(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ポリウレタン製コンドーム成形金型、金型の製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20241127BHJP
A61F 6/04 20060101ALI20241127BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20241127BHJP
B29C 41/14 20060101ALI20241127BHJP
B29C 41/40 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B29C33/42
A61F6/04
B29C33/40
B29C41/14
B29C41/40
(21)【出願番号】P 2022559542
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 CN2020096323
(87)【国際公開番号】W WO2021196413
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】202010242233.8
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010431395.6
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010430499.5
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518405809
【氏名又は名称】レキット ベンキサー ヘルス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ダイ ジアビン
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェイフ
(72)【発明者】
【氏名】フェン リンリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン リャン
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-004502(JP,A)
【文献】特開昭50-014755(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104339485(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38 - 33/42
B29C 41/14
B29C 41/38 - 41/40
A61F 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さが
0.2μm以下であり、表面張力が10~35mN/mである熱可塑性ポリマーから成る、
ことを特徴とするポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエン-スチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、変性ポリフェニレンオキシド、熱可塑性ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、芳香族ポリアミド及び、上記ポリマーの有機変性または上記ポリマーに無機材料を充填することによる無機変性によって得られる材料から選択されるいずれか1つまたはこれら任意の組合せである、
請求項1に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項3】
前記有機変性は、有機ケイ素変性、有機フッ素変性、シラン変性、アクリレート共重合変性、ビニルモノマー変性及び芳香族モノマー変性から選択されるいずれか1つまたはこれらの任意の組合せである、
請求項2に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項4】
前記無機変性は、重カルシウム変性、タルク変性、グラフェン変性、水ガラス変性、アタパルジャイト変性、カオリン変性、軽カルシウム変性及びガラスマイクロビーズ変性から選択されるいずれか1つまたはこれらの任意の組合せである、
請求項2に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項5】
前記ポリウレタン製コンドームは、男性用コンドームであり、前記金型は、
ヘッド部と、
前記ヘッド部に連結されたテール部と、を備え、
前記ヘッド部は、直径が徐々に大きくなる柱状形状を有し、0度より大きく5度以下の傾斜を有する、
請求項1に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項6】
前記ヘッド部は、精液袋を備える前端部を有する、
請求項5に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項7】
前記ヘッド部は、200~260mmの長さを有する、
請求項5に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項8】
前記ヘッド部は、移行セクションを介して前記テール部に連結される、
請求項5に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項9】
前記テール部は、一定の直径を有する柱状形状を有する、
