(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】抗ウイルス組成物、抗ウイルス保護フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20241127BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20241127BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20241127BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20241127BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241127BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
A01N25/34 A
A01N25/10
A01P1/00
B32B27/00 M
B32B27/18 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165940
(22)【出願日】2022-10-17
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼ 振和
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526828(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084774(WO,A1)
【文献】特開2021-178954(JP,A)
【文献】国際公開第2021/229198(WO,A1)
【文献】特開2010-270079(JP,A)
【文献】特許第6911993(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス組成物であって、
樹脂材料と、
2nm~200nmの範囲の粒径である金属含有粒子
として、前記抗ウイルス組成物の総重量に対して
、0.016重量%のリン酸銀、0.240重量%の酸化亜鉛、および0.008重量%の二酸化チタ
ンを含み、
前記抗ウイルス組成物のISO 21702:2019抗ウイルス性試験規格による抗ウイルス活性値は2.0以上である、抗ウイルス組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の抗ウイルス組成物において、前記樹脂材料の材料は、ポリ(メチルメタクリレート)、脂肪族ポリウレタンまたはそれらの共重合体を含む、抗ウイルス組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の抗ウイルス組成物において、前記抗ウイルス組成物の総重量に対して、ポリ(メチルメタクリレート)の含有量、脂肪族ポリウレタンの含有量、またはそれらの共重合体の含有量は、20wt%~60wt%の範囲である、抗ウイルス組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の抗ウイルス組成物において、前記樹脂材料の前記材料は、さらに、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、純粋なアクリル樹脂、シリコーンオリゴマー、またはそれらの組み合わせを含む、抗ウイルス組成物。
【請求項5】
抗ウイルス保護フィルムであって、
ベース層と、
前記ベース層の表面に配置され、請求項1に記載の抗ウイルス組成物によって形成された抗ウイルス層と、および
前記ベース層のもう一方の表面に配置された粘着層であって、該ベース層は前記抗ウイルス層と該粘着層との間に配置されている、粘着層と、
を備える、抗ウイルス保護フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の抗ウイルス保護フィルムにおいて、さらに、前記粘着層に配置された剥離層を備える、抗ウイルス保護フィルム。
【請求項7】
抗ウイルス保護フィルムの製造方法であって、
ベース層を配置するステップと、
請求項1に記載の抗ウイルス組成物を前記ベース層にコーティングして抗ウイルス層を形成するステップと、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、保護フィルムおよびその製造方法に関し、特に抗ウイルス組成物、抗ウイルス保護フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフルエンザウイルスまたはCOVID-19の猛威により、病原体(真菌、細菌、ウイルスなど)の付着および/または増殖をいかに迅速かつ効果的に減少させるかが重要であることが認識されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、病原体の付着および/または増殖を減少させるように適合化された抗ウイルス組成物、抗ウイルス保護フィルム、およびそれらの製造方法を企図する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、樹脂材料および金属含有粒子を含む抗ウイルス組成物を提供する。金属含有粒子の粒径は、2nm~200nmの範囲である。抗ウイルス組成物の総重量に対して、金属含有粒子の含有量は0.1重量%より大きい。
