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  • 特許-電極構造観察用セル組立体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電極構造観察用セル組立体
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20241127BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023017480
(22)【出願日】2023-02-08
(65)【公開番号】P2024112463
(43)【公開日】2024-08-21
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敦
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159311(JP,A)
【文献】特開2019-039856(JP,A)
【文献】特開平11-174004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01B 15/00-G01B 15/08
A61B 6/00-A61B 6/58
H01M 10/42-H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CTでセルの内部構造を観察するための構造観察用セル組立体であって、
観察対象とする前記セルをその厚み方向の両面から挟んで拘束する1対の主拘束部材と、
前記主拘束部材より相対的に肉薄であって、1対の前記主拘束部材と前記セルとの間にそれぞれ介挿される補助拘束部材と、を備え、
1対の前記主拘束部材それぞれは、所定の間隙を空けて配置される複数の部分拘束部材で構成され、
前記補助拘束部材は、前記セルの厚み方向である拘束方向から視た拘束方向視で前記主拘束部材の前記間隙と重複して配置される構造観察用セル組立体。
【請求項2】
前記X線CTによるX線の照射方向及び前記間隙の長手方向で規定される平面と直交する軸の回りを回転するように前記主拘束部材を支持する回転支持部材を備えた、請求項1に記載の構造観察用セル組立体。
【請求項3】
前記補助拘束部材は絶縁体である請求項1または2に記載の構造観察用セル組立体。
【請求項4】
1対の前記主拘束部材間を締結する2つの締結部材が設けられ、前記2つの締結部材は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された請求項2記載の構造観察用セル組立体。
【請求項5】
前記セルから導出される正極端子および負極端子が、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された請求項2記載の構造観察用セル組立体。
【請求項6】
前記正極端子に接続される正極バスバーおよび前記負極端子に接続される負極バスバーそれぞれを収容するように正極バスバー収容部および負極バスバー収容部が設けられ、前記正極バスバー収容部および負極バスバー収容部は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された請求項5に記載の構造観察用セル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造観察用セル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池モジュールの構成要素であるセルは充放電時に膨張収縮を伴う。このため、電極は、厚み方向から拘束した状態で使用されることが多い。このような使用状態を模した形態で電極構造を観察する手法が提案されている。例えば、電極を厚み方向から拘束部材で拘束した状態でSEM(走査顕微鏡)やコンフォーカル光学系によって電極断面を観察する手法である。これらの手法では、膨張収縮量が大きい電極の場合には、観察用に加工した断面から突出方向への電極の膨張を完全に抑えることが困難である。このため、観察結果が実使用時における構造の挙動とは異なってしまうおそれがある。一方、観察用断面の加工が不要であるX線CTでの観察であれば上記のおそれは払拭されるものの、電極を厚み方向から拘束する拘束部材でのX線吸収によりX線CT像の画質が低下する。画質の低下は詳細な観察をする際の障害となる。
【0003】
