(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】管圧延機においてマンドレルロッドを扱う装置および方法
(51)【国際特許分類】
B21B 25/02 20060101AFI20241127BHJP
B21B 17/02 20060101ALI20241127BHJP
B21B 25/06 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B21B25/02
B21B17/02 B
B21B25/06 A
(21)【出願番号】P 2023509734
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021067964
(87)【国際公開番号】W WO2022033760
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】102020210233.3
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター キルヒナー
(72)【発明者】
【氏名】パオロ マリン
(72)【発明者】
【氏名】パトリツィオ リナルディ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-000307(JP,A)
【文献】特表2011-500335(JP,A)
【文献】特表2014-509950(JP,A)
【文献】特開平03-114605(JP,A)
【文献】特開昭61-140311(JP,A)
【文献】特表2014-510640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0009625(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107159713(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シームレス管(2’)を圧延するための圧延機(20)を備えた圧延設備(1)においてマンドレルロッド(3)を扱う装置
(10)であって、該装置(10)が、
圧延ライン(L)に配置されたマンドレルロッド(3)を圧延方向(R)に運動させるように構成されているプッシャー(11)であって、これにより前記マンドレルロッド(3)が、
前記マンドレルロッド(3)が完全にも部分的にも管ブランク(2)内に押し込まれていない状態である基本状態を起点として、圧延方向(R)で前記マンドレルロッド(3)の前に配置された
前記管ブランク(2)内に押込み可能である、プッシャー(11)と、
前記圧延ライン(L)に沿って走行可能な位置固定ユニット(12a)を備えた保持装置(12)であって、前記位置固定ユニット(12a)は、前記マンドレルロッド(3)を、該マンドレルロッド(3)の後端部(3b)の領域に設けられた作用点(3c)において一時的に固定し、出発位置(X
A)を起点として圧延方向(R)へ、かつ該圧延方向(R)とは反対方向への作業行程を実施するように構成されており、これにより、前記マンドレルロッド(3)が、圧延方向で前記圧延機(20)内に走入可能であり、かつ前記保持装置(12)によって前記圧延方向(R)とは反対方向で前記圧延機(20)から引出し可能である、保持装置(12)と
を有している、装置(10)において、
前記保持装置(12)は、前記位置固定ユニット(12a)の前記出発位置(X
A)が、前記基本状態において前記マンドレルロッド(3)の両端部(3a,3b)の間にあるように構成されていることを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
前記保持装置(12)は、前記位置固定ユニット(12a)の作業行程が、マンドレルロッド(3)と管ブランク(2)とから成る軸方向の全長よりも小さ
い、請求項1記載の装置(10)。
【請求項3】
前記マンドレルロッド(3)の前記作用点(3c)が、軸心部として構成されており、前記位置固定ユニット(12a)は、前記軸心部に係合し、かつ/または前記軸心部に当接するように構成され
ている、請求項1または2記載の装置(10)。
【請求項4】
前記保持装置(12)は、前記位置固定ユニット(12a)が、基本状態において前記マンドレルロッド(3)から取り外されているように構成されており、これにより前記基本状態を起点として前記プッシャー(11)により圧延方向(R)で送られるべきマンドレルロッド(3)が、前記位置固定ユニット(12a)に対して相対的に可動である、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項5】
前記保持装置(12)は、圧延方向(R)での前記プッシャー(11)の送り中に、前記位置固定ユニット(12a)が、圧延方向(R)での前記位置固定ユニット(12a)の速度と前記マンドレルロッド(3)の速度とを少なくとも部分的に補償するために、前記マンドレルロッド(3)に対して相対的に小さな速度で送られるか、または加速されるように、構成されている、請求項4記載の装置(10)。
【請求項6】
前記保持装置(12)は、前記マンドレルロッド(3)の前記作用点(3c)が前記プッシャー(11)による前記送りによって前記位置固定ユニット(12a)の位置に到達した場合に、前記位置固定ユニット(12a)が前記作用点(3c)に係合するように、構成されている、請求項
