(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】NR及び/又はNMNとセサミン類とを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/15 20160101AFI20241127BHJP
A61K 31/36 20060101ALI20241127BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241127BHJP
A23L 33/13 20160101ALI20241127BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241127BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A23L33/15
A61K31/36
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P43/00
A61P43/00 107
A23L33/13
A23L33/105
A61K31/706
(21)【出願番号】P 2022521871
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017472
(87)【国際公開番号】W WO2021230146
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020083462
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹本 大輔
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/054485(WO,A1)
【文献】特開平05-051388(JP,A)
【文献】Cocoa Drink ID:326166,Mintel GNPD,2004年12月
【文献】Black Sesame & Banana au Lait ID:4263905 ,Mintel GNPD,2016年09月
【文献】Trends in Cell Biology,2014年,VOL.24,PP.464-471
【文献】Cell,2004年05月14日, Vol. 117,p.495-502
【文献】TRAMMELL, AJ Samuel et al.,Nicotinamide Riboside Is a Major NAD+ Precursor Vitamin in Cow Milk,The Journal of Nutrition Genomics, Proteomics, and Metabolomics,2016年04月06日,Vol.146,p.957-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61Q
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類の1種以上とを有効成分として含有
し、
塩が、塩化物、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される1種以上であり、
セサミン類の1種以上が、セサミン及びエピセサミンであり、
セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100である、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度上昇用組成物。
【請求項2】
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類の1種以上とを有効成分として含有し、
塩が、塩化物、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される1種以上であり、
セサミン類の1種以上が、セサミン及びエピセサミンであり、
セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100である、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を向上、低下抑制、維持又は改善させるために使用される組成物。
【請求項3】
前記セサミン類の1種以上の総含有量が0.001~10重量%である請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ミトコンドリア機能を向上、低下抑制、維持又は改善させる
ために使用される請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制、維持又は改善させる
ために使用される請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
NAD濃度の低下に伴う老化の抑制及び/又は遅延のために使用される請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗老化用組成物である請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
経口用組成物である請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
飲食品である請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
「NAD濃度の低下に伴う老化の抑制及び/又は遅延」及び/又は「細胞老化の抑制及び/又は遅延」の表示を付した請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上を
含有する組成物を投与する、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇方法
であって、
塩が、塩化物、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される1種以上であり、
セサミン類の1種以上が、セサミン及びエピセサミンであり、
セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100である、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項12】
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上を
含有する組成物を投与する、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善方法
であって、
塩が、塩化物、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される1種以上であり、
セサミン類の1種以上が、セサミン及びエピセサミンであり、
セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100である、方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項13】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇のための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上
を含有する組成物の使用
であって、
塩が、塩化物、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される1種以上であり、
セサミン類の1種以上が、セサミン及びエピセサミンであり、
セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100である、使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【請求項14】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善のための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上
を含有する組成物の使用
であって、
塩が、塩化物、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される1種以上であり、
セサミン類の1種以上が、セサミン及びエピセサミンであり、
セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100である、使用(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類とを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者比率が高い国では、健康寿命の延長が課題となっている。健康寿命の短縮の要因の一つとして、加齢に伴い体内でのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、NAD+)の生産が低下することによる身体機能等の低下が挙げられる。
