートにより防止することができる。これにより、集電箔と集電体との溶接部の周囲に広範囲にスパッタが飛び散るのを抑止することができる。
【0009】
ここに開示される電池の製造方法の好ましい一態様では、上記基体は、筒状の周壁部を備え、上記レーザー透過プレートは、該筒状周壁部の内側に設けられており、上記溶接治具は、上記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に配置された際に、上記周壁部と前記レーザー透過プレートとに包囲された密閉可能な内部空間が形成されるように構成されている。
【0010】
かかる態様の製造方法では、上記構成の溶接治具を用いてレーザー溶接を行うことにより、溶接時に発生するスパッタを上記内部空間に閉じ込めることができる。このため、より確実に集電箔と集電体との溶接部分の周囲にスパッタが飛び散って付着するのを防止することができる。
【0011】
ここに開示される電池の製造方法の好ましい一態様では、上記溶接治具は、上記内部空間からガスを吸引可能な吸引機構に接続されており、上記レーザー溶接時及び/又は該レーザー溶接後、上記吸引機構による上記内部空間からスパッタを除去するためのガス吸引処理を実施する。
【0012】
かかる態様の製造方法では、上記ガス吸引処理によって上記密閉可能な内部空間からガスとともにスパッタを吸引、回収することができる。したがって、レーザー溶接時に発生するスパッタを集電箔と集電体との溶接部分の周囲からスパッタ効率的に回収、除去することができる。
【0013】
ここに開示される電池の製造方法の好ましい一態様では、上記溶接治具は、上記内部空間にガスを供給可能なガス供給機構に接続されており、上記レーザー溶接時、上記ガス供給機構により上記内部空間にガスの供給するためのガス供給処理を実施する。
かかる構成によると、レーザー溶接時のガス供給により、集電箔と集電体との溶接部分の周囲にスパッタが付着することを効果的に防止することができる。
【0014】
ここに開示される電池の製造方法の好ましい一態様では、上記レーザー透過プレートの厚みが10mm以下である。かかる構成によると、レーザー透過率の低下を抑制することができる。
【0015】
ここに開示される電池の製造方法の好ましい一態様では、上記レーザー透過プレートの表面に前記レーザーを透過する反射防止膜を備える。
かかる構成によると、上記レーザー透過プレートの表面でのレーザー反射率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ここで開示される電池の製造方法によって製造され得る二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図2】ここで開示される電池の製造方法によって構築され得る電池の電極体を模式的に示す分解図である。
図3】ここで開示される電池の製造方法を模式的に示す工程図である。
図4】第1の実施形態に係る集電箔と集電体とのレーザー溶接を説明する模式図である。
図5】第2の実施形態に係る集電箔と集電体とのレーザー溶接を説明する模式図である。
図6】第3の実施形態に係る集電箔と集電体とのレーザー溶接を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であってここで開示される技術を実施するのに必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に記載されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書に添付される図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0018】
本明細書において、「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。
また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0019】
以下、ここで開示される電池の製造方法によって得られる電池の一例としての二次電池について説明する。
図1は、一実施形態に係る製造方法により得られる電池の一例としての二次電池(具体的にはリチウムイオン二次電池)を模式的に示す縦断面図である。図2は、かかる二次電池の電極体を模式的に示す分解図である。
【0020】
図1は、一実施形態に係る製造方法によって得られる電池100の内部構造を模式的に示す縦断面図である。電池100は、電池ケース30の電池ケース本体31内部に、扁平形状の電極体20と、非水電解質(図示せず)とを収容し、次いで電池ケース本体31の開口部を蓋体32で塞いで封止することで構築される角形の密閉型電池である。ここでは、電池100はリチウムイオン二次電池である。電池ケース30(ここでは蓋体32)には、外部接続用の正極端子42および負極端子44が備えられている。また、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が蓋体32に設けられている。さらに、電池ケース30の蓋体32には、非水電解質を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。電池ケース30の電池ケース本体31および蓋体32の材質は、高強度であり軽量で熱伝導性が良い金属材料であることが好ましい。このような金属材料として、例えば、アルミニウムやスチール(鋼材)等が挙げられる。
【0021】
