(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】検測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20241127BHJP
B23Q 17/20 20060101ALN20241127BHJP
【FI】
G01B5/00 L
B23Q17/20 A
(21)【出願番号】P 2023506586
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010812
(87)【国際公開番号】W WO2022195760
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】福岡 大祐
(72)【発明者】
【氏名】原口 貴文
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169180(JP,A)
【文献】特開平05-069280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
B23Q 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持および解放するチャックと、
ワークの加工部に対して接触子を接触させることにより当該加工部の検測を行う検測機と、
前記検測機に対するマスタ合わせを行うためのマスタゲージを保持するマスタ置台と、
前記チャックおよび前記マスタ置台を一体的に移動させ、前記チャックに把持されたワークと前記マスタ置台に保持されたマスタゲージとを、前記検測機の検測位置において互いに置き換える位置換え機構と、
を有
し、
前記位置換え機構は、前記チャックを搭載した第1スライド部材と、前記マスタ置台が設けられた第2スライド部材とが、同じガイドレールを摺動するように一体的に構成され、前記第1スライド部材が前記ガイドレールと平行な方向に伸縮作動するアクチュエータに連結されたものである検測装置。
【請求項2】
ワークを把持および解放するチャックと、
ワークの加工部に対して接触子を接触させることにより当該加工部の検測を行う検測機と、
前記検測機に対するマスタ合わせを行うためのマスタゲージを保持するマスタ置台と、
前記チャックおよび前記マスタ置台を一体的に
直線移動させ、前記チャックに把持されたワークと前記マスタ置台に保持されたマスタゲージとを、前記検測機の検測位置において互いに置き換える位置換え機構と、
を有する検測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタゲージを使用したマスタ合わせとワークに対する検測とを同じ位置で行う検測装置を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
自動加工ラインでは、工作機械などで加工処理が施されたワークに対して加工寸法の検測が行われる。下記特許文献1にもそうした検測を実行する検測装置が開示されている。同文献の検測装置は、多数の異なる径の孔が加工されたワークに対し、その孔加工の良否を判断するためのものである。こうした検測装置では、検測前に検測すべき複数の加工孔の基準径の読込みが行われる。本従来例の場合、シリンダでマスタゲージが待機位置から基準径測定位置へと移動し、電気マイクロメータを突出させ検出子をゲージ内径に接触させた検出値が記憶される。その後、加工孔の検測では対象となる電気マイクロメータがロータリアクチュエータの動作で突出し、3軸方向の移動により目的の孔に検出子が入れられ内面に対する接触が行われる。そして、演算処理部では検測中の孔径の基準径がマスタテーブルから選択され、これと実測値が比較され公差内であるか否かの判定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検測装置は、検測前に行う基準寸法の読込みが加工するワークに対応したマスタゲージを使用して行われる(以下、「マスタ合わせ」という)。しかし、従来はマスタゲージを作業者が検測装置のチャック部に設置して行う必要があった。そのチャック部には通常ワークが送られてくるため、マスタゲージはマスタ合わせの度に作業者がセットしなければならなかった。この点、前記従来例の検測装置は、マスタゲージがシリンダの伸縮により待機位置と基準径測定位置との間で移動する構成を有している。ただし、同装置は、送られてくるワークが電気マイクロメータを搭載した移動ヘッドの前方に固定するというものである。