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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 15/06 20060101AFI20241127BHJP
   B61D 17/06 20060101ALI20241127BHJP
   B61F 1/10 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B61D15/06
B61D17/06
B61F1/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024048372
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-08-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿谷 拓実
(72)【発明者】
【氏名】貴志 崇
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直茂
(72)【発明者】
【氏名】河合 竜太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/109891(WO,A1)
【文献】特開2007-302081(JP,A)
【文献】特開2016-222195(JP,A)
【文献】特開2022-80158(JP,A)
【文献】実開平6-63467(JP,U)
【文献】畑弘敏,大野潔,“衝突シミュレーションを活用した車両の安全確保対策に関する研究”,JR EAST Technical Review,日本,東日本旅客鉄道株式会社,2003年,No.3,p.35-40,ISSN 1347-8419
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 15/06
B61D 17/06
B61F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、
前記台枠の車両前後方向の前側端部に立設された正面フレームと、
V字形をなし、前記正面フレームより後方に隙間を空けて配置され、両端部を前記台枠に固定される支持フレームと、
を有し、
前記隙間は、前記正面フレームが塑性変形した後、前記正面フレームを前記支持フレームに接触させるための隙間である、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記支持フレームは、第1支持柱と第2支持柱とを結合した櫓構造をなし、
前記第1支持柱は、前記正面フレームの後方に前記隙間を空けて前記台枠に垂設され、
前記第2支持柱は、前記第1支持柱の後方に配置され、一端が前記第1支持柱の上端部に結合され、他端が前記台枠に結合されている、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記正面フレームは、前記支持フレームに前記隙間を空けて正対するように車両前方に配置され、前記台枠に立設された縦柱を有し、
前記縦柱は、障害物と前記支持フレームとの間で塑性変形して衝突エネルギーを吸収する、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載する鉄道車両において、
前記正面フレームは、前記縦柱の前方に配置される衝撃吸収部材を有し、
前記衝撃吸収部材および前記縦柱は、障害物と前記支持フレームとの間で塑性変形して衝突エネルギーを吸収する、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載する鉄道車両において、
前記支持フレームは、前記縦柱と比べて高さが低い、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項6】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記支持フレームの頂部に対応する位置で前記正面フレームに固定され、塑性変形する前記正面フレームに対して前記支持フレームの位置ずれを抑制する位置ずれ防止部材を有する、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項7】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記台枠は、
車両幅方向両端部に前記車両前後方向に沿って配置される側梁と、
前記側梁より車内側の位置に前記車両前後方向に沿って配置される中梁と、
前記前側端部に配置され、前記側梁と前記中梁とに結合する前側端梁と、
を有し、
前記支持フレームの両端部が前記前側端梁に結合し、
