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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20241127BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241127BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/35
A61K8/36
A61K8/368
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/49
A61K8/55
A61K8/81
A61Q17/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022537589
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2019086850
(87)【国際公開番号】W WO2021151452
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-542758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0170192(US,A1)
【文献】特開2017-214318(JP,A)
【文献】特開2012-140385(JP,A)
【文献】特表2009-535407(JP,A)
【文献】特開2002-187816(JP,A)
【文献】特開2015-098449(JP,A)
【文献】特開2019-108397(JP,A)
【文献】特開2019-172620(JP,A)
【文献】特開2016-204345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水性媒体、(2)UVフィルタ、(3)熱増粘ポリマー及び(4)アニオン界面活性剤を含有する水中油型乳化化粧料であって、
(2)UVフィルタは、(2a)有機UVフィルタ、(2b)無機UVフィルタ、又はこれらの混合物を含み、
(3)熱増粘ポリマーは、
シクロデキストリン及び下記一般式(i)で表されるアルキルセルロースを含有するセルロース系熱増粘ポリマーであり、
【化1】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、-[CH2CH2-k(CH3kO]mH、又は、-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1であり、nは100~10000の数、kは0又は1、mは1~10の数、jは6~26の数を示す。但し、R、R及びRの全てが水素原子ではない。]
(4)アニオン界面活性剤は、
(4a)下記一般式(ii)で表されるアニオン界面活性剤及び(4b)下記一般式(iii)で表されるアニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一つであり、
CpH2p+1-OPO(OH)OM …(ii)
Cp-1H2p-1-CONH-R10-(COOM)q …(iii)
[式中、pは12~22の数であり、qは1又は2であり、R10は(q+1)価の有機基であり、Mは水素原子又は一価の金属である。]
(2a)成分は、
アミノベンゾフェノン化合物、ジベンゾイルメタン化合物、アントラニル酸化合物、及び4,4-ジアリールブタジエン化合物から選ばれる(2a-L1)親油性有機UV-Aフィルタ、
シンナメート化合物、サリチル酸化合物、アニリノトリアジン化合物、安息香酸化合物、ジフェニルアクリレート化合物、ベンジリデンカンファー化合物、フェニルベンゾイミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、ベンザルマロン酸化合物、及びメコシアニン化合物から選ばれる(2a-L2)親油性有機UV-Bフィルタ、
及び
ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、及びビスレゾルシニルトリアジン化合物及びベンゾオキサゾール化合物から選ばれる(2a-L3)親油性UV-A及びUV-Bフィルタ、
からなる群より選ばれる少なくとも一種の(2a-L)親油性有機UVフィルタと、
テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びその塩、並びにビスベンゾキサゾリル誘導体及びその塩から選ばれる(2a-H1)親水性有機UV-Aフィルタ、
p-アミノ安息香酸(PABA)誘導体及びその塩、ベンズイミダゾールスルホン酸化合物及びその塩、フェルラ酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、DEAメトキシシンナメート及びその塩、ベンジリデンカンファースルホン酸及びその塩、並びにカンファーベンズアルコニウムメト硫酸塩及びその塩から選ばれる(2a-H2)親水性有機UV-Bフィルタ、
及び
ベンゾフェノン-4及びその塩、ベンゾフェノン-5及びその塩、ベンゾフェノン-9及びその塩、並びにアルキレンビスベンゾトリアゾリルフェノール化合物の水分散物から選ばれる(2a-H3)親水性有機UV-A及びUV-Bフィルタ
からなる群より選ばれる少なくとも一種の(2a-H)親水性有機UVフィルタと、を含む、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(4a)成分は、セチルリン酸又はその塩であり、(4b)成分は、ステアロイルグルタミン酸又はその塩である、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
(2a-L)成分が、
(2a-L1)成分、(2a-L2)成分及び(2a-L3)成分からなり、
(2a-L1)成分が、アミノベンゾフェノン化合物であり、
(2a-L2)成分が、シンナメート化合物、サリチル酸化合物及びアニリノトリアジン化合物の組み合わせであり、
(2a-L3)成分がビスレゾルシニルトリアジン化合物である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
(2a-H)成分が、
(2a-H2)成分及び(2a-H3)成分からなり、
(2a-H2)成分が、ベンズイミダゾールスルホン酸化合物であり、(2a-H3)成分が、アルキレンビスベンゾトリアゾリルフェノール化合物の水分散物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
(2)成分として、(2b)無機UVフィルタを含有し、
