(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】光電子構造素子、半導体構造およびそれらに関する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/06 20100101AFI20241127BHJP
H01L 33/30 20100101ALI20241127BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L33/30
(21)【出願番号】P 2022517889
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2020058547
(87)【国際公開番号】W WO2021052635
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】102019125349.7
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019127425.7
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/052191
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ビーバースドアフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン イレク
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス フェイクス
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ クレンプ
(72)【発明者】
【氏名】イネス ピエツォンカ
(72)【発明者】
【氏名】ペトルス スンドグレーン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ベルガー
(72)【発明者】
【氏名】アナ カネフチェ
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0315218(US,A1)
【文献】特開昭64-002386(JP,A)
【文献】特開平05-218593(JP,A)
【文献】特開2006-303211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子構造素子を製造する方法であって、前記方法が、
第1のn型ドープ層と、第2のp型ドープ層と、それらの間に配置された少なくとも1つの量子井戸を有する活性層とを含む半導体構造を提供するステップであって、前記p型ドープ層は第1のドーパントを有する、ステップと、
前記半導体構造上にマスクを施与し、パターニングするステップと、
前記パターニングされたマスクの領域で覆われていない前記活性層の領域に量子井戸インターミキシングを発生させるように、前記p型ドープ層を第2のドーパントでドーピングするステップと
を含み、
前記第2のドーパントによる前記p型ドープ層のドーピングは、前記第2のドーパントを有する前駆体を用いた気相拡散によって行われ、
前記方法がさらに、
前記p型ドープ層への前記第2のドーパントの拡散が実質的に起こらないように選択された第1の温度で前記前駆体を分解することにより、前記p型ドープ層の表面に前記第2のドーパントを堆積させるステップと、
前記第1の温度よりも高い第2の温度で、堆積された前記第2のドーパントを前記p型ドープ層に拡散させるステップと
を含
み、
前記第2のドーパントの量が、パターニングされたマスクの領域で覆われていない前記活性層の領域において、前記第2のドーパントによって生成された電荷キャリアの横方向の拡散に対する障壁が、量子井戸インターミキシングによって引き起こされた障壁よりも大きくなるように選択されている、方法。
【請求項2】
前記第2のドーパントが、ZnまたはMgを含み、前記第1のドーパントと同じドーパントタイプを有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
堆積された前記第2のドーパントの量が、前記拡散中に実質的に完全に前記p型ドープ層に拡散するように選択されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記p型ドープ層を第2のドーパントでドーピングするステップが、
前記第2のドーパントを前記p型ドープ層に拡散させた後、前記半導体構造を前記第2の温度よりも高い第3の温度でアニーリングするステップ
を含む、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記マスクが、パターニングステップによって、前記半導体構造の適切な層により局所的に形成されている、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アニーリングステップが、
第5主族の元素を含む更なる前駆体を提供するステップ、および/または
前記p型ドープ層の表面に第III-V族半導体材料の層を形成するステップ
を含む、請求項
4または請求項
4を引用する
5記載の方法。
【請求項7】
堆積、拡散およびアニーリングの前記ステップ中に、以下のパラメーターのうちの少なくとも1つ、すなわち
前述の各ステップのうちの1つのステップ中の定義された期間の温度変化;
圧力;
前述の各ステップのうちの1つのステップ中の定義された期間の圧力変化;
ガスの組成;
これらの組み合わせ;
が異なるように選択されている、請求項
4または請求項4を引用する5から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記半導体構造が、以下の材料系のうちの少なくとも1つ、すなわち
InP;
GaP;
InGaP;
InAlP;
GaAlP;および
InGaAlP;
を含む第III-V族半導体材料を含んでいる、請求項1から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
光電子構造素子であって、
n型ドープ層と、p型ドープ層と、それらの間に配置された少なくとも1つの量子井戸を有する活性層とを有し、前記p型ドープ層は第1のドーパントを有している、第III-V族半導体材料を有する半導体構造と、
前記活性層の中心の第1の半導体領域であって、前記半導体領域よりもバンドギャップが大きい前記活性層の第2の半導体部分領域によって横方向に取り囲まれている、中心領域と
を含み、
前記第2の部分領域には、前記第2の部分領域に位置する前記活性層の前記少なくとも1つの量子井戸に量子井戸インターミキシングを発生させる第2のドーパントが導入されており、
前記活性層の定義された領域には、電荷キャリアの横方向の拡散に対する障壁が形成されており、前記障壁は、前記第2のドーパントによって生成された障壁と、量子井戸インターミキシングによって引き起こされた障壁とで構成されている、光電子構造素子。
【請求項10】
前記第2のドーパントによって生成されたドーピング障壁が、前記量子井戸インターミキシングによって引き起こされた障壁よりも大きいことを特徴とする、請求項
9記載の光電子構造素子。
【請求項11】
定義された領域の上に位置するp型ドープ層の部分領域の表面に、前記第III-V族半導体材料のIII価の材料と、前駆体材料の元素とからなる層が形成されている、請求項
9または
10記載の光電子構造素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2019年9月20日付け独国特許出願公開第102019125349.7号明細書の優先権、2019年10月11日付け独国特許出願公開第102019127425.7号明細書の優先権、および2020年1月29日付け国際出願PCT/EP2020/052191号の優先権を主張するものであり、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景技術
本発明は、光電子照明デバイスの低電流効率を改善するための半導体構造の組立て、およびその製造方法に関する。本発明はさらに、光電子構造素子に関する。
【0003】
光電子構造素子、すなわち、いわゆる発光ダイオードは、十分な輝度を有し、すなわち比較的高い電流密度に耐えることが、さまざまな用途の前提条件となる。同時に、低電流でも効率が高いか、もしくは一層高くする必要がある。
【0004】
低電流動作を改善する措置の1つとして、量子井戸インターミキシングがあり、これはさまざまな領域で使用されている。この場合、量子井戸として構成された活性層と、それを取り囲む障壁材料との間で格子原子を交換することによって、この領域のバンドギャップを変化させる。この交換プロセスは、目的に合致した適切な不純物原子、特にドーピング原子を半導体に導入した場合、特に効率的に行うことができる。
【0005】
このような局所的な不純物拡散および/または不純物による量子井戸インターミキシング(量子井戸インターミキシング)は、光電子構造素子の性能を向上させるための手法として確立している。改善点として、例えば、コンタクト抵抗の低減、レーザー用の透明窓領域の作成、または光電子構造素子において起こる表面再結合の低減が考えられる。
【0006】