【0003】
ここで、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+(以下、NADともいう))は、体内にて多くの酸化還元反応を媒介する補酵素である。NADレベルは老化の過程で低下し、核およびミトコンドリア機能に欠陥を引き起こし、多くの加齢に伴う病理を引き起こすことが知られている。例えば、非特許文献1では、老化や老化に関連する疾患は、細胞内におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)レベルの低下、及びNAD+依存性脱アセチル化酵素である長寿遺伝子サーチュインの酵素活性低下と関連することが示唆されている。そして、近年、NAD+を増加させることでサーチュインを活性化させ、抗老化作用を示すことが報告されている(非特許文献2)。このため加齢に伴うNAD+の低下の予防又は改善に有効であり、医薬品、特定保健用食品、機能性食品等への応用が可能な成分の探索に関して、精力的な研究が行われている。
【0004】
例えば、非特許文献3では、NAD前駆体であるニコチンアミドリボシド(NR)は、ミトコンドリアの展開されたタンパク質応答とプロヒビチンタンパク質の合成を誘導し、これにより高齢マウスの筋幹細胞(MuSC)が活性化したことが開示されている。また、NRは、筋ジストロフィーのマウスモデルでMuSC老化を防止したこと、NRが神経SC(幹細胞)の老化を遅延させ、メラノサイトSCがマウスの寿命を延ばすことが開示されている。
【0005】
また、非特許文献4は、ニコチンアミドリボシド(NR)は、NAD+前駆体ビタミンとして広く使用されており、NRの単回経口投与により、ヒトの血中NAD+濃度が用量依存的に増加することを示している。また、非特許文献5は、NMNがサーチュインを活性化することを開示しており、具体的に、主要な天然NAD+中間体(中間代謝産物ともいう)であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を通常の野生型マウスに12か月間投与し、NMNが明らかな毒性なしにマウスの加齢に伴う生理的衰退を効果的に緩和したことを開示し、ヒトの効果的なアンチエイジング介入としてのNMNの大きな可能性を示している。
【0006】
一方、セサミン及び/又はエピセサミンについては、生体内のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を上昇させる作用については何ら示唆も開示もなされていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Imai, S. & Guarente, L. (2014) Trends Cell Biol., 24, 464-471. “NAD+ and sirtuins in aging and disease”
【文献】Yoshida M, Satoh A, Lin JB, Mills KF, Sasaki Y, Rensing N, Wong M, Apte RS, Imai SI., Cell Metab. (2019) 30(2):329-342.e5. “Extracellular Vesicle-Contained eNAMPT Delays Aging and Extends Lifespan in Mice”
【文献】Zhang, H., Ryu, D., Wu, Y., Gariani, K., Wang, X., Luan, P., D’Amico, D., Ropelle, E.R., Lutolf, M.P., Aebersold, R., Schoonjans, K., Menzies, K.J., & Auwerx, J. (2016) Science, 352, 1436-1443. “NAD+ repletion improvesmitochondrial and stem cell function and enhances life span in mice”
【文献】Samuel A.J. Trammell, Mark S. Schmidt, Benjamin J. Weidemann, Philip Redpath, Frank Jaksch, Ryan W. Dellinger, Zhonggang Li, E Dale Abel, Marie E. Migaud & Charles Brenner, (2016) Nat. Commun. 7, 12948. “Nicotinamide riboside is uniquely and orally bioavailable in mice and humans”
【文献】Mills, K.F., Yoshida, S., Stein, L.R., Grozio, A., Kubota, S., Sasaki, Y., Redpath, P., Migaud, M.E., Apte, R.S., Uchida, K., Yoshino, J., & Imai, S.I. (2016) Cell Metab., 24, 795-806. “Long-Term Administration of Nicotinamide Mononucleotide Mitigates Age-Associated Physiological Decline in Mice”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、NAD濃度を上昇させる作用を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、セサミン類がニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)上昇作用を有し、さらに、セサミン類と、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する組成物が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を効果的に上昇させることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の組成物に関する。
〔1〕ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類の1種以上とを有効成分として含有する組成物。
〔2〕セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンである上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100である上記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕上記セサミン類の1種以上の総含有量が0.001~10重量%である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を向上、低下抑制、維持又は改善させる上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕ミトコンドリア機能を向上、低下抑制、維持又は改善させる上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制、維持又は改善させる上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕NAD濃度の低下に伴う老化の抑制及び/又は遅延のために使用される上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕抗老化用組成物である上記〔1〕~〔8〕いずれかに記載の組成物。
〔10〕経口用組成物である上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の組成物。
〔11〕飲食品である上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔12〕「NAD濃度の低下に伴う老化の抑制及び/又は遅延」及び/又は「細胞老化の抑制及び/又は遅延」の表示を付した上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の組成物。
〔13〕ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上を投与する、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇方法。