(2b)無機UVフィルタは、親水化処理又は未処理の金属酸化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
(1)成分の含有量は、全質量基準で、20~80質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
(2)成分の合計の含有量は、全質量基準で、2~50質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項8】
(3)成分の合計の含有量は、全質量基準で、0.05~4質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項9】
(4a)及び(4b)成分の合計の含有量は、全質量基準で、0.05~4質量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項10】
(1)成分、(2)成分の合計、(3)成分の合計、(4a)及び(4b)成分の合計の含有量は、それぞれ全質量基準で、45~60質量%、15~25質量%、0.1~2質量%、0.1~2質量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項11】
(4a)及び(4b)成分の合計の含有量に対する、(3)成分の合計の含有量の比は、質量基準で、0.1~4である請求項1~10のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項12】
日焼け止め剤である、請求項1~11のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項13】
皮膚上に適用された水中油型乳化化粧料のサンプロテクションファクターを、適用時よりも高温の条件で維持又は向上させる方法であって、
水中油型乳化化粧料として請求項1~12のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料を用いる方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料を、ケラチン質に塗布することを含む、ケラチン質のケアのための美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に紫外線が照射されると、細胞にダメージを与え、皮膚の加齢を進める。紫外線にはUV-A及びUV-Bが含まれており、波長の短いUV-B(波長:280~320nm)は主に肌の表面で吸収され、日焼けのうちサンバーンを生じるといわれている。一方、UV-Bよりも波長の長いUV-A(波長:320~400nm)は、皮膚の真皮まで届き、日焼けのうちサンタンを生じるといわれている。
【0003】
サンスクリーンは、上記のような作用を有する紫外線から肌を保護するために用いられているが、日差しが強く高温になるシーズンに用いられることが多いため、肌上で温度が上昇し、流動性が増加して、肌から流れ落ちたり、均一性を失ったりする問題がある。
【0004】
適用領域外への非移行性を目的として、例えば、WO2008/006687において光防護化粧用組成物が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
WO2008/006687に開示された光防護化粧品組成は、少なくとも1つの熱誘導ゲル化ポリマーを含んでいることから、肌上で組成物の温度が上昇した場合にゲル化が生じ、適用領域外への組成物の移動の影響を低減または排除する効果があるとされている。しかしながら、本発明者ら検討によれば、上記公報に開示の組成では、高温時の流動性低減が不十分な場合があり、また長期保存安定性が十分ではないことが見出された。
【0006】
そこで、本発明の目的は、適用後に高温になっても紫外線遮蔽能を維持可能であり、長期保存安定性にも優れる水中油型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(1)水性媒体、(2)UVフィルタ、(3)熱増粘ポリマー及び(4)アニオン界面活性剤を含有する水中油型乳化化粧料であって、
(3)熱増粘ポリマーは、
(3a)シクロデキストリン及び下記一般式(1)で表されるアルキルセルロースを含有するセルロース系熱増粘ポリマー、又は
【化1】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、-[CH2CH2-k(CH3kO]mH、又は、-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1であり、nは100~10000の数、kは0又は1、mは1~10の数、jは6~26の数を示す。但し、R、R及びRの全てが水素原子ではない。]
(3b)ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドからなるトリブロック構造が、ウレタン結合、ウレア結合、アロファネート結合及びビウレット結合の少なくとも1つを介して連結した、下限臨界溶液温度を有するトリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーであり、
(3)熱増粘ポリマーとして(3a)セルロース系熱増粘ポリマーを含有するときは、(4)アニオン界面活性剤は、
(4a)下記一般式(ii)で表されるアニオン界面活性剤及び(4b)下記一般式(iii)で表されるアニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一つであり、
(3)熱増粘ポリマーとして(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーを含有するときは、(4)アニオン界面活性剤は、
(4a)下記一般式(ii)で表されるアニオン界面活性剤、(4b)下記一般式(iii)で表されるアニオン界面活性剤及び(4c)下記一般式(iv)で表されるアニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一つである、水中油型乳化化粧料、を提供する。
CpH2p+1-OPO(OH)OM …(ii)
Cp-1H2p-1-CONH-R10-(COOM)q …(iii)
Cp-1H2p-1-COO-CH2CHOH-CH2-OCO-R20-(COOM)r …(iv)
[式中、pは12~22の数であり、qは1又は2であり、rは1~3の数であり、R10は(q+1)価の有機基であり、R20は(r+1)価の有機基であり、Mは水素原子又は一価の金属である。]
【0008】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧料の水混和性揮発性有機溶媒含有量は1質量%未満である。別の特定の実施形態では、ラテックスフィルム形成剤は本発明の組成物に含まれない。