しかしながら、不純物による量子井戸インターミキシングを有する光電子構造素子では、著しい劣化、すなわち、電流強度が低い場合であっても短時間の動作で出力パワーが明確に減少することが確認された。このような劣化は、量子井戸インターミキシングがない構造素子においては同等の電流強度では発生しないため、驚くべきことである。
【0007】
また、局所的な不純物拡散および/または不純物による量子井戸インターミキシングを用いて、正方形形状に限られるInGaAIP材料系(インジウム-ガリウム-アルミニウム-リン)におけるLED(発光ダイオード:light emitting diodes)の低電流効率が向上させられる。これらの障壁の有効性は、不純物の侵入とともに、構造素子およびデバイスの経年変化の挙動に強い影響を及ぼすことが観察されている。これは、特に負荷電流密度が高い場合、とりわけ、より小型の構造素子が影響を受けると顕著に現れる。
【0008】
そのため、上記の問題を軽減する半導体構造およびそれに関する方法の開発が望まれている。
【0009】
本発明者らは、これまで、性能向上のための幾何学的なアプローチが、単一のLEDの領域のみで行われており、半導体構造の製造時にウェハベースまたはLEDのグループでLEDを幾何学的に配置することによってこの効果を改善する方策はまだとられていないことに気がついた。
【0010】
発明の概要
量子井戸インターミキシングを改善するための態様は、単一の光電子構造素子の場合と、例えばウェハ上での組み合わせの両方について改善につながるものであり、以下の方法で提示される。
【0011】
このために、半導体部品、特に光電子構造素子またはLEDを製造する方法が提案され、この方法では、第1のステップで半導体構造が提供される。この半導体構造は、特に、異なるドープ層および/または異なる材料組成の層を成長させることによって作製することができ、特に、第1のn型ドープ層と、第2のp型ドープ層と、それらの間に配置された少なくとも1つの量子井戸を有する活性層とを有する。この場合、p型ドープ層には、ドーピングのために第1のドーパントが供給された。
【0012】
第2のステップでは、半導体構造上、特にp型ドープ層上にマスクが施与され、パターニングされる。このマスクは、電磁放射の発生を企図した活性層の部分領域を、第2のドーパントの侵入から保護するためのものである。この場合、マスク材料は、誘電体(酸化ケイ素、窒化ケイ素など)、金属(Tiなど)または半導体材料のいずれかで形成されていてもよい。
【0013】
次に、パターニングされたマスクで覆われていないp型ドープ層に、第2のドーパントがドープされ、パターニングされたマスクの領域で覆われていない活性層の領域で量子井戸インターミキシングが発生するようになる。これに関連して、例えば、第2のドーパントによるp型ドープ層のドーピングは、第2のドーパントを有する前駆体を使用した気相拡散によって行われてもよい。
【0014】
他の方法では、この場合、前駆体が気相反応で熱分解され、ドーパントが半導体表面で吸収されて半導体内に拡散し、量子井戸インターミキシングが発生する。これらのすべてのサブプロセスは、異なる温度依存性を有しているため、効率的な量子井戸インターミキシングが実現され得る温度範囲は非常に限られている(通常、InPまたはGaAs系の半導体の場合、520+/-20℃)。
【0015】
したがって、提案された原理によれば、前駆体を使ってドーパントを施与し、内部に拡散させるというステップが規定される。こうして、気相拡散により量子井戸インターミキシングを効率的に行うためのプロセスシーケンスが構築され、プロセス窓の拡大ひいては経年劣化に強い光電子構造素子の実現に向けたプロセスシーケンスの最適化が可能となる。
【0016】
この規定されたプロセスシーケンスは、いくつかの態様では、
-p型ドープ層の表面に第2のドーパントを堆積させるステップであって、第2のドーパントがp型ドープ層に実質的に拡散しないように選択された第1の温度で前駆体を分解するステップ;および
-堆積した第2のドーパントを、第1の温度よりも高い第2の温度でp型ドープ層に拡散させるステップ
を有している。
【0017】
本発明者らは、第2のドーパントをドーピングするというプロセス制御により、不純物による発光効率の低下が長期間にわたって起こる領域での電荷キャリア濃度の低減に大きな影響を与えることを認識した。これは、特に、マスクの縁部の下の活性層におけるドーパント障壁の増加がプロセス制御によって達成できることに起因している。
【0018】
コンセプト案によるプロセス制御の場合、それに加えて、ドーパントを含む前駆体を気相で拡散させるステップは、いくつかの態様では、
-第2のドーパントを含む分解生成物を半導体構造の表面に堆積させるステップ;および
-第2のドーパントを半導体構造内に拡散させるステップ
に分けられる。
【0019】
この分離によって、量子井戸インターミキシングの発生を伴う拡散ステップでは、温度を自由に選択することができ、特に、過度の脱離により第2のドーパントによる表面占有がもはや可能ではなくなる値(520℃超)まで温度を高めることができる。これは有利には、光電子構造素子の経年劣化の挙動を改善するために使用することができる。
【0020】
ここで、第2のドーパントは、第1のドーパントと同じドーパントタイプで、例えば、Zn、Mgなどから形成されている。堆積された第2のドーパントの量は、第2の温度での拡散プロセス中にp型ドープ層内に実質的に完全に拡散するように選択されていてもよい。このように、拡散と量子井戸インターミキシングの発生に十分な量だけが提供され、それ以上は提供されない。
【0021】
別の態様では、ここでの第2のドーパントの堆積量は、例えば、パターニングされたマスクの領域で覆われていない活性層の領域に、電荷キャリアの横方向の拡散に対する障壁が形成されるように選択されていて、この障壁は、第2のドーパントによって生成された障壁と、量子井戸インターミキシングによって引き起こされた障壁とで構成される。
【0022】
この態様の発展形態では、第2のドーパントの量は、パターニングされたマスクの領域で覆われていない活性層の領域において、第2のドーパントによって生成された電荷キャリアの横方向の拡散に対する障壁が、量子井戸インターミキシングによって引き起こされた障壁よりも大きくなるように選択されている。さらに、第2のドーパントの量は、パターニングされたマスクの下にある領域の活性層のバンドギャップが、パターニングされたマスクの領域で覆われていない活性層のバンドギャップよりも小さくなるように選択されていてもよい。
【0023】
別の態様では、ドーピングプロセスの後に、第2の温度よりも高い第3の温度で最終的な温度ステップが行われる。いくつかの態様では、第2のドーパントをさらに供給することなく、半導体はこの第3の温度でアニーリングステップにかけられる。この下流のアニーリングステップは、ドーピングプロセスで達成された低電流効率の大幅な改善が、より長い動作期間にわたって維持されるように、より高い温度で、第2のドーパントを使用せずに構成されている。
【0024】
本発明者らは、第1の温度で第2のドーパントを供給し、第2の温度で第2のドーパントを拡散させるというプロセスが、量子井戸インターミキシングの発生にも、その後の劣化にも因果関係があるという点で重要であることを認識した。この場合、第2のドーパントの原子が、半導体層スタックおよび活性層(もしくは量子井戸)に拡散し、そこで元の結晶格子の原子と入れ替わることができる。これらは、第1のドーパントの原子であると同時に、実際の格子材料の原子でもある。格子間サイトに変位させられた原子は移動可能であり、これらが光電子構造素子の劣化に大きな影響を与えていると推測される。同時により高い第3の温度で追加のアニーリングステップを行い、その間にドーパントをさらに供給しないことで、その後の効率の低下が抑えられる。
【0025】
別の態様では、(例えば、適切な更なる前駆体を提供することによって)結晶格子を形成する元素で支持圧を提供することにより、アニーリングステップに適切な環境条件が提供される。この元素を適切に選択することで、第2のドーパントによって変位させられた格子原子には、半導体の表面で反応能力が提供され、これらの原子の自由な移動がそれにより阻止される。変位させられた格子原子が、例えば第III族の原子である場合、このプロセスは、好ましくは第V族の元素を用いた支持圧によって開始することができる。これに伴い、拡散プロセスで生成された格子間原子は、本発明によるアニーリングステップ中に表面に拡散し、そこで結合される。劣化メカニズムに関与する格子間原子の数を減らすことで、部品の寿命が大幅に延びる。
【0026】
したがって、この態様によれば、アニーリングプロセスは以下のステップを含む。第5主族の元素、特にPまたはAsを含む更なる前駆体を提供するステップ;および/またはp型ドープ層の表面に第III-V族半導体材料の層を形成するステップ。
【0027】
アニーリングステップでは、前駆体は最初から加えてもよいし、第2のプロセスパラメーターに達した後にのみ加えてもよい。また、ドーパントによって変位させられた格子原子を飽和させるのに十分な前駆体材料が利用できるように、前駆体の濃度がアニーリングステップ中に変化してもよい。
【0028】
別の態様では、この更なる前駆体は、主にPH3、AsH3、TBAまたはTBPなどの化合物において、リンまたはヒ素の元素を特に含んでいてもよい。
【0029】
