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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】複層管
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/06 20060101AFI20241127BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
F16L11/06
B32B1/08 B
H01L21/304 648K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024045618
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-05-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】江畠 将彦
(72)【発明者】
【氏名】乾 成裕
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕三
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133167(WO,A1)
【文献】特開2022-159129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/06
B32B 1/08
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体洗浄液の輸送に用いられる複層管であって、
最内層を構成し、ポリオレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂を主成分とする第1層と、
前記第1層の外側に配置され、顔料を含む第2層と、
前記第1層と前記第2層の間に配置された芯材層と、を備え、
前記芯材層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、
前記芯材層は、顔料を含み、
前記芯材層における前記顔料の含有量は、0.05wt%以上、1.00wt%以下であり、
前記第2層における前記顔料の含有量は、0.30wt%以上、3.0wt%以下である、
複層管。
【請求項2】
前記顔料は、有機顔料、無機顔料、または蛍光顔料のいずれか1つ以上から選択される、
請求項1に記載の複層管。
【請求項3】
SEMI F-57に準拠して測定されるカルシウム溶出量が30μg/m未満である、
請求項1に記載の複層管。
【請求項4】
前記第1層と前記第2層の色差は、0.5以上である、
請求項1に記載の複層管。
【請求項5】
前記第2層は、接着性ポリオレフィン樹脂である、
請求項1に記載の複層管。
【請求項6】
前記第2層の厚みは、10μm以上、300μm以下である、
請求項1に記載の複層管。
【請求項7】
前記第2層の外側に配置されたガスバリア層を更に備えた、
請求項1に記載の複層管。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンである、
請求項1に記載の複層管。
【請求項9】
前記第1層には、顔料が含まれていない、
請求項1~8のいずれか1項に記載の複層管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複層管に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置又は液晶表示装置等の精密デバイスの製造において、洗浄等の湿式工程で極めて高純度に精製された超純水が用いられている。金属イオン等が所定濃度以上水中に存在していると、ウエハ表面等に金属が吸着することで精密デバイスの品質に悪影響を及ぼすため、超純水中における不純物の制限が徹底して行われている。
【0003】
超純水への不純物の混入は、超純水の輸送ラインを構成する配管においても生じる。配管の材質としては、ガスバリア性に優れたステンレス鋼等の金属が用いられたこともあるが、配管からの金属溶出の影響を考慮すると、樹脂を用いることが好ましいとされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、超純水の配管用の多層管であって、フッ素樹脂からなり、超純水に接触する第1の樹脂層と、ガス不透過性樹脂からなり、前記第1の樹脂層の外周面に設けられた第2の樹脂層とを備えることを特徴とする多層管が開示されている。さらに、第2の樹脂層の外周面に、前記第2の樹脂層を保護する第3の樹脂層が設けられ、当該第3の樹脂層としてポリエチレンが用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-234576公報
【文献】特開2021-55764号公報
【文献】特開2023-46656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体工場内で使用される超純水用途の管は、更新期間が通常の配管よりも早く、10~15年で交換する必要がある。
【0007】
しかしながら、更新前後を分かり易くするために、管を顔料などで着色した場合、溶出性能に影響が出るため、従来のPVDFを用いた管では、着色されていないものを使用せざるを得なかった。そのため、更新しても同色であることから施工前後での区別が難しかった。
【0008】
本開示は、更新前と更新後の管を容易に判別可能な複層管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の開示にかかる複層管は、半導体洗浄液の輸送に用いられる複層管であって、第1層と、第2層と、を備える。第1層は、最内層を構成し、ポリオレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂を主成分とする。第2層は、第1層の外側に配置され、顔料を含む。
【0010】
このように、第1層の外側の第2層に顔料を含めることで、更新前の管と更新後の管に色差を設けることができる。そのため、更新の前後の管を容易に判別することができる。また、半導体工場等において、常温水と高温水を流す管の間で色を異ならせることで、温度の異なる液体が流れる管の判別を容易に行うことができる。
【0011】
第2の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、顔料は、有機顔料、無機顔料、または蛍光顔料のいずれか1つから選択される。
【0012】
これにより、第2層に着色して、更新前と更新後における管の間に色差を設けることができる。
【0013】
第3の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、SEMI F-57に準拠して測定されるカルシウム溶出量が30μg/m未満である。
【0014】
これにより、超純水の輸送用途に用いることが可能な複層管を提供できる。
【0015】
第4の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、第1層と第2層の色差は、0.5以上である。
【0016】
第1層と第2層に色差を設けることにより、第2層を顔料によって着色することで更新前と更新後における管の識別ができるとともに、第1層を、顔料を含まないクリーン層とできるため、超純水用途として好ましい複層管を提供することができる。
【0017】
第5の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、第2層は、接着性ポリオレフィン樹脂である。
【0018】
これにより、第2層を接着層とすることによって、第2層の外側に別の層を設けることできる。また、第2層の外側に設けた別の層に顔料による影響を与えずに、着色された複層管を提供することができる。