【0009】
「水中油型乳化化粧料」は、以下、「水中油型乳剤」または「水中油型乳化組成物」または「水中油型乳剤の形態の化粧料組成物」ともいう。「質量%」は、以下、「重量%」ともいう。
【0010】
上記水中油型乳化化粧料は、適用後に高温(例えば、40℃)になっても紫外線遮蔽能(例えば、Sun Protection Factor, SPF)を維持可能であるのみならず、紫外線遮蔽能を向上させることも可能である。また、長期保存安定性(例えば、45℃、3か月の保存)にも優れる。
【0011】
すなわち、皮膚上に適用された水中油型乳化化粧料のサンプロテクションファクターを、適用時よりも高温の条件で維持又は向上させる方法であって、水中油型乳化化粧料として本発明の水中油型乳化化粧料を用いる方法が提供可能である。
【0012】
さらに、本発明の水中油型乳化化粧料を、ケラチン質、特に肌に塗布することを含む、ケラチン質のケアのための美容方法も提供される。先行文献の熱増粘ポリマーは、水中油型乳化化粧料において熱安定性を失いやすい。一方、本発明によれば、熱増粘ポリマーは特定の界面活性剤と結合するため、安定化される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、適用後に高温になっても紫外線遮蔽能を維持可能であり、長期保存安定性にも優れる水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
水性媒体
水中油型乳化化粧料は(1)水を含む水性媒体を含有する化粧料である。水性媒体は、水のみから構成されてもよいし、水に可溶な溶媒を含んでもよい。水は、蒸留水、精製水、温泉水、深層水の他、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水を用いることができる。水の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で、20~80質量%とすることができ、30~70質量%又は45~60質量%であってもよい。
【0016】
水溶性の溶剤の例としては、モノアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びフェノキシエタノール;多価アルコール類、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール及びマンニトール、並びにこれらの混合物が挙げられる。水に可溶な溶媒としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
水中油型乳化化粧料は、(2)成分としてUVフィルタを含有しており、UVフィルタとしては、(2a)有機UVフィルタ、(2b)無機UVフィルタ、又はこれらの混合物を含む。特定の実施形態では、水中油型乳化化粧品は、少なくとも有機UVフィルタを含む。水中油型乳化化粧料は、(2a)有機UVフィルタのみを含有するか、または(2a)有機UVフィルタ及び(2b)無機UVフィルタを含有することが好ましい。
【0018】
有機UVフィルタ
(2a)有機UVフィルタは、(2a-L)親油性有機UVフィルタと(2a-H)親水性有機UVフィルタに大別される。(2a-L)親油性有機UVフィルタは、更に、(2a-L1)親油性有機UV-Aフィルタ、(2a-L2)親油性有機UV-Bフィルタ、及び(2a-L3)親油性UV-A及びUV-Bフィルタに分類され、(2a-H)親水性有機UVフィルタは、更に、(2a-H1)親水性有機UV-Aフィルタ、(2a-H2)親水性有機UV-Bフィルタ、及び(2a-H3)親水性有機UV-A及びUV-Bフィルタに分類される。
【0019】
親油性有機UVフィルタ
「親油性有機UVフィルタ」という用語は、室温(25℃)及び大気圧(10Pa)において、油分の総重量に対して少なくとも1重量%の濃度で油分に可溶な有機UVフィルタを意味する。
【0020】
特定の実施形態において、水中油型乳化化粧料は、アミノベンゾフェノン化合物、ジベンゾイルメタン化合物、アントラニル酸化合物、4,4-ジアリールブタジエン化合物、シンナメート化合物、サリチル酸化合物、アニリノトリアジン化合物、安息香酸化合物、ジフェニルアクリレート化合物、ベンジリデンカンファー化合物、フェニルベンゾイミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、ベンザルマロン酸化合物及びメコシアニン化合物、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の親油性有機UVフィルタを含む。
【0021】
特定の実施形態において、水中油型乳化化粧料は、アミノベンゾフェノン化合物、シンナメート(けい皮酸エステル)化合物、サリチル酸化合物、アニリノトリアジン、ビスレゾルシニルトリアジン化合物、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の親油性有機フィルタを含む。
【0022】
(2a-L1)親油性有機UV-Aフィルタは、アミノベンゾフェノン化合物、ジベンゾイルメタン化合物、アントラニル酸化合物及び4,4-ジアリールブタジエン化合物を含む。
【0023】
アミノベンゾフェノン化合物としては、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(DHHB、商品名:Uvinul A、BASF社製)が挙げられる。ジベンゾイルメタン化合物には、4-イソプロピルジベンゾイルメタン(商品名:Eusolex8020、Merck社製)、1-(4-メトキシ-1-ベンゾフラン-5-イル)-3-フェニルプロパン-1,3-ジオン(商品名:Pongamol、Quest社製)、1-(4-(tert-ブチル)フェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン及びブチルメトキシジベンゾイルメタン(商品名:Parsol 1789、DSM社製)がある。
【0024】
アントラニル酸化合物には、アントラニル酸メンチル(商品名:NEO HELIPAN MA Symrise社製)がある。4,4-ジアリールブタジエン化合物には、1,1-ジカルボキシ(2,2'-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、ジフェニルブタジエンマロン酸エステル、マロノニトリルなどがある。
【0025】
(2a-L2)親油性有機UV-Bフィルタは、シンナメート化合物、サリチル酸化合物、アニリノトリアジン化合物、安息香酸化合物、ジフェニルアクリレート化合物、ベンジリデンカンファー化合物、フェニルベンゾイミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、ベンザルマロン酸化合物及びメコシアニン化合物を含む。
