(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ディスクブレーキの加圧装置
(51)【国際特許分類】
F16D 55/226 20060101AFI20241127BHJP
F16D 55/2255 20060101ALI20241127BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20241127BHJP
F16D 125/28 20120101ALN20241127BHJP
F16D 125/68 20120101ALN20241127BHJP
F16D 121/08 20120101ALN20241127BHJP
【FI】
F16D55/226 104A
F16D55/2255 103C
F16D65/18
F16D125:28
F16D125:68
F16D121:08
(21)【出願番号】P 2023518216
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2021073618
(87)【国際公開番号】W WO2022063516
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】102020124690.0
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ダーレンブアク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュテーガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ペチュケ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー ロート
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ハウザー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヒドリンガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベック
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハインドル
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ ハーバーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ターラー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック シュレプフ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アイヒラー
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0232527(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004042576(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0363715(US,A1)
【文献】特開2019-015337(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040652(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/193157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
F16D 125/28
F16D 125/68
F16D 121/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車用のディスクブレーキの加圧装置であって、旋回可能なブレーキレバー(5)を備え、該ブレーキレバー(5)は、一方では、ブレーキキャリパ(1)の内壁に支持されていて、他方では、前記ブレーキキャリパ(1)内で移動可能に配置された、少なくとも1つのブレーキプランジャを支持するブリッジ(8)に間接的に支持されており、このために、前記ブレーキレバー(5)と前記ブリッジ(8)との間に、該ブリッジ(8)に相対回動不能にかつ相対移動不能に接触している摺動ロールアセンブリが設けられている、ディスクブレーキの加圧装置において、
前記ブリッジ(8)と前記摺動ロール支持機構の少なくとも1つの摺動ロール(9)とが、少なくとも1つの位置固定要素によって結合されていることを特徴とする、ディスクブレーキの加圧装置。
【請求項2】
前記位置固定要素は、前記ブリッジ(8)と前記摺動ロール(9)とに形状接続的かつ/または摩擦接続的に保持されていることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキの加圧装置。
【請求項3】
前記位置固定要素は、前記ブリッジ(8)および前記摺動ロール(9)の孔(14)内に圧入された緊締スリーブ(13)または嵌合ピンから成っていることを特徴とする、請求項1または2記載のディスクブレーキの加圧装置。
【請求項4】
前記位置固定要素は、前記ブリッジ(8)および前記摺動ロール(9)のそれぞれ1つの溝(17)内に圧入された金属薄板部材(16)から成っていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のディスクブレーキの加圧装置。
【請求項5】
互いに間隔を置いて配置されて同軸に整列させられた2つの摺動ロール(9)が設けられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のディスクブレーキの加圧装置。
【請求項6】
両方の前記摺動ロール(9)の各々は、前記ブリッジ(8)のアイ(15)内に圧入されていることを特徴とする、請求項