図2は、一実施形態に係る製造方法によって得られる電池100の電極体20を模式的に示す分解図である。図2に示されるように、電極体20は、長尺シート状の正極50と、長尺シート状の負極60とが、2枚の長尺シート状のセパレータ70を介して積層され、長手方向に捲回された捲回電極体である。
正極50は、正極集電箔52と、該正極集電箔52の両面の長手側方向に形成された正極活物質層54とを備えている。正極集電箔52の捲回軸方向(即ち、上記長手側方向に直交するシート幅方向)の片側の縁部には、該縁部に沿って帯状に正極活物質層54が形成されずに正極集電箔52が露出した部分(即ち、正極集電箔露出部52a)が設けられている。負極60は、負極集電箔62と、該負極集電箔62の片面または両面(ここでは両面)の長手側方向に形成された負極活物質層64とを備えている。負極集電箔62の捲回軸方向の片側の反対側の縁部には、該縁部に沿って帯状に負極活物質層64が形成されずに負極集電箔62が露出した部分(即ち、負極集電箔露出部62a)が設けられている。正極集電箔露出部52aには正極集電体42aが接合されており、負極集電箔露出部62aには負極集電体44aが接合されている(図1参照)。正極集電体42aは、外部接続用の正極端子42と電気的に接続されており、電池ケース30の内部と外部との導通を実現している。同様に、負極集電体44aは、外部接続用の負極端子44と電気的に接続されており、電池ケース30の内部と外部との導通を実現している(図1参照)。なお、正極端子42と正極集電体42aとの間または負極端子44と負極集電体44aとの間に、電流遮断機構(CID)を設置してもよい。
【0022】
正極50を構成する正極集電箔52としては、例えば、アルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54は正極活物質を含む。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよく、例えば層状構造、スピネル構造、オリビン構造等を有するリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。また、正極活物質層54は、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
正極活物質層54は、正極活物質と、必要に応じて用いられる材料(導電材、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電箔52の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
【0023】
負極60を構成する負極集電箔62としては、例えば、銅箔等が挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。また、負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等をさらに含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
負極活物質層64は、例えば、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電箔62の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
【0024】
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0025】
非水電解質は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、例えば、有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。あるいは、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)のようなフッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒を好ましく用いることができる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。
なお、上記非水電解質は、本技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0026】
<電池製造方法の概要>
ここで開示される電池の製造方法について、図3を参照しつつ説明する。図3は、一実施形態にかかる電池の製造方法を模式的に示す工程図である。
即ち、ここで開示される電池の製造方法は、大まかにいって、電極体構築工程S10、集電体取付工程S20、電極体収容工程S30、および封止工程S40を含む。
【0027】
<電極体構築工程>
電極体構築工程S10は、電池の発電要素である正負極及びセパレータを含む電極体を構築する工程である。電極体(ここでは捲回電極体)の構築方法は従来と同様でよく、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0028】
<集電体取付工程>
集電体取付工程S20は、上記電極体構築工程S10で構築された電極体の正負極集電箔の露出部分にそれぞれ同極の集電体を重ね合わせ、ここで開示される溶接治具を用いてレーザー溶接する工程である。詳しくは後述する。
【0029】
<電極体収容工程>