【0019】
第6の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、第2層の厚みは、10μm以上、300μm以下である。
【0020】
これにより、所定の厚みの着色した第2層を設けることができる。
【0021】
第7の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、第2層の外側に配置されたガスバリア層を更に備える。
【0022】
これにより、外部から第1層への酸素の侵入を抑制することができる。
【0023】
第8の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、第1層と第2層の間に配置された芯材層を更に備える。芯材層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む。
【0024】
これにより、複層管の強度を向上することができる。
【0025】
第9の開示にかかる複層管は、第8の開示にかかる複層管であって、芯材層は、顔料を含む。
【0026】
これにより、第1層、芯材層、および第2層の間で色差を設けることができ、各層の厚みが規定範囲内であるかを判別することができ、品質管理を行い易く出来る。
【0027】
第10の開示にかかる複層管は、第1の開示にかかる複層管であって、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレンである。
【0028】
第1層の主成分としてポリエチレンを用いることによって、低分子量成分の含有量を抑制して超純水への有機成分の溶出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、更新前と更新後の管を容易に判別可能な複層管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示にかかる実施形態における複層管を示す断面図である。
図2】本開示にかかる実施形態の他の例における複層管を示す断面図である。
図3】本開示にかかる実施形態の他の例における複層管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本開示にかかる実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
本実施形態の複層管は、半導体洗浄液の輸送に用いられる複層管であって、第1層と、第2層と、を備える。第1層は、最内層を構成し、ポリオレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂を主成分とする。第2層は、第1層の外側に配置され、顔料を含む。
【0033】
(複層管1、2、3)
図1は、複層管1の断面図である。図2は、複層管1の他の例である複層管2を示す断面図である。図3は、複層管1の他の例である複層管3を示す断面図である。
【0034】
図1に示す複層管1は、クリーン層11と、芯材層12と、を含む。クリーン層11は、複層管1の内表面1bを形成する。クリーン層11は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む。芯材層12は、クリーン層11の外側に配置されている。芯材層12は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、顔料を含む。詳しくは後述するが、顔料を用いて着色することによって、芯材層12は、クリーン層11に対して色差が設けられている。複層管2の外表面2cは、芯材層12によって形成される。複層管1では、クリーン層11が第1層の一例に対応し、芯材層12が第2層の一例に対応する。
【0035】
図2に示す複層管2は、クリーン層11と、芯材層12と、接着層13と、ガスバリア層14と、を含む。複層管2では、複層管1の芯材層12の外側に接着層13を介してガスバリア層14が配置されている。接着層13は、芯材層12の外表面に配置され、ガスバリア層14は、接着層13の外側に配置されている。クリーン層11は、複層管2の最内層を構成する。クリーン層11は、複層管2の内表面2bを形成する。ガスバリア層14は、複層管2の外表面2cを形成する。複層管2では、クリーン層11が第1層の一例に対応し、接着層13が第2層の一例に対応する。
【0036】
図3に示す複層管3は、クリーン層11と、接着層13と、ガスバリア層14と、を含む。複層管3は、複層管2と異なり、芯材層12が設けられておらず、クリーン層11の外側表面に接着層13を介してガスバリア層14が配置されている。クリーン層11は、複層管3の最内層を構成する。クリーン層11は、複層管3の内表面3bを形成する。ガスバリア層14は、複層管3の外表面3cを形成する。複層管3では、クリーン層11が第1層の一例に対応し、接着層13が第2層の一例に対応する。
【0037】
以下、各層について説明する。
【0038】
(クリーン層11)
クリーン層11は、複層管1、2、3の最内層を構成する。クリーン層11は、複層管1、2、3の内表面1b、2b、3bを形成する。クリーン層11は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む。主成分とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。主成分とは、少なくとも含有率が50%である成分である。クリーン層11におけるポリオレフィン系樹脂の含有量の下限は50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましく、90質量%がさらに好ましいこともあり、95質量%がさらに好ましいこともある。
【0039】
クリーン層11に主成分として含まれるポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、オレフィンに由来するモノマー単位を含有する重合体であればよい。例えば、ポリエチレン系樹脂、エチレン-カルボン酸アルケニルエステル共重合体樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)系樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、半導体洗浄液用配管の強度等を向上させる観点から、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の中でも、低分子量成分の含有量を抑制して超純水への有機成分の溶出を抑制する等の観点から、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0040】
なお、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン及びランダムポリプロピレン等が挙げられる。ブロックポリプロピレン及びランダムポリプロピレンにおける共重合成分としては、通常エチレンが挙げられる。ポリブテン系樹脂としては、ポリブテン-1等が挙げられる。
【0041】
ポリエチレン系樹脂は、必要に応じてα-オレフィンと共重合させても良い。ポリエチレン系樹脂に対して共重合させるα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ブテン-1-ヘキセン、1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン、1-ブテン-1-オクテン等が挙げられる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂は、1種又はそれ以上の遷移金属誘導体を含む触媒を使用して重合される。長期耐久性を担保するという観点から、本実施の形態においてはチーグラー触媒を用いて重合が行われる。チーグラー触媒を用いてポリエチレン系樹脂を重合する際は、塩素系触媒を当業者によって適宜決定される量で用いて、多段重合し、その後、塩素系触媒を中和するための中和剤と、好ましくは酸化防止剤も併せて加える。本発明で用いられるチーグラー触媒としては、周知のものであり、例えば、特開昭53-78287号、特開昭54-21483号、特開昭55-71707号、特開昭58-225105号などの各公開公報に記載された触媒系が使用される。
