(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】減速機用回転軸固定治具、及び、減速機用回転軸固定方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20241127BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B11/08 A
(21)【出願番号】P 2024012049
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】朱 トウ
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-175829(JP,A)
【文献】特開2017-1775(JP,A)
【文献】特開2019-124309(JP,A)
【文献】特開2023-150366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの巻上機に組まれた減速機の回転軸に着脱可能に取り付けられて前記回転軸を前記減速機のフレームに対して固定する減速機用回転軸固定治具であって、
前記回転軸が挿入される筒状の本体部と、
前記本体部の内周面から突出して前記回転軸に形成されたキー溝と係合するキーと、
前記本体部の一端において、前記本体部の端面又は外周面から、前記本体部の径方向の外側に延び出すフランジ部であって、当該フランジ部の厚み方向に貫通する第1貫通孔が形成されたフランジ部と、
前記第1貫通孔に挿入されるネジと、
前記本体部の外周面又は前記フランジ部から、前記径方向の外側に延び出すハンドルと、
を備えた治具。
【請求項2】
前記ハンドルに前記ネジを挿通して保持するための第2貫通孔が形成されている、請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記本体部と別体に形成され、
前記フランジ部は、前記本体部に対して当該本体部の周方向に回転不能に、当該本体部に接続されている、請求項1に記載の治具。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記本体部に対して着脱可能に接続している、請求項3に記載の治具。
【請求項5】
前記フランジ部には、前記本体部が挿入される筒状部が接続されており、
前記筒状部は、前記本体部に対して当該本体部の周方向に回転不能に、当該本体部に接続されている、請求項1に記載の治具。
【請求項6】
前記ハンドルは、前記本体部の外周面又は前記フランジ部に着脱可能に接続している、請求項1に記載の治具。
【請求項7】
前記ハンドルは、前記本体部の外周面又は前記フランジ部から前記径方向の外側に延び出すハンドル基部と、前記ハンドル基部から前記径方向と交差する方向に延び出す取っ手とを含み、
前記取っ手は、前記ハンドル基部に着脱可能に接続している、請求項1に記載の治具。
【請求項8】
前記本体部の外周面又は前記フランジ部から前記径方向の外側に延び出す第1ハンドル及び第2ハンドルを含み、
前記本体部の軸線に沿った方向に見て、前記第1ハンドル及び前記第2ハンドルは、前記軸線に対して点対称となる位置において前記本体部又は前記フランジ部に接続している、請求項1に記載の治具。
【請求項9】
エレベータの巻上機に組まれた減速機の回転軸を当該減速機のフレームに対して固定する減速機用回転軸固定方法であって、
前記回転軸が挿入される筒状の本体部と、前記本体部の内周面から突出して前記回転軸に形成されたキー溝と係合するキーと、前記本体部の外周面から前記本体部の径方向の外側に延び出すハンドル基部及び前記ハンドル基部から前記本体部の軸線に沿った方向に延び出す取っ手を有するハンドルと、を含む治具を準備する工程と、
前記取っ手が前記フレームに対面するように、且つ、前記キー溝に前記キーが係合するように、前記回転軸を前記本体部に挿入する工程と、
前記回転軸が前記本体部に挿入された状態で、前記ハンドルを前記回転軸と共に回転させて、前記取っ手を前記フレームに前記回転軸の周方向に当接させる工程と、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、減速機用回転軸固定治具、及び、減速機用回転軸固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの巻上機に減速機が組まれている。減速機の回転軸には、軸受けやカップリングが取り付けられる。エレベータの改修工事等の際、回転軸に取り付けられた軸受けやカップリングを交換することがある。軸受けやカップリングの交換作業は、回転軸のブレーキを解除した状態で、回転軸から軸受けやカップリングを取り外し、新たな軸受けやカップリングを取り付けることにより行われる。