電極体収容工程S30は、上記集電体取付工程S20において正負極集電体がレーザー溶接された電極体を電池ケース本体(外装体)に収容する工程である。かかる電極体収容工程は、この種の密閉型電池の製造プロセスで採用される工程と同様でよく、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0030】
<封止工程>
封止工程S40は、上記電極体収容工程S30において電極体が収容された電池ケース本体31の開口部に蓋体32を被せ、これらの境界部分(即ち電池ケース本体31の開口部周縁と蓋体32の外周縁部)を相互にレーザー溶接して封止する工程である。かかる封止工程は、この種の密閉型電池の製造プロセスで採用される工程と同様でよく、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0031】
以下、ここで開示される溶接治具を用いてレーザー溶接することを含む集電体取付工程S20について詳細に説明する。ここでは負極側を例に挙げて、本開示における集電体取付工程S20の実施形態について説明する。なお、正極側については同様の実施形態をとり得るため、説明を省略する。
【0032】
<第1の実施形態>
図4は、第1の実施形態に係る集電箔と集電体とのレーザー溶接を説明する模式図である。まず、図4に示すように、電極体20と溶接治具200を用意する。電極体20のうち、負極集電箔62と負極集電体44aを重ね合わせる。そして、重ね合わせた負極集電箔62または負極集電体44aの表面のうち、レーザー光Lを照射しようとする箇所(溶接部80)を覆うように溶接治具200を配置する。
【0033】
電極体20は、例えば、正極50と、負極60と、セパレータ70とを準備し、従来公知の手順で作成したものでよい。
【0034】
ここで、本実施形態に係る溶接治具200について説明する。溶接治具200は、電極体20の積層方向に対し、上方向に立ち上がるように構成された筒状の周壁部(基体)210と該周壁部の内面にレーザー透過プレート220を備える。かかる構成により、周壁部210とレーザー透過プレート220とに包囲された内部空間200aが形成される。
【0035】
周壁部210の形状、及び径などは、溶接部80を周壁部210の範囲内に収めることができれば、特に限定されず、目的に応じて好適に変更可能である。例えば、周壁部210を狭くした場合、スパッタの広範囲への飛散をより抑制することが可能である。また、例えば、周壁部210を広域にした場合、複数箇所のレーザー溶接を行う際に、溶接治具200を設置し直すことなく、レーザー溶接を行うことができる。なお、広域とは、例えば、複数の溶接部80を収める範囲等が挙げられるが、あくまで一例に過ぎない。また、周壁部210の形状は、特に限定されず、例えば、略四角筒状、略円筒状、略楕円筒状等に変更され得る。
【0036】
周壁部210は、例えばセラミック製のような断熱性の高い材料によって構成され得る。かかる素材からなる周壁部210は、レーザー光Lの熱を内部空間200aで保持する作用を持つ。従って、熱エネルギー分散による効率低下を抑えつつ、レーザー溶接を行うことができる。
【0037】
また、周壁部210は、例えば、内部にスパッタ付着防止加工が施され得る。かかるスパッタ付着防止加工は、従来公知の方法で施してよい。かかる加工により、周壁部210に付着したスパッタを除去しやすくなるため、溶接治具200の清掃が簡便化される。
なお、基体はレーザー透過プレート220を支持できる限り、上記筒状の周壁部210に限定されない。例えば、レーザー透過プレート220を支持する耐熱性無機材料からなる枠材(枠状の骨格)と、該枠材を包囲する耐熱性のジャケット(カバー材)とを備える基体であってもよい。
【0038】
レーザー透過プレート220は、例えば、レーザー光Lを透過できる材料によって構成され得る。レーザー透過プレート220における波長900nm~1200nm(例えば、1070nm)の光線透過率は、例えば70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、100%に近いほどよい。レーザー透過プレート220の光線透過率は、例えば、市販の分光光度計を用いて測定することができる。
【0039】
レーザー透過プレート220は、例えば、スパッタの熱によって損傷されない材料、すなわち、溶接部80を形成する集電箔(正極集電箔52または負極集電箔62)および集電体(正極集電体42aまたは負極集電体44a)の融点より高い材料によって構成され得る。例えば、溶接部80を形成する負極集電箔62および負極集電体44aの材質が銅あるいは銅合金である場合は、レーザー透過プレート220は、1200℃以上の融点を有することが好ましい。
【0040】
レーザー透過プレート220は、例えば、無機材料である。なかでも、レーザー透過プレート220として、例えば、結晶化ガラス(約800℃)、石英ガラス(約900℃)、フッ化バリウムガラス(約1200℃)、フッ化カルシウムガラス(約1400℃)、およびサファイヤガラス(約2000℃)が好適例として挙げられる。なお、各材料名に併記された括弧内の温度は、各材料の融点を示している。
【0041】
レーザー透過プレート220の厚さは、例えば、おおよそ10mm以下であり得る。かかる厚さのレーザー透過プレートは、レーザー透過率の低下を抑制し、好適にレーザー溶接を行うことができる。
【0042】
レーザー透過プレート220は、例えば、表面に反射防止膜221を備え得る。かかる構成により、レーザー透過プレート220の表面における光の反射を低減することができる。即ち、レーザー光Lの反射を抑え、より好適に照射を行うことにより、レーザー溶接の効率化が実現される。
【0043】
