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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ハイインパクトココア粉末
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/02 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A23G1/02
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129474
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2019570824の分割
【原出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2022172154
(43)【公開日】2022-11-15
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】17177464.9
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・クルイトフ
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント・ショット・ウイタカンプ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ピーター・ヒューバート・ヴァン・アイセル
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05009917(US,A)
【文献】特開平06-098681(JP,A)
【文献】特開2010-246539(JP,A)
【文献】特開2004-041010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ化ココア材料を生産する方法であって、
(a)ココア豆、ココアニブ、及びそれらの混合物から選択されるココア材料、アルカリ化剤、及び水を混合して、15~35重量%の全水分含量にするステップと、
(b)ステップ(a)で得られる混合物を5~12バールの圧力及び100~180℃の温度で10~500分間反応させるステップと、を含み、
ステップ(b)が250mL/分/kg-ココア材料~2000mL/分/kg-ココア材料の連続気流下で行われる、前記方法。
【請求項2】
前記アルカリ化剤が、水酸化カリウム、炭酸カリウム(カリ)、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及びそれらのうちの2つ以上の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ化剤が、前記ココア材料の1~10重量%の量で添加されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)で得られた前記アルカリ化ココア材料を加工して、ココア粉末にするステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)で生産された前記アルカリ化ココア材料からココアバターを回収するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2017年6月22日出願の欧州特許出願第17177464.9号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、アルカリ化ココア材料を生産する方法に関する。本発明は、この方法によって得ることができる材料、具体的には、ハイインパクトココア粉末、ならびにかかる材料を含む食料及び飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ココア豆の加工は、典型的には、例えば、発酵、皮剥き、及び焙煎を含む、1つ以上の標準ステップを含む。皮剥きされたココア豆は、ココアニブと呼ばれる。ニブが破砕されて、ココアリカーが生産され、次いで、ココアリカーがプレスされて、ココアバター及びココアケーキ(またはプレスケーキ)が生産され得る。その後、このケーキが粉砕されて、ココア粉末になり得る。ココア粉末の色及び風味は、アルカリ化(ココアニブをアルカリ化剤の存在下で加熱するプロセス)により調整され、結果としてアルカリ化または「ダッチ」ココア粉末が得られ得る。アルカリ化ココア粉末は、典型的には、それらの同等の非アルカリ化粉末よりも色が濃い。