【0043】
具体的には、トリハロゲン化アルミニウム、Si-O結合を有する有機珪素化合物及びマグネシウムアルコラートを共粉砕することによって得られる共粉砕生成物に四価のチタン化合物を接触することによって得られる固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒系が挙げられる。
【0044】
固体触媒成分中にはチタン原子が1~15重量%含まれるものが好ましい。有機珪素化合物としてはフェニル基、アラルキル基を有するもの、例えば、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシランなどが好ましい。
【0045】
共粉砕生成物を製造するにあたり、マグネシウムアルコラート1モル当りのトリハロゲン化アルミニウム及び有機珪素化合物の使用割合は、いずれも一般に0.02~1.0モルであり、特に0.05~0.20モルが好ましい。また、有機珪素化合物の珪素原子に対するトリハロゲン化アルミニウムのアルミニウム原子の割合は0.5~2.0モル比が好適である。
【0046】
共粉砕生成物を製造するためにはこの種の固体触媒成分を製造する際に一般に使われている回転ボールミル、振動ボールミル及びコロイドミルなどの粉砕機を用いて、通常行われている方法を適用すればよい。得られる共粉砕生成物の平均粒径は通常50~200μmであり、比表面積は20~200m/g である。
【0047】
以上のようにして得られた共粉砕生成物と四価のチタン化合物とを液相にて接触させることによって、固体触媒成分が得られる。固体触媒成分と組み合わせて使用される有機アルミニウム化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましく、例えば、トリエチルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウムなどが挙げられる。
【0048】
中和剤としては、たとえばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムに代表される脂肪酸金属塩およびハイドロタルサイト類が挙げられる。
【0049】
しかしながら、ステアリン酸マグネシウムやハイドロタルサイトを中和剤としてポリエチレン系樹脂の重合を行った場合、得られた樹脂を配管材に成形すると多量のアルミニウムやマグネシウムが水中へと溶出してしまうため、本実施形態としては好ましくない。
【0050】
対して、ステアリン酸カルシウムを中和剤としてポリエチレン系樹脂の重合を行った場合は、上記のようなアルミニウムやマグネシウムの金属溶出は起こらず、良好な低溶出性を得られるため、本実施形態において好ましい中和剤である。
【0051】
ポリエチレン系樹脂組成物としては、送水時の水圧に対する十分な耐圧性能が得られ、且つ、配管肉厚も薄くできるという観点から高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。高密度ポリエチレン(HDPE)の中でも、超純水用配管材の長期耐久性を担保する観点から、ISO9080、ISO1167、ISO12162においてPE100以上の耐圧クラスに分類されるHDPEがより好ましい。更にPE100以上の耐圧クラスに分類されるHDPEでも、更にパイプシステムの安全性を高めるため低速亀裂成長性への耐性(低速亀裂成耐性)が高く、且つ配管内面平滑性がより良好となるよう流動性の高いHDPEが好ましい。なお低速亀裂成長とは、配管材の傷や管と継手の接合部など応力集中により起きる破損形態を言う。
【0052】
PE100以上の耐圧クラスを満足させ、流動性の良好なポリエチレン系樹脂組成物のインデックスとして、具体的には、ポリエチレン系樹脂組成物の温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(MFR21.6)が6g/10分以上25g/10分以下であり、温度190℃、荷重5kgにおけるメルトフローレート(MFR)とMFR21.6の比であるFR(MFR21.6/MFR)が25以上60以下、密度が0.946g/cm以上0.960g/cm以下であることが好ましい。
【0053】
ポリエチレン系樹脂組成物のMFR21.6が6g/10分未満の場合、樹脂材料の流動性が低く金型転写性が落ち、配管内面の平滑性が不十分となる。一方、MFR21.6が25g/10分を超える場合、PE100を満足させる樹脂設計が困難となる。また、FRが25未満の場合、ポリエチレン系樹脂組成物の分子量分布が狭くなるため、目標とするMFR21.6と低速亀裂耐性との両立が困難となる。一方、FRが60を超える場合、ポリエチレン系樹脂組成物耐衝撃性が低下し、配管材の安全性が損なわれる恐れがある。密度については、0.946g/cm未満の場合、耐圧性能が低下しPE100に到達することが困難となる。一方、密度が0.960g/cmを超える場合、配管材の低速亀裂成耐性が低下するため、長期使用においてパイプシステムの安全性が低下する。
【0054】
更に上記ポリエチレン系樹脂組成物を達成するための樹脂組成として、具体的には、高分子量成分(A)、低分子量成分(B)の多成分から構成されることが好ましい。
【0055】
高分子量成分(A)はMFR21.6が0.05g/10分以上1.0g/10分以下、好ましくは0.1g/10分以上0.5g/10分以下、エチレン以外のα-オレフィン含有量は0.8mol%以上2.0mol%以下、好ましくは0.9mol%以上1.6mol%以下、樹脂組成物全体に対する高分子量成分(A)の含有比率が35重量%以上50重量%以下、好ましくは37重量%以上43重量%以下である。一方、低分子量成分(B)は温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR2.16)が20g/10分以上500g/10分以下、好ましくは50g/10分以上300g/10分以下である。
【0056】
ポリエチレン系樹脂組成物を構成する高分子量成分(A)のMFR21.6が0.05g/10分未満の場合、目標とするMFR21.6を達成させるためには低分子量成分のMFRを上げる必要があるが、その場合、高分量成分と低分子量成分との溶融時の粘度差が大きくなり相溶性が低下し、結果として、低速亀裂耐性を含む各種機械物性の低下や流動不安定による配管内面の荒れが発生する。一方、MFR21.6が1.0g/10分を超える場合、各種機械物性が低下し、中でも低速亀裂成長耐性が大きく低下する。α-オレフィン含有量については、0.8mol%未満の場合、低速亀裂成長耐性が低下し、2.0mol%を超える場合、ポリエチレン系樹脂組成物の剛性が下がるためPE100に到達する樹脂設計が困難である。高分子量成分(A)の含有比率については、35重量%未満の場合、配管の耐久性が低下し、50重量%を超える場合、ポリエチレン系樹脂組成物の剛性が下がるためPE100に到達する樹脂設計が困難である。
【0057】
ポリエチレン系樹脂組成物を構成する低分子量成分(B)のMFR2.16が20g/10分未満の場合、ポリエチレン系樹脂組成物の流動性が低くなるため金型転写性が落ち、配管内面の平滑性が不十分となる。一方、MFR2.16が500g/10分を超える場合、各種機械物性低下、中でも耐衝撃性の低下が大きくなる。
【0058】
なお、ここでいうα-オレフィン含有量とは、重合時にリアクターにフィードし共重合したα-オレフィンのみでなく、副生による短鎖分岐(例えばエチル分岐、メチル分岐)も含むものである。α-オレフィン含有量は、13C-NMRにより測定される。α-オレフィン含有量は、エチレンと共重合させるα-オレフィン量の供給量を増減させることにより増減させることが可能である。