前記支持フレームが前記正面フレームから受けた荷重を、前記前側端梁から前記中梁に伝達する中間フレームを有する、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項8】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記正面フレームの後方であって前記支持フレームの固定位置で前記台枠に溶接される固定プレートを有し、
前記支持フレームの一端および他端が前記固定プレートに接合されている、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項9】
請求項8に記載する鉄道車両において、
前記固定プレートは、溶接に用いる複数の穴部を有する、
ように構成されている鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造を備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が、例えば、車高が高く且つ質量の大きな車両(例えば、大型トラック等)に衝突した場合には、鉄道車両の先頭構体が室内側へ変形し、居住空間を減少させる懸念がある。また、衝撃加速度が乗客や乗員に危害を及ぼす懸念がある。例えば、特許文献1には、このような衝突時における居住空間の減少や、衝撃加速度による危害を軽減するための衝撃吸収構造を備える鉄道車両が、開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される鉄道車両は、車体の正面部分に位置する正面フレームを台枠に固定し、台枠より高い位置で正面フレームを構成する衝突柱に緩衝部材を結合ししている。緩衝部材は、筒形状をなし、車内側に延びるように配置されている。緩衝部材の車内側端部は、台枠に固定された支持部材に結合されている。正面フレームが衝撃荷重を受けると、緩衝部材が衝突柱を支え、正面フレームの変形を抑制する。衝突柱が倒れ、緩衝部材に一定以上の衝撃荷重が加わると、緩衝部材が軸方向に潰れて、衝突エネルギーを吸収する。緩衝部材が台枠よりも高い位置で衝突時の衝突エネルギーを吸収するので、衝突による居住空間の減少が軽減される。また、緩衝部材が倒れる衝突柱を支えるので、衝突エネルギーが緩衝部材で緩やかに吸収され、衝撃加速度が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/109891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された鉄道車両では、緩衝部材が、正面フレームを支える機能と、衝撃吸収機能とを有する。しかし、緩衝部材は、潰れ始めると、それ以上の荷重を支えることができない。つまり、緩衝部材は、潰れ始めるタイミングが破壊強度となり、それ以上の荷重を受けると際限無く潰れ、正面フレームを支持できなくなる。よって、特許文献1に記載された鉄道車両は、衝突時における居住空間の保護が不十分であり、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書で開示する技術の一態様は、(1)台枠と、前記台枠の車両前後方向の前側端部に立設された正面フレームと、V字形をなし、前記正面フレームより後方に隙間を空けて配置され、両端部を前記台枠に固定される支持フレームと、を有し、前記隙間は、前記正面フレームが塑性変形した後、前記正面フレームを前記支持フレームに接触させるための隙間である、ように構成されている鉄道車両である。
【0007】
上記構成を有する鉄道車両では、衝突開始時、正面フレームが支持フレームとの間の隙間分、単独で変形する。隙間が残っている間は、衝突エネルギーは、正面フレームの変形と、正面フレームと支持フレームとの間の隙間と、によって吸収される。隙間を超えて塑性変形した正面フレームは、後方に固定された支持フレームに接触し、衝撃荷重を支持フレームに伝達する。支持フレームは、V字形をなし、両端部が台枠に固定されたトラス状の構造をなし、破壊強度が強くされている。支持フレームは、正面フレームを塑性変形させる衝撃荷重以上の荷重を、塑性変形した正面フレームから受けても、破壊強度に至らず、居住空間側へ塑性変形する正面フレームを支持して居住空間を保護できる。
【0008】
(2)(1)に記載する鉄道車両において、前記支持フレームは、第1支持柱と第2支持柱とを結合した櫓構造をなし、前記第1支持柱は、前記正面フレームの後方に前記隙間を空けて前記台枠に垂設され、前記第2支持柱は、前記第1支持柱の後方に配置され、一端が前記第1支持柱の上端部に結合され、他端が前記台枠に結合されている、ことが好ましい。
【0009】
上記構成を有する鉄道車両は、居住空間側に正面フレームが塑性変形する場合、支持フレームの第2支持柱が台枠と塑性変形する正面フレームとの間で突っ張って、正面フレームの変形を阻止し、居住空間を保護できる。
【0010】
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両において、前記正面フレームは、前記支持フレームに前記隙間を空けて正対するように車両前方に配置され、前記台枠に立設された縦柱を含み、前記縦柱は、障害物と前記支持フレームとの間で塑性変形して衝突エネルギーを吸収する、ことが好ましい。