二次電池のセルを拘束部材で厚み方向から拘束した状態で、このセルに対しX線CTでの観察を行うための電極構造観察用セル組立体として、中央にX線を通過させる孔を設けた円盤状の拘束部材を用いたものを適用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-159311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電極構造観察用セル組立体では、拘束部材である円盤状部材の中央に設けたX線を通過させる孔について、その内周縁部に外方に向けて拡径するテーパー面を設ける態様のものが開示されている。観察対象であるセルに対し、X線を広い角度範囲から入射させることが可能であるとされている。しかしながら、セルを相対旋回させてX線の入射角を90度に近付けると、X線を通過させる孔の内周縁部によりセルへのX線の入射が阻害されることが避けられない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされものであり、観察対象であるセルをX線の光軸と直交する旋回軸周りに相対旋回させた場合に、X線の入射角を90度に近付けても、このセルへのX線の入射が阻害されない電極構造観察用セル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) X線CTでセルの内部構造を観察するための構造観察用セル組立体(例えば、後述する構造観察用セル組立体1)であって、観察対象とする前記セル(例えば、後述するセル3)をその両面から挟んで拘束する1対の主拘束部材(例えば、後述する主拘束部材4)と、前記主拘束部材より相対的に肉薄であって、1対の前記主拘束部材(例えば、後述する第1主拘束部材7、第2主拘束部材8)と前記セルとの間にそれぞれ介挿される補助拘束部材(例えば、後述する第1補助拘束部材5、第2補助拘束部材6)と、を備え、1対の前記主拘束部材それぞれは、所定の間隙(例えば、後述する間隙g1、間隙g2)を空けて配置される複数の部分拘束部材(例えば、後述する上側第1拘束部材71、下側第1拘束部材72;上側第2拘束部材81、下側第2拘束部材82)で構成され、前記補助拘束部材は、前記セルの拘束方向視で主拘束部材の間隔と重複して配置される構造観察用セル組立体。
【0008】
(2) 前記X線CTによるX線の照射方向及び前記間隙の長手方向で規定される平面と直交する軸の回りを回転するように前記主拘束部材を支持する回転支持部材(例えば、後述する回転支持部材2)を備えた(1)の構造観察用セル組立体。
【0009】
(3) 前記補助拘束部材は絶縁体である(1)または(2)の構造観察用セル組立体。
【0010】
(4) 1対の前記主拘束部材間を締結する2つの締結部材が設けられ、前記2つの締結部材は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された(2)または(3)の構造観察用セル組立体。
【0011】
(5) 前記セルから導出される正極端子および負極端子が、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された(2)から(4)の何れかの構造観察用セル組立体。
【0012】
(6) 前記正極端子に接続される正極バスバーおよび前記負極端子に接続される負極バスバーそれぞれを収容するように正極バスバー収容部および負極バスバー収容部が設けられ、前記正極バスバー収容部および負極バスバー収容部は、前記回転支持部材による当該構造観察用セル組立体の回転における回転軸方向に、前記セルの観察対象部位である電極対向部を挟んで配置された(5)の構造観察用セル組立体。
【発明の効果】
【0013】
(1)の構造観察用セル組立体では、観察対象であるセルをX線の光軸と直交する旋回軸周りに相対旋回させた場合に、X線の入射角を90度に近付けても、このセルへのX線の入射が阻害されず、適確な構造観察を行うことができる。
【0014】
(2)の構造観察用セル組立体では、観察対象とされるセルへのX線の照射を軸の回りの全周にわたって行うことが可能であり、セルの構造に関する多くの情報を得ることができる。
【0015】
(3)の構造観察用セル組立体では、観察対象であるセルを無用な電気的導通が生じない状態で拘束することができる。
【0016】
(4)の構造観察用セル組立体では、締結部材がセルの観察対象部位である電極対向部から離隔し、X線CTによる観察に影響しない。
【0017】
(5)の構造観察用セル組立体では、正極端子および負極端子がセルの観察対象部位である電極対向部から離隔しているため、正極端子および負極端子に対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【0018】
(6)の構造観察用セル組立体では、正極バスバー収容部および負極バスバー収納がセルの観察対象部位である電極対向部から離隔しているため、正極バスバーおよび負極バスバーに対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の構造観察用セル組立体を示す分解斜視図である。
図2図1の構造観察用セル組立体の斜視図である。
