(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】多様な物性のシリコンゲルを含む乳房インプラント
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20241127BHJP
A61L 27/48 20060101ALI20241127BHJP
A61F 2/12 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/48
A61F2/12
(21)【出願番号】P 2023550022
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(86)【国際出願番号】 KR2022002065
(87)【国際公開番号】W WO2022177233
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0022731
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517128064
【氏名又は名称】オステムインプラント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OSSTEMIMPLANT CO., LTD
【住所又は居所原語表記】(Magok-dong) 3, Magokjungang 12-ro Gangseo-gu Seoul 07789 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シム,ユン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ビョン フィ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン キョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジュ ドン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,イル ソク
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-513261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0175332(US,A1)
【文献】米国特許第3681787(US,A)
【文献】特表2011-502719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0282926(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61F 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集力が異なる2種以上のシリコンゲルを含む充填物;及び
前記充填物を取り囲むシリコンシェル;を含
み、
前記シリコンシェルの内部領域は、側面部と中央部に分けられ、
凝集力が異なる2種のシリコンゲルが前記側面部と前記中央部にそれぞれ配置され、
前記側面部に配置されたシリコンゲルは、前記中央部に配置されたシリコンゲルに比べて凝集力が高く、
前記側面部に配置されたシリコンゲルの凝集力は、23~40Nであり、
前記側面部は、前記シリコンシェルの内部領域の全体体積に対して20~50体積%を占めることを特徴とする、乳房インプラント。
【請求項2】
凝集力が異なる2種以上のシリコンゲルを含む充填物;及び
前記充填物を取り囲むシリコンシェル;を含み、
前記シリコンシェルの内部領域は、上端部と下端部に分けられ、
凝集力が異なる2種のシリコンゲルが前記上端部と前記下端部にそれぞれ配置され、
前記下端部に配置されたシリコンゲルは、前記上端部に配置されたシリコンゲルよりも凝集力が高く、
前記下端部に配置されたシリコンゲルは、凝集力が23~40Nであり、
前記下端部は、前記シリコンシェルの内部領域の全体体積に対して20~50体積%を占めることを特徴とする、乳房インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルを含む乳房インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンゲル乳房インプラントは、インプラントの外被を形成するシリコンシェルの内部に適切な粘度のシリコンゲルを充填して製造されるものであって、食塩水乳房インプラントに比べて耐久性及び感触に優れた特徴を有する。このようなシリコンゲル乳房インプラントは、4等級の医療機器であって、生体内に移植されて長期間存在することが一般的であるので、格別な生体適合性及び安全性と共にインプラントの安定性が必須的に要求される。また、乳房インプラントの場合、自然な形態及び皮膚組織と類似した質感を具現しなければならない。したがって、シリコンシェルの厚さを調節するか充填物の成分を変更するなど医療機器として要求される物性を確保すると同時に自然な形態を有するように開発されて来たが、それによって発生するまた他の形態上の副作用が発生している。
【0003】
