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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241127BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20241127BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20241127BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20241127BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/06
C22C38/14
C21D8/12 A
H01F1/147 175
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022537536
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2020017978
(87)【国際公開番号】W WO2021125685
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170980
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ス
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジェワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,デ-ヒョン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0078155(KR,A)
【文献】特開2013-044010(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0077891(KR,A)
【文献】特開2014-040622(JP,A)
【文献】特開2019-026891(JP,A)
【文献】特開2012-036455(JP,A)
【文献】特開平01-234524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/12, 9/46
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:2.5~4.0%、Mn:0.1~1.0%、Al:0.5~1.5%、P:0.002~0.015%、およびAs:0.002~0.01%を含み、残部はFeおよび不可避不純物からなり、下記式1および式2を満足し、平均結晶粒の粒径([GS])は、90~200μmであることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[式1]
0.005≦([P]+[As])≦0.015
(式1中、[P]および[As]はそれぞれ、PおよびAsの含有量(重量%)を示す)
[式2]
60≦[STD]≦0.70×[GS]
([GS]は、鋼板の表面で5~500μmの粒径を有する結晶粒10,000個以上を観察した時に測定される平均結晶粒の粒径(μm)であり、STDは、その時の標準偏差(μm)を示す。)
【請求項2】
C:0.005重量%以下、S:0.005重量%以下、N:0.005重量%以下、およびTi:0.005重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
標準偏差([STD])は、60~100μmであることを特徴とする請求項1または請求項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
常温での比抵抗(ρ)が60μΩcm以上であることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
鉄損(W15/50)が2.0W/Kg以下であることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
下記式3~式5を満足することを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
[式3]
鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15
[式4]
鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45
[式5]
磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65
【請求項7】
重量%で、Si:2.5~4.0%、Mn:0.1~1.0%、Al:0.5~1.5%、P:0.002~0.015%、およびAs:0.002~0.01%を含み、残部はFeおよび不可避不純物からなり、下記式1を満足するスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含み、