【0005】
本発明は、ベース層、抗ウイルス層、および粘着層を含む抗ウイルス保護フィルムを提供する。抗ウイルス層は、ベース層の表面に配置される。抗ウイルス層は、抗ウイルス組成物により形成される。粘着層は、ベース層のもう一方の表面に配置される。ベース層は、抗ウイルス層と粘着層との間に配置される。
【0006】
本発明は、抗ウイルス保護フィルムの製造方法を提供する。該方法は、以下のステップを含む。ベース層が配置される。抗ウイルス組成物は、ベース層にコーティングされて抗ウイルス層を形成する。
【発明の効果】
【0007】
上記の説明に基づいて、抗ウイルス組成物および抗ウイルス保護フィルムは、病原体(例えば、真菌、細菌、またはウイルス)の付着および/または増殖を減少させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、その描写とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【
図1】本発明の一実施形態に係る抗ウイルス保護フィルムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る抗ウイルス保護フィルムの使用の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明を目的とし、特定の詳細を明らかにする例示的な実施形態を示して、本発明の様々な原理の完全な理解を提供する。しかしながら、本開示からの利益を受けて、本明細書に開示された特定の詳細から逸脱する他の実施形態において本発明を実施できることは、当業者には明らかであろう。さらに、周知のオブジェクト、方法、および材料の説明は、本発明の様々な原理の説明を不明瞭にしないように省略される場合がある。
【0010】
範囲は、本明細書では、特定の値「約(about)」から別の特定の値「約」までとして表現することができ、特定の値および/または別の特定の値として直接的に表現することもできる。範囲を表現するとき、別の実施形態は、ある特定の値からおよび/または別の特定の値までを含む。同様に、値が前置詞「約」を使用して近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。各範囲のエンドポイントは、明らかに別のエンドポイントに関連するか、または独立していることがさらに理解されるであろう。本明細書において、「約」を用いて特定の値を記載する、または「約」を省略して特定の値を直接的に表現する記載方法については、議論された測定値および特定の数の測定関連誤差(例えば、測定システムの制限、計算プロセスでのエラーの伝播など、他の要因によって引き起こされるエラー)を考慮して、当業者によって許容される偏差内で決定された特定の値および特定の値の平均値を含む。例えば、特定の値について「約」を使用して記載する方法、または「約」を省略して特定の値を直接的に表現する方法により、特定の値の±10%の範囲内で表現され得る。
【0011】
本明細書において、非限定的な用語(可能な(possible)、し得る(may)、例えば(for example)または他の同様の用語など)は、非必須のまたは随意的な実装、包含、追加、または存在である。
【0012】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。また、用語(一般的に使用される辞書で定義されているものなど)は、関連する技術的背景の意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことも理解されよう。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る抗ウイルス保護フィルムの概略図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る抗ウイルス保護フィルムの使用の概略図である。
【0014】
図1を参照すると、抗ウイルス保護フィルム100は、抗ウイルス層110、ベース層120、および粘着層130を含み得る。抗ウイルス層110は、抗ウイルス組成物から形成され得る。抗ウイルス組成物の詳細な内容は、後続の段落に記載されている。ベース層120は、抗ウイルス層110上に配置される。粘着層130は、ベース層120上に配置される。
【0015】
一実施形態において、ベース層120は透光性材料を含み得る。例えば、ベース層120は、ポリエステルフィルムまたは他の適切なポリマーフィルムを含み得るが、本発明はそれらに限定されない。
【0016】
本明細書における「ポリエステル」、「ポリエステル材料」などの用語は、任意なタイプのポリエステル、特に芳香族ポリエステルを指し、特に精製テレフタル酸(PTA)およびエチレングリコール(EG)(すなわち、ポリエチレンテレフタレート(PET))を指すことに留意されたい。さらに、本明細書におけるポリエステルは、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0017】
本実施形態において、ポリエステルは、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらの組み合わせである。また、共重合体であってもよく、具体的には2種以上のジカルボン酸および/または2種以上のジオール成分を用いて得られる共重合体を指す。
【0018】
図1および