5記載の装置(10)。
【請求項7】
前記保持装置(12)が、前記圧延ライン(L)に対して平行に走行可能なキャリッジ(12b)を有しており、該キャリッジ(12b)に前記位置固定ユニット(12a)が配置されており、前記保持装置(12)が
、ピニオン/ラック機構(12c)を備えた電動モータを有しており、該電動モータを介して前記キャリッジ(12b)が駆動される、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項8】
前記マンドレルロッド(3)を前記保持装置(12)への引渡しに至るまでの前進走行中に前記プッシャー(11)に力結合式に位置固定するために構成されている結合装置(40)が設けられ
ている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置(10)。
【請求項9】
1つ以上の圧延スタンド(21)を含む、シームレス管(2’)を圧延するための圧延機(20)と、請求項1から
8までのいずれか1項記載のマンドレルロッド(3)を扱うための装置(10)とを備えた圧延設備(1)であって、前記圧延機(20)が、長手方向圧延機として構成されている、圧延設備(1)。
【請求項10】
前記圧延機(20)が、3~8
台の圧延スタンド(21)と、圧延スタンド(21)毎に2~4
本の作業ロールを備えた長手方向圧延機として構成されており、前記作業ロールのうち、少なくとも1本の作業ロー
ルが駆動されている、請求項
9記載の圧延設備(1)。
【請求項11】
請求項
9または
10記載の圧延設備(1)によりシームレス管(2’)を圧延する方法であって、該方法が、
-管ブランク(2)とマンドレルロッド(3)とを圧延ライン(L)に挿入するステップであって、これにより前記マンドレルロッド(3)が圧延方向(R)でプッシャー(11)の前に、かつ前記管ブランク(2)が前記マンドレルロッド(3)の前に、かつ前記圧延機(20)の第1の圧延スタンド(21)が前記管ブランク(2)の前に位置しており、これにより前記マンドレルロッド(3)が基本状態にあるステップと、
-保持装置(12)の位置固定ユニット(12a)を出発位置(X
A)に位置決めするステップであって、該出発位置(X
A)が前記マンドレルロッド(3)の両端部(3a,3b)の間にあり、前記位置固定ユニット(12a)は、前記マンドレルロッド(3)が前記圧延ライン(L)に沿って前記位置
固定ユニット(12a)に対して相対的に可動であるように、前記マンドレルロッド(3)から取り外されている、ステップと、
-プッシャー(11)を圧延方向(R)に運動させるステップであって、これにより前記プッシャー(11)が前記マンドレルロッド(3)を送り、かつ前記管ブランク(2)内に押し込み、前記位置固定ユニット(12a)と前記マンドレルロッド(3)との間の相対運動が行われる、ステップと、
-前記マンドレルロッド(3)の作用点(3c)が前記位置固定ユニット(12a)の位置に到達した場合に、前記マンドレルロッド(3)を前記位置固定ユニット(12a)により固定するステップであって、これにより次いで前記位置固定ユニット(12a)と前記マンドレルロッド(3)との間の相対運動が行われない、ステップと、
-前記管ブランク(2)を、押し込まれた前記マンドレルロッド(3)と一緒に前記圧延機(20)を通して搬送するステップであって、これにより前記管ブランク(2)を前記マンドレルロッド(3)上で圧延して管(2’)を形成する、ステップと、
-次いで前記保持装置(12)により前記圧延方向(R)とは反対方向に前記圧延機(20)から前記マンドレルロッド(3)を引き戻すステップと
を有している方法。
【請求項12】
前記プッシャー(11)から前記保持装置(12)への前記マンドレルロッド(3)の引渡しが、
前記マンドレルロッド(3)を送るための前記プッシャー(11)の運動である送り運動中に動的に生じ、前記引渡し時に前記マンドレルロッド(3)の速度と前記保持装置(12)の速度とが同期されている、請求項
11記載の方法。
【請求項13】
前記管ブランク(2)および/または前記マンドレルロッド(3)を前記圧延方向(R)に対して横方向で前記圧延ライン(L)に挿入する、請求項
11または
12記載の方法。
【請求項14】
前記プッシャー(11)による圧延方向(R)への前記マンドレルロッド(3)の送り中に、前記位置固定ユニット(12a)の速度と前記マンドレルロッド(3)の速度とを圧延方向(R)で部分的にまたは完全に補償するために、前記位置固定ユニット(12a)を前記マンドレルロッド(3)に対して相対的に小さな速度で送るか、または加速する、請求項
11から
13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記位置固定ユニット(12a)は、前記プッシャー(11)による前記圧延方向(R)への前記マンドレルロッド(3)の送り中に、まずは前記出発位置(X
A)に留まり、その後に圧延方向(R)に加速させられる、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
前記位置固定ユニット(12a)は、該位置固定ユニット(12a)が前記マンドレルロッド(3)の作用点(3c)に設けられた先細り部に係合または当接することにより、前記マンドレルロッド(3)を固定する、請求項