請求項5に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項10】
前記テール部は、徐々に直径が大きくなる柱状形状を有し、0度より大きく3度以下の傾斜を有する、
請求項5に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項11】
前記ポリウレタン製コンドームは、女性用コンドームである、
請求項1に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項12】
前記ポリウレタン製コンドームは、異型コンドームであり、前記金型は、浮き点またはねじ山を備えた表面を有する、
請求項1に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項13】
前記金型は、2~25mmの厚さを有するか、または中実の金型である、
請求項1に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項14】
前記金型は、垂直に配置されたときに垂直線に対して5度未満の角度を有する、
請求項1に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型。
【請求項15】
10~35mN/mの表面張力を有する熱可塑性ポリマーを提供する工程と、
前記熱可塑性ポリマーを射出成形して、ポリウレタン製コンドーム成形金型を製造する工程と、を含み、
前記金型は、
0.2μm以下の表面粗さを有する、
ことを特徴とするポリウレタン製コンドーム成形金型の製造方法。
【請求項16】
前記射出成形は、3ショット供給及び2段階段射出成形によって行われる、
請求項15に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型の製造方法。
【請求項17】
金型を提供する工程と、
ポリウレタン樹脂を含む乳液を提供する工程と、
前記金型を垂直に吊るし、前記ポリウレタン樹脂を含む前記乳液にディップしてディップされた金型を得る工程と、
前記ディップされた金型を取り出し、乾燥させて前記金型の表面にポリウレタン膜を形成する工程と、
脱型する工程と、を含み、
前記金型は、
0.2μm以下の表面粗さを有し、表面張力が10~35mN/mの熱可塑性ポリマーから成る、
ことを特徴とするポリウレタン製コンドーム成形金型の使用方法。
【請求項18】
前記ポリウレタン製コンドームは、3.5N/mm
2以下の100%引張弾性率を有する、
請求項17に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型の使用方法。
【請求項19】
前記ポリウレタン製コンドームは、破裂圧力が1kPa以上、破裂容量が5L以上、100%弾性率が3.5N/mm
2以下である、
請求項17に記載のポリウレタン製コンドーム成形金型の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンドーム材料の分野に関し、特に、ポリウレタン製コンドームを成形するための金型、その金型の製造方法及びその金型の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンドームは、避妊及び性感染症予防のために世界中で広く使用されている簡易な器具である。現行のコンドーム製品は、主に、天然ゴムラテックス製コンドームとポリウレタン製コンドームを含む。
【0003】
天然ゴムラテックス製コンドームのディップ成形工程では、主に、ガラスまたはステンレス鋼等の金属材料から成る金型が使用される。天然ラテックスゴムはガラスやステンレス鋼に近い表面張力を有するため、これら2つの材料の表面上の天然ラテックスゴムから成る膜は、比較的弱い粘着力を示す。更に、天然ラテックスゴムは、アルカリ性環境下で膨潤する性質を有する。そのため、天然ラテックスゴム製コンドームは、ガラス型または金型の表面で成形された後、アンモニア水で膨潤させて脱型している。
【0004】
しかしながら、ポリウレタン材料のコンドームは、天然ラテックスゴムのような膨潤性を持たず、表面張力は約55mN/mである。その乾燥被膜の表面張力は、約45mN/mである。ポリウレタン乳液は、ガラス、セラミック及びステンレス鋼の金型に塗布することできるが、乾燥した水性ポリウレタン膜は、これらの金型への接着力が非常に強く、圧延や脱型が困難であるため、これら2つの材料を、ポリウレタン製コンドームのディップ成形に直接使用することはできない。ポリウレタンの成形における課題を解決するために、現在、世界中で次の2つの方法が用いられている。
(1)ガラスの表面張力をポリウレタン材料のものに近づけるように、ガラス表面をアルキル化する方法、これによりガラス上のポリウレタン材料の成膜及び脱型の問題を解決することはできるが、アルキル化後に有効利用できる時間は30時間程度と短く、連続生産ができず、加えて、アルキル化の効果がリアルタイムに変化するため、生産過程でポリウレタン製コンドームの品質安定性を効果的に保証することはできない。
(2)ガラスまたはステンレス鋼の表面に離型剤の層をプレコートする方法、これにより連続生産の問題を解決することはできるが、生産過程中に離型剤がコンドーム材料に混入する可能性があり、製品の性能及び生体安全性に潜在的なリスクをもたらす。
【0005】
したがって、ポリウレタン製コンドームの成形金型の更なる改良と最適化へのニーズが存在し、この分野での研究ホットスポットであり難点でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、先行技術の上述の欠点に対してなされたものである。本発明の目的の1つは、ポリウレタン製コンドーム成形金型を提供することであり、このポリウレタン製コンドームは、薄型で柔軟性及び強度に優れ、製品の市場の需要を満たすものである。