【0003】
回転軸から軸受けやカップリングを取り外す際、一般にギヤプーラのようなネジ構造を利用した引抜工具が用いられる。ギヤプーラは、押しネジが回転軸に対して回転可能且つ保持部が軸受けやカップリング(したがって、回転軸)に対して回転不能な状態で押しネジを回転軸に対して回転させることで、保持部を回転軸の軸方向に移動させて軸受けやカップリングを回転軸から引き抜く。上述したように、軸受けやカップリングの交換時には回転軸のブレーキが解除されている。このため、回転軸から軸受けやカップリングを取り外す際には、回転軸の一端側において回転軸を固定する作業者と、回転軸の他端側においてギヤプーラを操作する作業者と、を必要とする。回転軸は、特開昭64-2989号公報に開示されているような手巻きハンドルを回転軸に装着し、作業者がハンドルを掴んでハンドルの回転を防止することで、固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来の方法では、軸受けやカップリングの取り外し作業を一人で行うことができない。また、回転軸の固定には、多大な労力を必要とする。その一方で、上記取り外し作業の効率化が望まれている。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、軸受けやカップリング等の取り外し作業を一人で行うことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態による減速機用回転軸固定治具は、
エレベータの巻上機に組まれた減速機の回転軸に着脱可能に取り付けられて前記回転軸を前記減速機のフレームに対して固定する減速機用回転軸固定治具であって、
前記回転軸が挿入される筒状の本体部と、
前記本体部の内周面から突出して前記回転軸に形成されたキー溝と係合するキーと、
前記本体部の一端において、前記本体部の端面又は外周面から、前記本体部の径方向の外側に延び出すフランジ部であって、当該フランジ部の厚み方向に貫通する第1貫通孔が形成されたフランジ部と、
前記第1貫通孔に挿入されるネジと、
前記本体部の外周面又は前記フランジ部から、前記径方向の外側に延び出すハンドルと、
を備える。
【0008】
また、本実施の形態による減速機用回転軸固定方法は、
エレベータの巻上機に組まれた減速機の回転軸を当該減速機のフレームに対して固定する減速機用回転軸固定方法であって、
前記回転軸が挿入される筒状の本体部と、前記本体部の内周面から突出して前記回転軸に形成されたキー溝と係合するキーと、前記本体部の外周面から前記本体部の径方向の外側に延び出すハンドル基部及び前記ハンドル基部から前記本体部の軸線に沿った方向に延び出す取っ手を有するハンドルと、を含む治具を準備する工程と、
前記取っ手が前記フレームに対面するように、且つ、前記キー溝に前記キーが係合するように、前記回転軸を前記本体部に挿入する工程と、
前記回転軸が前記本体部に挿入された状態で、前記ハンドルを前記回転軸と共に回転させて、前記取っ手を前記フレームに前記回転軸の周方向に当接させる工程と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による減速機用回転軸固定治具を減速機と共に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の二点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に対応する図であって、治具を手巻きハンドルとして用いる場合の治具の回転軸への装着方法を示す図である。
【
図5】
図5は、減速機の回転軸の端部を覆うカバーを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、回転軸に取り付けられた治具を回転軸の中心軸線に沿った方向に見た図であって、治具を用いた回転軸の固定方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図6に対応する図であって、治具を用いた回転軸の固定方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図8のF9-F9線に沿った断面を示す図である。