別の観点では、堆積、拡散およびアニーリングの各ステップでさまざまに選択することができるプロセスパラメーターが関係している。一態様では、パラメーターは、以下のパラメーター、すなわち、前述の各ステップのうちの1つのステップ中の温度、定義された期間における温度変化、前述のステップのうちの1つのステップ中の圧力、定義された期間における圧力変化、ガス、特に前駆体の組成および流量、ならびにアニーリングステップの持続時間、のうちの少なくとも1つ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
例えば、プロセスパラメーターには、第2のドーパントをp型ドープ層に蒸着する際に、第2のドーパントがp型ドープ層に実質的に拡散しないように選択された、第2のドーパントの供給時の定義された第1の温度と、例えば第1の温度よりも高い、第2のドーパントの拡散プロセス中の第2の温度と、第2の温度よりも高い、アニーリングステップ中の第3の温度とが含まれる。言い換えれば、アニーリングステップ中の温度は、量子井戸インターミキシングを発生させるときの2つの温度よりも大きい。また、第2のドーパントの供給、拡散プロセスおよびアニーリングの持続時間が異なっていてもよい。
【0031】
他の態様では、第1のドーパントとは異なる第2のドーパントが使用される。例えば、第2のドーパントとしてZnまたはMgを使用してもよい。半導体構造の材料系として、例えば、第III-V族の半導体材料が利用される。これは、以下の材料、すなわちInP、AlP、GaP、GaAlP、InGaP、InAlP、GaAlPまたはInGaAlPの組み合わせうちの少なくとも1つを有していてもよい。同様に、材料系として、他の第III-V族半導体、例えばAsとの組み合わせも考慮される。
【0032】
別の態様は、光電子構造素子に関するものである。これは、第III-V属半導体材料を有する半導体構造を含んでいる。この半導体構造は、n型ドープ層と、p型ドープ層と、それらの間に配置された少なくとも1つの量子井戸を有する活性層とを有する。p型ドープ層は、第1のドーパントを含んでいる。さらに、この部品は、光生成領域、特に活性層の中心領域を有し、この中心領域は、活性層の第2の領域によって横方向に取り囲まれている。これは、第2の領域に第2のドーパントが導入され、これが第2の領域にある活性層の少なくとも1つの量子井戸に量子井戸インターミキシングを引き起こしたためで、第2の領域のバンドギャップは中心領域のバンドギャップよりも大きくなっている。
【0033】
不純物によるこうした局所的な量子井戸インターミキシングが第1の領域ではなく第2の領域で起こるため、活性層には障壁が形成され、光電子構造素子の活性層の量子井戸内の電荷キャリアの横方向の移動は、活性層のこの第1の領域に制限される。これにより、例えば、光電子構造素子を動作させるための電流が、光電子構造素子の周辺領域に流れること、つまり、第1の領域を囲む第2の領域を通って流れることが可能な限り防止される。これにより、第2の領域の非放射再結合中心または高い非放射表面再結合によって引き起こされた電荷キャリアの非放射再結合が低減され、したがって、このことが構造素子の性能向上につながる。
【0034】
別の態様では、パターニングされたマスクが、p型ドープ層の第1の部分領域を覆うようにp型ドープ層上に配置されている。マスクで覆われていないp型ドープ層の部分領域には、第2のドーパントが導入されており、この部分領域の下に配置された活性層に量子井戸インターミキシングを発生させる。この場合、マスクのサイズは、第1の部分領域と実質的に同じサイズである。
【0035】
本発明によるアニーリングステップ時の支持圧を選択することによって、第2のドーパントにより格子間サイトに変位させられた材料が、表面の一部を覆う層に変換される。アニーリング時の拡散プロセスにより、材料が格子間サイトから取り除かれ、これは量子井戸内の非放射再結合中心をもたらさなくなると考えられるため、長期間にわたっても光電子構造素子の効率は減少しなくなる。これに伴い、p型ドープ層の混合部分領域の表面には、第III-V族半導体材料のIII価の材料と、前駆体材料の元素、特にPまたはAsとからなる層が形成される。
【0036】
個々の発光ダイオードの範囲における性能の向上につながるプロセス上の変更以外に、量子井戸インターミキシングの改善をウェハレベルで引き起こすための措置が提供される。通常、光電子構造素子は、多数のこのような構造体としてウェハレベルで製造される。この場合、製造をモノリシックに行ったり、構造素子を後の時点で個片化したりすることもできる。前者の場合、量子井戸インターミキシングは、電気漏話に対する障壁としても機能し、後者の場合、既に製造時に量子井戸インターミキシングを用いて、後に縁部を形成する範囲を変更することができる。
【0037】
一態様では、n型ドープされた第1の層と、第1のドーパントが加えられたp型ドープされた第2の層と、活性層とを含む半導体構造が提示される。後者は、n型ドープされた第1の層とp型ドープされた第2の層との間に配置され、少なくとも1つの量子井戸を有している。本発明によれば、活性層は、複数の第1の領域、特に光学活性領域と、少なくとも1つの第2の領域とに分けることができる。この場合、特に、複数の第1の光学活性領域と少なくとも1つの第2の領域とは互いに隣接している。さらに、複数の第1の領域は、六角形のパターンで互いに離間して配置されており、量子井戸インターミキシングを有する少なくとも1つの第2の領域によって囲まれている。量子井戸インターミキシングは、上記のプロセスと同様の方法で発生させることができる。
【0038】
ここで、半導体構造の複数の第1の、特に光学活性領域の各1つの領域は、例えば、光電子構造素子の各1つの部分を形成することができる。したがって、半導体構造は、多数の個別の光電子構造素子から形成されていてもよく、これらの素子は、例えば、エピタキシャル層を介したエッチングプロセスまたはレーザー切断とそれに続く基板の除去によって、続けて個片化されてもよい。
【0039】
例えば、複数の第1の領域は、円形の形状をしている。正方形の構造の構造素子と比較して、角部がないことで、後続の発光ダイオードの境界線に沿って不純物の侵入および量子井戸インターミキシングがより均一に起こる結果となる。つまり、構造素子の第2の領域の周辺領域での非放射再結合を低減することができ、それに応じて、各個々の光電子構造素子の性能を向上させることができることも意味する。それにもかかわらず、有利には、ウェハレベルで製造が行われる。
【0040】
ここでいう円形とは、6角以上の角数を有する多角形も可能であり、つまり、例えば8角、10角以上の角数を持つ多角形も可能であることを意味している。この形状については、光電子構造素子の性能を向上させるプラスの効果が既に認められ得るからである。同様に、円形という用語には、楕円形の他、長円形または他の丸みを帯びた凸状の形状も含まれ得る。
【0041】
半導体構造に局所的にマスクを施与し、例えば拡散プロセスを用いて、第2のドーパントが領域ごとに活性層に入り込み、量子井戸が存在する対応する領域で量子井戸インターミキシングが起こる。量子井戸インターミキシングが起こる領域は、少なくとも1つの第2の領域を形成する。したがって、半導体構造は、第2のドーパント、特にp型ドープされた第2の層に配置された第1のドーパントとは異なるドーパントを含んでおり、このドーパントは、少なくとも1つの第2領域に実質的に均一に配置されている。
【0042】
一方、複数の第1の領域では、マスクの適用により量子井戸インターミキシングが可能な限り防止される。より正確に言えば、複数の第1の領域で量子井戸インターミキシングは起こらない。それに応じて、拡散プロセス後、複数の第1の領域に第2のドーパントは実質的に配置されておらず、ひいては活性層の量子井戸内の第1の各部分の領域に第2のドーパントは配置されていないことになる。
【0043】
第1および第2の領域への分割と、それに伴う量子井戸インターミキシングとにより、第1の領域は、構造素子、特に発光ダイオードの後続の動作において、光学活性領域として使用することができる。したがって、以下では、第1の領域を第1の光学活性領域と呼ぶ。
【0044】
不純物によるこうした局所的な量子井戸インターミキシングが複数の第1の光学活性領域ではなく第2の領域で起こるため、バンド構造の変化を通じて活性層内に電子障壁を形成し、半導体構造の活性層内の量子井戸の電荷キャリアが活性層の複数の第1の光学活性領域に横方向に移動することを制限する。これにより、例えば、光電子構造素子を動作させるための電流が、光電子構造素子の周辺領域に流れること、つまり、第1の領域を囲む第2の領域を通って流れることが可能な限り防止される。個片化された構造の周辺領域には、非放射再結合中心が存在することが多いため、電荷キャリアが周辺領域から遠ざけられ、したがって、このことが構造素子の性能向上につながる。
【0045】
しかしながら、実際には、不純物の侵入ひいては量子井戸インターミキシングは、拡散させる物質を導入する開放エリアの大きさに依存する。したがって、半導体構造上で、複数の第1の光学活性領域が六角形に配置されている場合、三角形に配置されたそれぞれ3つの第1の光学活性領域の間の空間には、隣り合う2つの第1の光学活性領域の間にあるエリアよりも大きなエリア、つまり不純物濃度がより高い局所極大が形成される。これらの極大は、例えばマスクで覆われた2つの第1の光学活性領域の間の小さな空間よりも、第2のドーパントが加えられた大きなエリアの領域の方が、拡散プロセスがより効率的に進行することに起因する。この効果は、状況次第では望ましくない。なぜなら、光電子構造素子の低電流効率を向上させるためには、半導体構造内で非常に均質な拡散パターンを実現することが重要だからである。