図2を参照すると、抗ウイルス保護フィルム100の例示的な用途において、抗ウイルス保護フィルム100の粘着層130は、病原体(例えば、真菌、細菌および/またはウイルスなど)の付着および/または増殖を低減するために、抗ウイルス保護フィルム100の抗ウイルス層110が外側を向くように対象物240に粘着され得る
【0019】
図1を参照すると、抗ウイルス保護フィルム100は、剥離層140をさらに含み得る。剥離層140は、粘着層に配置され得る。
【0020】
例えば、販売用の抗ウイルス保護フィルムは、剥離層をさらに含み得る。さらに、例示的な用途では、粘着層を対象物に粘着させることができるように、剥離層を剥がすことができる。対象物が貼り付けられる場所は、接触するのに適した電子製品の表面(例えば、携帯電話もしくはタッチスクリーンであるが、本発明はこれに限定されない)、または公共的環境に接触し得る対象物の表面(例えば、デスクトップ、椅子の表面、カウンタートップもしくは医療機器などであるが、本発明はこれらに限定されない)を含み得る。このようにして、外側に面する抗ウイルス層は、層上への病原体の付着および/または増殖を低減し得る。さらに、抗ウイルス保護フィルム100の適用方法および/または使用法は、比較的単純である。
【0021】
一実施形態において、抗ウイルス層は、2H以上の鉛筆硬度を有する。鉛筆硬度は、鉛筆試験によるフィルム硬度についてのASTM D3363-05標準試験方法に従って測定することができる。
【0022】
本実施形態において、抗ウイルス層を形成するために使用される抗ウイルス組成物は、樹脂材料および金属含有粒子を含み得る。金属粒子の粒径は2nm~200nmの範囲である。この範囲内の金属粒子の粒径は、より良好な分散性、全体的な抗真菌、抗菌、抗ウイルス効果および/または耐久性を有し得る。また、金属粒子の粒径が大きすぎると(例えば200nm超)、抗ウイルス保護フィルム全体のヘイズが高くなり、外観(例えば、視覚的に白いヘイズフィルム表面に類似する)に影響を与え得る。
【0023】
実施形態において、抗ウイルス組成物の総重量に対して、金属含有粒子の含量は、0.1重量パーセント(wt%)より大きく、8.0wt%未満である。金属粒子の含有量が少なすぎると(例えば、0.1wt%未満)、その抗真菌、抗菌および/または抗ウイルス能力が低下し得る。金属含有粒子の含有量が高すぎる場合(例えば、8.0wt%を超える場合)、製品の外観が悪化する可能性がある。
【0024】
一実施形態において、金属含有粒子は、金属粒子、金属塩粒子、金属酸化物粒子、または上記粒子からなる群のうちの1つから選択される。
【0025】
一実施形態において、金属含有粒子中の金属は、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、およびマンガンからなる群の中の1つから選択される。
【0026】
例えば、金属含有粒子は、金属銀粒子、金属チタン粒子、金属アルミニウム粒子、金属ニッケル粒子、金属コバルト粒子、金属銅粒子、金属亜鉛粒子、金属鉄粒子、 金属マンガン粒子、銀塩粒子、チタン塩粒子、アルミニウム塩粒子、ニッケル塩粒子、コバルト塩粒子、銅塩粒子、亜鉛塩粒子、鉄塩粒子、マンガン塩粒子、酸化銀粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ニッケル粒子、酸化コバルト粒子、酸化銅粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、および酸化マンガン粒子からなる群の中の1つから選択され得る。
【0027】
一実施形態において、金属含有粒子中の金属は、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、およびマンガンからなる群の中の2つ以上から選択される。換言すれば、金属含有粒子は、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、およびマンガンからなる群から選択される少なくとも2つ以上の元素を有する。一実施形態において、2つ以上の金属元素のうちの少なくとも2つの対応するイオン状態は、異なる価数を有し得る。
【0028】
一実施形態において、金属含有粒子中の金属は、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、およびマンガンからなる群の2つ以上から選択され、該金属含有粒子は、銀金属粒子、銀塩粒子、酸化銀粒子からなる群から選択される。すなわち、金属含有粒子は、銀金属粒子、銀塩粒子、および酸化銀粒子からなる群のうちの少なくとも1つから選択され、該金属含有粒子中の金属は、チタン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、およびマンガンからなる群の1つ以上から選択される。
【0029】
一実施形態において、金属含有粒子中の金属は、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、およびマンガンからなる群の2つ以上から選択され、該金属含有粒子は、銀金属粒子、銀塩粒子、酸化銀粒子からなる群から選択される。さらに、抗ウイルス性組成物の総重量に対して、銀金属粒子、銀塩粒子および酸化銀粒子の総含有量は、0.01wt%以上である。
【0030】