前記最終焼鈍する段階で、焼鈍炉入側の張力が0.15~0.31kgf/mmであり、焼鈍炉出側の張力が0.36~0.62kgf/mmであり、均熱後、冷却時に700℃までの冷却速度が30℃/s以下であり、
製造された無方向性電磁鋼板は平均結晶粒の粒径([GS])が、90~200μmであり、
下記式2を満足することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
0.005≦([P]+[As])≦0.015
(式1中、[P]および[As]はそれぞれ、PおよびAsの含有量(重量%)を示す)
[式2]
60≦[STD]≦0.70×[GS]
([GS]は、鋼板の表面で5~500μmの粒径を有する結晶粒10,000個以上を観察した時に測定される平均結晶粒の粒径(μm)であり、STDは、その時の標準偏差(μm)を示す。)
【請求項8】
前記焼鈍炉出側の張力(TS2)および前記焼鈍炉入側の張力(TS1)の差(TS2-TS1)が0.20~0.40kgf/mmであることを特徴とする請求項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関し、具体的には、As、Pを適切に添加し、集合組織を改善して、磁性を改善した無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、主に回転機器であるモータおよび発電機などと静止機器である小型変圧器などの鉄心用素材として使用される。最近、環境保存およびエネルギー節約に対する規制が強化されるに伴い、電気的エネルギーを機械的エネルギーに、または機械的エネルギーを電気的エネルギーに変えるエネルギー変換機器であるモータや発電機の効率向上に対する要求が増大している。無方向性電磁鋼板は、このようなモータ、発電機などの回転機器および小型変圧器などの静止機器で鉄心用材料として使用される素材であるので、モータや発電機の効率向上に対する要求は、無方向性電磁鋼板に対する特性向上の要求につながっている。
【0003】
無方向性電磁鋼板の代表的な磁気的特性は、鉄損と磁束密度であり、無方向性電磁鋼板の鉄損が低いほど鉄心が磁化される過程で損失する鉄損が減少して効率が向上し、磁束密度が高いほど同じエネルギーでより大きい磁場を誘導することができ、同じ磁束密度を得るためには、少ない電流を印加しても良いので、エネルギー効率を向上させることができる。したがって、エネルギー効率向上のためには、鉄損は低く、磁束密度は高い、磁性に優れた無方向性電磁鋼板の開発技術が必須といえる。
【0004】
無方向性電磁鋼板の重要な特性のうち、鉄損を低くするための最も基本的でありながらも効率的な方法としては、比抵抗が大きい元素であるSi、Al、Mnの添加量を増加させたり、鋼板の厚さを薄くする方法がある。しかし、Si、Al、Mnの添加量の増加は、鋼の比抵抗を増加させて無方向性電磁鋼板の鉄損のうち渦流損を減少させることによって、鉄損を低減する効果があるが、添加比に応じてその効果が異なり、また、合金元素の添加量が増加するほど磁束密度に劣るので、優れた鉄損と磁束密度を確保するためには、適正添加量およびSi、Al、Mnの添加量の間の添加比を適切に制御しなければならない。厚さを薄くする方法も、鉄損の低減に非常に効果的であるが、厚さの薄い鋼板は、生産性および加工性が低下して加工費が大きく増加するというデメリットがある。
【0005】
無方向性電磁鋼板の鉄損は低くしかつ磁束密度も向上させるための方法として、REMなどの特殊添加元素を活用して集合組織を改善して磁気的性質を向上させたり、温間圧延、2回圧延2回焼鈍などの追加的な製造工程を導入する技術なども報告されている。しかし、これらの技術は、すべて製造コストの上昇をもたらしたり、大量生産の困難が伴うため、磁性に優れていながらも商業的に生産が容易な技術の開発が必要であるといえる。また、不純物の添加量を極力に抑制し、Caなどの元素を添加することによって、介在物の形成を抑制し制御するための技術も開発されているが、これも製造コストの上昇をもたらし、その効果を明確に確保することが容易でない状況である。
【0006】
このような問題点を解決するための持続的な努力があり、多くの技術が開発された。無方向性電磁鋼板に対する従来技術のうち、最終焼鈍時に加熱速度を50℃/s以上に制御することによって、集合組織を向上させて優れた磁性を確保できる方法を提示したが、急速加熱を実施することによって集合組織が向上する結果とは別個として、微細組織が不均一になるにつれて磁性に劣りうる部分は考慮されていない。また、集合組織の向上による磁性改善のために、鋼中の酸化物系介在物中のMnOとSiOの組成重量比(MnO/SiO)を調節し、熱間圧延時に仕上圧延を、鋼鉄とロールとの間の摩擦係数が0.2以下でかつ仕上圧延温度が700℃以上のフェライト単相領域で実施後、熱延板焼鈍、冷間圧延、冷延板焼鈍する方法を提示したが、この時、熱延板の厚さを1.0mm以下に制御しなければならないため、生産性が低下して商業的な生産が難しいという限界を有している。
【0007】