【0011】
上記構成を有する鉄道車両は、例えば、車両前方に障害物が衝突した場合、正面フレームの縦柱が変形し、衝突エネルギーを吸収する。縦柱は、支持フレームとの間の隙間を狭めるように塑性変形することで、衝突エネルギーをさらに吸収できる。縦柱が隙間を無くすまで塑性変形し、支持フレームに接触すると、正面フレームが縦柱を介して支持フレームに支持され、居住空間側への変形を抑制される。よって、鉄道車両は、衝突エネルギーを吸収する縦柱を座屈させる衝撃荷重が車両前方に作用しても、居住空間を保護できる。
【0012】
(4)(3)に記載する鉄道車両において、前記正面フレームは、前記縦柱の前方に配置される衝撃吸収部材を有し、前記衝撃吸収部材および前記縦柱は、障害物と前記支持フレームとの間で塑性変形して衝突エネルギーを吸収する、ことが好ましい。
【0013】
上記構成を有する鉄道車両は、例えば、車両前方に障害物が衝突した場合に、縦柱だけでなく、衝撃吸収部材によっても衝突エネルギーを吸収できるので、衝撃荷重のピーク値を抑制し、より一層確実に居住空間を保護できる。
【0014】
(5)(3)または(4)に記載する鉄道車両において、前記支持フレームは、前記縦柱と比べて高さが低い、ことが好ましい。
【0015】
上記構成を有する鉄道車両は、支持フレームが破壊強度に至る前に正面フレームの縦柱にめり込んで正面フレームの変形を抑制し、居住空間を保護できる。
【0016】
(6)(1)から(5)の何れか1つに記載する鉄道車両において、前記支持フレームの頂部に対応する位置で前記正面フレームに固定され、塑性変形する前記正面フレームに対して前記支持フレームの位置ずれを抑制する位置ずれ防止部材を有する、ことが好ましい。
【0017】
上記構成を有する鉄道車両は、正面フレームが塑性変形する場合に、支持フレームが位置ずれ防止部材に案内されて正面フレームにめり込むので、支持フレームが塑性変形する正面フレームを確実に支持できる。また、鉄道車両は、障害物と支持フレームの間で正面フレームの部品を安定して押し潰すことにより、衝突エネルギーを安定して吸収することができる。
【0018】
(7)(1)から(6)の何れか1つに記載する鉄道車両において、前記台枠は、車両幅方向両端部に前記車両前後方向に沿って配置される側梁と、前記側梁より車内側の位置に前記車両前後方向に沿って配置される中梁と、前記前側端部に配置され、前記側梁と前記中梁とに結合する前側端梁と、を有し、前記支持フレームの両端部が前記前側端梁に結合し、前記支持フレームが前記正面フレームから受けた荷重を、前記前側端梁から前記中梁に伝達する中間フレームを有する、ことが好ましい。
【0019】
上記構成を有する鉄道車両は、支持フレームが正面フレームから受ける荷重を前側端梁と中間フレームとを介して中梁に伝達できるので、支持フレームが受ける衝撃荷重が中間フレームによって支持され、支持フレームおよびその後方の構造が衝撃荷重で変形するのを抑制できる。
【0020】
(8)(1)から(7)の何れか1つに記載する鉄道車両において、前記正面フレームの後方であって前記支持フレームの固定位置で前記台枠に溶接される固定プレートを有し、前記支持フレームの一端および他端が前記固定プレートに接合されている、ことが好ましい。
【0021】
上記構成を有する鉄道車両は、例えば、支持フレームと固定プレートとをあらかじめ溶接等で組み立てたものを台枠に溶接する工法をとることにより、正面フレームと台枠との組み立て後に支持フレームを台枠に取り付けることができ、支持フレームと正面フレームとの間に形成する隙間の調整が容易になる。
【0022】
(9)(8)に記載する鉄道車両において、前記固定プレートは、溶接に用いる複数の穴部を有する、ことが好ましい。
【0023】
上記構成を有する鉄道車両は、複数の穴部の縁部に沿って溶接し、あるいは、複数の穴部を用いて栓溶接することにより、固定プレートの溶接長を大きくできる。これにより、支持フレームが固定プレートを介して台枠に強固に固定される。よって、支持フレームは、正面フレームから荷重を受けても台枠から離脱しにくく、居住空間を保護できる。
【発明の効果】
【0024】
上記鉄道車両によれば、衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造を備える鉄道車両において、衝撃荷重の緩和と居住空間の保護とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態の鉄道車両の側面図である。
図2図1のA-A断面から見た先頭部構体構造を示す図である。
図3図2のB-B断面図である。
図4図2のC-C断面の要部拡大斜視図である。
図5図2のC-C断面図である。
図6】衝突による車両変形のシミュレーション結果を示す図である。
図7】衝突による車両変形のシミュレーション結果を示す図である。
図8】衝突による車両変形のシミュレーション結果を示す図である。
図9】衝突による車両変形のシミュレーション結果を示す図である。