一実施形態において、金属含有粒子は、銀金属粒子、銀塩粒子、および酸化銀粒子からなる群の少なくとも1つから選択され、該金属含有粒子中の金属は、チタン、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、およびマンガンからなる群の2つ以上から選択される。一実施形態において、3つ以上の金属元素のうちの少なくとも3つ(すなわち、銀および他の2つ以上)の対応するイオン状態は、異なる価数を有し得る。
【0031】
無機金属含有粒子は、一般的な有機物(フェノール類など)または非金属性(ニトロソもしくは過酸化物含有化合物など)の化学的抗真菌剤、化学的抗菌剤、化学的抗ウイルス剤と比較して、薬剤に対する耐性が低い。さらに、無機金属含有粒子は、より優れた緩効(slow-release)特性、より長い抗真菌、抗菌、抗ウイルス効果、および/またはより優れた耐久性を備える。また、無機金属含有粒子は基本的に揮発性がないため、安全性が高く、人体に接触する対象物にも使用できる。
【0032】
一実施形態において、金属含有粒子において、2つ以上の異なる金属元素が選択されるので、異なる金属元素の異なる酸化還元電位および/または異なる価数に起因して、対応する抗真菌、抗菌、抗ウイルス効果は、それに相応して異なり得る。このように、抗ウイルス組成物は、抗真菌、抗菌、抗ウイルス用途に広く使用することができ、より良好な/より広い範囲の抗真菌、抗菌、抗ウイルス効果を有し得る。
【0033】
一実施形態において、抗ウイルス組成物中の樹脂材料は、光硬化性樹脂を含み得る。光硬化性樹脂は、少なくとも照明によって硬化され得る。一実施形態において、光硬化性樹脂は、紫外線の照射により硬化され得る。一実施形態において、光硬化性樹脂は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、脂肪ポリウレタン、またはそれらの共重合体(例えば、ポリウレタンプレポリマー脂肪ポリウレタンアクリレート)を含み得る。
【0034】
一実施形態において、抗ウイルス組成物の総重量に対して、ポリ(メチルメタクリレート)、脂肪族ポリウレタンまたはそれらの共重合体の含有量は、20wt%~60wt%の範囲であり得る。
【0035】
一実施形態において、抗ウイルス組成物中の樹脂材料は、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、純粋なアクリル樹脂、シリコーンオリゴマーまたはこれらの組み合わせをさらに含み得るが、本発明はこれらに限定されない。抗ウイルス組成物の総重量に対して、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、純粋なアクリル樹脂、シリコーンオリゴマー、またはそれらの組み合わせの含有量は、32wt%~79.9wt%の間であり得る。
【0036】
一実施形態において、抗ウイルス保護フィルムの製造方法は、以下のステップを含み得る。抗ウイルス性組成物はコーティングによってベース層の表面に被覆される。次いで、ベース層を被覆する抗ウイルス性組成物は、適切な硬化方法(例えば、光硬化)によって硬化され、抗ウイルス層を形成する。ベース層のもう一方の面には、対応する粘着層および/または剥離層を適切な時点で(例えば、抗ウイルス層を形成した後、または抗ウイルス組成物をコーティングする前に)形成することができる。
【0037】
一実施形態において、抗ウイルス層の厚さは、0.02mm~0.5mmの間であり得る。抗ウイルス層の厚さが厚すぎると(例えば、0.5mmを超える)、コストが増加する可能性があり、および/または抗ウイルス保護フィルムの全体的な光透過率または外観が影響を受ける可能性がある。抗ウイルス層の厚さが薄すぎる場合(例えば0.02mm未満)、(必ずしもそうとは限らないが)抗ウイルス層が損傷する可能性が高くなる。
【0038】
一実施形態において、抗ウイルス層は、複数のフィルム層の堆積体であり得る。さらに、堆積された複数のフィルム層において、少なくとも1つの層は抗ウイルス組成物から形成される。
【実施例】
【0039】
[実施例および比較例]
以下に実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0040】
各実施例および比較例により、上述の方法に従って、対応する抗ウイルス性保護フィルムを形成することができる。各実施例および各比較例において、各層の材料および/または構造(厚さもしくは相対位置など)は基本的に同じであり、それらの違いは、抗ウイルス層(もしくは、構造は同じだが材料が異なる同様のフィルム層)を形成する組成における金属含有粒子の種類または対応する添加量にある。
【0041】
[実施例1]~[実施例3]および[比較例]の組成および対応する評価項目を[表1]に示す。
【0042】
以下の実施例および比較例において、抗真菌性評価は、米国材料試験協会(ASTM)によって確立された真菌に対する合成ポリマー材料の抵抗性を決定するためのASTM G21標準慣行に従って実施することができる。評価対象(後述の実施形態または比較例など)が試験真菌に対してグレード0(すなわち、真菌の発育なし)という抗真菌効果を有する場合、その評価対象は試験真菌に対して抗真菌効果を有することを意味する。
【0043】
以下の実施例および比較例において、抗菌評価はJIS(日本工業規格)Z2801の抗菌試験基準(抗菌加工品-抗菌試験方法・抗菌効果)に準じて実施した。試験培養物に対する評価対象(後述の実施例または比較例など)の抗菌活性値が2.0以上であれば、評価対象が試験培養物に対して抗菌効果を有することを意味する。
【0044】