図3図2の構造観察用セル組立体のA‐A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本開示の構造観察用セル組立体1を示す分解斜視図である。図2は構造観察用セル組立体1の斜視図である。図3は構造観察用セル組立体1のA‐A線断面図である。詳細には、図1には構造観察用セル組立体1の後述する回転支持部材2を除く部分が示され、図3には構造観察用セル組立体1の後述する間隙gの近傍部分示されている。なお、以下の説明における上下方向は、図示で見た方向であって、例えば、鉛直方向であるが、これに限られる趣旨ではない。
【0021】
構造観察用セル組立体1は、不図示のX線CTで二次電池モジュールの構成要素であるセルの内部構造を観察するための組立体である。構造観察用セル組立体1は、観察対象とする扁平なセル3をその両面から挟んで拘束する剛体でなる1対の主拘束部材4と、1対の主拘束部材4とセル3との間にそれぞれ介挿される第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6を備える。
【0022】
1対の主拘束部材4は、セル3の一方の面側に位置する第1主拘束部材7と、セル3の他方の面側に位置する第2主拘束部材8とで、セルを挟持して拘束する。この挟持に際して、第1主拘束部材7とセル3の一方の面との間に主面が概略矩形で板状の第1補助拘束部材5が介挿され、第2主拘束部材8とセル3の他方の面との間に主面が概略矩形で板状の第2補助拘束部材6が介挿される。第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6それぞれは、主拘束部材4である第1主拘束部材7および第2主拘束部材8の何れよりも相対的に肉薄である。第1補助拘束部材5は両側縁それぞれから厚み方向に起立した位置規制部5a、5aが形成されている。これらの位置規制部5a、5aで第1補助拘束部材5と第1主拘束部材7との相対位置が規制される。第2補助拘束部材6についても、第1補助拘束部材5と同様の位置規制手段が講じられる。この結果、第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6は、セル3の拘束方向視で主拘束部材4である第1主拘束部材7と第2主拘束部材8との間隔と重複して配置される。
【0023】
第1主拘束部材7は、該当する対向部位がそれぞれ直線状で平行な間隙g1を開けて図示にて上下に分かれて配置される各部分拘束部材である上側第1拘束部材71と下側第1拘束部材72とで構成される。第2主拘束部材8は、該当する対向部位がそれぞれ直線状で平行な間隙g2を開けて図示にて上下に分かれて配置される各部分拘束部材である上側第2拘束部材81と下側第2拘束部材82とで構成される。間隙g1および間隙g2は、上下方向の位置が等しく、平行な対向部位間の間隔が等しく、両者の長手方向が上下方向と直交する。本開示では、これらの間隙g1および間隙g2を、適宜、間隙gと総称する。不図示のX線源からのX線は間隙gを通って観察対象とされるセル3を透過する。X線の透過方向が双方向矢線Xで図3に示される。矢線Xの方向は、即ち、X線CTにおけるX線の照射方向である。
【0024】
上側第1拘束部材71の上端近傍を厚み方向に貫通するように上側ボルト挿通孔73が形成され、下側第1拘束部材72の下端近傍を厚み方向に貫通するように下側ボルト挿通孔74が形成される。一方、上側第2拘束部材81の上端近傍に上側第1拘束部材71の上側ボルト挿通孔73に対応する上側雌ねじ孔83が形成され、下側第2拘束部材の下端近傍に下側ボルト挿通孔74に対応する下側雌ねじ孔84が形成される。
【0025】
第1主拘束部材7と第2主拘束部材8とを、第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6を介してセル3を挟んで上側のボルト9および下側のボルト10により適切な締結力で締結する。これによりセル3を両面から拘束する。この締結に際し、上側ボルト挿通孔73から挿通されたボルト9が上側雌ねじ孔83に羅着され、下側ボルト挿通孔74から挿通されたボルト10が下側雌ねじ孔84に羅着される。
【0026】
第1主拘束部材7から第2主拘束部材8まで、ボルト9およびボルト10を支障なく挿通するために、次のような構成がとられている。即ち、第1補助拘束部材5の上端近傍に厚み方向に貫通するようにボルト9の外径より大径のボルト貫通孔11が設けられ、第1補助拘束部材5の下端近傍に厚み方向に貫通するようにボルト9の外径より大径のボルト貫通孔12が設けられている。また、第2補助拘束部材6の上端近傍にボルト9との干渉を回避する凹部13が形成され、第2補助拘束部材6の下端近傍にボルト10との干渉を回避する凹部14が形成されている。ボルト貫通孔11および凹部13により、ボルト9を、上側ボルト挿通孔73から上側雌ねじ孔83まで、第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6と干渉せずに挿通することができる。同様に、ボルト貫通孔12および凹部14により、ボルト10を、下側ボルト挿通孔74から下側雌ねじ孔84まで、第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6と干渉せずに挿通することができる。