【0007】
本発明の別の目的は、ポリウレタン製コンドーム成形金型の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、ポリウレタン製コンドーム成形金型の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表面粗さが0.2以下であり、表面張力が10~35mN/mである熱可塑性ポリマーから成るポリウレタン製コンドーム成形金型を提供する。
【0010】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエン-スチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、変性ポリフェニレンオキシド、熱可塑性ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、芳香族ポリアミド及び、上記ポリマーの有機変性または上記ポリマーに無機材料を充填することによる無機変性によって得られる材料から選択されるいずれか1つまたはこれら任意の組合せである。
【0011】
一実施形態では、有機変性は、有機ケイ素変性、有機フッ素変性、シラン変性、アクリレート共重合変性、ビニルモノマー変性及び芳香族モノマー変性から選択されるいずれか1つまたはこれらの任意の組合せである。
【0012】
一実施形態では、無機変性は、重カルシウム変性、タルク変性、グラフェン変性、水ガラス変性、アタパルジャイト変性、カオリン変性、軽カルシウム変性及びガラスマイクロビーズ変性から選択されるいずれか1つまたはこれらの任意の組合せである。
【0013】
一実施形態では、ポリウレタン製コンドームは、男性用コンドームであり、金型は、ヘッド部と、ヘッド部に連結されたテール部とを備え、ヘッド部は、直径が徐々に大きくなる柱状形状を有し、0度より大きく5度以下の傾斜を有する。
【0014】
一実施形態では、ヘッド部は、精液袋を備える前端部を有する。
【0015】
一実施形態では、ヘッド部の長さは、200~260mmである。
【0016】
一実施形態では、ヘッド部は、移行セクションを介してテール部に連結される。
【0017】
一実施形態では、テール部は、一定の直径を有する柱状形状を有する。
【0018】
一実施形態では、テール部は、徐々に直径が大きくなる柱状形状を有し、0度より大きく3度以下の傾斜を有する。
【0019】
一実施形態では、ポリウレタン製コンドームは、女性用コンドームである。
【0020】
一実施形態では、ポリウレタン製コンドームは、異型コンドームであり、金型は、浮き点またはねじ山を備えた表面を有する。
【0021】
一実施形態では、金型は、2~10mmの厚さを有するか、または中実の金型である。
【0022】
一実施形態では、金型は、金型が垂直に配置されたときに垂直線に対して5度未満の角度を有する。
【0023】
本発明は、更に、ポリウレタン製コンドーム成形金型の製造方法を提供し、方法は次の工程を含み、
・10~30mN/mの表面張力を有する熱可塑性ポリマーを提供する工程
・熱可塑性ポリマーを射出成形して、ポリウレタン製コンドーム成形金型を製造する工程
金型は、0.2以下の表面粗さを有する。
【0024】
一実施形態では、射出成形は、3ショット供給及び2段階段射出成形によって行われる。
【0025】
本発明は、更に、ポリウレタン製コンドーム成形金型の使用方法を提供し、方法は次の工程を含み、
・金型を提供する工程
・ポリウレタン樹脂を含む乳液を提供する工程
・金型を垂直に吊るし、ポリウレタン樹脂を含む乳液にディップしてディップされた金型を得る工程
・ディップされた金型を取り出し、乾燥させて金型の表面にポリウレタン膜を形成する工程
・脱型する工程
金型は、0.2以下の表面粗さを有し、表面張力が10~35mN/mの熱可塑性ポリマーから成る。
【0026】
一実施形態では、ポリウレタン製コンドームは、100%引張弾性率が2.5N/mm2以下である。
【0027】
一実施形態では、ポリウレタン製コンドームは、破裂圧力が1kPa以上、破裂容量が5L以上、100%弾性率が3.5N/mm2以下である。
【0028】
本発明に従って提供される接着剤層を有するポリウレタン製コンドームは、ポリウレタン製コンドーム成形金型を使用することによって作製され、金型は、10~35mN/mの表面張力を有する熱可塑性ポリマーから成るため、ポリウレタンは、ディップ成形によって金型の表面上に均一に膜を直接形成できる。乾燥後に形成された膜は接着力が弱く、離型剤を介することなく均一に脱型することができ、ポリウレタン膜の均一性を確保するとともに、他の物質の混入を避けることが可能になり、その結果ポリウレタン製コンドーム製品の性能及び生体安全性を十分に確保することができる。加えて、本発明で提供される金型によると、脱型等による他の工程を加えることなく、ポリウレタン材料を直接金型の表面で原料特性に対して後処理して成形することができるので、作業手順が大幅に簡略化され、生産効率が向上し、製品の適格率が向上する。本発明の金型の原料は、低コストで豊富な供給源を有し、成形工程は、単純で安全で環境にも優しい。他の特徴、利益及び利点は、明細書及び請求項を含む本明細書に詳述された発明から明らかになるだろう。
【0029】