5記載のディスクブレーキの加圧装置。
【請求項7】
前記アイ(15)は、前記ブリッジ(8)に一体成形されていることを特徴とする、請求項
6記載のディスクブレーキの加圧装置。
【請求項8】
前記アイ(15)は、両方の前記摺動ロール(9)の、互いに反対側の端部に位置決めされていることを特徴とする、請求項
7記載のディスクブレーキの加圧装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの摺動ロール(9)と前記ブリッジ(8)とは、構成ユニットとして予め組み立てられていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のディスクブレーキの加圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、商用車用のディスクブレーキの加圧装置に関する。
【0002】
ディスクブレーキの構成要素であるこのような加圧装置によって、制動の際にブレーキパッドを車両側のブレーキディスクに向かって押圧することができる。
【0003】
この場合、加圧装置の操作は、旋回可能なブレーキレバーと協働して空気圧式または電気機械式に行われる。このブレーキレバーは、一方では、ブレーキキャリパの内壁に支持されていて、他方では、移動可能なブリッジに支持されている。このために、ブレーキレバーとブリッジとの間で軸線方向にかつ半径方向に位置固定された摺動ロール(Waelzrolle)の形態の摺動ロール支持機構が配置されている。
【0004】
摺動ロールを支持するために、ブレーキレバーに支持シェルが形成されている。この支持シェルは適切なプラスチックで被覆されており、これによって、いわゆるDU(登録商標)支持が得られる。
【0005】
また、ブリッジには、摺動ロールを支持するために、相応に変更された成形部材が取り付けられている。この成形部材は、さらに、摺動ロールを半径方向でかつ軸線方向で位置固定するために働き、一体成形された付設部、例えば舌片またはこれに類するものによって転がり支持体の保持器用の保持器戻しガイドとして働く。転がり支持体によって、ブレーキレバーはブレーキキャリパの内壁に易動性に支持されている。このような加圧装置は、独国特許発明第10307734号明細書に基づき公知である。
【0006】
しかしながら、従来では、走行運転中、軸線方向の移動に対する摺動ロールの位置固定が十分でなく、これによって、舌片が破損してしまうことがあることが判っている。外部から認識することができないブレーキの故障の万が一の結果に伴い、このことは、当然ながら、許容することができない安全上のリスクをはらんでいる。
【0007】
その上、摺動ロールの自由に回転可能な支持によって、ブレーキレバーのDU(登録商標)支持体内に侵入したパーティクルがたびたび搬出される。このことは、特にDU(登録商標)支持の耐用年数に不都合な影響を与える。
【0008】
ここで、解決手段を提供するために、独国特許出願公開第102014108500号明細書には、摺動ロールを相対回動不能にかつ相対移動不能にブリッジに保持することが提案されている。このために、ブリッジと摺動ロールとに、互いに対応する成形領域が設けられている。この成形領域は、例えば、摺動ロールに扁平加工部として設けられており、この扁平加工部がブリッジの支持面に接触するようになっている。
【0009】
機能的には、この構造は有利であると判っている。しかしながら、ディスクブレーキ、特に加圧装置の組立て時に問題が生じてしまう。なぜならば、個別部材としての摺動ロールが、組立て前には未固定の部材として存在しており、これによって、最終位置以前の固定が、相応の製作手間、つまり、組付け補助を伴ってしか可能とならない点において、組立てが困難になってしまうからである。
【0010】
さらに、摺動ロールの構成にも、ブリッジの構成にも、比較的手間がかかってしまう。なぜならば、摺動ロールの扁平加工部とブリッジの支持面とが平坦に形成されているからである。このことは、比較的手間のかかる切削加工によってしか可能とならない。
【0011】
本発明の根底にある課題は、冒頭に記載した形態の加圧装置を改良して、加圧装置の耐用年数が構造的に簡単な手段によって改善され、組立てがより簡単になるようにすることである。
【0012】
この課題は、請求項1の特徴を有する加圧装置によって解決される。
【0013】
少なくとも1つの摺動ロールが、いわば、ブリッジに位置固定要素により結合されている形態の加圧装置の本発明による構成によって、加圧装置の組込み位置だけでなく、ブレーキキャリパ内への組込み前にも、軸線方向、半径方向および回動方向でのブリッジに対する摺動ロールの固定が保証されている。つまり、先行技術に基づき公知である、ブリッジに対して未固定の摺動ロールの配置を行うための特別な組立て処置が必要となることなしに、ブリッジと摺動ロールとを構成ユニットとして予め組み立てて使用することができる。
【0014】
それぞれ1つの加圧装置が主要な機能構成要素を成しているディスクブレーキは、大量生産品として大量に製造されるので、本発明による構成により可能となる大幅な組立て簡略化が、特にコストを最小限に抑えることに関して特に重要となる。
【0015】
さらに、本発明によって、ブリッジに取り付けられる従来公知の成形部材の使用を省くことができるという利点が得られる。このことも同じくコストの最適化に貢献している。
【0016】
この意味では、支持シェルとして形成された成形部材と、摺動ロールとの間の鋼/鋼の摩擦対からこれまで生じていた、摺動ロールを製造するための焼入れ鋼の使用のいまや可能な省略も付言しておかなければならない。
【0017】
少なくとも1つの位置固定要素は、ブリッジと摺動ロールとに形状接続的または摩擦接続的に保持されている。この場合、本発明の更なる思想によれば、緊締スリーブの使用が特に有利であると判っている。この緊締スリーブは、ブリッジの孔内にも、摺動ロールの孔内にも差し込まれていて、両方の孔内に摩擦接続的に保持されている。