図10】鉄道車両の異なる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本形態の鉄道車両について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書は、前頭部に衝撃吸収構造を備える鉄道車両を開示する。
【0027】
<鉄道車両の構成>
図1に示す本形態の鉄道車両1は、レールRaに沿って走行する列車の先頭車両である。鉄道車両1は、台枠2と、側構体3と、先頭構体4と、屋根構体5と、図示しない妻構体と、を備え、台枠2の前後端部付近に台車7が配置されている。鉄道車両1は、前方部分に前面窓6を備える。本形態の前面窓6は、1枚窓で形成されているが、複数の窓を並べて構成されてもよい。前面窓6の後方は、運転室であってもよいし、客席であってもよい。以下、前面窓6に臨む乗務員または乗客がいる空間を居住空間SPという。
【0028】
図1および図2に示すように、側構体3は、台枠2の車幅方向両端部に車両前後方向Xに沿って配置され、下端部を台枠2に結合されている。側構体3には、図示しないドアや窓を取り付けるための側開口部が形成されている。先頭構体4は、台枠2および側構体3の前側端部にそれぞれ結合されている。先頭構体4は、車幅方向Yに沿って前面窓6を取り付けるための窓取付開口部47が設けられている。屋根構体5は、側構体3、先頭構体4、および、図示しない妻構体の上端部にそれぞれ結合されている。
【0029】
鉄道車両1の先頭構体4は、前面窓6の下側に正面フレーム41を設けられ、衝突時の衝撃荷重が正面フレーム41によって支持される。鉄道車両1は、正面フレーム後方の左右対称位置に、支持フレーム10A,10Bが正面フレーム41との間に車両前後方向Xに隙間S11を空けて設置されている。正面フレーム41、支持フレーム10A,10B、隙間S11については、後述する。なお、図1および図2に示すX,Y,Zは、鉄道車両1の向きを示す。Xは、車両前後方向を示し、Yは、車幅方向を示し、Zは、車両上下方向を示す。
【0030】
図3を参照して台枠2の構造を説明する。台枠2は、側梁21A,21Bと、前側端梁22A,22Bと、中梁23A,23Bと、枕梁24と、横梁25A,25Bと、を備えている。
【0031】
側梁21A,21Bは、台枠2の左右両側に車両前後方向Xに沿って配置されている。中梁23A,23Bは、側梁21A,21Bの間に車両前後方向Xに沿って平行に配置されている。中梁23A,23Bは、台枠2の中央付近に車両前後方向Xに沿って平行に配置され、結合梁28を介して結合されている。
【0032】
前側端梁22Aは、側梁21Aおよび中梁23Aの前側端部とそれぞれ結合している。枕梁24は、前側端梁22Aの後方に配置されて側梁21Aに結合されており、前方には中梁23Aが結合されている。枕梁24は、下方から台車7に支持されている。横梁25Aは、前側端梁22Aと枕梁24との間に車幅方向Yに沿って架設されている。前側端梁22Bおよび横梁25Bは、前側端梁22Aおよび横梁25Aと同様に配置されている。前側端梁22A,22Bは、連結梁31を介して連結されている。
【0033】
図2および図4を参照して先頭構体4の構造を説明する。先頭構体4は、正面フレーム41の外側に外板45が溶接等で結合されている。外板45は、車両上下方向Zの約上半分より上側に窓取付開口部47が形成されている。正面フレーム41は、窓取付開口部47の下側で外板45を車内側から支持する。
【0034】
正面フレーム41は、隅柱411A,411Bと、中央柱412と、縦柱413A,413Bと、横桁417と、横補強桁414A,414B、415A,415B,416A,416Bと、縦補強桁418A,418Bと、上下結合柱419A,419Bと、を備える。中央柱412と、縦柱413A,413Bと、横補強桁414A,414B、415A,415B,416A,416Bと、縦補強桁418A,418Bとは、衝突エネルギーを吸収するために、中空部を備えている。
【0035】
隅柱411A,411Bは、先頭構体4の前面と側面との接続部で台枠2の前側端部に立設されている。中央柱412は、先頭構体4の車幅方向中央部で台枠2の前側端部に立設されている。隅柱411A,411Bと中央柱412とは、台枠2から窓取付開口部47の下端部まで延びて配置され、窓取付開口部47の下端部に沿って配置される横桁417に溶接等で結合されている。隅柱411A,411Bの上端部は、窓取付開口部47の側端部に沿って上方に延設される上下結合柱419A,419Bを介して屋根構体5に結合されている。
【0036】
縦柱413Aは、隅柱411Aと中央柱412との間に立設されている。縦柱413Aは、隅柱411Aと中央柱412との中間位置より中央柱412寄りに立設されている。縦柱413Aは、台枠2から隅柱411Aおよび中央柱412の約半分の高さまで延びて配置され、台枠2の前側端部に垂直に立設されている。横補強桁414A、415Aは、台枠2と窓取付開口部47とのほぼ中間位置に配置されている。横補強桁414Aは、隅柱411Aと縦柱413Aとに結合されている。横補強桁415Aは、縦柱413Aと中央柱412とに結合されている。横補強桁416Aは、横補強桁415Aの下方に台枠2の前側端部に沿って配置され、縦柱413Aと中央柱412とに結合されている。