【0059】
クリーン層11のSEMI F―57に準拠して測定されるカルシウム溶出量が30μg/m未満となるように、クリーン層11におけるカルシウム濃度が調整されている。クリーン層11のカルシウム濃度は、360ppm以下、好ましくは55ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。当該カルシウム濃度が60ppmを超えると、超純水へのカルシウム溶出量が過度となり、超純水の要求品質を満たすことができなくなる。
【0060】
超純水へのカルシウム溶出量をより抑制する観点から、クリーン層11のカルシウム濃度はなるべく小さい方が良いが、ポリエチレン系樹脂組成物の熱安定性や長期強度を良好に得る観点からは、微量のカルシウムの混入は免れない。
【0061】
すなわち、チーグラー触媒を用いて重合されたポリエチレン系樹脂へと添加される中和剤の添加量が不十分である場合、触媒残渣が活性なまま樹脂中に存在し、ポリエチレン系樹脂組成物の熱安定性や長期強度が低下するおそれがある。
【0062】
したがって、本実施形態においては触媒残渣を中和するために必要最低量の中和剤を添加することが不可欠である。上記内容を考慮すると、クリーン層11のカルシウム濃度は10ppm以上、好ましくは13ppm以上、より好ましくは15ppm以上、さらに好ましくは20ppm以上である。
【0063】
クリーン層11の210℃での酸化誘導時間(OIT)は、熱安定性を確保する観点から20分以上であることが好ましい。210℃での酸化誘導時間が20分未満である場合、ポリエチレン系樹脂を熱加工した際に樹脂が劣化し、長期強度が低下したり劣化物に由来するパーティクルが増加したりするおそれがあり、本実施形態として好ましくない。
【0064】
ポリエチレン系樹脂を配管材として用いた際の長期強度の評価方法として、熱間内圧クリープ試験が広く用いられる。超純水用配管材の長期強度を十分に確保する観点から、クリーン層11を配管材として成形した場合の熱間内圧クリープ性能としては、上記配管材に80℃にて5.0MPaの円周応力を負荷した際に、上記配管材が3,000時間以上破壊しないことが好ましい。
【0065】
ポリエチレン系樹脂組成物の材料特性は、ISO9080、ISO1167、ISO12162規格に記載されている「PE100」以上の耐圧性能を有することがより好ましい。なお、「PE100」とは熱間内圧クリープ試験において、最高温度と最低温度が50℃以上離れた異なる3水準の温度で、それぞれ応力-破壊時間曲線の測定を少なくとも9、000時間まで行い、重相関平均により20℃での50年後の最小保証応力を外挿により推定した値のLPLの値が、ISO12162に規定されている分類表で10MPa以上11.19MPa以下であるポリエチレンをいう。
【0066】
クリーン層11は酸化防止剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。なお、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤及びラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0067】
フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン2-イルアミノ]フェノール、及びジエチル[{3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル}メチル]ホスフォネート等が挙げられる。
【0068】
フェノール系酸化防止剤を用いる際は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよいが、カルシウム溶出を防ぐ観点からフェノール基以外に由来する酸素を有しないことが好ましく、例えば、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン2-イルアミノ]フェノール、4,4’ ,4’’ -(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、及び6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4'-ブチリデンビス-m-クレゾール等が挙げられる。また、酸化防止剤として、フェノール基以外に由来する酸素を有するフェノール系酸化防止剤を用いる場合には、ポリエチレン系樹脂中のカルシウム濃度が、50ppm以下が好ましい。なお、フェノール基以外に由来する酸素を有する官能基としては、エステル基、カルボニル基、カルボキシ基、エーテル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミド基、アジキシ基、スルホ基などを挙げることができる。
【0069】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト等が挙げられる。
【0070】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0071】
芳香族アミン系酸化防止剤としては、例えばジフェニルアミン系化合物、キノリン系化合物、ナフチルアミン系化合物などのモノアミン化合物や、フェニレンジアミン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物などのジアミン化合物が挙げられる。
【0072】
ジフェニルアミン系化合物としては、p-(p-トルエン・スルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4’-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル・ジフェニルアミン誘導体などが挙げられる。キノリン系化合物としては、2,2,4-トリメチル1,2-ジヒドロキノリン重合物などが挙げられる。
【0073】
ナフチルアミン系化合物としては、フェニル-α-ナフチルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0074】
フェニレンジアミン系化合物としては、N-N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミンの混合物、ジアリール-p-フェニレンジアミン誘導体またはその混合物などが挙げられる。
【0075】
ベンゾイミダゾール系化合物としては、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩などが挙げられる。
【0076】
ラクトン系酸化防止剤としては、3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物等が挙げられる。クリーン層11中の酸化防止剤の含有量としては、酸素の影響を抑制し好ましい強度を確保する観点から、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上が挙げられ、酸化防止剤の含有量の上限としては、例えば5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下が挙げられる。
【0077】
クリーン層11は光安定剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、全有機炭素(TOC)溶出を防ぐ観点から光安定剤を含んでいない方が好ましい。なお、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等が挙げられる。また、本実施の形態のクリーン層11は、実質的に光安定剤を含んでいない方が好ましい。ここで、実質的に含まないとは、光安定剤を積極的に添加しないことを意味し、不純物としての不可避的な混入は許容することを意味する。不純物として不可避的に混入する光安定剤の濃度は低いほど良い。
