(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電子回路、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/44 20060101AFI20241127BHJP
G01J 3/44 20060101ALI20241127BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G01J1/44 M
G01J3/44
G01J1/42 Q
(21)【出願番号】P 2023565150
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2022025503
(87)【国際公開番号】W WO2022226039
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-11-02
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523397735
【氏名又は名称】モンスター センス テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】マーチン、 エリック、 ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】プルズ、 トーベン、 エル.
(72)【発明者】
【氏名】カンディフ、 スティーブン、 ティー.
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084621(WO,A1)
【文献】特開2004-348052(JP,A)
【文献】特開2004-294938(JP,A)
【文献】特開2009-039548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00- 4/04
G01J 7/00-11/00
G01N 21/62-21/74
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路であって、
信号処理エレクトロニクスを含み、
前記信号処理エレクトロニクスは、
フィルタと、
出力エレクトロニクスと
を含み、
前記信号処理エレクトロニクスは、
前記信号処理エレクトロニクスに含まれる受信回路が電気信号を光検出器から受信することであって、前記電気信号は、材料上の一箇所からの光ビームに基づいて前記光検出器によって生成され、関心信号及び一以上の変調周波数を含むことと、
前記フィルタが、前記関心信号の少なくとも一つの特性に比例する前記電気信号の一部分を、前記一以上の変調周波数のうちの一つ
の変調周波数に対応するノッチ周波数にノッチを含むフィルタ伝達関数を有するフィルタを使用して前記電気信号の他の成分から弁別することと、
前記フィルタが、前記関心信号の前記少なくとも一つの特性に対する値を、前記電気信号の前記弁別された一部分から決定することと、
前記出力エレクトロニクスが、前記関心信号の前記少なくとも一つの特性の前記値を出力することと
を行うように構成され
、
前記フィルタは、サンプルレート周期を有する前記電気信号のサンプルに対して動作し、
前記一以上の変調周波数は第1変調周波数を含み、
前記第1変調周波数は、前記第1変調周波数の一周期が前記サンプルレート周期の整数倍となるように選択される、電子回路。
【請求項2】
前記フィルタ伝達関数は、前記
一以上の変調周波数のそれぞれに対応する周波数にノッチ周波数を含む、請求項1の電子回路。
【請求項3】
前記材料上の前記一箇所からの前記光ビームは、前記材料からの非線形光学応答を含む、請求項1の電子回路。
【請求項4】
前記関心信号の前記少なくとも一つの特性は、前記材料上の前記一箇所からの前記光ビームに含まれる非線形光学応答の振幅及び/又は位相である、請求項1の電子回路。
【請求項5】
前記フィルタ伝達関数が前記
一つの変調周波数に対応する前記ノッチ周波数を含む前記フィルタは、低域通過有限インパルス応答フィルタである、請求項1から4のいずれか一項の電子回路。
【請求項6】
前記フィルタの待ち時間は、前記
一以上の変調周波数のそれぞれに対応する前記ノッチ周波数のそれぞれの対応周期の整数倍である、請求項1から4のいずれか一項の電子回路。
【請求項7】
前記待ち時間は、前記材料における前記一箇所を励起するべく使用される光ビームにあるパルスの周期の整数
倍である、請求項6の電子回路。
【請求項8】
前記一以上の変調周波数は
前記第1変調周波数及び第2変調周波数を含み、
前記関心信号を、前記光検出器から受信した前記電気信号から弁別することは、前記光検出器から受信した前記電気信号を、前記第1変調周波数と前記第2変調周波数との差分である復調信号によって復調することを含み、
前記電子回路はさらに、
前記第1変調周波数を含む第2信号を第2光検出器から受信することと、
前記第2変調周波数を含む第3信号を前記第2光検出器又は第3光検出器のいずれかから受信することと、
前記第2信号と前記第3信号との差分を形成することによって前記復調信号を生成することと
を行うように構成される、請求項1から4のいずれか一項の電子回路。
【請求項9】
システムであって、
材料上の一箇所を励起させるべく構成される光学サブシステムと、
光検出器と、
電子回路と
を含み、
前記電子回路は、
前記光検出器から電気信号を受信することであって、前記電気信号は、前記材料上の前記一箇所からの光ビームに基づいて前記光検出器によって生成され、非線形関心信号及び一以上の変調周波数を含むことと、
前記非線形関心信号の少なくとも一つの特性に比例する前記電気信号の一部分を、前記一以上の変調周波数のうちの一つに対応するノッチ周波数にノッチを含むフィルタ伝達関数を含むフィルタを使用して、前記電気信号の他の成分から弁別することと、
前記非線形関心信号の前記少なくとも一つの特性に対する値を、前記電気信号の前記弁別された一部分から決定することと、
前記非線形関心信号の前記少なくとも一つの特性の前記値を出力することと
を行うように構成され
、
前記フィルタは、サンプルレート周期を有する前記電気信号のサンプルに対して動作し、
前記一以上の変調周波数は第1変調周波数を含み、
前記第1変調周波数は、前記第1変調周波数の一周期が前記サンプルレート周期の整数倍となるように選択される、システム。
【請求項10】
前記フィルタ伝達関数は、前記
一以上の変調周波数のそれぞれに対応する周波数にノッチ周波数を含む、請求項9のシステム。
【請求項11】
前記非線形関心信号の前記少なくとも一つの特性は、前記材料上の前記一箇所からの前記光ビームに含まれる非線形光学応答の振幅及び/又は位相である、請求項9のシステム。
【請求項12】
前記フィルタ伝達関数が前記
一つの変調周波数に対応する前記ノッチ周波数を含む前記フィルタは低域通過有限インパルス応答フィルタである、請求項9から11のいずれか一項のシステム。
【請求項13】
前記フィルタの待ち時間は、前記
一以上の変調周波数のそれぞれに対応する前記ノッチ周波数のそれぞれの対応周期の整数倍である、請求項9から11のいずれか一項のシステム。
【請求項14】
前記フィルタの待ち時間は、前記材料における前記一箇所を励起するべく使用される光ビームにあるパルスの周期の整数
倍である、請求項9から11のいずれか一項のシステム。
【請求項15】
方法であって、
変調光源を介して、一以上の変調周波数を含む光ビームによって材料上の一箇所を照らすことと、
光検出器を介して、関心信号を検出することであって、前記関心信号は、前記光ビームと前記材料との相互作用から得られる非線形光学プロセスによって生成される光であり、前記関心信号は、前記光ビームのスペクトル成分の1THzのうちに周波数を有するスペクトル成分を含むことと、
電子回路によって、前記光検出器が前記関心信号の検出に応答して生成する電気信号を受信することと、
前記関心信号の少なくとも一つの特性を含む前記電気信号の一部分を、伝達関数がノッチを前記一以上の変調周波数のうちの一つ
の変調周波数に対応するノッチ周波数に含む低域通過フィルタを使用して前記電気信号の他の成分から弁別することと、
前記電気信号の前記弁別された一部分に基づいて、前記関心信号の前記少なくとも一つの特性を特定することと
を含み、
前記関心信号の前記少なくとも一つの特性は、前記関心信号の振幅及び/又は位相であり、
前記低域通過フィルタの待ち時間は、前記材料における前記一箇所を励起するべく使用される光ビームにあるパルスの周期の整数
倍であ
り、
前記低域通過フィルタは、サンプルレート周期を有する前記電気信号のサンプルに対して動作し、
前記一以上の変調周波数は第1変調周波数を含み、
前記第1変調周波数は、前記第1変調周波数の一周期が前記サンプルレート周期の整数倍となるように選択される、方法。
【請求項16】
前記伝達関数が前記
一つの変調周波数に対応する前記ノッチ周波数を含む前記低域通過フィルタは、低域通過有限インパルス応答フィルタである、請求項15の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年4月20日に出願された「材料パラメータの非破壊測定のための4波混合イメージング」との名称の米国仮特許出願第63/176,928号の優先権を主張し、その全体が参照によりここに組み入れられる。
【0002】
政府の許諾権
本発明は、全米科学財団により授与された付与番号第2015068号に基づく政府の支援によりなされた。政府は本発明に所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
シリコン及び化合物半導体材料におけるランダムな欠陥は、これらの欠陥のサイトにおいて製造された回路素子、光学素子又は他の機能的素子を劣化させ又は非機能にし得る。光及び機械学習アルゴリズムを使用する標準的な技法により、欠陥の箇所を特定することはできるが、これらの欠陥の性質については情報がほとんど得られない。レーザを使用する超高速分光法によれば、欠陥の性質に関する不可的な情報を得ることができる。しかしながら現行システムは遅く、それゆえ典型的には実稼働環境において実用的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】材料の特性を検出する例示的システムの図である。
【
図2】
図1のシステムにおいて応答信号を処理する例示的信号処理サブ回路の模式的な図である。
【
図3A-3C】