【0004】
ココア粉末の色は、3つの座標(または値)を使用して粉末の色プロファイルを定義するハンター色座標スケールまたはCIE 1976(CIELAB)表色系を使用して表され得る。L座標は、明るさを表し、0(黒色)~100(白色)の間の値を想定し、a値は、赤色成分(a>0)を表し、b値は、黄色成分(b>0)を表す。非アルカリ化ココア粉末のL値は、典型的には、20以上であり、わずかにアルカリ化された粉末の場合、L値は、16~20に下がり、高度にアルカリ化された粉末の場合、L値は、13~16である傾向がある。アルカリ化プロセス及びその変形例は、米国特許第4,435,436号、同第4,784,866号、及び同第5,009,917号、ならびに欧州特許第2068641号に記載されている。
【0005】
米国特許第4,435,436号には、標準ココア粉末(pH=5.75)を水酸化カリウムと二重壁Z混練機内で混合し、7.3のpHが得られるまで水分を周期的に添加しながら混合物を約75℃で混練することによってアルカリ化ココア粉末を生産するためのプロセスが記載されている。結果として生じた粉末は、乾燥すると、9.0~14.0のL値、4.0~8.0のa値、及び2.0~6.0のb値を有する。
【0006】
米国特許第4,784,866号には、蒸発なし、1~3の大気圧(約1~3バール)下、及び110℃未満の温度での、密閉容器内でのアルカリ化による赤色ココア粉末の生産が記載されている。反応中(及び反応の少なくとも一部の間)、酸素含有ガスが反応容器内に導入される。実施例によれば、結果として生じたココア粉末は、25.83のL値、15.18のa値、及び10.95のb値を有する。
【0007】
米国特許第5,009,917号には、アルカリ化がココアプレスケーキに150~300°F(65~150℃)及び10~200psi(0.7~13.8バール)で5~180分間行われる、アルカリ化ココア粉末を生産するためのプロセスが記載されている。アルカリ化中、反応器が通気され、酸素含有ガスが反応器内に供給される。結果として生じたココア粉末は、15.5以下のL値及び1.6超のa/b値(赤さを表す)を有する。
【0008】
欧州特許第2068641号には、気流が最小限に抑えられ、蒸気がアルカリ化混合物中に本質的に添加されない、アルカリ化プロセスが記載されている。結果として生じたココア粉末は、16未満のL値、20超のC値、及び35~55のH値、ならびに7.0超のpHを有する。
【0009】
現在の商業需要は、幅広い色パレットのココア粉末を生産するココア粉末製造業者を必要としている。本業界において、望ましい色プロファイル及びアルカリ性の低いより望ましい風味プロファイルの両方を有するハイインパクトアルカリ化ココア粉末が依然として必要とされている。
【0010】
本発明の陳述
本発明の一態様では、アルカリ化ココア材料を生産する方法であって、(a)ココア材料とアルカリ化剤を混合するステップと、(b)ステップ(a)の混合物を最大12バールの圧力及び85~180℃の温度で10~500分間反応させるステップと、を含み、ステップ(b)が連続気流下で行われる、方法が提供される。好ましくは、ステップ(b)で得られたアルカリ化ココア材料がプレスされて、ココアバター及びココアケーキが生産され、次いで、ココアバター及びココアケーキが粉砕されて、ハイインパクトアルカリ化ココア粉末が生産され得る。
【0011】
本発明の別の態様では、上記の方法に従って得ることができるアルカリ化ココア粉末が提供される。アルカリ化ココア粉末は、有利には、12以下のL値及び7.5未満のpHを有し、a値は、好ましくは、2.0~7.0の範囲であり、b値は、好ましくは、1.0~7.0の範囲であろう。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、1000ppm未満の石鹸含量を有することを特徴とする、上記の方法に従って得ることができるココアバターが提供される。
【0013】