チャック機構などを含むワークを設置する構成が明確ではないが、電気マイクロメータによるマスタ合わせを行う位置と、実際にワークの検測を行う位置とが異なる構成である。そのため、マスタ合わせと検測との間にズレが生じてしまい、検測精度が低下しまうことが懸念される。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、マスタ合わせと検測とを同じ位置で行う検測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における検測装置は、ワークを把持および解放するチャックと、ワークの加工部に対して接触子を接触させることにより当該加工部の検測を行う検測機と、前記検測機に対するマスタ合わせを行うためのマスタゲージを保持するマスタ置台と、前記チャックおよび前記マスタ置台を一体的に移動させ、前記チャックに把持されたワークと前記マスタ置台に保持されたマスタゲージとを、前記検測機の検測位置において互いに置き換える位置換え機構とを有し、前記位置換え機構は、前記チャックを搭載した第1スライド部材と、前記マスタ置台が設けられた第2スライド部材とが、同じガイドレールを摺動するように一体的に構成され、前記第1スライド部材が前記ガイドレールと平行な方向に伸縮作動するアクチュエータに連結されたものである。
本発明の他の態様における検測装置は、ワークを把持および解放するチャックと、ワークの加工部に対して接触子を接触させることにより当該加工部の検測を行う検測機と、前記検測機に対するマスタ合わせを行うためのマスタゲージを保持するマスタ置台と、前記チャックおよび前記マスタ置台を一体的に直線移動させ、前記チャックに把持されたワークと前記マスタ置台に保持されたマスタゲージとを、前記検測機の検測位置において互いに置き換える位置換え機構とを有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、チャックによって加工済みのワークを把持し、そのワークに対して検測機を用いて加工部の検測が行われるが、その検測機はマスタゲージを使用したマスタ合わせが検測位置において予め行われ、加工部の検測に当たっては、位置換え機構がチャックおよびマスタ置台を一体的に移動させることにより、そのチャックに把持されたワークとマスタ置台に保持されたマスタゲージとが、検測機に対する同じ検測位置において置き換えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】検測装置が使用される正面2軸旋盤を示した正面図である。
【
図2】検測装置の本体部分をオートローダとともに示した側面図である。
【
図5】マスタゲージとワークとの置き換えを示した検測装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る検測装置の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態の検測装置が使用される正面2軸旋盤を示した正面図である。この正面2軸旋盤1には正面から見た左側に供給用のワークストッカ3が配置され、右側には検測装置5が配置されている。正面2軸旋盤1は、ガントリ式のオートローダ11が設けられ、供給用ワークストッカ3から検測装置5までワークWを搬送することができるよう構成されている。
【0010】
ワークストッカ3は、段積みされたワークWが複数のパレットにそれぞれ搭載され、移動テーブル上を周状に移動し、該当するワークWを搭載したパレットが受渡し位置へと送られるよう構成されている。受け渡し位置には昇降機が設けられ、オートローダ11によってパレットからワークWが一つずつ取り出されるようになっている。正面2軸旋盤1は、ワークストッカ3から加工室内へと運ばれたワークWに対して所定の加工を実行する一対の旋盤が構成されている。加工室内における各主軸チャック間の移し換えもオートローダ11によって行われる。
【0011】
加工されたワークWは、オートローダ11によって正面2軸旋盤1から検測装置5へと運ばれ、そこで加工部分の寸法が検測される。
図1では、検測装置5の内部構造が装置カバー13を透視した状態で示されている。検測装置5は、テーブル15の上に装置本体が構成され、上方を向いたチャック21にオートローダ11から搬送された加工済みワークWが受け渡しされる。なお、
