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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】転動装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B60B33/00 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022533363
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2020083915
(87)【国際公開番号】W WO2021110587
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】20191445
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】516231257
【氏名又は名称】ウィール.ミー アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】ティメネス,アットレ
(72)【発明者】
【氏名】リーバッケン,ロルフ
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/138320(WO,A1)
【文献】特表2017-513750(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0012052(KR,A)
【文献】登録実用新案第3161254(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0003375(US,A1)
【文献】実開昭57-085304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00 - 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機構が表面に沿って移動することを可能にするための転動装置(10)であって、
前記転動装置(10)は、前記機構への取付、ならびに、転動要素の収容のために設けられたハウジング(11)を有し、
前記ハウジング(11)は、制御通信モジュールを収容するように構成され、
前記制御通信モジュールは、
制御器(40)に接続された無線受信機(30)と、
前記制御器(40)に接続され、前記転動装置(10)の、その周囲に対する位置を取得する位置手段(50)と、
前記制御器(40)および前記転動要素(20)に接続され、前記位置手段(50)によって取得された第1の位置と、移動命令および第2の位置を含む受信無線信号に応じて前記転動要素(20)の移動を駆動制御する駆動手段(60)と、
前記制御通信モジュールおよび前記駆動手段に電力を供給する電力供給手段(70)と、を有し、
前記ハウジング(11)には、
前記転動要素(20)を支持するための支持アセンブリであって、前記ハウジング(11)との解除可能な接続を確立するように構成された支持アセンブリと、
前記転動要素(20)と、前記制御通信モジュールおよび前記電力供給手段(70)のうちの少なくとも1つとの間の接続を確立するために適合された電気的インターフェースと、が設けられた、転動装置(10)。
【請求項2】
前記転動要素(20)は、ホイール軸(53)を備えたホイール要素(100)を有し、
前記支持アセンブリは、前記ホイール軸(53)の端部にそれぞれ接続された第1および第2のホイール軸受部材(51、52)を有し、
前記第1のホイール軸受部材(51)は、前記ハウジング(11)の内部に設けられた第1のガイド凹部(55)に解放可能に配置され、
前記第2のホイール軸受部材(52)は、前記ハウジング(11)の内部に設けられた第2のガイド凹部に解放可能に配置され、
前記ホイール要素(100)を支持する前記第1および前記第2のホイール軸受部材(51、52)は、ユニットとして、前記ハウジング(11)から解放され、かつ、前記ハウジング(11)に設置される、請求項1に記載の転動装置(10)。
【請求項3】
前記支持アセンブリと前記ハウジング(11)との間の解除可能な接続を確立するための取付手段は、磁石、クリック/アウト接続、解除可能な爪接続、プラグソケット接続の中から選択される、請求項1または2に記載の転動装置(10)。
【請求項4】
第1のガイド部材(57)が、前記第1のガイド凹部(55)に配置され、第1のガイド部材(57)は、前記第1のホイール軸受部材(51)との解除可能な接続を確立するように設けられ、
第2のガイド部材(58)が、前記第2のガイド凹部に配置され、第2のガイド部材(58)は、前記第2のホイール軸受部材(52)との接続を確立するために設けられた、請求項2、もしくは、請求項2を引用する場合の請求項3に記載の転動装置(10)。