〔14〕ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上を投与する、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善方法。
〔15〕ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇のための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上の使用。
〔16〕ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善のための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を上昇させる作用を有する組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】セサミン・エピセサミン混合物(SE)(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))と、NRとをモル比で1:100で含有する組成物、SE又はNRの細胞内NAD濃度の上昇効果を示すグラフである。
【
図2】セサミン・エピセサミン混合物(SE)(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))と、NRとをモル比で1:1で含有する組成物、SE又はNRの細胞内NAD濃度の上昇効果を示すグラフである。
【
図3】セサミン・エピセサミン混合物(SE)(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))と、NRとをモル比で1:3.3若しくは1:10で含有する組成物又はNRの細胞内NAD濃度の上昇効果を示すグラフである。
【
図4】セサミン・エピセサミン混合物(SE)(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))と、NMNとをモル比で1:3若しくは1:10で含有する組成物、SE又はNMNの細胞内NAD濃度の上昇効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の組成物は、セサミン類の1種以上を含む。
セサミン類は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を上昇させる作用を有し、細胞内のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善作用を有し、NAD濃度の向上のため、NAD濃度の低下抑制のため、NAD濃度の維持のため、又は、NAD濃度の改善のために使用される。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を上昇させるとは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)量を上昇させることである。なお、NAD濃度は、細胞内のNAD濃度を意味する。
【0014】
セサミン類は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度上昇作用を有し、NAD濃度の向上、低下抑制、維持若しくは改善作用により、NAD濃度の低下に伴う老化の予防又は改善に寄与すると期待される。老化は、身体的機能、生理的機能、精神的機能が衰える現象であると理解されている。老化による身体的変化は成熟期に達したあと、40歳くらいから始まり、皮膚のシワ、頭髪や歯の脱落、白髪化、疲労の蓄積や回復の低下、視力や聴力の低下、運動機能の低下、筋力や活動量の低下、睡眠の質の低下、骨量の低下等が見られるようになる。老化は、それ自体、病気とはいえないものの、身体的機能、生理的機能の低下は、動脈硬化、糖・脂質代謝異常、神経脱落変性、骨粗鬆症、白内障等のいわゆる老年病のリスクを高めることになり、また身体的機能の衰えに付随して記憶や学習といった精神的機能についての老化が生じることになる。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を上昇させることは、NAD濃度の低下に伴う老化の予防又は改善に有効である。
【0015】
(セサミン類)
本発明において、セサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む化合物の総称である。セサミンは、ゴマに含まれる主要なリグナン化合物の一種である。セサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4-9331号公報に記載されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が挙げられる。セサミン類の1種以上として、これらの化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。セサミン類の具体例としては、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモール、セサモリン等を例示でき、これらの立体異性体又はラセミ体を単独で、または混合して使用することができる。また、セサミン類の代謝物(例えば、特開2001-139579号公報に記載)も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。本発明においては、セサミン類の1種以上として、セサミン及び/又はエピセサミンを好適に用いることができ、セサミン及びエピセサミンをより好適に用いることができる。セサミン及びエピセサミンを用いる場合、これらの比率は特に限定されないが、例えば、セサミン:エピセサミン(重量比)が1:0.1~1:9が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。
【0016】
本発明で使用されるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミンの場合は、ゴマ油から公知の方法(例えば、特開平4-9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または精製物という)を用いることができる。また、市販のゴマ油(液状)をそのまま用いることもできる。しかしながら、ゴマ油を用いた場合には、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、ゴマ油から抽出された無味無臭であるセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。また、ゴマ油を用いた場合、セサミン含有量が低いため、好ましい量のセサミンを配合しようとすると、処方される組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎるため、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり過ぎて摂取に支障が生じる。したがって、摂取量が少なくてよいという観点からもゴマ油からのセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。合成によりセサミン類を得ることもできる。その方法としては、例えば、セサミン、エピセサミンについては、Berozaらの方法(J.Am.Chem.Soc.,78,1242(1956))で合成することができる。セサミン、エピセサミンの代謝物についてはUrataらの方法(Chem.Pharm.Bull.(Tokyo),56(11)1611-2(2008))で合成することができる。
【0017】
セサミン類は、天然物や飲食品に含まれ、食経験が豊富であり、その安全性の高さが認められている化合物である。安全性の担保されたセサミン類は、継続摂取及び長期的摂取に最適である。
【0018】
(ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩)
本発明の組成物は、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上を含む。
NR及びNMNは、NADの中間代謝産物である。NRはニコチンアミドリボシドキナーゼ(NRK)によりNMNへと変換され、NAD+が合成されることが知られている。NR、NMN及びそれらの塩は、公知の化合物であり、公知の製造方法により製造することができ、また、市販品を使用することもできる。
【0019】
NR及び/又はNMNの塩として、薬理学的に許容される塩を用いることができ、例えば、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。具体的には、金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩など)、アンモニウム塩、無機酸との塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸など無機酸との塩など)、有機酸との塩(例えば、酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸との塩など)が挙げられる。