図1の例示的システムにおける信号の例示的時間領域表現である。
【
図3D-3E】
図1の例示的システムにおける信号の例示的時間領域表現である。
【
図4A-4D】
図1の例示的システムにおける信号の例示的周波数領域表現である。
【
図5A】
図1の例示的システムにおける光検出器から受信した信号の、復調前の周波数領域表現である。
【
図5B】
図1の例示的システムにおける光検出器から受信した信号の、復調後の周波数領域表現である。
【
図5C】例示的指数低域通過フィルタ及び例示的移動平均フィルタの伝達関数を示す。
【
図5D】
図5Cの移動平均フィルタを含む例示的ボックスロックイン検出器によるフィルタリング後の例示的フィルタ出力信号の周波数領域におけるグラフである。
【
図5E】
図5Cの例示的指数ロックインフィルタによるフィルタリング後の例示的フィルタ出力信号の周波数領域におけるグラフである。
【
図6A】例示的移動平均フィルタ応答及び例示的指数低域通過フィルタ応答の時間領域におけるグラフである。
【
図6B】例示的移動平均フィルタ伝達関数及び例示的指数低域通過フィルタ伝達関数の周波数領域におけるグラフである。
【
図7A】例示的試験シミュレーション信号の時間領域におけるグラフである。
【
図7B】シミュレーション指数ロックイン検出器によるフィルタリング後の
図7Aの例示的試験シミュレーション信号の時間領域におけるグラフである。
【
図7C】シミュレーションボックスロックイン検出器によるフィルタリング後の
図7Aの例示的試験シミュレーション信号の時間領域におけるグラフである。
【
図7D】異なるフィルタタイプに対する変調周波数の抑制のグラフである。
【
図8】材料に対するポンプ・プローブ測定を行う例示的プロセスのフロー図である。
【
図9】材料の特性を検出する例示的システムの図である。
【
図10】
図9のシステムによる材料から受信した信号を処理する例示的信号処理サブ回路の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
4波混合(FWM)分光法及び顕微鏡法が、3次非線形光学応答により材料を測定するべく、超高速レーザ及び光学コンポーネントを使用する一連のパルスを利用する。一例において、材料を励起させるべく第1周波数において変調されたポンプ光ビーム振幅と第2周波数において変調されたプローブ光ビーム振幅が使用されるポンプ・プローブ測定を行うことができる。材料は、励起に基づいて、第1周波数と第2周波数との差において変調された非線形応答ビームを生成する。光検出器が、その非線形応答ビームを電気信号に変換する。その電気信号を復調した後、第1変調周波数及び第2変調周波数に対応する周波数において、ノッチとしても知られる最小値を備えた伝達関数を有する低域通過フィルタによりフィルタリングすることによって、関心信号の特性の値を、実稼働環境において実用的な持続時間で弁別することができる。さらなる例において、異なる変調周波数による付加的な光ビームを使用して同様の態様でフィルタリングする4波混合(FWM)分光法が、材料に関する付加的な情報を与え得る。
【0006】
開示されるのは、信号処理エレクトロニクスを含む電子回路である。この電子回路は、光検出器から電気信号を受信することであって、当該電気信号は当該光検出器によって材料上の一箇所からの光信号に基づいて生成され、関心信号及び一以上の変調周波数を含むことと、当該関心信号の少なくとも一つの特性に比例する当該電気信号の一部分を、フィルタを使用して当該電気信号の他の成分から弁別することであって、当該フィルタの伝達関数は、当該変調周波数のうちの一つの変調周波数に比例するノッチ周波数にあるノッチを含むことと、当該関心信号の当該少なくとも一つの特性に対する一の値を、当該電気信号の当該弁別された一部分から決定することと、当該関心信号の当該少なくとも一つの特性の当該一の値を出力することとを行うように構成される。
【0007】
電子回路において、変調周波数に対応するノッチ周波数は変調周波数としてよい。
【0008】
電子回路において、変調周波数に対応する周波数は、変調周波数の復調の周波数としてよい。
【0009】
電子回路において、材料上の一箇所からの光ビームは、当該材料からの非線形光学応答を含んでよい。
【0010】
電子回路において、材料からの非線形光学応答は、励起ビームに対する応答であってよく、当該非線形光学応答はさらに、当該励起ビームの一成分の帯域幅内の波長を有してよい。
【0011】
電子回路において、関心信号の当該少なくとも一つの特性は、材料上の一箇所からの光ビームに含まれる非線形光学応答の振幅であってよい。
【0012】
電子回路において、関心信号の当該少なくとも一つの特性はさらに、非線形光学応答の位相を含んでよい。
【0013】
電子回路において、変調周波数に対応するノッチ周波数を含む伝達関数を備えるフィルタは、低域通過有限インパルス応答フィルタであってよい。
【0014】
電子回路において、フィルタ伝達関数は、一以上の変調周波数のそれぞれに対応する周波数にあるノッチ周波数を含み、当該一以上の変調周波数のそれぞれに対応する周波数は、(1)変調周波数又は(2)当該変調周波数の復調の周波数のそれぞれ一方である。
【0015】
電子回路において、フィルタの待ち時間は、それぞれの変調周波数に対応するノッチ周波数の対応周期の整数倍としてよい。
【0016】
電子回路において、フィルタの待ち時間は1ミリ秒以下としてよい。
【0017】
電子回路はさらに、関心信号の当該少なくとも一つの特性を含む電気信号の一部分を、フィルタの待ち時間内に弁別するように構成され得る。
【0018】
電子回路において、待ち時間は、フィルタが受信済み材料測定値の移動平均を行う時間とすることができる。
【0019】
電子回路において、待ち時間は、材料の当該箇所を励起するべく使用される光ビームにおけるパルスの周期の整数としてよい。
【0020】
電子回路はさらに、一以上の変調周波数において光源を変調する無線周波数信号を生成するように構成され得る。
【0021】
電子回路において、変調周波数は第1変調周波数及び第2変調周波数を含んでよく、光検出器から受信した信号から関心信号を弁別することは、光検出器から受信した信号を、第1変調周波数及び第2変調周波数の差分である復調信号によって復調することを含んでよい。
【0022】
電子回路、電子回路はさらに、第2光検出器から第1変調周波数を含む第2信号を受信することと、第2光検出器又は第3光検出器のいずれかから第2変調周波数を含む第3信号を受信することと、第2信号及び第3信号の差分を形成することによって復調信号を生成することとを行うように構成され得る。
【0023】
電子回路において、材料上の一箇所は、データが収集及び格納される単位面積としてよい。
【0024】
さらに開示されるのは、上述した請求項のいずれかの電子回路を含むシステムであり、このシステムはさらに光検出器を含む。
【0025】
システムにおいて、光検出器はフォトダイオードとしてよい。
【0026】
システムはさらに光学サブシステムを含み、この光学サブシステムは、材料を励起するべく使用される励起ビームを生成するように構成される。
【0027】
システムにおいて、光学サブシステムは、電子回路が生成する一以上の無線周波数信号によってソース光ビームを変調して励起ビームを生成することができる。
【0028】
システムにおいて、光学サブシステムは、一以上の無線周波数信号によってソース光ビームをそれぞれ変調する一以上の音響光学変調器を含み得る。
【0029】
システムにおいて、励起ビームは、第1変調周波数を備えるポンプビームと、第2変調周波数を備えるプローブビームとを含み得る。
【0030】
システムはさらに、材料上の一箇所を励起するべく使用される励起ビームに対する当該材料の相対位置を変えるスキャン機構を含んでよい。
【0031】
システムはさらに、スキャン機構を介して一フレーム内の複数箇所をスキャンすることを行うように構成されてよく、このスキャンすることは、各箇所に対し、励起ビームと当該箇所との間の位置を調整することと、当該箇所において関心信号を分別することと、当該箇所における当該関心信号の特性を格納することと、次の箇所へと動くこととを含み、一フレームは、複数箇所を含む材料上の一面積である。
【0032】
システムはさらに、一フレーム内の複数箇所をスキャンした後、励起ビームの特性を変えて当該一フレームの第2スキャンを行うように構成されてよい。
【0033】
システムにおいて、励起ビームの特性を変えることは、第1変調周波数における第1変調済み光ビームと第2変調周波数における第2変調済み光ビームとの間の遅延を変えることを含んでよい。
【0034】
システムはさらに、第2スキャンの後、それぞれの箇所に対する超高速減衰を、当該それぞれの箇所の格納済み特性に基づいて計算するように構成されてよい。
【0035】
システムはさらに、一箇所における関心信号を弁別することと、当該一箇所における当該関心信号の特性を格納することと、1ミリ秒内に次の箇所へ動くこととを行うように構成されてよい。
【0036】
さらに開示されるのは方法であって、この方法は、変調済み光源を介して、一以上の変調周波数を含む光ビームによって材料上の一箇所を照らすことと、光検出器を介して関心信号を検出することであって、当該関心信号は、当該光ビームと当該材料との相互作用から得られる非線形光学プロセスにより生成された光であり、当該関心信号は、当該光ビームのスペクトル成分の1THz内の周波数を有するスペクトル成分であることと、電子回路によって、当該光検出器が当該関心信号の検出に応答して生成する電気信号を受信することと、伝達関数がノッチを変調周波数の一つに対応するノッチ周波数に含む低域通過フィルタを使用して、当該関心信号の少なくとも一つの特性を含む当該電気信号の一部分を、当該電気信号の他成分から弁別することと、当該電気信号の弁別済み部分に基づいて、当該関心信号の当該少なくとも一つの特性を特定することとを含む。
【0037】
方法において、変調周波数の一つに対応するノッチ周波数は、当該変調周波数である。
【0038】
方法において、変調周波数の一つに対応するノッチ周波数は、当該変調周波数の復調の周波数であってよい。
【0039】
方法はさらに、関心信号の当該少なくとも一つの特性を出力することを含んでよい。
【0040】
方法において、関心信号の当該少なくとも一つの特性は、材料上の一箇所からの光ビームに含まれる非線形光学応答の振幅であってよい。
【0041】
方法において、関心信号の当該少なくとも一つの特性はさらに、関心信号の位相を含んでよい。