【請求項5】
前記転動装置(10)は、駆動モータ(71)を備え、
前記第1のガイド部材(57)と前記第1のホイール軸受部材(51)とがユニットとして接続され、
前記第2のガイド部材(58)と前記第2のホイール軸受部材(52)とがユニットとして接続され、
前記駆動モータ(71)は、前記ホイール要素(100)が前記ハウジング(11)の外側に突出する伸長位置と、前記転動要素(20)が前記ハウジング(11)の内側に位置する格納位置との間で前記ホイール要素(100)を移動させるべく、両前記ユニットをそれぞれのガイド凹部(55)内で変位させるように構成された、請求項4に記載の転動装置(10)。
【請求項6】
前記駆動モータ(71)は、噛合構成によってブリッジ構造(73)に接続されたスピンドル(75)を有し、
前記ブリッジ構造(73)は、前記第1のガイド部材(57)に接続された第1の取付部(82)と、前記第2のガイド部材(58)に接続された第2の取付部(83)と、を有し、
前記ホイール要素(100)を伸長位置と格納位置との間で変位させる、請求項5に記載の転動装置(10)。
【請求項7】
前記駆動モータ(71)には、2つの自由端部(83、84)を有する中心スピンドルが設けられ、
前記自由端部の一方は、第1のガイド部材(57)に接続された第1の取付部(82)と噛合係合を形成し、
前記自由端部の他方は、第2の取付部(82)と噛合係合を形成し、
前記ホイール要素(100)を伸長位置と格納位置との間で変位させる、請求項6に記載の転動装置(10)。
【請求項8】
前記電気的インターフェースは、前記転動要素と通信するための有線インターフェースを含み、
前記第2のガイド部材(58)は、第1のコネクタ部品(63)を有し、
前記第2のホイール軸受部材(52)は、第2のコネクタ部品(64)を有し、
前記第1および前記第2のコネクタ部品は、解除可能な接続に構成されている、請求項~7のいずれか一項に記載の転動装置(10)。
【請求項9】
前記転動要素(20)は、前記駆動手段を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の転動装置(10)。
【請求項10】
前記電気的インターフェースは、前記転動要素と通信するための無線インターフェースを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の転動装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機構(device)に取り付けられ、あるいは、一体化され、当該機構を表面に沿って移動可能にする転動装置(rolling device)に関する。転動装置は遠隔制御されてもよく、また、予め設定されたシナリオに従って装置群が自動的に移動するように設けられてもよい。
【0002】
より具体的には、移動されるべき機構は、屋内と屋外の使用の両方に適している。屋内用の機構は、例えば、家具または壁やドアなどの内装建築部材である。屋外での使用については、転動装置は、例えば、移動しにくいユーロパレットやその他の機構を移動するために使用されてもよい。
【0003】
本発明は、屋内および屋外の両方の、異なる場所の間で移動されるあらゆる種類の機構を移動させるのに適しており、その移動は、表面、例えば床に沿って行われる。
【背景技術】
【0004】
様々な機構、特に家具には、ある場所から別の場所への機構の移動を容易にするための、例えば、複数の機構を再グループ化したり、または、機構を移動させて機構が占有する空間にアクセスするか、機構自体へのアクセスを提供するための、ホイールまたは転動要素が設けられてもよい。
【0005】
本件出願人は、以前に、家具や可動壁などの機構を表面に沿って移動させるために当該機構に一体化することができる転動装置を開発した。この転動装置は、物体の移動を容易にし、物理的条件や、転動装置が一体化された様々な機構を持ち上げる能力に拘わらず、誰でも使用することができる。この装置は、特許文献1に記載されている。
【0006】
特許文献1の転動装置は、例えば、家具の脚部に装着するための円筒状スリーブ機構(cylindrical sleeve device)と、円筒状スリーブ機構内に移動可能に配置されたピストンとを備えている。ピストンには、ボール形状または球体形状のホイールが配置されている。ピストンは、スプリングを備えたクリックシステムによって、上方位置と下方位置との間で移動可能である。ピストンが下方位置にあるとき、家具は、家具が立っている床を横切って転動することができ、一方、ピストンが上方位置にあるとき、ホイールは円筒状スリーブ機構の内側にあり、転動装置が設けられた家具の脚部は床上に立つ。そこで、小さな力が家具に加えられたときに意図せずに床を横切って転動することなく、家具は所望の位置に立ち続ける。この解決方法は、完全に機械的である。