本発明のさらなる態様が、以下及び本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アルカリ化ココア材料を生産する方法であって、(a)ココア材料とアルカリ化剤を混合するステップと、(b)ステップ(a)の混合物を最大12バールの圧力及び85~180℃の温度で10~500分間反応させるステップと、を含み、ステップ(b)が連続気流下で行われる、方法を提供する。
【0015】
ステップ(a)で使用されるココア材料は、ココア豆、ココアニブ、またはそれらの混合物を含み得、好ましくはそれらから本質的になるであろう。使用前、豆またはニブは、発酵され得るか、滅菌され得るか、焙煎され得るか、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。好ましくは、ステップ(a)で使用されるココア材料は、滅菌も焙煎もされていないココア豆またはココアニブであろう。有利には、本発明の方法は、アルカリ化前にココア材料の粉砕、製粉、またはプレスを必要としない。したがって、典型的なアルカリ化方法とは異なり、粉砕、製粉、またはプレスは、好ましくは、ココアリカー/ココアケーキまたはココア粉末に行われない。
【0016】
ココア材料は、アルカリ化剤と混合される。ダッチココア粉末の生産における使用に好適なアルカリ化剤は、当業者に既知であろう。一例として、アルカリ化剤は、水酸化カリウム、炭酸カリウム(カリ)、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及びそれらのうちの2つ以上の混合物からなる群から選択され得る。理想的には、本発明の方法で使用されるアルカリ化剤は、カリであろう。添加されるアルカリ化剤の量は、達成される所望の効果(例えば、色及び風味)、及び使用される他の加工パラメータに依存するであろう。添加されるアルカリ化剤の量は、当業者によって容易に決定されるであろう。好ましくは、アルカリ化剤は、ココア材料の重量に基づいて、典型的には50重量%の溶液中に、1~10重量%、より好ましくは4~8重量%、より好ましくは5~7重量%の量で添加されるであろう。
【0017】
ある特定の量の水も、アルカリ化剤の前に、その後に、またはそれと同時に、のいずれかで、ステップ(a)の混合物に添加され得る。好ましくは、水が添加されて、35重量%未満、より好ましくは10~35重量%、より好ましくは15~30重量%または20~30重量%の全水分含量になるであろう。
【0018】
アルカリ化は、好ましくは、圧力反応容器または密閉反応容器内で行われる。アルカリ化は、最大12バールの圧力及び85℃超かつ最大約180℃の温度で行われる。好ましくは、アルカリ化は、5~10バールの圧力、より好ましくは5~7バールの圧力、より好ましくは約6バールの圧力で行われるであろう。ニブは、好ましくは90~180℃の範囲の温度に加熱されるであろう。好ましくは、ニブは、100~160℃、より好ましくは120~150℃の温度に加熱されるであろう。したがって、反応温度またはアルカリ化温度とは、ココア材料の目標温度を指し、安定した温度に達したときのココア材料の平均温度として測定される。ココア材料は、当業者が利用可能な任意の手段を使用して加熱され得る。例えば、ココア材料は、熱気または熱蒸気の反応器内への注入により、及び/または加熱された反応器壁等を用いた接触加熱により加熱され得る。ココア材料は、反応器内に導入される前に予熱されてもよく、初期温度に達せさせ、その後、維持されるか、または反応器内での加熱によって上昇する。
【0019】
典型的には、アルカリ化反応は、連続撹拌下で行われるであろう。アルカリ化反応は、連続気流下でも行われるであろう。「連続気流」とは、空気、または任意の他の好適なガス(例えば、酸素富化空気もしくは窒素)が、実質的に反応持続時間中(すなわち、アルカリ化剤を添加した時点から)、好ましくは実質的に一定の速度で、反応器に入ってそこから出ることができることを意味する。気流は、ココア材料1kg当たりのmL/分(mL/分/kg)で表されるであろう。理想的には、気流は、少なくとも50mL/分/kg、好ましくは100~4000mL/分/kg、より好ましくは250~2000mL/分/kg、より好ましくは500~1000mL/分/kgであろう。興味深いことに、特定の流速が最終製品の色に影響を及ぼし得ることが見出された。したがって、理論によって束縛されることを望むことなく、より遅い気流速度(特により遅いアルカリ化時間及びより低いアルカリ化温度と組み合わせられた場合)がより赤い/茶色い色をもたらす一方で、より速い流速がより黒い/灰色の色をもたらすと考えられる。正確な速度は、当業者によって適宜決定されるであろう。