さらに、圧延方向の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造のために、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、冷延板焼鈍の工程に、追加的に圧下率3~10%でskin pass圧延をし、再び焼鈍する工程を提示した。これも追加工程によるコストの上昇問題を有している。また、鋼に含まれる特定の不純物元素を非常に低いレベルまで減少させ、スキンパス工程を追加することによって、応力除去焼鈍前は高強度の鋼板、焼鈍時には結晶粒成長の容易性によって低鉄損の鋼板が得られる方法を提示したが、不純物の極低管理のためのコスト上昇がもたらされるというデメリットがある。さらに、CaやMgおよびREMなどの希土類元素を添加することによってMnSの析出を抑制し、応力除去前は結晶粒が小さいものの、応力除去焼鈍時に結晶粒が成長して優れた鉄損を有することができる技術を提示した。しかしこれも、追加元素の添加および制御のための製造コストの上昇が伴い、応力除去焼鈍を実施しない場合、その効果を確保しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。さらに具体的には、As、Pを適切に添加し、集合組織を改善して、磁性を改善した無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.5~4.0%、Mn:0.1~1.0%、Al:0.5~1.5%、P:0.002~0.015%、およびAs:0.002~0.01%を含み、残部はFeおよび不可避不純物からなり、下記式1および式2を満足することを特徴とする。
[式1]
0.005≦([P]+[As])≦0.015
(式1中、[P]および[As]はそれぞれ、PおよびAsの含有量(重量%)を示す)
[式2]
[STD]≦0.7×[GS]
([GS]は、鋼板の表面で5~500μmの粒径を有する結晶粒10,000個以上を観察した時に測定される平均結晶粒の粒径(μm)であり、STDは、その時の標準偏差(μm)を示す。)
【0010】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、C:0.005重量%以下、S:0.005重量%以下、N:0.005重量%以下、およびTi:0.005重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、Sn:0.2重量%以下、およびSb:0.2重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0012】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、Cu:0.05重量%以下、Ni:0.05重量%以下、Cr:0.05重量%以下、Zr:0.01重量%以下、Mo:0.01重量%以下、およびV:0.01重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0013】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、平均結晶粒の粒径([GS])が90~200μmであってもよい。
【0014】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、標準偏差([STD])が60~100μmであってもよい。
【0015】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、常温での比抵抗(ρ)が60μΩcm以上であってもよい。
【0016】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、鉄損(W15/50)が2.0W/Kg以下であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式3~式5を満足できる。
[式3]
鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15
[式4]
鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45
[式5]
磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65
【0018】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.5~4.0%、Mn:0.1~1.0%、Al:0.5~1.5%、P:0.002~0.015%、およびAs:0.002~0.01%を含み、残部はFeおよび不可避不純物からなり、下記式1を満足するスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および冷延板を最終焼鈍する段階を含むことを特徴とする。
[式1]
0.005≦([P]+[As])≦0.015