リップリング現象(rippling deformity)は、インプラントシェルの折畳み現象を言い、インプラントに波模様のシワが形成されて当該インプラントのシワが皮膚の外まで透けて見える現象を意味する。これは、シリコンゲル乳房インプラントの使用時に頻繁に発生する副作用のうち一つであって、再手術の原因となったりする。リップリングの主要原因は、ゲルの下偏向現象であって、インプラントが生体内に移植されて長期間立てられた形態で存在することになると、インプラントの内部に充填されたシリコンゲルが重力によって下に偏りながら相対的にシリコンゲルが不十分に満たされた区域にシワが発生することなる。したがって、リップリング現象は、インプラントの一定部位にのみ持続的に発生し、当該折畳み位置のシェル物性を弱化させ、その後、衝撃による生体内インプラント破裂を誘発し得る。
【0004】
シリコンゲル乳房インプラントが破裂されると、インプラントの内部に充填されたシリコンゲルが外部に漏出し得る。長期間にわたるシリコンゲルの漏出は、インプラントの体積及び形態を変形させ得、漏出したシリコンゲルは、体内組織又は臓器に悪影響を及ぼして合併症や組織の壊死など深刻な副作用を誘発し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書の記載事項は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本明細書の一目的は、凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルを含むことによって安定性に優れたシリコンゲル乳房インプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によると、凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルを含む充填物;及び前記充填物を取り囲むシリコンシェル;を含む、乳房インプラントを提供する。
【0007】
一実施例において、前記シリコンシェルの内部領域は、2以上の区域に分けられ、前記凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルが前記2以上の区域にそれぞれ配置され得る。
【0008】
一実施例において、前記シリコンシェルの内部領域は、側面部と中央部に分けられ、凝集力が相異なる2種のシリコンゲルが前記側面部と前記中央部にそれぞれ配置され得る。
【0009】
一実施例において、前記側面部に配置されたシリコンゲルが前記中央部に配置されたシリコンゲルに比べて高い凝集力を有することができる。
【0010】
一実施例において、前記側面部に配置されたシリコンゲルの凝集力が10~40Nであってもよい。
【0011】
一実施例において、前記側面部は、前記シリコンシェルの内部領域の全体体積を基準として10~50体積%を占めることができる。
【0012】
一実施例において、前記シリコンシェルの内部領域は、上端部と下端部に分けられ、凝集力が相異なる2種のシリコンゲルが前記上端部と前記下端部にそれぞれ配置され得る。
【0013】
一実施例において、前記下端部に配置されたシリコンゲルが前記上端部に配置されたシリコンゲルに比べて高い凝集力を有することができる。
【0014】
一実施例において、前記下端部に配置されたシリコンゲルの凝集力が10~40Nであってもよい。
【0015】
一実施例において、前記下端部は、前記シリコンシェルの内部領域の全体体積を基準として10~50体積%であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本明細書の一側面による乳房インプラントは、凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルを含むことによってシリコンゲル乳房インプラントから発生する副作用であるリップリング現象を防止して生体内破裂危険を減少させ得る。
【0017】
本明細書の一側面の効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明又は請求の範囲に記載された構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本明細書の一実施例による側面部のゲル凝集力強化乳房インプラントの縦断面図である。
【
図2】
図2は、本明細書の一実施例による側面部のゲル凝集力強化乳房インプラントの横断面図である。
【
図3】
図3は、本明細書の一実施例による下端部のゲル凝集力強化乳房インプラントの縦断面図である。
【
図4】
図4は、本明細書の一実施例による下端部のゲル凝集力強化乳房インプラントの下端部横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、添付した図面を参照して本明細書の一側面を説明する。しかしながら、本明細書の記載事項は種々の異なる形態で具現することができる。したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において明細書の一側面を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似する部分に対しては類似する図面符号を付与した。
【0020】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとの用語は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0021】