【0007】
本件出願人は、上記概念をさらに展開し、転動要素を備えたピストンを上下位置の間で移動させるための自動アクチュエータシステムを備えた転動装置を提供した。この概念は、特許文献2に開示されている。上方位置は、ホイール要素が転動装置内に格納される受動的な静止位置である。下方位置は、転動装置が表面に沿って移動するための動作位置である。アクチュエータは、無線で制御することができる。
【0008】
特許文献3に記載されたさらなる改変では、出願人は、転動装置の概念をさらに発展させた。特許文献3は、表面に沿って第1の位置から第2の位置へ機構を自律的に移動させるための転動装置を提供する。転動装置は、位置取得および取得した位置および移動命令に応じて転動要素の移動を制御する。転動要素は、転動装置に対して設定または固定された垂直位置を有していてもよいし、特許文献2および特許文献1に記載されているように、ホイール要素が表面に沿って移動するのを防止する格納位置と、ホイール要素が表面に沿って移動する準備ができている伸長位置との間で変位するように設けられてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】ノルウェー特許第316760号明細書
【文献】欧州特許公開第3102429号明細書
【文献】国際公開第2018/138320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本件出願人による上記の特許文献2および3に記載されている転動装置は、相互作用する機械的構成要素と、電気的構成要素とを有している。修理の必要がある場合、あるいは、構成要素の1つを新品または代替品と交換する必要がある場合には、問題の構成要素を取り外した後で取り付ける手順は、全ての相互作用する構成要素の複雑さを伴う。転動装置の構成要素の大部分は静止しているが、転動要素は移動して摩耗にさらされ、したがって、時々の交換を必要とする。よって、転動要素など、転動装置の構成要素のうちの1つの交換を容易にする必要性が生じている。
【0011】
それ故、本発明の目的は、転動要素の交換のための分解および組立のための簡単で信頼性のある構造を可能にする転動装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、転動要素を交換するコストを最小にし、また、転動装置の顧客やユーザが熟練工の専門知識なしに転動要素を交換することを可能にする解決策を提供することである。
【0012】
他の例は、様々な製品を表面に沿ってある場所から別の場所に搬送するための支持構造またはフレームワーク内に1つ以上の転動構造を一体化することである。
【0013】
この転動構造は、屋内と屋外の両方で使用することができる。これは、陸上や海上で、例えば、掘削機(rigs)などの海上施設や船舶のデッキ上で使用することができる。
【0014】
本発明による転動構造は、機構が製造されるときに機構に一体化されてもよく、または、元々可動であることを企図されていない機構に後付けされてもよい。本発明は、建物の屋内と屋外の両方で使用することができる。
【0015】
本発明のこれらのおよび他の特徴は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、機構が表面に沿って移動することを可能にするための転動装置に関する。転動装置は、例えば、様々な種類の家具の一部、ユーロパレット、または他の機構などの機構と係合するように構成されてもよい。移動は、1つ以上の転動装置の使用によって容易となる。転動装置は、移動させる機構の空洞(例えば、家具の一部)に組み込んだり、移動させる機構に転動装置を直接的または間接的に固定手段によって取り付けるなど、様々な方法で機構に取り付けることができる。
【0017】
転動装置は、機構に取り付けられるように構成され、かつ、転動要素を収容するように構成されたハウジングを有している。ハウジングは、制御器に接続された無線受信機と、制御器に接続され、周囲に対する転動装置の位置を取得する位置手段とを有する制御通信モジュール(control and communication module)を収容するように構成されている。転動装置はさらに、制御器と転動要素とに接続され、位置手段によって取得された第1の位置と、移動命令および第2の位置を含む受信無線信号とに応じて、転動要素の移動を駆動制御する駆動手段を有している。さらに、転動装置は、制御通信モジュールおよび駆動手段に電力を供給するための電力供給手段を有している。
【0018】