【
図12】
図12は、
図10に対応する図であって、フランジ部を本体部から取り外す方法を示す図である。
【
図13】
図13は、治具のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、治具のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、治具のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、回転軸の固定方法の変形例を説明するための斜視図である。
【
図19】
図19は、
図19に示す治具を手巻きハンドルとして用いる場合の治具の回転軸への装着方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、エレベータの巻上機に組まれる減速機1を示す斜視図である。
図2は、減速機1の断面を示す図である。減速機1は、モータから入力された回転を減速して巻上機シーブに出力する。減速機1は、モータから回転が入力される回転軸2と、回転軸2に入力された回転を減速させて出力する減速機構(図示せず)と、回転軸2の一部及び減速機構を収容するフレーム3と、を有する。回転軸2は、フレーム3によって支持されている。回転軸2は、その中心軸線2Xの周りをフレーム3に対して回転可能である。以下では、回転軸2の中心軸線2Xを中心とした円の径方向を、回転軸2の径方向と呼ぶ。また、回転軸2の中心軸線2Xを中心とした円の周方向を、回転軸2の周方向と呼ぶ。
【0011】
図2に示すように、回転軸2は、第1端部2a及び第2端部2bを有する。第1端部2aは、フレーム3の第1面3aから延び出す。第2端部2bは、フレーム3の第2面3bから延び出す。第1面3a及び第2面3bは、中心軸線2Xの延びる方向に対向している。回転軸2の各箇所には、キー溝2kが形成されている。キー溝2kは、少なくとも、回転軸2の第1端部2a及び第2端部2bに形成されている。第1端部2aにキー溝2kが形成されていることで、第1端部2aに手巻きハンドルを取り付けて回転軸2を手動で回転させることができる。また、第2端部2bにキー溝2kが形成されていることで、第2端部2bに、モータ等を接続するためのカップリング(軸継手)5を、回転軸2に対して回転不能に回転軸2に取り付けることができる。
【0012】
図2に示す例では、回転軸2に、軸受けやカップリング5が取り付けられている。
図2に示す回転軸2には、さらに、回転軸2をフレーム3に対して固定する減速機用回転軸固定治具10(以下、単に「治具10」とも称する)と、ギヤプーラ6と、が取り付けられている。治具10は、回転軸2の第1端部2aに取り付けられ、ギヤプーラ6は第2端部2bに取り付けられている。
【0013】
ギヤプーラ6は、軸受けやカップリング5を回転軸2から取り外す取り外し作業を行う際に用いられる。ギヤプーラ6は、押しネジ7と、保持部8とを有する。保持部8は、押しネジ7と螺合している。ギヤプーラ6は、押しネジ7の中心軸線7Xが回転軸2の中心軸線2Xに概ね一致するように、且つ、保持部8が軸受け又はカップリング5を保持するように、回転軸2の第2端部2b上に設置される。押しネジ7をその中心軸線7Xの周りを回転軸2に対して回転させることで、保持部8を中心軸線7Xに沿った方向に移動させ、保持部8に保持された軸受け又はカップリング5を回転軸2から取り外す。
図2に示す例では、保持部8はカップリング5を保持している。
【0014】
治具10は、回転軸2に着脱可能に取り付けられる。治具10は、回転軸2及びフレーム3に対して回転不能に、回転軸2に取り付けられる。このような治具10を用いることで、ギヤプーラ6の押しネジ7を回転させる際に、押しネジ7と共に回転軸2が回転することを防止することができる。したがって、本実施の形態によれば、上記取り外し作業を行う際に、回転軸2を回転不能に保持する作業者を必要としない。この結果、上記取り外し作業を効率良く行うことができる。
【0015】
治具10は、筒状の本体部11と、回転軸2のキー溝2kと係合するキー11kと、本体部11から延び出すフランジ部20と、フランジ部20をフレーム3に固定するネジ28と、ハンドル30と、を有する。
【0016】