本明細書で数値的値の範囲が記載されたとき、これの具体的な範囲が異に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学での標準規則によって提供された有効数字の精密度を有する。例えば、10は、5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0022】
以下、添付した図面を参考して本明細書の一実施例を詳しく説明する。
【0023】
多様な凝集力のシリコンゲルを含む乳房インプラント
本明細書の一側面による乳房インプラントは、凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲル(silicone gel)を含む充填物;及び前記充填物を取り囲むシリコンシェル;を含む。
【0024】
前記乳房インプラントの断面形状は、円形、楕円形(oval)、涙の滴形(teardrop)のうち選択された一つであってもよいが、これに限定されるものではない。一般的に、乳房の形、形態などは、使用者ごとに相異に形成されているので、元の形態及び使用者が所望する形状、形、サイズなどの嗜好度を考慮して前記乳房インプラントの種類を選択することが好ましい。
【0025】
前記シリコンゲルは、有機シロキサン高分子(polyorganosiloxane)であってもよい。前記有機シロキサン高分子は、ジメチルシロキサン(dimethylsiloxane)、メチルハイドロジェンシロキサン(methyl hydrogen siloxane)、メチルフェニルシロキサン(methyl phenyl siloxane)、ジフェニルシロキサン(diphenyl siloxane)、ジメチルビニルシロキサン(dimethyl vinyl siloxane)及びトリフルオロプロピルシロキサン(tri-fluoropropyl siloxane)からなる群より一つ以上選択され得るが、乳房インプラントの機能的特性が具現できるものであれば、その種類が特に制限されるものではない。
【0026】
前記2種以上のシリコンゲルは、粘性、弾性、流れ性などの物性が相異なっていてもよい。
【0027】
本明細書の一側面による乳房インプラントは、凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルを含むことによって、ゲルの下偏向現象の程度を調節し、インプラント内の折畳み発生部位の抵抗性を増加させてリップリング現象を防止し、インプラントの安定性を向上させ得る。単一物性のシリコンゲルを含む従来の乳房インプラントは、ゲルの下偏向現象によりリップリング現象が頻繁に発生し、これはインプラントの破裂を誘発する主な原因となった。
【0028】
前記シリコンシェルは、シリコン高分子分散液を目的とする形態のマンドレル(mandrel)に塗布して硬化させて製造することができる。前記シリコン高分子分散液は、前記マンドレルでエラストマ被膜を形成することができ、前記被膜は硬化され、溶媒は蒸発され得る。
【0029】
前記シリコンシェルの内部領域は、2以上の区域に分けられ、前記凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルが前記2以上の区域にそれぞれ配置され得る。例えば、前記2以上の区域は、前記凝集力が相異なる2種以上のシリコンゲルの間に形成される境界面によって分けられ得る。
【0030】
前記シリコンシェルの内部領域は、リップリング現象が発生する区域とリップリング現象が発生しない区域に分けられ得、前記リップリング現象が発生する区域に配置されたシリコンゲルが、前記リップリング現象が発生しない区域に配置されたシリコンゲルに比べて高い凝集力、高い粘性又は低い流れ性を有することができる。
【0031】
本明細書の一側面による乳房インプラントは、シリコンシェルの内部領域のうちリップリング現象が発生する区域に高い凝集力、高い粘性又は低い流れ性を有するシリコンゲルを配置することによって、リップリング現象を防止し、破裂抵抗性を増加させてインプラントの安定性を向上させ得る。
【0032】
側面部のゲル凝集力強化乳房インプラント
本明細書の一側面による乳房インプラントの前記シリコンシェルの内部領域は、側面部12と中央部13に分けられ、凝集力が相異なる2種のシリコンゲルが前記側面部12と前記中央部13にそれぞれ配置され得る。
【0033】
前記側面部12は、前記乳房インプラントの側面の周りに沿って形成され得、前記中央部13は、前記シリコンシェルの内部領域のうち側面部12を除いた全ての区域を意味し得る。
【0034】
前記側面部12に配置されたシリコンゲルが前記中央部13に配置されたシリコンゲルに比べて高い凝集力を有することができる。
【0035】
前記側面部12に配置されたシリコンゲルが前記中央部13に配置されたシリコンゲルに比べて高い粘性及び低い流れ性を有することができる。
【0036】
図1及び2は、本明細書の一実施例による側面部のゲル凝集力強化乳房インプラントの縦断面図及び横断面図である。
【0037】
図1及び2を参照すると、本明細書の一実施例による側面部のゲル凝集力強化乳房インプラント10は、シリコンシェル11;凝集力強化シリコンゲルが充填された側面部12;及び一般的なシリコンゲルが充填された中央部13を含むことができる。