ハウジングにはさらに転動要素を支持するための支持アセンブリが設けられ、ハウジングとの解除可能な接続を確立するように構成されている。ハウジングはまた、転動要素と、制御通信モジュールおよび電力供給手段のうちの少なくとも1つとの間の接続を確立するために適合された電気的インターフェースを有している。
【0019】
本発明に係る転動装置の構成によれば、例えばユーザのハンドグリップ牽引力によって与えられる解放力を加えることにより、転動要素を支持した支持アセンブリをハウジングから容易に離脱させることができる。
【0020】
転動要素は、通常のホイール形状、または、ボール形状や球体形状、表面との相互作用において転動運動を提供することが可能なその他の形状の、様々な要素を有していてもよい。
【0021】
転動要素は、例えば、ホイール軸を備えたホイール要素を有していてもよい。その場合、支持アセンブリは、ホイール軸の端部にそれぞれ連結された第1および第2のホイール軸受部材を有することができる。
【0022】
第1のホイール軸受部材は、ハウジングの内部に設けられた第1のガイド凹部内に解放可能に設けられてもよい。第2のホイール軸受部材は、ハウジングの内部に設けられた第2のガイド凹部内に解放可能に設けられてもよい。第1および第2のガイド凹部は、ハウジングの内壁またはハウジング内に設置された構造要素内に構成されてもよい。ホイール要素を支持する第1のホイール軸受部材および第2のホイール軸受部材は、ユニットとしてハウジングから解放され、また、ハウジング内に設置されることになる。
【0023】
転動装置に使用するためのホイールの一例は、メカナム(Mecanum)ホイールである。メカナムホイールは、任意の方向の移動を可能にする構成を有しており、従来のホイールの周囲に一連のローラーが取り付けられたものである。これらのローラーはそれぞれ、例えば、ホイールの平面に対して45°、かつ、ホイールの回転軸と平行にローラーの中心を通る線に対して45°の回転軸を有していてもよいが、勿論、45°以外の傾斜を有する回転軸を備えていてもよい。
【0024】
また、転動要素がボール形状または球体形状を有する場合には、転動要素を支持する支持アセンブリは、ハウジングの内部の第1および第2のガイド凹部に解放可能に設けられてもよい。その場合、ガイド凹部は、転動要素を備える支持アセンブリが所定の取付位置に位置づけられたときに嵌まり込む構成を有していてもよく、さらに、転動要素を備える支持アセンブリを取付位置に対して緩やかに出し入れするためにガイド凹部の傾斜部分を設けてもよい。その場合、支持アセンブリは、ユーザのハンドグリップ牽引力によって解放されてもよい。
【0025】
転動装置は、支持アセンブリとハウジングとの間に解除可能な接続を確立するための取付手段をさらに有していてもよい。そのような取付手段は、以下の装置、即ち、磁石、クリック/アウト接続(click/out connection)、解除可能な爪接続、プラグソケット接続(plug and socket connection)の中から選択することができる。
【0026】
転動装置は、第1のガイド凹部に配置された第1のガイド部材をさらに有していてもよい。第1のガイド部材は、例えば、前述した取付手段を使用することによって、第1のホイール軸受部材との解除可能な接続を確立するように構成することができる。さらに、転動装置は、第2のガイド凹部に配置された第2のガイド部材を有していてもよい。第2のガイド部材は、例えば、前述した取付手段を使用することによって、第2のホイール軸受部材との解除可能な接続を確立するように構成することができる。
【0027】
転動装置は、第1のガイド部材と第1のホイール軸受部材とが取付手段によってユニットとして接続されたときに、これらを変位させるための駆動モータを有していてもよい。ユニット化された第1のガイド部材および第1のホイール軸受部材は、第1のガイド凹部内に変位される。また、駆動モータは、第2のガイド部材と第2のホイール軸受部材とが取付手段によってユニットとして接続されたときに、これらを変位させるように構成されている。ユニット化された第2のガイド部材および第2のホイール軸受部材は、第2のガイド凹部内に変位される。これらのユニットが駆動モータによってそれぞれのガイド凹部内に変位することにより、転動要素の一部がハウジングの外側に突出する伸長位置と、転動要素がハウジングの内側に位置する格納位置への転動要素の移動がなされる。
【0028】
駆動モータは、噛合構成(toothed intermeshing arrangement)によってブリッジ構造に接続されたスピンドルを備えてもよい。ブリッジ構造は、第1のガイド部材に接続された第1の取付部と、第2のガイド部材に接続された第2の取付部とを備え、転動要素を伸長位置と格納位置との間で変位させる。
【0029】
他の変形例において、駆動モータは、2つの自由端部を有する中心スピンドルを備えていてもよく、ここで、