【0042】
方法において、変調周波数に対応するノッチ周波数を含む伝達関数を備えるフィルタは、低域通過有限インパルス応答フィルタであってよい。
【0043】
方法において、フィルタ伝達関数は、当該一以上の変調周波数のそれぞれに対応するノッチ周波数を含んでよい。ここで、当該一以上の変調周波数のそれぞれに対応することは、(1)変調周波数、又は(2)当該変調周波数の復調の周波数のそれぞれ一方である。
【0044】
方法において、フィルタの待ち時間は、変調周波数それぞれの対応周期の整数倍である。
【0045】
方法において、フィルタの待ち時間は1ミリ秒以下としてよい。
【0046】
方法において、関心信号の当該少なくとも一つの特性を含む当該電気信号の一部分を弁別することは、フィルタの待ち時間内に行われ得る。
【0047】
方法において、待ち時間は、フィルタが受信済み材料測定値の移動平均を行う時間である。
【0048】
システムにおいて、待ち時間は、材料の当該箇所を励起するべく使用される光ビームにおけるパルスの周期の整数としてよい。
【0049】
方法はさらに、一以上の変調周波数において光源を変調して当該一以上の変調周波数を含む光ビームを生成するように無線周波数信号を生成することを含んでよい。
【0050】
方法において、変調周波数は第1変調周波数及び第2変調周波数を含み、信号から関心信号を弁別することは、光検出器から受信した信号を、第1変調周波数と第2変調周波数との差分である復調信号によって復調することを含んでよい。
【0051】
方法はさらに、第1変調周波数を含む第1信号を受信することと、第2変調周波数を含む第2信号を受信することと、第1信号と第2信号との差分を形成することにより復調信号を生成することとを含んでよい。
【0052】
方法はさらに、一フレーム内の複数箇所をスキャンすることであって、各箇所に対し、光ビームと当該箇所との間の位置を調整することと、当該箇所における関心信号を弁別することと、当該箇所における当該関心信号の特性を格納することと、次の箇所へ動くこととを含み、一フレームは、当該複数箇所を含む材料上の一面積である。
【0053】
方法において、一箇所における関心信号を弁別することと、当該一箇所における関心信号の特性を格納することと、次箇所へ動くこととは1ミリ秒のうちに完了し得る。
【0054】
さらに開示されるのは上記方法を実行するように構成されるシステムである。
【0055】
図1は、材料140の特性を決定するべく変調済み光ビームによってポンプ・プローブ測定を行う例示的システム100を示す。システム100は、光源104、光学サブシステム105、光検出器144、スキャン機構154及び電子回路160を含む。電子回路160はさらに、出力信号S165を出力するポート165を含む。システム100はさらに、コンピューティングデバイス170も含み得る。
【0056】
光源104は、一連のパルスを含むソース光ビーム(ソースビームS112)を生成する。一例として、超高速レーザを光源として使用することができる。市販の超高速レーザの一例は、5100パトリックヘンリードライブ、サンタクララ、CA95054を住所とするCoherent社が製造するChameleon Discovery NXである。
【0057】
ソースビームS112は典型的に、100キロヘルツ(kHz)から1ギガヘルツ(GHz)までの範囲にある繰り返し周波数を有する。一例において、繰り返し周波数は120メガヘルツ(MHz)であり、パルス間の時間は近似的に8.3ナノ秒(ns)である。超高速レーザが生成するパルスは典型的に、ピコ秒(ps)未満の長さを有し、例えば150フェムト秒(fs)である。レーザの中心波長は典型的に300~2000ナノメートル(nm)であり、このセクションは被測定材料に基づく。典型的な超高速レーザの帯域幅は5~35テラヘルツ(THz)である。レーザ、又はレーザによりもたらされるいずれのビームも、連続生成を使用して500THzまで拡張することができる。光源によりもたらされる可能な連続生成のビームの少なくとも一つのスペクトルは、特定の関心材料を研究することに関連する波長をカバーする必要がある。例えば、MoSe2の単層における室温励起共鳴を測定するべく、790nm近くの中心周波数及び少なくとも5THzの帯域幅を備える光源を使用することができる。
【0058】
光学サブシステム105は、第1変調器114(MOD_1)、第2変調器116(MOD_2)、遅延ブロック118、第1ビームスプリッタ130、第2ビームスプリッタ134及びレンズ138を含む。
【0059】
第1変調器114及び第2変調器116は、受信した光信号を、受信した無線周波数(RF)信号の周波数、位相及び振幅に基づいて変調することができるデバイスである。一例として、第1変調器114及び第2変調器116は音響光学変調器(AOM)としてよい。市販の音響光学変調器の一例は、10342バトルビューパークウェイ、マナサス、VA20109を住所とするIsomet社が製造するM1407-SF80L-0p5である。代替的に、第1変調器及び第2変調器114、116は、チョッパーのような電気光学変調器又は機械強度変調器としてもよい。
【0060】
図1に示されるように、光学サブシステム105は、光源104から第1ビームスプリッタ130までの2つの光信号経路、すなわち第1光路106及び第2光路107、を含む。第1光路106は、ポンプ経路106と称されることもあり、第1変調器114を含む。第2光路107は、プローブ経路107と称されることもあり、遅延ブロック118及び第2変調器116を含む。
【0061】
第1光路106において、第1変調器114は、第1周波数Ω1を有する第1無線周波数(RF)信号S122に基づいてソース光ビームS112を振幅変調して第1変調済み光ビームS126を生成する。周期的光源が使用される場合、第1周波数Ω1は、ソース光ビームS112の繰り返し周波数よりも低い周波数である。変調済み光ビームS126はここでは、ポンプビームS126と称されることもある。
【0062】
第2光路107において、第2変調器116は、第2周波数Ω2を備える第2RF信号S124に基づいてソース光ビームS112を変調して第2変調光ビームS128を生成する。周期的光源が使用される場合、第2周波数Ω2は第1周波数Ω1とは異なり、ソース光ビームS112の繰り返し周波数よりも低い。変調光ビームS128はここでは、プローブビームS128と称されることもある。
【0063】
遅延ブロック118は、プローブビームS128に対するポンプビームS126のタイミングを調整するべく使用され得る。一例において、遅延ブロック118は、光路の長さを調整することを許容する調整可能位置を備えるミラーである。これにより、当該ミラーによって反射される光ビームの、光ビームソースから光ビーム目的地までの通過時間の調整が許容される。第2光路107において、遅延ブロック118は、光源104からのソースビームS112を入力として受信し、ソースビームS112Dの遅延済みコピーを第2変調器116に出力する。ここで、遅延は調整可能である。
【0064】
第1光路106と第2光路107とは、第1ビームスプリッタ130において出会う。ここで、ポンプビーム126とプローブビームS128とが結合して、励起ビームS132(=S126+S128)を形成する。ここで、プローブビームS128におけるパルスのタイミングが、遅延ブロック118が生成する遅延に基づいて、ポンプビームS126のタイミングに対して調整される。
【0065】
レンズ138は、励起ビームS132を(励起ビームS132が変わらずに第2ビームスプリッタ134を通過した後に)受信し、励起ビームS132を材料140上の一箇所に向ける。励起ビームS132と材料140との非線形的な相互作用において、材料140が非線形応答ビームS142を生成する。非線形応答ビームS142は、プローブビームS128の帯域幅内に含まれる光学スペクトルを備える光ビームである。詳しくは、この非線形応答ビームのすべてのスペクトル成分が、プローブビームS128のスペクトル成分の1THz以内にある。非線形応答ビームS142はここでは、関心信号S142と称されることもある。この区別をする理由は、非線形的な光学プロセスが、新たな波長の光をもたらすにもかかわらず、このほぼ縮退している非線形信号、すなわちプローブビームとほぼ同じ波長を有する非線形信号は、光学スペクトルフィルタを使用して分離することができないからである。非線形信号を分離するべく光学スペクトルフィルタを使用することができないので、ここに開示される技法のような電気フィルタが必要とされるのである。材料140は付加的に、励起ビームS132に応答して線形応答ビームS133も放射及び/又は反射する。線形応答ビームS133は、励起ビームS132と同じスペクトル成分を含む。
【0066】
非線形応答ビームS142は、線形応答ビームS133と一緒にレンズ138を通過して第2ビームスプリッタ134まで戻る。ビームスプリッタ134は、非線形応答ビームS142及び線形応答ビームS133がその後、光検出器144に向けられるように配列される。
【0067】
光検出器144は、フォトダイオードとしてよく、線形応答ビームS133とともに非線形応答ビームS142を検出する。非線形応答ビームS142及び線形応答ビームS133からの励起に基づいて、光検出器144は(電気)光検出器出力信号S146を生成する。光検出器出力信号S146は、電子回路160に入力される。電子回路160は、
図2及び
図5A~
図5Eを参照して以下に説明されるように、光検出器出力信号S146を処理して関心信号S142の一以上の特性の値を抽出する。関心信号S142の一以上の特性の値は振幅を含み、関心信号S142の位相も含んでよい。
【0068】
システム100は、材料140に対する励起ビーム132の位置を調整/変更するスキャン機構154を含む。一例において、スキャン機構154は、材料140を並進又は回転させる。一箇所における測定を完了した後、材料140を、システム100のレンズ138が材料140の他の箇所に向けられるように変位させることができる。一箇所はここでは一画素とも称される。ここで、一画素とは材料140上の単位面積であり、この画素に対し、測定プロセス中にデータが収集及び格納される。代替的に、いくつかのスキャン機構154が、レンズ138(典型的には顕微鏡対物レンズ)の光路にある検流計スキャナを使用して材料140に対して励起ビーム132を動かす一方で、材料140を静止したまま保持するように設けられる。
【0069】