(式1中、[P]および[As]はそれぞれ、PおよびAsの含有量(重量%)を示す)最終焼鈍する段階で、焼鈍炉入側の張力が0.15~0.31kgf/mmであり、焼鈍炉出側の張力が0.36~0.62kgf/mmであり、均熱後、冷却時に700℃までの冷却速度が30℃/s以下であってもよい。
【0019】
最終焼鈍する段階で、焼鈍炉出側の張力(TS2)および焼鈍炉入側の張力(TS1)の差(TS2-TS1)が0.20~0.40kgf/mmであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例によれば、As、Pを適切に添加し、集合組織を改善することによって、磁性が向上した無方向性電磁鋼板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及される。
【0022】
ここで使用される専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0023】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これはまさに他の部分の上にあるか、その間に他の部分が伴ってもよい。対照的にある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。本発明の一実施例において、追加元素をさらに含むとの意味は、追加元素の追加量だけ残部の鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0024】
他に定義しないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0025】
本発明の一実施例において、添加量および含有量を制御しなければならない重要元素は、Si、Al、MnとP、Asである。鉄損を低くするための最も効率的な方法は、Si、Al、Mnを添加することによって、鋼の比抵抗を増加させることである。しかし、FeにSi、Al、Mnなどが添加されると、鉄損は減少するが、飽和磁束密度の減少による磁束密度の減少を回避することができず、Si、Al、Mnの添加量が多い高合金系では、素材の脆性増加による冷間圧延性に劣って生産性の確保が難しい。したがって、低鉄損でありながらも高磁束密度の特性を有しかつ生産性を確保するためには、Si、Al、Mnの添加量および添加比の適切な組み合わせが必要である。Pは、粒界および表面偏析元素で集合組織を改善して磁性を向上させることができる元素として知られている。本発明により、Asも、Pと同様に、偏析元素として磁性を改善させることができることを確認した。しかし、上記のような偏析元素の場合、その添加量が増加するほど圧延性を劣らせるので、その添加量を適切に制御しなければならない。また、PとAsは、所定の範囲内では複合的に添加される場合、その効果がより確実に現れるので、磁性および生産性の観点でも2つの元素を所定の範囲に制御することも必要である。
【0026】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.5~4.0%、Mn:0.1~1.0%、Al:0.5~1.5%、P:0.002~0.015%、およびAs:0.002~0.01%を含み、残部はFeおよび不可避不純物からなる。
【0027】
以下、無方向性電磁鋼板の成分限定の理由から説明する。
【0028】
Si:2.50~4.00重量%
シリコン(Si)は、鋼の比抵抗を増加させて鉄損中の渦流損失を低くするために添加される主な元素である。Siが過度に少なく添加されると、低鉄損特性を得にくいことがある。一方、Siが過度に多く添加されると、磁束密度が大きく減少し、脆性増加によって商業的な工程で生産が困難になりうる。したがって、Siを2.5~4.0重量%含むことができる。さらに具体的には、2.7~3.9重量%含むことができる。さらに具体的には、2.9~3.7重量%含むことができる。
【0029】
Mn:0.10~1.00重量%
マンガン(Mn)は、Si、Alなどと一緒に比抵抗を増加させて鉄損を低くする元素でかつ集合組織を向上させる元素である。Mnが過度に少なく添加される場合、微細な硫化物を形成することができる。Mnが過度に多く添加される場合、磁束密度が大きく減少することができる。したがって、Mnを0.10~1.00重量%含むことができる。さらに具体的には、0.20~0.95重量%含むことができる。
【0030】
Al:0.50~1.50重量%
アルミニウム(Al)は、Siと共に比抵抗を増加させて鉄損を減少させる重要な役割を果たし、また、磁気異方性を減少させて圧延方向と圧延垂直方向の磁性偏差を減少させるため添加される。Alが過度に少なく添加される場合、前述した効果が十分に得られない。逆に、Alが過度に多く添加される場合、磁束密度が大きく減少することができる。したがって、Alを0.50~1.50重量%含むことができる。さらに具体的には、0.60~1.30重量%含むことができる。
【0031】
P:0.002~0.015重量%