【0046】
したがって、別の態様では、n型ドープされた第1の層と、第1のドーパントが加えられたp型ドープされた第2の層と、活性層とを含む半導体構造が提示される。後者は、n型ドープされた第1の層とp型ドープされた第2の層との間に配置され、少なくとも1つの量子井戸を有している。本発明によれば、活性層は、複数の第1の領域、特に光学活性領域と、少なくとも1つの第2の領域とに分けることができる。この場合、特に、複数の第1の光学活性領域と少なくとも1つの第2の領域とは互いに隣接している。さらに、複数の第1の光学活性領域は、六角形のパターンで互いに離間して配置されており、量子井戸インターミキシングを有する少なくとも1つの第2の領域によって囲まれている。さらに、少なくとも1つの第3の領域が、複数の第1の光学活性領域と第2の領域との間の空間に配置され、この場合、特に、少なくとも1つの第2の領域に隣接している。
【0047】
前述の態様とは異なり、この場合、活性層は、複数の第1の光学活性領域と少なくとも1つの第2の領域との他、少なくとも1つの第3の領域とに分けられる。
【0048】
ここで、少なくとも1つの第3の領域は、前述の態様に従って不純物濃度が高い局所極大が発生する領域が、例えばマスクの適用により量子井戸インターミキシングにアクセスすることができず、これらの領域においても、複数の第1の光学活性領域と同様に、量子井戸インターミキシングが、このように可能な限り発生しないように配置されている。したがって、拡散プロセスの後、複数の第1の光学活性領域と同様に、少なくとも1つの第3の領域に第2のドーパントは可能な限り配置されていない。
【0049】
さらに、少なくとも1つの第2の領域は、複数の第1の光学活性領域の各々が、少なくとも1つの第2の領域の一部によって、または複数の第2の領域のうちの1つによってそれぞれ個別に同心円状に囲まれるように、多数の第1の光学活性領域を囲んでいる。したがって、少なくとも1つの第2の領域は、例えば、複数の第1の光学活性領域の1つの周りにそれぞれ配置されている連続的な環状セグメント、または複数の第1の光学活性領域の1つの周りにそれぞれ同心円状に配置されている複数の環状のパッチから生じる。同様に、環状という用語には、複数の第1の光学活性領域の周りに実質的に同心円状に配置され、これらを完全に囲む、円形、楕円形の他、長円形または他の丸みを帯びた凸状の形状も含まれ得る。
【0050】
これに関連して、少なくとも1つの第3の領域は、少なくとも1つの第2の領域に隣接している。したがって、少なくとも1つの第3の領域は、複数の環状の第2の領域の周りに配置されている連続的なメッシュ状のエリアを有し得る。しかしながら、別の態様では、複数の第3の領域がそれぞれデルトイド曲線の形状を少なくともほぼ再現していてもよい。これは、例えば、三角形に配置されたそれぞれちょうど3つの第2の領域によって形成されることができ、これらの領域は少なくともほぼ円形もしくは環状の形状をしている。同様に、複数の第3の領域は、円形の形状をしていてもよく、三角形に配置された3つの第1の領域の中心にそれぞれ配置されていてもよく、これらの領域は少なくともほぼ円形の形状をしている。
【0051】
少なくとも1つの第3の領域の配置において重要なのは、例えば、例として誘電体または例えばフォトレジストマスクなどのマスクを施与することで、拡散プロセス中に第2の領域でより高い不純物濃度を有する局所極大を減少させ、このように可能な限り均質な半導体構造の拡散パターンを実現することである。
【0052】
量子井戸インターミキシングは、第2の領域に、例えば、マグネシウム、亜鉛、カドミウム(Mg、Zn、Cd)などの第2のドーパントをドーピングすることで発生させることができる。ただし、これはドーパントを限定的に選択することを意図したものではなく、当業者が案出できる同種のあらゆる別のドーパントをドーピングに使用することができる。
【0053】
別の態様では、少なくとも1つの第2の領域に量子井戸インターミキシングを生成するための拡散プロセスの結果、第2のドーパントが、第2の領域の活性層だけでなく、第2のp型ドープ層、さらには活性層に相接するn型ドープ層の領域にも少なくとも部分的に形成されることになり得る。ただし、これは、第2のドーパントが形成されている第2のp型ドープ層および第1のn型ドープ層の領域が、活性層の少なくとも1つの第2の領域と一致していると必ずしも理解されるべきではないが、一致していることも可能である。
【0054】
別の態様では、少なくとも1つの第2領域が、量子井戸インターミキシングによって生成された実質的に均一なバンドギャップを有する半導体構造が提案される。つまり、この領域ではバンドギャップのエネルギーは可能な限り一定の値を有し、領域の周辺に向かってのみバンドギャップが大きくなったり小さくなったりすることを意味している。
【0055】
一方、複数の第1の光学活性領域および少なくとも1つの第3の領域における少なくとも1つの量子井戸は、少なくとも1つの第2の領域における量子井戸よりも小さいバンドギャップを有している。それに応じて、上記の態様のうちの1つに従って生成された障壁が、複数の第1の光学活性領域と第2の領域との間と、少なくとも1つの第3の領域と第2の領域との間に生じる。この場合、バンドギャップ間の移行部は、シャープなエッジ部を有する段差であっても、滑らかに流れる移行部としても可能であり得る。
【0056】
別の態様では、複数の第1の光学活性領域と少なくとも1つの第3の領域とは、実質的に同一のバンドギャップを有している。これは、特に、複数の第1の光学活性領域の少なくとも1つの量子井戸と、少なくとも1つの第3の領域とが、量子井戸インターミキシングを実質的に有しておらず、ひいてはこれらの領域に第2のドーパントが実質的に発生しないことに起因する。
【0057】
別の態様によれば、多数の個別の光電子構造素子から形成されている可能性のある半導体構造は、例えば、エピタキシャル層を介したエッチングプロセスまたはレーザー切断とそれに続く基板の除去によって、複数の光電子構造素子に個片化される。この場合、複数の光電子構造素子の各々のカットアウトは、例えば円形であり、複数の第1の光学活性領域のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つの第2の領域の一部分とを含む。ここで、第1の光学活性領域と第2の領域とは、特に円形のカットアウトに同心円状に配置されている。したがって、半導体構造の少なくとも1つの第3の領域は、複数の個別の光電子構造素子の一部ではなく、ひいては特に個片化プロセスのリジェクトを表すことになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
以下、本発明について、構成例を用いて複数の図面を参照しながら詳細に説明する。
【
図1A】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、量子井戸インターミキシングによって半導体構造を製造するためのさまざまなプロセスステップを有する一構成形態を示す図である。
【
図1B】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、量子井戸インターミキシングによって半導体構造を製造するためのさまざまなプロセスステップを有する一構成形態を示す図である。
【
図1C】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、量子井戸インターミキシングによって半導体構造を製造するためのさまざまなプロセスステップを有する一構成形態を示す図である。
【
図1D】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、量子井戸インターミキシングによって半導体構造を製造するためのさまざまなプロセスステップを有する一構成形態を示す図である。
【
図1E】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、量子井戸インターミキシングによって半導体構造を製造するためのさまざまなプロセスステップを有する一構成形態を示す図である。
【
図1F】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、量子井戸インターミキシングによって半導体構造を製造するためのさまざまなプロセスステップを有する一構成形態を示す図である。
【
図2】提案された原理による方法を実行している間のさまざまなプロセスパラメーターの例示的な経時変化を示す図である。
【
図3】提示されたコンセプトのさまざまな考察を説明するための、半導体構造の一部分を示す図である。
【
図4】提示されたコンセプトを説明するための、さまざまなドーパントの動作電流の関数としての障壁高さを明示す図である。
【
図5】提示されたコンセプトを説明するための、異なる障壁高さにおける量子効率を明示した更なる図である。
【
図6A】コンセプト案のいくつかの態様に従った、発光に適した半導体構造の第1の構成形態の平面図を示す図である。
【