本体部11には、回転軸2が挿入される。図示された例では、本体部11は、全体として円柱状の回転軸2の第1端部2aに対応して、円筒状に形成されている。以下では、本体部11の軸線11Xを中心とした円の径方向を、本体部11の径方向と呼ぶ。また、本体部11の軸線11Xを中心とした円の周方向を、本体部11の周方向と呼ぶ。治具10が回転軸2に取り付けられた状態において、本体部11の軸線11Xと回転軸2の中心軸線2Xとは、一致する。
【0017】
キー11kは、本体部11の内周面から、本体部11の径方向内側に突出する。図示された例では、キー11kは、さらに、本体部11の外周面から、本体部11の径方向外側に突出する。キー11kは、本体部11に固定されている。キー11kが回転軸2のキー溝2kと係合することで、本体部11が回転軸2の周りを回転することが防止される。キー11kは、本体部11の軸線11Xに沿って、第1端部11aと第2端部11bとの間を延びている。
図3に示すように本体部11の第2端部11bの側から回転軸2を本体部11に挿入しても、
図4に示すように本体部11の第1端部11aの側から回転軸2を本体部11に挿入しても、キー11kを回転軸2のキー溝2kに係合させることができる。治具10を
図4に示すように接続する場合、治具10を手巻きハンドルとして用いることもできる。
【0018】
フランジ部20は、本体部11の第2端部11bにおいて、本体部11の端面又は外周面から、本体部11の径方向外側に延び出す。フランジ部20は、環状に形成されている。図示された例では、フランジ部20は、円環板状に形成されている。フランジ部20は、本体部11の第1端部11aの側を向く第1面20aと、第1面20aとは反対側の第2面20bとを有する。フランジ部20は、本体部11に固定されている。また、図示された例では、フランジ部20は、本体部11と一体に形成されている。以下では、フランジ部20の軸線20Xを中心とした円の径方向を、フランジ部20の径方向と呼ぶ。また、フランジ部20の軸線20Xを中心とした円の周方向を、フランジ部20の周方向と呼ぶ。フランジ部20の軸線20Xと本体部11の軸線11Xとは、一致する。また、治具10が回転軸2に取り付けられた状態において、フランジ部20の軸線20Xと回転軸2の中心軸線2Xとは、一致する。
【0019】
フランジ部20には、第1貫通孔21が形成されている。第1貫通孔21は、フランジ部20を、その厚み方向に貫通する。図示された例では、フランジ部20には本体部11の周方向に並ぶ複数の第1貫通孔21が形成されている。
【0020】
ネジ28は、フランジ部20を減速機1のフレーム3に固定する。ネジ28は、フランジ部20の第1貫通孔21に挿入された状態でフレーム3の回転軸2の周りに形成されたネジ孔3hと螺合することで、フランジ部20をフレーム3に固定する。フランジ部20がフレーム3に固定されることで、本体部11もフレーム3に対して固定され、本体部11に挿入された回転軸2はフレーム3に対して回転不能となる。
【0021】
なお、フレーム3のネジ孔3hは、
図5に示すように、エレベータの通常運転時に、回転軸2の第1端部2aを覆うキャップ40をフレーム3に固定するために形成されている。より具体的には、キャップ40に挿通されたネジ41がネジ孔3hと螺合して、キャップ40をフレーム3に固定する。フレーム3の既存のネジ孔3hを利用して治具10をフレーム3に固定することで、減速機1の設計変更を伴うことなく、回転軸2をフレーム3に対して固定することができる。
【0022】
ハンドル30は、ハンドル基部31を含む。ハンドル基部31は、本体部11の外周面又はフランジ部20から、本体部11の径方向外側に延び出す。図示された例では、ハンドル基部31は、本体部11及びフランジ部20とは別体に形成され、本体部11又はフランジ部20にネジ等の固定具35で着脱可能に固定されている。ハンドル基部31が本体部11又はフランジ部20に対して着脱可能であることにより、ハンドル30を本体部11又はフランジ部20から取り外して治具10をコンパクトにすることができる。これにより、治具10の持ち運びが容易になる。もちろん、ハンドル基部31は、本体部11又はフランジ部20から取り外し不能であってもよい。この場合、ハンドル基部31は本体部11又はフランジ部20と一体に形成されていてもよい。
【0023】
次に、このような治具10を用いて回転軸2をフレーム3に対して固定する方法について説明する。
【0024】
まず、