【0078】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、N-H型ヒンダードアミン化合物、N-R型ヒンダードアミン化合物及びN-OR型ヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0079】
N-H型ヒンダードアミン化合物としては、チヌビン770DF、キマソーブ2020FDL、キマソーブ944FDL(いずれも商品名、BASF社製)、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-57(いずれも商品名、アデカ社製)、サイアソーブUV-3346、サイアソーブUV-3853(いずれも商品名、サンケミカル社製)等が挙げられる。
【0080】
N-R型ヒンダードアミン化合物としては、チヌビン622SF、チヌビン765、チヌビンPA144、キマソーブ119、チヌビン111(いずれも商品名、BASF社製)、サボスタブUV119(商品名、サボ社製)、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-52(いずれも商品名、アデカ社製)等が挙げられる。
【0081】
N-OR型ヒンダードアミン化合物としては、チヌビン123、チヌビン5100、チヌビンNOR371FF、フレームスタブNOR116FF(いずれも商品名、BASF社製)等が挙げられる。
【0082】
クリーン層11は紫外線吸収剤(UVA)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。なお、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サルマレート系紫外線吸収剤、ベンゾコート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、クエンチャー等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ポリエチレン又はポリプロピレンに対しては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0083】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0084】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Sumisorb200、住化ケムテックス(株)製)、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(Tinuvin326、BASF社製)、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(Tinuvin327、BASF社製)、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin328、BASF社製)等が挙げられる。
【0085】
クリーン層11のポリエチレン系樹脂組成物の密度は、ポリエチレン系樹脂組成物の剛性を良好に得る観点から、好ましくは0.946g/cm以上、より好ましくは0.947g/cm以上、さらに好ましくは0.948g/cm以上が挙げられる。また、当該密度は、ポリエチレン系樹脂組成物の長期耐久性および柔軟性を良好に得る観点から、好ましくは0.960g/cm以下、より好ましくは0.957g/cm以下、さらに好ましくは0.953g/cmが挙げられる。密度は、JISK6922-2:1997に準じて制定される値である。
【0086】
クリーン層11のポリエチレン系樹脂組成物の温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(MFR21.6)は、6g/10分以上25g/10分以下が挙げられる。ポリエチレン系樹脂組成物の加工性を良好に得る観点から、当該MFR21.6は、好ましくは8g/10分以上、より好ましくは12g/10分以上、さらに好ましくは15g/分以上が挙げられる。また、樹脂の長期耐久性を良好に得る観点から、当該MFR21.6は、好ましくは22g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下が挙げられる。MFR21.6は、JISK6922-2:1997に準じて制定される値である。
【0087】
クリーン層11の内面平滑性(算術平均粗さRa)は特に限定されず、例えば0.50μm以下が挙げられる。配管の低溶出性を良好に得る観点から、クリーン層11の内面平滑性は好ましくは0.40μm以下、より好ましくは0.35μm以下が挙げられる。
【0088】
クリーン層11と芯材層12の厚みの合計に対する、クリーン層11の厚みの比は、0.011以上、0.500以下である方が好ましい。
【0089】
クリーン層11の厚みt1は、0.3mm以上、4mm以下である方が好ましい。
【0090】
(芯材層12)
芯材層12は、クリーン層11の外側に配置されている。本実施形態では、芯材層12は、複層管1と複層管2に用いられている。芯材層12は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む。芯材層12に用いられるポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、上述のクリーン層11に用いられるポリオレフィン系樹脂として挙げたものの中から適宜選択することができる。上述のポリオレフィン系樹脂の中でも、低分子量成分の溶出を抑制する観点、及び/又は、薬剤により配管洗浄した際の耐久性の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。芯材層12に用いられるポリオレフィン系樹脂は、クリーン層11に用いられるポリオレフィン系樹脂と同種であってもよいし異種であってもよいが、両層が互いに接触して積層される場合は、両層の密着性を向上させて好ましい強度を発現させる観点からは、同種のポリオレフィン系樹脂であることがより好ましい。
【0091】
芯材層12は、顔料を含む。顔料としては、従来公知の有機顔料、無機顔料、体質顔料などがいずれも使用でき、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、イソインドリノン系、アゾメチンアゾ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系などが、無機顔料としては、例えば、カーボンブラック系、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、スピンネル型焼成顔料、クロム酸鉛系、クロム酸バーミリオン系、紺青系、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末などが、体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム系、硫酸バリウム系、酸化珪素系、水酸化アルミニウム系などが挙げられる。顔料は、芯材層12が所定の色となるように単独、または組み合わせて使用される。
【0092】
芯材層12の色は、クリーン層11と芯材層12の色差ΔEが、0.5以上に設定されている。色差ΔEは、1.0が好ましく、2.0以上がより好ましい。例えば、クリーン層は顔料を含んでいないため、ポリエチレンのナチュラル色(乳白色)に設定し、芯材層12を青色に設定することができる。また、芯材層12を黄色系に設定してもよい。
【0093】