【0037】
縦補強桁418Aは、隅柱411Aと中央柱412との中間位置、すなわち、縦柱413Aより隅柱411A寄りに車両上下方向Zに沿って配置され、横桁417と横補強桁414Aとに溶接等で結合されている。縦柱413B,横補強桁414B,415B,416B、縦補強桁418Bは、縦柱413A,横補強桁414A,415A,416A、縦補強桁418Aと同様に構成されているので、説明を省略する。
【0038】
図4および図5を参照して支持フレーム10A,10Bの構造を説明する。支持フレーム10A,10Bは、同様に構成されているので、ここでは支持フレーム10Aについて説明し、支持フレーム10Bの説明を省略する。
【0039】
図4および図5に示すように、支持フレーム10Aは、正面フレーム41の縦柱413Aの真後ろに、隙間S11を空けて設置されている。隙間S11は、正面フレーム41が塑性変形した後、正面フレーム41の縦柱413Aを支持フレーム10Aに接触させるための間隔である。本実施形態は、支持フレーム10Aと縦柱413Aとの車両前後方向Xの間隔を5mm以上30mm以下、より好ましくは、10mm以上20mm以下として、隙間S11を形成している。
【0040】
支持フレーム10Aは、正面フレーム41が居住空間SP側へ塑性変形した場合に縦柱413Aにめり込んで正面フレーム41を支持するように、車幅方向Yの幅寸法が縦柱413Aの幅寸法より小さく、車両上下方向Zの高さが縦柱413Aの高さより低くされている。縦柱413Aは、中空部を備えることにより、支持フレーム10Aより破壊強度が小さく、塑性変形しやすい。本形態の支持フレーム10Aは、第1支持柱11Aと第2支持柱12Aとの上端部を結合してV字形(設置状態ではA字形)に結合した櫓構造を備える。支持フレーム10Aは、前後方向に離間した両下端部が台枠2に固定されることでトラス状の構造を形成し、外力に対する強度を増加させている。
【0041】
第1支持柱11Aは、縦柱413Aの真後ろに隙間S11を空けて、台枠2の前側端梁22Aに垂設されている。本形態の第1支持柱11Aは、板状の直方体形状をなす。第1支持柱11Aは、車両上下方向Zの高さ(縦寸法)が縦柱413Aの高さ(縦寸法)より低く、車幅方向Yの横幅寸法が縦柱413Aの横幅寸法より小さく、車両前後方向Xの厚さが縦柱413Aの車両前後方向Xの長さより小さい。第2支持柱12Aは、第1支持柱11Aより太く、強度が大きい。第2支持柱12Aは、一端が第1支持柱11Aの上端部に固定され、他端が台枠2の前側端梁22Aに固定されることで、前方を後方より高くして傾斜し、居住空間SP側へ倒れた縦柱413Aと台枠2との間で突っ張って正面フレーム41を支えることができる。
【0042】
図5に示すように、支持フレーム10Aは、位置ずれ防止部材15Aを介して、塑性変形する縦柱413Aに案内される。位置ずれ防止部材15Aは、上板151の車幅方向Yの両端部に側板152を結合したコの字形状をなす。位置ずれ防止部材15Aは、第1支持柱11Aと第2支持柱12Aとの結合部分を上方と左右方向から覆う位置で、縦柱413Aの後方に位置する面に固定されている。位置ずれカバーと支持フレーム10Aとの間には、僅かな隙間が形成され、車両走行時に接触することによる騒音を防止すると共に、車両製作時の支持フレーム10Aの位置調整を容易にしている。
【0043】
図4に示すように、支持フレーム10Aは、固定プレート16Aを介して台枠2に固定されている。固定プレート16Aは、細長い板形状をなす。固定プレート16Aは、溶接長を拡大するため、複数の穴部を備えている。本形態の固定プレート16Aは、車幅方向Y(短手方向)の両端部に車両前後方向X(長手方向)に沿って栓溶接用の溶接穴161が複数形成されている。さらに、固定プレート16Aは、車幅方向Yの中央部に車両前後方向Xに沿って栓溶接用の溶接穴161よりも径が大きく、内縁を隅肉溶接可能な溶接穴162が複数形成されている。溶接穴161,162は、「複数の穴部」の一例である。
【0044】
支持フレーム10Aは、固定プレート16Aを用いて、構体に後付けされる。すなわち、固定プレート16Aは、構体組み立て後、前側端梁22Aに栓溶接、および、周囲を線溶接される。支持フレーム10Aは、第1支持柱11Aと第2支持柱12Aとを固定プレート16A上に配置し、第1支持柱11Aの縁部と固定プレート16A、および、第2支持柱12Aの縁部と固定プレート16A、をそれぞれ溶接することで、台枠2に固定されている。固定プレート16Aは、さらに、溶接穴162の縁部に沿って溶接され、台枠2に固定されている。
【0045】
続いて、鉄道車両1の衝突時の変形について、図6図9のシミュレーション結果を参照して説明する。本形態では、車高が高く且つ質量の大きな障害物OBに鉄道車両1が正面衝突する場合を例にして説明する。鉄道車両1は、ほぼ左右同様に変形を生じるので、ここでは、左半分の変形を例にして説明する。