11から
15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記圧延機(20)から前記マンドレルロッド(3)を引き戻す前記ステップに続いて、前記位置固定ユニット(12a)と前記マンドレルロッド(3)との間の取付けを解除し、前記マンドレルロッド(3)を前記圧延ライン(L)に対して横方向に排出することによって、マンドレルロッドの引渡しを実施
する、請求項
11から
16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記管ブランク(2)を別個の駆動可能なロールにより前記圧延機(20)内に押し込む、請求項
11から
17までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シームレス管を圧延するための圧延機においてマンドレルロッドを扱う装置に関する。さらに本発明は、圧延設備ならびにシームレス管を圧延する方法に関する。
【0002】
発明の背景
シームレス管の製造時には、延伸圧延機が使用される。この延伸圧延機において、管ブランクが長いシリンダ形のマンドレルロッド上で圧延される。このためには、本来の圧延プロセスの前に、マンドレルロッドを管ブランクに挿通し、この管ブランクと一緒に、相前後して配置された複数の圧延スタンドを備えた圧延機を通って走行させられ、これにより、肉厚の減少、ひいてはマンドレルロッド上での管ブランクの伸長が行われる。管ブランクが圧延スタンドを通過し、管ブランクが圧延されて所望の管または半製品を形成した後に、マンドレルロッドは、マンドレルロッド保持装置により、圧延方向とは反対方向に、圧延スタンドの圧延機列から引き戻される。
【0003】
圧延すべき管ブランクを、この管ブランクが圧延軸線に対して同軸的に、圧延機の手前の整合ラインに位置するように、横方向の搬送によって圧延ライン内に挿入することが知られている。圧延製品の変形加工のために必要となるマンドレルロッドも、同様に横方向の搬送を介して圧延ラインに挿入される。プッシャーにより、かつ場合によってはマンドレルロッド保持装置を使用しながら、潤滑剤がコーティングされたマンドレルロッドが管ブランク内に押し込まれる。
【0004】
マンドレルロッド保持装置を備えたこのような機構は、例えば独国特許発明第2742288号明細書に記載されている。代替的には、既に予め挿通されたマンドレルロッドを、圧延製品と一緒に圧延ライン内に持ち上げる解決手段が知られている。
【0005】
マンドレルロッドが圧延ラインにおいて管ブランク内に挿通される場合、マンドレルロッド保持装置の必要となる軸方向の行程は、圧延製品長さとマンドレルロッド長さとから生じる。マンドレルロッド保持装置は、機械サイクルの加工時間(Hauptzeit)において圧延製品内に走入する必要があり、このことは、より高いサイクル数、ひいては設備の生産性の増大を妨げる。マンドレルロッドが圧延ラインの隣で予め挿通される解決手段は、技術的な欠点、例えばマンドレルロッドとの比較的長い接触時間に基づく圧延製品の温度損失を有している。
【0006】
発明の開示
本発明の課題は、シームレス管の圧延を改善し、特にシームレス管を圧延する圧延設備の生産性を高めることである。
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備えた装置と、請求項10に記載の特徴を備えた圧延設備と、請求項12に記載の特徴を備えた方法とによって解決される。有利な改良形は、従属請求項、以下の本発明の説明および好適な実施例の説明から判る。
【0008】
装置は、シームレス管を圧延するための圧延設備においてマンドレルロッドを扱うために働く。圧延設備は、典型的には圧延方向で相前後して配置された複数の圧延スタンドを備えた圧延機を含んでおり、圧延機は、本明細書では「圧延品」、「圧延製品」または「ワーク」とも呼ばれる管ブランクをこのようなマンドレルロッド上で圧延し、管を形成するために構成されている。この管は、例えば鋼または非鉄金属から製造され得る。
【0009】
装置は、圧延ラインに配置されたマンドレルロッドを圧延方向に運動させるか、もしくは送るために構成されているプッシャーを有しており、これによって、マンドレルロッドが、圧延方向でマンドレルロッドの前に配置された管ブランク内に押し込まれるか、または挿通される。マンドレルロッドと管ブランクとが圧延ラインにおいて相前後して配置されている状態、つまりマンドレルロッドが完全にも部分的にも管ブランク内に押し込まれていない状態が、本明細書では基本状態と呼ばれる。
【0010】
さらに装置は、圧延ラインに沿って走行可能な位置固定ユニットを備えた保持装置を有している。位置固定ユニットは、マンドレルロッドをマンドレルロッドの後端部の領域に設けられた作用点において一時的に固定し、出発位置を起点として圧延方向へ、かつ圧延方向とは反対方向への作業行程を実施するように構成されており、これにより、マンドレルロッドは、圧延方向で圧延機内に走入可能であり、かつ保持装置によって圧延方向とは反対方向で圧延機から引出し可能である。
【0011】