・一方の端部は、第1のガイド部材に接続された第1の取付部と噛合係合(toothed intermeshing engagement)を形成し、
・他方の端部は、第2の取付部と噛合係合を形成し、
ホイール要素を伸長位置と格納位置との間で変位させるように構成されている。
【0030】
電気的インターフェースは、転動要素と通信するための、有線インターフェースや無線インターフェースを含んでいてもよい。電気的インターフェースが有線インターフェースを含む場合は、支持アセンブリのハウジングからの解放を確実にすべく、解除可能な電気的接続を設けてもよい。その場合、第2のガイド部材が第1のコネクタ部品を有し、かつ、第2のホイール軸受部材が第2のコネクタ部品を有していてもよい。第1および第2のコネクタ部品は、解除可能な接続として構成されてもよく、プラグ、ソケットとして構成されてもよい。
【0031】
ガイド部材と、ホイール軸受部材と、内部ハウジング部品と、ホイール要素とは、ハウジングに挿入されハウジングから取り外されるカセットのようなモジュールユニットとして設けられてもよい。駆動モータは、ホイール要素の上方の位置にあってもよいし、ホイール要素から横方向にズレた位置にあってもよい。
【0032】
駆動手段は、例えば、転動要素の内部に配置されてもよいが、転動装置の他の如何なる場所に配置されてもよい。転動要素の内部には歯車機構が設けられてもよく、転動要素は、例えばハブホイールとして設けられてもよい。
【0033】
駆動手段および歯車機構は、あるいは、ホイール要素の上方に配置されてもよいし、ホイール要素から横方向にズレた位置に配置されてもよい。しかし、駆動手段および歯車機構は、モジュールユニットの一部として依然として一体化されていてもよい。
【0034】
以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】転動装置の要部を示す模式図である。
図2】転動要素が2つの異なる位置の一方にある転動装置の概略的な側面図である。
図3】転動要素が2つの異なる位置の他方にある転動装置の概略的な側面図である。
図4】ホイール要素を解放するように構成された転動装置の斜視図である。
図5】ホイール要素を解放するように構成された転動装置の詳細を示す図である。
図6】ホイール要素を解放するように構成された転動装置の詳細を示す図である。
図7】ホイール要素を解放するように構成された転動装置の詳細を示す図である。
図8】ホイール要素を解放するように構成された転動装置の詳細を示す図である。
図9】ホイール要素を解放するように構成された転動装置の詳細を示す図である。
図10図5の転動装置の構成の他の実施形態を示す図である。
図11図5の転動装置の構成の他の実施形態を示す図である。
図12図5の転動装置の構成のさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、機構に取り付けられたり、一体化され、表面に沿った機構の移動を可能にするための転動装置の様々な構成要素および装置の概略的な構成を示している。移動される機構は、家庭用または施設用の家具、可動壁、ドア、屋内および屋外の様々な用途のための台車であってもよい。転動装置は、ホイールや転動要素が元々備えられていないあらゆる種類の機構に適用可能であり、移設の必要がある場合には、これらの転動手段を設けることにより、移動を容易にすることができる。
【0037】
図1に示す転動装置10は、ハウジング11を備え、ハウジング11の一端に配置された転動要素20を備えている。転動要素は、装置の移動が行われる際に表面と係合するように構成されている。
【0038】
転動要素20は、移動される機構に接続された取付位置にあるときに、ハウジングの端部に、例えば、ハウジングの下端部に位置する規定位置に配置されてもよい。他の変形例においては、転動要素は、上方位置と下方位置との間でハウジング内に移動可能に配置されてもよい。上方の格納位置は、ホイール要素が転動装置内に引き込まれる受動的な静止位置であり、下方位置は、転動装置を表面に沿って移動させるための引き出された動作位置である。
【0039】
ハウジング11内には、転動要素20を制御するための各種装置が配置されていてもよい。図1に示すように、無線受信機30および制御器40が、ハウジング内に配置されている。無線受信機30および制御器40は、信号的に互いに接続され、受信機30は無線制御信号を受信するように構成されている。転動装置10は、転動装置10の、その周囲に対する位置を取得する位置手段50を備えている。位置手段50は、制御器40に接続されている。
【0040】