図6B】コンセプト案のいくつかの態様に従った、半導体構造のバンドギャップの関連する横断面プロファイルを示す図である。
【
図7A】コンセプト案のいくつかの態様に従った、発光に適した半導体構造の更なる構成形態の平面図を示す図である。
【
図7B】コンセプト案のいくつかの態様に従った、バンドギャップの関連する横断面プロファイルを示す図である。
【
図8A】コンセプト案のいくつかの構成に従った第3の構成の平面図を示す図である。
【
図8B】コンセプト案のいくつかの構成に従ったバンドギャップの関連する横断面プロファイルを示す図である。
【
図9A】さまざまな態様において実装された半導体構造の第4の構成の平面図を示す図である。
【
図9B】さまざまな態様において実装された半導体構造のバンドギャップの関連する横断面プロファイルを示す図である。
【
図10A】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、1つ以上の光電子構造素子、特にμ-LEDの層構造および製造方法を示す図である。
【
図10B】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、1つ以上の光電子構造素子、特にμ-LEDの層構造および製造方法を示す図である。
【
図10C】提示されたコンセプトのいくつかの態様に従った、1つ以上の光電子構造素子、特にμ-LEDの層構造および製造方法を示す図である。
【
図11】コンセプト案に従った半導体構造のバンドギャップを表した図である。
【0059】
詳細な説明
図1A~
図1Fは、プロセスパラメーターを適切に選択することで、量子井戸インターミキシングをさらに向上させることができる製造プロセスの個々のステップを示している。これに関して、ドーパントは、同時拡散を伴う施与によってマスク下の活性層に拡散するが、そこでは量子井戸インターミキシングは起こらないと認識されていた。そのため、発光を目的としたマスク下の活性層に不純物濃度が高い状態で残り、老化プロセスが促進され、特性が悪化してしまうことになる。
【0060】
図1A~
図1Cは、更なるプロセスステップを経た半導体構造1を示している。
図1Aでは、成長用基板10、例えばGaAs基板が提供され、更なる成長ステップのために準備されている。これらの更なるステップには、犠牲層、パッシベーション層あるいは異なる結晶構造体へのコンフォーマル層の堆積が含まれ得る。同様に、基板には既にリード線・コンタクトあるいは回路が含まれていたり、当該基板用に準備されていたりしていてもよい。
【0061】
引き続き、準備された基板10上に、第III-V族材料系をベースとするn型ドープ層20が堆積される。この堆積はMOCVDリアクタで行われるが、本出願に開示されている他の方法もこの目的のために使用することができる。例えば、In、Ga、Al、またはこれらの組み合わせにリンPを加えたものが材料として使用される。例示的なInGaAlP層20はn型ドープされており、そのうえ、n型ドープされた層20において良好な導電性コンタクトおよび低いシート抵抗を確保するために、更なる層および/またはドーパント(ここでは詳しく示されていない)が設けられていてもよい。
【0062】
図1Bでは、続いて活性層30が施与される。当該活性層30は、少なくとも1つの量子井戸を含んでおり、完成した構造素子の動作中に放射再結合が起こり、その結果、光が生成される。活性層30における少なくとも1つの量子井戸も同様に、第III-V族半導体系の層の組み合わせも含んでおり、これは、例えばAl含有量の異なるInGaAlP層からなっていてもよい。引き続き、活性層30上にp型ドープ層40が作製される。このために、第1のドーパント、例えばMgまたはZnが使用される。このドーピングは、n型ドープ層20と同様に、製造プロセス中に所望の濃度のドーパントを添加することによって行うことができる。これにより、成長中の段階で層内にドーピングプロファイルを生じさせることができ、その結果、所望の電気特性をより良好に調整することができる一方で、より均一な結晶成長を通じて不純物を減らすことができるという利点も得られる。
【0063】
前述のステップで半導体構造1を提供した後、今度は
図1Cでp型ドープ層にマスク50を施与し、それに応じてパターニングする。図示されているように、パターニングされたマスク50は、p型ドープ層の表面上の部分領域を覆うことから、活性層の第1の部分領域33の上にもある。活性層の隣り合う部分領域34は、マスク50で覆われていない。マスク50のパターニング後、第1および第2のプロセスパラメーターを有する前駆体を用いた気相拡散によって、第2のドーパントによるp型ドープ層のドーピングが行われる。ここで、第2のドーパントは、例えば、Znから形成されており、例えば、有機Zn化合物から形成されている。
【0064】
この第2のステップのプロセスパラメーターには、特に温度、圧力および第2のドーパントの濃度が含まれ、これらは所定の期間中に変化することもある。当該パラメーターは、第2のドーパントが、前駆体の分解後に半導体構造の表面に層45として最初に堆積し、そこに薄い層を形成するが、p型ドープ層には拡散しないか、またはほとんど拡散しないように選択される。そのためには、例えば、後の拡散プロセスよりも低い温度が選択される。第2のドーパントを提供するために、ドーパントは、気相における前駆体の分解から得られる。これは、MOCVDまたはMOPVDリアクタで行われる。かかるステップの利点は、個々のプロセスステップ中にウェハがリアクタ内に残り、輸送する必要がないことである。その結果、第2のドーパントとしてZnまたは他の材料の薄層を用いて得られる構造体を
図1Dに示す。
【0065】
図1Eによれば、ドーパントが表面に施与された後、別個の拡散プロセスが行われる。この拡散プロセスは、第2のドーパントが層40を介して活性層および量子井戸に拡散するように、プロセスパラメーターによって制御される。場合によっては、第2のドーパントは、n型ドープ層の境界領域にも僅かに拡散することがある。このプロセスの間、第2のドーパントは、層40内での拡散によってマスク下の領域に(確率的に分布して)達する。一方、マスク下の活性層の第1の部分領域33にはドーパントが介在していない。むしろ、そこにはシャープなエッジ部が形成され、驚くべきことに、マスク50の活性層への突起部と実質的に一致している。
【0066】
拡散により、活性層の第2の部分領域の量子井戸内にインターミキシングが生じ、量子井戸のエネルギーギャップが増大するように、プロセスパラメーターは選択されている。第1の部分領域と第2の部分領域との境界領域では、量子井戸インターミキシングが短い距離で急激に減少するため、比較的急勾配のエネルギー障壁が形成される。
【0067】
ドーパントの施与とそれに続く拡散ステップとを分離することで、個々のプロセスがより良好に制御される。通常、ドーパントの堆積は、その後の拡散よりも低い温度で行われる。こうして、一方では、提供されるドーパントの量をより良好に調整することができ、他方では、拡散が気相反応に依存しない。後の別個の拡散ステップでは、ドーパントにより生成された電荷キャリアの拡散障壁が、量子井戸インターミキシングにより生成されたエネルギー障壁付近にあるドーピングプロファイルが構築されるように、適切な温度プロファイルが設定される。
【0068】
この手順の完了後、
図1Fに示される任意のアニーリングステップが続けられる。このステップでは、第3のプロセスパラメーターが設定されるが、これには特に、本構成例では、より高い温度と、更なる前駆体70の添加とが含まれる。この態様は、本願に詳細に説明している。前述の拡散プロセスによって、拡散したZnは、結晶格子の他の原子をその場所から追い出して、それらの場所を占有する。置換された原子は格子間サイトに留まり得る。これらの原子はその後も移動可能なままであり、おそらく非放射再結合のための再結合中心を形成していると思われる。当該原子が移動することで、これらの原子はこうして第1の部分領域33に移動し、そこでの構造素子の効率を著しく低下させる可能性がある。これは、電流密度が低くても早い段階で効率が低下するという観察結果からも裏付けられる。
【0069】
温度上昇と、場合によっては任意に行われる前駆体の適切な選択とによって、拡散ステップで置換された格子原子は表面に結合される。その結果、表面は格子間原子のシンクとして機能する。簡単に言えば、プロセスパラメーターの変更により、置換された原子が好ましくは活性層からp型ドープ層を経由して表面に拡散し、活性層内の潜在的な非放射性の濃度が低減することが可能性としてある。リンPまたはヒ素Asなどの第V主族の材料を有する前駆体を使用すると、寿命が大幅に延びることがわかった。
【0070】
図2は、プロセスパラメーター、詳細には、アニーリング段階時の温度T、第2のドーパントのガスフローおよび更なる前駆体のガスフローの選択の時間推移を定性的に示している。期間t1とt2との間、一方では、温度が第1の温度T1に維持され、さらに、半導体構造の表面にドーパントが堆積し得るように添加する。温度T1は、半導体ボディへのドーパントの拡散が起こらないか、または非常に僅かな程度でしか起こらないように選択される。この時間の間、更なる前駆体の添加は行わない。時間t2では、ドーパントは遮断され、温度T1はやや後の時間t3まで維持される。
【0071】