リン(P)は、粒界および表面偏析元素で鋼の集合組織を改善する効果を有している。Pが過度に少なく添加される場合、前述した効果が十分に得られない。Pが過度に多く添加される場合、偏析効果によって結晶粒成長性も抑制され、圧延性に劣って生産性が低下しうる。したがって、Pを0.002~0.015重量%含むことができる。さらに具体的には、0.003~0.013重量%含むことができる。
【0032】
As:0.002~0.010重量%
砒素(As、アーセニック)も、Pと同様に、粒界および表面偏析元素で鋼の集合組織を改善する効果を有している。Asが過度に少なく添加される場合、前述した効果が十分に得られない。Asが過度に多く添加される場合、結晶粒成長性が抑制され、圧延性に劣って生産性が低下しうる。したがって、Asを0.002~0.010重量%含むことができる。さらに具体的には、0.002~0.009重量%含むことができる。
【0033】
本発明の一実施例において、P、Asは、下記式1を満足する。
[式1]
0.005≦([P]+[As])≦0.015
(式1中、[P]および[As]はそれぞれ、PおよびAsの含有量(重量%)を示す)
【0034】
PとAsは、粒界および表面に偏析することによって、鋼の再結晶過程時、集合組織中の磁性に不利な{111}集合組織を減少させて磁性を向上させる元素である。しかし、その添加量が増加するほど鋼の冷間圧延性も劣るので、所定の範囲に制限されなければならない。追加的に、本発明の一実施例において、PとAsが複合添加される場合、磁性改善効果がより大きく現れることを確認し、その適正添加量の範囲に対して検討した結果、前記P、Asが式1を満足する場合、その効果を確保できるという点を確認した。さらに具体的には、式1の値は、0.006~0.015になってもよい。
【0035】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、C:0.005重量%以下、S:0.005重量%以下、N:0.005重量%以下、およびTi:0.005重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0036】
C:0.005重量%以下
炭素(C)は、Ti、Nbなどと結合して炭化物を形成して磁性を劣らせ、最終製品から電気製品に加工後、使用時、磁気時効によって鉄損が高くなって電気機器の効率を減少させるため、0.005重量%以下含むことができる。さらに具体的には、0.003重量%以下含むことができる。
【0037】
S:0.005重量%以下
硫黄(S)は、磁気的特性に有害なMnS、CuSおよび(Cu、Mn)Sなどの硫化物を形成する元素であるので、できるだけ低く添加することができる。したがって、上限を0.005重量%に制限することができる。Sを過度に少なく含む場合、むしろ集合組織の形成に不利であり、微細な硫化物の形成が促進されて磁性が低下しうるため、0.001重量%以上含有させることも考えられる。つまり、Sをさらに含む場合、0.005重量%以下、さらに具体的には、0.001~0.005重量%含むことができる。
【0038】
N:0.005重量%以下
窒素(N)は、Al、Ti、Nbなどと強く結合することによって窒化物を形成して結晶粒成長を抑制するなど、磁性に有害な元素であるので、少なく含有させることができる。したがって、Nをさらに含む場合、0.005重量%以下含むことができる。さらに具体的には、0.003重量%以下含むことができる。
【0039】
Ti:0.005重量%以下
チタン(Ti)は、C、Nと結合することによって微細な炭化物、窒化物を形成して結晶粒成長を抑制し、多く添加されるほど増加した炭化物と窒化物によって集合組織も劣って磁性が悪くなる。したがって、Tiをさらに含む場合、0.005重量%以下に制限する。さらに具体的には、0.003重量%以下含むことができる。
【0040】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、Sn:0.2重量%以下、およびSb:0.2重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
Sn、Sbは、集合組織を改善する効果があり、追加的な磁性改善のために添加することができる。ただし、添加量が過度に多い場合、結晶粒成長性を抑制させ、生産性を低下させる問題があるので、その添加量がそれぞれ0.2重量%以下に制限することができる。
【0041】
Cu、Ni、Crの場合、不純物元素と反応して微細な硫化物、炭化物および窒化物を形成して磁性に有害な影響を及ぼすので、これらの含有量をそれぞれ0.05重量%以下に制限する。また、Zr、Mo、Vなども強力な炭窒化物形成元素であるため、できるだけ添加されないことが好ましく、それぞれ0.01重量%以下で含有されるようにする。
【0042】
残部はFeおよび不可避不純物を含む。不可避不純物については、製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入する不純物であり、これは当該分野にて広く知られているので、具体的な説明は省略する。本発明の一実施例において、前述した合金成分以外に元素の追加を排除するのではなく、本発明の技術思想を阻害しない範囲内で多様に含まれる。追加元素をさらに含む場合、残部のFeを代替して含む。