換言すると、保持装置の課題は、第1には、圧延機を通した管ブランクの搬送後にマンドレルロッドを保持し、かつ圧延方向とは反対方向で圧延機から引き出すことにある。保持装置は、少なくとも部分的に、圧延機内へのマンドレルロッドの送りを実施することができるか、または送りに関与していてよい。このためには、保持装置は、位置固定ユニットを有しており、位置固定ユニットは、マンドレルロッドを作用点において一時的に固定もしくは位置固定するために、例えばクランプするために構成されている。これに関連して、「固定」もしくは「位置固定する」という用語は、マンドレルロッドの搬送が圧延ラインに沿って停止されることではなく、マンドレルロッドと位置固定ユニットとの間で一時的に固定的な結合が生じることを意図しており、マンドレルロッドと位置固定ユニットとは、位置固定された状態では、圧延ラインに沿った相対運動を実施しない。マンドレルロッドを位置固定しかつ解除する機構は、最も簡単な場合、ストッパを含んでいてよく、代替的にはグリッパとして、クランプジョーにより、または別の適切な形式で実現されていてよい。
【0012】
なお、「後方」、「前方」、「後」、「前」等の空間的な用語は、圧延方向に関係しており、したがって一義的に規定されている。
【0013】
本発明によれば、保持装置は、位置固定ユニットの出発位置が、基本状態においてマンドレルロッドの両端部の間に位置するように構成されている。
【0014】
換言すると、1回の機械サイクル中の位置固定ユニットの作業行程は、もはや管ブランクの長さとマンドレルロッドの長さとから構成されているのではなく、これらに対して短縮されており、これにより機械サイクルの加工時間の短縮が可能である。出発位置が従来、マンドレルロッドの後端部の領域において基本位置にあるのに対して、本明細書に記載された改新によれば、出発位置は、圧延方向で前方へとずらされており、出発位置は、マンドレルロッドの前端部と後端部との間に位置している。好適には、位置固定ユニットは、通常の圧延サイクルのどの時間でも出発位置の後方には戻されない。保持装置もしくはその位置固定ユニットの作業行程の短縮は、例えば管ブランクの長さに実質的に一致する。
【0015】
作業行程のこのような短縮により、マンドレルロッドを、機械サイクルの加工準備時間(Nebenzeit)内に管ブランク内に予め挿通することができ、これにより、生産増大のために利用することができる、タクトタイムの短縮が達成可能である。
【0016】
さらに保持装置の作業行程の短縮は、可動の質量の最小化を可能にし、これにより、駆動出力および動的な負荷を減じることができる。
【0017】
管ブランクの寸法に応じて位置固定ユニットを位置決めし、調整することは、簡単かつフレキシブルに実施可能である。したがって、システムは、比較的短い管ブランクにおいて、サイクルタイムをさらに減じるために、問題なく予備位置決めすることができる。
【0018】
圧延ライン内へのマンドレルロッドの挿入および管ブランクの挿入のプロセスステップは、同時にまたは時間的にオーバラップして実施することができ、これにより機械サイクルのタクトタイムのさらなる短縮が達成可能である。引き戻されたマンドレルロッドの取出しおよび新しい管ブランクの挿入は、できるだけ短い経路に沿って、直接に相前後して行うことができる。これに関して構成された引渡し装置は、このために予め位置決めされて、できるだけ短い間隔で設置されていてよい。
【0019】
マンドレルロッドを圧延ラインにおいて管ブランク内に通すことにより、圧延品において場合によっては生じる温度損失を最小限にすることができる。同時に、マンドレルロッドのより少ない加熱が行われ、これにより、循環しているマンドレルロッドの数も最小限にされる。
【0020】
好適には、保持装置はさらに、位置固定ユニットの作業行程が、マンドレルロッドと管ブランクとから成る軸方向の全長よりも小さいように構成されている。作業行程を実質的に、管ブランクの長さにまで減じることができ、これにより機械サイクルのタクトタイムを最小限にすることができる。
【0021】
好適には、マンドレルロッドの作用点が、軸心部(Angel)として形成されている。この場合、この軸心部は、例えば局所的な軸心部、増厚部分、切欠きまたは旋削部分(以下では概して「軸心部」と呼ぶ)を有している。したがって、マンドレルロッドは、作用点において、実質的に減じられた直径を有する区分を有しており、位置固定ユニットは、軸心部に係合するように構成されている。これにより、マンドレルロッドと位置固定ユニットとの間の一時的な固定が、機械構造的に簡単かつ確実に実現される。位置固定ユニットは、例えばクランプによって能動的に軸心部内に係合することができるか、または軸心部内に受動的に入り込む、かつ/または当接することができる。
【0022】
好適には、保持装置は、位置固定ユニットが基本状態においてマンドレルロッドから取り外されているように構成されており、これにより基本状態を起点としてプッシャーにより圧延方向に送られるべきマンドレルロッドが、位置固定ユニットに対して相対的に可動であるか、または摺動可能である。したがって、この場合、マンドレルロッドは、基本状態を起点として、その作用点が位置固定ユニットに到達するまで、所定の区間だけ圧延方向で進む。位置固定ユニットは、互いに対する位置固定が生じるまで、マンドレルロッドをガイドすることができる。
【0023】