時間t3の後、温度はT2の値まで上昇される。この温度上昇により、拡散プロセスが開始され、すなわち、表面に堆積されたドーパントがp型ドープ層に拡散する。本構成例では、温度プロファイルは実質的に一定に保たれているが、一定ではない温度プロファイルも考えられる。このように、温度プロファイルに応じて、ドーパントプロファイルが設定される。それから次のステップでは、アニーリングされ、すなわち、ドーパントによって置換された原子が、第3の温度T3によって時間をかけてp型ドープ層もしくは活性層および量子井戸から除去される。このために、温度上昇に加えて、更なる前駆体が添加され、当該前駆体の分解生成物が表面で置換された原子と結合する。移動可能な置換された原子の濃度勾配が生じることによって、活性層の量子井戸から当該原子が除去され、表面に結合される。
【0072】
図3は、提案されている原理を説明し得るのに必要な態様の概要を示している。ドーパントの拡散中、p型ドープ層にドーパント材料の追加の濃度が形成される。このドーパント材料が結晶格子に取り込まれると、元の半導体の原子(例えば3価の成分)が格子間サイトに移動する。これらの格子間原子は、活性層内で量子井戸インターミキシングを引き起こし、その結果、バンドギャップを増大させる。ここで、量子井戸インターミキシングの局所的な領域はマスクによって予め決定され、すなわち、
図3に示すように、マスクの下の量子井戸の領域では量子井戸インターミキシングは起こらない。しかしながら、ドーパントの拡散により、「Region II」と記された領域でもドーピングが増加し、そのため、量子井戸内の電荷キャリアの横方向への拡散に対する障壁が形成される。この障壁は既に部分的にマスクの下にあるため、量子井戸インターミキシングの境界に対して局所的にオフセットされている。このように、電荷キャリアの横方向への拡散を低減する障壁は、ドーピングの増加によるものと、量子井戸インターミキシングによるものとの2つが存在する。
【0073】
図3に示すように、量子井戸インターミキシングの境界36と追加のp型ドーピングの境界37とは、局所的にオフセットされており、すなわち、これらの境界は一致していない。電荷キャリア拡散の観点から見ると、障壁の増加も徐々に起こることになる。ドーパントの堆積と拡散とを分離することで、拡散プロセス中に適切な温度プロファイルを自由に選択することによって、拡散プロファイルの変更が可能になる。したがって、例えば、境界37を境界36に向かって押し込むことができる。これにより、マスク50の境界で電荷キャリア拡散の障壁がより急勾配になる。同様に、拡散した材料あるいは活性層内での原子の置換に起因した不純物濃度も、プロセスパラメーターの精度により低くなる。追加的または代替的に、拡散プロセスに際してプロセスパラメーターを最適化することで、第2のドーパントの電気的活性化と、ひいては追加のp型ドーピングにより引き起こされた障壁とを増加させることができ、横方向への電荷キャリア拡散をより強く減少させられる。
【0074】
図4は、発光ダイオードにおけるドーピング障壁の高さを、低電流時のドーピング濃度の関数としてシミュレーションしたものを示す。ドーピングを増やすと、ドーピング障壁が2倍近くになるという顕著な増加が示されている。このように、電荷キャリアは縁部領域から効果的に遠ざけられるだけでなく、導入された第2のドーパントによって不純物の数が増えた領域からも遠ざけられる。
【0075】
これにより、内部量子効率が高くなる。
図5はこれに関するグラフを示し、ドーパント濃度を変えたときの電流に対する内部量子効率を示している。約0.1mAの範囲の電流において、より高い濃度で最大値が改善されていることがはっきりと認められる。
【0076】
提案された原理とさまざまな措置とにより、光電子構造素子の低電流効率と高電流効率の両方が改善される。活性層の光学活性領域における不純物が低減される。同時に、部品の縁部領域(もしくは活性層周辺)では拡散障壁が高くなるため、電荷キャリアを当該構造素子の縁部から遠ざけることができ、その結果、非放射表面再結合の割合が減らされる。
【0077】
単一のLEDの領域での性能向上のための幾何学的な検討に加えて、ウェハレベルでの量子井戸インターミキシングの向上の例を以下に示す。光電子構造素子の複数の構造体は、その後に単一の構造素子またはモノリシックに使用されるかどうかにかかわらず、ウェハレベルで製造される。上述のZn拡散などの措置によって、その後の活性層領域の不純物濃度を下げ、不純物原子を持続的に結合または飽和させることで、低電流効率および高電流効率の向上を図ることができる。
【0078】
図6Aは、半導体構造0の第1の構成の断面の平面図と、断面軸線A-Aに沿った半導体構造のバンドギャップのエネルギーの関連する横断面プロファイルとを示している。半導体構造0には、複数の第1の光学活性領域2aおよび第2の領域2bが形成されている。ここで、複数の第1の光学活性領域2aは、六角形のパターンで互いに離間して配置されており、1つの第2の領域2bは、複数の第1の光学活性領域2aを取り囲み、それらの間の空間に配置されている。
【0079】
さらに、半導体構造0の複数の第1の光学活性領域2aのそれぞれの1つの光学活性領域2aは、複数の光電子構造素子1のそれぞれの一部を形成している。これに関して、光電子構造素子は発光ダイオードと見なされる。複数の第1の光学活性領域2aは、例えば、マスクを施与して形成されてもよいし、例えば、場合によっては同一または類似の形状と大きさを有するマスクセグメントを施与して形成されてもよい。続いて、マスクもしくはマスクセグメント周辺の露出した第2の領域2bに第2のドーパントbを加えて、この領域で量子井戸インターミキシングが起こり得るようにする。第2の領域では、第2のドーパントの拡散とそれに伴う量子井戸インターミキシングとによって、量子井戸インターミキシングが起こらない領域と比較して、バンドギャップのエネルギーが変化する。
【0080】
さらに
図6Aに示す半導体構造0の断面と、そこから導き出される断面軸線A-Aに沿ったバンドギャップのエネルギーの推移とは、領域2a,2bにおけるバンドギャップのエネルギーの推移を示している。この図から、第2の領域2bのバンドギャップのエネルギーは、第1の光学活性領域2aよりも大きいことが見て取れる。第2の領域2bから第1の光学活性領域2aに向かってバンドギャップのエネルギーが減少し、それとは逆に、この減少に従って、第1の光学活性領域2aから第2の領域2bに向かってバンドギャップのエネルギーが増加する。
【0081】
ただし、これらの推移や以下の類似した推移は、定性的な推移としてのみ見なされ、複数の第1の光学活性領域2aと第2の領域2bとにおけるバンドギャップのエネルギーの絶対値または比率を表すものではない。同様に、第2の光学活性領域と第1の光学活性領域との間の遷移領域もさまざまに変化してよく、やや平坦であったり、急勾配であったりしてもよい。唯一の重要な点は、複数の第1の光学活性領域2aから第2の領域2bに向かう遷移領域に実質的にシャープなエッジ部が形成されていることと、複数の第1の光学活性領域2aにおけるバンドギャップのエネルギーが、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーよりも小さいこととである。
【0082】
結果として、言い換えれば、第2の領域2bにおける第2のドーパントbのドーパント濃度が、複数の第1の光学活性領域2aにおける第2のドーパントbのドーパント濃度よりも大きいことを意味する。
【0083】
さらに、
図6Aに示すように、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーは一定の値を有しておらず、複数の第1の領域2aの間の距離が最大となる領域でバンドギャップのエネルギーの局所的な極大値を有していることがわかる。これは、例えばマスクで覆われた2つの第1の光学活性領域2aの間の小さい方の空間よりも、第2のドーパントbが加えられた大きい方の表面の領域の方が、拡散プロセスひいては量子井戸インターミキシングが効率的に進行することによる。
【0084】
さらに
図6Bに示す半導体構造0の断面と、そこから導き出される断面軸線(B-B)に沿ったバンドギャップのエネルギーの推移とは、光電子構造素子1の周長に沿ったバンドギャップのエネルギーの推移を示している。この断面軸線は、第2の領域2bを通っている。上記の説明に従って、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーは一定の値を有しておらず、複数の第1の領域2aの間の距離が最大となる領域で極大値を有し、複数の第1の領域2aの間の距離が最小となる領域で極小値を有している。
図6Bでは、半導体構造のバンドギャップエネルギーが局所的に極大となる領域を例示的にYで表し、半導体構造のバンドギャップエネルギーが局所的に極小となる領域を例示的にXとZとで表している。
【0085】
しかしながら、実際には、半導体構造0の第2の領域2bにおいてと、相応して光電子構造素子1の周長に沿って、可能な限り均一かつ一定のバンドギャップエネルギーを達成することが望ましい。そこで、半導体構造0のバンドギャップエネルギーの局所的な極大値の影響を打ち消すために、特に以下の3つの構成(
図7Aおよび
図7B、
図8Aおよび
図8B、
図9Aおよび
図9B)を提示する。
図7Aおよび
図7B、
図8Aおよび
図8B、ならびに
図9Aおよび