【0043】
不可避不純物としては、例えば、B、Mgなどがあり、B:0.002重量%以下、Mg:0.005重量%以下に管理されなければならない。
本発明の一実施例において、結晶粒は、下記式2を満足する。
[式2]
[STD]≦0.7×[GS]
([GS]は、鋼板の表面で5~500μmの粒径を有する結晶粒10,000個以上を観察した時に測定される平均結晶粒の粒径(μm)であり、STDは、その時の標準偏差(μm)を示す。)
【0044】
式2は、結晶粒の粒径が平均に近く分布することを意味する。ただし、結晶粒が大きくなるほど分布が遠くなるしかないし、結晶粒の粒径に比例して、標準偏差を制限する。前記式2の値を満足しない時、結晶粒の偏差が大きいことを意味し、窮極的に磁性に劣る。さらに具体的には、0.60×[GS]≦[STD]≦0.68×[GS]を満足できる。
【0045】
標準偏差(STD)は、具体的には、母標準偏差であってもよい。さらに具体的には、n個の結晶粒に対して下記式で計算される。
Gsはi番目の結晶粒の粒径、Gsは平均結晶粒の粒径を示す。
【0046】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、平均結晶粒の粒径([GS])が90~200μmであってもよい。前述した範囲で磁性がさらに向上する。
また、本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、標準偏差([STD])が60~100μmであってもよい。前述した範囲で磁性がさらに向上する。
結晶粒の粒径は、板面(ND面)を基準とし、結晶粒の面積と同じ仮想の円を仮定して、その円の直径を粒径とする。
具体的には、本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、鉄損(W15/50)が2.0W/Kg以下であってもよい。
【0047】
また、本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式3~式5を満足できる。
[式3]
鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15
[式4]
鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45
[式5]
磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65
【0048】
鉄損(W5/50)は、50HZの周波数で0.5Tの磁束密度を誘起した時の鉄損である。鉄損(W10/50)は、50HZの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損である。鉄損(W15/50)は、50HZの周波数で1.5Tの磁束密度を誘起した時の鉄損である。磁束密度(B)は、100A/mの磁場で誘導される磁束密度である。磁束密度(B50)は、5000A/mの磁場で誘導される磁束密度である。式3~式5を満足することによって、モータの素材として活用時、特定の周波数および磁場領域でのみ優れた特性を示さず、周波数および磁場の変化にも一定に優れた効率を示すことができる。
【0049】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。まず、スラブを熱間圧延する。スラブの合金成分については、前述した無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したので、重複する説明は省略する。無方向性電磁鋼板の製造過程で合金成分が実質的に変動しないので、無方向性電磁鋼板とスラブの合金成分は実質的に同一である。
【0050】
具体的には、スラブは、重量%で、Si:2.5~4.0%、Mn:0.1~1.0%、Al:0.5~1.5%、P:0.002~0.015%、およびAs:0.002~0.01%を含み、残部Feおよび不可避不純物を含み、下記式1を満足できる。その他の追加元素については、無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したので、重複する説明は省略する。スラブを熱間圧延する前に加熱することができる。スラブの加熱温度は制限されないが、スラブを1200℃以下に加熱することができる。スラブの加熱温度が過度に高ければ、スラブ中に存在する窒化物、炭化物、硫化物などの析出物が再固溶された後、熱間圧延および焼鈍時に微細析出して結晶粒成長を抑制し、磁性を低下させることがある。
【0051】
熱延板の厚さは、2~2.3mmになってもよい。熱延板を製造する段階で、仕上圧延温度は、800℃以上であってもよい。具体的には、800~1000℃であってもよい。熱延板は、700℃以下の温度で巻き取られる。熱延板を製造する段階の後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。この時、熱延板焼鈍温度は、950~1150℃であってもよい。熱延板焼鈍温度が過度に低ければ、組織が成長しなかったり、微細に成長して、冷間圧延後、焼鈍時に磁性に有利な集合組織を得ることが容易でない。焼鈍温度が過度に高ければ、結晶粒が過度に成長し、板の表面欠陥が過度になりうる。熱延板焼鈍は、必要に応じて磁性に有利な方位を増加させるために行われるものであり、省略も可能である。焼鈍された熱延板を酸洗することができる。