【0020】
アルカリ化剤がココア材料に添加されるとすぐに始まるアルカリ化ステップは、所望のアルカリ化度を達成するのに必要な時間続けられるであろう。正確なアルカリ化時間は、当業者によって容易に決定されるであろう。正確なアルカリ化時間は、例えば、わずか10分間であり得るか、または最大500分間であり得る。好ましくは、正確なアルカリ化時間は、15~300分間、より好ましくは30~200分間、より好ましくは45~120分間、より好ましくは60~90分間であろう。アルカリ化が完了すると、反応が停止し得る(すなわち、気流が中断され、反応器が(大気圧に)減圧され、ココア材料が反応器から回収される)。
【0021】
本発明の方法は、1つ以上の追加のステップを含み得る。1つ以上の追加のステップは、ココア材料のアルカリ化前に、それと同時に、またはその後に行われ得、滅菌ステップ及び/または焙煎ステップを含み得る。
【0022】
滅菌は、好ましくは、ココア材料を、蒸気もしくは熱気で、または接触加熱により、例えば、最大1時間、好ましくは20~30分間、約100℃(すなわち、95~105℃)に加熱することによって達成されるであろう。好ましくは、ココア材料は、さらなる加工のために豆を十分に滅菌するために、すなわち、滅菌に関する最低製造基準を満たすために、可能な限り低い温度で本質的に十分な時間だけ加熱されるであろう。例えば、滅菌は、アルカリ化反応と同時に、アルカリ化反応の熱を使用して行われ得る。使用される場合、焙煎は、好ましくは、豆/ニブを、豆/ニブが乾燥するまで、すなわち、約60分間、100~125℃に加熱することによって行われるであろう。焙煎は、好ましくは、ステップ(b)の後に、すなわち、アルカリ化が完了した後に行われるであろう。
【0023】
豆がステップ(a)における出発材料として使用される場合、本方法は、殻が実質的に取り除かれるように殻剥きまたは皮剥きステップも含み得る。殻剥きプロセスが100%効率的ではなく、それ故に、少量の殻が商業的許容範囲内で残存し得ることは、当該技術分野で許容されている。豆は、破砕される及び/または吹き分けられる場合もある。豆の殻剥き、破砕、及び/または吹き分けは、好ましくは、アルカリ化前(すなわち、ステップ(a)の前)に起こるであろう。
【0024】
その後、本発明の方法によって得られたアルカリ化材料がさらに加工されて、所望の最終製品が得られ得る。アルカリ化材料は、例えば、ココアリカー、ココア粉末、またはココアバターから選択され得る。アルカリ化ニブが実際に破砕されて、ココアリカーが得られ得る。その後、ココアリカーがプレスされてココアバターを抽出し、実質的に脱脂されたココアケーキが残り得る。その後、ココアケーキが粉砕されて、ココア粉末が生産され得る。したがって、本明細書に記載の方法に従って得ることができるココアリカー、ココアバター、及びココア粉末も、本発明の一部である。
【0025】
ココア粉末は、当業者に既知の任意の種類のものであり得る。例えば、ココア粉末は、12重量%超、典型的には、約20~25重量%のココアバターを有する高脂肪ココア粉末、10~12重量%のココアバターを有する標準ココアバター、または10重量%未満のココアバターを有する低脂肪もしくは2重量%未満のココアバターを有する無脂肪ココアバターでそれぞれあり得る。脂肪含量にかかわらず、ココア粉末は、ハイインパクトココア粉末であろう。
【0026】
「ハイインパクト」という用語は、濃い色を有するココア粉末を指すために本明細書で使用される。ハイインパクトココア粉末は、単独で使用され得るか、または他のココア粉末と混合されて、調整された色プロファイル及び風味プロファイルを有する食料及び飲料製品が生産され得る。有利には、ハイインパクトココア粉末は、少量のみ使用して大量の標準ココア粉末と同じ色インパクトを達成することができるため、費用を削減するか、または利幅を増大させるためにも使用され得る。
【0027】