図6に示すように、フランジ部20が減速機1のフレーム3に対面するように、且つ、治具10のキー11kが回転軸2の第1端部2aに形成されたキー溝2kに係合するように、減速機1の回転軸2の第1端部2aを、本体部11に挿入する。これにより、回転軸2は、治具10に対して回転不能に、治具10に接続される。次に、
図7に示すように、回転軸2の中心軸線2Xに沿った方向に見てフランジ部20の第1貫通孔21とフレーム3のネジ孔3hとが重なるように、ハンドル30を用いて治具10を回転軸2と共に回転させる。次に、ネジ28を、第1貫通孔21に挿通し且つフレーム3のネジ孔3hに螺合させる。これにより、治具10がフレーム3に固定される。この結果、回転軸2がフレーム3に対して固定される。
【0025】
なお、上述してきた一実施の形態に対して、さらに様々な変更を加えることが可能である。
【0026】
<変形例1>
例えば、
図8及び
図9に示すように、ハンドル基部31にはネジを保持する第2貫通孔32が形成されていてもよい。第2貫通孔32は、ハンドル基部31の厚み方向にハンドル基部31を貫通する。これにより、第2貫通孔32にネジを挿通してネジを保持することができる。なお、フレーム3のネジ孔3hの寸法は、減速機1によって異なる場合がある。第1貫通孔21及び第2貫通孔32に互いに異なる寸法のネジ28,29を保持させることで、これらのネジ28,29の中からフレーム3のネジ孔3hの寸法に合ったネジを選択することができる。
【0027】
<変形例2>
また、フランジ部20は、本体部11と別体に形成されていてもよい。この場合、フランジ部20は、本体部11に対して本体部11の周方向に回転不能に、本体部11に接続されていればよい。この場合も、フランジ部20を減速機1のフレーム3に固定することで、本体部11のフレーム3に対する回転を防止することができる。この結果、回転軸2のフレーム3に対する回転も防止することができる。
【0028】
図10及び
図11に示す例では、フランジ部20は、本体部11に対して着脱可能に接続している。図示された例では、本体部11の外周面には、本体部11の径方向外側に向かって突出する複数の凸部12が形成されている。複数の凸部12は、本体部11の周方向に並んでいる。フランジ部20の第2面20bには複数の凹部22が形成されている。各凹部22は、フランジ部20の内周面からフランジ部20の径方向に延びている。また、各凹部22は、フランジ部20の内周面及び第2面20bで開放されている。各凹部22は、本体部11の凸部12を収容する。本体部11の凸部12とフランジ部20の凹部22とが噛み合うことで、フランジ部20は本体部11に対して回転不能となる。図示された例では、フランジ部20は、本体部11の複数の凸部12を、本体部11の第1端部11aから第2端部11bに向かう方向に覆う。これにより、治具10がフレーム3に固定されると、本体部11の凸部12はフランジ部20とフレーム3との間に保持される。この結果、本体部11がフランジ部20から脱落することが防止される。
【0029】
フランジ部20が本体部11と別体に形成されていることにより、治具10を回転軸2の寸法に合わせて設計することが容易である。すなわち、治具10のうち本体部11のみを(より具体的には、本体部11の内寸のみを)回転軸2の寸法に合わせて設計すればよい。また、フランジ部20が本体部11に対して着脱可能に接続していることにより、回転軸2の寸法に合わせて本体部11を交換することができる。また、治具10がコンパクトになり持ち運びが容易になる。
【0030】
なお、本体部11をフランジ部20に組み付ける際は、
図12に示すように、フランジ部20の第2面20bの側から本体部11の第1端部11aを挿入し、本体部11の凸部12をフランジ部20の凹部22に嵌め込めばよい。また、本体部11をフランジ部20から取り外す際は、フランジ部20の第2面20bの側から本体部11を引き抜けばよい。ここで、
図10乃至
図12では、図示の明確化のため、ネジ28の図示を省略している。
【0031】
<変形例3>
また、
図13及び