本発明の実施形態の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施形態で使用される図面を簡単に説明する。以下の図面は、本発明の一部の実施形態が示されているだけであり、したがって、発明の範囲を限定するものと捉えるものではないことは理解されるべきである。当業者にとっては、労力を払わずに、これらの図面に従って他の関連した図面も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の特定の一実施形態によるポリウレタン製コンドームの概略構造図である。
【
図2】本発明の特定の一実施形態によるポリウレタン製コンドーム成形金型の概略構造図である。
【
図3】本発明の特定の一実施形態によるポリウレタン製コンドーム成形金型の製造方法の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態の目的、技術的解決手段及び利点をより明確に理解するために、本発明における実施形態の技術的解決手段を、添付の図面を参照しながら明確且つ完全に説明する。言うまでもなく、説明される実施形態は、本発明の一部であり、本発明の全てではないことは理解されるべきである。一般的に、本明細書中で説明し、図面で図示した本発明の実施形態の構成要素は、種々のニーズで構成され、設計されることができる。
【0032】
図1から
図3に示すように、ポリウレタン製コンドーム100の作製過程は、金型200上で成形を行う工程を含む。具体的には、ポリウレタン製コンドーム100は、ポリウレタン樹脂を含む乳液等のポリウレタンコンドーム100の原料を、ディップ成形により金型200上で成形して作製され、ポリウレタン製コンドーム100は、高い強度、高い成形性及び優れた生体適合性を有し、厚さは、例えば0.001mm~0.08mm、好ましくは0.01mm、0.015mm、0.02m及び0.030mm等の0.05mm~0.04mmであり、使用者に、より快適な体験を提供でき、アレルギーという問題もなく、よりソフトで繊細な肌感触を提供することが可能である。
【0033】
上記範囲内の厚みを有するポリウレタン製コンドーム100は、破裂圧力が例えば1kPa以上、好ましくは3kPa以上、例えば3kPa、4kPaまたは5kPaであり、破裂容量が例えば5L以上、例えば6L、8Lまたは10Lである。
【0034】
ポリウレタン製コンドーム100は、強度、例えば引張強度が例えば30MPa以上、好ましくは70MPa以上、100%弾性率が例えば2N/mm2、1.8N/mm2、1.5N/mm2または1N/mm2等の3.5N/mm2以下であるのがよい。
【0035】
ポリウレタン樹脂を含む乳液は、例えば20~80mN/m、好ましくは32mN/m、40mN/m、50mN/m、55mN/m及び58mN/m等の30~60mN/mの範囲の表面張力を有することは注目される。本発明で提供される金型20の表面で成形及び乾燥された後、ポリウレタン膜は、20mN/m、28mN/m、45mN/mまたは50mN/m等の15~68mN/mの範囲の表面張力を有する。上記範囲内であれば、ポリウレタン樹脂を含む乳液を金型200上に均一に広げることができ、乾燥した膜は粘着力が低いため、均一な膜形成及び脱型が保証される。
【0036】
いくつかの実施形態では、ポリウレタン樹脂を含む乳液は、例えば、ポリウレタン樹脂と他の補助剤とを混合した乳液から層を形成するのがよい。補助剤は、例えば、滑剤、殺菌剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、水等の機能性補助剤であるのがよいが、これらに限定されるものではない。ポリウレタン樹脂は、任意の適当な種類の脂肪族ポリウレタンまたは芳香族ポリウレタンであるのがよく、例えば、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性、溶剤型または無溶剤型のポリウレタンが好ましい。ポリウレタンの原料や作製工程は、所望のポリウレタンを作製できるように調整されるのがよい。更に、優れた造膜性及び離型性を得るという点から、ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリエーテル/ポリエステルポリオールから合成されるポリウレタン樹脂から選択することができ、例えば、100%引張弾性率が3.5N/mm2以下、引張強度が25MPa以上を有することができる。言うまでもなく、本発明は、これに限定されるものではない。
【0037】
図1及び
図2に示すように、本発明は、3層(例えば、第1層10、第2層20及び第3層30)、4層、5層、6層等の金型200の複数のディップ成形によって形成された多層構造を有するポリウレタン製コンドーム100の具体的な実施形態を提供しているが、これらに限定されず、実際のニーズに応じて調整可能である。なお、ポリウレタン製コンドーム100を金型200の種類に応じて男性用コンドームとして構成することができるが、ポリウレタン製コンドーム100を金型200の種類に応じて女性用コンドームまたは他の異型コンドームとして構成してもよいことは理解されるべきである。例えば、金型200は、浮き点またはねじ山を備えるのがよいが、これらに限定されない。
【0038】