【0052】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延は、0.10mm~0.50mmの厚さに最終圧延する。必要時、冷間圧延する段階は、1回の冷間圧延段階または中間焼鈍を間においた2回以上の冷間圧延段階を含むことができる。この時、中間焼鈍温度は、850~1150℃であってもよい。冷間圧延する段階で、最終圧下率を50%~95%に調節することができる。
【0053】
次に、冷延板を最終焼鈍する。冷延板を焼鈍する工程で、焼鈍温度は、通常、無方向性電磁鋼板に適用される温度であれば大きく制限はない。無方向性電磁鋼板の鉄損は、結晶粒の大きさと密接に関連する。無方向性電磁鋼板の鉄損は、履歴損失と渦流損失とに区分することができるが、履歴損失は、結晶粒の粒径が大きいほど減少し、逆に、渦流損失は、結晶粒の大きさが大きいほど増加して、履歴損失と渦流損失との合計が最小になる適正な結晶粒の大きさが存在する。したがって、マクロ的な観点では、最適な結晶粒の大きさを確保できる焼鈍温度を導出し適用することが重要であり、焼鈍温度は900~1100℃であれば適当である。温度が過度に低い場合、結晶粒が過度に微細で履歴損失が増加しうる。温度が過度に高い場合、結晶粒が過度に粗大で渦流損が増加して鉄損に劣ることがある。しかし、ミクロ的な観点でみると、同じ結晶粒の大きさであっても、微細組織がより均一であるほど鉄損に優れている。平均結晶粒の粒径は類似していても、標準偏差が大きければ、鉄損を劣らせるので、微細組織の均一性を確保するために、冷延板焼鈍時に900~1100℃の範囲内の最高温度到達後、冷却時に700℃までの冷却速度が30℃/s以下となるように制御する場合、優れた磁性が得られることを確認した。さらに具体的には、冷却速度は、15~30℃/sになってもよい。
【0054】
また、本発明の一実施例において、最終焼鈍時、もう一つの重要な制御因子は、焼鈍炉入側および出側の焼鈍張力であることを確認した。焼鈍張力が高い場合、板内の残留応力が残って磁性を劣らせるが、高磁場領域での磁性には大きく影響を及ぼさないが、低磁場領域では残留応力に応じて磁性が大きく劣る現象を観察した。高磁場領域での特性だけでなく、低磁場領域の特性も重要であるが、一般には高磁場領域の特性を主に確認し、低磁場領域の特性は確認しない傾向がある。しかし、モータ素材としての使用時、モータの効率には高磁場だけでなく低磁場領域での特性も重要であるので、低磁場領域の特性も改善する必要がある。
【0055】
このために、焼鈍炉入側の張力が0.15~0.31kgf/mmであり、焼鈍炉出側の張力が0.36~0.62kgf/mmに制御する場合、残留応力を減少させることができ、高磁場だけでなく低磁場領域での特性も改善することができる。焼鈍炉出側の張力(TS2)および前記焼鈍炉入側の張力(TS1)の差(TS2-TS1)が0.20~0.40kgf/mmであってもよい。前述した範囲に調節する場合、前述した効果をさらに向上させることができる。最終焼鈍後、絶縁被膜を形成することができる。前記絶縁被膜は、有機質、無機質および有機-無機複合被膜で処理され、その他の絶縁が可能な被膜剤で処理することも可能である。
【0056】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
表1および表2および残部Feおよび不可避不純物を含む成分でスラブを製造した。これを1180℃に加熱し、熱間圧延して、板厚さ2.3mmの熱延板を製造した。熱間圧延された熱延板は、1000℃で熱延板焼鈍後、酸洗した。以後、熱延板を冷間圧延して厚さを0.35mmにし、最終焼鈍を施した。最終焼鈍温度は下記表2にまとめており、焼鈍炉入側の張力は0.25kgf/mm、出側の張力は0.55kgf/mmに制御し、最高温度で焼鈍後、冷却時に700℃までの冷却速度は25℃/sで実施した。それぞれの試験片に対して微細組織を観察して結晶粒の大きさを分析し、Epstein sample加工により鉄損W5/50、W10/50、W15/50と磁束密度B1、B50を測定して、その結果を下記表2および表3に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
前記表1~表3に示されているように、合金成分および[STD]/[GS]因子が適切に制御されたA1、A4、A5、A7、A8、A10の最終焼鈍後、鉄損(W15/50)が2.0W/Kg以下でかつ鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式と、磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式もすべて満足する、非常に優れた磁性を示した。これに対し、A2は、Mnを過剰含み、Alを少なく含むことで、その結果、鉄損W15/50およびB50に劣ることが分かった。A3は、Siを少なく含むことで、その結果、鉄損W15/50およびB50に劣ることが分かった。