【0020】
NR及び/又はNMNの塩として、飲食品、医薬品等に使用可能な塩が好ましく、例えば、塩化物;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。NRの塩としては、ニコチンアミドリボシドクロリド(塩化物)が好ましい。
【0021】
(ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類の1種以上とを含有する組成物)
本発明の組成物は、上記ニコチンアミドリボシド(NR)、上記ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、上記セサミン類の1種以上とを含有する。本発明の組成物は、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、上記セサミン類の1種以上とを有効成分として含有する。本発明の組成物は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度上昇用組成物であってよい。
本発明の組成物において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇作用を効果的に高める観点、すなわち、NAD濃度の向上作用、低下抑制作用、維持作用又は改善作用を効果的に高める観点から、セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、1~100であることが好ましい。また、セサミン類に対するNR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のモル比(NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上/セサミン類)が、3~80であることがより好ましく、5~50であることがさらに好ましい。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇作用、すなわち、NAD濃度の向上作用、低下抑制作用、維持作用又は改善作用を高めることにより、抗老化効果を奏するため、本発明の組成物において、NR、NMN又はそれらの塩と、セサミン類とのモル比を上記特定の範囲とすることは抗老化作用の観点からも好ましい。
なお、本明細書において、NR、NMN又はこれら塩の量を示す際は、ニコチンアミドリボシド(NR)量に換算した値を用いる。NR、NMN及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上のNR換算の重量は、NR、NMN及びそれらの塩の総重量のNR換算値である。
【0022】
本発明の組成物に含まれるセサミン類の1種以上の総含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明の組成物中のセサミン類の総含有量は、例えば、該組成物中に0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましく、また、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。一態様において、セサミン類の総含有量は、組成物中に0.001~10重量%が好ましく、0.01~5重量%がより好ましく、0.05~5重量%がさらに好ましい。上記総含有量は、セサミン類の化合物を2種以上含有する場合は、これらの合計含有量である。
【0023】
本発明の組成物に含まれるニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上の総含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明の組成物中のニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上の総含有量は、例えば、該組成物中に0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましく、また、95重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。一態様において、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上の総含有量は、組成物中に0.001~95重量%が好ましく、0.01~80重量%がより好ましく、0.05~70重量%がさらに好ましい。上記総含有量は、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上の化合物を2種以上含有する場合は、これらの合計含有量である。
【0024】
本発明の組成物は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を上昇させることができるものであり、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を向上、低下抑制、維持又は改善させるものであり、加齢により低下したニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度を向上、低下抑制、維持、又は改善させることができるものである。
【0025】
生体内のNADは、サーチュインを活性化して下流の酵素あるいは転写因子を脱アセチル化させることで、ミトコンドリア機能およびエネルギー産生に関わる分子の発現・合成を促進させるという重要な役割を担っている。このためNAD濃度の向上、低下抑制、維持又は改善により、ミトコンドリア機能の向上、低下抑制、維持又は改善効果が得られる。本発明の組成物は、ミトコンドリア機能を向上、低下抑制、維持又は改善させることができる。また、本発明の組成物は、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制、維持又は改善させることができる。また、これにより本発明の組成物は、抗細胞老化効果を奏する。
【0026】
なお、本明細書において、ミトコンドリア機能及びミトコンドリアのエネルギー産生能は、本発明の属する技術分野における通常の知識に基づき評価されればよく、その方法は特に限定されない。例えば、細胞外フラックスアナライザーを使用して、測定対象である細胞におけるATP合成時にミトコンドリアで使用される酸素消費速度(以下、「OCR」とも記載する)を、ATP合成酵素阻害剤(例えば、オリゴマイシン及びロテノン)、及び、脱共役剤(例えば、カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP))を添加しながら継続的に測定することで、ミトコンドリア機能の評価をすることができる。評価項目は、例えば、ミトコンドリア機能評価における主要な指標とされる、基礎呼吸量、ATP産生能及び最大呼吸量について解析することにより、ミトコンドリア機能を評価することができる。
【0027】
本発明の組成物は、老化の抑制及び/又は遅延のために使用することができ、NAD濃度の低下に伴う老化の抑制及び/又は遅延のために使用することが好ましい。
【0028】
一態様において、本発明の組成物は、NAD濃度を向上、低下抑制、維持又は改善させるものであり、加齢により低下したNAD濃度の、向上、低下抑制、維持又は改善のために好適に使用される。
一態様においては、中高年者における加齢により低下したNAD濃度の向上、低下抑制、維持又は改善のために好適に使用される。中高年者は、高齢者を含む。中高年者は、例えば、40歳以上のヒトであってよく、高齢者は、例えば、60歳以上又は65歳以上のヒトであってよい。
ヒト等の動物のNAD濃度は、本発明の属する技術分野における通常の方法により測定することができ、例えば、Amplite(登録商標) Colorimetric NAD/NADH Ratio Assay Kit(AAT Bioquest社)や、NAD+/NADH Quantification Colorimetric Kit(Biovision社)を用いて細胞内NAD濃度を測定することにより測定することができる。
【0029】
本発明の組成物は、NAD濃度の向上、低下抑制、維持又は改善により、予防又は改善が期待できる状態又は疾患の処置のために用いることができる。このような状態又は疾患として、例えば、加齢に伴う身体的機能、生理的機能、精神的機能の衰え、具体的に言えば、例えば、皮膚の老化症状(しわ、たるみの発生、皮膚の張りの喪失等)の発生、老化による乾燥肌(皮膚の保湿性の低下)、皮膚のしみ、そばかす、肌荒れの発生、ホルモン(成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性ホルモン、プロラクチン、抗利尿ホルモン、副甲状腺ホルモン、メラトニン等)分泌の低下や亢進、活性酸素による細胞(脳細胞、心筋細胞等)の傷害、頭髪や歯の脱落、視力や聴力の低下、運動機能の低下、骨量の低下、体力の低下、記憶力の低下、学習能力の低下、免疫機能の低下、老年病の発生等が挙げられる。