金型200は、表面張力が10~35mN/m、例えば、35mN/m、32mN/m、30mN/m、または28mN/m等の25~35mN/mの範囲である熱可塑性ポリマーから成る。熱可塑性ポリマーの表面張力が10mN/m未満である場合、熱可塑性ポリマーから成る金型200上にポリウレタン乳液を均一に広げることが困難であり、熱可塑性ポリマーの表面張力が35mN/mを超えた場合、ポリウレタン乳液から形成された乾燥膜と熱可塑性ポリマーから成る金型200との接着が強すぎてスムーズに脱型することができなくなる。上記範囲内であれば、ポリウレタン乳液を金型200上で成形、例えばディップ成形した場合、ポリウレタン乳液は、金型表面に直接、均一に膜を形成でき、乾燥後に形成された膜は、粘着力が低く、離型剤の助けがなくても均一に脱型でき、ポリウレタン膜の均一性を確保するとともに他の物質の投入を回避するので、ポリウレタン製コンドーム製品の性能及び生体安全性を十分に確保することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマー材料は、例えば、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、ジエン系ポリマー、芳香族ポリマー及びポリウレタン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、ポリオキシメチレン及び熱可塑性ポリエステル等のハロゲン化熱可塑性ポリマーであるのがよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、具体的には、ポリエチレン及びそのコポリマー、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、エチレン-オクテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-メタクリル酸メチルコポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン-ビニルアルコールコポリマー等であるのがよい。
【0041】
プロピレン系ポリマーは、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、プロピレン-エチレンコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、プロピレン-ヘキセンコポリマー、プロピレン-オクテンコポリマー等であるのがよい。
【0042】
ジエン系ポリマーは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン-スチレンコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、エチレン-プロピレン-5-エチレン-2-ノルボルンエンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジシクロペンタジエンコポリマーまたはエチレン-プロピレン-5-ビニル-2-ノルボルンセンコポリマーであるのがよい。
【0043】
芳香族ポリマーは、ポリスチレン、変性ポリフェニレンエーテル、またはスチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー、アクリルゴム-アクリロニトリル-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレンコポリマー等のそれらのコポリマーであるのがよい。
【0044】
上述の材料を、例えば、水性ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエン-スチレン、(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6.6、ポリアミド4.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12等の)ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、変性ポリフェニレンオキシド、熱可塑性ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリフェニルエーテル、ポリアリルエーテルケトン、液晶ポリマー及びフッ素樹脂から更に選択してもよい。
【0045】
他の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、上記ポリマーから有機変性によって得られるまたは上記ポリマーを無機材料で充填することによる無機変性によって得られる材料も含むことができる。更に、変性は、化学的もしくは物理的変性または任意の他の適切な形態であってもよい。
【0046】
有機変性は、例えば、有機ケイ素変性、有機フッ素変性、グラフェン変性、シラン変性、アクリレート共重合体変性、ビニルモノマー変性、芳香族モノマー変性等であるのがよいが、これらに限定されない。
【0047】
無機変性は、例えば、重カルシウム変性、タルク変性、グラフェン変性、水ガラス変性、アタパルジャイト変性、カオリン変性、軽カルシウム変性、ガラスマイクロビーズ変性等であるのがよい。
【0048】
図2に示すように、金型200は、ヘッド部210とテール部220とから構成されている。ヘッド部210の前端は、オプションで精液袋211を備える。ヘッド部210の後端は、テール部220を連結するための移行セクション212を備える。ヘッド部210は、成形という点から、例えば、220mm、230mmまたは245mm等の200~260mmの長さH1を有する。ヘッド部210は、徐々に直径が大きくなる柱状形状を有し、0度より大きく5度以下の傾斜、例えば、2°、3°、4°の傾斜を有している。特に、ヘッド部210の前端に近いセクションは、30~45mmの直径を有し、後端に近いセクションは、前端に近いセクションよりも大きい直径、例えば32~50mmを有し、両端の直径の差によって所望の傾斜を形成することができる。金型200が上記範囲内の傾斜を有する場合、後に詳述するように、金型200を射出成形機からスムーズに引き抜くことができるので、脱型抵抗をより低減させることができる。テール部220は、平坦な面を形成するように移行セクション212を介してヘッド部210に連結されている。テール部220は、例えば、25mm、30mm、35mm、40mmまたは55mm等の10~150mmの長さH2を有する。テール部220は、ヘッド部210の端部の直径と一致する一定の直径を有する柱状形状を有する。当然、テール部も、徐々に直径が大きくなる柱状形状を有していてもよく、例えば、1度、2度または3度等の0度より大きく3度以下の傾斜を有する。金型200は、垂直に配置された場合、垂直線に対して5度未満の角度を形成することにより、使用時、例えば垂直に使用する場合に、優れた安定性を、そして、圧延工程及び脱型工程によりポリウレタン膜が破損しにくいことを十分に保証する。