転動装置10の位置を検出し取得するには、様々な方法がある。一例は、カメラなどの外部装置から、あるいは、基準点から転動装置10までの距離を測定するためのライダー装置(Lidar)を用いて位置を決定することである。他の例は、転動装置10や移動される装置に接続されたRFIDチップを用いることである。さらに他の方法は、転動装置10に接続された超音波送信機またはブルートゥース(登録商標)送信機を使用して、転動装置10の位置を決定することである。さらにまた、正確な位置は、三角測量によって求めることができる。
【0041】
尚、その位置は、転動装置10の位置手段50に送信することができる。それらは全て周知の方法であり、ここではさらには説明しない。
【0042】
駆動手段60は、制御器40および転動要素20に接続され、位置手段50によって取得された第1の位置と、移動命令と第2の位置を含む受信無線信号とに応じて、転動要素20の移動を駆動制御する。図1において、駆動手段60は、ハウジング内に配置されて示されているが、代替として、駆動手段60が転動要素20内に配置されてもよい。その場合、転動要素20には、駆動手段60を収容可能な内部空間が設けられていてもよい。
【0043】
転動要素20を移動させるための、公知の様々な種類の駆動手段が実現可能である。他の実施形態においては、転動要素20は、モータに接続されたチェーンによって駆動される。モータは、電動または電磁モータであることが好ましい。
【0044】
無線受信機30、位置手段50、および制御器40は、簡略化の理由により、以下、制御通信モジュール(control and communication module)と名付けられる。
【0045】
駆動手段および各種の電子装置に電力を供給するための電力供給手段70は、様々な方法で提供することができる。電力供給手段70は、制御通信モジュールおよび駆動手段の両方に電力を供給するための共通の電源システムを有していてもよい。あるいは、電力供給手段は、一方は制御通信モジュールに、他方は駆動手段に電力を供給するための2つの個別の電源システムを有していてもよい。電力供給手段70は、例えば、図1に示すように、ハウジング11内に配置されてもよい。ただし、電力供給手段70が2つの個別の電源システムとして設けられ、かつ、駆動手段60が転動要素20内に配置される場合には、駆動手段60に電力を供給する電源システムは、転動要素20内に配置されてもよい。
【0046】
電力は、電子装置に接続されたバッテリによって提供されてもよい。他の実施形態においては、電力は、時間的に変化する電界、磁界または電磁界に基づく無線電力伝送手段によって提供されてもよい。フィールドエネルギーを受信するための受信機は、転動装置10のハウジング内に搭載される。次いで、受信したフィールドエネルギーは、ハウジング内に設けられた各種の電子装置のための電源として使用される電流に変換される。本発明の他の実施形態においては、無線電力伝送は、ハウジング内に設けられた電子装置に接続されたバッテリを充電するために使用される。
【0047】
転動装置10は、次のとおり動作する。制御器40は、無線受信機30によって移動命令を受信する。受信機30に接続された制御器40は、移動命令を含む送信されたシーケンスを解釈し動作するマイクロコントローラを有していてもよい。移動命令を受信すると、転動装置10は、その周囲に対する相対的な位置を位置装置50に要求する。これが現在位置であり、第1の位置である。
【0048】
現在位置が設定されると、転動要素20の移動を制御するための移動命令が制御器40において実行される。移動は、取得された転動装置10の第1の位置と、経路および第2の位置を含む受信した移動命令とに基づく。このとき、転動装置10は、経路に従って第1の位置から第2の位置に装置を移動させる準備が整っている。
【0049】
本発明の一実施形態においては、転動装置10は、無線送信機80をさらに有している。この実施形態は、数個の転動装置10のセットの同時動作を調整するのに有用である。
【0050】
無線受信機30は、転動装置10に対する移動命令を受信する。命令は、例えば、様々なシナリオを制御するためのアプリケーションがインストールされたリモコン、タブレットまたはスマートフォンを介して、予め設定された、またはその場で生成されたものを送信することができる。
【0051】
図2およびそれ以降の図に示す例においては、転動要素は、ホイール要素100として示されている。
【0052】
図2は、ホイール要素100が格納位置にある転動装置を示し、ホイール要素100はハウジング11の内部に配置されている。
【0053】
図3においては、ホイール要素100は、ホイール要素100の少なくとも一部がハウジング11の外部に突出する伸長位置にある状態で示されている。
【0054】
図4は、ホイール要素100の簡単な交換を可能にするための解決策を示している。ホイール交換を可能にすることに関連する構成要素のみが図示され、残りの構成要素は、図1~3に示されており、これらの図を参照して上述されている。