【0026】
シンナメート化合物には、メトキシけい皮酸エチルヘキシル(商品名:PARSOL CX DSM社製)、エトキシけい皮酸イソプロピル、メトキシけい皮酸イソアミル(商品名:NEO HELIOPAN E 1000、Symrise社製)、メチルけい皮酸ジイソプロピル、シノキサート、ジメトキシケイヒ酸オクタン酸グリセリル、オクチルシンナメート、イソプロピルエチルシンナメート、ジイソプロピルエチルシンナメート、メチルジイソプロピルシンナメート、プロピルメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソアミルメトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート、シクロヘキシルメトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、3,4,5-トリメトキシケイ皮酸3-メチル-4-[メチルビス(トリメチルシリキシ)シリル]ブチルが含まれる。
【0027】
サリチル酸化合物には、サリチル酸エチルヘキシル(商品名:NEOHELIOPAN OS、Symrise社製)、ホモサレート(商品名:Eusolex HMS ロナ/EMインダストリーズ社製)、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレートが含まれる。
【0028】
アニリノトリアジン化合物には、エチルヘキシルトリアゾン(商品名:UVINUL T-150、BASF社製)、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン及び2,4,6-トリス(ジイソブチル4'-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジンなどのトリスアニリノトリアジン化合物と、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(商品名: UVASORB HEB、SIGMA2 V社製)などのビス-アニリノトリアジン化合物が含まれる。
【0029】
安息香酸化合物には、パラアミノベンゾエート(PABA)、例えば、エチルPABA(パラアミノベンゾエート)、エチルジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシルジメチルPABA、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、及びN,N-ジメチルPABAブチルエステルが含まれる。
【0030】
ジフェニルアクリレート化合物には、オクトリレン(商品名:UVINUL N539、BASF社製)及びエトロクリレン(商品名:UVINULN35、BASF社製)が含まれる。ベンジリデンカンファー化合物には、3-ベンジリデンカンファー(商品名:MEXORYL SD、CHIMEX社製)、メチルベンジリデンカンファー(商品名:EUSOLEX6300、MERCK社製)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー(商品名:MEXORYL SW、CHIMEX社製)が含まれる。
【0031】
フェニルベンゾイミダゾール化合物としては、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(商品名:Eusolex 232、Merck社製)が挙げられる。イミダゾリン化合物としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナートが含まれる。ベンザルマロン酸化合物には、例えば、ポリシリコーン-15(商品名:Parsol SLX、DSM社製)及びジネオペンチル4'-メトキシベンザルマロン酸などのベンザルマロン酸部分を含むポリオルガノシロキサンが含まれる。
【0032】
(2a-L3)親油性UV-A及びUV-Bフィルタには、ベンゾフェノン-1(商品名: UVINUL 400、BASF社製)、ベンゾフェノン-2(商品名: UVINUL 500、BASF社製)、ベンゾフェノン-3(商品名:UVINUL M40、BASF社製)、ベンゾフェノン-6(商品名: Helisorb 11、Norquay社製)、ベンゾフェノン-8(商品名:Spectra-Sorb UV-24、American Cyanamid社製)、ベンゾフェノン-10、ベンゾフェノン-11及びベンゾフェノン-12などのベンゾフェノン化合物;ドロミトリゾールトリシロキサン(商品名:Silatrizole、RhodiaChimie社製)及びブメトリゾール(商品名: TINOGUARTD AS、CIBA社製)などのベンゾトリアゾール化合物;ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(商品名:TINOSORB S、CIBA社製)などのビスレゾルシニルトリアジン化合物;2,4-ビス[5-(1-ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン(商品名:Uvasorb K2A、Sigma3V社製)などのベンゾオキサゾール化合物が含まれる。
【0033】
親水性有機UVフィルタ
(2a)有機UVフィルタは、(2a-H)親水性有機UVフィルタを含んでいてもよい。「親水性有機UVフィルタ」という用語は、室温(25℃)及び大気圧(10Pa)において、水の総重量に対して少なくとも1重量%の濃度で水に可溶な有機UVフィルタを意味する。(2a-L)親油性有機UVフィルタの水(または水とポリオール)中の水分散体も、(2a-H)親水性有機UVフィルタとみなすことができる。
【0034】
特定の実施形態では、水中油型乳化化粧料は、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びその塩、ビスベンゾキサゾリル誘導体、ベンズイミダゾールスルホン酸化合物及びその塩、p-アミノ安息香酸(PABA)誘導体及びその塩、サリチル酸及びその塩、DEAメトキシシンナメート及びその塩、ベンジリデンカンファースルホン酸及びその塩、カンファーベンズアルコニウムメト硫酸及びその塩、ベンゾフェノン-4及びその塩、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも親水性有機フィルタを含む。
【0035】