A6は、Asが過剰含まれ、[P]+[As]を満足せず、[STD]/[GS]の範囲を満足せず、その結果、鉄損W15/50およびB50に劣ることが分かった。A9は、[P]+[As]を満足せず、[STD]/[GS]の範囲を満足せず、その結果、鉄損W15/50およびB50に劣ることが分かった。A11は、PおよびAsが過度に少なく含むことで、鉄損W15/50およびB50に劣ることが分かった。
【実施例2】
【0062】
表4および表5および残部Feおよび不可避不純物を含む成分でスラブを製造した。これを1160℃に加熱し、熱間圧延して、板厚2.1mmの熱延板を製造した。熱間圧延された熱延板は、1020℃で熱延板焼鈍後、酸洗した。以後、熱延板を冷間圧延して厚さを0.35mmにし、最終焼鈍を施した。最終焼鈍温度、焼鈍炉入側の張力、焼鈍炉出側の張力、最高温度で焼鈍後、冷却時に700℃までの冷却速度は下記表5にまとめた。それぞれの試験片に対して微細組織を観察して結晶粒の大きさを分析し、Epstein sample加工により鉄損W5/50、W10/50、W15/50と磁束密度B1、B50を測定して、その結果を下記表5および表6に示した。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
前記表4~表6に示されているように、合金成分、製造工程条件および結晶粒の粒径特性をすべて満足したB1、B3、B4、B5、B8、B10は、最終焼鈍後の鉄損(W15/50)が2.0W/Kg以下でかつ鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式、および磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式もすべて満足する、非常に優れた磁性を示した。
【0067】
これに対し、B2は、焼鈍炉入側の張力、出側の張力および冷却速度条件を満足せず、[STD]/[GS]が適切に形成できず、その結果、鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式、および磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式を満足していないだけでなく、鉄損W15/50および磁束密度B50も劣ることが分かった。B6は、Pの成分、[P]+[As]を満足せず、焼鈍炉入側の張力と冷却速度を満足していないので[STD]/[GS]が適切に形成できず、鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式、および磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式を満足していないだけでなく、鉄損W15/50および磁束密度B50も劣ることが分かった。
【0068】
B7は、[P]+[As]を満足せず、焼鈍炉入側の張力、出側の張力の範囲を外れて、鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式、および磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式を満足していないだけでなく、鉄損W15/50および磁束密度B50も劣ることが分かった。B9は、焼鈍炉出側の張力および冷却速度を満足せず、その結果、[STD]/[GS]が適切に形成できなかった。その結果、鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式、および磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式を満足せず、鉄損W15/50および磁束密度B50も劣ることが分かった。
【0069】
一方、B11は、Asの成分添加量範囲および[P]+[As]を満足せず、焼鈍炉出側の張力と冷却速度を満足していないので[STD]/[GS]が適切に形成できず、鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式、および磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式を満足していないだけでなく、鉄損W15/50および磁束密度B50も劣ることが分かった。最後に、B12は、焼鈍炉入側の張力および冷却速度を満足せず、その結果、[STD]/[GS]が適切に形成できなかった。その結果、鉄損(W5/50)/鉄損(W15/50)≦0.15と鉄損(W10/50)/鉄損(W15/50)≦0.45の鉄損の関係式、および磁束密度(B1)/磁束密度(B50)≧0.65の磁束密度の関係式を満足せず、鉄損W15/50および磁束密度B50も劣ることが分かった。
【0070】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。