【0027】
下側第2拘束部材82の下端近傍の短辺中央部位から下方に向けて突出するように突出部材85が設けられる。突出部材85は、下側のボルト10の挿通方向の寸法が下側第2拘束部材82の厚み寸法よりも大きく、挿通方向と直交する方向の幅寸法が下側第2拘束部材82の下端の幅よりも狭い概略柱状の部材である。上述した下側雌ねじ孔84は、突出部材85における上方寄りに設けられている。突出部材85における下側雌ねじ孔84が開口している面に、下側雌ねじ孔84から下方に並んで組立体取付用雌ねじ孔86および87が設けられる。即ち、突出部材85の同じ面に、下側雌ねじ孔84、組立体取付用雌ねじ孔86および87が、上述の順に上から下へと並んで設けられる。
【0028】
観察対象となるセル3をその両面から挟んで拘束する1対の主拘束部材4と、セル3を主拘束部材4で挟む際に介在する第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6とを含む組立体ASは、上下方向に伸びた円柱状の回転支持部材2の上端側に取り付けられる。この取り付けには、回転支持部材2の上端に上方に突出して設けられた短い角柱状の取付部材15が用いられる。即ち、取付部材15から挿通される2本の組立体取付ボルト16、17の各先端側が、下側第2拘束部材82の突出部材85に設けられた組立体取付用雌ねじ孔86、87に羅合されて、組立体ASが回転支持部材2に取り付けられる。回転支持部材2は、不図示の回転駆動機構によって自転し、これにより、組立体ASが回転する。
【0029】
図2および図3を併せ参照して容易に理解されるとおり、回転支持部材2は、不図示のX線CTによるX線の照射方向X及び間隙gの長手方向で規定される平面と直交する軸の回りを回転するように主拘束部材4を支持する。組立体ASと回転支持部材2とを含んで、本開示の構造観察用セル組立体1の一つの態様が構成される。
【0030】
ここで、セル3は、セル本体3aの中央部の内部でセパレータシートが正極活物質層および負極活物質層に対向している部分である電極対向部3bが観察対象部位とされる。セル本体3aの上縁に正極端子20が導出され、セル本体3aの下縁に負極端子21が導出されている。正極端子20から正極バスバー22が導出され、負極端子21から負極バスバー23が導出される。これにより、正極端子20および負極端子21は、組立体ASの回転における回転軸方向に、観察対象部位である電極対向部3bのX線の透過部位からそれぞれ離隔して位置する。このため、正極端子20および負極端子21は、X線CTによる観察に影響しない。また、上述したボルト9およびボルト10、ならびに、上側雌ねじ孔83および下側雌ねじ孔84は、組立体ASの回転における回転軸方向に、観察対象部位である電極対向部3bのX線の透過部位からそれぞれ離隔して位置する。即ち、ボルト9およびボルト10、ならびに、上側雌ねじ孔83および下側雌ねじ孔84で締結される部位は、主拘束部材4である第1主拘束部材7と第2主拘束部材8とを締結するそれぞれボルトと雌ねじのセットである2つの締結部材をなし、この2つの締結部材は、回転支持部材2による組立体ASの回転における回転軸方向に、セル2の観察対象部位である電極対向部3bを挟んで配置される。このため、ボルト9およびボルト10、ならびに、上側雌ねじ孔83および下側雌ねじ孔84、従って上述の2つの締結部材は、X線CTによる観察に影響しない。
【0031】
図1のとおり、正極バスバー22は、正極端子20との接続部からセル本体3aの上縁と平行に短く伸び、セル本体3aの側縁に到らずに鉛直上方に屈曲し、所定寸法上方に伸びて自己の上端に到る形状を呈している。また、負極バスバー23は、負極端子21との接続部からセル本体3aの下縁と平行に短く伸び、セル本体3aの側縁に到らずに鉛直下方に屈曲し、所定寸法下方に伸びて自己の下端に到る形状を呈している。
【0032】
第1補助拘束部材5の上縁に上方に突出して形成された正極バスバー収容部半体5uと、第2補助拘束部材6の上縁に上方に突出して形成された正極バスバー収容部半体6uとが、双方の収容凹所が対向するように合わせられて正極バスバー収容部24が形成される。正極バスバー22の上端近傍部は、正極バスバー収容部24に収容される。図2のとおり、正極バスバー収容部24は、組立体ASの一側方に向けて解放され、内部の正極バスバー22に対する外部からの電気的入出力操作を許容する窓部24aを有する。
【0033】
第1補助拘束部材5の下縁に下方に突出して形成された負極バスバー収容部半体5dと、第2補助拘束部材6の下縁に下方に突出して形成された負極バスバー収容部半体6dとが、双方の収容凹所が対向するように合わせられて負極バスバー収容部25が形成される。負極バスバー23の下端近傍部は、負極バスバー収容部25に収容される。図2のとおり、負極バスバー収容部25は、組立体ASの一側方に向けて解放され、内部の負極バスバー23に対する外部からの電気的入出力操作を許容する窓部25aを有する。