(2a-H1)親水性有機UV-Aフィルタには、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びその塩(商品名:Mexoryl SX、Chimex社製)、及びジナトリウムフェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸などのビスベンゾキサゾリル誘導体及びその塩(商品名:Neo Heliopan AP、Haarmann and Reimer社製)が含まれる。
【0036】
(2a-H2)親水性有機UV-Bフィルタには、p-アミノ安息香酸(PABA)、グリセリルPABA及びPEG-25 PABAなどのPABA誘導体及びその塩(例えば、BASF社製Uvinul P25)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸などのベンズイミダゾールスルホン酸化合物及びその塩(例えば、Merck社製Eusolex232)、フェルラ酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、DEAメトキシシンナメート及びその塩、ベンジリデンカンファースルホン酸及びその塩(例えば、Chimex社製MexorylSL)及びカンファーベンズアルコニウムメト硫酸塩及びその塩(例えば、Chimex社製Mexoryl SO)が含まれる。
【0037】
(2a-L)親油性有機UVフィルタの水分散物の例は、(2a-L3)親油性UV-A及びUV-Bフィルタである。(2a-L3)成分は、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(商品名:TINOSORB M、BASF社製)等のアルキレンビスベンゾトリアゾリルフェノール化合物の水分散液等の水分散液を含む。
【0038】
(2a-H3)親水性有機UV-A及びUV-Bフィルタには、ベンゾフェノン-4及びその塩(例えば、商品名: Uvinul MS40、BASF社製)、ベンゾフェノン-5及びその塩、ベンゾフェノン-9及びその塩がある。
【0039】
(2a)有機UVフィルタは、(2a-L)親油性有機UVフィルタ及び(2a-H)親水性有機UVフィルタを含むことが好ましい。この場合、(2a-L)親油性有機UVフィルタは、(2a-L1)成分、(2a-L2)成分及び(2a-L3)成分を含むことが好ましく、(2a-L1)成分は、アミノベンゾフェノン化合物であり、(2a-L2)成分は、シンナメート化合物、サリチル酸化合物及びアニリノトリアジン化合物の組み合わせであり、(2a-L3)成分はビスレゾルシニルトリアジン化合物であることが好ましい。一方、(2a-H)成分は、(2a-H2)成分及び(2a-H3)成分を含むことが好ましく、(2a-H2)成分は、ベンズイミダゾールスルホン酸化合物であり、(2a-H3)成分は、アルキレンビスベンゾトリアゾリルフェノール化合物の水分散物であることが好ましい。
【0040】
(2)成分は、(2b)無機UVフィルタを含んでいてもよい。無機UVフィルタは、平均一次粒子径が1nm~50μm、好ましくは5nm~500nm、より好ましくは10nm~200nmの微粒子であってもよい。平均一次粒子径は算術平均粒径に基づく。
【0041】
水中油型乳化化粧料は、さらに(2b)無機UVフィルタを含んでいてもよく、好ましくは親水性処理または未処理の金属酸化物である。このようなメタル酸化物としては、チタン酸化物、亜鉛酸化物等が挙げられる。
【0042】
(2)UVフィルタ、特に有機UVフィルタの全含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量を基準として、2~50質量%とすることができ、5~40質量%、又は15~25質量%であってもよい。
【0043】
熱増粘ポリマー
水中油型乳化化粧料における、(3)熱増粘ポリマーは、(3a)セルロース系熱増粘ポリマー又は(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーを含有する。「熱増粘ポリマー」とは、加熱により分子が構造化して、ネットワーク形状を形成し、粘度の上昇又はゲル化の進行が生じるポリマーを意味する。なお、(3)熱増粘ポリマーは水に溶解及び/又は膨潤可能なポリマーである。
【0044】
セルロース系熱増粘ポリマー
(3a)セルロース系熱増粘ポリマーは、シクロデキストリン及び下記一般式(i)で表されるアルキルセルロースを含有している。式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、-[CH2CH2-k(CH3kO]mH、又は、-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1であり、nは100~10000の数、kは0又は1、mは1~10の数、jは6~26の数を示す。但し、R、R及びRの全てが水素原子ではない。
【化2】
【0045】
「シクロデキストリン」は、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を意味する。シクロデキストリンはグルコピラノース単位からなるα-1,4結合の環状オリゴ糖である。α-シクロデキストリンは、6個のグルコースの単位からなる環状オリゴ糖である。β-シクロデキストリンは、7個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖である。γ-シクロデキストリンは、8個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖である。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンは、デンプンを酵素処理し、非還元性環状デキストリンとして得ることができる。
【0046】
シクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、メチル化α-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、メチル化γ-シクロデキストリン、ジメチル-α-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、ジメチル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシブチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシブチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンが挙げられる。熱増粘特性に優れることから、シクロデキストリンとしてはγ-シクロデキストリンが好ましい。
【0047】
「シクロデキストリン誘導体」は、シクロデキストリンを構成するグルコース分子中の2位、3位及び6位の水酸基の水素原子の一部又は全てが他の官能基で置換された化合物を意味する。