図14に示す例では、フランジ部20には本体部11が挿入される筒状部25が接続されていている。フランジ部20は、筒状部25を介して、本体部11に間接的に接続されている。筒状部25は、フランジ部20の第1面20aから、フランジ部20の軸線20Xに沿った方向に延び出している。筒状部25の軸線25Xは、フランジ部20の軸線20Xと一致している。筒状部25は、フランジ部20に固定されている。図示された例では、筒状部25は、フランジ部20と一体に形成されている。筒状部25は、本体部11に対して本体部11の周方向に回転不能に、本体部11に接続されている。これにより、フランジ部20を減速機1のフレーム3に固定することで、本体部11のフレーム3に対する回転を防止することができる。この結果、回転軸2のフレーム3に対する回転も防止することができる。
【0032】
図示された例では、キー11kは、本体部11の内周面から突出しているだけでなく、本体部11の外周面からも突出している。筒状部25は、キー11kと係合するキー溝25kを有する。キー11kが筒状部25のキー溝25kと係合することで、筒状部25の本体部11に対する回転が防止される。また、筒状部25には、筒状部25をその厚み方向に(筒状部25の軸線25Xを中心とする円の径方向に)貫通するネジ孔25hが形成されている。ネジ孔25hにネジ26を螺合させて、ネジ26の先端を本体部11に押し当てることで、筒状部25の本体部11に対する移動を抑制することができる。
【0033】
フランジ部20に本体部11を接続可能な筒状部25が接続されていることにより、治具10を減速機1の回転軸2の寸法に合わせて設計することが容易である。すなわち、治具10のうち本体部11のみを(より具体的には、本体部11の内寸のみを)回転軸2の寸法に合わせて設計すればよい。あるいは、従来の手巻きハンドルに筒状部25を介してフランジ部20を接続して、治具10を作製することができる。
【0034】
図示された例では、筒状部25は本体部11に対して着脱可能に接続している。これにより、回転軸2の寸法に合わせて本体部11を交換することができる。また、フランジ部20が本体部11に対して着脱可能であることにより、フランジ部20を本体部11から取り外して治具10をコンパクトにすることができる。この結果、治具10の持ち運びが容易になる。なお、
図13及び
図14では、図示の明確化のため、ネジ28の図示を省略している。また、
図13及び
図14に示す例では、ハンドル30は本体部11に接続している。
【0035】
<変形例4>
また、
図15及び
図16に示すように、ハンドル30は取っ手33を有していてもよい。図示された例では、ハンドル30は、ハンドル基部31と取っ手33とを含む。ハンドル基部31は、本体部11の外周面又はフランジ部20から本体部11の径方向外側に延び出す。取っ手33は、ハンドル基部31から本体部11の径方向と交差する方向に延び出す。取っ手33は、本体部11の第2端部11bから第1端部11aに向かう方向に、ハンドル基部31から延び出している。図示された例では、取っ手33は、ハンドル基部31に垂直に接続している。ハンドル30がこのような取っ手33を含むことにより、ハンドル30の操作が容易になる。ハンドル基部31は、本体部11またはフランジ部20に着脱可能に接続されていてよい。これにより、ハンドル30を本体部11またはフランジ部20から取り外して治具10をコンパクトにすることができる。この結果、治具10の持ち運びが容易になる。また、取っ手33は、ハンドル基部31に着脱可能に接続されてよい。これにより、ハンドル基部31から取っ手33を取り外して治具10をさらにコンパクトにすることができ、治具10の持ち運びがさらに容易になる。
【0036】
<変形例5>
また、
図17に示すように、治具10は、複数のハンドル301,302を有していてもよい。図示された例では、治具10は、第1ハンドル301及び第2ハンドル302を含む。第1ハンドル301及び第2ハンドル302は、それぞれ、本体部11の外周面又はフランジ部20から本体部11の径方向外側に延び出す。本体部11の軸線11Xに沿った方向に見て、第1ハンドル301及び第2ハンドル302は、本体部11の軸線11Xに対して点対称となる位置において本体部11又はフランジ部20に接続している。このような治具10によれば、治具10を容易に回転させることができる。図示された例では、各ハンドル301,302は、ハンドル基部31と取っ手33とを有する。
【0037】
<変形例6>
また、
図18に示すように、治具10は、ハンドル30;301,302の取っ手33を減速機1のフレーム3に、回転軸2の周方向に当接させることで、回転軸2をフレーム3に対して固定してもよい。図示された例では、フレーム3の第1面3aは凹凸を有する。第1面3aは、回転軸2の径方向に延びる面3sを含む。取っ手33は、回転軸2の中心軸線2Xに沿った方向に見て、ハンドル30;301,302を中心軸線2Xの周りで回転させた際の取っ手33の円形の軌跡33Lと上記径方向に延びる面3sとが交差するように、ハンドル基部31上に位置決めされている。