電子回路160は、システム100に対する複数のオペレーションを行うことができる。このオペレーションは、ポンプビームS126及びプローブビームS128を生成するべくRF信号を生成することと、遅延ブロック118が生成する遅延のような光学サブシステムのパラメータを調整することと、関心信号S142の特性の値を決定するべくフォトダイオード出力信号S146を弁別することと、スキャン機構154、及び光源104のようなシステム100の他の素子を制御することと、関心信号S142の特性の値を、計算デバイス170のようなコンピューティングデバイス若しくはディスプレイにデジタル値として出力し、又は当該値をアナログ出力信号として出力することとを含む。電子回路160は、抵抗器、キャパシタ、インダクタ及びトランジスタのような電子コンポーネントを含む。これはさらに、論理ゲート、フリップフロップ及びレジスタのような論理素子も含む。これはなおもさらに、一以上のプロセッサ及び一以上のデータ格納素子も含んでよい。一例において、電子回路160は、システム100における他の素子のオペレーションについてのセットアップ、調整又は実行のためのプロセッサのための命令を格納して材料140から収集されたデータも格納することができる格納素子を含んでよい。電子回路160は、一以上のFPGA、集積回路、及び/又はセラミック基板のようなプリント回路ボード若しくは基板上の回路であってよく、又はこれらを含んでよい。
【0070】
図1に示されるように、電子回路160は、RF生成サブ回路162、信号処理サブ回路164及び制御サブ回路166を含む一以上のサブ回路を含んでよい。これらのサブ回路はそれぞれが、それぞれのサブ回路に関連する機能を行うソフトウェアモジュール、ファームウェアモジュール又はハードウェアモジュールの一つ又は任意の組み合わせとしてよい。
【0071】
RF生成サブ回路162は、ソース光ビームS112を変調するRF信号を生成し、ポンプ光ビームS126及びプローブ光ビームS128のような変調済み光ビームを生成する。詳しくは、
図1の例において、RF生成サブ回路162が、第1周波数Ω
1を備える第1RF信号S122、及び第2周波数Ω
2を備える第2RF信号S124を生成する。
【0072】
信号処理サブ回路164が、光検出器144からの出力信号S146を受信及び処理し、出力信号S146に含まれる関心信号S142の特性の値を決定する。信号処理サブ回路164のオペレーションが
図2を参照して以下に説明される。
【0073】
制御サブ回路166が、システム100のオペレーションを制御し得る。制御サブ回路166は、例えば、RF生成サブ回路162が生成する信号S122及びS124それぞれの周波数Ω1及びΩ2を選択し、遅延ブロック118が生成する遅延を選択することができる。制御サブ回路166はさらに、復調周波数のような信号処理サブ回路164において行われる信号処理のためのパラメータ、並びに使用されるフィルタのタイプ、当該フィルタの係数、及び当該フィルタの一以上の時定数のような信号フィルタリングのためのパラメータを選択することができる。これにより、画素待ち時間が決定される。制御サブ回路166はさらに、スキャン機構154が行うスキャンのステップベクトル(長さ及び方向)及びステップタイミングのようなパラメータを制御することができる。なおもさらに、制御サブ回路166は、材料140の測定中に電子回路160が収集するデータの出力を制御することができる。
【0074】
以下に説明されるように、制御サブ回路166は、RF生成サブ回路162が生成する周波数、及び信号処理サブ回路164において行われるフィルタリングのパラメータを、材料140に適用されるポンプビームS126及びプローブビームS128の変調周波数に対応する周波数が、信号処理サブ回路164によって適用されるフィルタリングの伝達関数におけるノッチによって抑制されるように、選択することができる。以下の説明のように、いくつかの場合、変調周波数に対応する周波数は実際の変調周波数である。他の場合、変調周波数に対応する周波数は、復調信号によって変調信号を復調して得られる周波数である。電子回路160はさらに、信号処理サブ回路164からのデータを、計算デバイス170、ディスプレイ、又はオシロスコープ等の測定デバイスのようなデバイスへ出力するポート165を含む。ポート165は、異なるデジタルバス構成をサポートし、又は一以上のアナログ信号の出力をサポートする一以上の電気接続部を含んでよい。
【0075】
システム100はさらに、計算デバイス170も含み得る。計算デバイス170は、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、携帯電話機等としてよい。計算デバイス170は、一以上のプロセッサ及び一以上のメモリを含んでよく、デジタル通信を、例えば、IEEE802.11、ブルートゥース(登録商標)のような無線規格に従って、又はユニバーサルシリアルバス(USB)、イーサネット(登録商標)若しくは周辺機器相互接続(PCI)のような有線通信を介して受信するようにプログラムされてよい。
【0076】
計算デバイス170はさらに、電子回路160からの出力S165を受信するようにプログラムされてよい。ここで、当該出力は、材料140上の複数箇所についての関心信号S142の特性に比例する値を示すデジタルデータとしてよい。計算デバイス170は、その値を、材料140上のそれぞれの箇所とともに格納してよい。計算デバイス170はさらに、欠陥のような複数箇所における材料の特性が識別できるようにデータをグラフィカルに、例えばディスプレイ上に提示するようにプログラムされてよい。
【0077】
図2は、信号処理サブ回路164において行われる信号処理を示すブロック図である。
図2に示されるように、信号処理サブ回路164は、差分生成器202、ロックインタイプ検出器206及び出力エレクトロニクス220を含む。一例において、ロックインタイプ検出器206は混合器208及び低域通過フィルタ212を含む。低域通過フィルタ212が移動平均フィルタである場合、ロックインタイプ検出器206はボックスロックイン検出器とも称される。信号処理サブ回路164は、例えば、フィルタのタイプ、フィルタ212の係数、及びフィルタ212の単数又は複数の時定数のような、フィルタ212のパラメータを調整するようにプログラムされ得る。
【0078】
信号処理サブ回路164における差分生成器202は、周波数Ω1を備える変調信号S122及び周波数Ω2を備える変調信号S124を入力として受信し、Ω1-Ω2に等しい周波数を備える差分信号S204を生成する。差分信号S204はここでは、復調信号S204と称されることもある。
【0079】
次のステップとして、信号処理サブ回路164におけるロックインタイプ検出器206は、光検出器出力信号S146を入力として受信する。この例において、ロックインタイプ検出器206は混合器208及び低域通過フィルタ212を含む。混合器208は、光検出器出力信号S146を復調信号S204と混合する。混合器208の出力は信号S210である。信号S210は、光検出器出力信号S146及び復調器信号S204における周波数に基づいて複数の周波数にある信号を含み、0Hz(ゼロヘルツ)にある信号も含む。複数の周波数にある信号(0Hzにある信号を除く)は、ポンプ信号S126及びプローブ信号S128の変調周波数の復調を含む。0Hzにある信号は、関心信号の特性の値を含む。詳しくは、0Hzにある信号の少なくとも振幅が、関心信号S142の振幅に比例する。
【0080】
低域通過フィルタ212は、信号S210をフィルタリングし、関心信号S142の少なくとも一つの特性に比例する値を含む電気信号S146の一部分を電気信号S146の他の成分から弁別して信号S214を生成する。得られた信号S214は、関心信号S142の少なくとも一つの特性を含む。一例において、低域通過フィルタ212は移動平均フィルタであり、この場合、ロックインタイプ検出器206はボックスロックイン検出器206と称される。移動平均フィルタは、時間領域において固定数のサンプルの移動平均を行い、周波数領域においてフィルタ212の伝達関数に一以上のノッチを有することを特徴とする。移動平均フィルタはさらに、一サンプルの周期を乗じた移動平均に含まれるサンプルの数に等しい待ち時間を特徴とする。
【0081】
図5A~
図5Eを参照して以下に説明されることだが、伝達関数におけるノッチが励起ビーム132の周波数変調に対応するように移動平均フィルタを設計することにより、伝統的な指数低域通過フィルタの時定数と比べて相対的に短い待ち時間で励起ビーム132に含まれる信号を強く抑制することができる。移動平均フィルタの伝達関数のノッチを配置することは、抑制対象の変調の周期の整数倍となる待ち時間を選択することと、システム100を、すべての変調周期がサンプル周期の整数倍となるように設計することとによって達成することができる。関心信号の特性を測定するには、待ち時間もまた、関心信号の基本変調周波数の周期の整数倍とする必要があり、この関心信号の基本変調周波数は、いずれの他の変調周波数の倍音であってはならない。ここで、ソース光ビームS112におけるパルスの繰り返し率に等しいサンプルレートが使用される。サンプル周期はパルス間の時間である。これらの移動平均フィルタ条件が正しく設定されると、ボックスロックイン検出器206における移動平均フィルタ212の伝達関数が、励起ビーム132の変調周波数に対応する周波数にノッチを有することにより、混合器208及び移動平均フィルタ212を含むボックスロックイン検出器206が、ポンプビームS126及びプローブビームS128の変調周波数を有効に抑制する。
【0082】
出力エレクトロニクス220は、関心信号S142の特性に比例する値を含む信号S214を受信し、ポート165に出力される出力信号を生成する。一例において、出力信号S165は、ポート165を介して計算デバイス170のような計算デバイスへ出力されるデジタル値、ディスプレイへ出力されるデジタル値、又は、オシロスコープのようなアナログ測定デバイスが受信し得るポート165へ出力されるアナログ値としてよい。いくつかの場合、出力エレクトロニクス220は、信号S214をポート165へ直接出力してよい。他の場合、出力エレクトロニクスは、信号S214をユニバーサルシリアルバス(USB)(登録商標)のようなバスを介する送信のためのフォーマットに変換してよい。他の場合、出力エレクトロニクス220はデジタル信号S214を、例えば、デジタル・アナログ変換器を使用してアナログ信号に変換してよく、関心信号S142の特性に比例するアナログ信号を出力してよい。