有利には、本発明のココア粉末は、非常に濃い色を示す12以下のL値を有するであろう。より好ましくは、L値は、9以下、より好ましくは7以下であろう。例えば、本発明のココア粉末は、1~6、好ましくは2~5、より好ましくは3~4のL値を有し得る。本発明のココア粉末は、有利には、2.0~7.0、好ましくは2.0~6.0、より好ましくは3.0~6.0、より好ましくは3.5~5.5のa値、及び1.0~7.0、好ましくは1.5~6.5、より好ましくは2.0~5.0のb値を有するであろう。本発明のココア粉末は、好ましくは、0.3~5.0、好ましくは0.5~3.0、より好ましくは0.7~2.0、より好ましくは0.8~1.7のa/b値を有するであろう。
【0028】
残念ながら、真のハイインパクトココア粉末を生産するために、典型的に必要とされるアルカリ化度により、高pH及び望ましくないアルカリ性の風味プロファイルがもたらされる。有利には、本発明の方法を用いて、はるかにより低いアルカリ度を有するハイインパクトココア粉末を生産することが可能である。したがって、本発明のココア粉末は、好ましくは、8.0未満、より好ましくは7.5未満、より好ましくは7.0未満、より好ましくは6.5未満のpHを有する。例えば、本発明のココア粉末は、3.0~6.0の範囲、より好ましくは4.0~5.0の範囲のpHを有し得る。
【0029】
さらなる利点として、本発明のココア粉末は、従来のアルカリ化ココア粉末またはハイインパクトココア粉末よりも低い、低い灰含量を有する。本発明のココア粉末は、好ましくは、14%FFDM未満、より好ましくは10~14%FFDM、より好ましくは12~13%FFDMの灰含量を有する。
【0030】
ココア粉末に加えて、本発明の方法を使用して、ココアバターも生産することができる。驚くべきことに、本発明の方法に従って生産されたココアバターが、1000ppm未満、好ましくは750ppm未満、より好ましくは550ppm未満の石鹸含量を有することが見出された。有利には、かつ理論によって束縛されることを望むことなく、このココアバターが、従来のダッチココアから得られたココアバターと比較してより良好な(より急速な)結晶化をもたらし得ると考えられる。
【0031】
有利には、本発明の改善されたアルカリ化ココア材料は、食料及び飲料組成物の製造において任意の他のココア材料と同様に使用され得る。したがって、本発明は、本明細書に記載のアルカリ化ココア材料を含む食料及び飲料組成物も提供する。これらの食料及び飲料組成物には、ほんの一例として、ミルク、ダーク、及びホワイトチョコレート及び複合組成物(とりわけ、菓子製造において、バーとして、トラッフル及びプラリーヌで、または包含物、コーティング、もしくはフィリングとして使用するために)、飲用チョコレート、フレーバーミルク(乳製品及び乳製品ではないもの)、フレーバーシロップ、ベーカリー製品(ケーキ、クッキー、及びパイ等)、ダイエットバー及び食事代用品、スポーツ及び幼児栄養分、アイスクリーム製品、乳製品、プリン、ムース、ソース、ならびに朝食用シリアルが挙げられ得る。これらの食料及び飲料組成物を製造する方法も、本発明の一部である。
【0032】
本発明の様々な実施形態がこれから以下の実施例を用いて説明され、これらの実施例は、例証目的ためのみに提供されており、限定するようには意図されていない。
【0033】
実施例1~2
本発明によるアルカリ化ココア粉末を、以下及び表1に規定される方法に従って調製した。
【0034】
IKA円錐形乾燥機CD10/07-6365を、加熱要素油浴(Grant TXF200)を作動させることによって予熱した。予熱温度に達した時点で、1500グラムの破砕及び殻剥きされたココアニブを添加した。その後、撹拌を開始し(速度範囲1~10)、180グラムの予熱した水道水を添加した。ニブ/水混合物を設定した予熱時間にわたって撹拌した(表1を参照のこと)。その後1:1の炭酸カリウム溶液(Boom b.v.製)を添加し、続いて、アルカリ化水(水道水)を添加した。その後、このシステムを閉じ、圧縮空気を使用して加圧した。アルカリ化温度を、油浴の温度を調整することによって設定し、気流を、空気レギュレータ(M+W instrumental製のマスストリームマスフローメータ/コントローラ(mass-stream mass flow meter/controller))を調整することによって設定した。
【0035】