【0048】
他の官能基としては、炭素数1~4のアルキル基及び炭素数1~4のヒドロキシアルキル基が挙げられる。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びt-ブチル基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキル基が好ましい。炭素数1~4のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、ジヒドロキシメチル基及び2,2-ジヒドロキシエチル基からなる群から選ばれる少なくとも1種のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0049】
シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンを構成するグルコース分子中の2位、3位及び6位の水酸基の水素原子の一部又は全てが炭素数1~2のアルキル基及び炭素数1~4のヒドロキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種の基で置換されているシクロデキストリンが好ましい。
【0050】
炭素数1~4のアルキル基を少なくとも一つ有するシクロデキストリン誘導体としては、メチル化α-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、メチル化γ-シクロデキストリン、ジメチル-α-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、ジメチル-γ-シクロデキストリンが好ましい。炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を少なくとも一つ有するシクロデキストリン誘導体としては、ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシブチル-β-シクロデキストリンが好ましい。
【0051】
シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体は塩を形成していてもよく、塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。
【0052】
(3a)セルロース系熱増粘ポリマーを構成する、一般式(i)で表されるアルキルセルロースは、R、R及びRとして、少なくとも1つの-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1を含むことが好ましく、-CjH2j+1は、ステアリル基(-C18H37)であることが好ましい。R、R及びRとしての炭素数1~6のアルキル基は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、特にメチル基、エチル基が好ましい。R、R及びRとしての-[CH2CH2-k(CH3kO]mHは、-[CH2CH2O]mH又は-[CH2CH(CH3)O]mHを意味する。R、R及びRは、これらの基の一方又は双方であることができるが、少なくとも-[CH2CH(CH3)O]mHを含むことが好ましい。
【0053】
一般式(i)で表されるアルキルセルロースは、炭素数1~6のアルキル基を10.0~50.0質量%含むことが好ましく、21.5~30.0質量%含むことがより好ましい。一般式(i)で表されるアルキルセルロースはまた、-[CH2CH2-k(CH3kO]mHを3.0~20.0質量%含むことが好ましく、7.0~11.0質量%含むことがより好ましい。更には、一般式(i)で表されるアルキルセルロースは、-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1を0.1~10.0質量%含むことが好ましく、0.1~2.0質量%含むことがより好ましく、0.1~1.0質量%含むことが特に好ましい。
【0054】
セルロース系熱増粘ポリマーにおいては、一般式(i)で表されるアルキルセルロース100質量部に対して、シクロデキストリンを0.01~1質量部(好ましくは、0.01~0.5質量部)組み合わせることができる。
【0055】
(3a)セルロース系熱増粘ポリマーとしては、大同化成工業社製、Celgela(Celgela TS9等)を使用できる。
【0056】
トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマー
(3)成分としては、(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーを用いることもできる。(3b)成分は、ポリエチレンオキサイド(PEO)-ポリプロピレンオキサイド(PPO)-ポリエチレンオキサイド(PEO)からなるトリブロック構造が、ウレタン結合、ウレア結合、アロファネート結合及びビウレット結合の少なくとも1つを介して連結した、下限臨界溶液温度(LCST)を有するポリマーである。
【0057】
PEO-PPO-PEOからなるトリブロック構造は、例えば、以下の一般式(I)で表すことができる。式中、xは20~120の数、yは20~120の数、zは20~120の数、mは1以上の数を示す。
【化3】
【0058】
(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーは、一般式(I)の両末端を水酸基とした化合物とポリイソシアネート(特にはジイソシアネート)とを反応させて得ることができる。その際に、触媒の種類を選択することで、ウレタン結合、アロファネート結合、ビウレット結合を導入でき、これらの結合でPEO-PPO-PEOからなるトリブロック構造を連結させることができる。ウレア結合は、例えば、PEO-PPO-PEOからなるトリブロック構造を有するポリイソシアネート(特にはジイソシアネート)とポリアミン(特にはジアミン)とを反応させることで形成可能である。
【0059】
(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーは、LCST未満では、親水性部分(PEO部分等)と水との結合が強まり水に溶解するが、LCST以上では、ポリマー分子内やポリマー分子間で、疎水性部分(PPO部分等)の疎水結合が強まり、ポリマー鎖が会合又は凝集し、ミセルサイズが大きくなって粘度が上昇する。
【0060】
(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーとしては、DKSH NorthAmerica社製、ExpertGel EG312(26℃で粘度上昇が生じ46℃で高粘度を示す)及びExpertGel EG412(20℃で粘度上昇が生じ34℃で高粘度を示す)を使用することができる。