【0083】
図3A~
図3Eは、例示的アプリケーションのためのシステム100内の様々なポイントにおける光信号(ビーム)及び電気信号を時間領域で示す。
【0084】
図3Aは、光源104からのソースビームS112を時間領域で示す。一例において、ソースビームS112の繰り返し周波数(すなわちパルス周波数)は120MHzであり、近似的に8.3nsのパルスの周期が得られる。
【0085】
この例において、RF生成サブ回路162は、60MHzの第1周波数Ω
1を有する第1信号S122、及び40MHzの第2周波数を有する第2信号S124を生成する。第1信号S122は、ポンプビームS126を生成するべく第1変調器114を介してソースビームS112を振幅変調するように使用される。第2信号S124は、プローブビームS128を生成するべく第2変調器116を介してソースビームS112を振幅変調するように使用される。
図3Bは、ポンプビームS126を時間領域で示す。
図3Cは、プローブビームS128を時間領域で示す。
【0086】
第2ビームスプリッタ134は、ポンプビームS126とプローブビームS128とを結合して一つの励起ビームS132にする。励起ビームS132は、
図3Dにおいて時間領域で示される。この例において、遅延ブロック118が生成する遅延はゼロに設定されるので、ポンプビームS126とプローブビームS128との間に時間的なオフセットは存在しない。
図3Dに示されるように、励起ビームS132は、ポンプビームS126及びプローブビームS128のパルスのそれぞれにおいてパルスを有する。(ソースビームS112からのパルス数に示される)0、6及び12のパルス繰り返しにおいて、ポンプビームS126及びプローブビームS128は双方とも最大である。非ゼロ遅延を備えるシステムにおいて、プローブビームS128は、ポンプビームS126に関連する遅延を有する。
【0087】
励起ビームS132は、上述したように、レンズ138を介して材料140へと向けられる。材料140は、励起信号S132との相互作用を介して、ポンプ・プローブ信号S142又は関心信号S142とも称される非線形応答ビームS142を生成する。
図3Eは、非線形応答ビームS142を時間領域で示す。見えることだが、非線形応答ビームS142のみが、ポンプビームS126及びプローブビームS128が同時発生するときに時間領域においてピークを有する。なお、ポンプビームS126及びプローブビームS128が、非線形応答信号S142においてパルスを生成する時刻において重なる必要はない。むしろ、プローブビームS128は、ポンプビームS126に対してサンプルが測定可能な応答を示す期間内に生じる必要がある。この期間はサンプル減衰時間と称される。サンプル減衰時間は、被測定物質に固有の特性であり、1fs未満から1s超過の範囲を取り得る。
【0088】
図4A~
図4Dは、上述した例に基づくシステム100の選択された信号を周波数領域で示す。
【0089】
図4Aは、周波数領域におけるソースビームS112の表現である。これは、DCにおける無線周波数成分を示し、レーザ繰り返し率の倍音すべてを示す。これは、
図4Aにおける整数のセットである。繰り返し周波数が120MHzであるこの例において、無線周波数スペクトルは、光検出器144の帯域幅内にある120MHzの倍音ごとに特徴を有する。
【0090】
図4Bは、ポンプビームS126の周波数領域におけるグラフである。これは、0.5周波数繰り返し単位の倍音において顕著な特徴を有する。ここで、これはポンプ変調周波数Ω
1である。この例において、ポンプ変調周波数Ω
1は60MHzである。
【0091】
図4Cは、プローブビームS128の周波数領域におけるグラフを示す。これは、0.33繰り返し単位の倍音において顕著な特徴を有する。ここで、これはプローブ変調周波数Ω
2である。この例において、プローブ変調周波数Ω
2は40MHzである。
【0092】
図4Dは、応答ビームS142のグラフを示す。応答ビームS142は、0.17繰り返し周波数単位においてピークを有する。これは、Ω
1とΩ
2との差分に対応する。この特徴は一意的であるが、応答信号S142が非常に弱く、典型的に、光検出器144に衝突する他の信号よりも少なくとも6桁(order of magnitude)は低い。関心信号を含むこの特徴を弁別するために、データ処理は、S142においてポンプビームS126及びプローブビームS128それぞれから得られる変調周波数Ω
1及びΩ
2を強力に、例えば10
7倍まで、抑制する必要がある。
【0093】
図5Aは、光検出器出力信号S146の周波数領域におけるグラフである。見えることだが、これは0.17繰り返し単位にピークを含む。このピークは関心信号に比例する。
【0094】
信号処理サブ回路164における混合器208は、復調信号S204によって信号S146を復調して復調済み出力信号S210を生成する。ここで、復調信号S204はΩ1-Ω2の周波数を有する。
【0095】
図5Bは、復調済み出力信号S210の周波数領域におけるグラフである。DCにおける特徴、すなわちゼロヘルツにおける特徴が関心信号である。
【0096】
図2を参照して上述したように、復調の後に信号S210はフィルタリングされる。従来、低域通過指数関数フィルタは、混合器による復調の後に適用され、ここでは指数関数ロックイン検出器と称される標準的なロックイン検出器の信号処理と同一の信号処理が得られる。指数関数フィルタは、その指数関数状の伝達関数の減衰時間を設定するその時定数とフィルタ次数とによって定義される。
図5Cは、4次低域通過指数関数フィルタに対する伝達関数504の一例を示す。
【0097】
代替例として、簡単な移動平均フィルタを低域通過フィルタ212として使用してよい。その結果得られる混合器208及び移動平均フィルタ212を含むシステムは、ここではボックスロックイン検出器206と称される。
図5Cは、可能な限り最短の積分時間を備える移動平均フィルタ212に対する例示的伝達関数502を示す。ここで、最短の積分時間は、1/(Ω
1-Ω
2)に等しい非線形変調の単一期間である。見えることだが、移動平均フィルタの伝達関数502は複数のノッチを有する。これらのノッチに生じる信号は、他の信号よりも強力に抑制される。
【0098】
図5Dは、ボックスロックイン検出器により信号S146をフィルタリングした結果S214
boxを示す。このフィルタリングは、混合ステップ及び伝達関数502による低域通過フィルタリングの双方を含む。
図5Eは、指数関数ロックイン検出器により信号S146をフィルタリングした結果S214
expを示す。このフィルタリングは、混合ステップ及び伝達関数504による低域通過フィルタリングの双方を含む。見えることだが、ポンプビームS126及びプローブビームS128に関連付けられる変調周波数の復調から得られる復調周波数を含む復調周波数が、ボックスフィルタによってフィルタリングされた信号S214
boxにおいて抑制されている。これらの復調周波数は、指数関数フィルタによってフィルタリングされた信号S214
expにおいては存在したままである。
【0099】
これら2つのフィルタを、広範囲の積分時間にわたってシミュレーションすることにより、定義されたパラメータ空間内のボックスロックイン検出器が、すべての有効な時定数に対して指数関数ロックイン検出器よりも優れていることがわかる。
図6A及び
図6Bはそれぞれ、これら2つのタイプのフィルタの時間領域応答及び周波数領域応答を示す。曲線602及び606はそれぞれ、移動平均フィルタの時間領域及び周波数領域における伝達関数を示す。曲線604及び608はそれぞれ、指数低域通過フィルタの時間領域及び周波数領域における伝達関数を示す。
【0100】
曲線602を参照すると、ボックスロックイン検出器206における低域通過フィルタ212が移動平均フィルタ212である。これは、平均化関数におけるサンプル数Nに等しい待ち時間を特徴とする。この待ち時間は、
図6Aの曲線602におけるパルスの幅に対応する。移動平均フィルタ212の利点は、周波数領域応答がノッチを含むことにある。ここで、ノッチは、
図6Bにおいて曲線606に示される伝達関数における最小値である。ボックスロックイン検出器206の待ち時間と変調周波数とを選択することによって、伝達曲線におけるノッチを、ポンプ変調周波数Ω
1及びプローブ変調周波数Ω
2に対応する周波数に整列させることができる。これにより、これらの信号の有効な抑制が得られる。この例において使用される混合ステップゆえに、移動平均フィルタのノッチ周波数が、Ω
1-Ω
2である基準周波数と混合されたポンプ周波数及びプローブ周波数に配置される。混合の後、ポンプ周波数に対応する周波数がΩ
2、及び2Ω
1-Ω
2となり、プローブ周波数に対応する周波数がΩ
1、及び2Ω
2-Ω
1となる。移動平均フィルタはまた、Ω
1-Ω
2においてノッチも有する。信号S146の0Hz部分は、周波数Ω
1-Ω
2までシフトされている。このタイプのフィルタにより、ボックスロックイン検出器にとっての検出時間が指数関数ロックイン検出器よりも低減される。
【0101】
ボックスロックイン検出器206の移動平均フィルタ212の応答におけるノッチの整列は、2つの条件を満たすことによって達成することができる。第1に、移動平均フィルタ212の待ち時間を、抑制対象の各周波数の周期の整数にする必要がある。第2に、すべての変調周期を、サンプル周期の整数倍にする必要がある。ここで、サンプル周期は、信号処理エレクトロニクスによってデジタル化される光検出器144から測定されるデータポイント間の時間である。サンプルレートは、その基本的な限界において、ソースビームS112の繰り返し率に等しい。ソースビームS112の繰り返し率よりも低いサンプルレートも使用することができる。
【0102】
上記例において、ソースビームS112の繰り返し率は120MHzであり、ポンプビーム周波数は60MHzであり、プローブビーム周波数は40MHzであり、移動平均フィルタ待ち時間は50nsの任意の整数倍としてよい。移動平均フィルタの周波数領域応答は、20MHzの正の倍数及び負の倍数にノッチを有する。
【0103】