本明細書で予防は、発症を防止すること、発症を遅延させること、発症率を低下させること、発症のリスクを軽減すること等を包含する。状態又は疾患の改善は、対象を状態又は疾患から回復させること、状態又は疾患の症状を軽減すること、状態又は疾患の症状を好転させること、状態又は疾患の進行を遅延させること、防止すること等を包含する。
【0030】
本発明の組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療的用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
本発明の組成物は、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の形態とすることができる。本発明の組成物は、それ自体がニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善のために用いられる飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
また、本発明の組成物は、それ自体がミトコンドリア機能を向上、低下抑制、維持若しくは改善させるための、又は、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制、維持若しくは改善させるための、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
本発明の組成物は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。
本発明の組成物は、経口用組成物、非経口用組成物のいずれであってもよいが、好ましくは経口用組成物である。経口用組成物としては、飲食品、経口用の医薬品、医薬部外品、飼料等そのものであってよく、又はこれらに含まれてもよい。本発明の組成物は、好ましくは飲食品又は経口用医薬品であり、より好ましくは飲食品である。
【0031】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、NR、NMN及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種以上と、セサミン類の1種以上とに加えて、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分は、組成物の形態等に応じて選択することができ、一般的に飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等に使用可能なものが使用できる。本発明の組成物を、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法により製造することができる。
【0032】
例えば本発明の組成物を飲食品とする場合、NR、NMN及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種以上と、セサミン類の1種以上とに加え、飲食品に使用可能な成分(例えば、食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、健康飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用飲食品等が挙げられる。上記健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品等は、例えば、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ドライシロップ剤、シロップ剤、液剤、飲料、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0033】
本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、例えば、NR、NMN及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種以上と、セサミン類の1種以上とに加え、薬理学的に許容される担体、必要に応じて添加される添加剤等を配合して、各種剤形の医薬品又は医薬部外品とすることができる。そのような担体、添加剤等は、医薬品又は医薬部外品に使用可能な、薬理学的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤等の1又は2以上が挙げられる。医薬品又は医薬部外品の投与(摂取)形態としては、経口又は非経口(経皮、経粘膜、経腸、注射等)投与の形態が挙げられる。本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、経口用医薬品又は医薬部外品とすることが好ましい。経口投与のための剤形としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁液、乳剤、チュアブル剤等が挙げられる。医薬品は、非ヒト動物用医薬であってもよい。
【0034】
本発明の組成物を飼料とする場合には、NR、NMN及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種以上と、セサミン類の1種以上とを、飼料に配合すればよい。飼料には飼料添加剤も含まれる。飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料;ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;犬、猫、小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
【0035】
本発明の組成物は、経口用組成物(経口で摂取(経口投与)される組成物)であることが好ましい。本発明の組成物の投与量(摂取量ということもできる)は特に限定されない。本発明の組成物の投与量は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善効果が得られるような量であればよく、投与形態、投与方法、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
一態様において、本発明の組成物を、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、セサミン類の総投与量は、1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは、3mg以上、また、好ましくは200mg以下、より好ましくは100mg以下、さらに好ましくは80mg以下である。一態様において、セサミン類の総投与量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5~200mg、より好ましくは1~100mg、さらに好ましくは3~80mgである。上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。一態様においては、上記量のセサミン類を、ヒトに経口で摂取させる又は投与することが好ましい。一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、体重60kgあたり、1日あたり上記量のセサミン類を摂取させる又は投与するために使用することができる。上記総投与量は、セサミン類の化合物を2種以上使用する場合は、これらの合計量である。一態様においては、セサミン及び/又はエピセサミンを、セサミン及びエピセサミンの総投与量として1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5~200mg、より好ましくは1~100mg、さらに好ましくは3~80mg、ヒト(成人)に経口で摂取させる又は投与することが好ましい。
【0037】