【0046】
図6に示すように、鉄道車両1が障害物OBに衝突する前は、正面フレーム41の縦柱413Aと支持フレーム10Aの第1支持柱11Aとの間に隙間S11が設けられ、支持フレーム10Aが正面フレーム41に非接触である。
【0047】
図7に示すように、鉄道車両1が障害物OBへの衝突を開始すると、正面フレーム41が支持フレーム10Aに接触するまで、先頭構体4が単独で変形する。すなわち、正面フレーム41は、まず、中央柱412が変形して衝突エネルギーを吸収する。中央柱412が受けた衝撃荷重は、横補強桁415A,416Aを介して縦柱413Aに伝達される。このとき、横補強桁415A,416Aが変形して衝撃荷重を緩和する。縦柱413Aは、横補強桁415A,416Aとの結合部分に引っ張り荷重が作用し、台枠2との結合部分を起点に曲げモーメントが作用する。引っ張り荷重は、横補強桁414Aおよび縦補強桁418Aへ伝達される。横補強桁414Aおよび縦補強桁418Aは、塑性変形し、引っ張り荷重を軽減する。正面フレーム41は、中央柱412に作用した衝撃荷重が縦柱413A、横補強桁414Aなどに分散し、衝突エネルギーが吸収される。
【0048】
図8に示すように、正面フレーム41の縦柱413Aは、支持フレーム10Aとの間の隙間S11を狭めながら居住空間SP側に塑性変形し、支持フレーム10Aに接触する。よって、鉄道車両1は、正面フレーム41と支持フレーム10Aとの間の隙間S11によって衝突開始時の衝撃荷重が緩和される。
【0049】
縦柱413Aは、隙間S11を無くすまで塑性変形し、支持フレーム10Aに接触する。支持フレーム10Aは、V字形に形成され、両端部(第1支持柱11Aおよび第2支持柱12A)が台枠2に固定されることで、外力に対する強度が高いトラス状の構造を形成し、縦柱413Aより破壊強度が高くされている。しかも、支持フレーム10Aは、第1支持柱11Aと第2支持柱12Aとを介して、縦柱413Aから受ける衝撃荷重を台枠2に分散させることができ、支持フレーム10Aよりも後方の構造に荷重が集中することによる変形も防止できる。よって、支持フレーム10Aおよびその後方の構造は、正面フレーム41から衝撃荷重を伝達されても、変形しにくい。
【0050】
支持フレーム10Aは、台枠2に垂設された第1支持柱11Aと、第1支持柱11Aと台枠2との間に傾斜して設置される第2支持柱12Aと、を結合した櫓構造をなし、正面フレーム41から付与された衝撃荷重と反対向きに正面フレーム41を押し返し、正面フレーム41を支持できる。これにより、衝突時に正面フレーム41が変形して居住空間SPを圧迫することを抑制できる。
【0051】
支持フレーム10Aは、縦柱413Aと比べて高さが低く、幅寸法が小さい。居住空間SP側へ塑性変形した縦柱413Aが支持フレーム10Aの頂部付近、すなわち、第1支持柱11Aと第2支持柱12Aとの結合部分付近に接触すると、支持フレーム10Aの頂部が集中的に縦柱413Aに押し付けられ、第1支持柱11Aが第2支持柱12Aに支えられた状態で縦柱413Aにめり込む。さらに、縦柱413Aの車長方向(前後方向)Xの寸法は、第1支持柱11Aの車長方向(前後方向)Xの長さ(厚さ)よりも大きい。そのため、縦柱413Aの側面は第1支持柱11Aの側面よりも座屈荷重が小さい。よって、縦柱413Aの側面が優先的に座屈する。第1支持柱11Aが縦柱413Aにめり込んだ際に、第2支持柱12Aは、縦柱413Aと台枠2との間で突っ張って、曲げモーメントが作用する正面フレーム41を支え、居住空間SPを保護する。
【0052】
縦柱413Aが隙間S11側へ塑性変形する際に、位置ずれ防止部材15Aは縦柱413Aが支持フレーム10Aから外れないように案内する。位置ずれ防止部材15Aは、左右両側の側板152によって支持フレーム10Aが縦柱413Aに対して左右方向にずれることを回避できる。位置ずれ防止部材15Aは、縦柱413Aの居住空間SP側への塑性変形に応じて、左右両側の側板152を結合する上板151によって支持フレーム10Aを縦柱413A側に押し付けることができる。よって、支持フレーム10Aは、縦柱413Aに確実にめり込んで正面フレーム41を支持することができる。さらに、ずれを防止することにより支持フレーム10Aと障害物OBとの間で縦柱413Aの中空断面を安定的に押し潰すことができ、効果的に衝突エネルギーを吸収できる。
【0053】
支持フレーム10Aが縦柱413Aから受ける衝撃荷重は、前側端梁22A、支持フレーム10Aの後端近傍の前側端梁22Aから横梁25Aに車両長手方向に平行に延設される第1中間フレーム13A、横梁25A、第1中間フレーム13Aが接合された横梁25の後面から後段の横梁25Aと中梁23Aとの接合部に向けて車両長手方向に対して傾斜して延在する第2中間フレーム14Aを介して中梁23Aへ伝達され、支持される。そのため、支持フレーム10Aは、縦柱413Aから受ける荷重により潰れ難い。
【0054】