上記ボックスロックイン検出器206は、ノッチが抑制対象周波数に配置されるように設計され得るシステムの一例にすぎない。他の有限インパルス応答(FIR)フィルタ及び無限インパルス応答(IIR)フィルタを、対応する復調周波数を抑制するべくノッチがノッチ周波数に配置されるように作ることができる。これらのフィルタは、ロックインタイプ検出器の他例において混合器の前段又は後段に配置してよい。フィルタが混合器の前段に配置される場合、変調周波数に対応する周波数は変調周波数に等しい。ボックスロックイン検出器206とほぼ等価な伝達関数による信号処理方法は、離散フーリエ変換の使用である。ここで、関心信号を除くすべての周波数に対する係数はゼロに設定され、関心信号の周波数に対する係数のみが出力される。IIRフィルタを使用するノッチ実装例も使用可能性のあるものとして存在する。ただし、この実装例は、有限インパルス応答フィルタの使用よりも長い待ち時間を必要とする。
【0104】
図7A~
図7Dは、関心信号を含む変調以外の変調信号をノッチが抑制するフィルタを使用することの利点を示す。
図7Aは、3つのパルス変調済みバーストの時間領域におけるグラフである。第1バースト702はΩ
1に対応する変調周波数である。第2バースト704はΩ
2に対応する変調周波数であり、第3バースト706はΩ
1-Ω
2に対応する変調周波数である。3つのバーストすべてに白色雑音バックグラウンドが重畳される。
【0105】
シミュレーションを介すると、これら3つのパルスバーストはポンプ・プローブ周波数を使用して復調され、得られた信号が、従来型の4極(4-pole)指数関数フィルタ、及び有限インパルス応答(FIR)ボックスフィルタを通過した。
【0106】
図7Bは、これらのバーストそれぞれの、4極指数関数フィルタによる復調及びフィルタリング後の検出を示す。バースト708はΩ
1において変調された信号のブレークスルーを示し、バースト710はΩ
2のブレークスルーを示し、バースト712はΩ
1-Ω
2の検出を示す。
【0107】
図7Cは、これらのバーストそれぞれの、変調済み信号がFIR移動平均フィルタを通過した後の検出を示す。バースト714はΩ
1変調の信号の最小ブレークスルーを示し、バースト716はΩ
2の最小ブレークスルーを示し、バースト718はΩ
1-Ω
2の検出を示す。
図7B及び
図7Cはともに、ボックスロックイン検出器によるΩ1及びΩ2変調周波数の優れた抑制を示す。
【0108】
図7Dにおいて、Ω
1及びΩ
2変調周波数の抑制が、一定範囲のサンプリング周期について様々なロックイン検出器フィルタタイプに対して比較される。ここで、線形干渉信号(すなわち変調周波数)は、光検出器においてポンプ・プローブ信号S142よりもかなり強力である。信号が少なくとも1桁だけバックグラウンドを超えるには、10
7以上のオーダーの抑制が必要となり得る。曲線720(Box)は、ボックスロックイン検出器による変調周波数の抑制を、フィルタ待ち時間におけるサンプルの数の関数として示す。曲線722(4-pole)は、4極指数関数ロックイン検出器の変調周波数抑制を、フィルタ待ち時間におけるサンプルの数の関数として示す。曲線724(1-pole)は、1極指数関数フィルタについての変調周波数抑制を、フィルタ待ち時間におけるサンプルの数の関数として示す。迅速なイメージングに必要とされる低いサンプリング周期に対し、ボックスロックイン検出器は、Ω
1及びΩ
2の変調周波数において指数関数ロックイン検出器よりもかなり有効である。
【0109】
図7Dにおける待ち時間又は時定数の軸の単位は、ここではレーザの繰り返し率に等しくなるように設定されたサンプリング周期によって正規化される。
【0110】
ここに記載のポンプ・プローブ測定は、測定される材料の特性を決定するべく使用することができる。ポンプ及びプローブの帯域幅に応じて、高いポンプ・プローブ信号が、材料の欠陥又は高品質(欠陥なしの)材料のいずれかを示し得る。半導体のバンドギャップよりもわずかに下回るエネルギーにチューニングされる同じ光学帯域幅をカバーするポンプビーム及びプローブビームにとって、関心信号の高い振幅は、測定される箇所における欠陥の指標となり得る。励起子共鳴を示すMoSe2のような半導体において励起子共鳴に整合するようにチューニングされる同じ光学帯域幅をカバーするポンプビーム及びプローブビームにとって、関心信号の低い振幅は、測定された箇所において劣化したサンプルの指標となり得る。異なる光学帯域幅を有するポンプビーム及びプローブビームにとって、高い又は低いポンプ・プローブ信号に基づいて欠陥を特定するべく他の欠陥を使用することができる。非線形イメージングの一サブセットを誘導ラマン散乱(SRS)顕微法と称する。ここで、ポンプビーム及びプローブビームは、材料の特定の振動モードを共鳴励起するべくチューニングされる。当該振動ラマンモードもまた良好な欠陥指標となり得る。
【0111】
図8は、例示的システム100を用いて材料140に対するポンプ・プローブイメージング測定を行う例示的プロセス800のフロー図である。この文脈において、フレームとは、一つのパルス減衰によって測定される2以上の画素を含む材料140上の一面積である。この文脈において、画素とは、データが収集及び格納される材料140上の一箇所である。例えば、当該箇所は、デカルト座標系又は動径座標系のいずれかにおける座標に基づいて特定され得る。プロセス800はブロック802から開始する。
【0112】
ブロック802において、材料140を測定するためのパラメータが設定される。例えば、電子回路160における制御サブ回路166は、ユーザからの入力に基づいて信号S122に対して変調周波数Ω1を設定し、信号S124に対して変調周波数Ω2を設定し、遅延ブロック118にわたる遅延を設定することができる。制御サブ回路166はさらに、信号処理サブ回路164が行うフィルタリングのタイプも設定することができる。ボックスロックイン検出器のタイプを選択する場合、制御サブ回路166は待ち時間を設定することができる。さらに、制御サブ回路166は、材料140をスキャンするためのパラメータも設定することができる。例えば、制御サブ回路166は、デカルト座標又は動径座標のいずれかにおいて一箇所から次箇所までの材料140に沿ったステップベクトル(サイズ及び方向)を設定することができる。測定及びスキャンのパラメータを設定すると、プロセス800はブロック804へと続く。
【0113】
ブロック804において、制御サブ回路166は、材料140上の一箇所において測定を行う。上述したように、光源104がソースビームS112を生成する。第1変調器114及び第2変調器116を介して電子回路160が、周波数Ω1を備えるポンプビームS126及び周波数Ω2を備えるプローブビームS128を生成する。いくつかの場合、電子回路160は、ポンプビームS126とプローブビームS128との間に遅延ブロック118を介して時間的な遅延を確立することができる。光学コンポーネントを介して、ポンプビームS126とプローブビームS128とが結合されて励起ビームS132が形成され、励起ビームS132は材料140上の一箇所に向けられる。材料140は、光検出器144に向けられる非線形応答ビームS142を生成する。それに基づいて光検出器144は電気信号S146を生成する。信号処理エレクトロニクスが、制御サブ回路166が確立したパラメータに基づき、待ち時間からのサンプルポイントすべてを使用して関心信号を電気信号S146から弁別する。プロセス800はブロック806に続く。
【0114】
ブロック806において、制御サブ回路166は、測定された画素に対する関心信号からのデータを、材料140上の画素の箇所を特定する座標とともに、メモリに格納する。データを格納すると、プロセス800はブロック808に続く。
【0115】
ブロック808において、制御サブ回路166は、フレーム内の追加画素が測定されるべきか否かを決定する。追加フレームを測定する必要がある場合、プロセス800はブロック810に続く。そうでない場合、プロセス800はブロック812に続く。
【0116】
ブロック810において、電子回路160は、上述したように、スキャン機構154を介して材料140に対して励起ビームS132を変位させる。一例において、材料140は半導体ウェハである。この場合において、スキャン機構154は、励起ビームS132に対してウェハを回転させることができ、又はウェハを、デカルト座標系における一軸に沿って新たな箇所へと変位させることができる。プロセス800はその後、ブロック804に続き、新たな箇所での測定を開始する。
【0117】
フレーム内のすべての箇所が測定された後、プロセス800はブロック812へと続く。ブロック808の後に続き得るブロック812において、制御サブ回路166は、異なるセットの測定パラメータによって追加測定をすべきか否かを決定する。例えば、いくつかの場合、材料上の複数箇所においてそれぞれの減衰時間を測定することが望まれることがある。一箇所において検出された長い減衰時間も、欠陥の指標となり得る。これは、トラップ状態とも称されることがある。減衰マップを測定するべく、それぞれがポンプビームS126とプローブビームS128との間で異なる遅延を有する同一箇所測定の複数セットを使用して、材料140の超高速減衰時間を当該フレーム内の各画素において決定することができる。異なる測定パラメータによる追加測定が当該フレームにおいて行われる場合、プロセス800はブロック802に続いて新たな測定パラメータを確立する。そうでない場合、プロセス800はブロック814に続く。
【0118】
ブロック814において、制御サブ回路166が、測定が完了したことを報告し、さらには収集済みデータを報告することもできる。例えば、電子回路160は、材料140上の複数箇所に対する関心信号S142の一以上の特性の値を出力することができる。関心信号S142の特性は振幅を含んでよく、さらには関心信号S142の位相を含んでよい。電子回路160はデータを、各箇所に対するデジタルデータの形式で出力してよく、又はアナログ信号を出力してよい。データは、計算デバイス170のようなコンピューティングデバイス、ディスプレイ、及び/又はオシロスコープのような測定デバイスに出力されてよい。他の場合、電子回路160は、後の検索のためにデータを格納してよい。プロセス800は終了する。
【0119】
図9は、4パルスのパルスシーケンスを制御するように設計された例示的システム900のブロック図である。4パルスのパルスシーケンスにより、材料140において生成される3次非線形信号の追加特性の、
図1を参照して説明した2パルスシーケンスよりもさらに完全な測定が可能となる。例示的システム900において、
図1と同じ又は同様の要素は同じ参照符号を保持している。
【0120】
システム900は光源104及び基準光源902を含む。光源104は、ソースビームS112を生成し、例えば、