図9Bのそれぞれは、本発明による半導体構造0の一構成の平面図と、断面軸線A-AおよびB-Bに沿った半導体構造のバンドギャップのエネルギーの関連する横断面プロファイルとを示している。
【0086】
ここでは、
図6Aおよび
図6Bの構造例を補足する形で、複数の第1の光学活性領域2aおよび少なくとも1つの第2の領域2bに加えて、更なる少なくとも1つの第3の領域2cが形成されている。この少なくとも1つの第3の領域2cはまた、複数の第1の光学活性領域2aの間の空間に配置されている。
【0087】
より正確に言えば、
図7Aは、複数の第1の光学活性領域2a、第2の領域2bおよび複数の第3の領域2cを有する半導体構造0の断面を示している。複数の第1の光学活性領域2aは、上述したように六角形のパターンで互いに離間して配置されている。第2の領域2bは、複数の第1の光学活性領域2aのそれぞれ1つが第2の領域2bによって環状および/または同心円状に囲まれるように、複数の第1の光学活性領域2aを囲んでいる。これにより、第2の領域2bは、例えば、環状セグメントに分割され、第2の領域2bの次の相接する環状セグメントと、例えば点状にのみ繋がっている。複数の第3の領域2cは、それぞれの場合において、第2の領域2bの環状セグメントの3つによって、デルトイド曲線状に形成されている。
【0088】
ここで、複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cは、例えば、マスクを施与して形成されてもよいし、例えば、場合によっては同一または類似の形状と大きさのマスクセグメントを施与して形成されてもよい。続いて、マスクもしくはマスクセグメント周辺の露出した第2の領域2bに第2のドーパントbを加えて、この領域で量子井戸インターミキシングが起こり得るようにする。
【0089】
さらに
図7Aに示す半導体構造0の断面と、断面軸線A-Aに沿ったバンドギャップのそのエネルギーとは、領域2a,2bおよび2cにおけるバンドギャップのエネルギーを示している。この図から、第2の領域2bのバンドギャップは、第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cのバンドギャップよりも大きいことが見て取れる。軸線A-Aが第2の領域2bとそれぞれ交差している領域では、バンドギャップの局所的な増大が認められる。軸線A-Aと交差する第2の領域2bの面積に応じて、バンドギャップのエネルギーがそれぞれ高い値または低い値になる。
【0090】
ただし、この推移はあくまで定性的な推移と見なされ、複数の第1の光学活性領域2a、第2の領域2bおよび複数の第3の領域2cのバンドギャップのエネルギーの絶対値または比率を表すものではない。同様に、第1の光学活性領域、第2の領域2bおよび第3の領域2cの間の遷移領域もさまざまに変化してよく、やや平坦であったり、急勾配であったりしてもよい。
【0091】
唯一の重要な点は、複数の第1の光学活性領域2aから第2の領域2bに向かう遷移領域と、第3の領域2cから第2の領域2bに向かう遷移領域とに、実質的にシャープなエッジ部が形成されていることと、複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cにおけるバンドギャップのエネルギーが、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーよりも小さいこととである。結果として、言い換えれば、第2の領域2bにおける第2のドーパントbのドーパント濃度が、複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cにおける第2のドーパントbのドーパント濃度よりも大きいことを意味する。
【0092】
さらに
図7Bに示す半導体構造0の断面と、そこから導き出される断面軸線B-Bに沿ったバンドギャップのエネルギーの推移とは、光電子構造素子1の周長に沿ったバンドギャップのエネルギーの推移を示している。この断面軸線は、第2の領域2bを通っている。
図7Bの描写とは異なり、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーは、あまり大きな変化を有しない。複数の第3の領域2cを導入することで、複数の第1の光学活性領域2aのそれぞれ3つの領域の間の空間領域において、半導体構造0のバンドギャップエネルギーの局所的な極大値があまり際立ったものでなくなることが実現されている。したがって、第2の領域2bにおいて、より均一なバンドギャップエネルギーを実現することができる。このこと自体が光電子構造素子1の性能向上につながっている。
【0093】
本発明による半導体構造0の更なる構成形態と、そこから導き出される断面軸線A-AおよびB-Bに沿った半導体構造0におけるバンドギャップのエネルギーの推移とを、
図8Aおよび
図8Bに示している。
【0094】
そこでは、複数の第3の領域2cは、それぞれ円形状であり、複数の第1の光学活性領域2aのそれぞれ3つの中心部に配置されている。同様に、円形という用語には、楕円形の他、長円形または他の丸みを帯びた凸状の形状も含まれ得る。複数の第3の領域2cのこの配置は、
図7Aおよび
図7Bに示したものと同じように、第2の領域2bにおける実質的に均一なドーパント濃度を達成するために、半導体構造0上の施与された第2のドーパントbの局所的な極大値を減少させるのに用いられる。
図8Aに示す円形の第3の領域2cは、複数の第1の光学活性領域2aのそれぞれ3つの中心部に配置されており、光電子構造素子1の性能向上を既に示している。したがって、第2の領域2bは、連続した環状セグメントとしては生じず、複数の第1の光学活性領域2aと第3の領域2cとの間の空間を埋めている。
【0095】
複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cは、例えば、マスクを施与して形成されてもよいし、例えば、場合によっては同一または類似の形状と大きさのマスクセグメントを施与して形成されてもよい。さらに、マスクもしくはマスクセグメント周辺の露出した第2の領域2bに第2のドーパントbを加えて、この領域で量子井戸インターミキシングが起こり得るようにする。
【0096】
さらに
図8Aに示す半導体構造0の断面と、そこから導き出される断面軸線A-Aに沿ったバンドギャップのエネルギーの経過とは、領域2a,2bおよび2cにおけるバンドギャップのエネルギーを示している。この図から、第2の領域2bのバンドギャップのエネルギーは、第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cのバンドギャップのエネルギーよりも大きいことが見て取れる。軸線A-Aが第2の領域2bとそれぞれ交差している領域では、バンドギャップの局所的な増大が認められる。同様に、第1の領域、第2の領域2bおよび第3の領域2cの間の遷移領域もさまざまに変化してよく、やや平坦であったり、急勾配であったりしてもよい。
【0097】
唯一の重要な点は、複数の第1の光学活性領域2aから第2の領域2bに向かう遷移領域と、第3の領域2cから第2の領域2bに向かう遷移領域とに、実質的にシャープなエッジ部が形成されていることと、複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cにおけるバンドギャップのエネルギーが、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーよりも小さいこととである。結果として、言い換えれば、第2の領域2bにおける第2のドーパントbのドーパント濃度が、複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cにおける第2のドーパントbのドーパント濃度よりも大きいことを意味する。
【0098】
さらに
図8Bに示す半導体構造0の断面と、そこから導き出される矢印で示した断面軸線に沿ったバンドギャップのエネルギーの推移とは、光電子構造素子1の周長に沿ったバンドギャップのエネルギーの推移を示している。この断面軸線は、第2の領域2bを通っている。
図7Bに描写するように、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーもまた、実質的に一定の値を有する。
【0099】
複数の第3の領域2cのそれぞれは、
図7Aにおける構成形態の複数の第3の領域2cよりも小さな面積を占めているので、複数の第1の領域2aおよび第3の領域2cからの距離が最大となる領域には、より顕著な局所的な極大値が存在することになる。それに応じて、複数の第1の領域2aと第3の領域との間の距離が最小となる領域には局所的な極小値も存在することになる。
図8Bには、半導体構造のバンドギャップエネルギーの局所的な極大値の領域を例示的にXとZで表し、半導体構造のバンドギャップエネルギーの局所的な極小値を有する領域は例示的にYで表している。
【0100】
重要な点は、
図6Aの構成形態と比較して、複数の第3の領域3cの導入により、半導体構造0のバンドギャップエネルギーの局所的な極大値の大きさが小さくなり、光電子構造素子1の周長に沿うか、もしくは半導体構造0の第2の領域2b内で、バンドギャップの比較的均一かつ一定のエネルギーが優勢になることである。このこと自体が光電子構造素子1の性能向上に既につながっている。
【0101】
さらに、