【0038】
次に、取っ手33を利用した回転軸2の固定方法について説明する。まず、治具10を準備する。治具10は、本体部11と、キー11kと、ハンドル基部31及び取っ手33を含むハンドル30;301,302と、を有していればよい。治具10は、フランジ部20及びネジ28を含まなくてもよい。
【0039】
次に、取っ手33をフレーム3の第1面3aに向けた状態で、回転軸2のキー溝2kにキー11kが係合するように、回転軸2の第1端部2aを本体部11に挿入する。これにより、治具10の回転軸2に対する回転が防止される。
【0040】
次に、回転軸2が本体部11に挿入された状態で、ハンドル30;301,302を回転軸2と共に回転させて、取っ手33をフレーム3の上記径方向に延びる面3sに当接させる。これにより、フレーム3に対する治具10の回転が防止され、フレーム3に対する回転軸2の回転も防止される。
【0041】
なお、このような治具は、
図19に示すように、
図18に示す向きとは反対向きに回転軸2に取り付けることで(すなわち、取っ手33がフレーム3とは反対側を向くように、回転軸2に取り付けることで)、手巻きハンドルとして使用することもできる。
【0042】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例の減速機用回転軸固定治具10は、エレベータの巻上機に組まれた減速機1の回転軸2に着脱可能に取り付けられて回転軸2を減速機1のフレーム3に対して固定する。治具10は、本体部11と、キー11kと、フランジ部20と、ネジ28と、ハンドル30;301,302と、を備える。本体部11は、筒状であり、回転軸2が挿入される。キー11kは、本体部11の内周面から突出して回転軸2に形成されたキー溝2kと係合する。フランジ部20は、本体部11の一端において、本体部11の端面又は外周面から、本体部11の径方向の外側に延び出す。フランジ部20には、その厚み方向に貫通する第1貫通孔21が形成されている。ネジ28は、第1貫通孔21に挿入される。ハンドル30;301,302は、本体部11の外周面又はフランジ部20から、本体部11の径方向の外側に延び出す。このような治具10を用いることで、減速機1の回転軸2に取り付けられた軸受けやカップリング5等の取り外し作業を一人で行うことができ、取り外し作業を効率化することができる。
【0043】
以上に説明した変形例において、ハンドル30;301,302にネジ28,29を挿通して保持するための第2貫通孔32が形成されている。この場合、第1貫通孔21及び第2貫通孔32に互いに異なる寸法のネジ28,29を保持させることができ、これらのネジ28,29の中からフレーム3のネジ孔3hの寸法に合ったネジを選択することができる。これにより、取り外し作業をさらに効率化することができる。
【0044】
以上に説明した変形例において、フランジ部20は、本体部11と別体に形成されている。フランジ部20は、本体部11に対して当該本体部11の周方向に回転不能に、当該本体部11に接続されている。この場合も、フランジ部20を減速機1のフレーム3に固定することで、回転軸2のフレーム3に対する回転も防止することができる。また、この場合、本体部11を回転軸2の寸法に合わせて設計することが容易である。
【0045】
さらに、この変形例において、フランジ部20は、本体部11に対して着脱可能に接続している。この場合、回転軸2の寸法に合わせて本体部11を交換することができる。また、フランジ部20を本体部11から取り外して治具10をコンパクトにすることができる。
【0046】
以上に説明した変形例において、フランジ部20には、本体部11が挿入される筒状部25が接続されている。筒状部25は、本体部11に対して当該本体部11の周方向に回転不能に、当該本体部11に接続されている。この場合も、フランジ部20を減速機1のフレーム3に固定することで、回転軸2のフレーム3に対する回転も防止することができる。また、この場合、本体部11を回転軸2の寸法に合わせて設計することが容易である。また、この場合、従来の手巻きハンドルに筒状部25を介してフランジ部20を接続して、治具10を作製することができる。