図4に示されるレーザー透過プレート220は、例えば、周壁部210から取り外し可能となっている。これによって、レーザー透過プレートの裏面222にスパッタが付着した場合も、レーザー透過プレート220を取り外すことで、交換作業またはスパッタ除去作業が容易になる。
【0044】
レーザー光Lの種類、照射径、出力等は、例えば、集電箔と集電体の材質、積層数などによって適宜選択され得る。レーザー光Lの例は、例えば、COレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、ディスクレーザー等が挙げられる。
【0045】
特に限定するものではないが、例えば、レーザー溶接時に、負極集電箔62と負極集電体44aを積層方向に加圧することができる。かかる加圧手段は、特に限定されない。例えば、溶接治具200を用いてもよいし、任意の治具等を使用してもよい。
【0046】
以上に述べた通り、この製造方法では、負極集電箔62と負極集電体44aを相互に重ね合わせる。そして、基体(周壁部210)とレーザー透過プレート220を備える溶接治具200を、上記相互に重ね合わせた負極集電箔62または負極集電体44aの表面に配置する。そして、レーザー光Lが上記溶接治具200のレーザー透過プレート220を通過して上記相互に重ね合わせた負極集電箔62または負極集電体44aのいずれか一方の表面に到達するようにして行う。これによって、レーザー溶接時に発生したスパッタの上方への飛散をレーザー透過プレート220により防止することができる。即ち、負極集電箔62と負極集電体44aとの溶接部80の周囲に広範囲にスパッタが飛び散るのを抑止することができる。
【0047】
また、図4に示すように、第1の実施形態では、基体は、筒状の周壁部210を備え、上記レーザー透過プレート220は、該筒状周壁部210の内側に設けられており、上記溶接治具200は、上記相互に重ね合わせた負極集電箔62または負極集電体44aのいずれか一方の表面に配置された際に、上記周壁部210と前記レーザー透過プレート220とに包囲された密閉可能な内部空間200aが形成されるように構成されている。そのため、溶接で発生するスパッタを内部空間200aに閉じ込めることができる。即ち、より確実に負極集電箔62と負極集電体44aとの溶接部80の周囲にスパッタが飛び散って付着するのを防止することができる。
【0048】
この製造方法では、レーザー透過プレート220の厚みは10mm以下である。かかる厚みによって、レーザー透過プレート220の光吸収及び、レーザー透過率の減衰を抑制する。従って、より効率的なレーザー溶接を実現する。
【0049】
この製造方法では、レーザー透過プレート220の表面に反射防止膜221を備える。反射防止膜221は、レーザー透過プレート220の表面におけるレーザー光Lの反射を抑える。従って、より効率的なレーザー溶接を実現する。
【0050】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る集電箔と集電体とのレーザー溶接を説明する模式図である。この実施形態では、溶接治具200は、吸引機構230、ガス供給機構240と接続される。
【0051】
ここで、本実施形態に係る吸引機構230について説明する。吸引機構230は、ここでは、吸引口231と吸引装置232とが、吸引ホース233を介して接続され、内部空間200aからガスを吸引可能なように構成される。さらに吸引ホース233には、吸引バルブ234が接続される。図では省略するが、吸引バルブ234は、手動あるいは制御装置によって、開閉及び吸引力がコントロールされている。なお、吸引機構230による吸引は、例えば、レーザー光Lを照射中でもよいし、レーザー光Lの照射後であってもよい。
【0052】
吸引口231の端部の方向は、特に制限されないが、たとえば、溶接部80の表面に向かって配置される。かかる構成によると、溶接部80において発生したスパッタを適切に回収する。
【0053】
次に、本実施形態に係るガス供給機構240について説明する。ガス供給機構240は、ここでは、ガス供給口241とガス供給装置242とが、ガス供給ホース243を介して接続され、内部空間200aにガスを供給可能なように構成される。さらにガス供給ホース243には、ガス供給バルブ244が接続される。図では省略するが、ガス供給バルブ244は、手動あるいは制御装置によって、開閉及びガス流量がコントロールされる。ガス供給機構240によるガス供給は、例えば、レーザー光Lの照射中にあり得る。
【0054】
ガス供給機構240にて供給されるガスは、例えば、不活性ガスであり、好適には、窒素があり得る。ガス供給機構240より供給されるガスの流量は、溶接治具200の形状や、レーザー溶接の条件によって適宜変更され得る。また、ガス供給口241からのガスの吹き付け方向は、特に制限されないが、ここでは、レーザー透過プレートの裏面222に向けて吹き付けられる。これにより、レーザー光Lの照射によって溶接部80において発生したスパッタから、レーザー透過プレートの裏面222を保護する。つまり、レーザー透過プレートの裏面222にスパッタが付着することを防ぎ、レーザー透過プレート220の交換頻度が減ることにより、レーザー溶接が効率よく行われる。
【0055】
この製造方法では、溶接治具200は、内部空間200aからガスを吸引可能な吸引機構230と接続される。そして、レーザー溶接時及び/又は該レーザー溶接後、吸引機構230による内部空間200aからスパッタを除去するためのガス吸引処理を実施する。これにより、レーザー溶接時に発生するスパッタを負極集電箔62と負極集電体44aとの溶接部分の周囲からスパッタ効率的に回収、除去することができる。