ニブを反応時間にわたって連続撹拌した。アルカリ化時間が経過した時点で、圧力をIKA乾燥機から取り除き、ココアニブを乾燥空気ストーブ(Memmert UFB400)内のプレート上で、150℃で60分間乾燥させた。その後、ニブを、IKAユニバーサルミル(M20)を使用して6分間粉砕し、結果として生じたココアリカーを、4ステップシーケンスを使用してCaotech CAO-CP1でプレスした。残りのケーキをプレスから取り出し、ハンマーを使用してより細かく破砕し、14000rpmの回転子速度で0.5mmの篩を使用してRetsch ZM-200ミル内で粉砕した。
【0036】
【表1】
【0037】
色を測定するために、得られたココア粉末5.00±0.01グラムを15.0mLの水道水と50℃で混合し、凝集塊が見えなくなるまで撹拌した。その後、混合物を15分間静置させて、室温に冷却した。次いで、混合物をもう一度撹拌し、光学的に中性のペトリ皿に注いだ。その後、L値、a値、及びb値を、Illuminant C及び2度標準観測装置を使用して目盛り付き分光光度計(Hunterlab Colorflex EZ)で即座に測定した。結果を表2に示す。
【0038】
pHを測定するために、得られたココア粉末10.00±0.01グラムを90.0mLの脱塩水と混合し、塊が見えなくなるまで撹拌した。その後、混合物を10分間静置させた後、pHを目盛り付きpHメータ(Methrom 827 phlab)で測定した。結果を表2に示す
【0039】
【表2】
【0040】
実施例3~6
本発明によるアルカリ化ココア粉末を、以下に規定される方法及び表3に規定されるプロセスパラメータに従って調製した。
【0041】
4.5kgの生ココアニブをパドル圧力反応器内に装填した。その後、95~100℃までジャケット蒸気加熱で撹拌を開始した。その後、アルカリ(50w/w%の炭酸カリウム溶液)及び水道水を添加し、反応器を閉じた。所定の圧力及び温度に達するまで蒸気を反応器に添加した。必要に応じて、温度をジャケット蒸気加熱によりさらに上昇させた。気流を使用した場合、気流弁を開放し(20%にブローダウン開放)、温度を、弁開放度を10~14%の間で変化させることによって制御した。目標温度を所定の保持時間維持した。所望の保持時間が経過した時点で、ブローダウン手順を開始し、反応器を開放した。
【0042】
その後、結果として生じたニブを120℃のベンチトップストーブ(Memmert UFB400)内で乾燥させた。その後、ニブを、Jafinox Knifeミルを使用して粗リカーに粉砕し(10kg)、次いで、Moihno垂直ボールミルML-2内で精製した。
【0043】
結果として生じたココアリカーを、4ステップシーケンスを使用してCaotech CAO-CP1でプレスした。残りのケーキをプレスから取り出し、ハンマーを使用してより細かく破砕し、14000rpmの回転子速度で0.5mmの篩を使用してRetsch ZM-200ミル内で粉砕した。
【0044】
【表3】
【0045】
色を測定するために、得られたココア粉末5.00±0.01グラムを15.0mLの水道水と50℃で混合し、凝集塊が見えなくなるまで撹拌した。その後、混合物を15分間静置させて、室温に冷却した。次いで、混合物をもう一度撹拌し、光学的に中性のペトリ皿に注いだ。その後、L値、a値、及びb値を、Illuminant C及び2度標準観測装置を使用して目盛り付き分光光度計(Hunterlab Colorflex EZ)で即座に測定した。結果を表4に示す。
【0046】
pHを測定するために、得られたココア粉末10.00±0.01グラムを90.0mLの脱塩水と混合し、塊が見えなくなるまで撹拌した。その後、混合物を10分間静置させた後、pHを目盛り付きpHメータ(Methrom 827 phlab)で測定した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
これらの図から、気流を使用することにより、ココア粉末の濃さが増し(より低いL値)、そのa/b値及びpHが低下すると結論付けることができる。
【0049】
実施例7~8
実施例3~6の手順を繰り返し、今回は、1試験当たり500kgのココアニブ及び表5に示されるパラメータを使用した。
【0050】
その後、結果として生じたニブを、実施例3~6のように乾燥させ、粉砕し、製粉し、それらのpH、ならびにL値、a値、及びb値を、同じ方法論を使用して決定した。結果を表6に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】