図1には正面2軸旋盤1だけが示されているが、例えば工場内には隣に他の作業機が並べられた加工ラインが構成され、加工済みワークWが検測装置5から取り出されて次の作業機へと搬送される。
【0012】
続いて、
図2は、検測装置5の本体部分をオートローダ11とともに示した側面図である。また、
図3は、検測装置5の本体部分を示した斜視図であり、
図4は、検測装置5の本体部分を示した正面図である。
図3および
図4は、テーブル15の脚を除いた状態の検測装置5が示されている。検測装置5は、テーブル15の上にワークWを把持するチャック21と検測機22が前後方向に配置され、その間にマスタ合わせを行うためのマスタゲージMを保持したマスタ置台23が配置されている。
【0013】
テーブル15には後部に背面板25が立設され、その前に検測機22が組み付けられている。支柱31の上にはブラケット32が固定され、そこに鉛直なガイドレール33が設けられている。ガイドレール33には昇降スライド35が摺動可能に組み付けられ、ブラケット32に固定されたエアシリンダ36のピストンロッドが昇降スライド35に連結されている。検測機22は、昇降スライド35に搭載され、鉛直姿勢のエアシリンダ36が伸縮作動することにより、上昇した図示する待機位置とマスタゲージMに向けて下降した検測実行位置との間を移動することが可能になっている。
【0014】
検測機22は、左右の幅方向に一対の測定ヘッド37が設けられ、その測定ヘッド37にはそれぞれ下方に向けて接触子38が取り付けられている。2つの測定ヘッド37は、各々が異なるブラケットに取り付けられ、互いの間隔を変更調整することができるように、左右幅方向の独立した移動が可能な構造になっている。一対の測定ヘッド37は、スプリングのバネ力に抗して一対の接触子38を揺動させるピストンが設けられ、圧縮エアの給排気によって作動し、接触子38に対する計測がエア圧制御によって行われるようになっている。また、測定ヘッド37には接触子38の変位量を検出する検出センサが設けられ、その検出信号が正面2軸旋盤1に設けられた制御装置に送信されるよう構成されている。
【0015】
検測装置5は、検測機22に対して常にマスタ合わせができるように、接触子38の真下の検測位置Pに、マスタ置台23に保持されたマスタゲージMが配置されている。しかし、ワークWの検測時には、マスタゲージMを検測位置Pから移動させる必要がある。そこで、本実施形態では、マスタゲージMとワークWとの検測位置Pにおける配置が互いに置き換えられるようにした位置換え機構が設けられている。
【0016】
チャック21は、オートローダ11によるワークWの受渡し作業が検測機22によって妨げられないように、検測位置Pから離れた位置に設けられている。テーブル15の後方に位置する検測機22に対してチャック21は前方側に配置されている。チャック21は、放射状に組まれた3つのチャック爪が開閉することでワークWを把持および解放するよう構成されたものである。そのチャック21はスライドテーブル41の上に組み付けられ、テーブル15の上を前後方向に移動可能になっている。テーブル15の上には左右に2本のガイドレール42が水平に固定され、そこにスライド43が摺動可能に噛み合っている。左右のスライド43に対してスライドテーブル41が固定され、そのスライドテーブル41にはエアシリンダ45のピストンロッド451が連結されている。
【0017】
ブラケット32は、4本の支柱31によってテーブル15上に組み付けられ、エアシリンダ45が支柱31の間を通すようにして検測機22の下に配置されている。エアシリンダ45は、前後方向に配置されたガイドレール42と平行になるように、テーブル15上にシリンダ部が固定され、検測機22の下方位置から前方にピストンロッド451が突き出している。検測装置5は、このピストンロッド451が伸縮することによりテーブル15がガイドレール42に沿って移動し、搭載されたチャック21が前後2か所の所定位置に位置決めされるよう構成されている。
【0018】
さらに位置換え機構は、マスタゲージMとワークWとが同時に移動できるように、マスタ置台23がスライドテーブル41と連結されて一体的な構成となっている。具体的には、チャック21を搭載したスライドテーブル41と、ガイドレール42に従って移動するスライドプレート46が一体なって構成されている。スライドプレート46は、スライドテーブル41と同じスライド43を有し、ガイドレール42に沿って摺動可能なものである。そして、コの字形のマスタ置台23が、エアシリンダ45を跨ぐようにして左右のスライドプレート46に固定されている。マスタ置台23は、上面に保持穴が形成され、そこにマスタゲージMの下面に形成された凸部が嵌まり込むようになっている。