芯材層12における顔料の含有量は、上記色差を設けることができれば特に限定されるものではないが、0.05wt%以上、1.00wt%以下が好ましい。なお、0.05wt%よりも小さい場合、更新の前後において色による管の見分けが付きにくくなることがあり、また、クリーン層11と芯材層12の見分けが付きにくくなることがあるためである。
【0094】
芯材層12の材料(ポリオレフィン系樹脂組成物)の、EMIF-57に準拠して測定されるカルシウム溶出量としては、60℃の使用環境に対する半導体洗浄液用配管の強度を確保する観点から、好ましくは30μg/m2以上、より好ましくは50μg/m2以上、一層好ましくは70μg/m2以上、より一層好ましくは80μg/m2以上、特に好ましくは90μg/m2以上、より特に好ましくは95μg/m2以上が挙げられる。
【0095】
本発明の複層管1、2は、カルシウム及び有機成分の溶出抑制効果に優れているため、芯材層12の材料にカルシウムを多量に含んでいても、効果的にカルシウムの溶出を抑制することができる。このような観点から、上記カルシウム溶出量の好適な例としては、上記の範囲の中でも、80μg/m2以上、90μg/m2以上、又は95μg/m2以上が挙げられる。また、上記カルシウム溶出量の上限としては特に限定されないが、カルシウムの溶出抑制の観点から、120μg/m2以下、110μg/m2以下、又は100μg/m2以下が挙げられる。また、芯材層12の材料(ポリオレフィン系樹脂組成物)中のカルシウム濃度としては、上記のカルシウム溶出量を満たす限りにおいて特に限定されないが、60℃の使用環境に対する半導体洗浄液用配管の強度を確保する観点から、例えば20ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上、一層好ましくは60ppm以上が挙げられる。また、上記カルシウム濃度範囲の上限としては、含まれているカルシウム自体が破壊の起点となることによる強度不足を抑制する観点、及びカルシウム及び有機成分の溶出抑制の観点から、例えば200ppm以下、好ましくは150ppm以下、より好ましくは130ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下が挙げられる。
【0096】
芯材層12の材料(ポリオレフィン系樹脂組成物)の、EMIF-57に準拠して測定される有機成分(TOC)溶出量としては、例えば30000μg/m2超が挙げられる。本発明の複層管2、3は、カルシウム及び有機成分の溶出抑制効果に優れているため、芯材層12の材料に有機成分を多量に含んでいても、効果的に有機成分の溶出を抑制することができる。このような観点から、上記有機成分溶出量の好適な例としては、31000μg/m2以上、好ましくは31500μg/m2以上が挙げられる。また、上記有機成分溶出量の上限としては特に限定されないが、有機成分の溶出抑制の観点から、例えば35000μg/m2以下、好ましくは34000μg/m2以下、より好ましくは33000μg/m2以下、更に好ましくは32000μg/m2以下が挙げられる。
【0097】
芯材層12は、酸化防止剤を含んでいることが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤及びラクトン系酸化防止剤等が挙げられる。芯材層12中の酸化防止剤の含有量としては、酸素の影響を抑制し好ましい強度を確保する観点から、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上が挙げられ、酸化防止剤の含有量の上限としては、例えば5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下が挙げられる。
【0098】
なお、芯材層12の厚みt2は、1.7mm以上、12mm以下である方が好ましい。
【0099】
図1に示すように、芯材層12が外周面1cを形成する場合、複層管1の外側から芯材層12の色を視認することができる。これにより、更新前の管と更新後の管で芯材層12の色を変更することで、更新前後において管を識別することができる。
【0100】
また、クリーン層11と芯材層12の間に色差を設けることで、各々の厚みを容易に計測でき、品質を管理し易くなる。
【0101】
(接着層13)
図2に示すように、接着層13は、芯材層12の外側に配置される。接着層13は、ガスバリア層14を芯材層12の外側に接着する。接着層13の材料としては、好ましい強度を発現させる観点からは、同種のポリオレフィン系樹脂であることがより好ましい。例えば、無水マレイン酸変性の接着性ポリエチレンを用いることができる。
【0102】
接着層13は、接着性ポリオレフィンを主成分として含み、顔料を更に含む。接着性ポリオレフィンとしては、例えば、変性ポリオレフィンを用いることができる。接着層13に顔料を含めることによって、接着層13を着色することができる。顔料は、有機顔料、無機顔料、蛍光顔料、およびこれらの組み合わせから選択することができる。顔料として特に限定されないが、無機顔料として好ましい化合物としては、酸化チタン、酸化鉄、シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、およびマイカ等を挙げることができる。また、有機顔料として好ましい化合物としては、アゾ、フタロシアニン系である不溶性アゾ、および銅フタロシアニンブルーを挙げることができる。蛍光顔料として好ましい化合物としては、バリウム、ストロンチウム、および亜鉛の硫化物を挙げることができる。顔料としてマイカを用いる場合、マイカを粉上にしたマイカパウダーを、接着性ポリエチレンに混合することが好ましく、マイカパウダーの平均粒径は、300μm以下が好ましく、100μm以下がさらに好ましい。接着層13は、顔料に、例えばマイカや酸化鉄を含めることによって青メタリックに着色することができる。
【0103】
接着層13の厚みt3は、10μm以上、300μm以下である方が好ましい。
【0104】
接着層13における顔料の濃度は、例えば0.30wt%以上3.0wt%以下が好ましく、0.8wt%以上2.5wt%以下がより好ましく、1.0wt%以上2.0wt%以下が更により好ましい。顔料の濃度が0.3wt%よりも小さい場合、管の色の違いを見分けにくくなることがあり、3.0wt%よりも大きい場合、接着性能が低下することがある。
【0105】
図3に示すような複層管3における接着層13とクリーン層11の間の色差は、0.5以上が好ましい。また、クリーン層11と接着層13の間に芯材層12が配置されている図2の複層管2の場合、接着層13と芯材層12の間の色差ΔEは、0.5以上が好ましい。
【0106】
例えば、図2に示すような4層の複層管3の場合は、クリーン層11、芯材層12および接着層13の順に色を濃くしてもよい。なお、不純物の溶出の観点から、クリーン層11は顔料を含まず、乳白色となっている。また、クリーン層11と芯材層12の間の色差ΔEは、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。芯材層12と接着層13の間の色差ΔEは、0.5以上が好ましい。
【0107】
(ガスバリア層14)
ガスバリア層14を設けることにより、超純水中へのガス溶解を良好に抑止することができる。また、ガスバリア層14は、複層管2、3の外表面2c、3cからの酸素が最内層のクリーン層11、または芯材層12の内部へ浸透することを防止するため、複層管2、3の長期強度を向上させることもできる。また、ガスバリア層14を設けることは、超純水中へのガス溶解も良好に抑止することができる点でも好ましい。
【0108】
ガスバリア層の材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、及びポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられ、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)及びエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