支持フレーム10Aは、固定プレート16Aを用いて台枠2に溶接する溶接領域を増やしている。よって、支持フレーム10Aは、縦柱413Aから後方への荷重を受けても、台枠2から引き剥がされずに正面フレーム41を支持することができる。
【0055】
図9に示すように、衝突終了時、前側端梁22Aや中梁23Aの前側端部や第1および第2中間フレーム13A,14Aなどが変形することがある。この場合も、支持フレーム10Aは、破壊強度には至らず、正面フレーム41を後方から支持して正面フレーム41が居住空間SP側へ倒れ込むのを防止して居住空間SPを保護できる。
【0056】
以上説明したように、本形態の鉄道車両1は、衝突開始時、正面フレーム41が支持フレーム10Aとの間の隙間S11分、単独で変形する。隙間S11が残っている間、衝突エネルギーは、正面フレーム41の変形と、正面フレーム41と支持フレーム10Aとの間の隙間S11と、によって吸収される。隙間S11を超えて塑性変形した正面フレーム41は、後方に固定された支持フレーム10Aに接触し、衝撃荷重を支持フレーム10Aに伝達する。支持フレーム10Aは、V字形をなし、両端部が台枠2に固定されたトラス状の構造をなし、破壊強度が強くされている。支持フレーム10Aは、縦柱413Aを塑性変形させる衝撃荷重以上の荷重を、塑性変形した正面フレーム41から受けても、破壊強度に至らず、居住空間SP側へ塑性変形する正面フレーム41を支持して居住空間SPを保護すると同時に、縦柱413Aの変形によりさらに衝突エネルギーを吸収できる。よって、本形態の鉄道車両1によれば、衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造を備える鉄道車両1において、衝撃荷重の緩和と居住空間SPの保護とを実現できる。
【0057】
<変形例>
本明細書において開示する技術は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、台枠2が左右に分割されて対称の構造を有するが、左右対称の構造でなくてもよい。
【0058】
支持フレーム10Aは、1部品で構成されてもよい。ただし、支持フレーム10Aが第1支持柱11Aと第2支持柱12Aとを結合した櫓構造をなし、第1支持柱11Aが縦柱413Aの後方に隙間S11を空けて台枠2に垂設され、第2支持柱12Aが第1支持柱11Aの後方に配置されて台枠2と第1支持柱11Aとの間に傾斜して設置されることで、支持フレーム10Aは、第2支持柱12Aが台枠2と塑性変形する正面フレーム41との間で突っ張って、正面フレーム41の変形を抑制し、居住空間SPを保護できる。
【0059】
支持フレーム10Aは、例えば、第1支持柱11Aが台枠2に対して垂設されず、台枠2に対して直角三角形状に形成されていなくてもよい。ただし、支持フレーム10Aは、第1支持柱11Aが台枠2に対して垂設され、台枠2に対して直角三角形状に形成されていることにより、居住空間SP側に倒れる正面フレーム41から受ける荷重によって倒れ込みにくくなり、正面フレーム41を支持し易くなる。
【0060】
鉄道車両1は、正面フレーム41に変えて、例えば図10に示す正面フレーム1041を使用してもよい。正面フレーム1041は、横補強桁414Aを複数有し、縦柱1413Aが、支持フレーム10Aに隙間S11を空けて正対するように車両前方に配置され、台枠2に垂設されている。縦柱1413Aは、横補強桁414Aを超えて上方に延び、横桁417に接続している。正面フレーム1041は、縦柱1413Aの前方に衝撃吸収部材1420が配置されている。衝撃吸収部材1420は、例えば、中空部を備える柱により形成され、縦柱1413Aの前面に車両前後方向Xと略平行に配置されている。正面フレーム1041を備える鉄道車両1は、例えば、車両前方に障害物が衝突した場合に、縦柱1413Aだけでなく、衝撃吸収部材1420によっても衝突エネルギーを吸収できるので、衝撃荷重のピーク値を抑制し、より一層確実に居住空間SPを保護できる。また、鉄道車両1は、衝撃吸収部材1420によって、縦柱1413Aの後方の隙間S11だけでなく、縦柱1413Aの前方にも隙間S12を設けることで、衝突エネルギーの吸収量が増え、居住空間SPを保護しやすくなる。
【0061】
支持フレーム10Aは、縦柱413Aと同じ高さ、あるいは、縦柱413Aより高さが高くてもよい。ただし、支持フレーム10Aが縦柱413Aより高さが低いことにより、支持フレーム10Aが破壊強度に至る前に縦柱413Aにめり込んで正面フレーム41の変形を抑制し、居住空間SPを保護できる。また、縦柱413Aの変形によりさらに衝突エネルギーが吸収される。
【0062】
位置ずれ防止部材15A,15Bはなくてもよい。ただし、縦柱413A,413Bに位置ずれ防止部材15A,15Bを固定することで、正面フレーム41が塑性変形する場合に、支持フレーム10A,10Bが位置ずれ防止部材15A,15Bに案内されて縦柱413A,413Bにめり込むので、支持フレーム10A,10Bが塑性変形する正面フレーム41を確実に支持できる。また、鉄道車両1は、障害物と支持フレーム10Aとの間で正面フレームの部品である縦柱413Aを安定して押し潰し、縦柱413Aを変形させることにより、さらに衝突エネルギーを安定して吸収できる。