一態様において、本発明の組成物を、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上の総投与量は、NR換算で、1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは3mg以上、また、好ましくは20000mg以下、より好ましくは10000mg以下、さらに好ましくは8000mg以下である。一態様において、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上の総投与量は、NR換算で、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5~20000mg、より好ましくは1~10000mg、さらに好ましくは3~8000mgである。上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。一態様においては、上記量のニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上を、ヒトに経口で摂取させる又は投与することが好ましい。一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、体重60kgあたり、1日あたり上記量のニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上を摂取させる又は投与するために使用することができる。上記総投与量は、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される化合物を2種以上使用する場合は、これらの合計量である。
【0038】
本発明の組成物は、継続して摂取又は投与されるものであることが好ましい。セサミン類は、継続的に摂取又は投与されることによって、上記の効果が高まることが期待される。また、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される化合物類は、継続的に摂取又は投与されることによって、上記の効果が高まることが期待される。一態様において、本発明の組成物は、好ましくは1週間以上、より好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上継続して、特に好ましくは12週間以上継続して摂取又は投与されることが好ましい。
【0039】
本発明の組成物には、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善により発揮される機能の表示が付されていてもよい。このような表示として、例えば、「ミトコンドリア機能の向上、低下抑制又は維持」、「ミトコンドリアによるエネルギー産生能の向上、低下抑制又は維持」、「NAD濃度の低下による老化の抑制及び/又は遅延」、「細胞老化の抑制及び/又は遅延」及び「老化抑制」からなる群より選択される1又は2以上の機能の表示が付されていてもよい。
本発明の一態様において、本発明の組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。
【0040】
本発明の組成物を、摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されず、ヒト及びヒト以外の動物に摂取させることができる。ヒト以外の動物としては、例えば、産業動物、ペットおよび実験動物等が挙げられる。具体的に、産業動物とは、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ及びヒツジ等の家畜、ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥及びダチョウ等の家禽、並びに、ブリ、ハマチ、マダイ、マアジ、コイ、ニジマス及びウナギ等の魚類等、産業上飼養することが必要とされている動物をいう。ペットとはイヌ、ネコ、マーモセット、小鳥及びハムスター等のいわゆる愛玩動物、コンパニオン・アニマルをいい、実験動物とはマウス、ラット、モルモット、ビーグル犬、ミニブタ、アカゲザル及びカニクイザル等、医学、生物学、農学及び薬学等の分野で研究に供用される動物を表す。
【0041】
本発明の組成物を、摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、投与対象として、ニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善を必要とする又は希望する対象が挙げられる。このような対象として、例えば、中高年者、ミトコンドリア機能を向上、低下抑制、維持又は改善を必要とする又は希望する対象、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制、維持又は改善を必要とする又は希望する対象、NAD濃度の低下による老化の抑制及び/又は遅延を必要とする又は希望する対象等が挙げられる。中高年者は、例えば、40歳以上のヒトであってよい。一態様において中高年者の中でも、対象として高齢者が好ましい。高齢者は、例えば、60歳以上又は65歳以上のヒトであってよい。本発明の組成物は、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善により予防又は改善が期待できる症状又は疾患の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0042】
本発明は、以下の方法も包含する。
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上を投与する、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇方法。
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上を投与する、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善方法。
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上を投与する、加齢により低下したニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善方法。
【0043】
本発明は、以下の使用も包含する。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇のための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上の使用。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善のための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上の使用。
加齢により低下したニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善のための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、並びに、セサミン類の1種以上の使用。上記方法及び使用は、治療的な方法又は使用であってもよく、非治療的な方法又は使用であってもよい。
ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類の1種以上とを投与することにより、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の向上、低下抑制、維持又は改善が可能となる。これにより、ミトコンドリア機能を向上、低下抑制、維持又は改善や、ミトコンドリアのエネルギー産生能を向上、低下抑制、維持又は改善、NAD濃度の低下による老化の抑制及び/又は遅延が可能となる。
【0044】
上記の方法及び使用において、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される化合物、セサミン類及びこれらの好ましい態様は、上述した本発明の組成物と同じである。セサミン類の1種以上として、セサミン類の化合物1種を使用してもよく、2種以上を使用してもよい。また、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される化合物として、該化合物1種以上を使用してもよく2種以上を使用してよい。上記方法及び使用においては、1日に1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類の1種以上とを含有する組成物を対象に投与する(摂取させる)ことが好ましい。上記方法及び使用においては、本発明の組成物を、経口投与(摂取)することが好ましい。上記の使用は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトにおける使用である。
【0045】