【0109】
ガスバリア層14の厚みt4としては、少なくともポリエチレン系樹脂のガスバリア性を確保し得る厚さであれば特に限定されないが、例えば50μm以上、300μm以下が好ましい。
【0110】
ガスバリア層14は、透明であり、複層管2、3の外側から接着層13の色を視認することができる。これにより、更新前の管と更新後の管で接着層13の色を変更することで、更新前後において管を識別することができる。
【0111】
また、クリーン層11、芯材層12、接着層13、およびガスバリア層14において隣り合う層と色が異なっているため、各層の厚みを容易に計測でき、品質を管理し易くなる。
【0112】
(超純水用配管材の用途)
本発明にかかる実施形態の複層管は、超純水の輸送に用いることできる。具体的には、本発明にかかる実施の形態の複層管は、超純水製造装置内の配管、超純水製造装置からユースポイントに超純水を輸送する配管、及びユースポイントからの超純水返送用配管等として用いることができる。なお、本発明における超純水の定義としては、25℃での比抵抗が10MΩ・cm以上、より厳密には25℃での比抵抗が15MΩ・cm以上、さらに厳密には25℃での比抵抗が18MΩ・cm以上と定める。
【0113】
本発明にかかる実施形態の複層管は、超純水に対する要求水質が特に厳格な、原子力発電用水配管、若しくは、医薬品の製造工程、半導体素子又は液晶、より好ましくは半導体素子の製造工程における洗浄などの湿式処理工程で用いられる超純水の輸送配管であることが好ましい。当該半導体素子としても、より高い集積度を有するものが好ましく、具体的には、最小線幅65nm以下の半導体素子の製造工程で用いられることがより好ましい。半導体製造に使用される超純水の品質等に関する規格としては、例えばSEMI F75が挙げられる。
【0114】
また、本発明にかかる実施形態の複層管はポリオレフィン系樹脂層を有しているため、施工性に優れる。たとえば、比較的低温で、バット(突合せ)融着接合やEF(電気融着)接合といった融着施工を容易に行うことができる。
【0115】
(複層管の製造)
本発明にかかる実施形態の複層管は、配管材の内表面2bを形成するクリーン層11の主成分であるポリオレフィン系樹脂、および芯材層12の主成分であるポリオレフィン系樹脂を用意し、必要に応じて外側の接着層13およびガスバリア層64を構成する被覆樹脂をそれぞれ用意し、各層の厚さが所定の厚さになるように共押出成形することにより製造することができる。本発明にかかる実施形態の複層管はポリオレフィン系樹脂製であるため、安価に製造することができる。
【0116】
(他の実施の形態)
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0117】
(A)
上記実施形態では、クリーン層11はポリオレフィン系樹脂を主成分として含んでいるが、ポリオレフィン系樹脂に限らなくてもよく、クリーン層11は塩化ビニル樹脂を主成分として含んでいてもよい。また、芯材層12はポリオレフィン系樹脂を主成分として含んでいるが、ポリオレフィン系樹脂に限らなくてもよく、芯材層12は塩化ビニル樹脂を主成分として含んでいてもよい。
【0118】
(B)
上記実施形態では、クリーン層11の主成分としてポリオレフィン系樹脂を主成分として含んでいるが、ポリオレフィン系樹脂に限らず、PVDFでもよい。この場合、クリーン層11の外側に色をつけるために顔料を含む層を設ければよい。顔料を含む層の主成分は、PVDF、ポリオレフィン系樹脂、および塩化ビニル樹脂等から選択したものを用いることができる。
【0119】
(C)
上記実施形態では、芯材層12が顔料を含む。上記実施形態では、クリーン層11との間に色差を設けるために、顔料によって芯材層12が着色されているが、顔料に限らなくてもよく、クリーン層11と芯材層12に色差を設けることができればよい。例えば、芯材層12は、染料または着色剤を含み、染料または着色剤によって着色されていてもよい。また、上記実施形態では、芯材層12が着色されているが、クリーン層11が顔料、染料または着色剤等によって着色されてもよい。
【0120】
(D)
上記実施形態では、接着層13が顔料を含む。上記実施形態では、クリーン層11との間または芯材層12との間に色差を設けるために、顔料によって接着層13が着色されているが、顔料に限らなくてもよく、クリーン層11または芯材層12との間に色差を設けることができればよい。例えば、接着層13は、染料または着色剤を含み、染料または着色剤によって着色されていてもよい。
【0121】
(E)
上記実施形態では、接着層13に顔料が含まれているが、接着層13に限らなくても良く、ガスバリア層14に顔料が含まれていてもよい。しかしながら、ガスバリア層14に顔料が含まれる場合、ガスバリア性能を効率が低下するおそれがあるため、ガスバリア層14に顔料を含めず、接着層13に顔料を含める方が好ましい。
【0122】
(F)
上記実施形態における複層管3では、芯材層12および接着層13に顔料を含めているが、複層管3の外部から色を識別する観点からは、いずれか一方のみに顔料が含まれていてもよい。
【0123】
(G)
上記実施形態の図3では、複層管3は、クリーン層11、芯材層12,接着層13、およびガスバリア層14を含む4層管であるが、4層に限らなくてもよく、5層以上であってもよい。
【0124】
(実施例)
次に、実施例を用いて、本実施形態の複層管について詳細に説明する。
【0125】
本実施例では、既設の1層のPVDFで形成された管と見分けが付くか否かの確認を行った。結果を(表1)に示す。既設の1層のPVDF管は、乳白色である。
【0126】
(実施例1)
本実施例1では、図1に示す複層管1の構成を用いた。実施例1の複層管1のクリーン層11は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。クリーン層11としては、HDPE1を用いた。HDPE1としては、ノバテックHB534N(日本ポリエチレン株式会社製)を用いた。ノバテックHB534Nは、酸化防止剤も含まない、完全無添加の高密度ポリエチレンである。芯材層12では、主成分としてポリエチレンを含み、HDPE2である。HDPE2としては、ノバテックHE222W(日本ポリエチレン株式会社製)を用いた。ノバテックHE222Wは、PE100グレードの高密度ポリエチレンであり、酸化防止剤を含む。顔料として、青メタリックに着色されるフェロシアン化鉄(III)およびマイカを含む顔料(東洋カラー)を含む。
【0127】
クリーン層11と芯材層12の間の色差ΔEは、10であった。また、既設のPVDF管と実施例1の複層管を外部から視て区別できたため、表1において「〇」と示す。クリーン層11を形成する材料のプレス板の色差と、芯材層12を形成する材料の色差を計測し、クリーン層11と芯材層の色差ΔEを測定した。ΔEの測定には、測色色差計(日本電色株式会社:ZE―2000)を用いた。
【0128】
(実施例2)
本実施例2では、図1に示す複層管1の構成を用いた。実施例2の複層管1のクリーン層11は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。芯材層12は、主成分としてポリエチレンを含み、顔料として蛍光に着色されるウンベリフェロンを含む。
【0129】
クリーン層11と芯材層12の間の色差ΔEは、実施例1と同様に測定を行った結果、8であり、既設のPVDF管と実施例2の複層管を外部から視て区別できた。
【0130】
(実施例3)
本実施例3では、図3に示す複層管3の構成を用いた。実施例3の複層管3のクリーン層11は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。接着層13は、主成分として変性ポリエチレンであるアドマー NF528(三井化学株式会社製)を含み、顔料として青メタリックに着色されるフェロシアン化鉄(III)およびマイカを含む顔料(東洋カラー)を含む。ガスバリア層14の材料は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)である。