【0049】
図2に示すように、熱可塑性ポリマーから成る金型200は、例えば2~25mmの厚さを有するか、または中実の金型であり、好ましくは、例えば3mm、4mm、5mm、6mm、7mm等の2~8mmの厚さを有する。金型200は、上記範囲の厚さを有することにより確実な強度を有することができる。
【0050】
図2に示すように、金型200は、0.09、0.09、0.05または0.01等の表面粗さ(Ra)0.2以下を有する。金型200の表面粗さ(Ra)が0.2以下である場合、ポリウレタン膜は、脱型時に脱型用離型剤を追加せずとも扱いやすく、外力によるポリウレタン膜の破損が回避される。
【0051】
図3に示すように、本発明は、更に、金型200の製造方法を提供し、その方法は、次の工程を含む。
・熱可塑性ポリマーを提供する工程のステップS1
・熱可塑性ポリマーを射出成形して金型を作製する工程のステップS2
【0052】
金型200は、例えば射出成形機を使用して得られるのがよい。熱可塑性ポリマーが射出成形機に均一に供給されることを保証する、3ショット供給のようなマルチショット供給を採用することができる。更に、金型200を、ヘッド部210及びテール部220を別個に形成し、次いで金型200を形成するように組み立てる、2段階成形によって得ることもできるが、これに限定されない。ヘッド部210及びテール部220を一体的に成形することもできる。
【0053】
ポリウレタン製コンドームを成形するのに金型200を利用する場合、金型200を垂直に吊るし、水性ポリウレタン乳液にディップし、次いで、金型の表面にポリウレタンが膜を形成させるように金型200を取り出し、その後脱型させる。ポリウレタン膜は、離型剤なしでスムーズに脱型されることができ、金型200に接着しない。
【0054】
本発明の特定の実施形態では、金型200は、テール部210の開放端を介した3ショット供給及び2段階射出成形を含む方法によって製造されることができ、ポリエチレン(エクソンモービルケミカル(ExxonMobil Chemical)社のEnable(登録商標)性能ポリエチレン)が、射出成形によって金型用の円筒形の管状体内に形成される。ヘッド部210は、220mmの長さH1を有し、ヘッド部210の前端の直径がその後端及びテール部の直径よりも小さくなるように、前端から後端にかけて0.2度の傾斜を有する。テール部220は、限定されない長さH2を有する。金型200は、2mmの壁厚、0.2以下の表面粗さ(Ra)及び垂直に配置された金型と垂直線との間の角度が5度未満である垂直性を有する。
【0055】
本発明の別の特定の実施形態では、金型200は、テール部210の開放端を介した3ショット供給及び2段階射出成形を含む方法によって製造されることができ、ポリプロピレン(ハンファトータル(Hanwha-Total)製TB54I)が射出成形によって金型用の円筒形の管状体内に形成される。ヘッド部210は、230mmの長さH1を有し、ヘッド部210の前端の直径がその後端及びテール部の直径よりも小さくなるように、前端から後端にかけて3度の傾斜を有する。テール部220は、限定されない長さH2を有する。金型200は、5mmの壁厚、0.2以下の表面粗さ(Ra)及び垂直に配置された金型200と垂直線との間の角度が5度未満である垂直性を有する。
【0056】
本発明の別の特定の実施形態では、金型200は、テール部210の開放端を介した3ショット供給及び2段階射出成形を含む方法によって製造されることができ、ポリカーボネート(ベイヤ(Bayer)2407)が射出成形によって金型用の円筒形の管状体内に形成される。ヘッド部210は、240mmの長さH1を有し、ヘッド部210の前端の直径がその後端及びテール部の直径よりも小さくなるように、前端から後端にかけて5度の傾斜を有する。テール部220は、限定されない長さH2を有する。金型200は、10mmの壁厚、0.2以下の表面粗さ(Ra)、垂直に配置された金型200と垂直線との間の角度が5度未満である垂直性を有する。
【0057】
以上の説明は、単に本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。当業者にとって、上述した実施形態における特徴は、矛盾がない限り、互いに組み合わせることができ、本発明は、様々な変形及び変更を有することもできる。本発明の精神及び原則に該当するいかなる変形、同等物、改良等も、本発明の範囲に含まれることを意図する。更に、実施例は、例示的なものとして解釈され、制限的なものではないが、一方で、本発明の範囲は、前述の説明によるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。したがって、特許請求の範囲の意味及び同等物の範囲内にある全ての変更は、本明細書に含まれることが意図されている。特許請求の範囲で使用される任意の引用番号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。