しかし、マンドレルロッドが位置固定ユニットに対して相対的に圧延方向に送られる間に、位置固定ユニットは静止してその場に留まる必要はない。むしろ保持装置は好適には、位置固定ユニットの速度とマンドレルロッドの速度とを少なくとも部分的に補償するために、圧延方向でのプッシャーの送り中に、位置固定ユニットが(マンドレルロッドに対して相対的に)小さな速度で運動させられるか、または(同様に圧延方向で)加速させられるように構成されている。運動のこのような速度同化または同期は、機械サイクルのタクトタイムのさらなる短縮に寄与することができ、関与する構成要素への機械的負荷を減じることができる。位置固定ユニットは、マンドレルロッドの送り中に、まず所定の時間だけ出発位置に留まり、その後に圧延方向に加速される。
【0024】
好適には、保持装置は、マンドレルロッドの作用点がプッシャーによる送りによって位置固定ユニットの位置に到達した場合に、位置固定ユニットが自動的に作用点または先細り部に係合するように、構成されている。このような係合位置は、位置固定ユニットの出発位置であってよく、または速度同化が行われる場合には、圧延方向でこの開始位置の後方に位置していてよい。
【0025】
好適には、保持装置が、圧延ラインに対して平行に走行可能なキャリッジを有しており、このキャリッジに位置固定ユニットが配置されている。さらに保持装置は、ピニオン/ラック機構を備えた電動モータを有していてよく、この電動モータを介してキャリッジが駆動される。キャリッジならびにラックは、好適には圧延ラインの隣に位置している。保持装置は、この場合、圧延ライン上の設置スペースがアクセス可能なままであるように構成されており、これにより、マンドレルロッドを圧延ライン内に挿入し、かつ取り出すことができ、この場合に、位置固定ユニットは、マンドレルロッドを位置固定するためにマンドレルロッドの後端部から走入させられる必要はない。
【0026】
好適には、マンドレルロッドを保持装置への引渡しに至るまでの前進走行中にプッシャーに力結合式に位置固定するために構成されている結合装置が設けられており、結合装置が、好適にはプッシャーに組み付けられている。これによって、マンドレルロッドの確実かつ信頼性の高い引渡しを、高い機械速度でも実現することができる。
【0027】
好適には、保持装置とマンドレルロッドとは、引渡しが行われた後に互いに形状結合式に連結され、かつ保持装置の、不連続または無段階に調節可能な終端位置において機械的に分離されるように、構成されている。
【0028】
さらに上述の課題は、圧延設備であって、この圧延設備は、1つ以上の圧延スタンドを含む、シームレス管を圧延するための圧延機と、上述した実施バリエーションのうちの1つによる、マンドレルロッドを扱う装置とを備えた圧延設備によって解決される。
【0029】
圧延機は、長手方向圧延機、例えば、3~8台、好適には5~6台の圧延スタンドと、スタンド毎に2~4本、好適には3本の作業ロールとを備え、これらの作業ロールのうち少なくとも1本の作業ロールが駆動され、好適には全ての作業ロールが駆動されている長手方向圧延機として構想されている。「長手方向圧延機」という用語には、例えば連続圧延機、マンドレルミル・マルチスタンドプラグミル(MPM)およびプッシュベンチミルのようなあらゆる種類の延伸圧延機が含まれる。
【0030】
マンドレルロッドを扱う装置に関して説明された特徴、技術的な効果、利点ならびに実施例は、圧延設備にも同様に当てはまる。
【0031】
さらに上述の課題は、圧延設備によりシームレス管を圧延する方法であって、この方法が、管ブランクとマンドレルロッドと圧延ラインに挿入するステップであって、これにより圧延方向で見て、マンドレルロッドがプッシャーの前に、管ブランクがマンドレルロッドの前に、かつ圧延機の第1の圧延スタンドが管ブランクの前に位置しており、これによりマンドレルロッドが基本状態にある、ステップと、保持装置の位置固定ユニットを出発位置に位置決めするステップであって、出発位置が、マンドレルロッドの両端部の間にあり、位置固定ユニットは、マンドレルロッドが圧延ラインに沿って位置固定ユニットに対して相対的に可動であるように、マンドレルロッドから取り外されている、ステップと、プッシャーを圧延方向で運動させるステップであって、これによりプッシャーがマンドレルロッドを送り、かつ管ブランク内に押し込み、この場合に位置固定ユニットとマンドレルロッドとの間の相対運動が行われる、ステップと、マンドレルロッドの作用点が位置固定ユニットの位置に到達した場合に、マンドレルロッドを位置固定ユニットにより固定するステップであって、これにより次いで位置固定ユニットとマンドレルロッドとの間の相対運動が行われない、ステップと、管ブランクを押し込まれたマンドレルロッドと一緒に圧延機を通して搬送するステップであって、これにより管ブランクをマンドレルロッド上で圧延して管を形成する、ステップと、次いで保持装置により圧延方向とは反対方向に圧延機からマンドレルロッドを引き戻すステップとを有している方法により解決される。
【0032】
方法ステップの列挙は、必ずしも順序または時間的な順番を規定するものではない。したがって、例えば圧延ライン内への管ブランクおよびマンドレルロッドの挿入ならびに位置固定ユニットの位置決めは相前後して、同時にまたは時間的にオーバラップして行うことができる。
【0033】
マンドレルロッドを扱う装置および圧延設備に関して説明された特徴、技術的な効果、利点ならびに実施例は、この方法にも同様に当てはまる。
【0034】
好適には、プッシャーから保持装置へのマンドレルロッドの引渡しが、前進運動中に動的に生じ、両装置の速度は、引渡し中に互いに同期されている。