【0055】
ホイール要素100は、ホイール軸53を有し、ホイール軸53は、ホイール軸53の一端部において第1のホイール軸受部材51に接続されている。ホイール軸53の他端部は、図4に示すように、第2のホイール軸受部材52に接続されている。ホイール軸53の端部は、図6に示す開口部54を介して、第1および第2のホイール軸受部材51および52に接続されている。第1のホイール軸受部材51は、第1のガイド凹部55に収容され、第2のホイール軸受部材は、第2のガイド凹部(図示せず)に収容されている。第1および第2のガイド凹部は、図6に示すようなT字形断面を有していてもよく、第1および第2のホイール軸受部材51および52は、それぞれ、第1および第2のガイド凹部内で変位可能な摺動部材として構成されてもよい。第1および第2のガイド凹部は、ハウジングの内部において、その内壁に、あるいは、内壁に沿って設けられた内部ハウジング部品90などの要素に設けられる。また、第1および第2のガイド凹部は、ハウジングの内壁に設置されたレールによって提供されてもよい。
【0056】
ホイール要素100を支持する第1および第2のホイール軸受部材51および52は、ユニットとしてハウジング11から解放されるように構成されている。
【0057】
第1のホイール軸受部材51は、第1のガイド部材57に接続され、第1のガイド部材57は、第1のガイド凹部55内で変位するように構成されている。第1のホイール軸受部材51は、磁石61および62などの解除可能な取付手段によって第1のガイド部材57に接続されている。第1のホイール軸受部材51は、ここでは磁石61および62として図示されている取付手段の間の磁力を超える解放力を加えることにより、第1のガイド部材57との接続から容易に解放することができる。解放力は、例えば、ユーザのハンドグリップ牽引力によって提供されてもよい。
【0058】
図2図12に示す例においては、駆動手段60は、ホイール要素100の内部に配置されており、そのため、ホイール要素100と図1に示す残りの構成要素との電気的接続を確立する必要がある。
【0059】
第2のホイール軸受部材52は、第2のガイド部材58に接続され、第2のガイド部材58も、図示しない第2のガイド凹部内で変位するように構成されている。第2のガイド部材58には、ホイール要素と図1の残りの構成要素の間の電気的接続を確立するために第2のコネクタ部品64に接続するための第1のコネクタ部品63が設けられている。第1および第2のコネクタ部品は、図7に示すように、ソケットおよびプラグとして設けられてもよい。転動装置10の残りの部品に接続するためのケーブル65が図示されている。
【0060】
これらの部品は、接続および接続解除が容易であり、ユーザのハンドグリップ牽引力によって解除を容易に行うことができる。図8は、接続された第1および第2のコネクタ部品63および64を示し、図7は、接続解除されたこれらのコネクタ部品を示している。必要に応じて、プラグおよびソケットに加えて、磁石を設けることができる。勿論、プラグおよびソケット以外の電気的インターフェースも実装することができる。
【0061】
ホイール要素100を取り外す必要がある場合に、第1および第2のホイール軸受部材51および52は、それぞれ第1および第2のガイド部材57および58との係合から解放される。第1および第2のホイール軸受部材51および52がそれぞれ、第1および第2のガイド凹部から引き出され、ホイール要素100ならびに第1および第2のホイール軸受部材51および52のアセンブリが、ユニットとして解放される。
【0062】
ホイール軸受部材とガイド部材との間の解除可能な係合を提供するための磁石を使用する代わりに、スナップ接続またはクリックイン/アウト接続が選択されてもよい。図9は、この解決策の一例を示す。第1のホイール軸受部材51に設けられた適当な孔内に突出する凹付きボルト66が第1のガイド部材57に備えられていることが示されている。ばね付勢ボール68を備えたねじ素子67が、孔を横切る方向に配置され、ねじ素子67が孔に挿入されたとき、ボルト66の凹部69と係合するように設計されている。図9は、接続された第1のガイド部材57と第1のホイール軸受部材51とを示す。接続解除が必要な場合には、ユーザのハンドグリップからの牽引力が、凹部69内に位置するボール68のばね力を容易に超え、第1のホイール軸受部材51が第1のガイド部材57から係合解除される。その後、新たなホイール要素を取り付ける必要がある場合には、第1のホイール軸受部材51が第1のガイド凹部55内に挿入され、ばね付勢ボール68がボルト66に接触して圧縮され、凹部69に嵌め込まれて係止される。
【0063】
また、ガイド部材とホイール軸受部材とを接続するための他の解除可能なロック手段、例えば、凹部と係合する解除可能な爪素子を使用することも可能である。