【0063】
第1および第2中間フレーム13A,14Aはなくてもよい。ただし、例えば、第1および第2中間フレーム13A,14Aを有することにより、支持フレーム10Aが正面フレーム41から受ける荷重を前側端梁22A、第1および第2中間フレーム13A,14A、横梁25Aを介して中梁23Aに伝達できるので、支持フレーム10Aが受ける衝撃荷重が第1および第2中間フレーム13A,14Aによって支持され、支持フレーム10Aおよびその後方の構造が衝撃荷重で変形するのを抑制できる。
【0064】
第1および第2中間フレーム13A,14Aに代えて、前側端梁22Aと中梁23Aとに結合する中間フレームを使用してもよい。この場合も、支持フレーム10Aが受ける衝撃荷重を中梁23Aに伝達して支持し、支持フレーム10Aが衝撃荷重で変形するのを抑制できる。ただし、第1および第2中間フレーム13A,14Aを用いて支持フレーム10Aから中梁23Aに衝撃荷重を伝達する経路を長く確保することで、第1および第2中間フレーム13A,14Aが変形して衝突エネルギーを吸収することが期待できる。
【0065】
第1中間フレーム13Aが枕梁24まで伸びている構造でもよい。ただし、第2中間フレーム14Aを用いて中梁23Aに衝撃荷重を伝達することにより、部材長さが低減され、より軽量な構造で衝撃荷重を支持することができる。
【0066】
固定プレート16A,16Bを省略し、支持フレーム10A,10Bが台枠2に直接溶接等で固定されてもよい。ただし、鉄道車両1は、固定プレート16A,16Bを介して支持フレーム10A,10Bを台枠2に固定することで、支持フレーム10A,10Bと固定プレート16A,16Bとをあらかじめ溶接等で組み立てたものを台枠2に溶接する工法をとることが可能になる。これによれば、鉄道車両1は、正面フレーム41と台枠2との組み立て後に支持フレーム10A,10Bを台枠2に取り付けることができ、支持フレーム10A,10Bと正面フレーム41の縦柱413A,413Bとの間に形成する隙間S11の調整が容易になる。
【0067】
固定プレート16A,16Bの溶接穴161,162は、なくてもよい。ただし、固定プレート16A,16Bは、溶接穴161,162を設けて溶接長を大きくすることにより、支持フレーム10A,10Bが固定プレート16A,16Bを介して台枠2に強固に固定される。よって、支持フレーム10Aは、正面フレーム41から荷重を受けても台枠22から離脱しにくく、居住空間SPを保護できる。
【0068】
台枠2は、例えば、中梁1本、前側端梁を車幅方向Yに沿って1本配置するなど、上記実施形態の構造と異なる構造であってもよい。先頭構体4は、車両前方に突き出す形状でなく、車両後方に凹む形状や、車幅方向Yに沿って平坦な形状など、上記実施形態と異なる形状であってもよい。正面フレーム41は、上記実施形態と異なる構成でもよい。例えば、正面フレーム41は、縦柱413A,413Bの数を増減させてもよいし、中央柱412を省略してもよいし、横補強桁414A,416Aとの間に更に横補強桁を配置してもよいし、縦補強桁418A,418Bの数を増減してもよいし、隅柱411A,411Bを台枠2から屋根構体5まで延びるように配置して上下結合柱419A,419Bを省略してもよい。
【0069】
支持フレームは、正面フレームを構成する縦柱の後方に隙間S11を空けて設置すれば、上記実施形態と数や配置が異なってもよい。縦柱413A,413Bは、穴を開設することで強度を調整してもよい。
【0070】
支持フレーム10A,10Bは、それぞれ、車両前後方向Xに沿って配置されて第1支持柱11Aと第2支持柱12Aとを結合する補強柱をさらに備えていてもよい。
【0071】
縦柱413Aは、中空の四角柱形状に形成されたり、台枠2に対して垂直に設置されたりしていなくてもよい。例えば、縦柱413Aは、先頭形状に応じて湾曲した形状でもよいし、台枠2に対して傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 鉄道車両
2 台枠
10A,10B 支持フレーム
22A,22B 前側端梁
23A,23B 中梁
41 正面フレーム
S11 隙間
【要約】
【課題】衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収構造を備える鉄道車両において、衝撃荷重の緩和と居住空間の保護とを実現すること。
【解決手段】鉄道車両1は、台枠2の車両前後方向Xの前側端部に正面フレーム41が立設されている。鉄道車両1は、正面フレーム41より後方に隙間S11を空けて支持フレーム10Aを設置する。支持フレーム10Aは、V字形に形成され、両端部が台枠2に固定される。隙間S11は、正面フレーム41が塑性変形した後、正面フレーム41を支持フレーム10Aに接触させるように設ける。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10