【0019】
検測装置5の位置換え機構は、通常時のエアシリンダ45が伸長状態であって、
図3に示すようにチャック21はワークWの受け渡し位置に配置されている。一方、エアシリンダ45の収縮時には、
図5において一点鎖線で示すように、検測位置PにはマスタゲージMに置き換わってチャック21が把持したワークWが配置されるようになっている。なお、
図5は、マスタゲージMとワークWとの置き換えを示した検測装置5の側面図である。
【0020】
続いて、検測装置5の作用効果について説明する。検測装置5は、前述したように正面2軸旋盤1で加工されたワークWがオートローダ11によって運ばれる。オートローダ11は、鉛直なアーム16の先端に、中心軸が直交する2つのチャック機構を有するロボットハンド17が設けられている。そこで、一方のロボットハンド17によってチャック21から検測済みワークWが取り出され、他方のロボットハンド17に把持されている加工済みワークWが空になったチャック21へと受け渡しされる。
【0021】
こうしてチャック21に把持された加工済みワークWは、検測機22によって検測されるが、その検測機22には予めマスタ合わせが行われている。検測装置5で使用するマスタゲージMは、ワークWに形状を合わせたもの(マスタワークともいう)であり、検測位置Pに位置するマスタ置台23にセットされている。検測機22のマスタ合わせは、エアシリンダ36によって昇降スライド35が下降し、検測位置PのマスタゲージMに対して基準寸法の測定箇所に接触子38が位置決めされる。そして、マスタゲージMの測定箇所に接触子38を接触させることにより、基準寸法を読込んだ検測機22のマスタ合わせが行われる。
【0022】
マスタ合わせが行われた検測機22は、エアシリンダ36によって昇降スライド35が上昇して待機位置に戻される。次に、加工済みワークWの検測時には、エアシリンダ45の収縮作動によってワークWとマスタゲージMとが同時に同じ距離だけ後方へと移動し、各々が
図5に一点鎖線で示す位置に配置される。こうした検測位置Pの置き換えにより、加工済みワークWに対して検測機22による検測が行われ、その後、エアシリンダ45の伸長作動によってワークWとマスタゲージMとが実線で示す位置に戻される。
【0023】
加工済みワークWに対して行った検測の結果、加工部の寸法が公差範囲内であればワークWは次の工程へと搬送され、公差寸法を外れた場合にはNGワークとして不図示の排出シュートへと搬送されて廃棄される。こうした加工済みワークWの検測が繰り返される中、マスタゲージMが検測位置Pにある場合には、任意のタイミングで検測機22におけるマスタ合わせが繰り返し行われている。
【0024】
よって、本実施形態によれば、マスタ置台23にマスタゲージMを常に保持させておくことでマスタ合わせが行われるため、作業者は、マスタ合わせの度にチャック21に対してマスタゲージMの把持や取り出しを行う従来の作業から解放される。そして、マスタゲージMが常に検測装置5内にセットされていたとしても、ワークWに対する検測時には検測位置Pから外れて邪魔をすることはなく、従来のような作業者におけるマスタゲージMの置き忘れも生じない。
【0025】
マスタゲージMに対するマスタ合わせとワークWに対する検測は常に同じ検測位置Pで行われる。そのため、検測装置5は、検測機22における検測状態が一定であることから、高い検測精度を維持することができる。更に、検測装置5の位置換え機構は、マスタゲージMとワークWとが同時に移動できるようにマスタ置台23がスライドテーブル41と一体的に構成され、また、ガイドレール42やエアシリンダ45などが共通であるため、部品点数を少なくして構成が簡素化されている。
【0026】
本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態の検測装置5では、位置換え機構のアクチュエータとしてエアシリンダ45を使用したが、電動シリンダなどであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…正面2軸旋盤 3…ワークストッカ 5…検測装置 11…オートローダ 21…チャック 22…検測機 23…マスタ置台 38…接触子 41…スライドテーブル 42…ガイドレール 45…エアシリンダ 46…スライドプレート M…マスタゲージ P…検測位置 W…ワーク