【0038】
前記側面部12には、前記中央部13に比べて高い凝集力を有する凝集力強化シリコンゲルが充填されてゲルの下偏向現象の程度を調節し、インプラント内の折畳み発生部位の抵抗性を増加させてリップリング現象を防止し、インプラントの安定性を向上させ得る。
【0039】
前記中央部13には、前記側面部12に充填された凝集力強化シリコンゲルに比べて凝集力が低い一般的なシリコンゲルが充填されて乳房インプラントの自然な形態及び皮膚組織と類似した質感を具現することができる。
【0040】
前記側面部12に配置されたシリコンゲルの凝集力が10~40Nであってもよい。例えば、前記側面部12に配置されたシリコンゲルの凝集力は、10N、11N、12N、13N、14N、15N、16N、17N、18N、19N、20N、21N、22N、23N、24N、25N、26N、27N、28N、29N、30N、31N、32N、33N、34N、35N、36N、37N、38N、39N、40N又はこれらのうち二つの値の間の値であってもよい。前記側面部12に配置されたシリコンゲルの凝集力が10N未満であると、リップリング現象が発生してインプラントの破裂可能性を増加させ得、40Nを超過すると、自然な形態又は皮膚組織と類似した質感が具現されないこともある。
【0041】
前記側面部12は、前記シリコンシェル11の内部領域の全体体積を基準として10~50体積%を占めることができる。例えば、前記側面部12の体積は、前記シリコンシェル11の内部領域の全体体積基準として10体積%、15体積%、20体積%、25体積%、30体積%、35体積%、40体積%、45体積%、50体積%又はこれらのうち二つの値の間の値であってもよい。前記側面部12の体積が前記シリコンシェル11の内部領域の全体体積を基準として10体積%未満であると、リップリング現象が発生してインプラントの破裂可能性を増加させ得、50体積%を超過すると、自然な形態又は皮膚組織と類似した質感が具現されないこともある。
【0042】
下端部のゲル凝集力強化乳房インプラント
本明細書の一側面による乳房インプラントの前記シリコンシェルの内部領域は、上端部23と下端部22に分けられ、凝集力が相異なる2種のシリコンゲルが前記上端部23と前記下端部22にそれぞれ配置され得る。
【0043】
前記上端部23は、前記乳房インプラントが生体内に移植されるとき前方に位置する区域を意味し得、前記下端部22は、前記乳房インプラントが生体内に移植されるとき後方に位置する区域を意味し得る。
【0044】
前記下端部22に配置されたシリコンゲルが前記上端部23に配置されたシリコンゲルに比べて高い凝集力を有することができる。
【0045】
前記下端部22に配置されたシリコンゲルが前記上端部23に配置されたシリコンゲルに比べて高い粘性及び低い流れ性を有することができる。
【0046】
図3及び4は、本明細書の一実施例による下端部のゲル凝集力強化乳房インプラントの縦断面図及び下端部横断面図である。
【0047】
図3及び4を参照すると、本明細書の一実施例による下端部のゲル凝集力強化乳房インプラント20は、シリコンシェル21;凝集力強化シリコンゲルが充填された下端部22;及び一般的なシリコンゲルが充填された上端部23を含むことができる。
【0048】
前記下端部22には、前記上端部23に比べて高い凝集力を有する凝集力強化シリコンゲルが充填されたゲルの下偏向現象の程度を調節し、インプラント内の折畳み発生部位の抵抗性を増加させてリップリング現象を防止し、インプラントの安定性を向上させ得る。
【0049】
前記上端部23には、前記下端部22に充填された凝集力強化シリコンゲルに比べて凝集力が低い一般的なシリコンゲルが充填された乳房インプラントの自然な形態及び皮膚組織と類似した質感を具現することができる。
【0050】
前記下端部22に配置されたシリコンゲルの凝集力が10~40Nであってもよい。例えば、前記下端部22に配置されたシリコンゲルの凝集力は、10N、11N、12N、13N、14N、15N、16N、17N、18N、19N、20N、21N、22N、23N、24N、25N、26N、27N、28N、29N、30N、31N、32N、33N、34N、35N、36N、37N、38N、39N、40N又はこれらのうち二つの値の間の値であってもよい。前記下端部22に配置されたシリコンゲルの凝集力が10N未満であると、リップリング現象が発生してインプラントの破裂可能性を増加させ得、40Nを超過すると、自然な形態又は皮膚組織と類似した質感が具現されないこともある。
【0051】
前記下端部22は、前記シリコンシェル21の内部領域の全体体積を基準として10~50体積%を占めることができる。例えば、前記下端部22の体積は、前記シリコンシェル21の内部領域の全体体積を基準として10体積%、15体積%、20体積%、25体積%、30体積%、35体積%、40体積%、45体積%、50体積%又はこれらのうち二つの値の間の値であってもよい。前記下端部22の体積が前記シリコーンシェル(21)の内部領域の全体体積を基準として10体積%未満であると、リップリング現象が発生してインプラントの破裂可能性を増加させ得、50体積%を超過すると、自然な形態又は皮膚組織と類似した質感が具現されないこともある。
【0052】