【0035】
好適には、管ブランクおよび/またはマンドレルロッドを、圧延方向に対して横方向に、つまり管ブランク/マンドレルロッドの軸方向に対して横方向に、圧延ラインに挿入し、これにより圧延ラインへの装入をできるだけ迅速に行うことができる。このことは、圧延サイクルにおいて使用されるマンドレルロッドを圧延ラインから取り出すためにも同様に当てはまる。
【0036】
好適には、上述した理由から、プッシャーによる圧延方向へのマンドレルロッドの送り中に、位置固定ユニットの速度とマンドレルロッドの速度とを圧延方向で少なくとも部分的に補償するために、位置固定ユニットを、(マンドレルロッドに対して相対的に)小さな速度で運動させるか、または加速する。位置固定ユニットは、プッシャーによるマンドレルロッドの送り中に、まずはある程度の時間出発位置に留まることができ、その後に、圧延方向に加速させられる。
【0037】
好適には、位置固定ユニットは、位置固定ユニットがマンドレルロッドの作用点に設けられた先細り部に係合または当接することにより、マンドレルロッドを上述した理由に基づき固定する。
【0038】
好適には、圧延機からマンドレルロッドを引き戻すステップに続いて、位置固定ユニットとマンドレルロッドとの間の取付けを解除し、マンドレルロッドを圧延ラインに対して横方向に排出することによって、マンドレルロッドの引渡しを実施し、この場合に排出を、好適には基本状態とは異なる位置で行う。マンドレルロッドは、通常、基本状態におけるその位置よりも圧延機の近傍にある位置で排出される。
【0039】
好適には、管ブランクは、「ピンチロール(Pinch Roll)」とも呼ばれる別個の駆動されたロールによって、圧延機内に押し込まれる。
【0040】
本発明の別の利点および特徴は、好適な実施例の以下の説明から明らかになる。以下に記載された特徴は、単独でも、または特徴同士が矛盾しない限りは、上述した複数の特徴のうちの1つ以上の特徴との組み合わせにおいても、実施することができる。好適な実施例の以下の説明は、添付の図面に関連して行われる。
【0041】
本発明の好適な別の実施形態を図面の以下の説明により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】マンドレルロッド扱う装置および圧延機を備えた、シームレス管を圧延する圧延設備の概略的な平面図である。
【
図2】
図1に示した圧延設備が1回の機械サイクル中にとる一連の状態を示す図である。
【
図3】プッシャーに組み付けられた結合装置を示す図であり、結合装置は、マンドレルロッドを保持装置への引渡しに至るまでの前進走行中にプッシャーに位置固定している。
【0043】
好適な実施例の詳細な説明
以下に好適な実施例を図面につき説明する。同一、類似、または同様に作用する部材には、図中で同一の符号が付与され、これらの部材の繰り返しの説明は、重複を避けるため、部分的に省略される。
【0044】
図1は、本明細書では「圧延品」、「圧延製品」または「ワーク」とも呼ばれる管ブランク2を圧延して管2(
図2hを参照)を形成するための圧延設備1を概略に示す平面図であり、圧延設備1は、マンドレルロッド3を扱う装置10と、圧延機20とを含んでいる。
【0045】
圧延機20は、圧延方向Rに沿って相前後して配置された複数の圧延スタンド21を有しており、これらの圧延スタンド21を通って、管ブランク2は挿通されたマンドレルロッド3と一緒に圧延ラインLに沿って貫通して搬送され、管ブランク2がマンドレルロッド3上で管2’へと圧延されることによって、塑性変形される。
【0046】
圧延機20は、好適には長手方向圧延機として構想されており、例えば、3~8台、好適には5~6台の圧延スタンド21と、圧延スタンド毎に2~4本、好適には3つの作業ロールとを備えている。これらの作業ロールのうちの少なくとも1本のロールが駆動されており、好適には全てのロールが駆動されている。「長手方向圧延機」という用語には、例えば連続圧延機、マンドレルミル・マルチスタンドプラグミル(MPM)およびプッシュベンチミルのようなあらゆる種類の延伸圧延機が含まれる。圧延スタンド21は、上述した作業ロールを含み、ワークの所望の変形加工を実施するこれらの作業ロールの構成は、詳細に図示されていない。圧延品もしくはロール中心の周囲に均一に配置された2~4本、好ましくは3本の作業ロールにより、ワーク2の長手方向送りが生じる。
【0047】
図1のプロセス段階では、管ブランク2もマンドレルロッド3も、既に圧延ラインL内で圧延機20の手前に位置している。管ブランク2とマンドレルロッド3とは、予め横方向搬送により対応して位置決めされている。管ブランク2は、第1の圧延スタンド21の直前に位置しており、好適には整合ラインにおいて、圧延機20の手前に位置している。管ブランク2の後方には、マンドレルロッド3が同軸的に位置決めされている。マンドレルロッド3は、前端部3aにおいて丸み付けされるか、または僅かに円錐状に延びる工具ヘッドを含んでおり、これによって、管ブランク2内へマンドレルロッド3を挿通することを容易にすることができる。後端部3bの領域では、マンドレルロッド3は、後述する保持装置12により位置固定するための作用点3cを有している。本実施例によれば、作用点3cは先細り部として形成されているが、作用点3cは先細り部に限定されるものではない。
【0048】