以下の実施例および比較例において、抗ウイルス性評価は、ISO(国際標準化機構)によって確立されたISO 21702:2019抗ウイルス検出基準(プラスチックおよびその他の非多孔質表面に対する抗ウイルス活性の測定)に従って実施した。試験ウイルスに対する評価対象(後述の実施例または比較例など)の抗ウイルス活性値が2.0以上であれば、試験ウイルスに対する抗ウイルス効果を有することを意味する。
【0045】
抗真菌性、抗菌性、および/または抗ウイルス性の試験、評価または同定は、例えば、Societe Generale de Surveillance(SGS)もしくはSGSによって認定された試験ユニット、または日本BOKEN(総合金融機関財団BOKEN品質評価機関)もしくは日本BOKENによって認定された試験ユニットのような第三者の公平なユニットによって実施することができる(ただし、これらに限定されない)。
【0046】
以下の実施例および比較例において、可視光波長範囲における可視光透過率(VLT)および/またはヘイズは、Hunterlab(登録商標)‐UltraScan PRO分光光度計によって測定できる。また、実施例および比較例で示した数値は、相対的な数値(例えば、同一規格品に相当)であり得る。
【0047】
【0048】
また、[実施例1]および[実施例2]について、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・テトラピン(Penicillium tetrapine)、ケトミウム・グロボサム(Chaetomium globosum)、グリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens)、およびアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)のいずれか一種を試験に用いて抗真菌効果評価を行ったところ、[実施例1]および[実施例2]の抗真菌効果はいずれもグレード0である。
【0049】
さらに、[実施例1]および[実施例2]について、アスペルギルス・ニガー、ペニシリウム・テトラピン、ケトミウム・グロボサム、グリオクラジウム・ビレンス、およびアウレオバシジウム・プルランスのいずれか一種を試験に用いて、さらなる抗真菌効果評価を行ったところ、[実施例1]および[実施例2]の抗真菌効果はいずれもグレード0である。
【0050】
また、[実施例3]について、アスペルギルス・ニガー、ペニシリウム・テトラピン、ケトミウム・グロボサム、グリオクラジウム・ビレンス、およびアウレオバシジウム・プルランスのいずれか一種を試験に用いて、さらなる抗真菌効果評価を行ったところ、[実施例3]の抗真菌効果はおそらくグレード1であるようである(真菌は生育するが、真菌の発育面積は10%未満)。
【0051】
さらに、[実施例1]および[実施例2]について、肺炎球菌(Pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、薬剤耐性黄色ブドウ球菌(drug-resistant Staphylococcus aureus)、サルモネラ菌(Salmonella)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のいずれか一種を試験に用いて、さらなる抗菌効果評価を行ったところ、[実施例1]および[実施例2]の抗菌活性値はいずれも2.0以上であった。
【0052】
[実施例2]を例に取り、各試験培養物の抗菌活性値は以下、肺炎球菌は5.76より大きい、大腸菌は約4.16、黄色ブドウ球菌は約2.90、薬剤耐性黄色ブドウ球菌は約3.60、サルモネラ菌は約2.59、緑膿菌は5.10より大きい、となった。
【0053】
ある特定の同じ試験培養物と比較すると、[実施例1]の抗菌効果は[実施例2]より優れている。
【0054】
また、[実施例1]についてさらなる抗ウイルス効果評価を行い、H1N1型インフルエンザウイルスを試験に用いたところ、[実施例1]の抗ウイルス活性値は約3.9であった。
【0055】
さらに、[実施例1]~[実施例3]と[比較例]とを比較すると、対応する金属含有粒子の添加範囲内での抗ウイルス性保護フィルムの外観(例えば、可視光透過率および/もしくはヘイズ)ならびに/または実用性(例えば、耐擦傷性)はすべて、一般的な産業利用の許容範囲内であり得る。
【0056】
要約すると、本発明の抗ウイルス組成物および/または抗ウイルス組成物によって形成された抗ウイルス保護フィルムは、より優れた抗真菌、抗菌および/または抗ウイルス効果を有し得る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の抗ウイルス組成物は、対応する抗ウイルス保護フィルムを形成し得る。本発明の抗ウイルス性保護フィルムは、接触するのに適合した電子製品の表面(例えば、携帯電話もしくはタッチスクリーンであるが、本発明はこれらに限定されない)、または公共的環境に接触し得る対象物の表面(例えば、デスクトップ、椅子の表面、カウンタートップもしくは医療機器などであるが、本発明はこれらに限定されない)に被覆(例えば、粘着により)され得る。このようにして、外側に面する抗ウイルス層は、層上への病原体の付着および/または増殖を低減させ得る。
【符号の説明】
【0058】
100 抗ウイルス保護フィルム
110 抗ウイルス層
120 ベース層
130 粘着層
140 剥離層
240 対象物