上記方法及び使用においては、所望の作用(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)濃度の上昇作用、すなわち、NAD濃度の向上、低下抑制、維持又は改善作用、これによる、ミトコンドリア機能の向上、低下抑制、維持若しくは改善作用、ミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制、維持若しくは改善作用、及び/又は、NAD濃度の低下による老化の抑制及び/又は遅延作用)が得られる量(有効量ということもできる)のニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、及び、セサミン類の1種以上を使用すればよい。ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、及び、セサミン類の1種以上の好ましい投与量や投与対象等は上述した本発明の組成物と同じである。ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上、及び、セサミン類の1種以上は、そのまま投与してもよく、これらを含む組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明の組成物を使用してもよい。
【0046】
上記使用において、セサミン類の1種以上を含有する組成物と、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上を含有する組成物とを個別に調製し、それらをほぼ同時に、または、一方の組成物を服用後、その効き目が持続している間に他方の組成物を服用すれば、本発明の意図するニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上とセサミン類の1種以上との併用による効果(NAD濃度の上昇作用、すなわち、NAD濃度の向上、低下抑制、維持若しくは又は改善作用、これによる、ミトコンドリア機能の向上、低下抑制、維持若しくは改善作用、ミトコンドリアのエネルギー産生能の向上、低下抑制、維持若しくは改善作用、及び/又は、NAD濃度の低下による老化の抑制及び/又は遅延、)の増強作用が得られる。よって、セサミン類の1種以上を含有する組成物とニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上を含有する組成物とを含むキット等も本発明の組成物の範囲に含まれる。
【0047】
本発明は、本発明の組成物を製造するための、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上と、セサミン類の1種以上との使用も包含する。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例及び比較例において、セサミン・エピセサミン混合物(SE)として、セサミン及びエピセサミンの混合物(セサミン:エピセサミン(重量比)=1:1)を使用した。
【0050】
<比較例1~3、実施例1:セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR)による細胞内NAD
+濃度(細胞内NAD濃度)の評価試験>
細胞内NAD
+濃度への影響を調べるため、0.5×10
4cells/wellのHepa1-6細胞を96ウェルプレートに播き、37℃、CO
2(5%)の条件でDMEM培地(ナカライテスク株式会社、10%FBS含有)中で96時間培養した。培養96時間後に、セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR塩化物(Carbosynth Limited社製)を使用)を含有しないDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例1))、SEを0.3μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例2))、NRを30μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例3))、あるいは、SE0.3μMとNRを30μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(実施例1))を、各ウェル中の培地と交換し、更に24時間培養した。その後、添加培地を取り除き、ウェル中の細胞をD-PBS(ナカライテスク株式会社)にて洗浄後、Lysis Buffer(Amplite(登録商標) Colorimetric NAD/NADH Ratio Assay Kit、AAT Bioquest社)を添加して細胞抽出液を回収した。その後、Kitのマニュアルに従い、細胞内NAD
+濃度を分析した。細胞内NAD
+濃度は、細胞抽出液のタンパク質濃度を測定し(Pierce(登録商標) BCA Protein Assay Kit、Thermo Scientific社)、タンパク質濃度当たりの値として算出した。有意差検定は、対応のないt検定で行った(有意水準:p<0.05、対照群に対して)。
得られた結果(N=3の平均)を
図1に示す(*:p<0.05)。
【0051】
図1より、細胞内NAD
+濃度は、比較例1(SE及びNRを含有しない培地)に対して、比較例2のSE0.3μM群で2.3%、比較例3のNR30μM群で3.1%の増加が認められた。一方、実施例1のSE0.3μMとNR30μMの組合せ群で14.6%の増加が認められ、これは比較例2のSE0.3μM処理による増加割合と比較例3のNR30μM処理による増加割合を単純に足した値(5.4%)よりも顕著に大きかった。以上より、SE及びNRをモル比(SE:NR)1:100の割合で組み合わせて処理することによる細胞内NAD
+濃度の相乗的な増加効果を確認した。
【0052】
<比較例4~6、実施例2:セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR)による細胞内NAD
+濃度(細胞内NAD濃度)の評価試験>
細胞内NAD
+濃度への影響を調べるため、1.0×10
4cells/wellのHepa1-6細胞を96ウェルプレートに播き、37℃、CO
2(5%)の条件でDMEM培地(ナカライテスク株式会社、10%FBS含有)中で48時間培養した。培養48時間後に、セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR、塩化物を使用)を含有しないDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例4))、SEを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例5))、NRを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例6))、あるいは、SE10μMとNRを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(実施例2))を、各ウェル中の培地と交換し、更に24時間培養した。その後、添加培地を取り除き、ウェル中の細胞をD-PBS(ナカライテスク株式会社)にて洗浄後、Lysis Buffer(Amplite(登録商標) Colorimetric NAD/NADH Ratio Assay Kit、AAT Bioquest社)を添加して細胞抽出液を回収した。その後、Kitのマニュアルに従い、細胞内NAD
+濃度を分析した。細胞内NAD
+濃度は、細胞抽出液のタンパク質濃度を測定し(Pierce(登録商標) BCA Protein Assay Kit、Thermo Scientific社)、タンパク質濃度当たりの値として算出した。得られた結果(N=3の平均)を
図2に示す(*:p<0.05)。
【0053】
図2より、細胞内NAD
+濃度は、比較例4(SE及びNRを含有しない培地)に対して、比較例5のSE10μM群で1.5%、比較例6のNR10μM群で11.6%の増加が認められた。一方、実施例2のSE10μMとNR10μMの組合せ群で15.7%の増加が認められ、これは比較例5のSE10μM処理による増加割合と比較例6のNR10μM処理による増加割合を単純に足した値(13.1%)よりも明らかに大きかった。以上より、SE及びNRをモル比(SE:NR)1:1の割合で組み合わせて処理することによる細胞内NAD
+濃度の相乗的な増加効果を確認した。
【0054】
<比較例7~9、実施例3及び4:セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR)による細胞内NAD
+濃度(細胞内NAD濃度)の評価試験>
細胞内NAD
+濃度への影響を調べるため、1.0×10
4cells/wellのHepa1-6細胞を96ウェルプレートに播き、37℃、CO