【0056】
この製造方法では、溶接治具200は、内部空間200aにガスを供給可能なガス供給機構240に接続される。そして、レーザー溶接時、ガス供給口241から、内部空間200aにガスが供給される。かかるガスの供給により、負極集電箔62と負極集電体44aとの溶接部分の周囲にスパッタが付着することを効率的に防止することができる。
【0057】
なお、吸引機構230およびガス供給機構240は、必ずしも同時に備える必要はなく、例えば、溶接治具200は、吸引機構230またはガス供給機構240のうちいずれかを備え得る。
【0058】
<第3の実施形態>
例えば、上述した第1の実施形態および第2の実施形態では、周壁部210を伸長することで内部空間200aを確保していた。しかし、内部空間200aを確保する手段はこれに制限されない。図6は、第3の実施形態に係る集電箔と集電体とのレーザー溶接を説明する模式図である。ここでは、負極集電箔62と負極集電体44aは、あらかじめ、負極集電箔62と負極集電体44aを束ねて印加されることで凹部90を形成される。凹部90の形成方法は、特に限定されない。かかる凹部90が形成されることによって、内部空間200aを確保する。
【0059】
図示は省略するが、ここで開示されるすべての実施形態では、正極側でも同様の溶接を行うことができる。図示は省略するが、ここでは、正極集電箔52と正極集電体42aを溶接する。正極側において、レーザー溶接を実施する場合、たとえば、溶接部80を形成する正極集電箔52および正極集電体42aの材質がアルミニウムあるいはアルミニウム合金である場合は、レーザー透過プレート220は、800℃以上の融点を有することが好ましい。
【0060】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:集電箔を有する正極と、集電箔を有する負極と、上記正極および負極の集電箔の一部とそれぞれ溶接された正極集電体および負極集電体と、を備える電池の製造方法であって、上記正負極の少なくとも一方の極において、上記集電箔と上記集電体とを相互に重ね合わせてレーザー溶接することを包含し、上記レーザー溶接は、基体と該基体に設けられたレーザー透過プレートとを備える溶接治具を上記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に配置し、レーザー光が上記溶接治具のレーザー透過プレートを通過して上記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に到達するようにして上記レーザー溶接を行う、電池の製造方法。
項2:上記基体は、筒状の周壁部を備え、上記レーザー透過プレートは、該筒状周壁部の内側に設けられており、上記溶接治具は、上記相互に重ね合わせた集電体または集電箔のいずれか一方の表面に配置された際に、上記周壁部と上記レーザー透過プレートとに包囲された密閉可能な内部空間が形成されるように構成されている、項1に記載の製造方法。
項3:上記溶接治具は、上記内部空間からガスを吸引可能な吸引機構に接続されており、上記レーザー溶接時及び/又は該レーザー溶接後、上記吸引機構による上記内部空間からスパッタを除去するためのガス吸引処理を実施する、項2に記載の製造方法。
項4:上記溶接治具は、上記内部空間にガスを供給可能なガス供給機構に接続されており、上記レーザー溶接時、上記ガス供給機構により上記内部空間にガスの供給するためのガス供給処理を実施する、項3に記載の製造方法。
項5:上記レーザー透過プレートの厚みが10mm以下である、項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6:上記レーザー透過プレートの表面に、上記レーザー光を透過する反射防止膜を備える項1~5のいずれか一項に記載の電池の製造方法。
【0061】
以上、ここで開示される電池の製造方法について説明したが、これらは例示に過ぎず、特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態は本開示を限定しない。また、特許請求の範囲に記載の技術には、異常に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0062】
20 電極体
30 電池ケース
31 ケース本体
32 蓋体
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電体
44 負極端子
44a 負極集電体
50 正極
52 正極集電箔
52a 正極集電箔露出部
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電箔
62a 負極集電箔露出部
64 負極活物質層
70 セパレータ
80 溶接部
90 凹部
100 電池
200 溶接治具
200a 内部空間
210 周壁部(基体)
220 レーザー透過プレート
221 反射防止膜
222 レーザー透過プレートの裏面
230 吸引機構
231 吸引口
232 吸引装置
233 吸引ホース
234 吸引バルブ
240 ガス供給機構
241 ガス供給口
242 ガス供給装置
243 ガス供給ホース
244 ガス供給バルブ
L レーザー光
S10 電極体構築工程
S20 集電体取付工程
S30 電極体収容工程
S40 封止工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6