【0061】
(3)熱増粘ポリマーの合計の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で、0.05~4質量%とすることができ、0.1~3質量%又は0.1~2質量%であってもよい。
【0062】
アニオン界面活性剤
水中油型乳化化粧料は、(4)アニオン界面活性剤を含有するが、(3)熱増粘ポリマーとして(3a)セルロース系熱増粘ポリマーを含有するときは、(4)アニオン界面活性剤は、(4a)炭素数12~22のアルキルリン酸エステル、(4b)炭素数12~22のアルキルカルボン酸とアミノ酸のアミド、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つであり、(3)熱増粘ポリマーとして(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーを含有するときは、(4)アニオン界面活性剤は、(4a)炭素数12~22のアルキルリン酸エステル、(4b)炭素数12~22のアルキルカルボン酸とアミノ酸のアミド、(4c)炭素数12~22のアルキルカルボン酸のグリセリドとポリカルボン酸のモノエステル、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つである。
【0063】
(4a)炭素数12~22のアルキルリン酸エステルは、以下の一般式(ii)で表すことができる。式中、pは12~22の数であり、Mは水素又は一価の金属である。Mが一価の金属である場合は、(4a)成分は塩となる。一価の金属としてはナトリウム又はカリウムが好ましい。
CpH2p+1-OPO(OH)OM …(ii)
【0064】
(4a)炭素数12~22のアルキルリン酸エステルとしては、炭素数12~20のアルキルリン酸エステル又はその塩が好ましく、炭素数14~18のアルキルリン酸エステル又はその塩がより好ましい。すなわち、一般式(ii)においては、pは12~20が好ましく、14~18がより好ましい。
【0065】
(4a)炭素数12~22のアルキルリン酸エステルとしては、ドデシルリン酸、トリデシルリン酸、テトラデシルリン酸、ペンタデシルリン酸、ヘキサデシルリン酸(セチルリン酸)、ヘプタデシルリン酸、オクタデシルリン酸、ノナデシルリン酸、エイコシルリン酸、ヘンイコシルリン酸、ドコシルリン酸、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。
【0066】
(4b)炭素数12~22のアルキルカルボン酸とアミノ酸のアミドは、以下の一般式(iii)で表すことができる。式中、R10は(q+1)価の有機基、pは12~22の数であり、qは1又は2であり、Mは水素又は一価の金属である。Mが一価の金属である場合は、(4b)成分は塩となる。一価の金属としてはナトリウム又はカリウムが好ましい。
Cp-1H2p-1-CONH-R10-(COOM)q …(iii)
【0067】
(4b)炭素数12~22のアルキルカルボン酸とアミノ酸のアミドとしては、炭素数14~22のアルキルカルボン酸とアミノ酸のアミド又はその塩が好ましく、炭素数16~20のアルキルカルボン酸とアミノ酸のアミド又はその塩がより好ましい。すなわち、一般式(iii)においては、pは14~22が好ましく、16~20がより好ましい。アルキルカルボン酸の例は、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸である。
【0068】
一般式(iii)において-NH-R10-(COOM)qの部分はアミノ酸の残基である。(4b)炭素数12~22のアルキルカルボン酸とアミノ酸のアミドにおけるアミノ酸は、アミノ基を1つカルボキシ基を1つ有するアミノ酸、又はアミノ基を1つカルボキシ基を2つ有するアミノ酸が好ましい。
【0069】
アミノ基を1つカルボキシ基を1つ有するアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンが挙げられる。アミノ基を1つカルボキシ基を2つ有するアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。アミノ酸としては、アミノ基を1つカルボキシ基を2つ有するものが好ましく、グルタミン酸が特に好ましい。(4b)成分は、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩を形成していてもよく、アミノ酸がカルボキシ基を2つ有するものである場合は、その少なくとも一つが塩を形成していればよい。
【0070】
(4c)炭素数12~22のアルキルカルボン酸のグリセリドとポリカルボン酸のモノエステルは、以下の一般式(iv)で表すことができる。式中、R20は(q+1)価の有機基、pは12~22の数であり、rは1~3の数であり、Mは水素又は一価の金属である。Mが一価の金属である場合は、(4c)成分は塩となる。一価の金属としてはナトリウム又はカリウムが好ましい。
Cp-1H2p-1-COO-CH2CHOH-CH2-OCO-R20-(COOM)r …(iv)
【0071】
(4c)炭素数12~22のアルキルカルボン酸のグリセリドとポリカルボン酸のモノエステルとしては、炭素数14~22のアルキルカルボン酸のグリセリドとポリカルボン酸のモノエステル又はその塩が好ましく、炭素数16~20のアルキルカルボン酸のグリセリドとポリカルボン酸のモノエステル又はその塩がより好ましい。すなわち、一般式(5)においては、pは14~22が好ましく、16~20がより好ましい。
【0072】
一般式(iv)においてCO-R20-(COOM)rの部分はポリカルボン酸の残基である。(4c)成分におけるポリカルボン酸は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸である得る。ポリカルボン酸は、トリカルボン酸であることが好ましく、この場合、一般式(iv)におけるrは2である。
【0073】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。トリカルボン酸としては、クエン酸、トリメリット酸、アコニット酸が挙げられる。テトラカルボン酸としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸が挙げられる。
【0074】
(4c)炭素数12~22のアルキルカルボン酸のグリセリドとポリカルボン酸のモノエステルとしては、炭素数18のアルキルカルボン酸(ステアリン酸)のグリセリドとクエン酸のモノエステル又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が好ましい。