【0034】
上述の窓部24aおよび窓部25aは、いずれも、観察対象部位である電極対向部3bのX線の透過部位からそれぞれ離隔して位置する。視点を転じると、セル3から導出される正極端子20および負極端子21が、回転支持部材2による組立体ASの回転における回転軸方向に、セル3の観察対象部位である電極対向部3bを挟んで配置される。また、正極端子20に接続される正極バスバー22および負極端子21に接続される負極バスバー23それぞれを収容するように正極バスバー収容部24および負極バスバー収容部25が設けられ、正極バスバー収容部24および負極バスバー収容部25は、回転支持部材2による組立体ASの回転における回転軸方向に、セル3の観察対象部位である電極対向部3bを挟んで配置される。これにより、正極バスバー収容部24および正極バスバー収容部24の窓部24aおよび窓部25aから電気的入出力の操作を行いセル3のSOCを変化させて観察を行うに際して、この操作がX線CTによる観察に影響しない。
【0035】
上述したように、セル3をその両面から挟んで拘束する1対の主拘束部材4のうちの一方の部材である第1主拘束部材7とセル3との間に第1補助拘束部材5が介在するが、より詳細には、さらに、第1補助拘束部材5とセル3の電極対向部3bの一方の面との間にスペーサー26が介在する。また、1対の主拘束部材4のうちの他方の部材である第2主拘束部材8とセル3との間に第2補助拘束部材6が介在するが、より詳細には、電極対向部3bの他方の面に対向するように第2補助拘束部材6に形成された凸状部6aが電極対向部3bに当接する。凸状部6aの裏面側は凹状を呈するが、この凹状を呈する部分に対応して第2主拘束部材8に凸状部8aが形成されている。即ち、第2主拘束部材8の凸状部8aが第2補助拘束部材6の凸状部6aの裏面側凹状部分に当接し、凸状部6aがセル3の電極対向部3bの他方の面を押圧する。第2主拘束部材8の凸状部8aは、上側第2拘束部材81の凸状部81aと下側第2拘束部材82の凸状部82aとにより構成される。
【0036】
本開示の構造観察用セル組立体1は、上述の構成を有するため、1対の主拘束部材4である第1主拘束部材7および第2主拘束部材8から観察対象とするセル3への拘束力は次のように及ぶ。ボルト9およびボルト10を締結することにより両ボルト9、10に作用する張力が、対向する第1主拘束部材7および第2主拘束部材8に両者の間隔を狭める向きの力を生じる。
【0037】
この結果、第1主拘束部材7によるセル3の一方の面へ向く圧力が第1補助拘束部材5およびスペーサー26をこの順に伝搬して、セル3の電極対向部3bの一方の面をその法線方向に押圧・拘束する。同時に、第2主拘束部材8の凸状部8a(上側第2拘束部材81の凸状部81aと下側第2拘束部材82の凸状部82a)によるセル3の他方の面へ向く圧力が、第2補助拘束部材6の凸状部6aを介して伝搬し、セル3の電極対向部3bの他方の面をその法線方向に押圧・拘束する。本開示の構造観察用セル組立体1は、その一態様において、第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6として絶縁体を適用する。この態様の場合は、観察対象であるセル3を無用な電気的導通が生じない状態で拘束することができる。但し、第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6に非絶縁体を適用した態様をとることも可能である。
【0038】
第1主拘束部材7は、上側第1拘束部材71と下側第1拘束部材72とに分かれており、かつ、第2主拘束部材8は、上側第2拘束部材81と下側第2拘束部材82とに分かれている。上側第1拘束部材71と上側第2拘束部材81とはそれぞれ上端側でボルト9により締結され、下側第1拘束部材72と下側第2拘束部材82とはそれぞれ下端側でボルト10により締結される構成である。このため、上側第1拘束部材71および上側第2拘束部材81、ならびに、下側第1拘束部材72および下側第2拘束部材82による拘束力は、上下それぞれに分かれて作用することになる。下側第1拘束部材72および下側第2拘束部材82による拘束力は、上述のように分かれて作用しても、セル3の電極対向部3bに対してその両面から膨張を拘束するだけの十分な拘束圧力を作用させるものであることを要する。
【0039】
従って、第1主拘束部材7の上側第1拘束部材71および下側第1拘束部材72、ならびに、第2主拘束部材8の上側第2拘束部材81および下側第2拘束部材82には、十分な剛性が求められる。このため、それぞれ、相応の厚み寸法のものであることを要する。1対の主拘束部材4である第1主拘束部材7および第2主拘束部材8の厚み寸法が大きくなると、主拘束部材を透過させて観察対象となるセル3にX線を照射するタイプの構造観察用セル組立体の場合には、主拘束部材によるX線の吸収により鮮明な構造観察に支障を来す。本開示の構造観察用セル組立体1の場合には、X線の照射方向に沿って間隙gが設けられているため、構造観察のために作用するX線の損失が少なく、鮮明な構造観察が可能である。