【0131】
クリーン層11と接着層13の間の色差ΔEは、10であり、既設のPVDF管と実施例3の複層管を外部から視て区別できた。クリーン層11と接着層13の間の色差ΔEは、クリーン層11を形成する材料のプレス板の色差と、クリーン層11、接着層13、およびガスバリア層14を積層して形成したプレス板の色差と、を計測することによって測定した。なお、接着層13の色はガスバリア層の外側から計測された。
【0132】
(実施例4)
本実施例4では、図3に示す複層管3の構成を用いた。実施例4の複層管3のクリーン層11は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。接着層13は、主成分としてアドマー NF528(三井化学株式会社製を含み、顔料として蛍光に着色されるウンベリフェロンを含む。ガスバリア層14の材料は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)である。
【0133】
クリーン層11と接着層13の間の色差ΔEは、実施例3と同様に測定を行った結果、8であり、既設のPVDF管と実施例4の複層管を外部から視て区別できた。
【0134】
(実施例5)
本実施例5では、図2に示す複層管2の構成を用いた。実施例5の複層管2のクリーン層11は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。実施例5の複層管2の芯材層12は、主成分として、ポリエチレンを含み、顔料として薄青色に着色されるシアン系顔料である水色顔料を含む。接着層13は、主成分としてアドマー NF528(三井化学株式会社製)を含み、顔料として青メタリックに着色されるフェロシアン化鉄(III)およびマイカを含む顔料(東洋カラー)を用いた。ガスバリア層14の材料は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)である。
【0135】
クリーン層11と接着層13の間の色差ΔEは、実施例3と同様の測定を行った結果、10であり、既設のPVDF管と実施例5の複層管を外部から視て区別できた。また、芯材層12と接着層13の間の色差ΔEは、7であった。芯材層13と接着層13の色差ΔEは、芯材層13を形成する材料のプレス板の色差と、クリーン層11、接着層13、およびガスバリア層14を積層して形成したプレス板の色差と、を計測することによって測定した。クリーン層11と芯材層12の間の色差ΔEは、実施例1と同様に測定を行った結果、1.6であった。
【0136】
(実施例6)
本実施例6では、図2に示す複層管2の構成を用いた。実施例5の複層管2のクリーン層11は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。実施例5の複層管2の芯材層12は、主成分として、ポリエチレンを含み、顔料は含まない。接着層13は、主成分としてアドマー NF528(三井化学株式会社製)を含み、顔料として桜メタリックに着色されるスズスフェン (CaO・SnO2・SiO2) とマイカを含む。ガスバリア層14の材料は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)である。
【0137】
クリーン層11と接着層13の間の色差ΔEは、実施例3と同様の測定を行った結果、6.2であり、既設のPVDF管と実施例6の複層管を外部から視て区別できた。また、芯材層12と接着層13の間の色差ΔEは、実施例5と同様の測定を行った結果、6であった。クリーン層11と芯材層12の間の色差ΔEは、実施例1と同様に測定を行った結果、1.6であった。
【0138】
(実施例7)
本実施例7では、図2に示す複層管2の構成を用いた。実施例7の複層管2のクリーン層11は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。実施例7の複層管2の芯材層12は、主成分として、ポリエチレンを含み、顔料は含まない。接着層13は、主成分としてアドマー NF528(三井化学株式会社製)を含み、顔料として、青に着色されるシアン系顔料を含む。ガスバリア層14の材料は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)である。
【0139】
クリーン層11と接着層13の間の色差ΔEは、実施例3と同様の測定を行った結果、9.8であり、既設のPVDF管と実施例7の複層管を、外部から視て区別できた。また、芯材層12と接着層13の間の色差ΔEは、実施例5と同様の測定を行った結果、7.5であった。クリーン層11と芯材層12の間の色差ΔEは、実施例1と同様に測定を行った結果、1.6であった。
【0140】
(比較例1)
比較例1では、図1に示す構成の複層管を用いた。比較例1の複層管のクリーン層は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。比較例1の複層管の芯材層は、主成分として、ポリエチレンを含み、顔料は含まない。
【0141】
実施例1と同様の測定を行った結果、クリーン層と芯材層の間には、色差が生じず、既設のPVDF管と比較例1の複層管を、外部から視て区別できなかった。
【0142】
(比較例2)
比較例2では、図1に示す構成の複層管を用いた。比較例2の複層管のクリーン層は、主成分としてクリーンポリエチレンを含む。比較例2の複層管の芯材層は、主成分として、ポリエチレンを含み、顔料は含まない。比較例2の接着層は、主成分としてアドマー NF528(三井化学株式会社製)を含み、顔料は含まない。ガスバリア層の材料は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)である。
【0143】
実施例3と同様の測定を行った結果、ガスバリア層で生じる光反射によって、クリーン層とガスバリア層の間で色差ΔEが0.4となっているが、既設のPVDF管と比較例2の複層管を、外部から視て区別できなかった。実施例1と同様の測定を行った結果、クリーン層と芯材層の間には、色差が生じなかった。また、実施例5と同様の測定を行った結果、芯材層と接着層の間では、上記と同様にガスバリア層で生じる光反射によって色差ΔEが0.4となった。
【0144】
(表1)
【0145】
以上のように、外部から視認できるように芯材層または接着層を着色した複層管を用いることによって、色の異なる管を配置することができ、更新前と更新後において管を判別することができる。例えば、更新前に実施例3に示す青メタリックの複層管を用い、更新後に実施例4に示す蛍光の複層管を用いることで、管の更新を容易に判別することができる。
【0146】
また、既設のPVDF管は不純物が溶出しないように顔料を含まないため、本開示の複層管のクリーン層と同様のナチュラル色(乳白色)である。そのため、本開示の複層管において、クリーン層と色差が生じるように芯材層または接着層を着色することで、既設のPVDF管とも区別とすることができる。
【符号の説明】
【0147】
1 :複層管
2 :複層管
3 :複層管
11 :クリーン層
12 :芯材層
13 :接着層
14 :ガスバリア層
【要約】
【課題】更新前と更新後の管を容易に判別可能な複層管を提供することを目的とする。
【解決手段】複層管2は、半導体洗浄液の輸送に用いられる複層管1であって、クリーン層11と、接着層13と、を備える。クリーン層11は、最内層を構成し、ポリオレフィン系樹脂または塩化ビニル樹脂を主成分とする。接着層13は、クリーン層11の外側に配置され、顔料を含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3