図1を参照して説明した超高速レーザとしてよい。
【0121】
基準光源902は、連続波基準ビームS903を生成するレーザとしてよい。基準レーザは、遅延ブロック904及び906によってもたらされる最大タイミング遅延を超えるコヒーレンス長を有する。波長が典型的に第1光源の帯域幅の外側に存在するので、基準レーザを第1光源からスペクトル的にフィルタリングすることができる。一例において、この基準レーザは、1064nmの波長及び10メートルのコヒーレンス長を備える単一縦モードNd:YAGレーザである。
【0122】
システム900は4つの変調器を含む。第1変調器908(AOM_A)、第2変調器910(AOM_B)、第3変調器912(AOM_C)、及び第4変調器914(AOM_D)である。これらの変調器はそれぞれが、例えば、
図1の第1変調器114及び第2変調器116を参照して説明した音響光学変調器としてよい。しかしながら、変調器の駆動信号は、いかなる振幅変調も存在しない単一周波数である。これらは、例示的システム900においてはソースビームS112である光ビームを第1入力として受信する。これらは、それぞれの無線周波数信号を第2入力として受信する。4つの変調器908、910、912、914はそれぞれが、第2入力として受信されたそれぞれの無線周波数信号に基づいて光ビームを周波数シフトさせる。この周波数シフトは、単側波帯位相変調とも称される。
【0123】
システム900はさらに、3つの遅延ブロックも含む。第1遅延ブロック904、第2遅延ブロック906及び第3遅延ブロック931である。
図1の遅延ブロック118を参照して上述したように、遅延ブロック904、906、931はそれぞれが、光路の長さを変えるように位置が調整され得るミラーであってよい。
【0124】
システム900において、光源104はソースビームS112を生成する。ソースビームS112は分割されて、以下に説明される4つの光路になる。
【0125】
第1光路(AOM_A経路)は第1遅延ブロック904及び第1変調器908を含み、第1ビームS909を生成する。AOM_A経路において、第1変調器908は、第1遅延ブロック904に基づいて遅延されたソースビームS112を、第1ビームS909が周波数ΩAだけ周波数シフトされるように信号S922によって位相変調する。
【0126】
第2光路(AOM_B経路)は第2変調器910を含み、第2ビームS911を生成する。第2変調器910は、第2ビームS911が周波数ΩBだけ周波数シフトされるように、信号S916によってソースビームS112を位相変調する。
【0127】
第3光路(AOM_C経路)は第3変調器912を含み、第3ビームS913を生成する。第3変調器912は、第3ビームS913が周波数ΩCだけ周波数シフトされるように、信号S918によってソースビームS112を位相変調する。
【0128】
第4光路(AOM_D経路)は第2遅延ブロック906及び第4変調器914を含み、第4ビームS915を生成する。第4変調器914は、第2遅延ブロック906からの遅延に基づいて遅延されたソースビームS112を、第4ビームS915が周波数ΩDだけ周波数シフトされるように、信号S920によって位相変調する。
【0129】
4パルス測定を、先に与えたポンプ・プローブの例に関連付けるには、ΩAとΩBとの差分をΩ1とし、ΩCとΩDとの差分をΩ2とする。4つのビームすべてが第1ビームスプリッタ924及び第2ビームスプリッタ929を介して結合されて励起ビームS132が生成される。
【0130】
連続波基準ビームS903は分割されて4つの光路となり、AOM_A経路、AOM_B経路、AOM_C経路、及びAOM_D経路のAOM駆動周波数及び経路長変動のサンプリングをするべく使用される。AOM_A経路からの第1ビームS909とAOM_B経路からの第2ビームS911とが結合された後、基準ビームS903からの干渉が光検出器926によって測定される。第1ビームS909及び第2ビームS911が周波数シフトされているので、これらの干渉が、これらの変調周波数の差分すなわちΩ1において変調される。変調はまた、各ビームにおける光学系の相対移動に起因するドップラーシフトも含み得る。結合された第1ビームS909及び第2ビームS911からの励起に基づいて、光検出器926は、電子回路960において光信号を復調するべく使用され得る単一周波数Ω1にある信号S928を生成する。
【0131】
AOM_C経路からの第3ビームS913とAOM_D経路からの第4ビームS915とが結合された後、これら2つの光路間の基準ビームS903干渉が光検出器930によって測定され、信号S932が生成される。この信号は、周波数Ω
C及びΩ
Dの差分に等しい変調周波数Ω
2を有する。電子回路960はまた、復調のために信号S932を使用する。4つのビームS909、S911、S913及びS915がビームスプリッタ929において結合された後、光路は、
図1及び
図2における先のポンプ・プローブの例と同一である。
【0132】
電子回路960は、システム900に対する複数のオペレーションを行うことができる。このオペレーションは、ソースビームS112を変調するべく使用されるRF信号を生成することと、遅延ブロック904、906及び931が生成する遅延を含む光学サブシステムのパラメータを調整することと、関心信号の特性の値を決定するべく光検出器出力信号S146を弁別することと、スキャン機構154並びに光源104及び基準光源902のようなシステム900の他の素子を制御することと、関心信号S142の特性の値を、計算デバイス170のようなコンピューティングデバイス、ディスプレイ、又はアナログ出力に出力することとを含む。電子回路960は、抵抗器、キャパシタ、インダクタ及びトランジスタのような電子コンポーネントを含む。これはさらに、論理ゲート、フリップフロップ及びレジスタのような論理素子も含む。これはなおもさらに、一以上のプロセッサ及び一以上のデータ格納素子も含んでよい。一例において、電子回路は、プロセッサがシステム900における他の素子によるオペレーションを設定、調整又は実行するための命令を格納する格納素子を含み得る。電子回路960は、一以上のFPGA、集積回路、及び/又は基板若しくはプリント回路ボード上の回路であってよく、又はこれらを含んでよい。
【0133】
図9に示されるように、電子回路960は、RF生成サブ回路962、信号処理サブ回路964及び制御サブ回路966を含む一以上のサブ回路を含んでよい。これらのサブ回路はそれぞれが、それぞれのサブ回路に関連する機能を行うソフトウェアモジュール、ファームウェアモジュール又はハードウェアモジュールの一つ又は任意の組み合わせとしてよい。
【0134】
RF生成サブ回路962は、ソース光ビームS112を変調して上述した光ビームS909、S911、S913及びS915のような変調済み光ビームを生成するためのRF信号を生成することができる。
【0135】
信号処理サブ回路964は、光検出器144出力信号S146を受信及び処理し、出力信号S146に含まれる関心信号を弁別する。信号処理サブ回路964はさらに、光検出器926出力信号S928及び光検出器930出力信号S932を受信及び処理し、信号S146において関心信号を弁別するべく使用される復調信号を生成する。信号処理サブ回路964のオペレーションが
図10を参照して以下に説明される。
【0136】
電子回路960はさらに、信号処理エレクトロニクスからのデータを、計算デバイス170、ディスプレイ、又はオシロスコープ等の測定デバイスのようなデバイスへ出力するポート965を含む。ポート965は、異なるデジタルバス構成をサポートし、又は一以上のアナログ信号の出力をサポートする一以上の電気接続部を含んでよい。
【0137】
図10は、電子回路960に含まれる信号処理サブ回路964を示すブロック図である。信号処理サブ回路964は電子回路であり、この電子回路は、一以上のプロセッサ、メモリ、及び他の電子回路を含み得る。
図10に示されるように、信号処理サブ回路964は、差分生成器202、第1混合器208及び第1フィルタ212を含む第1ロックインタイプ検出器206、第2混合器1008及び第2フィルタ1014を含む第2ロックインタイプ検出器1006、並びに出力エレクトロニクス1020を含む。ここで、これらのコンポーネントはそれぞれが、ソフトウェアモジュール、ファームウェアモジュール、ハードウェアモジュール、又はこれらの任意の組み合わせとなり得る。信号処理サブ回路964は、例えば、低域通過フィルタのタイプ、フィルタの係数、フィルタの待ち時間又は時定数のような、第1ロックインタイプ検出器206及び第2ロックインタイプ検出器1006のパラメータを調整するようにプログラムされてよい。一例において、第1低域通過フィルタ212及び第2低域通過フィルタ1014は、上述した移動平均フィルタである。
【0138】
信号処理サブ回路964において、差分生成器202は、信号S928及びS932に基づいて基準信号S208を生成する。4パルス測定において、信号S146の位相もまた重要な測定量である。信号S146の位相を測定するには、信号S146の2つの直交する直角位相を測定する必要がある。ロックインタイプ検出器206に含まれる第1混合器208と第1低域通過フィルタ212との組み合わせが、信号処理サブ回路164を参照して説明されたものと同様の態様で第1直角位相を測定して出力信号S214を生成する。第2直角位相が、移相器1004を使用して基準信号S208を90度だけ位相シフトすることによって測定され、位相シフト済み基準信号S1005が生成される。位相シフト済み基準信号S1005は、第2混合器1008及び低域通過フィルタ1014を含む第2ロックインタイプ検出器1006に渡される。第2混合器1008はその後、信号S146を位相シフト済み基準信号S1005と混合して信号S1009を生成する。第2低域通過フィルタ1014は、信号S1009を受信及びフィルタリングして信号S1016を生成する。信号S214と信号S1016とは、4波混合信号の直交する直角位相である。これらの直交する直角位相が、信号S146の振幅及び位相を回復するべく使用され得る。
【0139】