マンドレルロッド3を扱う装置10は、同様に圧延ラインLにおいてマンドレルロッド3の後側に配置されたプッシャー11と、このプッシャー11を圧延方向Rで能動的に送るための装置(図示せず)とを含んでいる。マンドレルロッド3とプッシャーとの間には、
図1に示した基本状態において、場合によっては小さな安全間隔があり、これにより、圧延ラインLへのマンドレルロッド3の横方向搬送は妨げられない。
【0049】
さらに装置10は、保持装置12を有しており、保持装置12の第1のタスクは、第1には、圧延機20を通した管ブランク2の搬送後にマンドレルロッド3を保持し、圧延方向Rとは反対方向に圧延機20から引き出すことにある。保持装置12は、少なくとも部分的に、圧延機20内へのマンドレルロッド3の送りも実施することができるか、またはこの送りに関与することができる。
【0050】
このためには、保持装置12が位置固定ユニット12aを有しており、この位置固定ユニット12aは、マンドレルロッド3を作用点3cにおいて一時的に位置固定する、例えばクランプするために構成されている。マンドレルロッド3を位置固定し、解除するための機構は、最も簡単な場合には、ストッパを含んでいてよく、代替的にグリッパとして、クランプジョーにより、または別の適切な形式で実現されていてよい。位置固定ユニット12aは、圧延ラインLに沿ってキャリッジ12bを介して走行可能に構成されている。キャリッジ12bは、好適には、ピニオン/ラック機構を備えた電動モータを介して駆動される。このピニオン/ラック機構のうち、ラック12cが図面に概略的に示されている。しかし、キャリッジ12bを走行させるためのアクチュエータは、電動モータ式のピニオン/ラック機構に限定されるものではない。保持装置12は、代替的に例えばハイドロリック式にまたはリニアモータを用いて操作することができる。
【0051】
図3には、プッシャー11上に組み付けられた結合装置40を備えた保持装置12の別の実施例が示されている。結合装置40を用いて、マンドレルロッド3は、保持装置12への引渡しに至るまでの前進走行中に、プッシャー11に力結合式に位置固定される。
【0052】
以下では、
図2に関連して1回の機械サイクルのための圧延設備1のプロセス経過を説明する。
図2は、機械サイクル中の時間的な経過における圧延設備1のそれぞれ1つの状態を示す区分a)~n)に分割されている。参照符号は、
図2において見やすくするために部分的に省略されている。
【0053】
出発点は、
図2a)に図示された基本状態(
図1に一致する)であり、この基本状態では、管ブランク2とマンドレルロッド3とが、本明細書ではマンドレルロッド引渡し行程とも呼ばれる横方向の搬送(図示せず)により、圧延機20の手前で圧延ラインL内に挿入されている。位置固定ユニット12aは、出発位置X
Aにおいて、マンドレルロッド3に対して解除された状態で位置しており、これによりマンドレルロッド3は、圧延方向Rで位置固定ユニット12aに対して相対的に自由に可動である。出発位置X
Aは、
図2a)に示した基本状態では、マンドレルロッド3の両端部の間、好適にはマンドレルロッド3の前半部に位置している。
【0054】
図2a)に示した基本状態を起点として、プッシャー11が圧延方向Rに運動させられ、これによってプッシャー11がマンドレルロッド3を送り、管ブランク2内に挿通する。
図2b)を参照。位置固定ユニット12aは、プッシャー11およびマンドレルロッド3の送りを可能にするために開放されている。
【0055】
マンドレルロッド3の送りの間、位置固定ユニット12aは、まず出発位置X
Aに留まり、次いで圧延方向Rに加速され、これによって、
図2c)に示されているように、マンドレルロッド3と位置固定ユニット12aとの間の速度補償が達成される。この行程は、本明細書ではマンドレルロッド同期行程とも呼ばれる。したがって、マンドレルロッド同期行程中に、マンドレルロッド3と位置固定ユニット12aとの間の相対運動が行われ、作用点3cは、まだ位置固定ユニット12aの位置に直接に位置していない。ここでは、完全な速度補償または部分的な速度補償が目指され得る。
【0056】
マンドレルロッド3の作用点3cが位置固定ユニット12aの位置に達すると、位置固定ユニット12aは、
図2d)に示されているように、マンドレルロッドクランプ行程に沿って作用点3cに係合するか、もしくは接続する。同時に、マンドレルロッド3は、管ブランク2を完全に貫通し、先頭側の端部3aで圧延機20内に到達する。
【0057】
マンドレルロッドクランプ行程の終了後に、プッシャー11とマンドレルロッド3との間の同期的な運動が解消され、本明細書ではマンドレルロッド供給行程とも呼ばれる、圧延方向Rでのマンドレルロッド3のさらなる送りが、保持装置12により、かつ/または圧延機20により引き受けられ、プッシャー11は停止する。これによりマンドレルロッド3とプッシャー11とは互いに分離される。
図2e)を参照。同時に、管ブランク2は、管ブランク加速行程において第1の圧延スタンド21の方向に加速し、マンドレルロッド3は、管ブランク2を完全に貫通しており、前端部3aで圧延機20内に到達する。
【0058】
図2f)は、圧延開始行程を示している。管ブランク2は、圧延機20の第1の圧延スタンド21内に進入する。同時に、プッシャー11はその出発位置に戻され、これによってプッシャー11は、次の機械サイクルのために準備される。
【0059】