図8Bに示すように、半導体構造0の複数の第1の光学活性領域2aのそれぞれ1つの光学活性領域2aが、それぞれ1つの光電子構造素子1の一部を形成している。
【0102】
本発明による半導体構造0の更なる構成形態と、そこから導き出される半導体構造0におけるバンドギャップのエネルギーの推移とを、断面軸線A-AおよびB-Bに沿って
図9Aおよび
図9Bに示している。
【0103】
ここで、複数の第1の光学活性領域2aは、それぞれ第2の領域2bによって同心円状に囲まれている。したがって、複数の第2の領域2bが存在しており、それぞれの第2の領域2bは、複数の第1の光学活性領域2aの1つの周りに環状もしくは円状に配置されている。同様に、環状もしくは円状という用語には、楕円形の他、長円形または他の丸みを帯びた凸状の形状も含まれ得る。
【0104】
さらに、半導体構造0は、複数の第1の光学活性領域2aと第2の領域2bとの間の空間に配置された第3の領域2cを有している。複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cは、例えば、マスクを施与して形成されてもよいし、例えば、場合によっては同一または類似の形状と大きさのマスクセグメントを施与して形成されてもよい。さらに、マスクもしくはマスクセグメント周辺の露出した第2の領域2bに第2のドーパントbを加えて、この領域で量子井戸インターミキシングが起こり得るようにする。
【0105】
このように複数の第2の領域2bが複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cのそれぞれ1つの周りに環状に配置されていることで、施与された第2のドーパントbの局所的な極大値が、それぞれ3つの第1の光学活性領域2aの間の空間領域に形成されることが回避される。したがって、複数の第2の領域2bにおいて、実質的に均一なドーパント濃度を実現することができる。複数の第2の領域2bにおいてはまた、実質的に均一な量子井戸インターミキシングが起こり得、このことが光電子構造素子1の性能向上につながっている。
【0106】
さらに
図9Aに示す断面軸線A-Aに沿ったバンドギャップエネルギーの推移は、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーが、第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cにおけるバンドギャップのエネルギーよりも大きいことを示している。軸線A-Aがそれぞれ第2の領域2bと交差する各領域では、バンドギャップの局所的な増大が認められる。
【0107】
ただし、この推移はあくまで定性的な推移と見なされ、複数の第1の光学活性領域2a、第2の領域2bおよび第3の領域2cのバンドギャップのエネルギーの絶対値またはそれらの比率を表すものではない。同様に、第1の光学活性領域、第2の領域2bおよび第3の領域2cの間の遷移領域もさまざまに変化してよく、やや平坦であったり、急勾配であったりしてもよい。
【0108】
唯一の重要な点は、複数の第1の光学活性領域2aから第2の領域2bに向かう遷移領域と、第3の領域2cから第2の領域2bに向かう遷移領域とに、実質的にシャープなエッジ部が形成されていることと、複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cにおけるバンドギャップのエネルギーが、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーよりも小さいこととである。
【0109】
結果として、言い換えれば、第2の領域2bにおける第2のドーパントbのドーパント濃度が、複数の第1の光学活性領域2aおよび第3の領域2cにおける第2のドーパントbのドーパント濃度よりも大きいことを意味する。
【0110】
さらに
図9Bに示す半導体構造0の断面と、そこから導き出される断面軸線B-Bに沿ったバンドギャップのエネルギーの推移とは、光電子構造素子1の周長に沿ったバンドギャップのエネルギーの推移を示している。この断面軸線は、第2の領域2bを通っている。
【0111】
図6B、
図7Bおよび
図8Bに描写しているように、第2の領域2bにおけるバンドギャップのエネルギーはほぼ一定の値を有している。第3の領域2cを導入することにより、施与された第2のドーパントbの局所的な極大値が、それぞれ3つの第1の光学活性領域2aの間の空間領域に形成されることが回避され、ひいては半導体構造0におけるバンドギャップエネルギーの局所的な極大値も生じなくなる。したがって、第2の領域2bにおいて、実質的に均一なバンドギャップのエネルギーを実現することができる。
【0112】
図10A、
図10Bおよび
図10Cは、
図7A、
図8Aおよび
図9Aに示すような半導体構造0の層構造とそれに対応する製造とを示している。ここで、半導体構造0は、n型ドープされた第1の層5と、第1のドーパントが加えられたp型ドープされた第2の層6と、n型ドープされた第1の層5とp型ドープされた第2の層6との間に配置されかつ少なくとも1つの量子井戸を有する活性層2とを含んでいる。これらの層は、例えば、ここには図示されていないキャリア基板上にエピタキシャル成膜される。ここに示した層の他にも、更なる層、コンタクト層、犠牲層などが設けられていてもよい。
【0113】
図10Bは、パターニングされたマスク7が施与される次のステップを示している。マスクにはところどころ穴が開いており、それらの穴にドーパントbが導入されるようになっている。この場合、活性層2への第2のドーパントbの拡散により、上述の量子井戸インターミキシングが発生する。
【0114】
p型ドープされた第2の層6の表面に、例えば誘電体マスクまたはフォトレジストマスクのマスクもしくはマスクセグメント7を施与し、引き続き拡散プロセスを行うことで、
図10Cに示す構造が形成される。この図は、マスク7の下に、第2の領域2bと少なくとも1つの第3の領域2cとを周囲に有する多数の光学活性領域を示している。この構造および構成は、前述のように、施与されたマスク7のパターニングから生じる。第2のドーパントbは、p型ドープされた第2の層6を通って活性層2内に拡散し、その中で領域2a,2bおよび2cを形成する。したがって、活性層2内の領域2a,2bおよび2cは、p型ドープされた第2の層6の表面に施与されたマスクもしくはマスクセグメント7が活性層2に投影された形となる。
【0115】
複数の第1の光学活性領域2aと少なくとも1つの第3の領域2cとは、マスクもしくはマスクセグメント7の下に直接投影されて位置し、マスクもしくはマスクセグメント7により第2のドーパントbが実質的に拡散しない領域として生じる。
【0116】
したがって、少なくとも1つの第2の領域2bは、マスクもしくはマスクセグメント7の周囲に自由表面として第2のドーパントbが加えられる領域の下に直接投影されて位置する領域として生じる。その結果、少なくとも1つの第2の領域2bにおいて、第2のドーパントbは、第2のp型ドープ層6、活性層2に拡散し、ドーピングプロファイルおよびプロセスパラメーターに応じて、活性層2に相接するn型ドープ層5の領域にも部分的に拡散する。
【0117】
このことから、少なくとも1つの第2の領域2bは、第2のドーパントbひいては量子井戸インターミキシングを有していることがわかる。
【0118】
図11は、マスクもしくはマスクセグメント7の施与および第2のドーパントbの拡散後の半導体構造0の層構造に加えて、活性層2における少なくとも1つの量子井戸のバンドギャップを示している。図の垂直方向におけるバンドギャップEのエネルギーを、図の水平方向における半導体構造0の横断面にわたって示している。
【0119】
ここで、左から右に見たバンドギャップEのエネルギーは、第3の領域2cでは実質的に一定であり、第3の領域2cから第2の領域2bに向かう定義された遷移領域では増加する。第2の領域2bでは、バンドギャップEのエネルギーは再び一定の値を有し、引き続き、第2の領域2bから第1の光学活性領域2aに向かう定義された遷移領域では低下し、第1の光学活性領域2aのバンドギャップEのエネルギーは一定の値をとるようになる。それとは逆に、この推移に従って、第1の光学活性領域2aから第2の領域2bに向かう定義された遷移領域のバンドギャップEのエネルギーが増加し、第2の領域2bから第3の領域2cに向かう定義された遷移領域のバンドギャップEのエネルギーが低下する。
【0120】
ただし、図示されているバンドギャップEのエネルギーの推移はさまざまに変化してもよく、第1の光学活性領域2a、少なくとも1つの第2の領域2bおよび少なくとも1つの第3の領域2cにおけるバンドギャップEのエネルギーの絶対値またはそれらの比率を表すものではない。同様に、少なくとも1つの第2の領域2bと第1の光学活性領域2aとの間の遷移領域および少なくとも1つの第2の領域2bと少なくとも1つの第3の領域2cとの間の遷移領域もさまざまに変化してよく、やや平坦であったり、急勾配であったりしてもよい。
【0121】
唯一の重要な点は、第1の光学活性領域2aおよび少なくとも1つの第3の領域2cのバンドギャップEのエネルギーが、少なくとも1つの第2の領域2bのバンドギャップEのエネルギーよりも小さいことと、第1の光学活性領域2aおよび少なくとも1つの第2の領域2bのそれぞれのバンドギャップEのエネルギーが、領域2aの周長に沿って実質的に一定であることとである。