【0018】
このような緊締スリーブは規格部材として市販されており、したがって、特に廉価である。誤差補償のために、一方の孔、つまり、ブリッジの孔または摺動ロールの孔が、小さな寸法で長孔として形成されていてもよい。
【0019】
ただし、原理的には、孔の加工も極めて簡単であり、先行技術に記載された一方の摺動ロールの扁平加工部および他方のブリッジの扁平加工部に比べて著しく廉価に行うことができる。
【0020】
緊締スリーブの代わりに、相応に準備された孔内に嵌合ピンが挿入されてもよい。この嵌合ピンも同じくブリッジもしくは摺動ロールに摩擦接続的に保持されている。
【0021】
位置固定要素の別の変化実施形態として、ブリッジに複数のアイが設けられていてもよい。これらのアイには、摺動ロール支持機構として、互いに間隔を置いて配置されて同軸に整列させられた2つの摺動ロールが、その互いに反対側の端部で圧入されている。摺動ロール相互の間隔、つまり、形成される中間スペースは、摺動ロールを問題なく差し込むことができるように寸法設定されている。
【0022】
アイは、有利には、鋳鉄から成るブリッジに一体成形されている。本変化実施形態によっても、摺動ロールの確実な保持、つまり、相対回動防止および相対移動防止が保証されている。
【0023】
さらに、位置固定要素は、ブリッジの支持箇所の溝内にも、摺動ロールの溝内にも圧入された金属薄板片から成っていてもよい。この金属薄板片は、ブレーキレバーの旋回方向に延在している。
【0024】
本発明の別の有利な構成は、従属請求項に記載してある。
【0025】
以下に、本発明の実施例を添付の図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】先行技術による加圧装置を備えたディスクブレーキの概略的な構造の横断面図である。
【
図2】本発明によるディスクブレーキの個別部材の斜視図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線による個別部材の断面図である。
【
図5】本発明に係る加圧装置の別の実施例の概略図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI線による
図5に示した加圧装置の断面図である。
【
図7】本発明に係る加圧装置の別の変化形態の同様の斜視図である。
【0027】
図1には、先行技術による商用車用のディスクブレーキが断面図で示してある。このディスクブレーキはブレーキディスク3を有している。このブレーキディスク3は、商用車のアクスル(図示せず)に取り付けられていて、ブレーキディスク3の方向に移動可能であるブレーキキャリパ1によって包囲されている。
【0028】
ブレーキキャリパ1内には、好ましくは空気圧式に操作されるブレーキシリンダを介して制動が行われた際にブレーキディスク3にブレーキパッド4を押し付けることができる加圧装置2が配置されている。
【0029】
加圧装置2は、ブリッジ8内に互いに平行にかつ間隔を置いて配置された作動スピンドルとして形成されたブレーキプランジャ(図示せず)に作用する。
【0030】
ブレーキシリンダ6には、加圧装置2のブレーキレバー5が作用結合されている。このブレーキレバー5は、操作の際、ブレーキディスク3の平面に対して平行に延在している摺動ロール9を中心としてブレーキディスク3の方向に旋回可能である。
【0031】
摺動ロール9と反対の側では、ブレーキレバー5は、それぞれ保持器内に保持された転動体11に接触している。この転動体11は、一方では、この領域で偏心体7として形成されたブレーキレバー5に支持されていて、他方では、ブレーキキャリパ1の内壁に支持されている。
【0032】
摺動ロール支持機構の構成部材としての摺動ロール9は、ブレーキレバー5用の回動支持体として働き、偏心体7に設けられた支持シェル10内に位置している。この支持シェル10は、横断面で見て、摺動ロール9が他方で内在する凹状の窪み12と同様に摺動ロール9の横断面輪郭に適合させられている。
【0033】
図2~
図8には、加圧装置2の変化実施形態が示してある。この変化実施形態は、本発明によれば、ブリッジ8と摺動ロール9とに結合された少なくとも1つの位置固定要素を有している。
【0034】
図2~
図4には、加圧装置2の個別部材としてのブリッジ8が示してある。本例では、位置固定要素は緊締スリーブ13から成っている。この緊締スリーブ13は、窪み12の領域に設けられたブリッジ8の孔14内にも、摺動ロール9の孔14内にも差し込まれていて、両方の孔14内に摩擦接続的に保持されている。
【0035】
図5および
図6に示した変化態様では、同軸に整列させられた2つの摺動ロール9が、位置固定要素によってブリッジ8に結合されている。両方の摺動ロール9は、中間スペースを形成するように互いに離間させられて配置されている。本例では、位置固定要素が同じく緊締スリーブ13として形成されている。
【0036】
加圧装置2の本発明による別の構成が
図7に示してある。同図には、2つの摺動ロール9を備えたブリッジ8を認めることができる。2つの摺動ロール9の、それぞれ互いに反対側の端領域は、ブリッジ8のアイ15内に圧入されていて、このアイ15内に摩擦接続的に保持されている。このアイ15はブリッジ8の構成部分である。つまり、アイ15は、ブリッジ8の製造時に一緒に一体成形されている。
【0037】
最後に、
図8に示した本発明の構成では、位置固定要素として金属薄板部材16が設けられている。この金属薄板部材16は、一方では、ブリッジ8の溝17内に圧入されていて、摺動ロール9の溝17内に圧入されており、こうして、摩擦接続的な結合が行われている。
【符号の説明】
【0038】
1 ブレーキキャリパ
2 加圧装置
3 ブレーキディスク
4 ブレーキパッド
5 ブレーキレバー
6 ブレーキシリンダ
7 偏心体
8 ブリッジ
9 摺動ロール
10 支持シェル
11 転動体
12 窪み
13 緊締スリーブ
14 孔
15 アイ
16 金属薄板部材
17 溝