出力エレクトロニクス1020は、関心信号S142の振幅に比例する値と、関心信号S1016に対する直交直角位相を測定することによる関心信号S142の位相に比例する値とを含む信号S214を受信する。信号S214及びS1016に基づいて出力エレクトロニクスは、ポート965に出力される出力信号S965を生成する。一例において、出力信号S965は、S142の実部及びS1016の実部である2つの直角位相成分の大きさに等しい関心信号の振幅に対するデジタル値、並びにS1016の実部及びS142の実部に適用される数学演算atan2に等しい関心信号の位相に対するデジタル値を含むデジタルデータとしてよい。出力信号S965はまた、S142の実部である関心信号のX直角位相の振幅に対するデジタル値、及びS1016の実部である関心信号のY直角位相の振幅に対するデジタル値としてよい。デジタルデータは、ポート965を介して計算デバイス170のようなコンピューティングデバイスに出力し、ディスプレイに出力し、又は関心信号S142の振幅に比例する第1アナログ値、及び信号S142の位相に比例する第2アナログ信号として出力することができる。いくつかの場合、出力エレクトロニクス1020は、信号S214及びS1016を直接ポート965に出力してよい。他の場合、出力エレクトロニクスは、信号S214及びS1016をユニバーサルシリアルバス(USB)のようなバスを介する送信のためのフォーマットに変換してよい。他の場合、出力エレクトロニクス1020は、例えば、デジタル・アナログ変換器を使用してデジタル信号S214及びS1016をそれぞれのアナログ信号に変換してよく、アナログ信号をポート965に出力してよい。
【0140】
上述した例示的システム100と同様に、第1低域通過フィルタ212の待ち時間及び第2低域通過フィルタの待ち時間も、光検出器144が非線形応答信号S142に基づいて生成する信号S146に現れる変調周波数の周期の整数となるように設計することができる。
【0141】
4パルス測定から決定される追加位相情報は、位相が遅延によりどのように進展するのかを測定するべく使用することができる。この位相進展を記録し、その後、当該記録済みセットの信号をフーリエ変換することが、スペクトルを生成するために使用される。4パルス測定により、ポンプビーム及びプローブビームの一方又は双方をスペクトル分解することができる。これらのタイプの測定のための様々なアプリケーションが存在する。一例において、2つの異なる半導体材料の2つの隣接層が、測定された箇所においてどの程度強力に結合されているのかを決定するべく、ポンプスペクトル及びプローブスペクトル双方を測定することが使用される。
【0142】
特許請求の範囲において使用される用語はすべて、ここで反対の明示的指示がなされない限り、当業者によって理解されるように、それらの明らかな通常の意味を与えることが意図される。特に、「一の」、「その」、「当該」、「前記」等のような単数冠詞の使用は、特許請求の範囲が反対の明示的限定を記載しない限り、示された要素の一以上を記載するように読まれるべきである。
【0143】
「に基づく」との用語はここでは、全体又は一部に基づくことを意味する。
【0144】
「例示的」との用語はここでは、一例を示す意味で使用され、例えば、「例示的ウィジェット」の参照は、単にウィジェットの一例の参照として読まれるべきである。
【0145】
図面において、同じ参照番号は同じ要素を示す。さらに、これらの要素の一部又は全部が変更され得る。
【0146】
一般に、記載されたコンピューティングシステム及び/又はデバイスは、Microsoft Windows(登録商標)オペレーティングシステム、Unix(登録商標)オペレーティングシステム(例えば、カリフォルニア州レッドウッドシューズのOracle社が配布するSolaris(登録商標)オペレーティングシステム)、ニューヨーク州アーモンクのInternational Business Machines社が配布するAIX UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、Linux(登録商標)オペレーティングシステム、カリフォルニア州クパティーノのApple社が配布するMac OSX(登録商標)及びiOSオペレーティングシステム、カナダ州ウォータールーのBlackberry社が配布するBlackBerry(登録商標)OS、及びGoogle社及びOpen Handset Allianceが開発するAndroid(登録商標)オペレーティングシステムのバージョン及び/又はバラエティーを含むが、これらに限られない一定数のコンピュータオペレーティングシステムのいずれかを用いてよい。コンピューティングデバイスの例は、ゲートウェイ若しくは端末、コンピュータワークステーション、サーバ、デスクトップ、ノートブック、ラップトップ若しくはハンドヘルドコンピュータ、又は他のコンピューティングシステム及び/若しくはデバイスのようなネットワークデバイスが含まれるが、これらに限られない。
【0147】
コンピューティングデバイスは一般に、コンピュータ実行可能命令を含む。ここで、命令は上記リストのような一以上のコンピューティングデバイスによって実行可能である。コンピュータ実行可能命令は、Java(登録商標)、C、C++、Visual Basic、Java Script、Perl、Verilog(登録商標)、VHDL等を単独又は組み合わせのいずれかで含むがこれらに限られない様々なプログラミング言語及び/又は技術を使用して作成されたコンピュータプログラムからコンパイルされ又は解釈されてよい。これらのアプリケーションの一部は、Java仮想マシン、Dalvik(登録商標)仮想マシン等の仮想マシン上でコンパイル及び実行され得る。一般に、プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)は、例えば、メモリ、コンピュータ可読媒体等から命令を受け取り、これらの命令を実行し、それによって、ここに記載されるプロセスのうちの一以上を含む一以上のプロセスを実行する。かかる命令及び他のデータは、様々なコンピュータ可読媒体を使用して格納及び伝送されてよい。
【0148】
コンピュータ可読媒体(プロセッサ可読媒体とも称される)は、コンピュータが(例えばコンピュータのプロセッサが)読み取り得るデータ(例えば命令)を与えることに関与する任意の非一時的な(例えば有体物の)媒体を含む。かかる媒体は、不揮発性媒体及び揮発性媒体を含むがこれらに限られない多くの形態をとり得る。命令は、コンピュータのプロセッサに結合されたシステムバスを含む内部構造物を含む光ファイバ、ワイヤ、無線通信を含む一以上の伝送媒体によって伝送され得る。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EEPROM、任意の他のメモリチップ若しくはカートリッジ、又はコンピュータが読み取ることができる任意の他の媒体を含む。
【0149】
ここに記載されるデータベース、データリポジトリ又は他のデータストアは、階層データベース、ファイルシステム内の一セットのファイル、専用フォーマットのアプリケーションデータベース、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)等を含む様々な種類のデータを格納、アクセス及び検索するための様々な種類の機構を含み得る。かかるデータストアはそれぞれが、一般に、上述したもののいずれかのようなコンピュータオペレーティングシステムを用いるコンピューティングデバイスの中に含まれ、様々な態様のいずれか一つ以上でネットワークを介してアクセスされる。ファイルシステムは、コンピュータオペレーティングシステムからアクセス可能であり、様々なフォーマットで格納されたファイルを含み得る。RDBMSは一般に、上述のPL/SQL言語のような格納済みプロシージャを作成、格納、編集及び実行するための言語に加えて、構造化照会言語(SQL)を用いる。
【0150】
いくつかの例において、システム要素は、一以上のコンピューティングデバイス(例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ等)上のコンピュータ可読命令(例えばソフトウェア)として実装され、それに関連付けられたコンピュータ可読媒体(例えばディスク、メモリ等)に格納され得る。コンピュータプログラム製品は、ここに記載される機能を実行するために、コンピュータ可読媒体に格納された当該命令を含み得る。
【0151】
ここに記載されるプロセス、システム、方法、ヒューリスティクス等に関し、かかるプロセス等のステップが、所定の順序のシーケンスに従って行われるように記載されるにもかかわらず、かかるプロセスは、ここに記載される順序以外の順序で実行される記載されたステップによっても実行し得ることを理解すべきである。さらに理解すべきことであるが、所定のステップを同時に実行することができ、他のステップを追加することができ、又はここに記載される所定のステップを省略することができる。換言すれば、ここでのプロセスの説明は、所定の実施形態を示す目的で与えられており、決して特許請求の範囲を制限するように解釈されてはならない。
【0152】
したがって、上記説明は例示的であり、制限的ではないことが理解される。与えられる例以外の多くの実施形態及びアプリケーションも、上記説明を読むと明らかになる。当該範囲は、上記説明を参照して決定されるべきではなく、その代わり、添付の特許請求の範囲を参照して、かかる特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに決定されるべきである。ここで説明される技術において将来の発展が生じ、開示のシステム及び方法がかかる将来の実施形態に組み込まれることが予想及び意図される。つまり、アプリケーションは修正及び変形が可能であることが理解されるべきである。
【0153】
要約は、読者が技術開示の性質を迅速に確認できるように与えられる。要約は、請求項の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないことを理解して提出される。加えて、前述の詳細な説明において、開示を合理化する目的で、様々な特徴が様々な実施形態においてまとめてグループ化されていることがわかる。この開示方法は、請求される実施形態が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするとの意図を反映しているとしては解釈されない。むしろ、以下の特許請求の範囲に反映されるように、発明の主題は、単一の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない。すなわち、以下の特許請求の範囲は詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別個に請求される主題として独立している。