【0075】
(4a)、(4b)及び(4c)成分の合計の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で、0.05~4質量%とすることができ、0.1~3質量%又は0.1~2質量%であってもよい。
【0076】
水中油型乳化化粧料において、(1)水性媒体、(2)UVフィルタ、(3)熱増粘ポリマー、(4)アニオン界面活性剤の合計の含有量は、それぞれ全質量基準で、45~60質量%、15~25質量%、0.1~2質量%、0.1~2質量%にすることが特にこのましい。
【0077】
(3a)セルロース系熱増粘ポリマーの全含有量は、全質量を基準にして0.2~1.6質量%の範囲であり得る。この場合、アニオン界面活性剤成分(4a)、(4b)及び(4c)の合計含有量は、合計質量に対して0.4~2質量%であることができる。(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーの全含有量は、全質量に対して0.4~2質量%であることができる。この場合、アニオン性界面活性剤成分(4a)、(4b)及び(4c)の合計含有量は、合計質量に対して0.4~2質量%であることができる。アニオン界面活性剤成分(4a)、(4b)及び(4c)の全含有量に対する(3a)セルロース系熱増粘ポリマーの全含有量の割合は、質量基準で0.1~4が好ましく、0.2~2.5がより好ましく、アニオン界面活性剤成分(4a)、(4b)及び(4c)の全含有量に対する(3b)トリブロックポリオキシアルキレン系熱増粘ポリマーの全含有量の割合は、質量基準で0.2~5が好ましく、0.5~5がより好ましい。
【0078】
特定の実施形態において、水中油型乳化化粧料は、好ましくは、1質量%未満の水混和性揮発性有機溶媒含有量を有する。水混和性揮発性有機溶媒の含有量は、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。水混和性揮発性有機溶媒は、1~5個の炭素原子の低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノールまたはt-ブタノール)であり得る。別の特定の実施形態では、水中油型乳化化粧料は好ましくはラテックスフィルム形成剤を含有しない。ラテックスフィルム形成剤は、室温(25℃)で膜を形成することができるもの(例えば、マスカラ用エマルション系高分子物質)である。
【0079】
他の成分
水中油型乳化化粧料は、(1)成分~(4)成分以外の成分を含有していてもよい。例えば、(4)成分として、(4a)、(4b)及び(4c)成分以外のアニオン界面活性剤を含んでいてもよく、ノニオン界面活性剤を含有していてもよい。例としては、保湿剤(ブチレングリコール、プロパンジオール、ペンチレングリコール等のポリオール)、増粘剤、油剤(炭化水素油、油脂、ロウ、硬化油、エステル油、脂肪酸、シリコーン油、フッ素系油等)、中和剤(トロメタミン、水酸化ナトリウム等)、防腐剤、キレート剤(EDTAの二ナトリウム塩等)が挙げられる。
【0080】
水中油型乳化化粧料の25℃における粘度は、例えば50mPas以上、60mPa・s以上、又は80mPa・s以上であってよく、また、10,000mPa・s以下、5,000mPa・s以下、又は3,000mPa・s以下であってよい。水中油型乳化化粧料の粘度は、回転粘度計(例えば、Rheolab QC;Anton Paar社製;スピンドル:CC-27;回転速度:200rpm、ST-22-4V-40;回転速度:100rpm、ST-24-2D/2V/2V-30;回転速度:50rpm)を用いて測定することができる。
【0081】
上記の水中油型乳化化粧料は、日焼け止めとして好適に使用することができる。このような組成物は、夏の高温においても効率的であり続けるSPF保護を提供する。本発明はまた、本発明に係る水中油型乳化化粧料をケラチン物質、特に皮膚に適用することを含む、ケラチン物質をケアするための美容方法に関する。ケラチン物質は、健康なケラチン物質を意味し、例えば病理学によって影響されていない健康な被験体のケラチン物質を意味する。
【実施例
【0082】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
[実施例1~9、比較例1~5]
以下、実施例及び比較例における水中油型乳化化粧料の製造方法を説明するが、各成分の量は表1~3の記載の通りであった。
まず、表1~3における「B」で示した成分を、タンク(容量1000mL)に秤量した。このタンクを80~85℃に加熱し、タンク内の均一性を確認した。そして、表1~3における「C」及び「D」で示した成分を、タンクに徐々に添加し、20分攪拌し、その後、表1~3における「A」で示した成分をタンクに徐々に添加して攪拌を続けた。
【0084】
次に、タンクの空冷を開始し、液温が50℃を下回ったことを確認し、表1~3における「E」で示した成分をタンクに添加して攪拌し、液温が40℃を下回ったことを確認し、残りの成分(表1~3における「F」で示した成分)を添加し、液温が30℃になるまで攪拌を続け、水中油型乳化化粧料を得た。
【0085】
[安定性]
透明容器に実施例及び比較例の水中油型乳化化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、45℃で3か月保管した。保管後、相の均一性を観察し、分離等の変化がないものをOK、水層が滲出(exudate)するなどして相の均一性が失われたものをNGとして、表1~3に表示した。
【0086】
[サンプロテクションファクター(Sun Protection Factor、SPF)]
常温(25℃)と40℃における熱応答性ポリマーのSPFブースト効果を測定するため、in vitro測定を実施した。まず、ISO24443(Determination ofsunscreen UVA photoprotection in vitro)のプロトコルに従い、室温で保存された測定基板に、実施例及び比較例の水中油型乳化化粧料を塗布してSPFの測定を行った。 また、40℃に設定された恒温槽にて半日保管された測定基板を恒温槽から取り出し、この測定基板に実施例及び比較例の水中油型乳化化粧料を塗布した。これを、再び40℃の恒温槽に戻して、30分間静置して安定化した後、恒温槽から取り出した直後に、室温(25℃)で上記と同様にしてSPFの測定を行った。結果を表1~3に表示した。
【0087】
表1~3に示した結果は、有機UVフィルタ、特定の熱増粘ポリマー及びアニオン性界面活性剤の組み合わせが、熱増粘ポリマーを含まない他の比較例と比較して、40℃で優れた安定性改善されたSPF値を有する水中油型エマルジョンを提供することを示す。

【表1】

【表2】

【表3】