【0064】
図4図9は、駆動モータ71と歯車機構とを設けた転動装置10を示しており、歯車機構は、ホイール要素100の格納位置への変位のための第1の駆動方向と、ホイール要素100の伸長位置への変位のための第2の駆動方向とを有していてもよい。駆動モータのスピンドル72は、第1のガイド部材57に係合して設けられ、第1のガイド部材57と第1のホイール軸受部材51のユニットを第1のガイド凹部55内で変位させ、これにより、ホイール要素100を格納または伸長させる。第2のガイド部材58および第2のホイール軸受部材52のユニットは、駆動モータ71によって行われ、第1のガイド部材57および第1のホイール軸受部材51のユニットの変位に追従する。これは、両ユニットがホイール要素100に連結されているからである。また、2つの駆動モータを使用することも可能であり、ガイド部材57および58それぞれの変位のためにホイール素子100の両側に1つずつ使用する。
【0065】
ガイド部材、ホイール軸受部材、内部ハウジング部品90、およびホイール要素は、ハウジング11に挿入および取り外されるカセットのようなモジュールユニットとして設けられてもよい。駆動モータ71は、図4に示す位置にあってもよいが、図10図12に示すように設けられてもよく、ここでは、駆動モータ71が別の位置で示されており、駆動モータ71の設計が多少異なっている。
【0066】
図10および図11は、駆動モータ71から第1および第2のガイド部材57および58にトルクを伝達するための他の構成を示している。駆動モータ71は、図10および図11に示すように、ハウジングの一部として設けられた支持構造75上に配置されるか、あるいは、支持構造75がハウジングの内壁に取り付けられた別の部品として設けられてもよい。駆動モータ71は、支持構造の第1の通路77を貫通して延在するスピンドル72を備えている。スピンドル72の一部は、スリーブ76の外側の歯車構造(toothed configuration)との噛合構成(intermeshing arrangement)のために設けられた歯車構造を有している。スリーブ76は、支持構造75を貫通して設けられた第2の通路79を貫通してボールベアリング構成によって搭載されている。スリーブ76にはまた、ブリッジ構造73に接続された円柱部81の歯車構造と噛合する内側の歯車構造が設けられている。ブリッジ構造73は、第1のガイド部材57に接続された第1の取付部82と、第2のガイド部材58に接続された第2の取付部83とを有している。駆動モータ71の駆動時に、スピンドル72は、支持構造75の第2の通路79内でスリーブ76を回転させる。スリーブ76の内歯は、円柱部81の歯との噛合構造を形成し、駆動モータ71の駆動方向に応じて、円柱部81ひいてはブリッジ構造73を上下に移動させる。駆動モータ71が第1の駆動方向に回転すると、ブリッジ構造73の移動は、第1のホイール軸受部材51と一体の第1のガイド部材57ならびに第2のホイール軸受部材52と一体の第2のガイド部材58を上方に移動させ、ホイール要素100を格納位置に移動させる。そして、駆動モータ71の第2の駆動方向への回転時には、ブリッジ構造73、ガイド部材57および58、ならびにホイール軸受部材51および52のアセンブリが、ホイール要素100を伸長位置に変位させる。
【0067】
図12は、駆動モータ71からのトルクを伝達するための他の構成を示し、ここでは、スピンドル72の軸線(axial axis)がホイール軸53の軸線と平行に配置される位置にスピンドル72が配置されている。駆動モータ71は、ホイール要素100の上方に中心を置いている。スピンドル72は、駆動モータを貫通して設けられ、かつ、駆動モータに対して中心に置かれており、スピンドルの第1のねじ付き端部85が、第1の取付部82に接続された第1のねじ付きキャップ86と噛合係合するように配置されている。スピンドルの第2のねじ付き端部84は、第2の取付部82の第2のねじ付きキャップ87と噛合係合するように配置されている。スピンドル72の回転軸は、第1および第2のねじ付きキャップ86および87の回転軸に対して実質的に垂直に配向されている。スピンドルのねじ付き端部85および84と、ねじ付きキャップ86および87は、ウォームねじ構造を有していてもよい。駆動モータ71が第1の駆動方向に回転すると、取付部82および83、ガイド部材57および58、ならびにホイール軸受部材51および52のアセンブリが、ホイール要素100を格納位置に変位させる。駆動モータ71を第2の駆動方向に回転すると、取付部82および83、ガイド部材57および58、ならびにホイール軸受部材51および52のアセンブリが、ホイール要素100を伸長位置に変位させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12