【0047】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例において、ハンドル30;301,302は、本体部11の外周面又はフランジ部20に着脱可能に接続している。この場合、ハンドル30;301,302を取り外して治具10をコンパクトにすることができる。
【0048】
以上に説明した変形例において、ハンドル30;301,302は、本体部11の外周面又はフランジ部20から本体部11の径方向の外側に延び出すハンドル基部31と、ハンドル基部31から上記径方向と交差する方向に延び出す取っ手33とを含む。取っ手33は、ハンドル基部31に着脱可能に接続している。ハンドル30;301,302が取っ手33を含むことにより、ハンドル30;301,302の操作が容易になる。また、取っ手33をハンドル基部31から取り外すことで、治具10をコンパクトにすることができる。
【0049】
以上に説明した変形例において、治具10は、本体部11の外周面又はフランジ部20から本体部11の径方向の外側に延び出す第1ハンドル301及び第2ハンドル302を含む。本体部11の軸線11Xに沿った方向に見て、第1ハンドル301及び第2ハンドル302は、上記軸線11Xに対して点対称となる位置において本体部11又はフランジ部20に接続している。この場合、ハンドル301,302の操作が容易になる。
【0050】
以上に説明した一実施の形態及びその変形例の減速機用回転軸固定方法は、エレベータの巻上機に組まれた減速機の回転軸を当該減速機のフレームに対して固定する方法である。上記方法は、治具10を準備する工程を含む。治具10は、回転軸2が挿入される筒状の本体部11と、本体部11の内周面から突出して回転軸2に形成されたキー溝2kと係合するキー11kと、ハンドル30;301,302と、を含む。ハンドル30;301,302は、本体部11の外周面から本体部11の径方向の外側に延び出すハンドル基部31と、ハンドル基部31から本体部11の軸線11Xに沿って延び出す取っ手33と、を有する。上記方法は、また、取っ手33がフレーム3に対面するように、且つ、キー溝2kにキー11kが係合するように、回転軸2を本体部11に挿入する工程と、回転軸2が本体部11に挿入された状態で、ハンドル30;301,302を回転軸2と共に回転させて、取っ手33をフレーム3に回転軸2の周方向に当接させる工程と、を備える。このような方法によれば、減速機1の回転軸2に取り付けられた軸受けやカップリング5等の取り外し作業を一人で行うことができ、取り外し作業を効率化することができる。
【0051】
本発明の実施形態といくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内でこれらの実施形態及び変形例を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:減速機、2:回転軸、2a:第1端部、2b:第2端部、2k:キー溝、2X:中心軸線、3:フレーム、3a:第1面、3b:第2面、3h:ネジ孔、3s:面、5:カップリング、6:ギヤプーラ、7:押しネジ、7x:中心軸線、8:保持部、10:治具、11:本体部、11a:第1端部、11b:第2端部、11X:軸線、11k:キー、12:凸部、20:フランジ部、20a:第1面、20b:第2面、20X:軸線、21:第1貫通孔、22:凹部、25:筒状部、25h:ネジ孔、25k:キー溝、26,28,29:ネジ、30,301,302:ハンドル、31:ハンドル基部、32:第2貫通孔、33:取っ手、35:固定具、40:キャップ、41:ネジ
【要約】 (修正有)
【課題】軸受けやカップリング等の取り外し作業を一人で行うことを可能にする。
【解決手段】減速機用回転軸固定治具10は、エレベータの巻上機に組まれた減速機1の回転軸に着脱可能に取り付けられて回転軸2を減速機1のフレーム3に対して固定する。治具10は、本体部11と、キー11kと、フランジ部20と、ネジ28と、ハンドル30と、を備える。本体部11は、筒状であり、回転軸2が挿入される。キー11kは、本体部11の内周面から突出して回転軸2に形成されたキー溝2kと係合する。フランジ部20は、本体部11の一端において、本体部11の端面又は外周面から、本体部11の径方向の外側に延び出す。フランジ部20には、その厚み方向に貫通する第1貫通孔が形成されている。ネジ28は、第1貫通孔に挿入される。
【選択図】
図1