以下、本明細書の実施例に関してより詳しく説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容を縮小又は制限して解釈してはならない。下で明示的に提示しない本明細書の多くの具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載する。
【0053】
実施例1:側面部のゲル凝集力強化乳房インプラント
シリコンシェル11の内部領域の全体体積を基準として20体積%を占める側面部12に凝集力が23Nである凝集力強化シリコンゲルを充填し、中央部13に凝集力が13Nである一般的なシリコンゲルを充填して、側面部のゲル凝集力強化乳房インプラント10を製造した。
【0054】
実施例2:下端部のゲル凝集力強化乳房インプラント
上端部23に凝集力が13Nである一般的なシリコンゲルを充填し、シリコンシェル21の内部領域の全体体積を基準として30体積%を占める下端部22に凝集力が26Nである凝集力強化シリコンゲルを充填して、下端部のゲル凝集力強化乳房インプラント20を製造した。
【0055】
比較例1
側面部12に充填された凝集力強化シリコンゲルの凝集力が15Nであること以外は、実施例1と同一の方法で側面部のゲル凝集力強化乳房インプラント10を製造した。
【0056】
比較例2
側面部12の体積がシリコンシェル11の内部領域の全体体積を基準として5体積%を占めること以外は、実施例1と同一の方法で側面部のゲル凝集力強化乳房インプラント10を製造した。
【0057】
比較例3
下端部22に充填された凝集力強化シリコンゲルの凝集力が15Nであること以外は、実施例2と同一の方法で下端部のゲル凝集力強化乳房インプラント20を製造した。
【0058】
比較例4
下端部22の体積がシリコンシェル21の内部領域の全体体積を基準として10体積%を占めること以外は、実施例2と同一の方法で下端部のゲル凝集力強化乳房インプラント20を製造した。
【0059】
比較例5:単一物性のシリコンゲルを含む乳房インプラント
シリコンシェルの内部領域の全体に凝集力が13Nである一般的なシリコンゲルを充填して、単一物性のシリコンゲルを含む乳房インプラントを製造した。
【0060】
前記実施例及び比較例においてゲルの凝集力は、インプラントの外部に1mmの円形穴をくぐった後に陰圧を加えて穴から出るシリコンゲルが分離される時点の圧力を測定してシリコンゲルの凝集力に換算した値である。
【0061】
実験例1:形状変化観察
本明細書の一側面による多様な物性のシリコンゲルを含む乳房インプラントのリップリング現象防止効果を確認するために、実施例1、2及び比較例1~5のインプラントの一側面をつかんで持ち上げたとき、インプラントそれぞれの形状変化を観察した。
【0062】
その結果、凝集力強化シリコンゲルが充填された体積がシリコンシェル21の内部領域の全体体積を基準として10体積%未満を占める比較例2のインプラント及び内部に充填されたシリコンゲルの物性が一定な比較例5のインプラントは、重力によるゲルの下偏向及びリップリング現象が観察された。一方、実施例1及び実施例2のインプラントは、比較例1~5のインプラントに比べて重力によるゲルの下偏向現象が顕著に減少し、リップリングが発生しないことを確認した。
【0063】
実験例2:破裂安全性及び安定性評価
本明細書の一側面による多様な物性のシリコンゲルを含む乳房インプラントの破裂危険性減少効果を確認するために、実施例1、2及び比較例1~5のインプラントにそれぞれ600万回の疲労度を印加して破裂安全性及び安定性を評価した。
【0064】
下記表1を参照すると、凝集力強化シリコンゲルが充填された体積がシリコンシェル21の内部領域の全体体積を基準として10体積%未満を占める比較例2のインプラント及び内部に充填されたシリコンゲルの物性が一定な比較例5のインプラントは、400万回以上疲労度を印加する場合、側面部が破裂して内部の充填物が漏出した一方、実施例1及び実施例2のインプラントは、600万回以上の疲労度を印加した場合にも破裂せず、破裂安全性及び安定性に優れていることを確認した。
【0065】
凝集力が15Nである凝集力強化シリコンゲルを用いた比較例1、3のインプラント及び凝集力強化シリコンゲルが充填された体積がシリコンシェルの内部領域の全体体積を基準として10体積%を占める比較例4のインプラントは、600万回以上の疲労度を印加した場合に破裂し、比較例2及び5のインプラントに比べて破裂安全性及び安定性が向上したことを確認した。
【0066】
【0067】
前述した本明細書の説明は例示のためのものに過ぎず、本明細書の一側面が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能なことが理解できるであろう。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に、分散されたものとして説明されている構成要素を結合された形態で実施することもできる。
【0068】
本明細書の範囲は、後述する特許請求の範囲により示されるが、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【符号の説明】
【0069】
10:側面部のゲル凝集力強化乳房インプラント
11:シリコンシェル
12:側面部
13:中央部
20:下端部のゲル凝集力強化乳房インプラント
21:シリコンシェル
22:下端部
23:上端部