図2g)は、管ブランク2が圧延機の最後の圧延スタンド21まで送られている管ブランク2の圧延中の状態を示しており、
図2h)は、管ブランク2が圧延機20の最後の圧延スタンド21を出て、マンドレルロッド3上で完全に管2’へと圧延されている状態を示している。マンドレルロッド3は、本明細書ではマンドレルロッド行程/圧延終了とも呼ばれる完全な行程を実施した。
【0060】
次いでマンドレルロッド3は、保持装置12により、圧延方向Rとは反対方向で圧延機20から引き出され、排出位置へと戻される。
図2i)を参照。
【0061】
次いで、位置固定ユニット12aによるマンドレルロッド3の位置固定を解除するか、もしくはクランプ解除し(
図2k)を参照)、次いで
図2l)に示されているように、圧延ラインLに対して横方向に排出することにより、マンドレルロッド引渡し行程を行う。その後、新しい管ブランク2と新しいマンドレルロッド3とが圧延ラインL内に挿入される。
図2m)および
図2n)を参照。マンドレルロッド引渡し行程の枠内での管ブランク2およびマンドレルロッド3の挿入は、相前後して、同時に、または時間的にオーバラップして行うことができる。
【0062】
上述のプロセス経過は、
図1に概略的に図示されている制御装置30によって実施することができる。対応するアクチュエータ、センサ等を備えた通信経路は、見易くするために図示されていない。
【0063】
制御装置30は、別個の電子構成ユニットを形成していてよく、機械制御装置、設備制御装置等と通信することができるか、または機械制御装置、設備制御装置の構成部分であってよい。電子的な構成要素間の通信は、アナログまたはデジタルに、有線または無線で行うことができる。制御装置30は、インターネットベースおよび/またはクラウドベースのアプリケーションの構成要素であるか、または別の様式で実装されていてよく、場合によってはデータバンクにアクセスすることができる。
【0064】
保持装置12は、設置空間が圧延ラインLの領域においてアクセス可能なままであるように構成されており、これによりマンドレルロッド3を圧延ラインL内に挿入しかつ取り出すことができ、この場合に、マンドレルロッド3を位置固定するための位置固定ユニット12aを、マンドレルロッド3の後端部から走入させる必要はない。換言すると、1回の機械サイクル中の位置固定ユニット12aの作業行程は、もはや管ブランク2の長さとマンドレルロッド3の長さとから構成されているのではなく、これに対して短縮されており、これにより機械サイクルの加工時間(主時間)の短縮が可能である。出発位置XAが従来、マンドレルロッド3の後端部3bの領域において基本位置にあるのに対して、出発位置XAは、本明細書に記載された改新によれば圧延方向Rで前方へとずらされており、出発位置XAは、マンドレルロッド3の前端部3aと後端部3bとの間に位置している。保持装置12もしくはその位置固定ユニット12aの作業行程の短縮は、例えば管ブランク2の長さに実質的に一致する。
【0065】
作業行程のこのような短縮により、マンドレルロッド3を、機械サイクルの加工準備時間(副時間)内に管ブランク2内へ予め挿通することができ、これにより、生産増大に利用することができる、タクトタイムの短縮が達成可能である。
【0066】
さらに、保持装置12の作業行程の短縮は、可動の質量の最小化を可能にし、これにより、駆動出力および動的な負荷を減じることができる。マンドレルロッド同期化行程におけるマンドレルロッド3と保持装置12との連結は、機械サイクルのタクトタイムのさらなる短縮に寄与する。管ブランク2の寸法に応じて位置固定ユニット12aを位置決めし、調整することは、簡単かつフレキシブルに実施可能である。したがって、システムは、管ブランク2が比較的短い場合に、サイクルタイムをさらに減じるために問題なく予め位置決めすることができる。圧延ラインL内にマンドレルロッド3を挿入するプロセスステップと、管ブランク2を挿入するプロセスステップとは、同時に実施することができ、これにより、機械サイクルのタクトタイムのさらなる短縮が達成可能である。引き戻されたマンドレルロッド3の取出しおよび新しい管ブランク2の挿入は、できるだけ短い経路に沿って、直接に相前後して行うことができる。これに関して調整された引渡し装置は、このために予め位置決めされて、できるだけ短い間隔で設置されていてよい。
【0067】
マンドレルロッド3が圧延ラインLにおいて管ブランク2内に挿通されることにより、圧延品において場合によっては生じる温度損失を最小限にすることができる。同時に、マンドレルロッド3の比較的小さな加熱が行われ、これにより、循環しているマンドレルロッド3の本数も最小限にされる。
【0068】
有用である限り、実施例において示された全ての個別の特徴は、本発明の範囲を逸脱することなしに、互いに組み合わせ、かつ/または交換することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 圧延設備
2 管ブランク
2’ 圧延加工された管
3 マンドレルロッド
3a マンドレルロッドの前端部
3b マンドレルロッドの後端部
3c 作用点
10 マンドレルロッドを扱う装置
11 プッシャー
12 保持装置
12a 位置固定ユニット
12b キャリッジ
12c ラック
20 圧延機
21 圧延スタンド
30 制御装置
40 結合装置
L 圧延ライン
R 搬送方向/圧延方向
XA 出発位置