2(5%)の条件でDMEM培地(ナカライテスク株式会社、10%FBS含有)中で48時間培養した。培養48時間後に、セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR、塩化物を使用)を含有しないDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例7))、NRを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例8))、NRを30μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例9))、SE3μMとNRを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(実施例3))あるいはSE3μMとNRを30μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(実施例4))を、各ウェル中の培地と交換し、更に24時間培養した。その後、添加培地を取り除き、ウェル中の細胞をD-PBS(ナカライテスク株式会社)にて洗浄後、Lysis Buffer(Amplite(登録商標) Colorimetric NAD/NADH Ratio Assay Kit、AAT Bioquest社)を添加して細胞抽出液を回収した。その後、Kitのマニュアルに従い、細胞内NAD
+濃度を分析した。細胞内NAD
+濃度は、細胞抽出液のタンパク質濃度を測定し(Pierce(登録商標) BCA Protein Assay Kit、Thermo Scientific社)、タンパク質濃度当たりの値として算出した。得られた結果(N=3の平均)を
図3に示す(*:p<0.05)。
【0055】
図3より、細胞内NAD
+濃度は、比較例7(SE及びNRを含有しない培地)に対して、比較例8のNR10μM群で11.6%、比較例9のNR30μM群で15.5%の増加が認められた。一方、実施例3のSE3μMとNR10μMの組合せ群で17.5%、実施例4のSE3μMとNR30μMの組合せ群で21.8%の増加が認められた。ここで、SE3μMを含むDEME培地で処理した試験例がないものの、上記比較例2のSE0.3μM群で2.3%のNAD濃度の増加が認められたこと、また、上記比較例5のSE10μM群で1.5%のNAD濃度の増加が認められたことから、SE3μM群においてもこれらと同等の割合でNAD濃度が増加するものと類推される。そうすると、比較例8又は比較例9におけるNAD濃度の増加割合に、SE3μMにより得られると考えられるNAD濃度の増加割合(2.3~1.5%)を単純に足して得られる値と、上記実施例3及び実施例4のNAD濃度の増加割合を比べると、実施例3及び実施例4における増加割合が明らかに大きいことがわかる。以上より、SE及びNRをモル比(SE:NR)1:3.3あるいは1:10の割合で組み合わせて処理することによる細胞内NAD
+濃度の相乗的な増加効果を確認した。
【0056】
<比較例10~12、実施例5:セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR)による細胞内NAD+濃度(細胞内NAD濃度)の評価試験>
細胞内NAD+濃度への影響を調べるため、1.5×104cells/wellのHepG2細胞を96ウェルプレートに播き、37℃、CO2(5%)の条件でDMEM培地(ナカライテスク株式会社、10%FBS含有)中で96時間培養した。培養96時間後に、セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドリボシド(NR、塩化物を使用)を含有しないDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例10))、SEを0.3μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例11))、NRを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例12))、あるいは、SEを0.3μMとNRを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(実施例5))を、各ウェル中の培地と交換し、更に24時間培養した。その後、添加培地を取り除き、ウェル中の細胞をD-PBS(ナカライテスク株式会社)にて洗浄後、Lysis Buffer(Amplite(登録商標) Colorimetric NAD/NADH Ratio Assay Kit、AAT Bioquest社)を添加して細胞抽出液を回収した。その後、Kitのマニュアルに従い、細胞内NAD+濃度を分析した。細胞内NAD+濃度は、細胞抽出液のタンパク質濃度を測定し(Pierce(登録商標) BCA Protein Assay Kit、Thermo Scientific社)、タンパク質濃度当たりの値として算出した。
【0057】
細胞内NAD+濃度は、比較例10(Cont、SE及びNRを含有しない培地)に対して、比較例11のSE0.3μM群で5.0%の増加が認められ、比較例12のNR10μM群では増加は認められなかった。一方、実施例5のSE0.3μMとNR10μMの組合せ群で8.0%の増加が認められ、これはSE0.3μM処理による増加割合とNR10μM処理による増加割合を単純に足した値(5.0%)よりも明らかに大きかった。以上より、SE及びNRをモル比(SE:NR)1:33の割合で組み合わせて処理することによる細胞内NAD+濃度の相乗的な増加効果を確認した。
【0058】
以上のことからセサミン・エピセサミン混合物及びニコチンアミドリボシド(NR)を含有する組成物は、細胞内NAD+濃度増加作用の相乗効果を示すことが明確になった。
【0059】
<比較例13~16、実施例6、7:セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)による細胞内NAD
+濃度(細胞内NAD濃度)の評価試験>
細胞内NAD
+濃度への影響を調べるため、2.5×10
4cells/wellのHepG2細胞を96ウェルプレートに播き、37℃、CO
2(5%)の条件でDMEM培地(ナカライテスク株式会社、10%FBS含有)中で48時間培養した。培養48時間後に、セサミン・エピセサミン混合物(SE)及びニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を含有しないDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例13))、SEを10μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例14))、NMNを30μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例15))、NMNを100μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(比較例16))、SE10μMとNMNを30μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(実施例6))あるいはSE10μMとNMNを100μM含むDMEM培地(1%アルブミン含有、FBS無し(実施例7))を、各ウェル中の培地と交換し、更に24時間培養した。その後、添加培地を取り除き、ウェル中の細胞をD-PBS(ナカライテスク株式会社)にて洗浄後、Lysis Buffer(Amplite(登録商標) Colorimetric NAD/NADH Ratio Assay Kit、AAT Bioquest社)を添加して細胞抽出液を回収した。その後、Kitのマニュアルに従い、細胞内NAD
+濃度を分析した。細胞内NAD
+濃度は、細胞抽出液のタンパク質濃度を測定し(Pierce(登録商標) BCA Protein Assay Kit、Thermo Scientific社)、タンパク質濃度当たりの値として算出した。得られた結果(N=3の平均)を
図4に示す(*:p<0.05)。
【0060】
図4より、細胞内NAD
+濃度は、比較例13(SE及びNRを含有しない培地)に対して、比較例14のSE10μM群で14.2%、比較例15のNMN30μM群で18.9%、比較例16のNMN100μM群で21.3%の増加が認められた。一方、実施例6のSE10μMとNMN30μMの組合せ群で38.0%の増加が認められ、これは比較例14のSE10μM処理による増加割合と比較例15のNMN30μM処理による増加割合を単純に足した値(33.1%)よりも明らかに大きかった。
また、実施例7のSE10μMとNMN100μMの組合せ群で74.6%の増加が認められ、これは比較例14のSE10μM処理による増加割合と比較例16のNMN100μM処理による増加割合を単純に足した値(35.5%)よりも明らかに大きかった。
以上より、SE及びNMNをモル比(SE:NMN)1:3あるいは1:10の割合で組み合わせて処理することによる細胞内NAD
+濃度の相乗的な増加効果を確認した。
【0061】
以上のことから、NAD中間代謝産物として知られているNMN及び/又はそれらの塩と、セサミン類の1種類以上(好ましくは、セサミン・エピセサミン混合物)との組み合わせを含有する組成物についても、セサミン・エピセサミン混合物及びNRを含有する組成物と同様に、細胞内NAD+濃度増加作用の相乗効果を示すことが明確になった。