【0040】
本開示の構造観察用セル組立体1によれば、以下の効果を奏する。
【0041】
(1)の構造観察用セル組立体1では、1対の主拘束部材4である第1主拘束部材7および第2主拘束部材8と、第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材を備える。第1主拘束部材7および第2主拘束部材8は、観察対象とするセル3をその両面から挟んで拘束する。第1主拘束部材7とセル3との間に第1補助拘束部材5が介挿され、第2主拘束部材8とセル3との間に第2補助拘束部材6が介挿される。第1主拘束部材7は、部分拘束部材である上側第1拘束部材71と下側第1拘束部材72を含み、上側第1拘束部材71と下側第1拘束部材72とは、両者間には所定の平行な間隙g1を空けて配置される。第2主拘束部材8は、部分拘束部材である上側第2拘束部材81と下側第2拘束部材82を含み、上側第2拘束部材81と下側第2拘束部材82とは、両者間には平行な間隙g2を空けて配置される。X線CTのX線源からのX線は間隙g1、g2を通って観察対象とされるセル3の電極対向部3bを透過する。これにより、回転支持部材2を回転させて、セル3をX線の光軸と直交する旋回軸周りに相対旋回させた場合に、X線の入射角を90度に近付けても、セル3へのX線の入射が阻害されない。一方、第1主拘束部材7を部分拘束部材である上側第1拘束部材71と下側第1拘束部材72とに分割し、第2主拘束部材8は、部分拘束部材である上側第2拘束部材81と下側第2拘束部材82とに分割して、各部分拘束部材を片端で固定した構造であるため、セル3の膨張を押さえるためには各部分拘束部材の板厚を厚くする必要が生じる。これに対しては、観察対象とされるセル3の電極対向部3bへのX線の照射を間隙g1、g2を通して行うようにすることで、電極対向部3bの構造の観察が阻害されないようにされている。間隙g1、g2ではX線の吸収がないため、間隙を持たない主拘束部材でセル3を拘束する場合に比し電極対向部3bの構造を明瞭に観察できる。
【0042】
(2)の構造観察用セル組立体1は、X線CTによるX線の照射方向及び間隙gの長手方向で規定される平面と直交する軸の回りを回転するように主拘束部材4を支持する回転支持部材2を備えた。このため、観察対象とされるセル3の電極対向部3bへのX線の照射を上記軸の回りの全周にわたって行うことが可能であり、電極対向部3bの構造に関する多くの情報を得ることができる。
【0043】
(3)の構造観察用セル組立体1は、補助拘束部材である第1補助拘束部材5および第2補助拘束部材6は絶縁体である。これにより、観察対象であるセル3を無用な電気的導通が生じない状態で拘束することができる。
【0044】
(4)の構造観察用セル組立体1では、締結部材(ボルト9と上側雌ねじ孔83のセット、および、ボルト10と下側雌ねじ孔84のセット)がセル2の観察対象部位である電極対向部3bから離隔し、X線CTによる観察に影響しない。
【0045】
(5)の構造観察用セル組立体では、正極端子20および負極端子21がセル2の観察対象部位である電極対向部3bから離隔しているため、正極端子20および負極端子21に対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【0046】
(6)の構造観察用セル組立体では、正極バスバー収容部24および正極バスバー収容部24がセル2の観察対象部位である電極対向部3bから離隔しているため、正極バスバー22および負極バスバー23に対する操作がX線CTによる観察に影響しない。
【符号の説明】
【0047】
AS…組立体
g、g1、g2…間隙
1…構造観察用セル組立体
2…回転支持部材
3…セル
3a…セル本体
3b…電極対向部
4…主拘束部材
5…第1補助拘束部材
5d…負極バスバー収容部半体
5u…正極バスバー収容部半体
6…第2補助拘束部材
6a…凸状部
6d…負極バスバー収容部半体
6u…正極バスバー収容部半体
7…第1主拘束部材
8…第2主拘束部材
9、10…ボルト
11、12…ボルト貫通孔
13、14…凹部
15…取付部材
16、17…組立体取付ボルト
20…正極端子
21…負極端子
22…正極バスバー
23…負極バスバー
24…正極バスバー収容部
24a…窓部
25…負極バスバー収容部
25a…窓部
26…スペーサー
71…上側第1拘束部材
72…下側第1拘束部材
73…上側ボルト挿通孔
74…下側ボルト挿通孔
81…上側第2拘束部材
81a…凸状部
82…下側第2拘束部材
82a…凸状部
83…上側雌ねじ孔
84…下側雌ねじ孔
85…突出部材
86、87…組立体取付用雌ねじ孔
図1
図2
図3